説明

輝度向上シート及びその製造方法

【課題】耐擦傷性に優れた光学シートを提供する。
【解決手段】可撓性支持体と、前記可撓性支持体の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂、及び0.02〜30.0mg/mの潤滑剤とを含有する成形層と、前記可撓性支持体の裏面に0.02〜10.0mg/mの潤滑剤を含有する潤滑剤層とを有する光学シートは、光学シートの両面の摩擦係数が低く、耐擦傷性に優れる。潤滑剤としては、脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する成形層を備えた光学シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで表面に凹凸パターンを有する光学シートは主として建材等の装飾部材として用いられてきたが、近年、反射防止フィルム、拡散シート、輝度向上シート等の光学フィルムや、導光板、回折格子、パターンドメディア、情報記録媒体、光学素子、ホログラム、マイクロ流路等の部材に幅広く用いられている。特に、反射防止フィルム等に代表されるような光学フィルム用途や、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルバーサタイルディスク)等のトラッキング層を有する情報記録媒体用途において、凹凸パターンを有する光学シートの利用が増加している。これらの用途においては、光学特性の性能向上のために凹凸パターンの微細化が重要になってきている。例えば、凹凸パターンのピッチを可視光波長以下のサブミクロンオーダに微細化して、反射防止機能を向上することが提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
光学シートの製造方法としては、基材を直接成形する射出成形法や押出成形法以外に、紫外線硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂を有する成形層を可撓性支持体上に形成する方法がある。例えば、可撓性支持体上に活性エネルギー線硬化性樹脂等を含有する樹脂溶液を塗布して樹脂層を形成し、この未硬化の樹脂層に成形ロール上のエンボスパターンを転写して樹脂層を成型し、成型された樹脂層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより樹脂層を硬化して凹凸パターンを有する成形層を形成し、形成された成形層を有する原反ロールを所定長さに裁断して光学シートを作製する方法が知られている(例えば、特許文献1,2)。この活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて成形層を形成する方法によれば、微細な凹凸パターンを精度良く形成できるととともに、可撓性支持体の熱損傷を避けることができる。また、連続して成形層が形成されるため、安価に光学シートを製造することができる。
【0004】
ところで、この種の光学シートは、製造後に積み重ねられて搬送される際の光学シート同士の擦れや、液晶装置等の光学装置内に組み込まれる際の液晶部材等との接触、摺動により凹凸パターンが形成された成形層や、その反対面が傷付きやすい。特に、成形層の反対面は可撓性支持体が露出しているため、ポリエステルフィルム等の軟らかい可撓性支持体は傷が入りやすく、それによって光学特性の低下を招くことがある。
【0005】
このため、光拡散シート等においては、4級アンモニウム塩基、(メタ)アクリロイル基、及びポリオルガノシロキサン単位を有する重合体と、分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートとを有する電離放射線硬化性組成物を光拡散層及びバックコート層に用いて両層の被膜硬度を向上することが提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特許3016638号公報
【特許文献2】特許3490099号公報
【特許文献3】特開2002−98809号公報
【非特許文献1】P.B.Clapham and M.C.Hutley, Nature (London) 244, p.281-282(1973)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、拡散板等の硬質のアクリル樹脂からなる光学部材と光学シートとが重ねて配置されると、アクリル樹脂の削れ粉が光学シートと拡散板との間に介在する場合がある。このような場合、特許文献3における成形層やバックコート層に含まれる電離放射線硬化性樹脂よりもアクリル樹脂の方が硬いため、光学シートがアクリル樹脂粉と接触、摺動することにより光学シートの両面が傷付きやすい。また、バックコート層を形成することにより、製造コストを増加させることにもなる。特許文献1及び2では、活性エネルギー線硬化性樹脂とともに潤滑性能を有すると考えられるシリコーン系界面活性剤を樹脂溶液に添加しているが、樹脂の種類によってはシリコーン系界面活性剤を均一に分散することが難しく、樹脂溶液が白濁する場合がある。また、シリコーン系界面活性剤が均一に樹脂中に分散されないため、成形層の表面にシリコーン系界面活性剤が多量に存在し、摩擦係数が上昇して、傷が入りやすいという問題もある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、耐擦傷性に優れた光学シートを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、光学シート両面の滑り性に着目し、両面の滑り性を最適化することにより安価に耐擦傷性を向上できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、可撓性支持体と、前記可撓性支持体の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂及び0.02〜30.0mg/mの潤滑剤とを含有する成形層と、前記可撓性支持体の裏面に0.02〜10.0mg/mの潤滑剤を含有する潤滑剤層とを有する、光学シートである。
上記光学シートによれば、潤滑剤を含有する成形層及び潤滑剤層を可撓性支持体の両面に有するため、光学シート両面の摩擦係数を低下させることができる。そして、前記成形層及び潤滑剤層はそれぞれ、潤滑剤を0.02〜30.0mg/mと0.02〜10.0mg/m含有するため、光学シート両面の貼り付きを生ずることなく、耐擦傷性を向上することができる。すなわち、上記一定量の潤滑剤をそれぞれ含有する成形層及び潤滑剤層が形成された光学シートであれば、光学シート間に塵埃が介在した状態で光学シートが積み重ねられて摺動されても、光学シート同士が貼り付きの少ない状態で接触し、また成形層と潤滑剤層との間で塵埃が滑りやすいため、両面の傷の発生を抑えることができる。このため、光学シートがアクリル樹脂等からなる硬質な異物と接触、摺動しても、傷の発生を低減することができる。
【0010】
