説明

軽量成形樹脂用粒材および軽量成形樹脂組成物

【課題】高粘性の樹脂成分に配合する場合に、粒子が壊れ難く、かつ部分的に亀裂などが生じても中空状態を保持することができ、耐熱性が高く、エンジニアリングプラスチック等の成形樹脂に使用することができ、しかも従来品よりも少ない添加量で十分な軽量効果を得ることができる成形樹脂用の粒材と、その軽量成形樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成形樹脂に配合されるシリカ質の中空粒子であって、平均粒径5μm以上であり、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とし、好ましくは、平均粒径5μm〜20mm、8MPa静水圧浮揚残存率25%以上、容重0.05〜0.35g/cm3である成形樹脂用粒材とこの粒材を含有する軽量成形樹脂組成物樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリングプラスチックなどの成形樹脂に混合して該樹脂を軽量化する粒材と、軽量化した成形樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂の軽量化がさまざまな方法で図られており、例えば、樹脂組成物中に気泡を混合させたり、無機質の粒子や樹脂製の粒子を配合する方法が知られている。無機質の粒子を用いる例としては、シラスを発泡させたシラスバルーンやガラスバルーンを用いるものがある(例えば特許文献1、2、3)。また、樹脂製の粒子を用いる例としては、熱膨張性マイクロカプセルやその発泡体を樹脂に混合した組成物が知られている(例えば特許文献4)。
【0003】
シラスバルーンやガラスバルーン等などの無機質の中空粒子を用いるものは、この粒子を樹脂に混練する際に破損しやすく、中空状態を維持できずに十分に軽量化を図れない場合がある。例えば、樹脂の粘度が高いためミキサを用いて粒子を混合すると、混練時にせん断応力が粒子にかかり、中空粒子が破損して内部に樹脂が浸入する。とくに、これらの粒子は内部が単一の空間であるので、一部が破損すると、内部に樹脂が浸入し、中空状態を維持できない。
【0004】
また、樹脂性の中空粒子を使用した場合には、これらは高温で軟化するので、耐熱性が確保できない。従って、エンジニアリングプラスチックなどの耐熱性を必要とする成形樹脂には使用できない。また、樹脂性の粒子は長時間高熱でさらされると、中空状態を維持できず、性能劣化や変形を生じる。さらに、樹脂に対する相性が不良であるため使用に適さないものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−216212号公報
【特許文献2】特開平11−166092号公報
【特許文献3】特開平6−345953号公報
【特許文献4】特許第3067932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、成形樹脂の軽量化における上記問題を解決したものであり、高粘性の樹脂成分に配合する場合に、粒子が壊れ難く、かつ部分的に亀裂などが生じても中空状態を保持することができ、しかも耐熱性が高く、エンジニアリングプラスチック等の成形樹脂に使用することができ、しかも従来品よりも少ない添加量で十分な軽量効果を得ることができる成形樹脂用の粒材と、その軽量成形樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す構成によって上記問題を解決した成形樹脂用粒材と、該粒材を含有する軽量成形樹脂組成物に関する。
〔1〕成形樹脂に配合されるシリカ質の中空微粒子であって、該中空粒子の平均粒径が5μm以上であり、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とする成形樹脂用粒材。
〔2〕 中空粒子の平均粒径が5μm〜20mmである上記[1]に記載する成形樹脂用粒材。
〔3〕中空粒子の8MPa静水圧浮揚残存率が25%以上である上記[1]または上記[2]に記載する成形樹脂用粒材。
〔4〕中空微粒子の容重が0.05〜0.35g/cmである上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する成形樹脂用粒材。
〔5〕隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されている内部空間を有する中空粒子を100個中60個以上含む上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する成形樹脂用粒材。
〔6〕上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する成形樹脂用粒材を含有してなる軽量成形樹脂組成物。
〔7〕単位重量が0.8g/cm以下である請求項6に記載する軽量成形樹脂組成物。
