輻射熱反射・遮熱体及びこの輻射熱反射・遮熱体を用いた凍結予防ヒーター装置
【課題】ヒーターの消費電力を抑えて省エネルギー化を図ること。
【解決手段】輻射熱を反射、遮熱させる輻射熱反射・遮熱材にて輻射熱反射・遮熱体20を形成する。輻射熱反射・遮熱体20は下面を開口した箱状に形成されており、パイプ10に装着されているヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20にて覆設する。ヒーター本体1が通電されると、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて図中矢印イに示すように、反射、遮熱される。外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱される。ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。
【解決手段】輻射熱を反射、遮熱させる輻射熱反射・遮熱材にて輻射熱反射・遮熱体20を形成する。輻射熱反射・遮熱体20は下面を開口した箱状に形成されており、パイプ10に装着されているヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20にて覆設する。ヒーター本体1が通電されると、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて図中矢印イに示すように、反射、遮熱される。外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱される。ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機内に配管されている給排水用のパイプの凍結予防に用いられる輻射熱反射・遮熱体及びこの輻射熱反射・遮熱体を用いた凍結予防ヒーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯機内の給排水用のパイプの凍結予防の目的に使用されているこの種のヒーターは、直方体状のケースに発熱体を収容し、該ケース内に絶縁性の充填剤を充填したものである。図17はこの種の既存のヒーター本体1を示し、図17(a)はヒーター本体1の平面図を、図17(b)はヒーター本体1の正面図をそれぞれ示している。
このヒーター本体1は、セラミック製で一面を開口した直方体状のケース2と、このケース2内に納装されて該ケース2の両端よりリード線4を側方へそれぞれ導出させている発熱体3と、この発熱体3を保護する形でケース2内に絶縁性でセメント剤からなる充填剤5とで構成されている。
【0003】
また、ケース2の両側には溝(図示せず)が凹設されており、この溝を介して前記発熱体3のリード線4が外側方へそれぞれ導出されている。そして、このリード線4の基部側の溝の部分をシリコン樹脂にて封止しており、この封止している部分を封止部6としている。
【0004】
このヒーター本体1は、給湯機内に配管されているパイプに取り付けられるために、ヒーター本体1の他面側の形状は、図18に示すように、断面を略半円状とした凹部7が形成されている。また、図19に示すように、凹部7を断面を略三角形状としたものも提供されている。
そして、図20及び図21に示すように、ヒーター本体1の凹部7側をパイプ10の外面に接触させて銅製のパイプ10の長手方向と該ヒーター本体1の長手方向とを合わせるようにして配設し、その上から取付金具(図示せず)にて該ヒーター本体1をパイプ10の表面に装着するようにしている。
【0005】
なお、給湯機内で複数のヒーター本体1がパイプ10の要所に配置されていて、各ヒーター本体1は直列あるいは並列に接続されている。そして、給湯機内の温度が予め設定した所定の温度に低下すれば、図外の制御部によりヒーター本体1の発熱体3に電源が通電され、該ヒーター本体1の熱がパイプ10へ熱伝達してパイプ10内の水が凍結しないように予防している。
また、所定の温度まで上昇した場合には、パイプ10内の水は凍結しないものとしてヒーター本体1の発熱体3への通電が遮断されるようになっている。
【0006】
この種のヒーターとしては、例えば下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−284230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1では、上記ヒーター本体1と同種類のヒーターが用いられており、また、ヒーターを発熱させたとき、表面温度を低く抑えて、周囲の低耐熱部品が接触しても、損傷させないようにするために、ヒーターを覆うヒータカバーを設けている。
このヒータカバーは、発熱体であるヒーターに周囲の低耐熱部品が直接接触しないようにしたものであり、ヒータカバーには周囲の低耐熱部品が直接接触しても部品の損傷を防ぐようにしたものである。
【0009】
特に、この特許文献1では、周囲の低耐熱部品がヒータカバーに接触しても損傷を防ぐようにしたものであって、ヒーターの消費電力を抑えて省エネルギー化を図るという技術思想が存在していない。また、後述するように本発明では、この特許文献1のヒータカバーと同様にヒーター本体1を覆う部材を用いているものの、本発明の部材と特許文献1のヒータカバーとでは、目的及び作用効果を全く異にするものであり、根本的に技術思想が異なるものである。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、ヒーターの消費電力を抑えて省エネルギー化を図ることを目的とした輻射熱反射・遮熱体及びこの輻射熱反射・遮熱体を用いた凍結予防ヒーター装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の請求項1に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面と前記ヒーター本体1との間には隙間23を設けていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材25を設け、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体1からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材27を設け、
前記第1の輻射熱反射・遮熱材25と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間には隙間26を設けていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記ヒーター本体1の両側からリード線4がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体20の側部の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25及び第2の輻射熱反射・遮熱材27は設けていないことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25を保形させる支持体24を備え、該支持体24の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の隙間26は複数のスペーサー28にて形成され、前記隙間26の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第2の輻射熱反射・遮熱材27の断面形状を略逆U字状としていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25または/および第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料としてアルミフォイルを用いていることを特徴としている。
【0017】
請求項7に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20は、
全体の形状を維持させるための支持体24と、
前記支持体24の外面の略全面にわたって第1の隙間36を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材25と、
前記支持体24の内面の略全面にわたって第2の隙間26を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材27とで構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項8に記載の凍結予防ヒーター装置では、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体20と、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体20にて略全体が覆われるヒーター本体1とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面と前記ヒーター本体1との間には隙間23を設けているので、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて反射、遮熱される。そのため、輻射熱反射・遮熱体20の内部では、輻射熱反射・遮熱体20が無い場合と比べて温度は高く維持されることになる。
また、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて反射、遮熱される。そのため、低温である外部からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20にて反射、遮熱されるために、輻射熱反射・遮熱体20の内部の温度をほとんど低下させることはない。これにより、ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達ないし伝導させることができる。そのため、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材25を設け、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体1からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材27を設け、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間には隙間26を設けているので、輻射熱反射・遮熱体20内では、ヒーター本体1からの輻射熱は第2の輻射熱反射・遮熱材27にて反射、遮熱されて、熱が輻射熱反射・遮熱体20内にこもり、輻射熱反射・遮熱体20内の温度の低下を防止している。
また、外気からの輻射熱は、第1の輻射熱反射・遮熱材25にて反射、遮熱されて、輻射熱反射・遮熱体20内の熱の低下を防止している。さらに、輻射熱を反射、遮熱する第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27と熱伝導をしにくくする空気層である隙間26との相乗効果により、外気の温度が0℃以下となっても、ヒーター本体1の熱は外部と反射、遮熱にて遮断されて、ヒーター本体1自体が冷却されにくくなり、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達している。
