説明

軽金属材料及びその鋳造製造法

【課題】軽量で非磁性の金属であるアルミニウム合金あるいはマグネシウム合金の表層近くに磁性材料層を偏在させて形成し、本来磁性のないこれら合金を強磁性材料とすることができる軽量金属材料の提供を目的とする。
【解決手段】
アルミニウム又はマグネシウムの溶湯と消磁した強磁性体又は未着磁強磁性体の微小固体及び/又は粉体材料を分散混合させた混合溶湯を鋳型内に注湯することで、単層複合又は多層複合構造を持った消磁性体材料を軽金属材料の表層近くに偏在させ、必要によっては磁場配向を加え急冷凝固することにより強磁性体の前駆体である軽金属複合材料を着磁又は消磁−着磁することで軽金属合金材料を強磁性体材料とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレクトロニクス材料などに用いられるマグネシウム又はアルミニウム系など、非磁性体(常磁性体)軽金属材料中に消磁性体材料を偏在させた強磁性体軽金属性材料前駆体及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁性材料は通信機、回転機、各種の音響機器、医療機器など非常に広範囲な分野で使われている。これら永久磁性材料としては古くから知られている鉄系磁石、フェライト系磁石、アルニコ系磁石、希土類系磁石などが用いられてきたが近年では新希土類系磁石の高性能磁性材料が見出され、エレクトロニクス製品の小型化が益々進むようになってきた。
【0003】
これらの磁性材料は多くの場合に粉末冶金法、粉末焼結法などで製造されるため微粉末状で得られ、これを実用的に利用するにはこれら粉末を樹脂で結合した、いわゆるボンド磁石とし、これをシート状、ローラー状、ロータ磁石などに加工して各種用途に利用している。しかしながら、これらボンド磁石は耐熱性が低いこと及び機械的強度に不足があるという欠点を有している。またこれら粉末材料を耐熱性があり、機械強度の優れたバルク磁石とする方法も知られているが、それらはホットプレス法、ロール圧延法などでいずれも極めて高温かつ高度な加工法であり、より簡易な加工法が求められている状況である。
【0004】
アルミニウムなど非磁性の軽量金属材料に磁性を付与させる方法については余り多くの文献はないが、特許文献1に記載のような方法が提案されている。そこにはマグネシウムを基にした軽金属中に鉄の粉末を固相で機械的に分散させることによって磁性材料を得る方法が開示されている。しかし、この方法で得られる材料はマグネシウム表面の耐食性が全くなく、実用には供し得ないものが得られる。またマグネシウムと鉄との溶融混合による複合化は不可能であったと説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平9−302425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軽量非鉄金属であるアルミニウム合金あるいはマグネシウム合金は軽量で耐熱性があり、剛性にも優れているが強磁性材料とすることができないのが問題点である。本発明はこれら材料に磁性材料層を偏在形成し、本来、非磁性体のこれら軽金属を強磁性体に変化させることのできる、軽量化され、そして耐熱性があり、機械的強度にも優れた強磁性材料前駆体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非磁性体(常磁性体ともいう)軽金属材料中に非磁性体軽金属の融点以上の融点を有する消磁性体材料を微小個体及び/又は粉体状で、分散混合している混合溶湯を鋳型内に注湯し、鋳型内で冷却凝固させ消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している混合層を形成してなる、消磁磁性体材料が軽金属材料中に偏在している消磁性体材料を有する軽金属材料及びその鋳造製法である。
ここで得られる軽金属材料は強磁性材料の前駆体であり、これを一旦消磁した後、着磁する方法と着磁のみ行う方法により軽量金属を強磁性体とすることが容易である。
【0008】
本発明で用いられる、非磁性体軽金属材料は常磁性軽金属材料ともいわれるものであって、アルミニウム、マグネシウムまたはこれらの合金を実質的に指しており、特に溶湯とするときの扱い易さなどの点からアルミニウムが特に好ましい。
【0009】
また、本発明で用いる消磁性体材料とは消磁強磁性体材料又は未着磁強磁性体材料を意味しており、これらには、公知の各種強磁性材料を消磁したもの、または着磁をしていない強磁性材料が挙げられる。例えばフェライト系、コバルト系、アルニコ磁石、Fe−Co−Ni−Al系磁石、Fe−Cr−Co系磁石、Sm−Co系磁石、Nb−Fe−B系磁石、Sm−Fe−N系磁石など各種の高性能磁性粉末及び微小個体の消磁性体が用いられる。これらの消磁性体材料の融点は本発明で用いられる非磁性体軽金属材料の融点よりも高いものであり、消磁性体材料を含む非磁性体軽金属材料の混合溶湯中では微小個体状及び/又は粉体状で存在している。
【0010】
本発明の軽金属材料中の消磁性体材料は、出来るだけ表面近くに偏在させることが好ましく、これによって少量の消磁性体材料の混入で強力な磁力を発揮させることが出来る前駆体とすることができる。表面層近くに消磁性体材料を偏在させたる製法としては、非磁性体軽金属材料に微小個体状及び/又は粉体状の消磁性体材料を混合し、溶融又は流動可能な半溶融の状態とした混合溶湯を、鋳型内に導入し、導入した溶融及び/又は半溶融混合物を静置することによって該混合物中の磁性材料を鋳型内側周囲方向に比重差又はその他の方法で引き寄せて軽金属材料中の表面層部分近くに偏在させた後に急速冷却し、鋳型を取り外すことによって、表面層近くに消磁性体材料を有する軽金属材料とするものである。