〔8〕樹脂成分100体積部に対して中空粒子を5〜150体積部混合してなる上記[6]または上記[7]に記載する軽量成形樹脂組成物
【発明の効果】
【0008】
本発明の成形樹脂用粒材(中空粒子)は、粒子の内部空間に隔壁を有するので、隔壁のない単一空間からなる中空粒子に比較して粒子の強度が大きい。このため粘度の高い樹脂に中空の粒材を混合して攪拌する際に、強度の低い粒材は攪拌によるせん断によって破壊され易いが、本発明の粒材は強度が大きいので破壊され難く、中空状態を維持したまま均一に混合することができ、耐久性および軽量性に優れた成形樹脂を得ることができる。特にエンジニアリングプラスチック等の成形樹脂は成形圧力が加わるので強度の大きな中空粒材が必要であり、本発明の中空粒子は成形樹脂の混合する粒材として好適である。
【0009】
また、本発明の樹脂用粒材は、隔壁によって区切られた独立気泡からなる複数の内部空間を有するので、粒材に局部的な亀裂や破損が生じても、残りの内部空間によって中空状態が維持されるので、軽量性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の樹脂用粒材は、成形樹脂に配合されるシリカ質の中空粒子であって、平均粒径5μm以上、好ましくは平均粒径5μm〜20mmであり、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とする成形樹脂用粒材である。
【0011】
本発明の中空粒子(中空粒材)は、粒子の内部空間が隔壁によって隔てられた互いに連通しない独立気泡によって形成されているので、部分的に亀裂が生じても、樹脂が浸透する範囲が限定される。また、上記独立気泡は粒子表面に開口しない密閉気泡であるので、加圧下においても樹脂が内部に入り込まず、中空状態を維持することができる。
【0012】
加圧下の指標として静水圧浮揚残存率が知られている。静水圧浮揚残存率は、加圧していない常圧下における水中浮揚率(浮水率)W1に対する静水圧で加圧した粒子の加圧後の常圧下における水中浮揚率W2の比率〔浮揚残存率=W2/W1×100(%)〕である。
【0013】
本発明の中空粒材は、具体的には、好ましくは、8MPa静水圧下での浮揚残存率が25%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。この浮揚残存率が25%を下回るものは粒子強度が低く、かつ粒子の内部空間が独立気泡によって形成されている割合が少ない。なお、本発明の中空粒材について、粒子の内部空間が密閉された独立気泡によって形成されているとは、例えば、粒子を水に混合し浮揚したものであるものをいう。
【0014】
本発明の中空粒材は、粒子内部の空間が表面に開口のない独立気泡によって形成されているので吸水率が小さい。本発明の粒材は、好ましくは、吸水率が3%以下ある。また、本発明の中空微粒子は大きな内部空間を有するので軽量であり、水中での浮揚率が高い。さらに、強度が大きいので加圧下でも亀裂が生じ難く、部分的に亀裂が生じても内部空間が隔壁によって区切られているので水が浸透する範囲が限られ、加圧水下での浮揚残存率が格段に高い。
【0015】
本発明の中空粒材は、内部空間に隔壁を有するものの割合が、100個中60個以上(60%以上)であるものが好ましく、約70%以上がより好ましい。内部空間に隔壁を有する粒子数がこれより少ないと、粒子の強度が低いので樹脂に混合したときに破損する割合が多くなり適当ではない。
【0016】
さらに、本発明の中空粒材は内部空間の隔壁が2個以上あるものが好ましい。複数の隔壁を有することによって、粒子の強度がさらに向上する。具体的には、例えば、圧縮強度15MPa以上である。従って、この中空粒子からなる本発明の中空粒材は、樹脂と混合する際、特に工業的な生産規模で機械的に混合する場合でも、粒子の強度が大きいので壊れ難く、中空構造が維持されるので、軽量性を維持することができる。なお、強度が小さい粒材は樹脂と混合する際に壊れやすく、中空構造を維持できないので、軽量効果を得るためには粒材の使用量を多くしなければならず、また壊れた粒子やその破片が樹脂強度等の性能を低下させる懸念がある。
【0017】
本発明の中空粒材はシリカ質粒子であり、シリカ(SiO2)を主成分とする無機系材料から製造することができる。具体的には、シラス、真珠岩、黒曜石、松脂岩などのシリカ含有量70〜90%の天然ガラス質岩石を所定の粒径に粉砕し、該岩石粒子を900℃〜1500℃に加熱して発泡させて中空粒子にし、この中空粒子から内部空間が隔壁によって区切られたものを選択することによって製造することができる。また、本発明の樹脂用粒材は、上記天然ガラス質岩石に限らず、例えば、岩石粉末に発泡原料を混合して造粒し、加熱発泡させることによって製造することができる。
【0018】
