説明

軸連結補助装置および軸連結方法

【課題】雄、雌のスプライン軸を嵌合する場合に、スプライン軸相互の軸芯を一致させる作業が面倒である。
【解決手段】互いに連結しようとする一対の回転軸4、6の端部に、雄、雌一対のスプライン軸7、11を取り付け、これらの嵌合により一対の回転軸を連結する軸連結装置において、スプライン軸7、11の軸芯を合わせるための軸連結補助装置21である。軸連結補助装置21は、一方のスプライン軸7の外側に、該スプライン軸7と同芯状に配置された芯出しリング22と、他方のスプライン軸11の外側に、該スプライン軸を中心とする同一円周上に所定の角間隔をもって配置されていて、スプライン軸7、11の嵌合に先立って、芯出しリング22の外周面に係合してスプライン軸7、11の軸芯を合わせる複数本の芯出しピン23と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに連結しようとする一対の回転軸の端部に、スプライン軸を取り付け、これらスプライン軸を嵌合することにより前記一対の回転軸を連結する軸連結装置において、前記スプライン軸を、より確実に嵌合するための軸連結補助装置および軸連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸相互を連結する場合、例えば、エンジン等の供試体の回転軸とダイナモメータ等の試験装置の回転軸を連結する場合においては、図9に示すように、架台101上にラバーマウント部材102を介してマウントされたエンジン等の供試体103の回転軸にスプライン軸104を取り付ける一方、ダイナモメータ等の試験装置(図示省略)の回転軸(被連結軸)105にユニバーサルジョイント106等を介して前記スプライン軸104を嵌合するスプライン軸107を取り付け、該スプライン軸107を軸支持体108で支持する。
【0003】
そして、軸支持体108をエアーシリンダ等の軸支持体駆動機構109で供試体103側に移動させ、スプライン軸104をスプライン軸107内に嵌合させて、供試体の回転軸と試験装置の回転軸を連結する。スプライン軸107とスプライン軸104に芯ずれを起こしている場合には、前記ユニバーサルジョイント106等で芯ずれを吸収する。(例えば特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平1−7853号公報
【特許文献2】実公平2−10432号公報
【特許文献3】特開2006−300116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプライン軸同士を嵌合する際には、お互いの軸芯のズレを嵌合可能な範囲以下に一致させておく必要がある。そのためには、供試体の回転軸および試験装置先端スプライン軸の位置を上述の嵌合可能な範囲になるよう、精度よく設置しなければならない。
さらに、供試体の回転軸と試験装置の回転軸の芯ずれをユニバーサルジョイント等で吸収可能な軸連結装置においても、実際に芯ずれを吸収して、両スプライン軸の軸芯を一致させるためには、試験装置側のスプライン軸を上下、左右等に移動させ、両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に合わせなければならず、この軸芯を合わせる作業が実際には非常に作業工数のかかるものであった。また、結合に作業工数がかかることによって、総試験時間増加の原因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、軸芯合わせ作業を確実に行うことのできる軸連結補助装置および軸連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、互いに嵌まり合う一対のスプライン軸を備えた回転軸であって、これらのスプライン軸の嵌合により一対の回転軸を連結する軸連結装置において、
一方のスプライン軸の外側に、該スプライン軸と同心状に芯出しリングを配置するとともに、他方のスプライン軸の外側には、前記芯出しリングの外周面に係合して、一方のスプライン軸の軸芯と他方のスプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させる芯出しピンを設置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の軸連結補助装置において、前記芯出しピンは、円柱部と円錐部とから構成されており、前記円柱部は、芯出しリングの外周面に係合して該芯出しリングの位置決めを行ない、前記円錐部は、円柱部の先端に設けられて、前記芯出しリングの外周面に当接することにより一対のスプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の軸連結補助装置において、前記円柱部は、前記芯出しリングの外周面に係合したときに、前記芯出しリングの先端面に接触するフランジ部を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の軸連結補助装置において、
