説明

軸調整装置及び方法

【課題】複数個の測距手段を搭載する車両用の軸調整施設の省スペース化を図ること。
【解決手段】軸調整用施設内に設けられ、移動体に搭載される測距手段の軸調整を行う軸調整装置であって、少なくとも2つ以上の測距手段が搭載される移動体を載せるテーブルと、前記テーブルを水平面内で移動可能に支持するテーブル可動機構と、前記テーブル可動機構を駆動制御するテーブル制御手段と、前記測距手段と位置合わせされる軸調整用の基準点を提供し、軸調整用施設内に実質的に固定される基準点構成部材とを備え、前記テーブル制御手段は、一の測距手段が前記基準点構成部材と位置合わせされた状態で該一の測距手段の軸調整処理が行われた後に、前記テーブル可動機構を介して前記テーブルを移動させ、他の測距手段が同基準点構成部材と位置合わせされた状態を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のような移動体に搭載されるレーダ装置のような測距手段の軸調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるレーダ装置の軸調整装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、基準反射体(リフレクタ)の近傍に電磁波吸収態を配置し、当該基準反射体の位置をレーダ装置で検出する。そして、基準反射体が所定の位置で検出されるようにレーダ装置の取り付け位置を調整することで軸調整を行う。このような軸調整装置によれば、電磁波を反射する物体が存在しない広いエイミングスペースを基準反射体の前方に確保する必要が無くなり、軸調整施設の省スペース化を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−240837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、一台の車両に複数個のレーダ装置を搭載する形態が増加しつつある。例えば衝突車両検出用にミリ波レーダが4個(前方、後方、左右の前側方)搭載されている車両がある。レーダ装置の軸調整は、典型的には、工場出荷時に全てのレーダ装置についてそれぞれ実施されるので、複数個のレーダ装置を搭載する車両に対しては、それぞれのレーダ装置に対して基準反射体を配置する関係上、広い空間を持つ調整設備が必要であった。例えば、図1に示すように、従来構成では、例えば6つのレーダ装置を搭載する車両に対して、それぞれ1つずつ計6つのリフレクタ及び電波吸収体のセットを配置する必要があり、車両周囲に(特に車両前方及び後方に)広い空間を持つ調整設備が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、複数個の測距手段を搭載する車両用の軸調整施設の省スペース化を図ることが可能な軸調整装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、軸調整用施設内に設けられ、移動体に搭載される測距手段の軸調整を行う軸調整装置であって、
少なくとも2つ以上の測距手段が搭載される移動体を載せるテーブルと、
前記テーブルを水平面内で移動可能に支持するテーブル可動機構と、
前記テーブル可動機構を駆動制御するテーブル制御手段と、
前記測距手段と位置合わせされる軸調整用の基準点を提供し、軸調整用施設内に実質的に固定される基準点構成部材とを備え、
前記テーブル制御手段は、一の測距手段が前記基準点構成部材と位置合わせされた状態で該一の測距手段の軸調整処理が行われた後に、前記テーブル可動機構を介して前記テーブルを移動させ、他の測距手段が同基準点構成部材と位置合わせされた状態を形成することを特徴とする、軸調整装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数個の測距手段を搭載する車両用の軸調整施設の省スペース化を図ることが可能な軸調整装置及び方法の提供が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術による軸調整施設を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による軸調整装置1の要部構成を示す図である。
【図3】テーブル可動機構12とテーブル14の一例を示す側面図である。
【図4】本実施例の軸調整装置1により実現される軸調整時の動作を示す図である。
【図5】軸調整工程中における車両側の構成と軸調整装置1の構成との関係を示す図である。
【図6】軸調整工程において設備制御装置10及び衝突判断ECU50により協動して実現される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図2は、本発明の一実施例による軸調整装置1の要部構成を示す図である。軸調整装置1は、設備制御装置10と、テーブル可動機構12と、車両が載置されるテーブル14と、基準点構成部材16とを含む。