上記光学シートにおいて、前記成形層は、前記潤滑剤層よりも潤滑剤を多く含有することが好ましい。光学機能層である成形層は微細な凹凸を有しており、それによって傷が入り易いため、成形層の潤滑剤の含有量は潤滑剤層のそれより多くすることが好ましい。一方、潤滑剤層は成形層に比べ平滑な表面を有するため、潤滑剤層の潤滑剤の含有量が成形層のそれよりも多すぎると、複数の光学シートが積み重ねられた場合に表面と裏面とが貼り付きやすくなる。
【0011】
また、成形層の潤滑剤の含有量をCs、潤滑剤層の潤滑剤の含有量をCbとしたとき、CsとCbとの差(Cs−Cb)が以下の関係を満足することが好ましい。
0mg/m<(Cs−Cb)≦7.0mg/m
成形層と潤滑剤層の潤滑剤の含有量の差が上記範囲内であれば、光学シート同士のブロッキング性をさらに改善することができる。
【0012】
上記成形層及び潤滑剤層は、脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。脂肪酸エステルや脂肪酸は、活性エネルギー線硬化性樹脂中での分散性に優れるため、樹脂溶液の白濁を防止することができる。また、これらの潤滑剤は摩擦係数の低減効果が大きいため、耐擦傷性を向上することができる。特に、脂肪酸エステルと脂肪酸とを併用すれば、低温から高温でのサイクル試験においても耐擦傷性に優れた光学シートを得ることができる。
【0013】
上記脂肪酸エステルは、80℃以下の融点を有することが好ましい。上記脂肪酸エステルは低融点であるため、光学シート両面の摩擦係数をさらに低下することができる。また、上記低融点の脂肪酸エステルは移動度が大きいため、活性エネルギー線硬化性樹脂中に分散された脂肪酸エステルが成形層の表面に滲出しやすい。このため、脂肪酸エステルを含有する成形層を有する原反ロールを形成することにより、可撓性支持体の裏面に成形層中の脂肪酸エステルを転写させることができる。これにより、潤滑剤層を形成するための工程を別途設ける必要がなく、安価に光学シートを製造することができる。
【0014】
上記脂肪酸エステルは、25℃以下の融点を有することが好ましい。上記低融点の脂肪酸エステルを用いれば、さらに摩擦係数を低減することができる。また、上記脂肪酸エステルは、エージングにより成形層の表面にさらに滲出しやすいため、可撓性支持体の裏面に成形層中の脂肪酸エステルを効率よく転写させることができる。
【0015】
上記脂肪酸は、25〜80℃の融点を有することが好ましい。上記脂肪酸は低温環境下での摩擦係数低減効果に優れている。また、潤滑剤として脂肪酸エステルと上記の脂肪酸とを併用すれば、低温から高温でのサイクル試験においてさらに耐擦傷性に優れた光学シートを得ることができる。
【0016】
上記脂肪酸は、前記脂肪酸エステルの融点よりも25℃以上高い融点を有することが好ましい。上記光学シートは、低温から高温の広い温度環境においても耐擦傷性に優れている。
【0017】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、ビスフェノールA骨格を有するジアクリレートまたはジメタクリレートを主成分として含有することが好ましい。上記活性エネルギー線硬化性樹脂は成型性に優れるため、微細な凹凸パターンを有する成形層を形成することが
できる。また、上記樹脂は潤滑剤、特に脂肪酸エステルや脂肪酸の分散性に優れている。さらに、成形層が上記活性エネルギー線硬化性樹脂と脂肪酸エステルや脂肪酸等の潤滑剤とを含有する場合、成形層の表面に潤滑剤が滲出しやすくなるため、可撓性支持体の裏面へ潤滑剤を十分に転写させることができ、摩擦係数をさらに低減できる。
【0018】
そして、本発明は、連続搬送される可撓性支持体の表面に設けられた活性エネルギー線硬化性樹脂と樹脂成分全量に対して0.01〜5質量%の潤滑剤とを含有する樹脂層に成形ロールを当接させて前記樹脂層を成型し、前記成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより樹脂層を硬化して成形層を形成し、前記成形層が形成された可撓性支持体をロール状に巻き取って原反ロールを形成し、前記原反ロールを、30〜100℃の温度でエージングする光学シートの製造方法である。
上記製造方法によれば、活性エネルギー線硬化性樹脂と一定量の潤滑剤とを含有する樹脂層を成形ロールで成型し、樹脂層を硬化した後に、ロール状に巻かれた原反ロールを30〜100℃でエージングすることにより成形層中の潤滑剤を可撓性支持体の裏面に効率よく転写することができる。また、上記製造方法によれば、光学シートの反りやうねりを抑えることができる。
【0019】
上記樹脂層は、前記潤滑剤として25℃以下の融点を有する脂肪酸エステルを少なくとも含有することが好ましい。上記低融点の脂肪酸エステルは成形層内での移動度が大きく、成形層表面に滲出しやすいため、少量の使用でもエージングにより効率よく潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記光学シート及び製造方法によれば、耐擦傷性に優れた光学シートを安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本実施の形態に係る光学シートの基本構成の一例を示す概略断面図である。図1に示されるように、可撓性支持体2の表面には光学機能層である成形層3が形成されており、可撓性支持体2の裏面には潤滑剤層4が形成されている。
【0022】
可撓性支持体2としては、光学フィルム、情報記録媒体等で使用されている従来公知の可撓性支持体を使用することができる。一般的には各種合成樹脂からなる可撓性フィルムが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。これらの中でも光学特性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。使用する可撓性支持体の厚さは特に制限されないが、用途に合わせて、通常300μm以下の厚さを有する可撓性支持体が用いられる。特に、反射防止フィルム等の光学フィルム用途の場合、可撓性支持体の厚さは、200μm以下が好ましい。このような薄いフィルムは傷が入りやすいため、潤滑剤を含有する成形層及び潤滑剤層を設けることにより摩擦係数を低下させる効果が一層顕著に発揮される。また、フィルムに対する成形層の接着性を高めるため、コロナ、プラズマ処理等の表面処理を行ってもよく、表面にポリウレタン、ポリエステル等を有する易接着層を設けてもよい。
【0023】
可撓性支持体の平均表面粗さ(Ra)は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。また、可撓性支持体の十点平均表面粗さ(Rz)は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、0.5μm以下が最も好ましい。このような平滑性に優れた表面性を有する可撓性支持体は、光の乱反射が抑えられ、光学特性に優れる一方、接触面積が増加するため、摩擦係数が高くなり、傷が発生しやすい。従って、潤滑剤を含有する成形層及び潤滑剤層を設けることにより摩擦係数を低下させる効果が一層顕著に発揮される。
【0024】