前記互いに連結しようとする一対の回転軸のうちの一方の回転軸は、供試体の回転軸であり、他方の回転軸は、前記供試体の試験を行なう試験装置の回転軸であり、前記供試体の回転軸に一方のスプライン軸が取り付けられ、前記試験装置の回転軸には他方のスプライン軸が取り付けられていて、該他方のスプライン軸は、軸支持体に取り付けられ、該軸支持体は、軸支持体駆動部材で軸方向に移動可能になっているとともに、前記芯出しピンは、それぞれピン駆動部材で軸方向に移動可能になっていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の軸連結補助装置において、前記ピン駆動部材は、前記少なくとも3本以上の芯出しピンを個々に前記供試体側に前進させて前記芯出しリングの外周面に係合させて前記両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させ、前記軸支持体駆動部材は、前記軸支持体を前記供試体側に前進させて前記両スプライン軸を嵌合させることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の軸連結補助装置において、前記軸支持体駆動部材およびピン駆動部材は、エアーシリンダであることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4または5に記載の軸連結補助装置において、前記軸支持体駆動部材およびピン駆動部材は、サーボモータ又は油圧シリンダであることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明の軸連結方法は、供試体の回転軸に一方のスプライン軸を取り付け、該一方のスプライン軸の外側に同心状に芯出しリングを配置する一方、前記供試体の試験を行なう試験装置の回転軸に他方のスプライン軸を取り付け、該他方のスプライン軸を取り付けた軸支持体に複数本の芯出しピンをピン駆動部材で軸方向に移動可能に取り付けるとともに、前記軸支持体を、軸支持体駆動部材で軸方向に移動可能とし、前記複数本の芯出しピンをピン駆動部材で前記供試体側に前進させ、前記芯出しリングの外周面に係合させて前記両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させた後に、前記他方のスプライン軸を前進させて前記両スプライン軸を嵌合することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8の軸連結方法であって、待機位置において複数本の芯出しピンをサブエアーシリンダにより前記試験装置側のスプライン軸の先端面よりも供試体側に突出させるステップと、
前記複数本の芯出しピンを供試体側に突出させた状態でメインエアーシリンダにより軸支持体を供試体側に移動させ、前記芯出しリングおよび複数本の芯出しピンで両スプライン軸の軸芯のズレを解消するステップと、
全ての芯出しピンが芯出しリングの外周面に係合して両スプライン軸の軸芯が嵌合可能な範囲に一致したかを検出するステップと、
両スプライン軸の軸芯合わせ終了後にサブエアーシリンダの弁を開放し、さらにメインシリンダで軸支持体を移動させて、両スプライン軸を嵌合させるとともに、試験装置側のスプライン軸の先端面を芯出しリングの底面部に接触させるステップと、
試験装置側のスプライン軸の先端面と芯出しリングの底面部との間に隙間を発生させ両者を非接触状態にするステップと、
芯出しピンと芯出しリングとの間に隙間を発生させ両者を非接触状態にするステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1の軸連結補助装置は、一対のスプライン軸の嵌合に先立って、前記芯出しリングの外周面に複数本の芯出しピンを係合させて、両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させるので、両スプライン軸の嵌合を容易、且つ確実に行うことができる。
(2)請求項2の軸連結補助装置は、一対のスプライン軸を嵌合させる際に、両スプライン軸の軸芯がずれている場合に、芯出しリングの先端面の外周縁に、芯出しピンの円錐部の傾斜面が接触して、該傾斜面でガイドされて芯出しリングが複数本の芯出しピンで構成される環状部内に導入される。そして、複数本の芯出しピンの円柱部の外周面が芯出しリングの外周面に係合して、両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させる。
