説明

載物台用送り機構

【課題】回転軸と推進構造部との接触圧力について制約がなくステージの大型化に対応可能であり、さらに粗動移動時においてステージあるいは推進構造部と他の構成部材との衝突を回避することができる載物台用送り機構を提供すること。
【解決手段】物体を載置する載物台と、回動によって前記載物台を駆動する駆動軸と、前記駆動軸を加圧保持して前記駆動軸の回動を前記載物台の駆動に変換する変換部と、前記変換部の前記駆動軸に対する加圧保持および加圧解除を行うアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部とを備えたことを特徴とする載物台用送り機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載物台を送るための載物台用送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定あるいは観察するための物体を載置する載物台を送るための直線送り機構には、直線送りねじ機構や直線摩擦送り機構等がある(例えば、特許文献1参照。)。これらの直線送り機構は、回転軸が回転することにより回転軸に平行な推進力を発生させる構造部材(以下、推進構造部という。)で回転軸を挟持し、当該推進構造部に接する載物台を移動する構造である。しかし、載物台を長い距離移動させる際には、このような機構では効率が悪い。
【0003】
そこで、必要な際に、推進構造部による回転軸の挟持を解放して回転軸と推進構造部との接触を無くし、推進構造部あるいは載物台に直接外力を加えて、載物台を素早く目標位置付近に移動させる方法がある。
【0004】
推進構造部で回転軸を挟持した状態での回転軸の回転による載物台の移動を微動移動とし、回転軸と推進構造部との接触を無くした状態での外力による載物台の移動を粗動移動とし、微動移動と粗動移動とを組み合わせることで効率よく目標位置に到達できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−327773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなステージの微動移動と粗動移動とを切り替える際、推進構造部に回転軸を挟持させる、あるいは推進構造部による回転軸の挟持を解放させる方法として、手動でレバーを操作して推進構造部を直接駆動させ、回転軸を挟持あるいは解放する方法がある。近年、ステージが大型化し、これに伴い推進構造部の回転軸を挟持する力が大きくなってきているが、推進構造部の回転軸を挟持する力が大きくなると、推進構造部を駆動させるために必要な力も大きくなる。しかし対応可能な力の大きさには限度がある。
【0007】
また、ステージを粗動移動によって移動可能範囲の限界位置まで移動させると、ステージあるいは推進構造部が他の構成部材と衝突することでステージが機械的に停止し、その結果ステージに衝撃が発生し、ステージ上の物体にその衝撃が伝わってしまうといったことがある。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、回転軸と推進構造部との接触圧力について制約がなくステージの大型化に対応可能であり、さらに粗動移動時においてステージあるいは推進構造部と他の構成部材との衝突を回避することができる載物台用送り機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る載物台用送り機構は、物体を載置する載物台と、回動によって前記載物台を駆動する駆動軸と、前記駆動軸を加圧保持して前記駆動軸の回動を前記載物台の駆動に変換する変換部と、前記変換部の前記駆動軸に対する加圧保持および加圧解除を行うアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転軸と推進構造部との接触圧力について制約がなくステージの大型化に対応可能であり、さらに粗動移動時においてステージあるいは推進構造部と他の構成部材との衝突を回避することができる載物台用送り機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る載物台用送り機構の構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態における一対のハーフナットと送りねじとを軸方向から見た断面図であり、(a)は一対のハーフナットが閉じている状態を示し、(b)は一対のハーフナットが開いている状態を示している。
【図3】載物台用送り機構の操作部を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態における一対のハーフナットに弾性部材を組み合わせた構成を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る載物台用送り機構の構成を示す断面図である。