成形層3は活性エネルギー線硬化性樹脂とともに、潤滑剤を0.02〜30.0mg/m、好ましくは0.1〜30.0mg/m、より好ましくは1.5〜13.0mg/m含有する。潤滑剤を含有する成形層を形成することにより、成形層の摩擦係数を低減し、滑り性を向上することができる。また、上記範囲の潤滑剤を含有する成形層と、一定量の潤滑剤を含有する潤滑剤層とを形成すれば、光学シート両面の貼り付きを生ずることなく摩擦係数を低下させることができる。また、光学シート間に塵埃が介在した状態で光学シートが積み重ねられて摺動されても、成形層と潤滑剤層との間で塵埃が滑りやすいため、両面の傷の発生を抑えることができる。成形層中の潤滑剤の含有量が0.02mg/m未満では、潤滑性能が不足し、滑り性を十分改善することができず、耐擦傷性が劣化する。成形層の潤滑剤の含有量が30.0mg/mより多いと、潤滑剤が成形層中に多量に存在するため、成形層が軟らかくなり、また摩擦係数が高くなる。このため、貼り付きが生じやすくなり、傷が入りやすくなる。また、常温で固体の潤滑剤の場合、表面に滲出した多量の潤滑剤によってブリードアウトが発生し、外観不良を引き起こす傾向がある。なお、成形層中の潤滑剤の含有量は、ヘキサンで成形層を洗浄することにより求めることができる。
【0025】
潤滑剤としては、脂肪酸エステル;脂肪酸;脂肪族アミド;脂肪族アルコール;脂肪族アミン;モノサルファイド;流動パラフィン、スクアラン、合成スクアラン等の炭化水素系化合物;シリコーン系化合物;脂肪酸とフッ化アルコールとのエステル;フロロポリエーテル等のフッ素系化合物等が挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用してもよい。これらの中でも、成形層は、脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくとも脂肪酸エステルを含有することがより好ましく、脂肪酸エステルと脂肪酸の両方を含有することがさらに好ましい。脂肪酸エステルや脂肪酸は、摩擦係数低減効果が大きい。また、これらの潤滑剤は、シリコーン系化合物等の他の潤滑剤と比べて、活性エネルギー線硬化性樹脂中での分散性に優れるため、樹脂溶液の白濁を防止することができる。そして、脂肪酸エステルは低温環境になると粘度が増加し、摩擦係数が増加する場合があるが、脂肪酸は低温環境においても摩擦係数の増加が少ない。このため、脂肪酸エステルと脂肪酸とを併用すれば低温から高温でのサイクル試験においても耐擦傷性に優れた光学シートを得ることができる。
【0026】
脂肪酸エステルとしては、80℃以下の融点を有する脂肪酸エステルが好ましく、常温下液体で、25℃以下の融点を有する脂肪酸エステルがより好ましい。低融点の脂肪酸エステルは成形層の表面に滲出しやすいため、脂肪酸エステルを含有する成形層を有する原反ロールを形成し、表面に滲出した脂肪酸エステルを可撓性支持体の裏面に転写させることにより潤滑剤層を形成することができる。特に、25℃以下の融点を有する脂肪酸エステルは、摩擦係数低減効果が大きく、またエージングにより成形層の表面にさらに滲出しやすくなるため、可撓性支持体の裏面に成形層中の脂肪酸エステルを効率よく転写させることができる。このため、上記低融点の脂肪酸エステルを用いれば、潤滑剤層を別工程で形成することが不要となり、さらに安価に光学シートを製造することができる。
【0027】
80℃以下の融点を有する脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、オレイン酸オレイル、オレイン酸ミリスチル、2−エチルヘキシルオレート、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸エチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。これらは単独または複数混合して使用してもよい。これらの中でも25℃以下の融点を有する、オレイン酸オレイル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリドが好ましく、低融点を有し、低い摩擦係数が得られるステアリン酸ブチルが特に好ましい。
【0028】
また、脂肪酸としては、具体的には、例えば、ヘキサン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イコサン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。これらは単独または複数混合して使用してもよい。これらの中でも、25〜80℃の融点を有する、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イコサン酸が好ましく、50〜70℃の融点を有する、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸がより好ましい。上記脂肪酸は低温環境下での摩擦係数低減効果に優れている。
【0029】
成形層中に脂肪酸エステルと脂肪酸の両方を含有する場合、脂肪酸エステルの融点よりも25℃以上高い融点を有する脂肪酸がより好ましい。上記融点の差を有する脂肪酸エステルと脂肪酸とを併用することにより、低温、高温に拘らず広い温度環境下で優れた耐擦傷性が得られる。また、この場合、成形層中の脂肪酸エステルと脂肪酸との割合は、質量比で1:9〜9:1が好ましく、8:2〜3:7がより好ましく、8:2〜6:4がさらに好ましい。
【0030】
また、脂肪酸以外に脂肪酸エステルと併用することができる好適な潤滑剤としては、カプロン酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族アミド;シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等のシリコーン系化合物;ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール等の脂肪族アルコール;炭化水素系化合物等が挙げられる。
【0031】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、紫外線、赤外線、可視光線、エックス線、電子線等の活性エネルギー線の照射により硬化する樹脂が挙げられる。例えば、重合性を有するモノマーとオリゴマーとを主成分とする樹脂を用いることができる。このような重合性を有するモノマー及びオリゴマーの中でも、アクリル系のモノマー及びオリゴマーは種類が多く、選択肢が広いので好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、25℃における粘度が10〜600mPa・sであることが好ましい。粘度が10mPa・s未満では、この粘度に制御するために単官能モノマーの使用量が多くなってしまい、硬化性が低下したり、成形層が脆くなる等、成形層の特性が劣化する場合がある。粘度が600mPa・sを超えると、樹脂層を成形ロールに当接させて成型する際に樹脂が成形ロールのパターンにスムーズに入らず、気泡のかみ込み等の不良を起こす場合がある。