これらは、単にヒーター本体1をカバーで覆って熱の伝導を遅くさせるという熱伝導を利用した技術思想では、ヒーター本体1の省エネルギー化にはあまり効果が無いと考えられる。ヒーター本体1からの高温の輻射熱を反射、遮熱し、また外気の低温の輻射熱を反射、遮熱するという本発明の技術思想によりヒーター本体1の消費電力を抑えることができて省エネルギー化を達成できたものである。
このように、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆う場合と、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに裸の状態でヒーター本体1を使用する場合とでは、大きな差があるという実験結果を得た。したがって、輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、ヒーター本体1のワット数を小さくでき、省エネルギー化を図ることができるものである。例えば、16Wの標準品のヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、12Wの消費電力のヒーター本体1を使用することができ、約25%の省電力化を図ることができた。
【0021】
請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記ヒーター本体1の両側からリード線4がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体20の側部(側片31)の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25及び第2の輻射熱反射・遮熱材27は設けていない場合でも、槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
請求項4に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25を保形させる支持体24を備え、該支持体24の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の隙間26は複数のスペーサー28にて形成され、前記隙間26の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることで、消費電力が16Wの標準品と比べて、消費電力が12Wのヒーター本体1でも槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0023】
請求項5に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第2の輻射熱反射・遮熱材27の断面形状を略逆U字状としている場合でも、測定結果から、ヒーター本体1が12Wでも16Wの標準品の場合と比べて槽内温度が−20℃までの良好な結果を得ることができた。
【0024】
請求項6に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25または/および第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料としてアルミフォイルを用いた場合でも、図13のCに示すように、図13のAの標準品はもちろん、Bの場合よりもパイプ10内の水温を高めにすることができるという結果を得た。
したがって、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として、やや特殊で少し高価なサーモプロテクトを用いるよりも、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として市販で料理用のアルミフォイルにて十分な効果を得ることができる。
【0025】
請求項7に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20は、全体の形状を維持させるための支持体24と、前記支持体24の外面の略全面にわたって第1の隙間36を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材25と、前記支持体24の内面の略全面にわたって第2の隙間26を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材27とで構成していることで、第1の隙間36は、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27との間に形成されている第2の隙間26と同様の作用効果を持たせることができ、一層省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
請求項8に記載の凍結予防ヒーター装置によれば、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体20と、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体20にて略全体が覆われるヒーター本体1とを備えていることで、ヒーター本体1からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面で反射、遮熱され、外気からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の外面で反射、遮熱されることで、ヒーター本体1の消費電力が少なくても、パイプ10の水の凍結予防ができ、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態における凍結予防ヒーター装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるパイプの表面に取り付けられているヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるパイプの表面に取り付けられているヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体を用いない場合の各部の温度を測定するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体を用いた場合の各部の温度を測定するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の横方向の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の縦方向の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した場合の動作説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における支持体の内面を表にした展開図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図17】(a)(b)は既存のヒーターの平面図及び正面図である。
【図18】凹部の断面を略半円状としたヒーターの側面図である。
【図19】凹部の断面を略三角形状としたヒーターの側面図である。
【図20】パイプにヒーターを取り付けた状態を示す図である。
【図21】パイプにヒーターを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態を図面(図1〜図3)を参照して詳細に説明する。本発明は、ヒーター本体1からパイプ10へは、従来と同様に既存のヒーター本体1の熱を伝達して、パイプ10内の水が凍結するのを予防するのである。しかし、本発明では、ヒーター本体1からの輻射熱(電磁波)を反射・遮熱したり、外部からのヒーター本体1への輻射熱(電磁波)を反射、遮熱することで、ヒーター本体1の消費電力を少なくしてもパイプ10内の水の凍結を予防するようにしたものである。
【0029】
ところで、すべての熱は、対流・伝導・輻射の3つの要素で移動するものであり、これを熱移動の三要素と言われている。その熱移動の割合は、上下左右方向を平均すると対流熱15%、伝導熱10%、輻射熱75%程度と言われている。このことから、熱損失のほとんどが熱伝導と対流によって起こるのではなく、輻射熱によるものと言える。
【0030】
そこで、本発明では、輻射熱(電磁波)を反射、遮熱する部材である輻射熱反射・遮熱材にて構成した輻射熱反射・遮熱体でヒーター本体1を覆い、輻射熱反射・遮熱体の内部ではヒーター本体1からの輻射熱を外部へ透過させないように反射、遮熱し、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体内へ透過しないように輻射熱反射・遮熱体にて外部へ反射させ、また遮熱するようにしたものである。
【0031】
図1は、凍結予防ヒーター装置の分解斜視図を示し、この凍結予防ヒーター装置は、給湯機内に配管されているパイプ10と、このパイプ10に取り付けられる既存のヒーター本体1と、このヒーター本体1を覆う輻射熱反射・遮熱体20とで構成されている。パイプ10やヒーター本体1は従来例の欄で説明したものと同じ部材である。
輻射熱反射・遮熱体20は、輻射熱を反射、遮熱させる輻射熱反射・遮熱材からなり、下面を開口した箱状に形成されている。この輻射熱反射・遮熱体20の両側にはヒーター本体1のリード線4を挿通させる溝21が切り欠き形成され、さらにこの溝21の下部と連通しパイプ10の表面の形状に合わせて湾曲した切欠部22が形成されている。
【0032】
図2は、パイプ10の表面に取り付けられているヒーター本体1の上から輻射熱反射・遮熱体20を被せた状態を示し、図3はその断面図を示している。なお、本発明は、ヒーター本体1や輻射熱反射・遮熱体20のパイプ10への取付構造を要旨とするのではなく、原理的な構造を要旨とするものであるから、パイプ10へのヒーター本体1の取付金具や、輻射熱反射・遮熱体20のパイプ10への取付金具等の取付構造は図示省略している。
【0033】
輻射熱反射・遮熱体20でヒーター本体1を覆うようにしてパイプ10に装着した状態では、図2及び図3に示すように、ヒーター本体1の外面と、輻射熱反射・遮熱体20の内面との間には隙間23が形成されるようになっている。この隙間23にて空気層が形成されている。
【0034】
ヒーター本体1が通電されると、ヒーター本体1は発熱してパイプ10に熱伝達してパイプ10内の水が凍結しないようにする。一方、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて図中矢印イに示すように、反射、遮熱される。そのため、輻射熱反射・遮熱体20の内部では、輻射熱反射・遮熱体20が無い場合と比べて温度は高く維持されることになる。
【0035】
また、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱される。そのため、低温である外部からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20にて反射、遮熱されるために、輻射熱反射・遮熱体20の内部の温度をほとんど低下させることはない。これにより、ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達ないし伝導させることができる。