【0011】
消磁性体材料を軽金属材料中の表面層部分近くに多く偏在させたる方法として比重差による自然偏在させる方法の他に、鋳型の外面に磁石を置くことにより溶湯中の粉体状の消磁性体材料を鋳型内側周囲方向に引き寄せる方法がある。
【0012】
鋳型の内部に磁場を形成し、軽金属材料中の消磁性体材料に磁場配向を与えることよって磁束密度のアップした目的物とする製造法も好ましい方法である。この製造法は、溶湯及び混合溶湯が半溶融状態の間に鋳型の外面に単独または対称的に逆の極性磁石及び/又は電磁石を置くことにより混合溶湯中の消磁性体材料に異方性が与えられ、着磁後の強磁性体材料の磁力に良い変化をもたらす。また、磁場配向を行った溶湯を急冷し常温にて放置した後に得られるワークにエナメル線または絶縁処理したアルミニウム線を規則正しく巻き、先端より電気を流すと電磁石として用いることも出来る。
【0013】
絶縁処理したアルミニウム線とは無機物または有機物による被膜を形成したものであって、無機物としてはアルミニウム化成処理及び/又は陽極酸化処理による皮膜形成で、有機物としてはワニス、シリコン、ゴム、アクリル、ウレタン、ポリエステル、フッ素化合物の単体または複合及びその誘導体が挙げられ、この有機物中に浸漬する方法と、上記有機物の電気泳動液中を連続的に潜らせたり、または一定量をバッチ式にて電気泳動法を行った後、常温または加温乾燥により薄く、絶縁耐力が安定し、しかも柔軟性があることが必要である。
【0014】
消磁性体材料を表面近くに偏在させることが好ましいが、一方で消磁性体材料が表面に直接露出していると局部電池を形成し、軽金属材料の腐食が促進される欠点がある。また、アルミニウム、マグネシウムなどにおいて表面腐食を防ぐための有力な手段である陽極酸化処理を施すことが出来ない。このため、鋳型内へ軽金属材料と粉体状もしくは微小個体状の消磁性体材料との混合溶湯を鋳込む前に、非磁性体軽金属材料のみからなり消磁性体材料を含まない溶湯を鋳型内に鋳込んで表面層を形成することが好ましい。この表面層用の溶湯が凝固する前に非磁性体軽金属材料と消磁性体材料との混合溶湯を鋳型内に導入し、その後にこれを冷却凝固することによって消磁性体材料が表面近くに偏在しているが表面には露出していない少なくとも二層からなっている消磁性体含有の軽金属材料とすることが可能になる。また、非磁性体軽金属のみからなる表面層の対向表面に同じ材料の表面層を形成したサンドイッチ3層複合構造とすることも好ましい。ここで得られる軽金属材料は強磁性体材料の前駆体であり、これを安定した性能とする為に一旦消磁した後、着磁させる方法と着磁のみおこなうことにより強磁性を有する軽金属材料とすることができる。
【0015】
本発明において表面層用の溶湯を鋳型に注湯後、その凝固前に次の混合溶湯を注湯することが好ましいが、それは表面層とその後の混合溶湯との結合を完全とするためであって、凝固前とは半凝固又は完全凝固前の固相状態を指すものであって、このためには混合層を形成するための混合溶湯を導入する際に表面層用溶湯と混合溶湯の注湯における時間差を5秒以上60分未満とするか、及び/又は注湯した表面層用溶湯の温度がその融点の95〜70%の範囲の温度になったときに混合溶湯を注湯することが好ましい。表面層の厚さは表面層形成用として導入する溶湯の量で調節可能であるが、冷却凝固後に鋳型から取出した製品の表面を平滑にするための研磨で除去される厚みを考慮して、導入する混合溶湯層の厚さの0.1〜50%未満となる様にすることが好ましい。表面研磨した後の最終製品とした場合の、消磁性体材料を含まない表面層の厚さは50μm程度以上あれば充分である。
【0016】
本発明において混合溶湯中の消磁性体材料の割合は軽金属材料の42wt%が限度で、20%未満では磁性体としての性能が発揮できなく、42%を超えると溶湯中に練りこむ事が大変難しく、混合溶湯が出来なくなる。好ましい混合割合は30〜40wt%である。
【0017】
本発明において表面からの距離が同じ場合、消磁性体材料の割合と磁束密度が比例している為に、如何に大量の消磁生体材料を溶湯に入れられるかが重要であるが、溶湯が完全な液体状では限度があり、むしろ、半溶融状態の中に練りこむか、消磁性体材料に溶湯を加えて練りこむ手法が大量に混合され、目的の混合割合に到達する。
【0018】
本発明の消磁性体材料を偏在させた軽金属材料は強磁性体材料の前駆体であり、鋳型から取り出した前駆体を鋳肌のまま、またはこれを研磨加工、切削加工など所望の処理を施して後、これを一旦消磁した後に着磁させることによって強磁性を有する軽量金属材料とすることができる。消磁−着磁法又は着磁法としてはオイルコンデンサー方式にて行う500〜1500V電圧で、着磁は2〜3秒で、脱磁(消磁)は2〜20秒ぐらいで可能である。この工程には形状着磁位置または方向により空心コイルと着磁ヨークと着磁コイルが必要である。
【0019】