【0011】
設備制御装置10は、コンピューターからなり、軸調整のための各種処理機能(後述のテーブル可動機構12の制御機能を含む)と、軸調整される車両との間で通信を行うための通信機能を備える。軸調整される車両との間の通信は、無線により実現されてもよいが、典型的には、車両側に設けられる外部接続端子に設備制御装置10側から延びる通信線を接続することで有線により実現される。設備制御装置10の各種機能の詳細は後述する。尚、設備制御装置10は、軸調整施設内に設置されもよいし、軸調整施設外の遠隔位置に設置されてもよい。
【0012】
テーブル可動機構12は、軸調整施設内に設置される。テーブル可動機構12は、テーブル14を移動可能に支持する機構である。テーブル可動機構12は、図3に示すように、テーブル14を水平面内で回転可能に支持すると共に、テーブル14を鉛直方向で上下動可能に支持する機構であってよい。尚、テーブル14の動力源は、図示のようなモータであってもよいし、他の形態のアクチュエータであってよい。また、モータについても、油圧モータであってもよいし、電気モータであってもよい。テーブル可動機構12は、設備制御装置10に有線又は無線通信可能な形態で接続され、後述の如く、設備制御装置10により制御される。
【0013】
テーブル14は、軸調整施設内に設置される。テーブル14は、軸調整されるレーダ装置40を搭載する車両が上に載置されるテーブルないしステージである。テーブル14は、車両が上に載置された状態で、設備制御装置10による制御下でテーブル可動機構12により駆動される。テーブル14の駆動方法の詳細は後述する。
【0014】
基準点構成部材16は、軸調整施設内に設置される。基準点構成部材16は、電磁波を反射するリフレクタ16aと、電磁波を吸収する電波吸収体16bとからなる(図4参照)。基準点構成部材16の構成自体は、任意であってよい。本実施例では、基準点構成部材16の数は、軸調整されるレーダ装置40の数(一台の車両に搭載されるレーダ装置40の数)よりも少ない。ここでは、最も好ましい例として、基準点構成部材16の数は1つである。基準点構成部材16は、レーダ装置40の軸調整作業中は実質的に固定された状態にされる。
【0015】
図4は、本実施例の軸調整装置1により実現される軸調整時の動作を示す図であり、軸調整施設の上面視を概略的に示す。図4においては、軸調整施設内において、車両がテーブル14上に配置されている。
【0016】
尚、図4に示される車両は、軸調整対象のレーダ装置40を6つ備える。即ち、この車両は、車両前方正面を監視するための前方レーダ40Aと、車両前方右側方を監視するための右前側方レーダ40Bと、車両前方左側方を監視するための左前側方レーダ40Cと、車両後方正面を監視するための後方レーダ40Dと、車両後方右側方を監視するための右後側方レーダ40Eと、車両後方左側方を監視するための左後側方レーダ40Fとを含む。レーダ装置40の構成自体は任意であってよく、機械走査方式、電子スキャン方式、ビームの指向方向が異なる複数のアンテナを切り換えるビームスイッチ方式、モノパルス方式、コニカルスキャン方式等の任意の方式であってよい。また、レーダ装置40は、レーザーレーダ、ミリ波レーダ等の任意の種類の波を用いて物体を検出するものであってもよい。更に、レーダ装置40の検出結果は、車両の周辺障害物(他車を含む)との衝突不可避状態を判定するためや、警報や自動ブレーキを作動させるタイミングを決定するため等、任意の目的で利用されてもよい。
【0017】
図4(A)に示す状態では、後方レーダ40Dが基準点構成部材16に対して位置合わせされた状態である。この状態では、後方レーダ40Dの軸調整が可能である。
【0018】
図4(B)に示す状態は、図4(A)に示す状態から設備制御装置10による制御下でテーブル可動機構12によりテーブル14を回転させることによって、形成される。即ち、図4(B)に示す状態は、左後側方レーダ40Fが基準点構成部材16に対して位置合わせされた状態であり、図4(A)に示す状態から矢印P方向にテーブル14を回転されて実現される。この際のテーブル14の回転角度は、左後側方レーダ40Fが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、左後側方レーダ40Fと後方レーダ40Dの検知範囲の設計値の関係(又は車両前後方向に対する左後側方レーダ40Fの検知範囲の設計値の関係等)に応じて予め決定される。
【0019】
