説明

輻輳予防IP中継装置、及び方法

【課題】輻輳の予兆を事前に検知し、輻輳の発生を予防することが可能なIP中継装置を提供する。
【解決手段】IPネットワーク内に配置されるIP中継装置201は、リンクに接続されパケットを送受信する送受信ポート211と、パケットの転送を制御するパケット転送部221と、リンクの輻輳予防を行う輻輳予防部281とを備える。この輻輳予防部281は、リンクの帯域使用率を監視し、帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較し、帯域使用率が検知基準を超えたときに、帯域使用率が検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索し、探索して得た迂回経路をパケット転送部221の経路設定に反映する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネットプロトコルを用いたネットワークに関し、特にネットワーク内の輻輳予防の制御技術に係る。
【背景技術】
【0002】
企業通信網やサービス提供用のインフラでは、スループットや遅延といった通信性能をネットワークが保証することが重要となる。ネットワーク内で輻輳が発生すると、パケットの再送制御に伴い、通信性能が低下するため、通信性能の保証には輻輳予防が必要である。このような背景技術として、特許文献1や特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−197971号公報
【特許文献2】特開2003−218917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワークの輻輳予防の方法として、ネットワーク全体の回線容量の拡大が挙げられるが、この方法では設備への費用負担が大きい。これに対し、インターネットプロトコル(Internet Protocol:以下IP)中継装置が輻輳発生を予兆検知して輻輳に対する迂回経路を設定することにより、ネットワーク中の回線容量を効率的に利用して輻輳を予防する技術が注目されている。迂回経路を設定する方法として、リンクの帯域使用率等を経路選択の指標に用いる手法が提案されている。
【0005】
上述の特許文献1では、輻輳制御装置が、ネットワークのトラヒック情報を収集し、迂回経路を設定する手法が提案されているが、この手法では、トラヒック情報の収集に伴うトラヒックの負荷が輻輳制御装置に集中するため、大規模ネットワークに対応できない。
【0006】
また、特許文献2では、IP中継装置がリンクの帯域使用率を監視し、帯域使用率が閾値を超えたときにOSPF(Open Shortest Path Fast)のリンクコストを変更する手法を提案している。この手法の特徴として、他のIP中継装置とOSPFを通じてリンクコストを共有できるため、ネットワーク中の全てのIP中継装置に提案手法を適用せずに、迂回経路を設定できる点が挙げられる。しかし、リンクコストを増加させるときに、迂回経路設定後の各リンクの帯域使用率を考慮しないため、迂回経路設定後に新たに輻輳が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するため、ネットワーク中の輻輳の予兆を事前に検知し、輻輳の発生を予防することが可能な輻輳予防IP中継装置、及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明においては、IPネットワーク内に配置される輻輳予防IP中継装置であって、リンクに接続されパケットを送受信する送受信ポートと、パケットの転送を制御するパケット転送部と、リンクの輻輳予防を行う輻輳予防部とを備え、輻輳予防部は、リンクの帯域使用率を監視するリンク監視部と、帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較する予兆検知部と、帯域使用率が検知基準を超えたときに、帯域使用率が検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索する迂回経路探索部と、探索した迂回経路をパケット転送部の経路設定に反映する探索結果反映部を有する構成の輻輳予防IP中継装置を提供する。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、IPネットワーク内に配置される輻輳予防IP中継装置であって、リンクに接続されパケットを送受信する送受信ポートと、パケットの転送を制御するパケット転送部と、リンクの輻輳予防を行う輻輳予防部とを備え、この輻輳予防部は、IP中継装置が備えるリンクの帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較し、更にIPネットワーク内に配置される通知先IP中継装置に、予兆検知情報を通知する予兆検知部と、帯域使用率が検知基準を超えたときに、予兆検知情報に含まれるリンクの帯域使用率が検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索する迂回経路探索部とを有し、迂回経路をパケット転送部の経路設定に反映する構成の輻輳予防IP中継装置を提供する。
【0010】
更に、上記の目的を達成するため、本発明においては、パケットを送受信する送受信ポートと、パケットの転送を制御するパケット転送部を備えるIP中継装置の輻輳予防IP中継方法であって、送受信ポートにつながるリンクの帯域使用率を監視し、帯域使用率と輻輳予兆検知の検知基準とを比較し、帯域使用率が検知基準を超えたときに、帯域使用率が検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索し、探索して得た迂回経路をパケット転送部の経路設定に反映する輻輳予防IP中継方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、IPネットワークにおける、スケール性に優れた自律分散的な輻輳予防技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】実施例1におけるネットワーク構成の一例を示す図である。
【図1B】実施例1における各リンクのリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図2A】実施例1におけるCPIP中継装置の内部機能構成の一例を示す図である。
【図2B】実施例1におけるCPIP中継装置の内部ハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】実施例1における迂回経路探索処理のフローチャートの一例を示す図である。