本発明の中空粒材は、化学成分としてのSiO2含有量(シリカ含有量)が65〜90質量%のものが好ましく、70〜80質量%のものがより好ましい。シリカ含有量が65質量%未満であると、高強度で発泡し難く、ガラス質の中空構造体を得るのが難しくなる。さらに不純物が多く含有されやすくなるため、均一な発泡もできなるので好ましくない。一方、シリカ含有量が90質量%を超えると融点が高くなるため発泡温度が高くなり、もしくは高温でも発泡しなくなるため適当ではない。
【0019】
なお、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されており、内部に大きな空間を有するシリカガラス質の粒子は、光学顕微鏡によって内部空間や隔壁構造を確認することができる。
【0020】
本発明の中空粒材は、隔壁によって区切られた複数の内部空間を有するので、樹脂に混合する際に、せん断によって表面の一部が破壊されても、残りの内部空間によって中空構造が維持されるので、軽量性を維持することができる。
【0021】
一方、粒子表面に開口しない閉口気孔を有する粒子であっても、内部空間が連続気泡によって形成されている粒子は、部分的に亀裂が生じると、粒子内部の空間全体に樹脂が浸透して充満し、中空状態を維持できなくなるので樹脂の軽量化が不十分になる。
【0022】
本発明の中空粒材は平均粒径5μm以上であり、5μm〜20mmが好ましく、5μm〜10mmがより好ましい。平均粒径が5μmより小さいと粒子どうしの凝集が起こりやすく、均一に分散し難くなる。一方、平均粒径が20mmを超える粒径の粒子は製造が困難であり、また用途も限られる。
【0023】
本発明の中空粒材は、容重0.05〜0.35g/cm3であるものが好ましい。容重が0.05g/cm3より小さいと粒子の強度が小さくなり、一方、容重が0.35g/cm3より大きいと粒子の単位重量が増して軽量化が不十分になる。
【0024】
本発明の中空粒材は成形樹脂に混合して用いられる。樹脂に混合する粒材の量は制限されないが、一般的には、樹脂中の粒材の含有量が20質量%以上であると機能が十分発現されるので好ましい。
【0025】
本発明の中空粒材を含有する樹脂はエンジニアリングプラスチック等の成形樹脂である。成形樹脂は各種部材を形成する樹脂として用いられ、一般に押出し成形や鋳造成形などの成形時に大きな加圧を受ける。このため、樹脂に混合した中空粒材の強度が小さいと粒材が破壊され、または押し潰されて中空状態を維持できなくなる。本発明の中空微粒子は内部隔壁を有するので粒子の強度が大きく、樹脂を成形する際の加圧下でも破壊され難く、押し潰され難いので中空状態を維持することができる。
【0026】
本発明の成形樹脂としては、具体的には、例えば、以下の樹脂を用いることができる。 ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の熱硬化性樹脂のほか、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック、超高分子量ポリエチレン、非晶ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0027】
本発明の中空粒材を含有する軽量成形樹脂組成物は、さらに用途に応じた添加剤を含有することができる。添加剤としては、滑剤、離型材、可塑剤、安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、補強材、充填剤、硬化剤、その他の添加物などを含むことができる。
【0028】
本発明の軽量成形樹脂組成物は、上記成形樹脂にシリカ質微粒子を混合して製造される。その製造方法としては、圧縮成型、射出成型、ブロー成形、シート成形、チューブ成形などを利用することができる。
【0029】
本発明の軽量成形樹脂組成物は、樹脂に含有される中空微粒子がシリカ質であるので、水中や大気雰囲気のほかに、酸やアルカリの環境下で劣化し難く、耐久性に優れている。特に、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等に使用する場合など、樹脂性の中空微粒子では使用できない場合でも、本発明のシリカ質の中空粒子は耐熱性に優れているため使用できる。
【0030】
本発明によれば、例えば、単位重量が0.8g/cm3以下、好ましくは0.75g/cm3以下であって、引張り強度が20MPa以上、好ましくは24MPa以上の軽量成形樹脂を得ることができる。さらに、400℃に加熱しても上記単位重量および引張り強度を維持する軽量成形樹脂を得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。なお、粒子の平均粒径、容重、静水圧浮揚残存率、隔壁の割合、平滑性、単位重量、引張強さは以下の方法によって測定した。
【0032】
〔容重〕
一定容積S(cm3)の容重枡に試料を充填し、開口からはみ出た部分をすり切り、全体の重量G1を測定し、これから容器の重量G2を差し引いて粉末重量G3(g)を求め、上記容積Sに対する粉末重量G3〔G3/S〕g/cm3を容重とした。