【図6】第2実施形態における一対のハーフナットと送りねじとを軸方向から見た断面図であり、(a)は一対のハーフナットが閉じている状態を示し、(b)は一対のハーフナットが開いている状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る載物台用送り機構の構成を示す断面図である。また、図2の各図は第1実施形態における一対のハーフナットと送りねじとを軸方向から見た断面図であり、(a)は一対のハーフナットが閉じている状態を示し、(b)は一対のハーフナットが開いている状態を示している。
【0014】
なお、以下の説明は、載物台を一方向(例えばX軸方向)へ移動するための送り機構についての説明であるが、本実施形態では他の方向(例えばY軸方向)の移動についても同様の送り機構が設けられており、X軸方向およびY軸方向へそれぞれ粗動移動と微動移動とを組み合わせて載物台を水平方向に移動させることができるようになっている。本明細書においては、説明の重複を避けるため、他の方向の送り機構についての説明は省略する。
【0015】
第1実施形態に係る載物台用送り機構は、図1に示すように、底板1と側壁4a、4bとで断面が略U字状に形成された架台7と、対向する側壁4a、4b間に延在する軸部材である送りねじ10と、架台7に対して移動可能に配設された載物台(ステージ)13と、架台7に対する載物台13の位置を測定するリニアエンコーダ16と、リニアエンコーダ16からの測定信号を処理する制御部19とを備えている。制御部19は、実際には当該載物台用送り機構あるいは当該載物台用送り機構を搭載する機器に内蔵されている。載物台13には、測定あるいは観察するための物体が載置される。送りねじ10は側壁4a、4bに図示しないベアリング等を介して回転自在に支持されている。送りねじ10の一方側の端部には、送りねじ10を回転操作するためのハンドル22が一体に形成されている。送りねじ10の外周側には雄ねじ25が形成されている。載物台13は架台7の上方に配置され、載物台13と架台7との間に設けられたガイド(図示省略)によって、架台7に対し送りねじ10の軸方向に摺動できるように構成されている。
【0016】
図2(a)および(b)に示すように、送りねじ10の中間部には、一対の直方体形状のハーフナット28a、28bが、送りねじ10を径方向の両側から挟むように対向して配置されている。ハーフナット28aのハーフナット28bと対向する側の面31aには、送りねじ10の軸方向に沿って断面が半円状の溝34aが形成されている。溝34aには雌ねじ37aが形成されている。ハーフナット28bのハーフナット28aと対向する側の面31bには、送りねじ10の軸方向に沿って断面が半円状の溝34bが形成されている。溝34bには雌ねじ37bが形成されている。雌ねじ37aおよび雌ねじ37bは、送りねじ10の雄ねじ25のねじ山に対応した形状に形成されている。
【0017】
ハーフナット28aの上面40aには、ハーフナット28bの方向に突出した突出部43aが形成されている。突出部43aには、送りねじ10の軸方向に沿った孔46aが形成されている。また、ハーフナット28bの上面40bには、ハーフナット28aの方向に突出した突出部43bが形成されており、突出部43bには、送りねじ10の軸方向に沿った孔46bが形成されている。一対のハーフナット28a、28bが対向して配置された状態において、各突出部43a、43bは、孔46aと孔46bとが送りねじ10の軸方向に連なるように、それぞれ送りねじ10の軸方向に位置をずらして形成されている。2つの孔46a、46bには棒状の支持部材49が貫通している。支持部材49と各ハーフナット28a、28bのそれぞれの孔46a、46bとは相対回転可能となっている。このように、一対のハーフナット28a、28bと支持部材49とでヒンジ構造を構成している。棒状の支持部材49は載物台13の下面に形成された凹部52に支持されている。
【0018】
このような構成なので、一対のハーフナット28a、28bは支持部材49を中心としてそれぞれ所定角度回転可能となっており、送りねじ10に対し、各溝34a、34bによる挟持と挟持の解放とが可能になっている。ハーフナット28a、28bが送りねじ10を挟持している状態においては、雌ねじ37aおよび雌ねじ37bが送りねじ10の雄ねじ25と螺合する。したがって、ハンドル22を回転させて雄ねじ25を回転させると、螺合したハーフナット28a、28bの雌ねじ37a、37bと雄ねじ25との相対回転によりハーフナット28a、28bが送りねじ10の軸方向に移動する。すると、ハーフナット28a、28bが支持されている載物台13も送りねじ10の軸方向に移動する。つまり、送りねじ10の回転がハーフナット28a、28bの雌ねじ37a、37bによって載物台13の直線運動に変換されている。言い換えれば、送りねじ10は、回転によって載物台13を駆動している。