【図4A】実施例1における、迂回経路探索処理の途中経過を示す図である。
【図4B】実施例1における、図4Aの迂回経路探索処理の途中経過におけるリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図5A】実施例1における、迂回経路の探索結果を示す図である。
【図5B】実施例1における、図5Aの迂回経路の探索結果のリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図6】実施例1における迂回経路探索部の詳細な探索フローチャートの一例を示す図である。
【図7A】実施例2におけるネットワーク構成の一例を示す図である。
【図7B】実施例2における各リンクを通るパケットのヘッダ情報と帯域使用率の一例を示す図である。
【図8】実施例2における迂回経路探索後の各リンクを通るパケットのヘッダ情報と帯域使用率の一例を示す図である。
【図9】実施例2における迂回経路探索処理のフローチャートの一例を示す図である。
【図10A】実施例3におけるネットワーク構成の一例を示す図である。
【図10B】実施例3における各リンクのリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図11A】実施例3における、迂回経路探索処理の途中経過を示す図である。
【図11B】実施例3における、図11Aの迂回経路探索処理の途中経過におけるリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図12A】実施例3における、迂回経路の探索結果を示す図である。
【図12B】実施例3における、図12Aの迂回経路の探索結果のリンクコストと帯域使用率の一例を示す図である。
【図13】実施例3における迂回経路探索処理のフローチャートの一例を示す図である。
【図14】実施例3における予兆検知情報を通知するためのパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各種の実施例を図面に従い説明する。なお、本明細書において、IP中継装置の共通制御部等として機能する計算機の処理部が実行する各種プログラムを、「機能」、「手段」、「部」と表現する場合がある。例えば輻輳予防プログラムを「輻輳予防機能」、「輻輳予防手段」、「輻輳予防部」と表現する。また、本明細書において、リンクコストとは、OSPF等のネットワークが利用するプロトコルが定義するリンクコストを意味するものとする。
【実施例1】
【0014】
本実施例では、リンクの帯域使用率が輻輳の予兆検知の検知基準を超えたときに、全てのリンクの帯域使用率が検知基準以下になることを迂回経路探索の探索終了条件として、帯域使用率が検知基準を超えたリンクのリンクコストを増加させることにより、条件を満たすリンクコストを探索するIP中継ネットワークの実施例を説明する。
【0015】
図1Aは、第1の実施例の中継ネットワーク全体の一例を表した図である。本実施例におけるネットワークは、メッシュ状に装置を接続したパケット通信網であり、複数の送信元装置151−N(N=1〜3)と送信先装置152−N(N=1〜2)の間は経路と複数のIP中継装置161−N(N=1〜6)と、本実施例に係る輻輳予防(Congestion Prevention:以下、CP)IP中継装置171から構成される。また同図に、IP中継装置161−Nを接続するリンク191−N(N=1〜8)を示す。リンク191−Nの丸印の中の数字は、そのリンクのリンクコストを示す。
【0016】
送信元装置151−N(N=1〜3)と送信先装置152−N(N=1〜2)の間の経路は、リンク191−6を通る経路と、リンク191−5を通る経路と、リンク191−2を通る経路とがある。この場合、リンク191−5を通る経路は、リンク191−1、191−5、191−7と通り、それぞれコストが1,2,1なので、リンク191−5を通る経路のリンクコストの総和は1+2+1=4となる。また、リンク191−6を通る経路は、リンク191−1、191−6、191−8と通り、それぞれコストが1,1,1なので、リンク191−6を通る経路のリンクコストの総和は1+1+1=3となる。また、リンク191−2を通る経路は、リンク191−2、191−3、191−4と通り、それぞれコストが1,3,1なので、リンク191−2を通る経路のリンクコストの総和は1+3+1=5となる。以上より、リンク191−5を通る経路のリンクコストの総和は4、リンク191−6を通る経路のリンクコストの総和は3、リンク191−2を通る経路のリンクコストの総和は5であり、リンクコストの総和が最も小さいリンク191−6を通る経路がパケットの経路となる。
【0017】
また、図1Bに示す表はリンク191−5、191−6の帯域使用率が、検知基準以下であるかどうかを示す。全てのリンクの帯域使用率が検知基準以下になったとき、迂回経路の探索は終了し、輻輳の予防が可能となる。なお、この表は、図4B、図5B、図7B、図10B、図11B、図12Bに示す表同様、CPIP中継装置171が、その動作に対応して、その内部に持つ。
【0018】
図2Aは、本実施例に係るCPIP中継装置の内部機能構成の一例を示す図である。CPIP中継装置201は、従来のIP中継装置202と同等の機能として、送受信ポート211と、パケット転送部221、ルーティングプロトコル処理部231を持つ。更に、CPIP中継装置201は、本実施例の特徴となる、リンク監視部241、予兆検知部251、迂回経路探索部261、探索結果反映部271から構成される輻輳予防機能部281を持つ。ルーティングプロトコル処理部231と、これらの各機能部ブロックは、後で説明するように計算機のプログラム処理で実現することができる。本明細書において、パケット転送部221とルーティングプロトコル処理部231とを纏めてパケット転送部、或いはパケット転送機能と総称する場合がある。なお、図2Aの機能構成図において、IP中継装置のハードウェアの構成要素であるスイッチ部は図示を省略してある。
【0019】
図2Bは、本実施例のCPIP中継装置のハードウェア構成の一例を示す図である。CPIP中継装置のハードウェア構成は、IP中継装置202、即ち、図2Bに示したCPIP中継装置以外のIP中継装置のハードウェア構成と同等の構成を取ることができる。図2Bにおいて明らかなように、IP中継装置は、共通制御部751、複数の回線カード754、スイッチ部755から構成される。複数の回線カード754によるパケット転送は共通制御部751によって制御される。
【0020】