【0032】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は、単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーと、多官能(メタ)アクリルモノマー(オリゴマー)とを含有することが好ましい。一般的に、多官能モノマー(オリゴマー)が硬化物特性に支配的である。単官能モノマーは粘度調整用の希釈剤として用いられるが、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が低いほど、成形層の機械的特性を確保することが難しくなる。
【0033】
単官能ビニルモノマー及び単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には、例えば、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホロリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、イソボロニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホロリン、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらは単独または複数混合して使用してもよい。アクリルモノマーが硬化性の点からメタクリレートモノマーより好ましい。これらのモノマーは粘度が低いため、低粘度の樹脂溶液が得られる。また、これらモノマーは複素環や、アミド基、水酸基、メトキシ基等の官能基を有しているので硬化後成形層の可撓性支持体への密着性を向上させることも可能である。これらの中でも粘度、硬化性、硬度、付着性、及び屈折率等の点からビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホロリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸がより好ましい。特に、粘度、硬化性、硬度、付着性及び屈折率に関しバランスの良い、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸が好ましい。
【0034】
多官能(メタ)アクリルモノマー(オリゴマー)としては、具体的には、例えば、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これは単独または複数混合して使用してもよい。市販で入手可能な多官能(メタ)アクリルオリゴマーとしては、共栄社化学社製AH−600、UA306H、新中村化学社製U−4HA、U−6HA、U−6LPA等が挙げられる。これらモノマー(オリゴマー)は硬化後に硬度を付与したり、硬化性を促進することも可能である。これらの中でも、ビスフェノールA骨格を有するジアクリレートまたはジメタクリレートを主成分として含有する多官能(メタ)アクリルモノマー(オリゴマー)である、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパンが好ましい。上記ビスフェノールA骨格を有する多官能(メタ)アクリルモノマー(オリゴマー)は、樹脂層成型時の成型性に優れるため、微細な凹凸パターンを有する成形層を精度よく形成することができる。また、上記樹脂は脂肪酸エステルや脂肪酸の分散性に優れている。さらに、上記樹脂を含有する成形層中で脂肪酸エステルや脂肪酸が成形層の表面に滲出しやすい。このため、エージングにより成形層から可撓性支持体の裏面に脂肪酸エステルや脂肪酸を効率よく転写させることができる。屈折率の点からは2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパンが好ましい。硬化性及び硬度の点からは、3官能以上のペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びアクリルオリゴマーが好ましい。
【0035】
単官能ビニルモノマーまたは単官能(メタ)アクリルモノマーと、多官能(メタ)アクリルモノマー(オリゴマー)との混合比は、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が10〜600mPa・sであれば特に限定されないが、質量比で10:90〜80:20が好ましい。単官能モノマーの質量比が10より小さくなると、樹脂粘度が高くなり、成形ロール上のパターンにスムーズに樹脂が入り込まず、転写性が劣化しやすい。単官能モノマーの質量比が80より大きくなると、成形層が脆くなりやすい。また、活性エネルギー線硬化性樹脂は、70℃以上の引火点を有することが好ましい。成形層中の活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量は、該樹脂が主成分として含まれていれば特に限定されないが、成形層全体に対して85〜99質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性樹脂には上記のモノマー以外に、従来公知の一般的なモノマー及びオリゴマーを用いてもよい。また、必要に応じて汎用樹脂、有機溶剤、光開始剤、増感剤、促進剤、レベリング剤、離型剤、色材、フィラー等を使用してもよい。有機溶剤を使用する場合には、樹脂層を形成した後に有機溶剤を除去するための乾燥工程を設けることが好ましい。光開始剤の必要性は活性エネルギー線の種類による。特に紫外線、可視光線を活性エネルギー線として硬化反応に使用する場合、光開始剤が必要とされる。また、活性エネルギー線の照射を可撓性支持体を介して行う場合には、可撓性支持体を透過する活性エネルギー線の波長に応じた光開始剤を使用することが好ましい。例えば、可撓性支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムが用いられる場合には、イルガキュア369、819、907(チバガイギー社製)等のそれぞれの可撓性支持体の吸収波長と重ならないような波長領域で吸収をもつ光開始剤を使用することができる。特に、イルガキュア907と、2,4−ジエチルチオキサントンあるいは2−クロロチオキサントンとを併用すれば、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化を促進することができるため好ましい。光開始剤の量は、使用する樹脂や光開始剤の種類にもよるが、樹脂及び光開始剤の合計量に対して、通常0.5〜5質量%である。
【0037】
上記のような活性エネルギー線硬化性樹脂及び潤滑剤を含有する成形層は、耐擦傷性の観点からB以上の鉛筆硬度を有することが好ましい。
【0038】