【0019】
一方、ハーフナット28a、28bが送りねじ10の挟持を解放している状態においては、ハーフナット28a、28bと送りねじ10とは接触していない。その状態では、載物台13に直接外力を加えて、載物台13を素早く目標位置付近に移動させることができる。以後、ハーフナット28a、28bの雌ねじ37a、37bと送りねじ10の雄ねじ25とが接触している状態での載物台13の移動を微動移動と言い、ハーフナット28a、28bと送りねじ10とが接触していない状態での載物台13の移動を粗動移動と言う。
【0020】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態では、一対のハーフナット28a、28bの下方には電動のアクチュエータ55が配置されている。載物台13の下面には、軸方向から見た断面が略U字形状の支持部材56が一対のハーフナット28a、28bの両側および下側を囲むように設けられ(図1参照)、アクチュエータ55は当該支持部材56の底部に支持されている。ここでアクチュエータとは、押す力、または引く力、または押し引き双方の力を発生させる機械要素である。具体的にはソレノイド、エアシリンダー等である。本実施形態で用いたアクチュエータ55は伸縮可能な2つの腕部58a、58bを備えている。2つの腕部58a、58bはアクチュエータ55の本体部61を挟んで同一直線上を伸縮する。つまり、本体部61を中心にして互いに反対方向に向かって伸縮する。2つの腕部58a、58bは同時に伸長し、同時に短縮する。アクチュエータ55は、各腕部58a、58bが送りねじ10の軸方向と直角に交差する方向に伸縮するように配置されている。
【0021】
ハーフナット28aの下面62aには、送りねじ10の軸方向に沿って延在する段部64aが形成されている。ハーフナット28bの下面62bには、段部64aと対称に段部64bが形成されている。段部64aと段部64bとは対称に形成されているので、段部64aと段部64bとには互いに対向する面67a、67bが形成されている(図2(b)参照)。アクチュエータ55は、当該対向する面67aと面67bとの間に配置されている。アクチュエータ55の腕部58aの先端は面67aに係合し、腕部58bは面67bに係合している。
【0022】
アクチュエータ55の両腕部58a、58bが短縮した状態(図2(a)の状態)のとき、一対のハーフナット28a、28bは閉じている状態で、送りねじ10を両側から加圧保持、すなわち挟持している。この状態から各腕部58a、58bが伸長すると、各ハーフナット28a、28bは支持部材49を中心に互いに離間する方向に回転する。すると一対のハーフナット28a、28bは支持部材49を中心に下部が開くように駆動し、送りねじ10の加圧保持、すなわち挟持を解放する(図2(b)の状態)。この状態で載物台13は粗動移動させることができる。また、アクチュエータ55の各腕部58a、58bが伸びている状態(図2(b)の状態)からアクチュエータ55の各腕部58a、58bが短縮すると、各ハーフナット28a、28bは支持部材49を中心に互いに近づく方向に回転する。すると一対のハーフナット28a、28bは支持部材49を中心に下部が閉じるように駆動し、完全に閉じると送りねじ10を挟持する(図2(a)の状態)。送りねじ10を挟持した状態では、送りねじ10の雄ねじ25とハーフナット28a、28bの雌ねじ37a、37bとが螺合し、載物台13はこの螺合により微動移動で移動させることができる。
【0023】
本実施形態に係る載物台用送り機構はリニアエンコーダ16を備えており、架台7に対する載物台13の相対位置を測定している。リニアエンコーダ16は、図1に示すように、架台7に送りねじ10と平行に設けられている。リニアエンコーダ16が測定した載物台13の位置情報は制御部19に送られる。制御部19は載物台13の移動限界位置の座標を記憶している。つまり、架台7に対する載物台13の移動可能範囲は設計上あるいは構造上決まっているが、制御部19は載物台13が移動範囲の一方側の端部まで移動したときの位置座標と、他方側の端部まで移動したときの位置座標とを記憶している。通常、載物台13を一方側あるいは他方側の端部まで移動させると、載物台13は機械的にそれ以上の移動が規制される。粗動移動で載物台13を移動しているときに載物台13が一方側あるいは他方側の端部まで移動してしまうと、載物台13が機械的に止まった瞬間に大きな衝撃が発生し、載物台13の上の物体に衝撃を与えてしまう恐れがある。
【0024】