共通制御部751は通常の計算機構成を有し、同図では模式的に、各種の機能プログラムを実行する中央処理部(Central Processing Unit:CPU)である演算部752と、各種のプログラムやデータが記憶されるメモリである記憶部753が示されている。図2A中の検知基準管理部22や迂回経路記憶部265や、更にはコスト格納部232などはこの記憶部753上に形成することができる。
【0021】
共通制御部751で制御される回線カード754は、送受信ポート211と、経路表222を備えたパケット転送部221で構成される。各回線カード754のパケット転送部221は、スイッチ部755との間で、パケットの送受を行う。
【0022】
図2Aのルーティングプロトコル処理部231は、共通制御部751の記憶部753で構成されるコスト格納部232以外は、演算部752のプログラム処理で実現される。ルーティングプロトコル処理部231は、コスト格納部232に格納されたリンクコストを必要に応じて、迂回経路探索部261や、コスト通知パケットを使用しパケット転送部221経由で他のIP中継装置202に通知することができる。図2Aのパケット転送部221は、図2Bの回線カード754毎に処理されるが、共通制御部751で処理実現することもできる。上述の通り、いずれにしても、上述の通り、ルーティングプロトコル処理部231は、パケット転送部、パケット転送機能の一部を構成するということができる。本実施例に係るCPIP中継装置の輻輳予防部281も、以下で詳述するように共通制御部751の演算部752のプログラム処理で実現される。
【0023】
リンク監視部241は送受信ポート211を監視し、その結果得られる帯域使用率を、予兆検知部251と迂回経路探索部261に通知する。また、リンク監視部241は、外部、すなわち、外部装置あるいはシステム管理者(以下、管理者で代表する。)からの設定内容の変更に関する通知を、送受信ポート211から受信し、検知基準管理部251と迂回経路探索部261に設定内容の変更を通知する。
【0024】
予兆検知部251は、検知基準を検知基準管理部252に保持する。上述の通り、検知基準管理部252は、上述した記憶部753の所定の領域に形成することができる。予兆検知部251は、リンク監視部241から通知される帯域使用率が保持する検知基準以上になったとき、迂回経路探索部261に輻輳の予兆を検知したことを通知する。この予兆検知部251は、検知基準の他に所定の閾値と、リンク監視部241から受信した時間帯毎の帯域使用率とを、検知基準管理部252内に記憶する。そして、予兆検知部251は、この閾値と帯域使用率とを比較し、閾値を超えたときに検知基準と閾値を変更する機能を持つ。
【0025】
この閾値の値と、閾値を超えたときの設定変更の内容は、装置またはシステム全体の管理者が設定する。なお、閾値を使わない場合は、管理者が検知基準を設定する。閾値と検知基準の値には、現在の帯域使用率か、単位時間当たりの帯域使用率の増加量か、検知基準管理部252内に記憶しておいた時間帯毎の帯域使用率か、それ以外の帯域使用率に関する情報でもよく、どの値が利用されるかは、管理者が設定するか、閾値を超えたときの設定変更の内容により決定される。
【0026】
この閾値を用いることで、トラヒックの状況に応じて検知基準を変更することができ、検知基準の値を輻輳の予兆検知に適した値に設定することができる。例えば、閾値を現在の帯域使用率に対して設定し、検知基準を単位時間当たりの帯域使用率の増加量に対して設定した場合、現在の帯域使用率が閾値を超えたときに検知基準の値を小さく変更する。
【0027】
迂回経路探索部261は、予兆検知部251から輻輳の予兆を通知された時、全てのリンクの帯域使用率が検知基準以下となることを探索終了条件として、探索終了条件を満たすリンクコストを一定時間探索する。探索したリンクコストは探索結果反映部271に通知する。本実施例の迂回経路探索部261は、リンクコスト探索部262、帯域使用率予測部263、ヘッダ条件探索部264の機能ブロックと、迂回経路記憶部265を有する。
【0028】
リンクコスト探索部262は、ルーティングプロトコル処理部231のコスト格納部232から取得したリンクコストを任意に変更する機能と、変更したリンクコストを使って迂回経路を計算する機能とを持つ。迂回経路を計算するアルゴリズムは、ルーティングプロトコル処理部231と同じアルゴリズムを使用する。
【0029】
帯域使用率予測部263は、リンク監視部241からパケット毎の帯域使用率を取得し、迂回経路の探索結果とパケット毎の帯域使用率とを使って、迂回経路における各リンクの帯域使用率を見積もる機能を持つ。
【0030】
迂回経路記憶部265は、探索終了条件を満たすリンクコストを探索したときに、予兆検知したときの各リンクの帯域使用率と探索終了条件を満たすリンクコストとを記憶する。また、迂回経路記憶部265が記憶するその他の情報の例として、探索終了条件を満たすヘッダ条件や、その他の迂回経路の設定に使用する情報を使用してもよい。
【0031】
探索結果反映部271は、迂回経路探索部261から受信したリンクコストをルーティングプロトコル処理部231内のコスト格納部232に上書きし、上述したコスト通知パケットなどのルーティングプロトコルの通知メッセージを通じて、パケット転送部221の経路表222とネットワーク中のIP中継装置202の経路表を書き換え、迂回経路を設定する。迂回経路探索部261から受信した情報がリンクコストではなく、迂回させるパケットのヘッダ条件のとき、探索結果反映部271は、パケット転送部221の経路表222の、ヘッダ条件に一致するパケットの出力先リンクの情報を書き換える。
【0032】
図3は、図2A、図2BのCPIP中継装置171の共通制御部751内の輻輳予防機能部281が、輻輳の予兆検知と迂回経路の設定を行う処理フローチャートの例である。また、図1Aと共に、図4A、図5Aは、順に、迂回経路探索の過程における、リンクコストと帯域使用率の経過を示す図である。
【0033】
図3のフローチャートのプロセス開始により、予兆検知部251は、管理者による設定の変更や帯域使用率が閾値を超えたときに検知基準の設定を変更する(ステップ101、102)。なお、本実施例では、検知基準として帯域使用率の現在値を使用することが、あらかじめ設定されているものとする(ステップ101でNOへ進む)。
【0034】
リンク監視部241は、送受信ポート211の帯域使用率を予兆検知部251に通知する(ステップ103)。
【0035】
予兆検知部251は、リンク191−6の帯域使用率が検知基準以上になったとき、迂回経路探索部261に迂回経路を探索するよう通知する(ステップ104でYESへ進む)。