この図4(B)に示す状態では、左後側方レーダ40Fの軸調整が可能である。このようにして、車両を載せたテーブル14を回転させることで、1つの基準点構成部材16に対して、搭載位置の異なる複数のレーダ装置40(図4の例では、後方レーダ40D及び左後側方レーダ40F)の軸調整を行うことが可能となる。尚、図4に示す例では、2つのレーダ装置40(後方レーダ40D及び左後側方レーダ40F)の軸調整について示しているが、他のレーダ装置40(例えば前方レーダ40A等)についても、同様にテーブル14を回転させることによって、1つの基準点構成部材16だけで軸調整を行うことが可能である。
【0020】
次に、本実施例の軸調整装置1により実現される軸調整工程における設備制御装置10の主要処理について説明する。
【0021】
図5は、軸調整工程中における車両側の構成と軸調整装置1の構成との関係を示す図である。
【0022】
軸調整工程中は、車両側の衝突判断ECU50と、設備制御装置10とは、互いに通信可能に接続される。例えば、設備制御装置10は、車両側のCAN(controller area network)に接続され、CANを介して車両内の衝突判断ECU50と通信することができる。
【0023】
尚、衝突判断ECU50は、レーダ装置40(図4の例では、前方レーダ40A、右前側方レーダ40B、左前側方レーダ40C、後方レーダ40D、右後側方レーダ40E、及び、左後側方レーダ40F)からの検出結果(検知した障害物の相対速度、相対速度、方位等)に基づいて、障害物(他車を含む)との衝突不可避状態を判定するECUである。衝突判断ECU50は、障害物との衝突不可避状態を検出した場合に、例えば自動ブレーキを機能させたり、シートベルトプリテンショナを機能させたりする等のプリクラッシュ制御を行うECUであってよい。
【0024】
図6は、軸調整工程において設備制御装置10及び衝突判断ECU50により協動して実現される主要処理の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、先ず、後方レーダ40Dが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、軸調整される車両がテーブル14の上に載せられた状態で開始される。尚、テーブル14上への車両の移動は、作業者の運転による自走により実現されてもよい。
【0025】
ステップ600では、衝突判断ECU50により後方レーダ40Dの軸調整が実施される。後方レーダ40Dの軸調整方法は、任意の方法であってよい。例えば、後方レーダ40Dから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を後方レーダ40Dで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、後方レーダ40D用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、後方レーダ40Dの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、後方レーダ40Dの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(以下、「軸調整完了信号」という)を、設備制御装置10に供給する。
【0026】
ステップ602では、設備制御装置10は、上記ステップ600の衝突判断ECU50からの軸調整完了信号を受信すると、テーブル可動機構12に駆動信号を送信して、テーブル14を所定角度α1だけ左に回転させる。即ち、左後側方レーダ40Fが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、テーブル14を所定角度α1だけ左に回転させる。所定角度α1は、左後側方レーダ40Fの検知範囲の設計値と後方レーダ40Dの検知範囲の設計値との関係(又は車両前後方向に対する左後側方レーダ40Fの検知範囲の設計値の関係等)に応じて予め決定される。設備制御装置10は、テーブル14の回転処理が完了すると、その旨を表す信号(以下、「回転完了信号」という)を、衝突判断ECU50に供給する。
【0027】
ステップ604では、衝突判断ECU50により左後側方レーダ40Fの軸調整が実施される。左後側方レーダ40Fの軸調整方法についても、任意の方法であってよい。例えば、左後側方レーダ40Fから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を左後側方レーダ40Fで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、左後側方レーダ40F用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、左後側方レーダ40Fの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、左後側方レーダ40Fの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(軸調整完了信号)を、設備制御装置10に供給する。