可撓性支持体2の裏面の潤滑剤層4は、潤滑剤を0.02〜10.0mg/m、好ましくは0.5〜4.5mg/m、より好ましくは0.8〜4.5mg/m含有する。潤滑剤を含有する潤滑剤層を可撓性支持体の裏面に形成することにより、摩擦係数を低下させることができ、滑り性を向上することができる。また、上記範囲の潤滑剤を含有する成形層と、一定量の潤滑剤を含有する潤滑剤層とを形成すれば、光学シート両面の貼り付きを生ずることなく摩擦係数を低下させることができる。また、成形層と潤滑剤層との間で塵埃が滑りやすいため、光学シート間に塵埃が介在した状態で光学シートが積層されて、成形層と可撓性支持体の裏面とが接触したり、可撓性支持体の裏面がアクリル樹脂等からなる硬質の異物と接触、摺動した場合でも、光学シートの傷付きを低減することができる。潤滑剤の量が0.02mg/m未満では、潤滑性能が不足し、可撓性支持体裏面の滑り性を十分改善することができず、耐擦傷性が劣化する。一方、潤滑剤の量が10.0mg/mより多いと、摩擦係数が高くなり、貼り付きが生じやすくなって、傷が入りやすくなる。また、常温で固体の潤滑剤の場合、多量の潤滑剤によってブリードアウトが発生し、外観不良を引き起こす傾向がある。なお、潤滑剤層中の潤滑剤の量は、成形層と同様にヘキサンにより潤滑剤層を洗浄することにより求めることができる。
【0039】
また、本実施の形態の光学シートは、成形層の潤滑剤の含有量をCs、潤滑剤層の潤滑剤の含有量をCbとしたとき、CsがCbより多いことが好ましい。成形層は微細な凹凸を有しており、それによって傷が入り易いため、成形層の潤滑剤の含有量は潤滑剤層のそれより多くすることが好ましい。一方、潤滑剤層は成形層に比べ平滑な表面を有するため、潤滑剤層の潤滑剤の含有量が成形層のそれよりも多すぎると、光学シートが積み重ねられた場合に表面と裏面との間で貼り付きやすくなる。さらに、上記CsとCbとの差(Cs−Cb)は、以下の関係を満足することが好ましい。
0mg/m<(Cs−Cb)≦7.0mg/m
CsがCbより多く、且つCsとCbとの差(Cs−Cb)が7.0mg/m以下であれば、光学シートのブロッキング性をさらに改善することができる。また、上記潤滑剤の含有量の差の範囲であれば、成形層と潤滑剤層の潤滑剤の含有量の差が小さいため、両層の光学特性の相違も少ない。このため、耐擦傷性に優れるとともに、光学特性に優れる光学シートを得ることができる。
【0040】
潤滑剤層の潤滑剤としては、成形層の潤滑剤と同様の潤滑剤を使用することができる。これらの中でも成形層と同様に、潤滑剤層は脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくとも脂肪酸エステルを含有することがより好ましく、脂肪酸エステルと脂肪酸の両方を含有することがさらに好ましい。また、上記脂肪酸エステルとしては、成形層と同様の理由から、80℃以下の融点を有する脂肪酸エステルが好ましく、25℃以下の融点を有する脂肪酸エステルがより好ましい。また、脂肪酸としては、25〜80℃の融点を有する脂肪酸が好ましく、50〜70℃の融点を有する脂肪酸がより好ましい。さらに、脂肪酸エステルと脂肪酸の両方を含有する場合、脂肪酸エステルの融点よりも25℃以上高い融点を有する脂肪酸が好ましい。また、この場合、潤滑剤層中の脂肪酸エステルと脂肪酸との割合は、質量比で1:9〜9:1が好ましく、8:2〜3:7がより好ましく、8:2〜6:4がさらに好ましい。成形層から潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写することなく潤滑剤層を形成する場合には、潤滑剤層中の潤滑剤は成形層中の潤滑剤と異なる種類の潤滑剤であってもよい。成形層から潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写することにより潤滑剤層を形成する場合には、成形層の潤滑剤と同種の潤滑剤を含有する潤滑剤層を形成することができる。
【0041】
潤滑剤層は、潤滑剤以外に、滑り性に影響を与えない範囲で、他の添加剤を含有してよい。ただし、耐擦傷性を考慮すれば、実質的に潤滑剤のみを含有する潤滑剤層が好ましく、潤滑剤のみからなる潤滑剤層がより好ましい。
【0042】
本実施の形態の成形層と潤滑剤層との静止摩擦係数は、0.90以上が好ましい。静止摩擦係数が0.90以上であれば、多数の光学シートが重ねられて保存、搬送される際に、光学シートが動きにくい。また、成形層と潤滑剤層との動摩擦係数は、0.90以下が好ましい。動摩擦係数が0.90以下であれば、成形層と潤滑剤層とが擦れあっても、潤滑剤により成形層と潤滑剤層とが摩擦の低い状態で摺動する。このため、光学シートの保存、搬送時の傷の発生を防止することができる。
【0043】
次に、本実施の形態の光学シートの製造方法について説明する。光学シートの製造にあたっては、まず、活性エネルギー線硬化性樹脂及び潤滑剤を含有する樹脂溶液が調製される。可撓性支持体の裏面に潤滑剤層を形成するため、潤滑剤を含有する潤滑剤溶液を前記樹脂溶液とは別途調製し、活性エネルギー線硬化性樹脂及び潤滑剤を含有する成形層の形成前あるいは形成後に、該潤滑剤溶液を可撓性支持体の裏面に塗布して潤滑剤層を形成してもよい。ただし、成形層から潤滑剤を転写させることにより潤滑剤層を形成すれば、潤滑剤溶液の調製が不要になるとともに、潤滑剤溶液を可撓性支持体上に塗布する潤滑剤層形成工程を別途行うことも不要となる。さらに、常温で固体の潤滑剤を用いる場合、直接可撓性支持体の裏面に潤滑剤層を形成することができないため、固体の潤滑剤を溶媒に溶解した潤滑剤溶液を可撓性支持体に塗布し、さらに溶媒を除去するためにその塗布液を乾燥する必要があるが、成形層からの転写によればこのような潤滑剤層形成工程も設ける必要がない。従って、製造コストをさらに低減することができる。このため、以下では活性エネルギー線硬化性樹脂と潤滑剤とを含有する樹脂溶液を用い、成形層から潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写して潤滑剤層を形成する方法について説明する。
【0044】
活性エネルギー線硬化性樹脂と潤滑剤とを含有する樹脂溶液を調製する場合、潤滑剤の種類及び融点に応じて樹脂溶液中の潤滑剤の含有量を調整することが好ましい。例えば、60℃以上の比較的高い融点を有する脂肪酸エステルが使用される場合、前記潤滑剤は低融点の脂肪酸エステルに比べて成形層中での移動度が小さく、成形層から可撓性支持体の裏面への過度の転写を抑えることができるため、潤滑剤の含有量は樹脂成分(光開始剤を使用する場合、その合計量を含む)に対して0.5〜15質量%が好ましい。一方、好適な潤滑剤である25℃以下の比較的低い融点を有する脂肪酸エステルが使用される場合、前記潤滑剤は成形層中での移動度が大きく、成形層表面に滲出しやすいため、少量の使用で効率よく潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写することができる。このため、潤滑剤の含有量は、樹脂成分全量(光開始剤を使用する場合、その合計量を含む)に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。上記潤滑剤の量より少ないと、成形層中の潤滑剤の量が少なくなるとともに、転写される潤滑剤の量が少なくなり、光学シートの両面の摩擦係数が上昇して、耐擦傷性が劣化する傾向がある。上記潤滑剤の量より多いと、成形層中の潤滑剤の量が多くなるとともに、転写される潤滑剤の量が多くなり、貼り付きが生じやすくなる傾向がある。また、常温で固体の潤滑剤が使用される場合、ブリードアウトが生じて、外観不良となりやすい。
【0045】