【0036】
迂回経路探索部261は、リンクコスト探索部262で、リンク191−6のリンクコスト181−2を増加させて各リンクの帯域使用率を見積もり(ステップ105)、見積もった帯域使用率を検知基準と比較する(ステップ106)。
【0037】
図4A、図4Bは、パケットがリンク191−6を迂回するまでリンクコスト181−2を増加したときの各リンクのリンクコストと、帯域使用率の見積もりを表す。図中の丸印中の数字は経路が確定してコスト格納部232に設定されたリンクコストを示す。ダイヤ印中の数字は迂回経路探索の過程で候補として出現する、未確定のリンクコストを示す。リンクコスト増加後、リンク191−5を通る経路のリンクコストの総和は4、リンク191−6を通る経路のリンクコストの総和は5、リンク191−2を通る経路のリンクコストの総和は5となる。リンク191−5を通る経路のリンクコストの総和が最も小さくなるため、パケットの経路は、リンク191−6を通る経路から、リンク191−5を通る経路に変更される。
【0038】
帯域使用率予測部263は、リンクコスト増加後の各リンクの帯域使用率を予測する。その結果、図4Bの表に示すように、リンク191−6の帯域使用率が検知基準以下になるが、リンク191−5の帯域使用率が検知基準以上になったとする。このことは、探索したリンクコストを使って迂回経路を設定すると、迂回経路設定後にリンク191−5で輻輳が発生することを意味する。そのため、迂回経路探索部261は、リンクコストを探索結果反映部に通知せず、リンクコスト181−1を増加させ、リンク191−5を迂回する経路の探索を行う(図3のステップ106でNOへ進む。ステップ109もNOへ進むステップ105に戻る)。
【0039】
なお、上述の通り、図4Bに示す表はCPIP中継装置がその内部に持つことができる。例えば、図2AのCPIP中継装置201の迂回経路探索部261が、リンク監視部241やコスト格納部232からの情報に基づき、その内部に持つことが可能である。図2BのCPIP中継装置201の共通制御部751の記憶部753に一時的に記憶形成することもできる。図1B,図5B以降の表も同様であることは言うまでもない。
【0040】
次に、帯域使用率の見積もりが検知基準以上であるリンク191−5、191−6のリンクコスト181−1、181−2を増加させて各リンクの帯域使用率を見積もり(ステップ105)、見積もった帯域使用率を検知基準と比較する(ステップ106)。
【0041】
図5A、図5Bは、パケットがリンク191−5、191−6を迂回するまでリンクコスト181−1、181−2を増加したときの各リンクの帯域使用率のリンクコストと、帯域使用率の見積もりを表す。リンクコスト増加後、リンク191−5を通る経路のリンクコストの総和は6、リンク191−6を通る経路のリンクコストの総和は6、リンク191−2を通る経路のリンクコストの総和は5となる。リンク191−2を通る経路のリンクコストの総和が最も小さくなるため、パケットの経路はリンク191−2を通る経路となる。
【0042】
帯域使用率予測部263は、リンクコスト増加後の各リンクの帯域使用率を予測する。その結果、リンク191−5、191−6の帯域使用率が検知基準以下になったとする。このことは、探索したリンクコストを使って迂回経路を設定すると、迂回経路設定後にリンク191−5、191−6で輻輳が発生しないことが意味する。そのため、迂回経路探索部261は、リンクコストを探索結果反映部271に通知して、迂回経路を設定する(ステップ106でYESへ進む)。
【0043】
探索結果反映部271は、受信したリンクコストをコスト格納部232に上書きし、ルーティングプロトコル処理部231を通じてパケット転送部221の経路表222を書き換え、ネットワーク中のIP中継装置202へ新しいコストを通知する(ステップ107)。迂回経路設定後、上記フローチャートを実行するプログラムに対して、管理者から停止指示がない場合、再び設定変更の確認と、帯域使用率の監視を行う(ステップ108でNOへ進む)。
【0044】
図3のフローチャートの通り、CPIP中継装置201は、輻輳が発生する前に迂回経路を設定することと、設定する迂回経路で発生する輻輳を予測し、輻輳を回避することとを行い、輻輳を予防する。
【0045】
図3における迂回経路探索部261による探索終了条件を満たすリンクコストの探索(ステップ105,106,109)は、更に好適には図6のような方法を使用することができる。
【0046】
まず、図6のフローにおいて、迂回経路探索部261は、各リンクの帯域使用率を探索キーとして、迂回経路記憶部265を探索する(ステップ401)。リンクコストの増加による迂回経路の探索処理は、処理時間が増大してしまう可能性があるため、一度使用した迂回経路を探索する場合は、迂回経路記憶部265に記憶した情報を使って探索時間を短縮することができる。また、他の探索方法の例としては、予兆検知部251において、検知基準よりも小さい値の閾値を帯域使用率と比較し、帯域使用率が閾値を超えたら、迂回経路探索部261であらかじめ迂回経路を探索して、探索結果を迂回経路記憶部265に記憶しておき、予兆検知部251で、帯域使用率が検知基準を超えたときに、迂回経路記憶部265の情報を使って探索処理時間を短縮するという方法を用いてもよい。
【0047】
迂回経路記憶部265が、探索終了条件を満たすリンクコストを探索できた場合、探索処理を終了する(ステップ402でNOへ進む)。探索できなかった場合(ステップ402でYESへ進む)、リンクコストを増加させて各リンクの帯域使用率を見積もる(ステップ403)。見積もった帯域使用率と検知基準とを比較し、探索終了条件を満たすとき、探索処理を終了する(ステップ404)。また、この他のリンクコストの探索方法の例として、探索終了条件を満たすリンクコストを一定時間探索し、複数のリンクコストを探索したときに、管理者が設定した選択指標に従ってリンクコストを選択する方法を使用してもよい。選択指標は、各リンクの帯域使用率の最大値が最も小さいものを選ぶか、各リンクの帯域使用率の差が最も小さいものを選ぶか、リンク毎の帯域使用率の比較によるその他の選択方法を使用してよい。
【0048】
探索終了条件を満たすリンクコストが見つからずかつ一定時間が経過したとき(ステップ405でYESへ進む)、迂回経路探索部261は、送信元装置と送信先装置の間に、CPIP中継装置を迂回する経路が存在するか最終確認する(ステップ406)。最終確認の方法は、CPIP中継装置が接続する全てのリンクのリンクコストを最大値まで増大させて迂回経路を計算するか、経路表232とコスト格納部222から取得した現在の経路情報を使って調べるかのいずれかを使用してよい。なお、リンクコストの最大値は、ルーティングプロトコルが許容するコストの最大の値か、管理者が設定した値かのいずれかを使用してよい。