【0028】
ステップ606では、設備制御装置10は、上記ステップ604の衝突判断ECU50からの軸調整完了信号を受信すると、テーブル可動機構12に駆動信号を送信して、テーブル14を所定角度α2だけ左に回転させる。即ち、左前側方レーダ40Cが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、テーブル14を所定角度α2だけ左に回転させる。所定角度α2は、左前側方レーダ40Cの検知範囲の設計値と左後側方レーダ40Fとの検知範囲の設計値の関係等に応じて予め決定される。設備制御装置10は、テーブル14の回転処理が完了すると、その旨を表す信号(回転完了信号)を、衝突判断ECU50に供給する。
【0029】
ステップ608では、衝突判断ECU50により左前側方レーダ40Cの軸調整が実施される。左前側方レーダ40Cの軸調整方法についても、任意の方法であってよい。例えば、左前側方レーダ40Cから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を左前側方レーダ40Cで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、左前側方レーダ40C用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、左前側方レーダ40Cの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、左前側方レーダ40Cの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(軸調整完了信号)を、設備制御装置10に供給する。
【0030】
ステップ610では、設備制御装置10は、上記ステップ608の衝突判断ECU50からの軸調整完了信号を受信すると、テーブル可動機構12に駆動信号を送信して、テーブル14を所定角度α3だけ左に回転させる。即ち、前方レーダ40Aが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、テーブル14を所定角度α3だけ左に回転させる。所定角度α3は、前方レーダ40Aの検知範囲の設計値と左前側方レーダ40Cの検知範囲の設計値との関係等に応じて予め決定される。設備制御装置10は、テーブル14の回転処理が完了すると、その旨を表す信号(回転完了信号)を、衝突判断ECU50に供給する。
【0031】
ステップ612では、衝突判断ECU50により前方レーダ40Aの軸調整が実施される。前方レーダ40Aの軸調整方法についても、任意の方法であってよい。例えば、前方レーダ40Aから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を前方レーダ40Aで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、前方レーダ40A用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、前方レーダ40Aの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、前方レーダ40Aの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(軸調整完了信号)を、設備制御装置10に供給する。
【0032】
ステップ614では、設備制御装置10は、上記ステップ612の衝突判断ECU50からの軸調整完了信号を受信すると、テーブル可動機構12に駆動信号を送信して、テーブル14を所定角度α4だけ左に回転させる。即ち、右前側方レーダ40Bが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、テーブル14を所定角度α4だけ左に回転させる。所定角度α4は、右前側方レーダ40Bの検知範囲の設計値と前方レーダ40Aの検知範囲の設計値の関係等に応じて予め決定される。設備制御装置10は、テーブル14の回転処理が完了すると、その旨を表す信号(回転完了信号)を、衝突判断ECU50に供給する。
【0033】