本発明の消磁性体材料を偏在させた軽金属材料は好ましくは表面に消磁性体材料を含有していない層を有しており、この様な材料は従来の焼結法で得られる磁性材料では不可能な、耐食性を施すための陽極酸化処理をすることができる。陽極酸化処理を施すことにより素材の2倍〜10倍の耐食性を持ち、その硬さを例えば素材がHV80〜90のときにHV200〜450位に2〜4倍以上とすることが可能である。色調についても黒、金、茶、赤、ブルーその他各種の色調とすることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば非磁性の軽金属材料の主に表面部分に消磁性体材料を偏在させることが出来、これを着磁させることによって従来の有機物を結合剤として用いたボンド磁石などの欠点を解消し、バインダーの耐熱性、剛性に優れ、経年劣化がなく、機械加工が格段にしやすい材料とすることができる。一方で永久強磁性材料だけを用いた磁石に比べて著しく軽量な磁石とすることが出来る。この軽量の磁性材料は従来のボンド磁石の使用方法以外に使用中に発熱を伴う電磁石、変圧器、発電器、モーターに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の2層構造体の断面図を示す。(実施例1)
【図2】図2は本発明の3層構造体製造時の鋳型周辺断面図を示す。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお%は別の記載が無い限り重量%を意味し、使用機材に関しては、アルミニウム溶解用容器はSUS316、φ65mm×90mm×t0.6mmを用い、混合溶湯用容器と鋳型用容器は別の記載が無い限り鉄系の,φ50mm×50mm×t0.5mmを用い、使用電気炉はアルゴン雰囲気電気炉で内径200mm、高さ300mm、着磁、脱磁電源はMAD−1520D,東洋磁気工業(株)社製、評価法はテスラー・メーター(TM−701:カネテック(株)社製)を用いた。
【実施例1】
【0023】
アルミニウム溶解用容器にアルミニウム材(A1050:99.5%以上)約500gを入れ、少量のフラックスをかけ、アルゴン雰囲気縦型電気炉に置き蓋をし、保護ガス用としてのアルゴンガス流量は初期段階の5分間は5.0L/分、その後は1.0L/分で流し、700℃で45分後、ガス流量を1.5L/分にし、蓋を取り、フラックスを少量入れ攪拌し730℃で約30分鎮静し、アルミニウム溶湯を作る。次に混合溶湯を作るのに混合溶湯用容器に消磁性体材料(フェライト系粉末;ハードフェライト:テスラム社製)72g(40%相当)を入れ、その上から表面の酸化物等が入らないようにアルミニウム溶湯約40mL(約108g)を10mLの柄杓で4杯アルゴン雰囲気中にて注湯し、練りこみ固まった状態の時、再度電気炉に入れ、680℃に上げ10分経過後再度練りこむ工程を3回行い、消磁性体材料を含んだ混合溶湯を作った。この混合溶湯用容器をそのまま鋳型容器として用い、5分後にこの混合溶湯の上にその凝固前にアルミニウム溶湯10mL(約27g)を700℃にて注湯し2層構造として、680℃×15分保持後電気炉から混合溶湯容器(=鋳型容器)を取り出した。この場合の製品断面は図1に示す通りで、アルミニウム層1と混合層2からなる2層構造を有する。10分風冷を行った後、鋳型容器を冷凍庫にて約40℃まで急冷し、消磁性体材料を有する軽金属材料を取り出した。この時アルミニウム溶湯と混合溶湯を形成せず、未混合の状態で存在する消磁性体材料が18gあり、従ってここで得られた混合層中の実質の消磁性体材料の量は54g(33%)であった。これを再度電気炉にて630℃にて20分保持後取り出し、表面をハンマーにて平坦にし、更に冷却後表面を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところアルミニウム側の最大が24mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大28mT(ミリ・テスラー)となった。
【0024】
(比較例1)実施例1と同様にアルミニウム溶湯を作り、次に混合溶湯として混合溶湯用容器に消磁性体材料(フェライト系粉末(ハードフェライト:テスラム社製)15g(12%相当)を入れ、その上から表面の酸化物等が入らないようにアルミニウム溶湯約40mL(約108g)を10mLの柄杓で4杯アルゴン雰囲気中にて注湯し、練りこみ固まった状態の時、再度電気炉に入れ、680℃に上げ10分経過後再度練りこむ工程を1回行い、消磁性体材料を含んだ混合溶湯を作った。5分後にこの混合溶湯の上にその凝固前にアルミニウム溶湯10mL(約27g)を700℃にて注湯し2層構造とし、680℃×15分保持後電気炉から混合溶湯容器を取り出した。10分風冷を行った後、容器を冷凍庫にて約40℃まで急冷し、消磁性体材料を有する構造の軽金属材料を取り出した。この時アルミニウムと未混合状態の消磁性体材料は4gあり、混合層中の実質の消磁性体材料の量は11g(9%)で、これを再度電気炉にて630℃にて20分保持後とりだし、表面をハンマーにて平坦にし、更に冷却後表面を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところアルミニウム側の最大が0.8mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大1.5mT(ミリ・テスラー)となった。
【0025】
(比較例2)比較例1の中の実質の消磁性体材料の混合量を23g(17%)とした点のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度を計測したところアルミニウム層側で最大3mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大4mT(ミリ・テスラー)となった。この磁束密度では産業利用上不足である。