【0049】
最終確認を行った結果迂回経路が存在し、かつ管理者が最終確認した迂回経路を適用するよう設定しているとき(ステップ407でYESへ進む)、迂回経路探索部261は、最終確認により探索した迂回経路を設定する(ステップ408)。最終確認を行っても迂回経路が存在しないか、管理者が最終確認した迂回経路を採用しないよう設定している時(ステップ407でNOへ進む)、迂回経路探索部261は迂回経路を設定しない(ステップ409)。
【0050】
以上詳述した第1の実施例によれば、CPIP中継装置が、自律的に輻輳の予兆を検知し、経路変更後の各リンクの帯域使用率を予測して迂回経路を設定することにより、輻輳を予防することを可能とする。また、本実施例によれば、リンクコストを変更して迂回経路を設定することにより、ネットワーク中のIP中継装置と迂回経路を共有することを可能とする。
【実施例2】
【0051】
第2の実施例では、リンクの帯域使用率が輻輳の予兆検知の検知基準を超えたときに、全てのリンクの帯域使用率が検知基準以下になることを迂回経路探索の探索終了条件として、帯域使用率の小さいリンクに迂回させるパケットのヘッダ条件を探索するIP中継装置の例を説明する。
【0052】
図7Aは、第2の実施例のIP中継ネットワークの全体を表した図である。本実施例におけるネットワークは、メッシュ状に装置を接続してなるパケット通信網であり、複数の送信元装置451−N(N=1〜3)と送信先装置452−N(N=1〜2)の間は経路とIP中継装置461−N(N=1〜6)とCPIP中継装置471から構成される。また図7Bの表は、CPIP中継装置が接続するリンク481−1、481−2を通るパケットのヘッダ情報である送信先IPと送信元IPと、パケットの帯域使用率を示す。
【0053】
本実施例では簡単のため、ヘッダ条件としてパケットの送信元IPと送信先IP、具体的には送信元IPアドレスと送信先IPアドレスのみを考慮する。ヘッダ条件を指定してパケットを迂回させた場合、リンクコストを変更させてパケットを迂回させる場合と比較して、迂回させるパケットを細かく指定することができるため、迂回先リンクで輻輳が発生する可能性を小さくすることができる。
【0054】
なお、本実施例のCPIP中継装置の構成は、第1の実施例において説明した図2Bと同一であるが、本実施例におけるIP中継装置においては一部の構成の機能が異なる。
【0055】
即ち、本実施例のヘッダ条件探索部264は、パケットヘッダの1つまたは複数個の任意のフィールドをヘッダ条件として、ヘッダ条件毎にパケットの帯域使用率をリンク監視部241から取得する機能を持つ。リンク監視部241から取得したヘッダ条件と帯域使用率は、帯域使用率を探索キーとしてヘッダ条件を探索することが可能な形式で保持される。ヘッダ条件探索部264は、ヘッダ条件と出力先リンクを使用した迂回経路において、パケットが宛先IPアドレス(以下、宛先IP)に到達することを確認する機能を持つ。
【0056】
この到達することを確認する方法の例としては、ルーティングプロトコル処理部231と経路表222から現在の経路情報を取得してパケットが宛先IPに到達するか確認する方法か、あらかじめ管理者からの設定変更の通知により、パケットが宛先IPに到達するようなヘッダ条件と出力先リンクをヘッダ条件探索部264に登録する方法かのいずれかを使用してよい。ヘッダ条件探索部264は、パケットが宛先IPに到達しないヘッダ条件と出力先リンクは、迂回経路として使用しない。
【0057】
迂回経路探索部261は、ヘッダ条件探索部264により迂回経路を探索した場合、探索結果反映部271にヘッダ条件と出力先リンクを通知する。
【0058】
図9は、本実施例におけるCPIP中継装置の動作フローチャートの例である。図9の動作フローチャートのうち、既に説明した図1Aに示された同一の符号を付された部分と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0059】
CPIP中継装置471がリンク481−2で、輻輳の予兆を検知したとき(ステップ104でYESへ)、迂回経路探索部261内部のヘッダ条件探索部264は、リンク監視部241からヘッダ条件毎の帯域使用率を取得して、帯域使用率を探索キーとして、探索終了条件を満たすヘッダ条件を探索する(ステップ651)。探索の方法の例としては、線形探索か、木探索か、目的値となる帯域使用率を探索可能なその他の探索アルゴリズムのいずれかを使用してよい。
【0060】
ヘッダ条件探索部264は、ヘッダ条件と出力先リンクを使用した迂回経路で、パケットが宛先IPに到達するかどうかの確認を行う(ステップ652)。本実施例では、あらかじめ管理者が、パケットが送信先IPに到達するよう登録しておいた、ヘッダ条件と出力先リンクの中から迂回経路を探索したものとする(ステップ652でYESへ進む)。もしパケットが送信先IPに到達するか確認するかどうかを他の方法を使用して確認し、パケットが送信先IPに到達しないことを確認した場合、もう一度ヘッダ条件を探索する(ステップ652でNOへ進む)。
【0061】
図8の表801は、迂回経路探索部261の探索処理の結果、リンク481−2を通過するパケットの一部を、ヘッダ条件を指定してリンク481−1に迂回させたときの各リンクの帯域使用率と検知基準との関係を示す。リンクコストを増加させてパケットを迂回させた場合、送信先IP毎にパケットを迂回させなければならないが、ヘッダ条件を指定することで、条件に一致する一部のパケットのみ迂回させることができる。この操作により迂回先のリンクで輻輳が発生することを回避することができる。
【0062】
以上、実施例2によれば、CPIP中継装置がヘッダ条件を指定して一部のパケットの出力先リンクを変更することで、迂回先リンクの帯域使用率の増加を防ぎ、輻輳の発生を予防することを可能とする。
【実施例3】
【0063】
第3の実施例では、ネットワーク中にCPIP中継装置が複数存在している場合に、CPIP中継装置同士で帯域使用率や検知基準などの予兆検知情報を通知し合い、輻輳の予兆を検知したときに、各CPIP中継装置が接続する全てのリンクの帯域使用率が、検知基準以下になる迂回経路を探索するIP中継ネットワークの例を示す。
【0064】