(3)請求項3の軸連結補助装置は、前記フランジ部と芯出しリングの接触面にタクトスイッチ等を配置することにより、円柱部が芯出しリングの外周面に係合したことを容易に検出することができる。
(4)請求項4の軸連結補助装置は、供試体の回転軸と、該供試体の試験を行なう試験装置の回転軸とを、芯出しリングと複数本の芯出しピンで容易、且つ確実にスプライン連結することができる。
(5)請求項5の軸連結補助装置は、複数本の芯出しピンをピン駆動部材で供試体側に前進させて、複数の芯出しピンを芯出しリングの外周面に係合させて、両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させた後に、軸支持体を軸支持体駆動部材で供試体側に前進させて両スプライン軸を嵌合させることができる。
(6)請求項6の軸連結補助装置は、ピン駆動部材および軸支持体駆動部材にエアーシリンダを使用したので、サーボモータを使用する場合に較べて構造が簡単で安価に製造することができる。
(7)請求項7の軸連結補助装置は、ピン駆動部材および軸支持体駆動部材にエアーシリンダに代えてサーボモータ又は油圧シリンダを使用したので、芯出しピンや軸支持体の停止位置精度を向上させることができる。従って、験装置側のスプライン軸の先端と芯出しリングの底面部との間に隙間等を発生させることがエアーシリンダを使用した場合に較べて容易になる。
(8)請求項8の軸連結方法は、複数の芯出しピンをピン駆動部材で前進させて、これら芯出しピンを芯出しリングの外周面に接触させることにより両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させた後に、一方のスプライン軸を供試体側に前進させることにより、両スプライン軸を嵌合させることができる。
(9)請求項9の軸連結方法は、試験装置側のスプライン軸の先端と芯出しリングの底面部とを非接触状態にするとともに、芯出しピンと芯出しリングとを非接触状態にしたので、試験装置側のスプライン軸と芯出しリングの間および芯出しリングと芯出しピンとの間で摩擦抵抗を発生させることなくエンジンの試験を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】軸連結補助装置を使用した軸連結補助装置の説明図。
【図2】軸連結方法のステップ1を示す説明図。
【図3】軸連結方法のステップ2〜4を示す説明図。
【図4】軸連結方法のステップ5を示す説明図。
【図5】軸連結方法のステップ6を示す説明図。
【図6】軸連結方法のステップ7を示す説明図。
【図7】本発明の軸連結方法を示すフロー図。
【図8】他の実施例を示す説明図
【図9】従来例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図7は第1実施例を示す。回転軸相互を連結して各種の試験を行なう場合、例えば、図1に示すように、架台1上にラバーマウント部材2を介してマウントされた供試体としてのエンジン3の回転軸4に、ダイナモメータ5の回転軸(被連結軸)6を連結する。次にエンジン3の試験を行なう場合、エンジン3の回転軸4に一方のスプライン軸7を取り付ける一方、ダイナモメータ5の回転軸6には、伸縮可能なユニバーサルジョイント8、9、10を介して他方のスプライン軸11が接続されている。なお、図1において、14と15は、スプライン軸7の凹部(谷)と、スプライン軸11の凸部(山)を一致させるために、スプライン軸11を回動させるためのラックとピニオンである。
【0019】
スプライン軸11は、軸支持体12に取り付けられている。軸支持体12は、軸支持体駆動部材としてのエアーシリンダ(以下、メインエアーシリンダと称す。)13のピストンロッド13aの先端に連結されていて軸方向(図中の左右方向)に移動可能になっている。軸支持体12は、図示省略した構造(例えば、特開2006−300116号)によりスプライン軸11を左右、上下方向等に変位可能に支持し、供試体の回転軸と試験装置の回転軸が芯ずれを起こしている場合には、この芯ずれを吸収可能なとしている。なお、13bはメインエアーシリンダ13のピストンである。
【0020】
そして、図2〜図4に示すように、本発明の軸連結補助装置21は、嵌合可能な範囲に両スプライン軸7、11の軸芯を一致させるためのものである。本発明の軸連結補助装置21の概要を説明すると、図2において芯出しピン23をエアーシリンダ(以下、サブエアーシリンダと称す。)24により突出させ、次に図3で軸支持体12をメインエアーシリンダ13でエンジン3側に移動させ軸連結補助装置21の機能を用いて軸芯をほぼ一致させ、図4のようにスプライン軸7をスプライン軸11に挿入して、前記一対の回転軸4、6を連結する。
【0021】