そのため、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。なお、この技術思想を証明するために、次の実施形態で具体的に説明していく。また、輻射熱反射・遮熱体20の材料も後述する。
【0036】
(第2の実施の形態)
図4〜図10により第2の実施形態を説明する。図4は雰囲気温度を3℃からマイナス20℃まで変化させたときのヒーター本体1、パイプ10、パイプ10内の水の温度を測定する場合の実験装置を示しており、図4の場合は上記輻射熱反射・遮熱体20を用いずに、ヒーター本体1のみの場合を示している。
実験用の槽51内の底面には台座52を置き、この台座52の上に略コ字型に折曲ないし曲成したパイプ10を配置し、このパイプ10の略中央部分にヒーター本体1を配置している。
【0037】
図4において、ポイントP1は、ヒーター本体1の温度を測定するポイントであり、ポイントP2、P3は、パイプ10の表面温度を測定するポイントであり、ヒーター本体1の中央部分から約100mm離れた箇所としている。また、ポイントP4は、パイプ10内に位置し、パイプ10内の水の温度を測定するポイントであり、パイプ10は、直径15mmで40ccの水を入れている。ポイントP5は槽51の内部の温度を測定するポイントである。
【0038】
各ポイントP1〜5での温度測定は周知の温度センサを用いており、槽51の内部の温度を3℃から−20℃まで変化させたときの各部の温度を測定する。図4で用いたヒーター本体1は、消費電力が16Wの標準品であり、この標準品を用いた場合と、標準品より消費電力が少ない12Wのヒーター本体1で上記輻射熱反射・遮熱体20を用いた場合の各部の温度の測定結果を比較することで、省エネルギー化を実証しようとするものである。
図5は、図4の場合と同様の構成であるが、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆った場合の図である。
【0039】
図6は本実施形態における輻射熱反射・遮熱体20の斜視図を示し、図7は輻射熱反射・遮熱体20の横方向の断面図を、図8は輻射熱反射・遮熱体20の縦方向の断面図をそれぞれ示している。
先の実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20を1つの輻射熱反射・遮熱材にて構成していたが、本実施形態では、複数の部材で複数層の構成で輻射熱反射・遮熱体20を形成している。
【0040】
図7及び図8に示すように、本実施形態の輻射熱反射・遮熱体20は、下面を開口した箱状の支持体24と、この支持体24の外側の表面の全面に密着して配設した第1の輻射熱反射・遮熱材25と、上記支持体24の内面の全面にわたって隙間26を介して配設した第2の輻射熱反射・遮熱材27と、上記隙間26を形成すべく支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27の外面との間に介在させた複数のスペーサー28とで構成されている。
【0041】
ここで、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27は、ハウスサポート倶楽部という会社から販売されているサーモプロテクトS(商品名 TP−S)という輻射熱反射・遮熱材を用いており、この輻射熱反射・遮熱材の厚さは0.2mmである。このサーモプロテクトを用いた場合、厚さが若干薄いために、箱状の形を維持させるためにステンレス製の支持体24を用いており、この支持体24の厚みは1mmとしている。
また、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27の外面との間の隙間26を略全面にわたって約2mmとしており、この隙間26を形成すべくスペーサー28の厚みを2mmとしている。
【0042】
なお、ヒーター本体1は高温となるため、支持体24にはステンレスを用いており、また、スペーサー28も同様に金属製を用いている。もちろん、支持体24やスペーサー28に耐熱性の合成樹脂を用いても良い。第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27はもちろん耐熱性を備えているものであり、表面は純度の高いアルミで形成されている。
【0043】
図9は、パイプ10の表面にヒーター本体1を配設し、そのヒーター本体1を覆うようにして輻射熱反射・遮熱体20を配設した状態を示している。
【0044】
図10Aは、ヒーター本体1の入力ワット数(消費電力)が16Wの標準品(現在、給湯機内で実際に使用されているヒーター)で、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに、図4の状態で各部の温度を測定した結果を示し、図10Bは、ヒーター本体1の入力ワット数(消費電力)を12Wとして、図5に示すようにヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20にて覆って測定した結果を示している。
また、図10Cは、12Wのヒーター本体1を用いて輻射熱反射・遮熱体20を使用せずに測定した結果を示している。
【0045】
図10において、槽内設定温度は、12時間かけて徐々に3℃から−20℃まで降下させ、槽内温度が−20℃になってから2時間、−20℃を保持している。「ヒーター本体温度」で、「max温度」は、通電してからのヒーター本体1の最高に上昇した温度を示し、槽内温度の0℃、−10℃、−20℃、−20℃飽和時点での温度をそれぞれ左側に記載している。槽内温度が低下するにしたがいヒーター本体1の温度も徐々に低下している。
【0046】
「左、右パイプ温度」は、図4及び図5に示すように、本来は左右の温度であるが、左右の温度がほぼ同一だったので、各左側に各槽内温度に対応した温度を記載している。「max温度」は、通電してから最高温度を示している。パイプ10の温度も槽内温度が低下するにしたがい徐々に低下している。
「水温」は、パイプ10内の水の温度を示し、「max温度」は上記と同様に通電してからの最高の温度を示している。槽内温度が低下するにしたがい水温も低下し、実際に使用されている16Wの標準品で、槽内温度が0℃の時に、パイプ10内の水温が25.3℃、槽内温度が−10℃の時に水温が15.6℃、槽内温度が−20℃の時に水温が4.2℃、槽内温度が−20℃の飽和時に水温が4.2℃という測定結果を得た。
【0047】
ヒーター本体1に16Wの標準品を用いていることで、ヒーター本体1からの熱がパイプ10に伝達されて、この熱伝達により槽内温度(雰囲気温度)が−20℃になった場合や、−20℃を2時間保持させた場合でも、パイプ10内の水温は共に4.2℃であり、パイプ10内の水が凍結するのを予防している。
【0048】
一方、ヒーター本体1のワット数を12Wとして、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆って測定した場合は、図10Bに示す通りである。すなわち、各槽内温度におけるヒーター本体1の温度は、Aの場合と比べて少し低くなるものの、パイプ10の温度及びパイプ10内の水温は、Aの場合よりも高いという結果を得た。
槽内温度が−20℃及び−20℃を2時間保持させた場合では、Aの4.2℃に対して6.6℃であり、16Wの標準品の場合よりも温度が高いという結果を得た。そのため、パイプ10内の水は一層凍結の予防効果が高いということである。しかも、ヒーター本体1の消費電力は、12Wであり、16Wに対して消費電力を25%も抑えることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
図10Cは、ヒーター本体1のワット数を12Wとし、輻射熱反射・遮熱体20を用いない場合を示しており、−20℃や−20℃を2時間保持した場合におけるパイプ10内の水温は、0.6℃、0.3℃となり、氷点下に近くなり、16Wの標準品と比べても大きく低下している。
したがって、省電力化を図るために、ヒーター本体1のワット数を12Wを用いた場合であって、輻射熱反射・遮熱体20を使用しない場合には、実使用には適さないという結果を得た。
【0050】
この実験結果(測定結果)から第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27を用いた場合、消費電力を抑えているにもかかわらず、パイプ10内の水温が標準品の場合よりも高くなり、凍結予防という良好な結果を得たことに関して、理論的に明確な理由が分からないが、以下のことが考えられる。
すなわち、図9に示すように、輻射熱反射・遮熱体20内では、ヒーター本体1からの輻射熱は第2の輻射熱反射・遮熱材27にて図中矢印イに示すように反射、遮熱されて、熱が輻射熱反射・遮熱体20内にこもり、輻射熱反射・遮熱体20内の温度の低下を防止している。
【0051】
また、外気からの輻射熱は、第1の輻射熱反射・遮熱材25にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱されて、輻射熱反射・遮熱体20内の熱の低下を防止している。さらに、支持体24と第2の輻射熱反射・遮熱材27の間に形成した隙間26による空気層により、第1の輻射熱反射・遮熱材25及び支持体24と、第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の熱伝導がほとんど阻止されていることで、つまり、輻射熱を反射、遮熱する第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27と熱伝導をしにくくする空気層である隙間26との相乗効果により、外気の温度が0℃以下となっても、ヒーター本体1の熱は外部と反射、遮熱にて遮断されて、ヒーター本体1自体が冷却されにくくなり、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達しているものと考えられる。
【0052】
これらは、単にヒーター本体1をカバーで覆って熱の伝導を遅くさせるという熱伝導を利用した技術思想では、ヒーター本体1の省エネルギー化にはあまり効果が無いと考えられる。ヒーター本体1からの高温の輻射熱を反射、遮熱し、また外気の低温の輻射熱を反射、遮熱するという本発明の技術思想によりヒーター本体1の消費電力を抑えることができて省エネルギー化を達成できたものである。
【0053】
このように、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆う場合と、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに裸の状態でヒーター本体1を使用する場合とでは、大きな差があるという実験結果を得た。
したがって、輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、ヒーター本体1のワット数を小さくでき、省エネルギー化を図ることができるものである。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図11は上記支持体24を内面から見た展開図を示し、第2の実施形態では、リード線4を挿通させる両側の側片31の内面側にも隙間26を介して第2の輻射熱反射・遮熱材27を配設していたが、本実施形態では、この両側の側片31の内面には第2の輻射熱反射・遮熱材27を設けずに、側片31以外の支持体24の内面に第2の輻射熱反射・遮熱材27を設けたものである。