図10Aは、本実施例のIP中継ネットワークを表した全体図である。本実施例におけるネットワークは、メッシュ状に装置を接続してなるパケット通信網であり、送信元装置501−N(N=1〜3)と送信先装置502−N(N=1〜2)の間は経路とIP中継装置511−N(1〜5)とCPIP中継装置521−N(1〜2)から構成される。また同図に、IP中継装置511−Nを接続するリンク541−N(N=1〜8)を示す。リンク541−Nの丸印の中の数字は、そのリンクのリンクコストを示す。送信元装置501−Nと送信先装置502−Nの間の経路は、リンク541−2を通る経路と、リンク541−5を通る経路と、リンク541−6を通る経路とがある。この場合、リンク541−2を通る経路は、リンク541−2、541−3、541−4と通り、それぞれコストが2,1,1なので、リンク541−2を通る経路のリンクコストの総和は2+1+1=4となる。また、リンク541−6を通る経路は、リンク541−1、541−6、541−8と通り、それぞれコストが1,1,1なので、リンク541−6を通る経路のリンクコストの総和は1+1+1=3となる。また、リンク541−5を通る経路は、リンク541−1、541−5、541−7と通り、それぞれコストが1,3,1なので、リンク541−5を通る経路のリンクコストの総和は1+3+1=5となる。以上より、リンク541−2を通る経路のリンクコストの総和は4、リンク541−5を通る経路のリンクコストの総和は5、リンク541−6を通る経路のリンクコストの総和は3であり、リンクコストの総和が最も小さいリンク541−6を通る経路がパケットの経路となる。
【0065】
また、図10Bの表はリンク541−2、541−5、541−6の帯域使用率が、検知基準以下であるかどうかを示す。全てのリンクの帯域使用率が検知基準以下になったとき、迂回経路の探索は終了し、輻輳の予防が可能となる。
【0066】
本実施例のCPIP中継装置の構成は、第1の実施例において説明した図2Bと同一である。本実施例におけるIP中継装置においては一部構成の機能が異なる。例えば、本実施例の予兆検知部251は、帯域使用率や検知基準などの予兆検知情報をCPIP中継装置同士で相互に通知しあう機能を有する。
【0067】
すなわち、図2Aにおいて、予兆検知部251は、ネットワーク中の他のCPIP中継装置201に向けて、検知基準やリンクの帯域使用率など、迂回経路の探索に用いる予兆検知情報291をパケット転送部221、送受信ポート211経由で通知する。予兆検知情報291の通知は、一定時間間隔か、予兆検知時に行われる。ネットワーク中の他のCPIP中継装置201を認識する方法の例としては、CPIP中継装置201が隣接するIP中継装置に確認パケットを送信するか、管理者によって通知先装置のIPアドレスを設定するか、いずれかの方法を使用してよい。CPIP中継装置201が確認パケットを受信した場合、確認パケットの送信元CPIP中継装置201を通知先装置として設定するか、または確認パケットの送信元CPIP中継装置201に応答パケットを送信することで互いのCPIP中継装置を通知先装置として設定してよい。CPIP中継装置201以外のIP中継装置が確認パケットを受信した場合、確認パケットは廃棄される。
【0068】
図13は、本実施例におけるCPIP中継装置の動作フローチャートである。図13の動作フローチャートのうち、既に説明した図1Aに示された同一の符号を付された部分と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。また、図10B、図11B、図12Bは、順に、迂回経路探索の過程における、リンクコストと帯域使用率の経過を示す。
【0069】
図13のフローチャートにおいて、CPIP中継装置521−1、521−2は予兆検知情報291を一定時間間隔で互いに通知する(ステップ751、752)。
【0070】
図14は、通知元であるCPIP中継装置521−1が、通知先IP中継装置であるCPIP中継装置521−2に対して通知する予兆検知情報291を含んだパケット701のフォーマットの例を示す。パケット701は、通常のMACヘッダ、IPヘッダに続き、予兆検知情報が挿入される。予兆検知情報291の内容の例として、検知基準702、704や、リンクの帯域使用率703,705や、その他にも上述したリンクコストや出力先リンクを変更させるパケットのヘッダ条件など、迂回経路を探索する時に使用する情報のいずれかを含むことができる。なお、予兆検知情報291を通知する方法の例として、CPIP中継装置201が輻輳の予兆を検知したときに行う方法を使用してもよい。
【0071】
CPIP中継装置521−1が、リンク541−6で輻輳の予兆を検知したとき(ステップ104)、CPIP中継装置521−1の迂回経路探索部261は、帯域使用率が検知基準を超えたリンクのリンクコスト531−2を増加させ(ステップ753)、各リンクの帯域使用率の見積もりと検知基準を比較する(ステップ106)。なお、本実施例ではリンクコストを増加させることで迂回経路を探索するが、迂回経路を探索する他の方法の例として、出力先を変化させるパケットのヘッダ条件を、帯域使用率を探索キーとして探索する方法を使用してもよい。
【0072】
図11Bは、パケットがリンク541−6を迂回するまでリンクコスト531−2を増加したときの各リンクのリンクコストと、帯域使用率の見積もりを表す。リンクコスト増加後、リンク541−5を通る経路のリンクコストの総和は5、リンク541−6を通る経路のリンクコストの総和は5、リンク541−2を通る経路のリンクコストの総和は4となる。リンク541−2を通る経路のリンクコストの総和が最も小さくなるため、パケットの経路はリンク541−2を通る経路となる。
【0073】
帯域使用率予測部263は、リンクコスト増加後の各リンクの帯域使用率を予測する。その結果、リンク541−5、541−6の帯域使用率の見積もりが検知基準以下になるが、リンク541−2の帯域使用率の見積もりが検知基準以上になったとする。このことは、探索したリンクコストを使って迂回経路を設定すると、迂回経路設定後にリンク541−2で輻輳が発生する可能性があることを意味する。そのため、迂回経路探索部261は、リンクコストを探索結果反映部271に通知せず、リンクコスト531−3を増加させ、リンク541−2を迂回する経路を探索する(ステップ106でNOへ進む。ステップ109でもNOへ進む)。
【0074】
次に、迂回経路探索部261は、帯域使用率の見積もりが検知基準を超えたリンク541−6、541−2のリンクコスト531−2、531−3を増加させ(ステップ753)、各リンクの帯域使用率を見積もり、検知基準と比較する(ステップ106)。
【0075】