ステップ616では、衝突判断ECU50により右前側方レーダ40Bの軸調整が実施される。右前側方レーダ40Bの軸調整方法についても、任意の方法であってよい。例えば、右前側方レーダ40Bから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を右前側方レーダ40Bで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、右前側方レーダ40B用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、右前側方レーダ40Bの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、右前側方レーダ40Bの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(軸調整完了信号)を、設備制御装置10に供給する。
【0034】
ステップ618では、設備制御装置10は、上記ステップ616の衝突判断ECU50からの軸調整完了信号を受信すると、テーブル可動機構12に駆動信号を送信して、テーブル14を所定角度α5だけ左に回転させる。即ち、右後側方レーダ40Eが基準点構成部材16に対して位置合わせされるように、テーブル14を所定角度α5だけ左に回転させる。所定角度α5は、右後側方レーダ40Eの検知範囲の設計値と右前側方レーダ40Bの検知範囲の設計値との関係等に応じて予め決定される。設備制御装置10は、テーブル14の回転処理が完了すると、その旨を表す信号(回転完了信号)を、衝突判断ECU50に供給する。
【0035】
ステップ620では、衝突判断ECU50により右後側方レーダ40Eの軸調整が実施される。右後側方レーダ40Eの軸調整方法についても、任意の方法であってよい。例えば、右後側方レーダ40Eから電波を発射して、基準点構成部材16のリフレクタ16aからの反射波を右後側方レーダ40Eで受信し、リフレクタ16aの角度を算出する。そして、右後側方レーダ40E用に予め設定された所定の角度で基準点構成部材16のリフレクタ16aが検出されるように、右後側方レーダ40Eの基準軸を調整・変更する。衝突判断ECU50は、右後側方レーダ40Eの軸調整を完了すると、その旨を表す信号(軸調整完了信号)を、設備制御装置10に供給する。
【0036】
このようにしてステップ620の処理が終了すると、全てのレーダ装置40(図4の例では、前方レーダ40A、右前側方レーダ40B、左前側方レーダ40C、後方レーダ40D、右後側方レーダ40E、及び、左後側方レーダ40F)の軸調整が完了し、その後、車両は、テーブル14上から次の工程等へ例えば自走により移動する。
【0037】
尚、図4や図6に示した調整方法では、車両上面視での各レーダ装置40(図4の例では、前方レーダ40A、右前側方レーダ40B、左前側方レーダ40C、後方レーダ40D、右後側方レーダ40E、及び、左後側方レーダ40F)の取り付け位置の相違に対応して、テーブル14を水平面内で回転させているが、各レーダ装置40の取り付け位置に高さ方向の有意な相違がある場合は、それに応じてテーブル14をテーブル可動機構12により上下方向に昇降させてもよい。
【0038】
以上説明した本実施例の設備制御装置10によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0039】
上述の如く、レーダ装置40の軸調整時に使用する1つの基準点構成部材16を固定して配置すると共に、車両をテーブル14に載せて、上面視で車両中心を軸として回転させることで、当該1つの基準点構成部材16を複数のレーダ装置40で共用することが可能となる。これにより、設備コストの低減、軸調整施設の省スペース化、及び、調整ミスの低減を図ることが可能となる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0041】
例えば、上述の実施例では、レーダ装置40が軸調整の対象物であったが、本発明は、他の測距手段の軸調整、例えば周辺監視カメラの軸調整(光軸調整)にも適用することができる。
【0042】
また、上述の実施例では、テーブル14を水平面内で回転させ、及び/又は、テーブル14を上下方向に移動させることで、レーダ装置40のそれぞれが基準点構成部材16に対して位置合わせされた各状態を順次実現しているが、上下可動機構を無くし、テーブル14を水平面内で回転させるだけであってもよい。また、テーブル14の回転に代えて若しくは加えて、テーブル14を水平面内で前後左右に可動させることで、レーダ装置40のそれぞれが基準点構成部材16に対して位置合わせされた各状態を順次実現することも可能である。
【0043】
また、上述の実施例では、テーブル14を水平面内で左回りに回転させて、レーダ装置40のそれぞれが基準点構成部材16に対して位置合わせされた各状態を順次実現しているが、テーブル14の回転方向は任意であり、また、必ずしも隣接するレーダ装置40の順で軸調整する必要も無い。例えば、前方レーダ40A、右前側方レーダ40B、左前側方レーダ40C、後方レーダ40D、右後側方レーダ40E、及び、左後側方レーダ40Fの順で軸調整することも可能である。