そこで本実施形態では、一対のハーフナット28a、28bが送りねじ10の加圧保持を解放した状態で載物台13を粗動移動する際、制御部19がリニアエンコーダ16から送られてくる測定値から載物台13の現在位置を順次算出し、載物台13が一方側あるいは他方側の端部に接近して所定の座標位置に達すると、制御部19が自動的にアクチュエータ55を作動させ、ハーフナット28a、28bと送りねじ10とを係合させる制御を行っている。ハーフナット28a、28bと送りねじ10とが係合したあと、さらに載物台13を移動させるときは、ハンドル22を操作して微動移動させる。このような制御を行えば、載物台13を移動範囲の端部まで一気に移動させてしまって、載物台13が機械的に止まった際の衝撃を載物台13上の物体に与えてしまうことを防止できる。
【0025】
次に、アクチュエータ55の操作方法および載物台13の移動操作方法について説明する。図3は本実施形態に係る載物台用送り機構の操作部を示す斜視図である。なお、先にも述べたが、上記の説明は載物台13の一方向(例えばX軸方向)への移動についての説明である。本実施形態では他の方向(例えばY軸方向)の移動についても同様の機構が設けられている。操作方法については本実施形態の理解を容易にするためにY軸方向についても必要な説明を記載する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、載物台13の上面の角部に、上方に突出して円柱状の操作部70が設けられている。操作部70の側面にはX軸粗微動切換ボタン73とY軸粗微動切換ボタン76とが設けられている。操作者が操作部70を握り、指でX軸粗微動切換ボタン73を押すと、制御部19はX軸方向の送り機構のアクチュエータ55を駆動し、例えばアクチュエータ55の腕部58a、58bを短縮している状態から伸長させる。すると一対のハーフナット28a、28bが開いて送りねじ10の挟持を解除する(図2(b)参照)。その結果、測定者は載物台13をX軸方向に粗動移動で移動させることができる。その際測定者は、円柱状の操作部70を手で握って載物台13を移動させれば移動させやすく、作業性の向上を図ることができる。円柱状の操作部70は手動で載物台13を粗動移動させるときのグリップの役割を兼ねている。載物台13を目標位置の近くまで粗動移動で移動させたら、X軸粗微動切換ボタン73をもう一度押す。すると制御部19はアクチュエータ55を駆動し、伸長した状態の腕部58a、58bを短縮させる。すると一対のハーフナット28a、28bが閉じて送りねじ10を挟持する(図2(a)参照)。その結果、送りねじ10とハーフナット28a、28bとは螺合し、測定者は載物台13をX軸方向に微動移動で移動させることができる。載物台13の微動移動はハンドル22を回転させることによって送りねじ10を回転させて行う。載物台13をY軸方向に移動させるときは操作部70のY軸粗微動切換ボタン76を押せば、X軸方向と同様に載物台13を移動させることができる。
【0027】
操作部70の上面のボタンは、全軸粗微動切換ボタン79である。全軸粗微動切換ボタン79は、X軸方向およびY軸方向の双方の送り機構のアクチュエータ55(Y軸方向のアクチュエータは図示省略。以下、Y軸方向の部材については同様。)を同時に駆動させるためのボタンである。全軸粗微動切換ボタン79を押すと、制御部19はX軸方向およびY軸方向の双方のアクチュエータ55を駆動し、アクチュエータ55の腕部58a、58bを短縮している状態から伸長させる。するとX軸方向およびY軸方向のそれぞれの一対のハーフナット28a、28bが開いて、それぞれ送りねじ10の挟持を解放する(図2(b)参照)。その結果、測定者は載物台13をX軸方向およびY軸方向の何れの方向にも自由に粗動移動で移動させることができる。このように、全軸粗微動切換ボタン79を押すと、載物台13をX軸およびY軸の何れの方向にも移動させることができるので、作業性の向上を図ることができる。載物台13を目標位置の近くまで粗動移動で移動させたら、全軸粗微動切換ボタン79をもう一度押す。すると制御部19はX軸方向およびY軸方向の双方のアクチュエータ55を駆動し、それぞれ伸長した状態の腕部58a、58bを短縮させる。するとX軸方向およびY軸方向のそれぞれの一対のハーフナット28a、28bが閉じて送りねじ10を挟持する(図2(a)参照)。その結果、X軸方向およびY軸方向の双方の送りねじ10とそれぞれの一対のハーフナット28a、28bとは螺合し、測定者は載物台13をX軸方向またはY軸方向に微動移動で移動させることができる。
【0028】
さらに、載物台13を粗動移動で移動させている際、載物台13を移動可能範囲の限界位置近傍の所定位置まで移動させると、制御部19がリニアエンコーダ16からの測定値に応じて自動的にアクチュエータ55を作動させる。すると一対のハーフナット28a、28bが送りねじ10を挟持するので、載物台13を移動範囲の限界位置まで粗動移動で移動させてしまい、載物台13上の物体に衝撃を与えてしまうことを防止できる。
【0029】