図12Bは、パケットがリンク541−2,541−6を迂回するまでリンクコスト531−2、531−3を増加したときの各リンクのリンクコストと、帯域使用率の見積もりを表す。リンクコスト増加後、リンク541−5を通る経路のリンクコストの総和は5、リンク541−6を通る経路のリンクコストの総和は6、リンク541−2を通る経路のリンクコストの総和は6となる。リンク541−5を通る経路のリンクコストの総和が最も小さくなるため、パケットの経路はリンク541−5を通る経路となる。
【0076】
帯域使用率予測部263は、リンクコスト増加後の各リンクの帯域使用率を予測する。その結果、図12Bに示す表のように、リンク541−2、541−5、541−6の帯域使用率の見積もりが全て検知基準以下になったとする。このことは、探索したリンクコストを使って迂回経路を設定するとで、迂回経路設定後にリンク541−2、541−5、541−6で輻輳が発生しないことを意味する。そのため、迂回経路探索部261は、リンクコストを探索結果反映部271に通知して、迂回経路を設定する(ステップ106でYESへ進む)。
【0077】
なお、本実施例ではCPIP中継装置521−2のリンクコスト531−3を、CPIP中継装置521−1が探索したが、他の迂回経路を探索する方法の例として、CPIP中継装置521−1はリンク541−5,541−6の帯域使用率が検知基準以下になった時点で、リンクコスト増加後の帯域使用率の見積もりとリンクコストを、予兆検知情報291としてCPIP中継装置521−2に通知し、CPIP中継装置521−2でリンクコスト531−3を増加させて、探索終了条件を満たすリンクコストを探索してもよい。
【0078】
実施例3によれば、CPIP中継装置が、ネットワーク上の他のCPIP中継装置のリンクの状態を考慮して迂回経路を策定することで、他のCPIP中継装置の持つ経路も含めて、輻輳を予防するために最適な経路を選択することを可能とする。
【0079】
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものなく、様々な変形例が含まれうることは言うまでもない。上述した実施例は本発明のより良い理解のために説明したものであり、説明された全ての構成を備えるものに限定されるもので無いことに留意されたい。また、ある実施例構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、上述した各実施例の構成、機能、処理手段等は、それらの一部又は全部をソフトウェア構成のみならず、専用のハードウェア構成、あるいはそれらを共用した構成としても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、インターネットプロトコルを用いたネットワーク内の輻輳予防の制御技術として有用である。
【符号の説明】
【0081】
151−1 送信元装置
152−1 送信先装置
161−1 IP中継装置
181−1 リンクコスト
191−1 リンク
201 CPIP中継装置
211 送受信ポート
221 パケット転送部
231 ルーティングプロトコル処理部
241 リンク監視部
251 予兆検知部
261 迂回経路探索部
271 探索結果反映部
281 輻輳予防部
291 予兆検知情報
701 予兆検知情報通知パケット
702、704 検知基準
703、705 帯域使用率
751 共通制御部
752 演算部
753 記憶部
754 回線カード
755 スイッチ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワーク内に配置される輻輳予防IP中継装置であって、
リンクに接続されパケットを送受信する送受信ポートと、前記パケットの転送を制御するパケット転送部と、前記リンクの輻輳予防を行う輻輳予防部とを備え、
前記輻輳予防部は、
前記リンクの帯域使用率を監視するリンク監視部と、
前記帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較する予兆検知部と、
前記帯域使用率が前記検知基準を超えたときに、前記帯域使用率が前記検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索する迂回経路探索部と、
探索した前記迂回経路を、前記パケット転送部の経路設定に反映する探索結果反映部を有する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記リンク監視部は、
前記予兆検知部と前記迂回経路探索部に対し前記帯域使用率を通知し、
前記送受信ポートを介して、外部からの設定変更の通知を受信する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項3】
請求項1に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記予兆検知部は、
前記検知基準の他に閾値を保持し、
前記帯域使用率が前記閾値を超えたときに、前記検知基準を設定し、
前記帯域使用率が前記検知基準を超えたときに、輻輳の予兆検知したことを前記迂回経路探索部に通知する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項4】
請求項1に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記迂回経路探索部は、
前記リンクのリンクコストを変化パラメータとして、前記探索終了条件を満たすリンクコストを探索し、
前記探索終了条件を満たすリンクコストと前記迂回経路とを前記探索結果反映部に通知する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項5】
請求項4に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記パケット転送部は、コスト格納部を備えたルーティングプロトコル処理部を含み、
前記探索結果反映部は、
前記探索終了条件を満たすリンクコストを、前記ルーティングプロトコル処理部の前記コスト格納部に書き込むことにより前記迂回経路を設定し、
前記ルーティングプロトコル処理部は、
前記IPネットワーク上の他のIP中継装置に前記探索終了条件を満たすリンクコストを通知することにより、前記他のIP中継装置の迂回経路を設定する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項6】
請求項1に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記迂回経路探索部は、