次に、軸連結補助装置21の主要構成部材を説明する。軸連結補助装置21は、スプライン軸7に対し同心状に配置された芯出しリング22と、スプライン軸11を中心に4等配で配置された4本の芯出しピン23で構成されている。4本の芯出しピン23は、これら4本全てが芯出しリング22の外周面に係合して両スプライン軸7、11の軸芯CL1,CL2を一致させる。なお、図1〜図6において2本のみの芯出しピン23,23が表示されているが、各図の芯出しピンはあと2本の芯出しピン23,23が実際には配置されている(説明上、2本の芯出しピンは図示省略している)。
【0022】
芯出しリング22は、例えば図2に示すように円筒部22aと底面部22bとによって、有底円筒状に形成されていて、底面部22bが治具3aに取り付けられている。
【0023】
芯出しピン23は、前記芯出しリング22の外周面に係合して該芯出しリング22の位置決めを行なう円柱部23aと、該円柱部23aの先端に設けられて該円柱部23aの外周面に前記芯出しリング22の外周面をガイドする円錐部23bと、で構成されている。
【0024】
4本の芯出しピン23は、スプライン軸11と一体に取り付けられたピン駆動部材としてのサブエアーシリンダ24のピストンロッド24aの先端に取り付けられていて、軸方向に移動可能になっている。
【0025】
図1及び図2に示すように、芯出しピン23を矢印A方向に移動させると、スプライン軸7の軸芯CL1とスプライン軸11の軸芯CL2が一致していない場合は、図2に示すように、4本の芯出しピン23のうち、いずれかの芯出しピン23の円錐部23bの傾斜面が芯出しリング22の先端面の外周縁22cに接触して、軸芯のズレが解消される。そして、図3に示すように、全ての芯出しピン23について円柱部23aの周面が、芯出しリング22の外周面に係合(接触)したときに、両スプライン軸7、11の軸芯が嵌合可能な範囲に一致した状態になる。4本の芯出しピンが全て嵌合したことは、各芯出しピンに設けられた近接センサ25で検出される。その後、図4に示すように、両スプライン軸7、11を嵌合させる。
【0026】
なお、図1〜図6において、S1は、軸支持体12が最も後退した位置を検出する第1センサ、S2は、軸支持体12が最も前進した位置を検出する第2センサでありリミッタ(安全装置)機能などに利用される、S3は、芯出しピン23が最も後退した位置を検出する第3センサ、S4は、芯出しピン23が最も前進した位置を検出する第4センサ、S5は、第3センサS3と第4センサS4の中間に配置された第5センサである。
【0027】
次に、前記軸連結補助装置21を使用して、エンジン3の回転軸4に、ダイナモメータ5の回転軸6を連結する方法について、図1〜6および図7のフロー図を用いて動作を説明する。
図7に示すステップ0は、図1に示すように待機状態(スタンバイ状態)を示す。軸支持体12は、メインエアーシリンダ13により最も後退した位置、即ちエンジン3から最も離れた位置にある。また、4本の芯出しピン23も、サブエアーシリンダ24により最も後退した位置、即ちエンジン3から最も離れた位置にある。
【0028】
図7に示すステップ1は、図2に示すように、4本の芯出しピン23をサブエアーシリンダ24により前記スプライン軸11の先端面よりも供試体3側に突出させ、センサS4がピストン24bを検出する(最も前進した位置を検出する)まで移動させる。
【0029】
図7に示すステップ2〜3を、図3に示す。ステップ2においては、4本の芯出しピン23を供試体3側に突出させた状態でメインエアーシリンダ13により軸支持体12を供試体3側に移動させる。このとき、スプライン軸7とスプライン軸11の軸芯が嵌合可能な範囲に一致していない場合には、4本の芯出しピン23のうち、いずれかの芯出しピン23の円錐部23bの傾斜面が、芯出しリング22の先端面の外周縁22cに接触し、軸支持体12が移動するに伴って軸芯のズレを解消する。
ステップ3においては、全ての芯出しピン23について、円柱部23aの外周面が芯出しリング22の外周面に係合(接触)したことを、全近接センサ25の検出によって、両スプライン軸7、11の軸芯が嵌合可能な範囲に一致したものと判断する。また、ステップ3において、メインシリンダのセンサS2の位置(最大ストローク)まで移動させても、全ての近接センサ25が係合を検出しない場合には、芯出しが不首尾に終わったものとして軸支持体12をセンサS1の位置まで、及び芯出しピン23をセンサS3の位置まで各々後退させて、ステップ1から再度やりなおす。これを複数回繰り返してもなお、芯出しができない場合には、連結作業を中止する。
【0030】
図7に示すステップ4は、図3から図4の中間状態を示す。ステップ4においては、図3の状態で4本のサブエアーシリンダ24の弁を開放する。そして、スプライン軸を結合させるために、ラック14及びピニオン15でスプライン軸に回転力を加え、回転軸は慣性により微速にて回転させ、更にメインシリンダ13で軸支持体12を移動させる。このステップにおいては、軸支持体12と一緒にスプライン軸11が供試体3側に移動する。このとき、4本の芯出しピン23の円錐部23bの先端が治具3aの表面に突き当てられるが、上述のとおりサブエアーシリンダ24の弁は開放されているので、更に軸支持体12をメインシリンダ13で供試体3側へ移動することが可能である。