このように、本実施形態では、送りねじ10を挟持する一対のハーフナット28a、28bの開閉を電動のアクチュエータ55で行っているので、送りねじ10とハーフナット28a、28bとの接触圧力について制約を受けない。その結果、載物台の大型化に対応が可能であるという効果を発揮している。また、本実施形態では円柱状の操作部70を載物台13の上面に設けているが、載物台13の側面等、最も操作し易い位置に設けることも可能であり、設計の自由度を上げることができる。さらに、載物台13上の物体に衝撃を与えてしまうことも防止できる。
【0030】
なお、第1実施形態は、一対のハーフナット28a、28bに弾性部材を組み合わせる構成とすることもできる。図4に示すように、各ハーフナット28a、28bの下面62a、62bから下方に向かってそれぞればね支持部82a、82bを設け、ばね支持部82a、82bの間に引っ張りばね85を配設する。引っ張りばね85はアクチュエータ55よりも下方に位置し、アクチュエータ55とは送りねじ10の軸方向にずれて位置している。このような構成とすれば、一対のハーフナット28a、28bが閉じる際、確実に送りねじ10と螺合させることができる。この場合、アクチュエータ55の支持は、例えば図4に示すように、断面が略U字状の支持部材56の底部に上方に向けて突出部56aを設け、突出部56aの頂上部にアクチュエータ55を支持する。そして突出部56aから送りねじ10の軸方向にずれた位置に引っ張りばね85が位置するように構成すればよい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る載物台用送り機構は、第1実施形態と異なるところを中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を用いて説明する。
【0032】
図5は、第2実施形態に係る載物台用送り機構の構成を示す断面図である。
【0033】
本実施形態では、一対のハーフナット28a、28bを開閉するためのアクチュエータは、回転運動を発生させるものを用いている。架台7を構成する側壁4a、4bの一方側(本実施形態では送りねじ10を回転操作するためのハンドル22とは反対側の側壁4b)には、回転運動を発生させるアクチュエータ155が設けられている。アクチュエータ155の回転軸にはカム部材88の中心軸91が連結されている。カム部材88は送りねじ10の下方に送りねじ10と平行に延在し、アクチュエータ155と反対側の端部は側壁4aに回転自在に支持されている。
【0034】
図6の各図は、第2実施形態における一対のハーフナット28a、28bと送りねじ10とを軸方向から見た断面図であり、(a)は一対のハーフナット28a、28bが閉じている状態を示し、(b)は一対のハーフナット28a、28bが開いている状態を示している。
【0035】
カム部材88を軸方向から見た断面形状は、図6の各図に示すように、長方形の短辺側を外方に凸の円弧形状にした形状となっている。第2実施形態では、カム部材88は一対のハーフナット28a、28bの互いに対向する側の面31aと面31bとの間に配置されている。カム部材88の回転位置が、断面形状の長辺側が底板1に対して垂直となる位置では、図6(a)に示すように、一対のハーフナット28a、28bは閉じた状態であり、送りねじ10を挟持する。この状態ではハンドル22により載物台13を微動移動で移動させることができる。この状態からアクチュエータ155を駆動させ、カム部材88が回転すると、一対のハーフナット28a、28bは支持部材49を中心に下部が開くように駆動する。そしてカム部材88の断面形状の長辺側が底板1と平行になるまで回転すると、一対のハーフナット28a、28bは開いた状態となり、送りねじ10の挟持を解除する(図6(b)の状態)。この状態で載物台13は粗動移動させることができる。第2実施形態の載物台用送り機構は、このような回転するカム部材88を用いて一対のハーフナット28a、28bを駆動している。
【0036】
第2実施形態においても、載物台13を粗動移動する際、制御部19がリニアエンコーダ16から送られてくる測定値から載物台13の現在位置を順次算出し、載物台13が移動可能範囲の一方側あるいは他方側の限界位置に接近して所定の位置に達すると、自動的にアクチュエータ155を作動させ、ハーフナット28a、28bと送りねじ10とを係合させる制御を行っている。また、アクチュエータ155の操作および載物台13の移動操作についても第1実施形態と同様である。すなわち、円柱状の操作部70が載物台13の上面に設けられ、操作部70にはX軸粗微動切換ボタン73、Y軸粗微動切換ボタン76、全軸粗微動切換ボタン79が設けられている。また、他の構成も第1実施形態と同様である。
【0037】