【実施例2】
【0026】
実施例1の中の実質の消磁性体材料の混合量を32g(22%)とした点のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度を計測したところアルミニウム層側で最大11mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大13mT(ミリ・テスラー)となった。
【実施例3】
【0027】
実施例1における実質の消磁性体材料の混合量を47g(30%)とした点のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度を計測したところアルミニウム層側で最大23mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大27mT(ミリ・テスラー)となった。
【実施例4】
【0028】
実施例1における実質の消磁性体材料の量を58g(35%)のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度を計測したところアルミニウム層側で最大19mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大24mT(ミリ・テスラー)となった。消磁性体材料の混合量を増加させても、誤差の範囲もあるし混合の程度にも影響があり、単純に混合量に比例して磁束密度が向上するとは限らないことがわかる。
【0029】
(比較例3)比較例1の中の最初の消磁性体材料の使用量を80g(42%)とし、これにアルミ溶湯を加え錬り込んだところ、良く混ざらず逆に混合溶湯となった実質の消磁性体材料の含有量が25g(18%)に下がってしまった。磁束密度を計測したところアルミニウム層側で最大4mT(ミリ・テスラー)、混合層側では最大6mT(ミリ・テスラー)となった。
【実施例5】
【0030】
実施例1と同様アルゴン中にて、溶解用容器に700℃のアルミニウム溶湯500gを作り、別に用意した大き目の混合溶湯用容器(SUS304、φ65mm×90mm×t0.6mm)で消磁性体材料40%相当を含む混合溶湯400g相当をつくり680℃で保持した。次に鋳型用容器を2つ用意し、其々の鋳型に同じ以下の操作を行う。アルゴン中にて最初に柄杓でアルミニウム溶湯10mL(27g)を注湯し、次にこのアルミニウム溶湯の上に680℃に保っている混合溶湯用容器より混合溶湯の上側より柄杓にて130gを鋳型用容器に供給し表面を平らにし、その上にアルミニウム溶湯を柄杓にて10mL(27g)注湯し3層構造とし、650℃×30分保持後鋳型容器を電気炉より取り出し、容器内の表面を平坦にし、10分風冷を行った後、鋳型容器を冷凍庫にて約40℃まで急冷し、消磁性体材料を有する3層構造の軽金属材料を取り出した。これと平行して混合溶湯用容器を冷却し、中に残った混合層と未混合状態の消磁性体材料の量を計測した結果、混合層中に含まれる実質の消磁性体材料の量は31%であった。このワークを#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順に2つのワークを仕上げた。この時2つのワークの磁束密度は未着磁であるためそれぞれ最大0.1mTであった。ここで一方のワークは着磁を行う為に着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ最大が25mT(ミリ・テスラー)となった。もう片方のワークは着磁せずに、中心線と約10mm幅で左右で切断し、直方体のワークを2つ作り、この1方に薄紙を巻き、長手方向の端より約5mmよりΦ0.3mmのエナメル線5cm程度残して40回巻く、更に同様に紙を巻き同一方向より同一向きに40回エナメル線を2段巻きにし、両側の上下のエナメル線を一部剥離し寄り合わせる。これに単2乾電池2個を直列接続し、端面の磁束密度を測定したところ、2.8mTあり電磁石としても使用が可能である。もう1方の直方体にはエナメル線をアルミニウム線に置き換えて同様にコイルを作成した。この時のアルミニウム線の作り方はΦ0.6mmのなまし材10mを脱脂(エマルション系、45℃、2分、浸漬法)−エッチング((苛性ソーダ25%、65℃、20秒、浸漬法)−中和(硝酸、20%、30秒、浸漬法)−陽極酸化(燐酸、30%、25℃、電圧30V,電流密度1.5A/dm,電解時間15分、皮膜厚さ2μm、電解法)水洗乾燥後シリコン系のKBP−90(信越化学工業(株))中を連続的にくぐらせコーティング後40分自然乾燥し更に90℃×60分熱風乾燥後自然冷却した。磁束密度を計測した結果最大2.5mTあり同様に電磁石としても使用可能である。参考までに鉄製の釘に同様な方法にてエナメル線を巻いて計測した時は最大3.2mTあり電磁石として使用可能であるが、アルミニウム丸棒を用いた場合は最大0.1mTであり電磁石として使用できなかった。
【0031】
(比較例4)実施例5の電磁石手法において、実質の消磁性体材料の混合比を11g(9%)とした点のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度は通電無しの状態では最大0.1mTであり、単2電池2個を直列接続した状態では最大0.4mTであった。この状態では電磁石の性能としては不足である。