【0044】
また、上述の実施例において、テーブル14上に、更に、基準点構成部材16に対するレーダ装置40の位置合わせ時の微調整用の可動機構を設けることも可能である。例えば、上述の如く回転可能なテーブル14上に、前後又は左右方向の可動機構を設けることも可能である。
【0045】
また、上述の実施例では、基準点構成部材16が固定式に設置されているが、基準点構成部材16は必ずしも軸調整工程中に完全に固定されている必要は無く、基準点構成部材16は、軸調整工程中に軸調整施設に対して実質的に固定されていればよい。従って、基準点構成部材16は、例えば基準点構成部材16に対するレーダ装置40の位置合わせ時の微調整用のために、省スペース化を阻害しない小さい範囲内で移動可能であってもよい。この場合、基準点構成部材16の移動は、手動で実施されてもよいし、自動的に実施されてもよい。
【0046】
また、上述の実施例では、基準点構成部材16が1つだけ設置されているが、1台あたりの軸調整対象のレーダ装置40の数よりも少ない限り、任意の数であってよい。例えば、上述の実施例において、前方レーダ40A、右前側方レーダ40B及び左前側方レーダ40C用に3つの基準点構成部材16を配置し、テーブル14を回転させることで、当該3つの基準点構成部材16を、後方レーダ40D、右後側方レーダ40E、及び、左後側方レーダ40Fの軸調整にも使用する構成も可能である。
【0047】
また、上述の実施例は、上述の如く軸調整施設の省スペース化等が可能であるので、軸調整施設は、車両の工場のみならず、車両の修理工場やディーラに設置することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 軸調整装置
10 設備制御装置
12 テーブル可動機構
14 テーブル
16 基準点構成部材
16a リフレクタ
16b 電波吸収体
40 レーダ装置
40A 前方レーダ
40B 右前側方レーダ
40C 左前側方レーダ
40D 後方レーダ
40E 右後側方レーダ
40F 左後側方レーダ
50 衝突判断ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸調整用施設内に設けられ、移動体に搭載される測距手段の軸調整を行う軸調整装置であって、
少なくとも2つ以上の測距手段が搭載される移動体を載せるテーブルと、
前記テーブルを水平面内で移動可能に支持するテーブル可動機構と、
前記テーブル可動機構を駆動制御するテーブル制御手段と、
前記測距手段と位置合わせされる軸調整用の基準点を提供し、軸調整用施設内に実質的に固定される基準点構成部材とを備え、
前記テーブル制御手段は、一の測距手段が前記基準点構成部材と位置合わせされた状態で該一の測距手段の軸調整処理が行われた後に、前記テーブル可動機構を介して前記テーブルを移動させ、他の測距手段が同基準点構成部材と位置合わせされた状態を形成することを特徴とする、軸調整装置。
【請求項2】
前記測距手段は、レーダ装置であり、前記基準点構成部材は、前記レーダ装置から発される波を反射するリフレクタであり、前記測距手段が前記基準点構成部材と位置合わせされた状態は、前記レーダ装置から送信される波が前記リフレクタで反射して該レーダ装置にて受信される状態である、請求項1に記載の軸調整装置。
【請求項3】
軸調整用施設内に実施され、移動体に搭載される測距手段の軸調整を行う軸調整方法であって、
テーブルの上に、少なくとも2つ以上の測距手段が搭載される移動体を載せる工程と、
前記測距手段と位置合わせされる軸調整用の基準点を提供し軸調整用施設内に実質的に固定される基準点構成部材を用いて、前記テーブル上の移動体の一の測距手段が前記基準点構成部材と位置合わせされた状態で該一の測距手段の軸調整処理を行う第1軸調整工程と、
前記第1軸調整工程後、テーブル可動機構を介して前記テーブルを移動させ、前記テーブル上の移動体の他の測距手段が同基準点構成部材と位置合わせされた状態を形成するテーブル移動工程と、
前記テーブル移動工程後、前記テーブル上の移動体の他の測距手段が同基準点構成部材と位置合わせされた状態で該他の測距手段の軸調整処理を行う第2軸調整工程とを含むことを特徴とする、軸調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185757(P2010−185757A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29737(P2009−29737)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】