図2は、本実施の形態の光学シートの製造装置の一例を示す概略構成図である。図2に示すように、この製造装置は、送り出しロール10a及び巻き取りロール10bを有する搬送部10と、活性エネルギー線硬化性樹脂及び潤滑剤を含む樹脂層5を可撓性支持体2上に形成するための樹脂層形成部20と、樹脂層5に所定の凹凸パターンを成型し、成型された樹脂層5を硬化するための転写部30とを有している。また、上記の転写部30は窒素ガス雰囲気(例えば、酸素濃度300ppm以下)で樹脂層5の硬化を行うために不図示の密閉ボックス内に配置されている。
【0046】
図2に示すように、まず、樹脂層形成部20において、コータ等からなる塗布手段21から一定の供給量で可撓性支持体2上に活性エネルギー線硬化性樹脂と潤滑剤とを含有する樹脂溶液が供給されて、可撓性支持体2の一面に未硬化の樹脂層5が形成される。塗布方法としては、従来公知のロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法等が挙げられる。塗布手段21は、樹脂層5の成型前であれば、特に配置される場所は制限されない。例えば、図3に示すように、塗布手段21は成形ロール31上に配置してもよい。
【0047】
樹脂層5が形成された可撓性支持体2は、次に転写部30に搬送される。この転写部30は、樹脂層2に凹凸パターンを成型する成形ロール31と、可撓性支持体2を成形ロール31に押圧するためのニップロール32と、凹凸パターンが成型された樹脂層5に活性エネルギー線Eを照射し樹脂層5を硬化させる照射手段34と、バックアップロール33と、活性エネルギー線Eの拡散を防止するための遮蔽板35とを有している。
【0048】
転写部30において、搬送されてきた可撓性支持体2は、樹脂層5が表面にエンボスパターン(図示せず)を有する成形ロール31に当接し、樹脂層5が形成された側と反対側の可撓性支持体2の裏面がニップロール32に当接するように、成形ロール31とニップロール32間に供給される。そして、ニップロール32で可撓性支持体2側から樹脂層5を成形ロール31に押し付け、成形ロール31上のエンボスパターンを樹脂層5に転写することにより、凹凸パターンが樹脂層5に成型される。そして、成型された樹脂層5に照射手段34から活性エネルギー線Eを照射することにより樹脂層5が硬化される。照射手段34は、樹脂層5を硬化することができれば、特に配置される場所は制限されない。例えば、図4に示すように、成形ロール31内に照射手段34を配置してもよい。この場合、成形ロール31としては、活性エネルギー線Eを透過する樹脂製ロールが用いられる。この方法によれば、可撓性支持体2が活性エネルギー線Eを透過しない材料からなる場合でも樹脂層5を硬化することができる。
【0049】
成形層3の凹凸パターンは、目的、用途に応じて種々の形状で形成される。例えば、凹凸の平均間隔(D)が0.01〜50μm、凹凸の平均高さ(H)が0.01〜50μm、凹凸の平均間隔(D)と凹凸の平均高さ(H)との比(D/H)が0.01〜100である凹凸パターンも形成可能である。図5は、本実施の形態の成形層に形成される凹凸パターンを例示する概略断面図である。図中、(a)は一定間隔の平坦な凹凸パターンを示し、(b)は、一定間隔のプリズム状の凹凸パターンを示し、(c)はランダムなプリズム状の凹凸パターンを示す。
【0050】
次に、成形層3が形成された可撓性支持体2を巻き取りロール10bでロール状に巻き取ることにより、原反ロール6が形成される。原反ロール6の巻き取り張力は、0.01〜1kg/mmが好ましく、0.05〜0.5kg/mmがより好ましく、0.1〜0.3kg/mmが最も好ましい。巻き取り張力が0.01kg/mm未満では、成形層3と可撓性支持体2の裏面との接触が不十分となり、潤滑剤が十分転写されない場合があり、また原反ロール6が変形しやすくなる。巻き取り張力が1kg/mmより大きいと、成形層3が強く押圧されるため、塵埃が可撓性支持体2の間に付着して、その形状が成形層3に転移する場合がある。
【0051】
上記のようにして形成された原反ロールは、成形層中の潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写して潤滑剤層を形成するために、30〜100℃でエージングすることが好ましい。エージングすることなく潤滑剤を成形層から可撓性支持体の裏面に転写することもできるが、ロール状態でエージングすることにより、成形層中の潤滑剤が成形層の表面に滲出しやすくなり、短時間で十分な量の潤滑剤を可撓性支持体の裏面に転写することができる。このため、樹脂溶液中の潤滑剤の添加量とエージング条件とを変更することにより、成形層及び潤滑剤層中の潤滑剤量を適宜調整することができる。エージング温度が30℃未満では、潤滑剤の融点にもよるが、成形層中の潤滑剤の移動が少なく、潤滑剤の滲出量が少なくなり、潤滑剤の転写が不十分となりやすく、また長時間のエージングが必要となる。エージング温度が100℃より高いと、潤滑剤が多量に転写されて貼り付きが生じやすくなり、また可撓性支持体の変形が生じやすい。エージングは、可撓性支持体の変形が生じない温度であれば、長時間行ってもよいが、生産性を考慮すれば、通常24時間〜1週間であり、好ましくは24〜48時間である。
【0052】
本実施の形態の光学シートは、上記のようにして作製される原反ロールを所定長さに裁断することにより製造することができる。このようにして得られる光学シートは、耐擦傷性が向上しているため、種々の用途に使用することができる。例えば、レンチキュラレンズやフライアイレンズ等の微細なレンズを有するレンズシート、プリズムシート、反射防止フィルム等の他、情報記録媒体のトラック層形成用シートとして使用することもできる。
【0053】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1〜14及び比較例1〜5)
表1〜3に示す組成を有する樹脂溶液をそれぞれ調製した。なお、表中、「部」とあるのは、「質量部」を意味する。調製にあたっては、活性エネルギー線硬化性樹脂単独及び樹脂溶液の粘度(25℃)を、東機産業製のE型粘度計(回転数:10rpm)で測定した。また、調製した樹脂溶液の状態(25℃)を目視により確認した。
原反ロールの作製にあたっては、図1に示す製造装置を用いた。まず、樹脂層形成部において、連続搬送されるPETフィルム(厚さ:188μm,Ra:0.01μm,Rz:0.3μm)上に、樹脂溶液を塗布して、樹脂層を形成した。その後、転写部において、樹脂層を、可撓性支持体の搬送速度と同速で回転するレンチキュラ形状の凹凸パターンを有する成形ロール(凹凸の平均間隔(D):40μm,凹凸の平均高さ(H):20μm,D/H:2)に当接させ、樹脂層が成形ロールに押し当てられた状態で、高圧水銀ランプから紫外線(1000mJ/cm)を照射し樹脂層を硬化することにより、凹凸パターンを有する成形層を形成した。ついで、巻き取り張力0.1kgf/mmでロール状に可撓性支持体を巻き取ることにより、原反ロールを作製した。
【0055】
(比較例6)
可撓性支持体として、成形層が形成される面の裏面に厚さ5μmのバックコート層を有する可撓性支持体を用いた以外は、比較例1と同様にして原反ロールを作製した。バックコート層は、成形層の活性エネルギー線硬化性樹脂と同一の樹脂のみを含有する樹脂溶液を可撓性支持体の一面に塗布し、この塗布膜に紫外線を照射して形成した。