【実施例6】
【0032】
実施例5と同様に700℃のアルミニウム溶湯500gと混合用容器に消磁性体材料40%相当を含む混合溶湯200gを作り、650℃に保持した。次に鋳型用容器に混合溶湯の上層より柄杓にて150gを注湯し、容器内の表面を平坦にし、10分風冷を行った後、鋳型容器を冷凍庫にて約40℃まで急冷し、消磁性体材料を有する軽金属材料を取り出した。これと平行して混合溶湯用容器を冷却し、中に残った混合層と未混合状態の消磁性体材料の量を計測した結果、混合層中の実質の消磁性体材料の量は35%であった。次に、今まで使用していた鋳型容器よりも一回り大きい鋳型用容器(鉄系、φ60mm×50mm×t1.0mm)にアルミニウム溶湯60mL(162g)を注湯し、更に前述のワーク(混合層)をこの中に投入し、全面をアルミニウム溶湯で覆った。10分間風冷後容器内面をハンマーにて叩いた後冷蔵庫にて常温まで急冷し、消磁性体材料を35%有する混合層の外側をアルミニウム層で覆った軽金属材料を取り出した。これを#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ最大が27mT(ミリ・テスラー)となった。更に耐食性、装飾性を上げる為に、エッチング工程(水酸化ナトリウム20wt%、60℃、20秒浸漬)‐硫酸アルマイト工程(15V、40分、皮膜厚さ11μm)後染色工程(染料:クライアント社製、Yellow‐3GL、3g/L,40℃、10分)、封孔工程(花見化学社製、Searing Salt AS、4g/L,95℃、15分)後乾燥し金色系の色調を得た。耐食試験とし、キャス試験(JISH−8681)で,皮膜厚さ等級AA10の16時間で、規格はRN9(腐食面積率0.07%を超え0.10%未満)であるが、本製品はRN9.5以上(腐食面積率0.02%を超え0.05%未満)で合格である。
【実施例7】
【0033】
この実施例では混合溶湯を形成する際にアルミニウム溶湯に消磁性体材料を加えて混合する方法を用いた。アルミニウム溶湯の作成は、そのための溶解用容器にアルミニウム・インゴット(AC4C:珪素7%、マグネシウム0.3%、鉄0.5%以下、マンガン0.6%、)約500gを投入し、少量のフラックスをかけ、アルゴン雰囲気縦型電気炉に入れ蓋をし、保護ガス用としてのアルゴンガスを初期段階の5分間は5.0L/分、その後は1.0L/分で流し、730℃で60分後、ガス流量を1.5L/分にし、蓋を取り、フラックスを少量入れ攪拌し700℃で約30分鎮静させて、アルミニウム溶湯を作った。次に混合溶湯として表面の酸化物が入らないように、混合溶湯用容器に柄杓(10mL)でアルゴン雰囲気中にて前記のアルミニウム溶湯約40mL(約108g)を注湯しフラックスを少量かけた後、溶湯が650〜600℃間に消磁性体材料(フェライト系粉末(ハードフェライト:テスラム社製)58g(約35wt%相当)を少量ずつ攪拌しながら添加し、600℃になった時再度650℃に上げる工程を1サイクルとしこれを15サイクル行い、消磁性体材料を含んだ混合溶湯を作る。鋳型容器内面に離型剤塗付後この混合溶湯をよく攪拌しながら約40mLを注湯する。680℃×30分保持後電気炉より鋳型容器を取り出し、風冷30分後冷凍庫にて約40℃まで急冷し、消磁性体材料を含有するアルミニウム金属材料を取り出した。この時消磁性体材料の未混合状態のものを除いた実質の消磁性体材料の含有量は29%であった。この材料の表面を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化した。評価として磁束密度を計測したところ最大23mT(ミリ・テスラー)になった。
【実施例8】
【0034】
この実施例では図2を参照しながら説明する。実施例1と同様に700℃のアルミニウム溶湯と650℃の混合溶湯をつくった。この混合溶湯中の実質消磁性体材料の含有量は33%である。アルミニウム溶湯1の10mL(27g)を700℃にて鋳型用容器に鋳込み、5分後混合溶湯2をよく攪拌しながら約40mLを650℃にて鋳込む。更に5分後アルミニウム溶湯1の10mL(約27g)を700℃にて鋳込み3層構造4とし、650℃×30分保持後電気炉から鋳型用容器を取り出した。鋳型用容器5の底面外部にはφ25×20mm×2枚を重ね合わせたサマコバ磁石6(磁束密度352mT)を付け、且つ磁石との間に断熱材(ハイラック、(株)エーアンドエーマテリアル社製)厚さ5.0mm板7を置き、又上面にはSUS304のφ48mm厚さ1.5mmの蓋8を置き底面と同様に断熱材7と極性を逆にしたサマコバ磁石6を設置する。この場合の鋳型周辺断面は図2に示す通りである。この実施例では上面の鋳型側をN極で、底面の鋳型側をS極とし磁場配向を行い、10分放置後、鋳型用容器を冷凍庫にて約40℃まで急冷し、更に風冷後鋳型より消磁性体材料33%を含む混合層とその上下面にアルミニウム表面層を有する3層構造の軽金属材料を取り出した。この材料の表面を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ最大36mT(ミリ・テスラー)となった。
【実施例9】
【0035】