そのため、輻射熱反射・遮熱体20の断面図は、図9の場合と同じとなる。なお、支持体24の側片31の下端面はパイプ10の表面と接触している。
【0055】
また、第2の実施形態では、第2の輻射熱反射・遮熱材27にサーモプロテクト(商品名)を用いていたが、このサーモプロテクトはアルミを用いていることから、図12に示すように、市販されている料理用のアルミフォイルを用いて実験をした。なお、サーモプロテクトも市販されているが、アルミフォイルの方がより安価であることからアルミフォイルを用いて実験をした理由である。その測定結果を図13に示す。
【0056】
図13Aは図10のAと同様にヒーター本体1に16Wの標準品を用いた場合であり、図13Bはヒーター本体1は12Wで第2の輻射熱反射・遮熱材27にサーモプロテクトを用いた場合であり、図13Cはヒーター本体1は12Wで第2の輻射熱反射・遮熱材27にアルミフォイルを用いた場合である。輻射熱反射・遮熱体20の層構造は図9及び図12に示すように第2の実施形態と同じである。
【0057】
図13のBに示すように、支持体24の側片31の内面に第2の輻射熱反射・遮熱材(サーモプロテクト)27を設けない場合でも、槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
また、第2の輻射熱反射・遮熱材27にアルミフォイルを用いた場合では、図13のCに示すように、図13のAの標準品はもちろん、Bの場合よりもパイプ10内の水温を高めにすることができるという結果を得た。
したがって、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として、やや特殊で少し高価なサーモプロテクトを用いるよりも、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として市販で料理用のアルミフォイルにて十分な効果を得ることができる。
なお、本実施形態での輻射熱の反射、遮熱の作用及び効果が先の実施形態と同様である。
【0059】
(第4の実施の形態)
第2、第3の実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20の内面側に配設する第2の輻射熱反射・遮熱材27と支持体24の内面との間には略2mmの隙間26を設けて空気層を形成するようにしていたが、本実施形態では、この隙間26の間隔をさらに大きくし、第2の輻射熱反射・遮熱材27の配置形状も図14に示すように逆U字状としたものである。なお、第2の輻射熱反射・遮熱材27はサーモプロテクトを用いている。
【0060】
図15に測定結果を示す。図15のAとBは、図13のAとBと同一であり、図15のCが第2の輻射熱反射・遮熱材27の形状を逆U字状とした場合の測定結果である。この測定結果から、ヒーター本体1が12Wでも16Wの標準品の場合と比べて槽内温度が−20℃までの良好な結果を得た。隙間26を2mmとした場合(図15のB)と比べた場合は、少しの見劣りはあるものの、槽内温度が−20℃を保持させた場合でもパイプ10の水温は3.5℃なので、パイプ10内の水の凍結は防止することができる。
【0061】
本実施形態の測定結果から、第2の輻射熱反射・遮熱材27の形状を図14に示すような形状よりも、図12に示すような隙間26の寸法を小さくして支持体24の内面に近づける方が、効果としては若干良いという結果となる。
なお、本実施形態においても、輻射熱反射・遮熱体20の作用効果は先の実施形態の場合と同様である。
【0062】
(第5の実施の形態)
図16に第5の実施形態を示す。本実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20の支持体24の外側面がわに空気層である隙間36を設けるようにしたものであり、支持体24の外側面に複数のスペーサー33を介して第1の輻射熱反射・遮熱材25を設けている。この支持体24の外側面と第1の輻射熱反射・遮熱材25の内側面との間に隙間36を形成している。
この隙間36は、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27との間に形成されている隙間26と同様の作用効果を持たせることができ、先の実施形態の場合よりも一層の効果を奏するものである。なお、ヒーター本体1は、標準品の16Wよりも小さい12Wを用いており、槽内温度が−20℃でも先の実施形態の場合よりもパイプ10内の水の温度を上げることができる。
【0063】
なお、各実施形態において、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27の材料として、サーモプロテクト(商品名)やアルミフォイルを用いた場合について説明したが、これに限られるものではない。輻射熱(電磁波)を反射、遮熱させる材料として、例えば、表面にアルミを蒸着したシート、金、銀、銅を用いるようにしても良い。
すなわち、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27の材料としては、サーモプロテクト(商品名)、アルミフォイル、アルミを蒸着したシート、金、銀、銅のいずれかを用いるようにしても良い。なお、これらの部材の厚さが薄くて箱状の形状を維持できない場合は、支持体24を用いるが、形状を維持できる程度の厚さであれば、支持体24を用いなくてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態における隙間26、隙間36の間隙寸法は、2mmとしている場合も説明したが、特に2mmに限定されるものではなく、任意の寸法であれば良く、測定結果から隙間26、36により空気層を形成して、熱伝導を抑えることで、効果がある。
【0065】
ここで、上記各実施形態において、標準品として16Wのヒーターを用いて説明したが、このヒーターは給湯機内に実際に使用されていて、すでに実装されているものである。そのため、上記輻射熱反射・遮熱体20を現在装着されているヒーターに覆設し、給湯機の制御部(図示せず)を改造して装着されているヒーターへの電力を下げることで、省エネルギー化を図ることができる。つまり、輻射熱反射・遮熱体20を後付けする形で用いることができ、簡単に省エネルギー化を図ることができる。
【0066】
また、新たに給湯機を製造する場合では、ヒーターを予め消費電力が12Wのものを使用する設計を行なうことで、給湯機で消費される電力を削減できる。特に、給湯機内で使用されるヒーターは給湯機の容量にもよるが、6個から10個程度使用されていることから、全体として大幅な省エネルギー化を図ることができる。
【0067】
さらに、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1と、輻射熱反射・遮熱体20とで凍結予防ヒーター装置を構成した場合には、ヒーター本体1からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面で反射、遮熱され、外気からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の外面で反射、遮熱されることで、ヒーター本体1の消費電力が少なくても、パイプ10の水の凍結予防ができ、省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ヒーター本体
4 リード線
20 輻射熱反射・遮熱体
23 隙間
24 支持体
25 第1の輻射熱反射・遮熱材
26 隙間
27 第2の輻射熱反射・遮熱材
28 スペーサー
31 側片
36 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯機内に配管されている給排水用のパイプの凍結予防に用いられる輻射熱反射・遮熱体及びこの輻射熱反射・遮熱体を用いた凍結予防ヒーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯機内の給排水用のパイプの凍結予防の目的に使用されているこの種のヒーターは、直方体状のケースに発熱体を収容し、該ケース内に絶縁性の充填剤を充填したものである。図17はこの種の既存のヒーター本体1を示し、図17(a)はヒーター本体1の平面図を、図17(b)はヒーター本体1の正面図をそれぞれ示している。
このヒーター本体1は、セラミック製で一面を開口した直方体状のケース2と、このケース2内に納装されて該ケース2の両端よりリード線4を側方へそれぞれ導出させている発熱体3と、この発熱体3を保護する形でケース2内に絶縁性でセメント剤からなる充填剤5とで構成されている。
【0003】
また、ケース2の両側には溝(図示せず)が凹設されており、この溝を介して前記発熱体3のリード線4が外側方へそれぞれ導出されている。そして、このリード線4の基部側の溝の部分をシリコン樹脂にて封止しており、この封止している部分を封止部6としている。
【0004】
このヒーター本体1は、給湯機内に配管されているパイプに取り付けられるために、ヒーター本体1の他面側の形状は、図18に示すように、断面を略半円状とした凹部7が形成されている。また、図19に示すように、凹部7を断面を略三角形状としたものも提供されている。
そして、図20及び図21に示すように、ヒーター本体1の凹部7側をパイプ10の外面に接触させて銅製のパイプ10の長手方向と該ヒーター本体1の長手方向とを合わせるようにして配設し、その上から取付金具(図示せず)にて該ヒーター本体1をパイプ10の表面に装着するようにしている。
【0005】
なお、給湯機内で複数のヒーター本体1がパイプ10の要所に配置されていて、各ヒーター本体1は直列あるいは並列に接続されている。そして、給湯機内の温度が予め設定した所定の温度に低下すれば、図外の制御部によりヒーター本体1の発熱体3に電源が通電され、該ヒーター本体1の熱がパイプ10へ熱伝達してパイプ10内の水が凍結しないように予防している。
また、所定の温度まで上昇した場合には、パイプ10内の水は凍結しないものとしてヒーター本体1の発熱体3への通電が遮断されるようになっている。
【0006】
この種のヒーターとしては、例えば下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−284230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1では、上記ヒーター本体1と同種類のヒーターが用いられており、また、ヒーターを発熱させたとき、表面温度を低く抑えて、周囲の低耐熱部品が接触しても、損傷させないようにするために、ヒーターを覆うヒータカバーを設けている。
このヒータカバーは、発熱体であるヒーターに周囲の低耐熱部品が直接接触しないようにしたものであり、ヒータカバーには周囲の低耐熱部品が直接接触しても部品の損傷を防ぐようにしたものである。
【0009】