〔平均粒径〕
600μmの篩で粒子をふるい、600μm篩通過粒子をレーザー回折粒度分布測定装置を用い、日機装社製測定器(マイクロトラック)によって測定した。600μm篩残留粒子は、1.2mm、2.5mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mmの篩でふるって各質量を測定し、平均粒径を算出した。
【0033】
〔隔壁粒子の割合〕
プレパラート上にアルコールで分散させた試料を滴下し、均一にならして乾燥させる。これを透過型の顕微鏡で観察し、100個中の隔壁がある個数をカウントした。
【0034】
〔静水圧浮揚残存率〕
試料を試料容器と共に水で満たされた加圧容器内へ入れ、8MPaで1分間加圧する。加圧後、加圧した試料の全量を取り出してメスシリンダー入れ、水200mlを加えて静置する。静置後、水の濁りが無くなってきたら、上記浮水率測定方法に準じた方法で浮いた試料粒子の体積を計測し、8MPa加圧下での加圧浮揚率(浮水率)W2とする。加圧試料と同量の試料について、加圧せずに常圧下とした以外は同様の測定方法で測定し、非加圧下の浮揚率(浮水率)W1とする。加圧試料浮揚率W2/非加圧浮揚率W1×100の式に基づいて静水圧浮揚残存率を算出した。
【0035】
〔樹脂組成物の単位重量〕粒材を混合した成形樹脂組成物について容積と質量を測定し、単位重量を求めた。
〔引張強さ〕ポリプロピレン100重量に対して中空微粒子を20質量部混合して加熱成形し、規格(ASTM D638)に準じて測定した。
〔曲げ強度〕JIS規格(JIS K 7221-2)に準じて測定した。
【0036】
〔実施例1〕
真珠岩〔化学成分含有率(質量%)SiO2 74%、Al2O3 13%、Fe2O3 1%、CaO1%、MgO 0.1%、Na2O 3.5%、K2O 4.4%、ig.loss 2.2%〕を発泡させてシリカ質中空粒子を製造し、容重0.16〜0.35g/cm3、平均粒径10〜295μmのものを選択した(本発明品:No.A1〜A7)。これらの中空粒子について、容重、平均粒径、隔壁粒子の割合、静水圧浮揚残存率を表1に示した。また、ポリプロピレン100重量部に対して表1の中空粒子20質量部を混合し250℃に加熱成形して樹脂組成物を形成し、この単位重量、引張り強さを測定した。この結果を表1に示した。
【0037】
表1に示すように、平均粒径5〜295μmおよび容重0.16〜0.35g/cm3のシリカ質中空粒子(本発明の粒材:A1〜A7)を含有する樹脂組成物は、単位重量が0.8g/cm3以下であって大幅に軽量化され、さらに引張り強度も20MPaを上回り、十分な強度を有している。
【0038】
【表1】

【0039】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして隔壁のある中空粒子を製造し、平均粒径が本発明の範囲から外れる試料(B2:比較試料)、容重が本発明の好ましい範囲を外れる試料(B3:参考試料)、静水圧浮揚残存率と隔壁の割合が本発明の好ましい範囲を外れる試料(B1:参考試料)を選択した。これらの中空微粒子20質量部をポリプロピレン100重量部に対して混合し250℃に加熱成形し、樹脂組成物を形成し、この平滑性、単位重量、引張り強さを測定した。この結果を表2に示した。
【0040】
表2に示すように、粒材B2を含有する樹脂組成物は、粒材B2の平均粒径が小さいために分散が不十分になり、凝集部分に応力が集中して樹脂組成物の強度が低下する傾向がある。また、隔壁粒子の割合が少ない粒材B1を含有する樹脂組成物は単位重量が大きい。これは粒材を樹脂に混合するときに粒材の強度が低いために破損しやすく、中空微粒子の割合が減少し、また破損部分から粒材に内部に樹脂が侵入して中空状態が失われるためである。この粒材B1は静水圧残存率が24%と低い。さらに容重が大きい粒材B3を含有する樹脂組成物も単位重量が大きい。
【0041】
【表2】

【0042】
〔実施例2〕
真珠岩〔化学成分含有率(質量%)SiO2 74%、Al2O3 13%、Fe2O3 1%、CaO1%、MgO 0.1%、Na2O 3.5%、K2O 4.4%、ig.loss 2.2%〕を発泡させてシリカ質中空粒子を製造し、容重0.07〜0.16g/cm3、平均粒径1〜18mmのものを選択した(本発明品:No.E1〜E4)。これらの中空微粒子について、容重、平均粒径、静水圧浮揚残存率を表5に示した。これらの中空微粒子とエポキシ樹脂を体積比で1:1で混合成形し、板状の樹脂組成物(25×100×350cm)を形成し、この単位重量、曲げ強さを測定した。この結果を表3に示した。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示すように、平均粒径1〜18mmおよび容重0.07〜0.18g/cm3のシリカ質中空粒子(本発明の粒材:E1〜E4)を含有する樹脂組成物は、単位重量が0.8g/cm3以下であって大幅に軽量化され、さらに曲げ強度も300kPaを上回り、十分な強度を有している。