アルミニウム溶湯は実施例1と同様にしてつくった。次にサマコバ磁石(磁束密度320mT,グレード:SS28:ネオマグ(株)社)を着磁・脱磁電源を用いて1500V、4秒にて脱磁し、脱磁されたサマコバ磁石をハンマー並びに乳鉢にて0.5mm以下の微小固体にし、これを消磁性体材料として使用する。混合溶湯をつくるに際してはアルミニウム溶湯の表面の酸化物等が入らないようにして混合溶湯用容器にアルミニウム溶湯を10mLの柄杓でアルゴン雰囲気中にて約40mL(約108g)注湯し、溶湯が650〜600℃間に前記のサマコバ磁石消磁性体材料75g(約40%相当)を少量ずつ攪拌しながら添加し、600℃になった時再度650℃に上げる工程を1サイクルとしこれを7サイクル行って添加を完了し、消磁性体材料を含んだ混合溶湯を作った。鋳型用容器内面に離型剤塗付後アルゴン雰囲気の電気炉中にて混合溶湯をよく攪拌しながら約40mLを680℃にて注湯する。更に5分後アルミニウム溶湯5mL(約13g)を700℃にて鋳込み2層構造とし、650℃×30分保持後鋳型容器を電気炉から取り出す。鋳型用容器の底面外部にはφ25×20mm×2枚重ね合わせたサマコバ磁石(密度352mT)を付け、且つ磁石との間に断熱材(ハイラック、(株)エーアンドエーマテリアル社製)厚さ5.0mm板を置き、又上面にはSUS304のφ38mm厚さ1.0mmの蓋を置き、その上に底面と同様に断熱材と、底面の磁石とは極性を逆にしたサマコバ磁石を設置する。この実施例では鋳型の上面側をN極で、鋳型の底面側をS極として磁場配向を行った。電気炉から取出した鋳型容器は10分間風冷を行った後、冷凍庫にて約40℃まで急冷し、更に風冷約2時間後に鋳型容器より凝固した2層構造の軽金属材料を取り出した。ここで別途、混合溶湯用容器中の混合溶湯を冷却し、実質含有量を調べた結果、実質消磁性体材料の含有量は34%であった。この2層構造材料の表面を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順にて仕上げ、着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて1500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところアルミニウム側は最大59mT(ミリ・テスラー)、混合層側は63mTとなった。
【実施例10】
【0036】
予めアルゴン雰囲気縦型電気炉に蓋を閉めた状態にて、保護ガス用として2経路を作り、1経路からは電気炉内にアルゴンガスを圧力0.1MPa、流量3L/分にて5分以上流す。マグネシウム溶湯を作るため、蓋付溶解用容器(鉄系、φ60×100×t=2)にマグネシウムインゴット(MC2:AL8.7%,Zn0.7%、Mn0.13%)約200gを入れ、蓋をせずに電気炉中に置き電気炉の内蓋と上蓋をし、保護ガスは同様のままで、電気炉の設定温度を200℃、10分とした後、溶解用容器に蓋をし、750℃で20分に設定し終了後電気炉の蓋を取り,アルゴンガスの圧力を0.2MPaにする。別経路は脱ガス用供給パイプ(SUS304、注射針管7G:外形4.57、内径4.01)の先端を平たくつぶした供給パイプを少しあけた溶解用容器の蓋の隙間より溶湯中に差込、電気炉中にてマグネシウム溶湯に2分間アルゴンガスを供給しながらこれを撹拌し脱ガスを行う。次に、730℃で約20分鎮静し、マグネシウム溶湯を作る。混合溶湯の作成は混合溶湯用容器に消磁性体材料(フェライト系粉末;ハードフェライト:テスラム社製)40g(37%相当)を入れ、その上から表面の酸化物等が入らないようにマグネシウム溶湯約40mL(約68g)を10mLの柄杓にて4杯アルゴン雰囲気中で且つ先程の別経路の供給パイプから混合溶湯用容器の内側表面にアルゴンを流し続けながら注湯し、SUSの撹拌棒(φ8×50mmで先端を若干潰した棒)にて、練りこみ、撹拌が固くて出来なくなった時点で、供給パイプからのアルゴンガスで表面を覆いつつ混合溶湯用容器を電気炉より取り出し、表面を平らにし、直に蓋付き冷却用容器(SUS,φ150mm×140mm×t1.0)の中にドライアイスを入れ、更にアルゴンガスを流しながら混合溶湯用容器に入れアルゴンガスの供給パイプが入る分だけ蓋を開けた状態で冷却を行った後、常温にて混合溶湯用容器を壊すことにより消磁性体材料を含有するマグネシウム金属材料を取り出した。この時マグネシウム溶湯と混合せず、未混合の状態で存在する消磁性体材料が12gあり、マグネシウム溶湯と混合した実質消磁性体材料の量は28g(29%)であった。この混合層を#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順に2つのワークを仕上げ、着磁を行う為に着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ最大が21mT(ミリ・テスラー)であった。
【0037】
(比較例5)実施例10の中の実質の消磁性体材料の混合量を11g(13%)とした点のみ変更し、他の手法は同一とした時、磁束密度を計測したところ最大2mT(ミリ・テスラー)となり、この磁束密度では産業利用上不足である。
【実施例11】
【0038】