特に、この特許文献1では、周囲の低耐熱部品がヒータカバーに接触しても損傷を防ぐようにしたものであって、ヒーターの消費電力を抑えて省エネルギー化を図るという技術思想が存在していない。また、後述するように本発明では、この特許文献1のヒータカバーと同様にヒーター本体1を覆う部材を用いているものの、本発明の部材と特許文献1のヒータカバーとでは、目的及び作用効果を全く異にするものであり、根本的に技術思想が異なるものである。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、ヒーターの消費電力を抑えて省エネルギー化を図ることを目的とした輻射熱反射・遮熱体及びこの輻射熱反射・遮熱体を用いた凍結予防ヒーター装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の請求項1に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面と前記ヒーター本体1との間には隙間23を設けていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材25を設け、
前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体1からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材27を設け、
前記第1の輻射熱反射・遮熱材25と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間には隙間26を設けていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記ヒーター本体1の両側からリード線4がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体20の側部の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25及び第2の輻射熱反射・遮熱材27は設けていないことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25を保形させる支持体24を備え、該支持体24の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の隙間26は複数のスペーサー28にて形成され、前記隙間26の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第2の輻射熱反射・遮熱材27の断面形状を略逆U字状としていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の輻射熱反射・遮熱体では、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25または/および第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料としてアルミフォイルを用いていることを特徴としている。
【0017】
請求項7に記載の輻射熱反射・遮熱体では、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、
前記輻射熱反射・遮熱体20は、
全体の形状を維持させるための支持体24と、
前記支持体24の外面の略全面にわたって第1の隙間36を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材25と、
前記支持体24の内面の略全面にわたって第2の隙間26を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材27とで構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項8に記載の凍結予防ヒーター装置では、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体20と、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体20にて略全体が覆われるヒーター本体1とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体1からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体20であり、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面と前記ヒーター本体1との間には隙間23を設けているので、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて反射、遮熱される。そのため、輻射熱反射・遮熱体20の内部では、輻射熱反射・遮熱体20が無い場合と比べて温度は高く維持されることになる。
また、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて反射、遮熱される。そのため、低温である外部からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20にて反射、遮熱されるために、輻射熱反射・遮熱体20の内部の温度をほとんど低下させることはない。これにより、ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達ないし伝導させることができる。そのため、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材25を設け、前記輻射熱反射・遮熱体20の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体1からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材27を設け、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間には隙間26を設けているので、輻射熱反射・遮熱体20内では、ヒーター本体1からの輻射熱は第2の輻射熱反射・遮熱材27にて反射、遮熱されて、熱が輻射熱反射・遮熱体20内にこもり、輻射熱反射・遮熱体20内の温度の低下を防止している。
また、外気からの輻射熱は、第1の輻射熱反射・遮熱材25にて反射、遮熱されて、輻射熱反射・遮熱体20内の熱の低下を防止している。さらに、輻射熱を反射、遮熱する第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27と熱伝導をしにくくする空気層である隙間26との相乗効果により、外気の温度が0℃以下となっても、ヒーター本体1の熱は外部と反射、遮熱にて遮断されて、ヒーター本体1自体が冷却されにくくなり、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達している。
これらは、単にヒーター本体1をカバーで覆って熱の伝導を遅くさせるという熱伝導を利用した技術思想では、ヒーター本体1の省エネルギー化にはあまり効果が無いと考えられる。ヒーター本体1からの高温の輻射熱を反射、遮熱し、また外気の低温の輻射熱を反射、遮熱するという本発明の技術思想によりヒーター本体1の消費電力を抑えることができて省エネルギー化を達成できたものである。
このように、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆う場合と、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに裸の状態でヒーター本体1を使用する場合とでは、大きな差があるという実験結果を得た。したがって、輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、ヒーター本体1のワット数を小さくでき、省エネルギー化を図ることができるものである。例えば、16Wの標準品のヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、12Wの消費電力のヒーター本体1を使用することができ、約25%の省電力化を図ることができた。
【0021】
請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記ヒーター本体1の両側からリード線4がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体20の側部(側片31)の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材25及び第2の輻射熱反射・遮熱材27は設けていない場合でも、槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
請求項4に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25を保形させる支持体24を備え、該支持体24の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の隙間26は複数のスペーサー28にて形成され、前記隙間26の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることで、消費電力が16Wの標準品と比べて、消費電力が12Wのヒーター本体1でも槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0023】
請求項5に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第2の輻射熱反射・遮熱材27の断面形状を略逆U字状としている場合でも、測定結果から、ヒーター本体1が12Wでも16Wの標準品の場合と比べて槽内温度が−20℃までの良好な結果を得ることができた。
【0024】
請求項6に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20の第1の輻射熱反射・遮熱材25または/および第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料としてアルミフォイルを用いた場合でも、図13のCに示すように、図13のAの標準品はもちろん、Bの場合よりもパイプ10内の水温を高めにすることができるという結果を得た。
したがって、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として、やや特殊で少し高価なサーモプロテクトを用いるよりも、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として市販で料理用のアルミフォイルにて十分な効果を得ることができる。
【0025】
請求項7に記載の輻射熱反射・遮熱体によれば、前記輻射熱反射・遮熱体20は、全体の形状を維持させるための支持体24と、前記支持体24の外面の略全面にわたって第1の隙間36を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材25と、前記支持体24の内面の略全面にわたって第2の隙間26を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材27とで構成していることで、第1の隙間36は、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27との間に形成されている第2の隙間26と同様の作用効果を持たせることができ、一層省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