【0056】
上記のようにして作製した実施例1〜14及び比較例1〜6の各原反ロールについて、表1〜3に示す条件で、それぞれ48時間エージングした後、一定長さに裁断して各光学シートを作製した。
【0057】
(比較例7)
比較例5と同様にして作製した原反ロールからシートを切り出し、このシートの成形層が形成された面の裏面に、0.5質量%のステアリン酸ブチル溶液(溶媒:n−ヘキサン)をバーコートした後、乾燥して光学シートを作製した。
【0058】
上記のようにして作製した各光学シートを用いて、以下の評価を行った。
【0059】
[脂肪酸エステル量]
25℃下で、光学シートの表面、裏面をそれぞれヘキサンで洗浄し、洗浄液中に各面から洗い出されてきた脂肪酸エステルの量を測定した。なお、比較例2ではシリコーン系化合物の量を測定した。
【0060】
[摩擦係数]
25℃,50%RH下、光学シートの各面のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300)に対する動摩擦係数を測定した。測定条件は、荷重を20g/mm、摺動距離を50mm、摺動速度を1000mm/min、摺動回数を2往復とした。
【0061】
[鉛筆硬度]
25℃,50%RH下、光学シートの成形層の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4に準じて測定した。
【0062】
[耐擦傷性]
光学シート10枚を、光学シートの表面と裏面とが向き合う状態で積層し、光学シート間に1m当たり1gのアクリルビーズ(粒径:1〜3μm)を散布した後、テープで外周を固定して測定試料を作製した。上記のようにして作製した測定試料を、振動試験機(株式会社振研製G−5230NS)を用いてX、Y及びZ方向に各1時間、振動数10〜100Hzで振動させた。重力加速度は、2Gと4Gの2種類で行った。振動後、測定試料を開き、光学シートのアクリルビーズと接触していた両面を目視により観察し、傷がない場合を、○、傷がある場合を、×として評価した。
【0063】
[外観]
光学シートを13cm×15cmの大きさに裁断した測定試料を作製した。この測定試料を平らな金属板の上に置き、金属板からの反りの高さ及び金属板からのうねりの高さの最大値を測定した。両高さが1mm以下である場合を、1、いずれか一方の高さが1〜2mmである場合を、2、いずれか一方の高さが2mmより大きい場合を、3とした。
【0064】
[ブロッキング性]
光学シート10枚を、光学シートの表面と裏面とが向き合う状態で積層し、この積層体の上に荷重が30kg/mとなるように錘を置いた測定試料を作製し、この測定試料を40℃80%RHの環境下で24時間保存した。保存後、光学シートを手で剥がした時のシート同士の貼り付き状態を観察し、シート同士の貼り付きがないものを、○、若干シート同士の貼り付きがあるものを、△、シート同士が貼り付き、シートの剥離が難しいものを、×として評価した。
【0065】
表1〜3に光学シートの作製条件、及び評価結果を併せて示す。なお、表中の略号は以下を示す。
a)HPPA:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(単官能アクリルモノマー,n=1.526,200mPa・s(25℃))
b)PEGA:フェノキシエチレングリコールアクリレート(単官能アクリルモノマー,n=1.519,10mPa・s(25℃))
c)HEA :2−ヒドロキシエチルアクリレート(単官能アクリルモノマー,n=1.447,5mPa・s(25℃))
d)AEPP:2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン(2官能アクリルモノマー,n=1.543,1500mPa・s(25℃))
e)NPGA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(2官能アクリルモノマー,n=1.450,5mPa・s(25℃))
f)PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(3官能アクリルモノマー,n=1.485,800mPa・s(25℃))
g)OO:オレイン酸オレイル(融点:<5℃)
h)SB:ステアリン酸ブチル(融点:21℃)
i)SS:ステアリン酸ステアリル(融点:66℃)
j)BYK−377:ビックケミー社製BYK−377(シリコーン系化合物,融点:0℃以下)
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
上記表に示すように、実施例の樹脂溶液は活性エネルギー線硬化性樹脂と脂肪酸エステルとを含有しているが、樹脂中に脂肪酸エステルが均一に分散されるため、無色透明な樹脂溶液を調製することができる。また、実施例の光学シートは、活性エネルギー線硬化性樹脂と脂肪酸エステルとを含有する樹脂溶液を用いて成形層を形成し、成形層形成後に原反ロールを30〜80℃でエージングすることにより、成形層から可撓性支持体の裏面に脂肪酸エステルが効率よく転写され、潤滑剤層が形成されることが分かる。そして、脂肪酸エステルの転写によって、0.1〜28.8mg/mの脂肪酸エステルを有する成形層と、0.06〜9.5mg/mの脂肪酸エステルを有する潤滑剤層を形成できることが分かる。このため、いずれの光学シートも両面の摩擦係数が低く、滑り性が改善されており、耐擦傷性に優れている。特に、脂肪酸エステルとしてステアリン酸ブチルを用いて作製された光学シートは、他の脂肪酸エステルを用いて同一条件で作製された光学シートに比べ、両面の摩擦抵抗がいずれも低く、滑り性に優れていることが分かる。さらに、実施例では、30〜80℃のエージングにより脂肪酸エステルを成形層から可撓性支持体の裏面に転写できるため、反りやうねりの少ない光学シートが得られることが分かる。特に、エージング温度が30〜60℃の実施例では、反り及びうねりが極めて少ない光学シートを得ることができる。さらに、成形層の潤滑剤量が潤滑剤層のそれより多く、且つその差が6.4mg/m以下の光学シートは耐擦傷性に優れるとともに、ブロッキング性にも優れていることが分かる。
【0070】
これに対して、成形層に脂肪酸エステルを含有していない比較例の光学シートは摩擦係数が高くなり、耐擦傷性が劣っていた。また、潤滑性能を有するシリコーン系化合物を含有する樹脂溶液を用いた比較例では、樹脂溶液調製時に白濁が生じ、均一な樹脂溶液が形成できなかった。また、この比較例の光学シートは、両面にシリコーン系化合物が多量に存在することが分かる。これは、シリコーン系化合物が活性エネルギー線硬化性樹脂中に均一に分散されず、シリコーン系化合物が成形層の表面付近に偏在するためと考えられる。このため、測定限度を超えるほど摩擦係数が上昇し、耐擦傷性が低下する。また、脂肪酸エステルを含有する樹脂溶液を用いて形成された成形層を有する光学シートでも、成形層中または潤滑剤層中の脂肪酸エステル量が多すぎるまたは少なすぎる場合、耐擦傷性が十分に改善されないことが分かる。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するバックコート層を設けた比較例の光学シートは、摩擦係数が高く、振動条件が厳しい場合傷が発生した。