実施例10と同様にマグネシウム溶湯約500gを作り、混合溶湯は混合溶湯用容器に消磁性体材料(フェライト系粉末;ハードフェライト:テスラム社製)40g(37%相当)を入れ、その上から表面の酸化物等が入らないようにマグネシウム溶湯約40mL(約68g)を10mLの柄杓にて4杯アルゴン雰囲気中で且つ先程の別経路の供給パイプから混合溶湯用容器の内側表面にアルゴンガスを流し続けながら注湯し、SUSの撹拌棒にて練りこみ、混合溶湯を作った。この表面に天圧を掛け混合溶湯を平らにした後、混合溶湯用容器をそのまま鋳型用容器として用い、これに表面の酸化物等が入らないようにマグネシウム溶湯を10mL(17g)注入し、2層構造体を形成した。冷却をするために、直にドライアイスを入れた蓋付き冷却用容器(SUS,φ150mm×140mm×t1.0)中にアルゴンガスを流しながら鋳型用容器を入れアルゴンガスの供給パイプが入る分だけ両方の蓋を開け冷却を行った後、常温にて鋳型用容器を壊すことにより消磁性体材料を含有するマグネシウム金属材料を取り出した。これと平行して混合溶湯用容器を冷却し、中に残った混合層と未混合状態の消磁性体材料は14gであった。これにより混合溶湯中の実質の消磁性体材料の混合量は26g(27%)であった。この2層構造のワークを#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順に2つのワークを仕上げ、着磁を行う為に着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところマグネシウム側は最大16mT(ミリ・テスラー)、混合層側は19mTとなった。
【実施例12】
【0039】
実施例10と同様にマグネシウム溶湯約500gを作り、混合溶湯は混合溶湯用容器(鉄系、φ60mm×50mm×t0.8mm)に消磁性体材料(フェライト系粉末;ハードフェライト:テスラム社製)50g(33%相当)を入れ、その上から表面の酸化物等が入らないようにマグネシウム溶湯約60mL(約100g)を10mLの柄杓にて6杯アルゴン雰囲気中で且つ先程の別経路の供給パイプから混合溶湯用容器の内側表面にアルゴンガスを流し続けながら注湯し、SUSの撹拌棒にて練りこみ、電気炉中にて650℃に保持して混合溶湯を作成した。次に、鋳型用容器にアルゴンガスを供給パイプにて供給しながら、表面の酸化物等が入らないようにマグネシウム溶湯を10mL(17g)注入し、5分後混合溶湯を10mLの柄杓にて4回擦り切りにて約40mL供給後天圧を掛け表面を平らにした後マグネシウム溶湯を10mL注湯し3層構造体を形成した。冷却法として直に、ドライアイスの入った蓋付き冷却用容器(SUS,φ150mm×140mm×t1.0)にアルゴンガスを流しながら鋳型用容器を入れアルゴンガスの供給パイプが入る分だけ両方の蓋を開け冷却を行った後、常温にて鋳型用容器を壊すことにより消磁性体材料を含有するマグネシウム金属材料を取り出した。これと平行して混合溶湯用容器を冷却し、中に残った混合層と未混合状態の消磁性体材料は18gであった。これにより混合溶湯の実質の消磁性体材料の含有量は32g(24%)であった。この3層構造のワークを#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順に2つのワークを仕上げ、着磁を行う為に着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ片側は最大16mT(ミリ・テスラー)、反対側は17mTとなった。
【実施例13】
【0040】
実施例10と同様にマグネシウム溶湯と混合溶湯より実質消磁性体材料の含有量が26g(27%)の混合層(約35g)を作り、これを電気炉にて650℃まで上昇させ保持する。次に、今まで使用していた鋳型容器よりも一回り大きい蓋付き鋳型用容器(鉄系、φ60mm×50mm×t0.8mm)を用意し、電気炉外にて蓋を若干開け容器内に供給パイプにてアルゴンガスを流しながらマグネシウム溶湯60mL(162g)を注湯し、一旦蓋を開け650℃に保持した混合層のワークをこの中に完全に没入し、供給パイプの隙間だけ蓋を開け、該ワークの全面をマグネシウム溶湯で覆った天婦羅型の多層構造体を形成した。その後直にドライアイスを入れた蓋付き冷却用容器(SUS,φ150mm×140mm×t1.0)の中に更にアルゴンガスを流しながら鋳型用容器入れアルゴンガスの供給パイプが入る分だけ蓋を開け冷却を行った後、常温にて鋳型用容器を壊すことにより消磁性体材料を含有するマグネシウム金属材料を取り出した。このワークを#60のベルト研磨機にて荒仕上げを行い、更にエヤーサンダーにて#100、#200、#400の順に2つのワークを仕上げ、着磁を行う為に着磁工程とし空芯コイルにて着磁・脱磁電源を用いて500V,2秒の着磁工程を行い磁化させた。評価として磁束密度を計測したところ片側は最大19mT(ミリ・テスラー)、反対側は最大18mTとなった。
【符号の説明】
【0041】
1 アルミニウム表面層
2 混合層
3 2層構造体
4 3層構造体
5 鋳型容器
6 サマコバ磁石
7 断熱材
8 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料を微小個体及び/又は粉体状にし、これを非磁性体軽金属材料の溶湯中に混ぜた混合溶湯を凝固させた混合層からなる非磁性体軽金属材料中に消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している軽金属材料
【請求項2】
消磁性体材料を含まない非磁性体軽金属材料の表面層を有し、非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料を微小個体及び/又は粉体状にし、これを非磁性体軽金属材料の溶湯中に混ぜた混合溶湯を凝固させた、消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している混合層を有している、少なくとも2層構造または対向表面層に非磁性体軽金属材料を更に形成したサンドイッチ3層複合構造又は繰り返しによる多積層複合構造からなっている、非磁性体軽金属材料中に消磁性体材料が偏在している軽金属材料