請求項8に記載の凍結予防ヒーター装置によれば、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体20と、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体20にて略全体が覆われるヒーター本体1とを備えていることで、ヒーター本体1からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面で反射、遮熱され、外気からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の外面で反射、遮熱されることで、ヒーター本体1の消費電力が少なくても、パイプ10の水の凍結予防ができ、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態における凍結予防ヒーター装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるパイプの表面に取り付けられているヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるパイプの表面に取り付けられているヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体を用いない場合の各部の温度を測定するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体を用いた場合の各部の温度を測定するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の横方向の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における輻射熱反射・遮熱体の縦方向の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した場合の動作説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における支持体の内面を表にした展開図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態における各部の温度の測定結果を示す図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態におけるヒーター本体に輻射熱反射・遮熱体を覆設した状態を示す図である。
【図17】(a)(b)は既存のヒーターの平面図及び正面図である。
【図18】凹部の断面を略半円状としたヒーターの側面図である。
【図19】凹部の断面を略三角形状としたヒーターの側面図である。
【図20】パイプにヒーターを取り付けた状態を示す図である。
【図21】パイプにヒーターを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態を図面(図1〜図3)を参照して詳細に説明する。本発明は、ヒーター本体1からパイプ10へは、従来と同様に既存のヒーター本体1の熱を伝達して、パイプ10内の水が凍結するのを予防するのである。しかし、本発明では、ヒーター本体1からの輻射熱(電磁波)を反射・遮熱したり、外部からのヒーター本体1への輻射熱(電磁波)を反射、遮熱することで、ヒーター本体1の消費電力を少なくしてもパイプ10内の水の凍結を予防するようにしたものである。
【0029】
ところで、すべての熱は、対流・伝導・輻射の3つの要素で移動するものであり、これを熱移動の三要素と言われている。その熱移動の割合は、上下左右方向を平均すると対流熱15%、伝導熱10%、輻射熱75%程度と言われている。このことから、熱損失のほとんどが熱伝導と対流によって起こるのではなく、輻射熱によるものと言える。
【0030】
そこで、本発明では、輻射熱(電磁波)を反射、遮熱する部材である輻射熱反射・遮熱材にて構成した輻射熱反射・遮熱体でヒーター本体1を覆い、輻射熱反射・遮熱体の内部ではヒーター本体1からの輻射熱を外部へ透過させないように反射、遮熱し、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体内へ透過しないように輻射熱反射・遮熱体にて外部へ反射させ、また遮熱するようにしたものである。
【0031】
図1は、凍結予防ヒーター装置の分解斜視図を示し、この凍結予防ヒーター装置は、給湯機内に配管されているパイプ10と、このパイプ10に取り付けられる既存のヒーター本体1と、このヒーター本体1を覆う輻射熱反射・遮熱体20とで構成されている。パイプ10やヒーター本体1は従来例の欄で説明したものと同じ部材である。
輻射熱反射・遮熱体20は、輻射熱を反射、遮熱させる輻射熱反射・遮熱材からなり、下面を開口した箱状に形成されている。この輻射熱反射・遮熱体20の両側にはヒーター本体1のリード線4を挿通させる溝21が切り欠き形成され、さらにこの溝21の下部と連通しパイプ10の表面の形状に合わせて湾曲した切欠部22が形成されている。
【0032】
図2は、パイプ10の表面に取り付けられているヒーター本体1の上から輻射熱反射・遮熱体20を被せた状態を示し、図3はその断面図を示している。なお、本発明は、ヒーター本体1や輻射熱反射・遮熱体20のパイプ10への取付構造を要旨とするのではなく、原理的な構造を要旨とするものであるから、パイプ10へのヒーター本体1の取付金具や、輻射熱反射・遮熱体20のパイプ10への取付金具等の取付構造は図示省略している。
【0033】
輻射熱反射・遮熱体20でヒーター本体1を覆うようにしてパイプ10に装着した状態では、図2及び図3に示すように、ヒーター本体1の外面と、輻射熱反射・遮熱体20の内面との間には隙間23が形成されるようになっている。この隙間23にて空気層が形成されている。
【0034】
ヒーター本体1が通電されると、ヒーター本体1は発熱してパイプ10に熱伝達してパイプ10内の水が凍結しないようにする。一方、ヒーター本体1の表面からは輻射熱が隙間23の空気層へ放射されるが、輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面にて図中矢印イに示すように、反射、遮熱される。そのため、輻射熱反射・遮熱体20の内部では、輻射熱反射・遮熱体20が無い場合と比べて温度は高く維持されることになる。
【0035】
また、外部からの輻射熱は、輻射熱反射・遮熱体20の外側の表面にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱される。そのため、低温である外部からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20にて反射、遮熱されるために、輻射熱反射・遮熱体20の内部の温度をほとんど低下させることはない。これにより、ヒーター本体1は外部の温度が低温であっても、外部(外気温)の影響をほとんど受けることがなく、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達ないし伝導させることができる。
そのため、従来より少ない消費電力のヒーター本体1でよく、省エネルギー化を図ることができる。なお、この技術思想を証明するために、次の実施形態で具体的に説明していく。また、輻射熱反射・遮熱体20の材料も後述する。
【0036】
(第2の実施の形態)
図4〜図10により第2の実施形態を説明する。図4は雰囲気温度を3℃からマイナス20℃まで変化させたときのヒーター本体1、パイプ10、パイプ10内の水の温度を測定する場合の実験装置を示しており、図4の場合は上記輻射熱反射・遮熱体20を用いずに、ヒーター本体1のみの場合を示している。
実験用の槽51内の底面には台座52を置き、この台座52の上に略コ字型に折曲ないし曲成したパイプ10を配置し、このパイプ10の略中央部分にヒーター本体1を配置している。
【0037】
図4において、ポイントP1は、ヒーター本体1の温度を測定するポイントであり、ポイントP2、P3は、パイプ10の表面温度を測定するポイントであり、ヒーター本体1の中央部分から約100mm離れた箇所としている。また、ポイントP4は、パイプ10内に位置し、パイプ10内の水の温度を測定するポイントであり、パイプ10は、直径15mmで40ccの水を入れている。ポイントP5は槽51の内部の温度を測定するポイントである。
【0038】
各ポイントP1〜5での温度測定は周知の温度センサを用いており、槽51の内部の温度を3℃から−20℃まで変化させたときの各部の温度を測定する。図4で用いたヒーター本体1は、消費電力が16Wの標準品であり、この標準品を用いた場合と、標準品より消費電力が少ない12Wのヒーター本体1で上記輻射熱反射・遮熱体20を用いた場合の各部の温度の測定結果を比較することで、省エネルギー化を実証しようとするものである。
図5は、図4の場合と同様の構成であるが、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆った場合の図である。
【0039】
図6は本実施形態における輻射熱反射・遮熱体20の斜視図を示し、図7は輻射熱反射・遮熱体20の横方向の断面図を、図8は輻射熱反射・遮熱体20の縦方向の断面図をそれぞれ示している。
先の実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20を1つの輻射熱反射・遮熱材にて構成していたが、本実施形態では、複数の部材で複数層の構成で輻射熱反射・遮熱体20を形成している。
【0040】
図7及び図8に示すように、本実施形態の輻射熱反射・遮熱体20は、下面を開口した箱状の支持体24と、この支持体24の外側の表面の全面に密着して配設した第1の輻射熱反射・遮熱材25と、上記支持体24の内面の全面にわたって隙間26を介して配設した第2の輻射熱反射・遮熱材27と、上記隙間26を形成すべく支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27の外面との間に介在させた複数のスペーサー28とで構成されている。
【0041】
ここで、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27は、ハウスサポート倶楽部という会社から販売されているサーモプロテクトS(商品名 TP−S)という輻射熱反射・遮熱材を用いており、この輻射熱反射・遮熱材の厚さは0.2mmである。このサーモプロテクトを用いた場合、厚さが若干薄いために、箱状の形を維持させるためにステンレス製の支持体24を用いており、この支持体24の厚みは1mmとしている。
また、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27の外面との間の隙間26を略全面にわたって約2mmとしており、この隙間26を形成すべくスペーサー28の厚みを2mmとしている。
【0042】
なお、ヒーター本体1は高温となるため、支持体24にはステンレスを用いており、また、スペーサー28も同様に金属製を用いている。もちろん、支持体24やスペーサー28に耐熱性の合成樹脂を用いても良い。第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27はもちろん耐熱性を備えているものであり、表面は純度の高いアルミで形成されている。