前記パケットのヘッダの1つあるいは複数の任意のフィールドをヘッダ条件として、前記ヘッダ条件毎の前記帯域使用率を前記リンク監視部から取得し、
前記帯域使用率を探索キーとして、前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件と前記ヘッダ条件の迂回先リンクとを探索し、
前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件を前記探索結果反映部に通知する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項7】
請求項6に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記迂回経路探索部は、
前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件と前記迂回先リンクとを指定して前記パケットが到達するかどうか確認し、
前記ヘッダ条件と前記迂回先リンクとを指定して到達しないとき、前記ヘッダ条件と前記迂回先リンク以外を前記迂回経路に設定する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項8】
請求項6に記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記探索結果反映部は、
前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件と一致する前記パケットの出力先リンクを前記迂回先リンクに変更する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項9】
IPネットワーク内に配置される輻輳予防IP中継装置であって、
リンクに接続され、パケットを送受信する送受信ポートと、前記パケットの転送を制御するパケット転送部と、前記リンクの輻輳予防を行う輻輳予防部とを備え、
前記輻輳予防部は、
前記IP中継装置が備えるリンクの帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較し、前記IPネットワーク内に配置される通知先IP中継装置に、予兆検知情報を通知する予兆検知部と、
前記帯域使用率が前記検知基準を超えたときに、前記予兆検知情報に含まれる前記リンクの帯域使用率が前記検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索する迂回経路探索部とを有し、得られた前記迂回経路を前記パケット転送部の経路設定に反映する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項10】
請求項9記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記予兆検知情報が、前記帯域使用率、前記検知基準、前記迂回経路の探索に使用するその他の情報のいずれか一つかあるいは複数の組み合わせを含む、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項11】
請求項9記載の輻輳予防IP中継装置であって、
前記通知先IP中継装置の登録を、外部から行うか、あるいは、前記IPネットワーク上で隣接する他のIP中継装置が、前記輻輳予防部を備えたものか否かを確認することによって行う、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継装置。
【請求項12】
パケットを送受信する送受信ポートと、前記パケットの転送を制御するパケット転送部を備えるIP中継装置の輻輳予防IP中継方法であって、
前記送受信ポートにつながるリンクの帯域使用率を監視し、
前記帯域使用率と輻輳の予兆検知の検知基準とを比較し、
前記帯域使用率が前記検知基準を超えたときに、前記帯域使用率が前記検知基準以下になることを探索終了条件として迂回経路を探索し、
得られた前記迂回経路を前記パケット転送部の経路設定に反映する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。
【請求項13】
請求項12記載の輻輳予防IP中継方法であって、
前記検知基準の他に閾値を保持し、
前記帯域使用率が前記閾値を超えたときに、前記検知基準を設定する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。
【請求項14】
請求項12記載の輻輳予防IP中継方法であって、
前記リンクのリンクコストを変化パラメータとして、前記探索終了条件を満たすリンクコストを探索し、
前記探索終了条件を満たす前記リンクコストと前記迂回経路とを前記パケット転送部の経路設定に反映する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。
【請求項15】
請求項12記載の輻輳予防IP中継方法であって、
前記パケットのヘッダの1つあるいは複数の任意のフィールドをヘッダ条件として、前記ヘッダ条件毎の前記帯域使用率を取得し、
前記帯域使用率を探索キーとして、前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件と、前記ヘッダ条件の迂回先リンクとを探索する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。
【請求項16】
請求項15に記載の輻輳予防IP中継方法であって、
前記探索終了条件を満たす前記ヘッダ条件と一致する前記パケットの出力先リンクを前記迂回先リンクに変更する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。
【請求項17】
請求項12記載の輻輳予防IP中継方法であって、
前記IPネットワーク内に配置される通知先IP中継装置に予兆検知情報を通知し、前記帯域使用率が前記検知基準を超えたときに、前記予兆検知情報に含まれる前記リンクの帯域使用率が前記検知基準以下になることを探索終了条件として前記迂回経路を探索し、
探索した前記迂回経路を前記パケット転送部の経路設定に反映する、
ことを特徴とする輻輳予防IP中継方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−89923(P2012−89923A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232635(P2010−232635)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】