【請求項3】
消磁性体材料とは消磁した強磁性体材料または未着磁強磁性体材料である請求項1または2に記載の軽金属材料
【請求項4】
非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料を微小個体及び/又は粉体状にし、これを非磁性体軽金属材料の溶湯中に混ぜた混合溶湯を鋳型に注湯し、静置、急冷凝固させて混合層とすることを特徴とする、消磁性体材料が非磁性体軽金属中に20〜42重量%の量で偏在している軽金属材料の鋳造製造法。
【請求項5】
表面層として非磁性軽金属材料の溶湯を鋳型に鋳込み、該軽金属材料の溶湯が鋳型内で凝固する前に、非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料の微小個体及び/又は粉体状を非磁性体軽金属材料の溶湯中に分散混合させた混合溶湯を鋳型に注湯し、静置、急冷凝固した、消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している混合層を形成した2層複合層、または更に混合溶湯の凝固の前に非磁性体軽金属材料の溶湯を注湯し、最初に形成した非磁性体軽金属面層に対向する表面層を形成した3層複合層とすることを特徴とする、非磁性体軽金属材料中に消磁性体材料を偏在させた、少なくとも2層又は3層複合構造からなる軽金属材料の鋳造製造法
【請求項6】
表面層として非磁性軽金属材料の箔、圧延材、丸棒、押し出し型材または切削粉を加温し鋳型の底に溶湯を形成し、該軽金属材料の溶湯が鋳型内で凝固する前に、非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料の微小個体及び/又は粉体状を非磁性体軽金属材料の溶湯中に分散混合させた混合溶湯を鋳型に注湯し、静置、冷却凝固した消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している混合層を形成し、必要に応じて混合溶湯の凝固の前に更に非磁性軽金属材料の溶湯を注湯し、最初に形成した表面層に対向する表面層を形成することを特徴とする、非磁性体軽金属材料中に消磁性体材料を偏在させた、少なくとも2層又は3層複合構造からなる軽金属材料の鋳造製造法
【請求項7】
表面層用として非磁性軽金属材料の溶湯を鋳型内に目的製品鋳型厚さの0.1〜50%未満の厚さに鋳込み、該軽金属材料の溶湯が鋳型内で凝固する前に、非磁性体軽金属材料の融点以上の融点を有する消磁性体材料を微小個体及び/又は粉体状で非磁性体軽金属材料の溶湯中に分散混合させた混合溶湯を鋳型に注湯し、冷却凝固させて消磁性体材料が20〜42重量%の量で偏在している混合層を形成した2層複合構造体または必要に応じて混合層の凝固の前に非磁性軽金属材料の溶湯を注湯し最初に形成した表面層に対抗する表面層を更に形成したサンドイッチ3層複合構造体とし、これを二回以上繰り返す多層複合鋳造よりなる非磁性体軽金属中に消磁性体材料を偏在させた軽金属材料の鋳造製造法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の鋳造製造法において、鋳型の外側の少なくとも一部の面に強磁性体材及び/又は電磁石を設置し、必要に応じて該強磁性体材料の設置面の対抗面に逆の極性を持つ強磁性体材料及び/又は電磁石を設置し、この鋳型中で消磁性体材料を含んだ混合溶湯中の消磁性体材料に磁場配向を持たせることからなる消磁性体材料を偏在させた軽金属材料の鋳造製造法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軽金属材料または請求項4乃至8のいずれか一項に記載の鋳造製造法で得られた軽金属材料品にニクロム線または絶縁処理したアルミニウム線を巻き、巻線に電気を流すことによる事による軽金属材料の電磁石材料の製造法
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の軽金属材料及び請求項4乃至8のいずれか一項に記載の軽金属材料の鋳造製造法で得られた軽金属材料を無加工、プレス加工及び/又は切削加工前または後に着磁又は消磁−着磁工程を行なう事による強磁性体軽金属材料の製造法
【請求項11】
請求項2または3の軽金属材料、または5乃至13のいずれか一項に記載の鋳造製造法で得られた軽金属材料をブラスト、ショット等の機械的前処理後必要によって切削加工後に、化成処理、陽極酸化処理もしくは塗装処理後に磁化処理として着磁もしくは消磁−着磁工程を行う方法、あるいは先に着磁もしくは消磁−着磁工程を行う磁化処理後に化成処理、陽極酸化処理もしくは塗装処理を行う強磁性体軽金属材料の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−80049(P2012−80049A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234951(P2010−234951)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(595179549)電化皮膜工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】