このような構成なので、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、送りねじ10とハーフナット28a、28bとの接触圧力について制約がなく、載物台の大型化に対応が可能である。また、設計の自由度を上げることができるという効果も発揮している。さらに、載物台13上の物体に衝撃を与えてしまうことも防止できる。
【0038】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、一対のハーフナット28a、28bに弾性部材を組み合わせた構成とすることもできる。弾性部材の構成は上述した図4に示すものと略同様であり、各ハーフナット28a、28bの下面62a、62bから下方に向かってそれぞればね支持部82a、82bを設け、ばね支持部82a、82bの間に引っ張りばね85を配設する。このような構成とすれば、一対のハーフナット28a、28bが閉じる際、確実に送りねじ10と螺合させることができる。
【0039】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明の構成は上記第1および第2実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では載物台13を送りねじ10を用いて移動させる構成としているが、これに代えてツイストローラとこれに係合する軸部材とを用いた摩擦送り機構を用いた載物台用送り機構にも適用できる。また、アクチュエータについても、直接あるいは間接的に一対のハーフナット28a、28bを開閉できるものであれば、ソレノイドでもエアシリンダーでもよく、適宜変更が可能である。このように、本発明の構成は適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 底板
4a、4b 側壁
7 架台
10 送りねじ
13 載物台
16 リニアエンコーダ
19 制御部
22 ハンドル
25 雄ねじ
28a、28b ハーフナット
31a、31b 対向する面
34a、34b 溝
37a、37b 雌ねじ
40a、40b 上面
43a、43b 突出部
46a、46b 孔
49 支持部材
52 凹部
55、155 アクチュエータ
56 支持部材
58a、58b 腕部
61 本体部
62a、62b 下面
64a、64b 段部
67a、67b (段部64a、64bの)対向する面
70 操作部
73 X軸粗微動切換ボタン
76 Y軸粗微動切換ボタン
79 全軸粗微動切換ボタン
82a、82b ばね支持部
85 引っ張りばね
88 カム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を載置する載物台と、
回動によって前記載物台を駆動する駆動軸と、
前記駆動軸を加圧保持して前記駆動軸の回動を前記載物台の駆動に変換する変換部と、
前記変換部の前記駆動軸に対する加圧保持および加圧解除を行うアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部とを備えたことを特徴とする載物台用送り機構。
【請求項2】
前記載物台の位置を検出する位置検出手段をさらに備え、
前記制御部は、前記位置検出手段が検出する位置情報に応じて、前記アクチュエータを介して前記変換部が前記駆動軸を加圧保持するように制御することを特徴とする請求項1に記載の載物台用送り機構。
【請求項3】
前記制御部は、前記位置検出手段が検出する位置情報が、前記載物台が移動可能範囲の限界位置近傍に位置する情報であったとき、前記アクチュエータを介して前記変換部が前記駆動軸を加圧保持するように制御することを特徴とする請求項2に記載の載物台用送り機構。
【請求項4】
前記アクチュエータは、一対の伸縮する腕部を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の載物台用送り機構。
【請求項5】
前記アクチュエータは、回転運動を発生することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の載物台用送り機構。
【請求項6】
前記アクチュエータを操作するための操作部が前記載物台に設けられ、前記操作部は、前記変換部が前記駆動軸に対して加圧解除された状態において前記載物台を手動で移動させる際のグリップとして機能することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の載物台用送り機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−83202(P2012−83202A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229611(P2010−229611)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】