【0043】
図9は、パイプ10の表面にヒーター本体1を配設し、そのヒーター本体1を覆うようにして輻射熱反射・遮熱体20を配設した状態を示している。
【0044】
図10Aは、ヒーター本体1の入力ワット数(消費電力)が16Wの標準品(現在、給湯機内で実際に使用されているヒーター)で、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに、図4の状態で各部の温度を測定した結果を示し、図10Bは、ヒーター本体1の入力ワット数(消費電力)を12Wとして、図5に示すようにヒーター本体1を輻射熱反射・遮熱体20にて覆って測定した結果を示している。
また、図10Cは、12Wのヒーター本体1を用いて輻射熱反射・遮熱体20を使用せずに測定した結果を示している。
【0045】
図10において、槽内設定温度は、12時間かけて徐々に3℃から−20℃まで降下させ、槽内温度が−20℃になってから2時間、−20℃を保持している。「ヒーター本体温度」で、「max温度」は、通電してからのヒーター本体1の最高に上昇した温度を示し、槽内温度の0℃、−10℃、−20℃、−20℃飽和時点での温度をそれぞれ左側に記載している。槽内温度が低下するにしたがいヒーター本体1の温度も徐々に低下している。
【0046】
「左、右パイプ温度」は、図4及び図5に示すように、本来は左右の温度であるが、左右の温度がほぼ同一だったので、各左側に各槽内温度に対応した温度を記載している。「max温度」は、通電してから最高温度を示している。パイプ10の温度も槽内温度が低下するにしたがい徐々に低下している。
「水温」は、パイプ10内の水の温度を示し、「max温度」は上記と同様に通電してからの最高の温度を示している。槽内温度が低下するにしたがい水温も低下し、実際に使用されている16Wの標準品で、槽内温度が0℃の時に、パイプ10内の水温が25.3℃、槽内温度が−10℃の時に水温が15.6℃、槽内温度が−20℃の時に水温が4.2℃、槽内温度が−20℃の飽和時に水温が4.2℃という測定結果を得た。
【0047】
ヒーター本体1に16Wの標準品を用いていることで、ヒーター本体1からの熱がパイプ10に伝達されて、この熱伝達により槽内温度(雰囲気温度)が−20℃になった場合や、−20℃を2時間保持させた場合でも、パイプ10内の水温は共に4.2℃であり、パイプ10内の水が凍結するのを予防している。
【0048】
一方、ヒーター本体1のワット数を12Wとして、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆って測定した場合は、図10Bに示す通りである。すなわち、各槽内温度におけるヒーター本体1の温度は、Aの場合と比べて少し低くなるものの、パイプ10の温度及びパイプ10内の水温は、Aの場合よりも高いという結果を得た。
槽内温度が−20℃及び−20℃を2時間保持させた場合では、Aの4.2℃に対して6.6℃であり、16Wの標準品の場合よりも温度が高いという結果を得た。そのため、パイプ10内の水は一層凍結の予防効果が高いということである。しかも、ヒーター本体1の消費電力は、12Wであり、16Wに対して消費電力を25%も抑えることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
図10Cは、ヒーター本体1のワット数を12Wとし、輻射熱反射・遮熱体20を用いない場合を示しており、−20℃や−20℃を2時間保持した場合におけるパイプ10内の水温は、0.6℃、0.3℃となり、氷点下に近くなり、16Wの標準品と比べても大きく低下している。
したがって、省電力化を図るために、ヒーター本体1のワット数を12Wを用いた場合であって、輻射熱反射・遮熱体20を使用しない場合には、実使用には適さないという結果を得た。
【0050】
この実験結果(測定結果)から第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27を用いた場合、消費電力を抑えているにもかかわらず、パイプ10内の水温が標準品の場合よりも高くなり、凍結予防という良好な結果を得たことに関して、理論的に明確な理由が分からないが、以下のことが考えられる。
すなわち、図9に示すように、輻射熱反射・遮熱体20内では、ヒーター本体1からの輻射熱は第2の輻射熱反射・遮熱材27にて図中矢印イに示すように反射、遮熱されて、熱が輻射熱反射・遮熱体20内にこもり、輻射熱反射・遮熱体20内の温度の低下を防止している。
【0051】
また、外気からの輻射熱は、第1の輻射熱反射・遮熱材25にて図中矢印ロに示すように反射、遮熱されて、輻射熱反射・遮熱体20内の熱の低下を防止している。さらに、支持体24と第2の輻射熱反射・遮熱材27の間に形成した隙間26による空気層により、第1の輻射熱反射・遮熱材25及び支持体24と、第2の輻射熱反射・遮熱材27との間の熱伝導がほとんど阻止されていることで、つまり、輻射熱を反射、遮熱する第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27と熱伝導をしにくくする空気層である隙間26との相乗効果により、外気の温度が0℃以下となっても、ヒーター本体1の熱は外部と反射、遮熱にて遮断されて、ヒーター本体1自体が冷却されにくくなり、ヒーター本体1の熱をパイプ10へ効率良く伝達しているものと考えられる。
【0052】
これらは、単にヒーター本体1をカバーで覆って熱の伝導を遅くさせるという熱伝導を利用した技術思想では、ヒーター本体1の省エネルギー化にはあまり効果が無いと考えられる。ヒーター本体1からの高温の輻射熱を反射、遮熱し、また外気の低温の輻射熱を反射、遮熱するという本発明の技術思想によりヒーター本体1の消費電力を抑えることができて省エネルギー化を達成できたものである。
【0053】
このように、輻射熱反射・遮熱体20にてヒーター本体1を覆う場合と、輻射熱反射・遮熱体20を用いずに裸の状態でヒーター本体1を使用する場合とでは、大きな差があるという実験結果を得た。
したがって、輻射熱反射・遮熱体20を用いることで、ヒーター本体1のワット数を小さくでき、省エネルギー化を図ることができるものである。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図11は上記支持体24を内面から見た展開図を示し、第2の実施形態では、リード線4を挿通させる両側の側片31の内面側にも隙間26を介して第2の輻射熱反射・遮熱材27を配設していたが、本実施形態では、この両側の側片31の内面には第2の輻射熱反射・遮熱材27を設けずに、側片31以外の支持体24の内面に第2の輻射熱反射・遮熱材27を設けたものである。
そのため、輻射熱反射・遮熱体20の断面図は、図9の場合と同じとなる。なお、支持体24の側片31の下端面はパイプ10の表面と接触している。
【0055】
また、第2の実施形態では、第2の輻射熱反射・遮熱材27にサーモプロテクト(商品名)を用いていたが、このサーモプロテクトはアルミを用いていることから、図12に示すように、市販されている料理用のアルミフォイルを用いて実験をした。なお、サーモプロテクトも市販されているが、アルミフォイルの方がより安価であることからアルミフォイルを用いて実験をした理由である。その測定結果を図13に示す。
【0056】
図13Aは図10のAと同様にヒーター本体1に16Wの標準品を用いた場合であり、図13Bはヒーター本体1は12Wで第2の輻射熱反射・遮熱材27にサーモプロテクトを用いた場合であり、図13Cはヒーター本体1は12Wで第2の輻射熱反射・遮熱材27にアルミフォイルを用いた場合である。輻射熱反射・遮熱体20の層構造は図9及び図12に示すように第2の実施形態と同じである。
【0057】
図13のBに示すように、支持体24の側片31の内面に第2の輻射熱反射・遮熱材(サーモプロテクト)27を設けない場合でも、槽内温度が0℃〜−20℃において標準品の場合よりもパイプ10内の水温が若干良いという結果を得た。
すなわち、消費電力が16Wの標準品と比べて消費電力が12Wのヒーター本体1の場合でも、パイプ10内の水温を高めにでき、凍結予防ができて、しかも省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
また、第2の輻射熱反射・遮熱材27にアルミフォイルを用いた場合では、図13のCに示すように、図13のAの標準品はもちろん、Bの場合よりもパイプ10内の水温を高めにすることができるという結果を得た。
したがって、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として、やや特殊で少し高価なサーモプロテクトを用いるよりも、第2の輻射熱反射・遮熱材27の材料として市販で料理用のアルミフォイルにて十分な効果を得ることができる。
なお、本実施形態での輻射熱の反射、遮熱の作用及び効果が先の実施形態と同様である。
【0059】
(第4の実施の形態)
第2、第3の実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20の内面側に配設する第2の輻射熱反射・遮熱材27と支持体24の内面との間には略2mmの隙間26を設けて空気層を形成するようにしていたが、本実施形態では、この隙間26の間隔をさらに大きくし、第2の輻射熱反射・遮熱材27の配置形状も図14に示すように逆U字状としたものである。なお、第2の輻射熱反射・遮熱材27はサーモプロテクトを用いている。
【0060】
図15に測定結果を示す。図15のAとBは、図13のAとBと同一であり、図15のCが第2の輻射熱反射・遮熱材27の形状を逆U字状とした場合の測定結果である。この測定結果から、ヒーター本体1が12Wでも16Wの標準品の場合と比べて槽内温度が−20℃までの良好な結果を得た。隙間26を2mmとした場合(図15のB)と比べた場合は、少しの見劣りはあるものの、槽内温度が−20℃を保持させた場合でもパイプ10の水温は3.5℃なので、パイプ10内の水の凍結は防止することができる。
【0061】
本実施形態の測定結果から、第2の輻射熱反射・遮熱材27の形状を図14に示すような形状よりも、図12に示すような隙間26の寸法を小さくして支持体24の内面に近づける方が、効果としては若干良いという結果となる。
なお、本実施形態においても、輻射熱反射・遮熱体20の作用効果は先の実施形態の場合と同様である。
【0062】
(第5の実施の形態)
図16に第5の実施形態を示す。本実施形態では、輻射熱反射・遮熱体20の支持体24の外側面がわに空気層である隙間36を設けるようにしたものであり、支持体24の外側面に複数のスペーサー33を介して第1の輻射熱反射・遮熱材25を設けている。この支持体24の外側面と第1の輻射熱反射・遮熱材25の内側面との間に隙間36を形成している。
この隙間36は、支持体24の内面と第2の輻射熱反射・遮熱材27との間に形成されている隙間26と同様の作用効果を持たせることができ、先の実施形態の場合よりも一層の効果を奏するものである。なお、ヒーター本体1は、標準品の16Wよりも小さい12Wを用いており、槽内温度が−20℃でも先の実施形態の場合よりもパイプ10内の水の温度を上げることができる。
【0063】