【0045】
〔実施例3〕
実施例1の中空粒子A4を用い、ポリプロピレン100体積部に対して、表4に示す量の中空粒子A4を混合し250℃に加熱成形して樹脂組成物を製造し、この樹脂組成物について、単位重量、引張り強さを測定した。この結果を表4に示した。中空粒子量が3体積%では単位重量が大きく軽量効果が得られない(D1)。また、中空微粒子の混合量が180体積%では引張り強度が著しく低下する(D5)。従って、中空微粒子A4をポリプロピレン樹脂に混合して軽量化する場合には、中空微粒子の混合量は5〜150体積%が適当である。
【0046】
【表4】

【0047】
〔実施例4〕
実施例1の中空粒子A3を20質量部に対して、ポリカーボネートペレット100重量部を混合し、270℃に加熱して射出成型し、単位重量および引張り強度を測定した。また冷却後に樹脂組成物の断面を調べ、樹脂中の中空微粒子の状態を観察した。この結果を表5に示した(表5のA3)。
【0048】
〔比較例2〕
無機系の中空微粒子としてフライアッシュバルーン(石炭灰粉末にSiC系発泡助剤を0.3質量%添加し、1150℃で加熱発泡させた試製品)を使用し(表5のC1)、有機系の中空微粒子として松本油脂性社製品(商品名マイクロスフェア)を使用した(表5のC2)。これらの中空微粒子は何れも粒子内部は単一気泡によって形成されている。この樹脂組成物について実施例4と同様の射出成型を行って、単位重量および引張強度を測定した。また冷却後に樹脂組成物の断面を調べ、樹脂中の中空微粒子の状態を観察した。この結果を表5に示した。
【0049】
表5に示すように、樹脂組成物中の中空微粒子A3は大部分が中空状態を維持しており、従って単位重量も軽量であり、引張強さも中空による低下が小さい。一方、フライアッシュバルーン(C1)を含有する樹脂組成物では大部分の粒子が破壊されており、またマイクロスフェア(C2)を含有する樹脂組成物では、大部分の粒子が潰れており、従って単位重量が増加し、形状不良を生じている。C1およびC2は引張り強さは大きいが、単一気泡であるため強度が弱く、このためC1は射出成型時に気泡が破損し、樹脂製のC2は加熱時に溶融して圧潰し、内部気泡を維持することができない。
【0050】
【表5】

【0051】
〔参考例〕
実施例1と同様の方法で隔壁のある中空粒子を製造し、容重または静水圧浮揚残存率が本発明の好ましい範囲を外れる試料(No.F1〜F2)を選択した。F1は容重0.04g/cm3、F2は容重が0.50g/cm3であり、何れも本発明の好ましい範囲から外れる。これらの中空粒子とエポキシ樹脂を体積比で1:1で混合成形し、板状の樹脂組成物(25×100×350cm)を形成し、この単位重量、曲げ強さを測定した。この結果を表6に示した。
【0052】
容重が小さいF1を含有する樹脂組成物は、静水圧残存率も小さく、樹脂混合中に破損するため、樹脂の単位体積重量も重くなる。また,まげ強度も著しく小さい。また容重が大きいF2を含有する樹脂組成物は,単位質量が大きい。
【0053】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形樹脂に配合されるシリカ質の中空微粒子であって、該中空粒子の平均粒径が5μm以上であり、内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されていることを特徴とする成形樹脂用粒材。
【請求項2】
中空粒子の平均粒径が5μm〜20mmである請求項1に記載する成形樹脂用粒材
【請求項3】
中空粒子の8MPa静水圧浮揚残存率が25%以上である請求項1または請求項2に記載する成形樹脂用粒材。
【請求項4】
中空粒子の容重が0.05〜0.35g/cm3である請求項1〜請求項3の何れかに記載する成形樹脂用粒材。
【請求項5】
隔壁によって区切られた複数の独立気泡によって形成されている内部空間を有する中空粒子を100個中60個以上含む請求項1〜請求項4の何れかに記載する成形樹脂用粒材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載する成形樹脂用粒材を含有してなる軽量成形樹脂組成物。
【請求項7】
単位重量が0.8g/cm3以下である請求項6に記載する軽量成形樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂成分100体積部に対して中空粒子を5〜150体積部混合してなる請求項6または請求項7に記載する軽量成形樹脂組成物

【公開番号】特開2011−149016(P2011−149016A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285984(P2010−285984)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】