【0071】
(実施例15〜16)
表4に示す組成を有する樹脂溶液をそれぞれ調製し、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0072】
作製した光学シートを用い、上記実施例と同様にして、脂肪酸エステル及び脂肪酸の合計量、動摩擦係数、鉛筆硬度、耐擦傷性、及び外観を評価した。なお、脂肪酸エステルと脂肪酸との割合(質量比)は、ガスクロマトグラフィにより測定した。さらに、これらの光学シート、及び実施例2で作製した光学シートを用いて、以下のサイクル試験における耐擦傷性を評価した。
【0073】
[サイクル試験]
光学シート10枚を、光学シートの表面と裏面とが向き合う状態で積層し、光学シート間に1m当たり1gのアクリルビーズ(粒径:1〜3μm)を散布した後、テープで外周を固定して測定試料を作製した。上記のようにして作製した測定試料を、振動試験機(株式会社振研製G−5230NS)を用いてX、Y及びZ方向にサイクル温度環境下、振動数10〜100Hzで振動させた。サイクル条件は、25℃3時間→60℃3時間→25℃3時間→−20℃3時間を1サイクルとし、この条件を4サイクル繰り返した。また、重力加速度は、2Gと4Gの2種類で行った。振動後、測定試料を開き、光学シートのアクリルビーズと接触していた両面を目視により観察し、傷がない場合を、○、傷がある場合を、×として評価した。
【0074】
表4はこれらの結果を示す。なお、表中の略号は表1と同様であり、RA及びSAは以下を示す。
k)RA:ラウリン酸(mp:44℃)
l)SA:ステアリン酸(mp:70℃)
【0075】
【表4】

【0076】
上記表に示すように、潤滑剤として脂肪酸エステルと脂肪酸とを併用しても、白濁のない樹脂溶液を調製できることが分かる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂、脂肪酸エステル、及び脂肪酸を含有する樹脂溶液を用いて成形層を形成し、成形層形成後に原反ロールをエージングすることにより、成形層から可撓性支持体の裏面に脂肪酸エステル及び脂肪酸が転写され、潤滑剤層が形成されることが分かる。そして、脂肪酸エステル及び脂肪酸を含有する成形層及び潤滑剤層を形成することにより、両面の摩擦係数が低減され、滑り性が改善されることが分かる。このため、これらの光学シートは耐擦傷性に優れている。
【0077】
さらに、脂肪酸エステルと脂肪酸の両方を含有する成形層及び潤滑剤層を形成することにより、低温から高温のサイクル試験において耐擦傷性がさらに改善されることが分かる。特に、70℃程度の比較的高い融点を有し、脂肪酸エステルの融点よりも25℃以上高い融点を有する脂肪酸と、脂肪酸エステルとを併用した場合、この効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学シートを製造するための製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学シートを製造するための製造装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光学シートを製造するための製造装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図5】成形層の凹凸パターンを例示する概略断面図であり、(a)は一定間隔の平坦な凹凸パターンを示し、(b)は、一定間隔のプリズム状の凹凸パターンを示し、(c)はランダムなプリズム状の凹凸パターンを示す。
【符号の説明】
【0079】
1 光学シート
2 可撓性支持体
3 成形層
4 潤滑剤層
5 樹脂層
6 原反ロール
31 成形ロール
E 活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体と、
前記可撓性支持体の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂、及び0.02〜30.0mg/mの潤滑剤とを含有する成形層と、
前記可撓性支持体の裏面に、0.02〜10.0mg/mの潤滑剤を含有する潤滑剤層とを有する、光学シート。
【請求項2】
前記成形層は、前記潤滑剤層よりも潤滑剤を多く含有する請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記成形層の潤滑剤の含有量をCs、前記潤滑剤層の潤滑剤の含有量をCbとしたとき、CsとCbとの差(Cs−Cb)が以下の関係を満足する請求項1に記載の光学シート。
0mg/m<(Cs−Cb)≦7.0mg/m
【請求項4】
前記成形層及び潤滑剤層は、前記潤滑剤として、脂肪酸エステル、及び脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルは、80℃以下の融点を有する請求項4に記載の光学シート。
【請求項6】
前記脂肪酸エステルは、25℃以下の融点を有する請求項4に記載の光学シート。
【請求項7】
前記脂肪酸は、25〜80℃の融点を有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項8】
前記脂肪酸は、前記脂肪酸エステルの融点よりも25℃以上高い融点を有する請求項4〜7のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項9】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、ビスフェノールA骨格を有するジアクリレートまたはジメタクリレートを主成分として含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項10】
連続搬送される可撓性支持体の表面に設けられた活性エネルギー線硬化性樹脂と樹脂成分全量に対して0.01〜5質量%の潤滑剤とを含有する樹脂層に成形ロールを当接させて前記樹脂層を成型し、
前記成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより樹脂層を硬化して成形層を形成し、
前記成形層が形成された可撓性支持体をロール状に巻き取って原反ロールを形成し、
前記原反ロールを、30〜100℃の温度でエージングする、光学シートの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層は、前記潤滑剤として、25℃以下の融点を有する脂肪酸エステルを少なくとも含有する請求項10に記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−9099(P2009−9099A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98065(P2008−98065)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】