なお、各実施形態において、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27の材料として、サーモプロテクト(商品名)やアルミフォイルを用いた場合について説明したが、これに限られるものではない。輻射熱(電磁波)を反射、遮熱させる材料として、例えば、表面にアルミを蒸着したシート、金、銀、銅を用いるようにしても良い。
すなわち、第1、第2の輻射熱反射・遮熱材25、27の材料としては、サーモプロテクト(商品名)、アルミフォイル、アルミを蒸着したシート、金、銀、銅のいずれかを用いるようにしても良い。なお、これらの部材の厚さが薄くて箱状の形状を維持できない場合は、支持体24を用いるが、形状を維持できる程度の厚さであれば、支持体24を用いなくてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態における隙間26、隙間36の間隙寸法は、2mmとしている場合も説明したが、特に2mmに限定されるものではなく、任意の寸法であれば良く、測定結果から隙間26、36により空気層を形成して、熱伝導を抑えることで、効果がある。
【0065】
ここで、上記各実施形態において、標準品として16Wのヒーターを用いて説明したが、このヒーターは給湯機内に実際に使用されていて、すでに実装されているものである。そのため、上記輻射熱反射・遮熱体20を現在装着されているヒーターに覆設し、給湯機の制御部(図示せず)を改造して装着されているヒーターへの電力を下げることで、省エネルギー化を図ることができる。つまり、輻射熱反射・遮熱体20を後付けする形で用いることができ、簡単に省エネルギー化を図ることができる。
【0066】
また、新たに給湯機を製造する場合では、ヒーターを予め消費電力が12Wのものを使用する設計を行なうことで、給湯機で消費される電力を削減できる。特に、給湯機内で使用されるヒーターは給湯機の容量にもよるが、6個から10個程度使用されていることから、全体として大幅な省エネルギー化を図ることができる。
【0067】
さらに、パイプ10内に流通する水の凍結予防として該パイプ10の表面に装着されるヒーター本体1と、輻射熱反射・遮熱体20とで凍結予防ヒーター装置を構成した場合には、ヒーター本体1からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の内面で反射、遮熱され、外気からの輻射熱は輻射熱反射・遮熱体20の外面で反射、遮熱されることで、ヒーター本体1の消費電力が少なくても、パイプ10の水の凍結予防ができ、省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ヒーター本体
4 リード線
20 輻射熱反射・遮熱体
23 隙間
24 支持体
25 第1の輻射熱反射・遮熱材
26 隙間
27 第2の輻射熱反射・遮熱材
28 スペーサー
31 側片
36 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面と前記ヒーター本体(1)との間には隙間23を設けていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項2】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材(25)を設け、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体(1)からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材(27)を設け、
前記第1の輻射熱反射・遮熱材(25)と前記第2の輻射熱反射・遮熱材(27)との間には隙間(26)を設けていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項3】
前記ヒーター本体(1)の両側からリード線(4)がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体(20)の側部の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材(25)及び第2の輻射熱反射・遮熱材(27)は設けていないことを特徴とする請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項4】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第1の輻射熱反射・遮熱材(25)を保形させる支持体(24)を備え、該支持体(24)の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材(27)との間の隙間(26)は複数のスペーサー(28)にて形成され、前記隙間(26)の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項5】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第2の輻射熱反射・遮熱材(27)の断面形状を略逆U字状としていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項6】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第1の輻射熱反射・遮熱材(25)または/および第2の輻射熱反射・遮熱材(27)の材料としてアルミフォイルを用いていることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項7】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)は、
全体の形状を維持させるための支持体(24)と、
前記支持体(24)の外面の略全面にわたって第1の隙間(36)を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材(25)と、
前記支持体(24)の内面の略全面にわたって第2の隙間(26)を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材(27)とで
構成されていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項8】
前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体(20)と、
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体(20)にて略全体が覆われるヒーター本体(1)とを
備えていることを特徴とする凍結予防ヒーター装置。
【請求項1】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面と前記ヒーター本体(1)との間には隙間23を設けていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項2】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面の略全面にわたって前記外気からの輻射熱を反射、遮熱させる第1の輻射熱反射・遮熱材(25)を設け、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の内面の略全面にわたって前記ヒーター本体(1)からの輻射熱を反射、遮熱させる第2の輻射熱反射・遮熱材(27)を設け、
前記第1の輻射熱反射・遮熱材(25)と前記第2の輻射熱反射・遮熱材(27)との間には隙間(26)を設けていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項3】
前記ヒーター本体(1)の両側からリード線(4)がそれぞれ導出されている部分に対応した輻射熱反射・遮熱体(20)の側部の内面には、前記第1の輻射熱反射・遮熱材(25)及び第2の輻射熱反射・遮熱材(27)は設けていないことを特徴とする請求項2に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項4】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第1の輻射熱反射・遮熱材(25)を保形させる支持体(24)を備え、該支持体(24)の内面と前記第2の輻射熱反射・遮熱材(27)との間の隙間(26)は複数のスペーサー(28)にて形成され、前記隙間(26)の厚みは全面にわたってほぼ一定の厚みとしていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項5】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第2の輻射熱反射・遮熱材(27)の断面形状を略逆U字状としていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項6】
前記輻射熱反射・遮熱体(20)の第1の輻射熱反射・遮熱材(25)または/および第2の輻射熱反射・遮熱材(27)の材料としてアルミフォイルを用いていることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体。
【請求項7】
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着されるヒーター本体(1)の全体を覆う部材であって、
前記部材の外面及び内面は前記ヒーター本体(1)からの輻射熱や外気からの輻射熱を反射、遮熱させる材料を用いた輻射熱反射・遮熱体(20)であり、
前記輻射熱反射・遮熱体(20)は、
全体の形状を維持させるための支持体(24)と、
前記支持体(24)の外面の略全面にわたって第1の隙間(36)を介して配設される第1の輻射熱反射・遮熱材(25)と、
前記支持体(24)の内面の略全面にわたって第2の隙間(26)を介して配設される第2の輻射熱反射・遮熱材(27)とで
構成されていることを特徴とする輻射熱反射・遮熱体。
【請求項8】
前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の輻射熱反射・遮熱体(20)と、
パイプ(10)内に流通する水の凍結予防として該パイプ(10)の表面に装着され、前記輻射熱反射・遮熱体(20)にて略全体が覆われるヒーター本体(1)とを
備えていることを特徴とする凍結予防ヒーター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−256469(P2012−256469A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128069(P2011−128069)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(591124640)FKK株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(591124640)FKK株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
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