図7に示すステップ5は、図4に示す。ステップ5においては、ピストン24bが、センサS5の位置を通過したことを検出する。その検出により、スプライン軸が完全に結合完了したものと判断する。しかし、ピストン24bが、センサS5の位置を通過したことが検出されなかった場合には、各シリンダを待機位置まで戻し、ステップ1から再び自動結合をやりなおす。また、軸支持体12は重量(慣性)が大きいために、センサS5の位置検出と同時に完全に停止することができないため、スプライン軸11の先端面が芯出しリング22の底面部22bに接触してしまうことがある。この接触した状態のまま、スプライン軸を回転させると、スプライン軸11の先端面と芯出しリング22の底面部22が摺れてしまう問題がある。
【0031】
そこで、ステップ6(図5)に示すように、メインエアーシリンダ13の弁を開放し、ステップ4で開放したサブエアーシリンダ24の弁に再びエアーを供給して、軸支持体12およびスプライン軸11を供試体3側から離間する方向に、センサS5がピストン24bを再度検出するまで移動させる。この動作により、スプライン軸11の先端面と芯出しリング22の底面部22bとの間に隙間G1を発生させて、両者を非接触状態にする。
【0032】
図7に示すステップ7は、図6においては、芯出しピン23を芯出しリング22から離間する方向にサブエアーシリンダにエアーを供給してセンサS3がピストン24bを検出するまで移動させる。その動作によって、芯出しピン23と芯出しリング22との間に隙間G2を発生させ、両者を非接触状態にする。
そして、ステップ8で試験を開始する。
上述したように、隙間G1によりスプライン軸11の先端面と芯出しリング22の底面部22bを非接触状態にするとともに、隙間G2により芯出しピン23と芯出しリング22を非接触状態にしたので、これらの間で摩擦抵抗を発生させることなくエンジンの試験を行なうことが可能になる。
図8は第2実施例を示す。上記第1実施例では、芯出しピン23の先端部をエンジンカバー3aに接触させる構成にしたが、この実施例では、図8に示すように、芯出しピン23の円柱部23aにフランジ部23cを形成し、該フランジ部23cを芯出しリング22の円筒部22aの先端面に接触させる構成にしても良い。芯出しピン23の先端部をエンジンカバー3aに接触させる場合は、芯出しピン23の先端部に接触圧が集中するので芯出しピン23の先端部やエンジンカバー3aにダメージを与える虞があるが、フランジ部23cを芯出しリング22の円筒部22aの先端面に当接させる場合は、接触圧を芯出しリング22の先端面全体に分散させることができる。また、フランジ部23cと芯出しピン23の接触面にタクトセンサ26を配置することにより、スプライン軸7がスプライン軸11内に嵌合したことを検出することができる。他の構成は、第1実施例の場合と同じであるので重複する説明は省略する。
【0033】
なお、上記各実施例においては、軸支持体駆動部材およびピン駆動部材に、エアーシリンダを使用した場合を示したが、軸支持体駆動部材およびピン駆動部材の両方あるいは一方にサーボモータ又は油圧シリンダを使用してもよい。また、芯出しピン23の本数は、4本に限らず3本以上であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
実施の形態においては、エンジンとダイナモメータを連結する場合を例にとって説明したが、本発明の軸連結補助装置および軸連結方法は、エンジンとダイナモメータを連結する場合に限らず、広く2つの回転軸をスプライン軸の嵌合により連結する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…架台
2…ラバーマウント
3…エンジン(供試体)
4…回転軸
5…ダイナモメータ
6…回転軸
7…スプライン軸
8…第1ユニバーサルジョイント
9…伸縮可能な軸
10…第2ユニバーサルジョイント
11…スプライン軸
12…軸支持体
13…軸支持体駆動部材(メインエアーシリンダ)
21…軸連結補助装置
22…芯出しリング
23…芯出しピン
23a…円柱部
23b…円錐部
23c…フランジ部
24…ピン駆動部材(サブエアーシリンダ)
24a…(サブエアーシリンダ)ロッド
24b…(サブエアーシリンダ)ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌まり合う一対のスプライン軸を備えた回転軸であって、これらのスプライン軸の嵌合により一対の回転軸を連結する軸連結装置において、
一方のスプライン軸の外側に、該スプライン軸と同心状に芯出しリングを配置するとともに、他方のスプライン軸の外側には、前記芯出しリングの外周面に係合して、一方のスプライン軸の軸芯と他方のスプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させる芯出しピンを設置したことを特徴とする軸連結補助装置。
【請求項2】
前記芯出しピンは、円柱部と円錐部とから構成されており、前記円柱部は芯出しリングの外周面に係合して該芯出しリングの位置決めを行ない、前記円錐部は円柱部の先端に設けられて、前記芯出しリングの外周面に当接することにより一対のスプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させることを特徴とする請求項1に記載の軸連結補助装置。
【請求項3】
前記円柱部は、前記芯出しリングの外周面に係合したときに、前記芯出しリングの先端面に接触するフランジ部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の軸連結補助装置。
【請求項4】
前記互いに連結しようとする一対の回転軸のうちの一方の回転軸は、供試体の回転軸であり、他方の回転軸は、前記供試体の試験を行なう試験装置の回転軸であり、前記供試体の回転軸に一方のスプライン軸が取り付けられ、前記試験装置の回転軸には他方のスプライン軸が取り付けられていて、該他方のスプライン軸は、軸支持体に取り付けられ、該軸支持体は、軸支持体駆動部材で軸方向に移動可能になっているとともに、前記芯出しピンは、それぞれピン駆動部材で軸方向に移動可能になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軸連結補助装置。
【請求項5】
前記ピン駆動部材は、前記少なくとも3本以上の芯出しピンを個々に前記供試体側に前進させて前記芯出しリングの外周面に係合させて前記両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させ、
前記軸支持体駆動部材は、前記軸支持体を前記供試体側に前進させて前記両スプライン軸を嵌合させることを特徴とする請求項4に記載の軸連結補助装置。
【請求項6】
前記軸支持体駆動部材およびピン駆動部材は、エアーシリンダであることを特徴とする請求項4または5に記載の軸連結補助装置。
【請求項7】
前記軸支持体駆動部材およびピン駆動部材は、サーボモータ又は油圧シリンダであることを特徴とする請求項4または5に記載の軸連結補助装置。
【請求項8】
供試体の回転軸に一方のスプライン軸を取り付け、該一方のスプライン軸の外側に同心状に芯出しリングを配置する一方、前記供試体の試験を行なう試験装置の回転軸に他方のスプライン軸を取り付け、該他方のスプライン軸を取り付けた軸支持体に複数本の芯出しピンをピン駆動部材で軸方向に移動可能に取り付けるとともに、前記軸支持体を、軸支持体駆動部材で軸方向に移動可能とし、前記複数本の芯出しピンをピン駆動部材で前記供試体側に前進させ、前記芯出しリングの外周面に係合させて前記両スプライン軸の軸芯を嵌合可能な範囲に一致させた後に、前記他方のスプライン軸を前進させて前記両スプライン軸を嵌合することを特徴とする軸連結方法。
【請求項9】
待機位置において複数本の芯出しピンをサブエアーシリンダにより前記試験装置側のスプライン軸の先端面よりも供試体側に突出させるステップと、
前記複数本の芯出しピンを供試体側に突出させた状態でメインエアーシリンダにより軸支持体を供試体側に移動させ、前記芯出しリングおよび複数本の芯出しピンで両スプライン軸の軸芯のズレを解消するステップと、
全ての芯出しピンが芯出しリングの外周面に係合して両スプライン軸の軸芯が嵌合可能な範囲に一致したかを検出するステップと、
両スプライン軸の軸芯合わせ終了後にサブエアーシリンダの弁を開放し、さらにメインシリンダで軸支持体を移動させて、両スプライン軸を嵌合させるとともに、試験装置側のスプライン軸の先端面を芯出しリングの底面部に接触させるステップと、
試験装置側のスプライン軸の先端面と芯出しリングの底面部との間に隙間を発生させ両者を非接触状態にするステップと、
芯出しピンと芯出しリングとの間に隙間を発生させ両者を非接触状態にするステップと、を備えたことを特徴とする請求項8に記載の軸連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−257286(P2011−257286A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132624(P2010−132624)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】