説明

輻輳制御プログラム、輻輳制御装置及び輻輳制御方法

【課題】 性能リソースの最適配分を行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】 各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納し、各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納し、トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、性能モデルと性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出し、処理速度算出工程により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻輳制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット上に設置されるサーバ等、通信ネットワーク上に配備される装置には、大量のトラヒックが集中した場合にも、スループットの極端な低下やシステム停止に陥りサービス提供が不能となってしまうことを回避するために、装置の輻輳発生を抑止するための仕組みが導入されているのが一般的である。
【特許文献1】特開2004−88666号公報
【特許文献2】特開2004−72242号公報
【特許文献3】特開2002−152224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
システム装置の受け口で受信したイベントをバッファリングすることで輻輳制御を行う装置では、バッファオーバ時やバッファ使用率がある閾値を越えた場合に、該当イベントを破棄することで輻輳状態を回避するのが一般的である。
【0004】
この様な輻輳制御手法では装置性能を事前に考慮して決定した処理速度でバッファリングされているイベントに対して処理を行うことで輻輳発生を抑止する。この処理速度で処理し切れない量のイベントを受信した場合には、イベントがバッファに蓄積されていき、格納しきれないものについては破棄されることになるが、破棄されたイベントによっては、クライアントが意図したセッション状態の変更が行われないなど、通信状態の不整合が発生してしまう恐れがある。
【0005】
一方、バッファをシステムに1つだけ保持する手法では、ある一種のイベントを一斉に受信し続ける場合、その処理のためにだけシステム稼動が占有されることになり、その他に必要な処理を行うイベントがあった場合にも一切受理されなくなる懸念がある。この問題を回避する為にイベント種別毎にバッファを設けて各々のバッファに対して処理優先度を事前に決定して置く手法もあるが、トラヒックパタンを把握できなければ適切な優先度設定が困難である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、性能リソースの最適配分を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の輻輳制御プログラムは、
コンピュータを、
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持手段、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段、及び、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取
り出すイベント取り出し手段として機能させる。
【0008】
また、本発明の輻輳制御プログラムは、
前記コンピュータを、
前記受信イベント数を収集し、前記トラフィックモデルを生成する収集手段として機能させる。
【0009】
また、本発明の輻輳制御プログラムは、
前記コンピュータを、
キューに積まれたイベントの数が所定の数を超えた場合に、検出通知を出力する振り分け手段、及び、
前記検出通知を受信した際に、処理速度を変更するための処理速度変更通知を出力する監視手段として機能させ、
前記処理速度算出手段は、前記処理速度変更通知に基づいて、イベント毎の処理速度を変更する。
【0010】
また、本発明の輻輳制御装置は、
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持手段と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段と、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し手段とを備える。
【0011】
また、本発明の輻輳制御方法は、
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持工程と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持工程と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出工程と、
前記処理速度算出工程により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明ではトラヒックパタンを事前に予測して性能リソースを動的に分配させることが可能となる。また本発明は、輻輳状態に陥った場合にも輻輳たらしめるイベントを検出することが可能で、他イベントの為に確保されている性能リソースに空きがある場合には、該当イベントに対してより多くの性能リソースを割り当てることができる為、装置性能を最大限に生かすことが可能となる。またこの際バッファーオーバフローにより破棄されるイベント量の最小化も併せて図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下の実
施の形態の構成は例示であり、本発明は実施の形態の構成に限定されない。
【0014】
まず、本発明の輻輳制御装置の一実施形態の概要について説明する。本実施形態では、SIPメッセージの種別毎にキューを用意し、各々のキューには処理速度を割り当て、各々のキューに対する処理速度をSIPメッセージのトラヒック状況に応じて動的に変化させる手法を採用する。本手法では、トラヒックモデル、トラヒック現状値、トラヒック予測値に応じて動的に性能リソースが各SIPメッセージを処理するために配分される。本実施形態の主な特徴は、以下の3点である。
【0015】
1)本実施形態は、トラヒックモデル、トラヒック現状値、トラヒック予測値に応じて処理速度をSIPメッセージ種別毎に用意したキューに対して動的に変更させる。すなわち、本実施形態では、トラヒックに応じた性能リソースの動的分配を行う。
【0016】
2)また、本実施形態では、キューに積まれたメッセージ数(キュー長)がキュー自体の長さに対してある割合(閾値)を越えた場合には、そのメッセージに対する処理速度を上げる様に処理速度を変動させる。このようにして、本実施形態では、破棄されるメッセージの最小化を図る。
【0017】
3)また、本実施形態では、キューに積むイベントを選別する。全SIPメッセージを一律キューへ積む対象とするのではなく、必要と判断した重要なメッセージのみを接続遅延処理の対象とする。本実施形態では、後述のように、SIPプロトコルにおける通話開始のためのINVITEリクエストや位置情報登録のためのREGISTERリクエストをキューへ積む対象としている。
【0018】
ここで、上述の処理速度はキューからのイベント取り出し速度のことであり、イベント取り出し周期と一周期単位で取り出されるイベント数によって決定されるものである。キューに積まれているイベントは、イベント取り出し周期のサイクルで取り出しの契機が与えられ、一周期単位で処理されるイベント数分のイベントがその都度キューから取り出される。
【0019】
次に、本発明の輻輳制御装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に、本発明の輻輳制御装置の一実施形態としてのSIPサーバの構成図を示す。
【0020】
図1に示されるように、SIPサーバは、イベント刈り取り部101と、接続遅延処理部102と、SIP信号処理部103と、処理速度決定部104と、トラフィック統計情報収集部105と、CPU使用率監視部106と、キュー長監視部107とを備える。
【0021】
接続遅延処理部102は、イベント種別判定部108と、キューへのイベント振り分け部109と、キューからのイベント取出し部110とを備える。
【0022】
処理速度決定部104は、トラフィックモデル保持部111と、性能モデル保持部112と、処理速度算出部113とを備える。
【0023】
イベント刈り取り部101は、受信したイベントを刈り取りSIP信号処理部103へ受け渡す。イベント刈り取り部101は、一度に大量のイベントを受信し刈り取れないイベントが発生した場合には、接続遅延処理の対象とするかを判断させるために、該当イベントをイベント種別判定部108へ渡す。ここで、キューに積むイベントを選別し、キューからイベントを取り出すまでの一連の処理を接続遅延処理と呼ぶ。
【0024】
ここで、イベント刈り取り部101の動作について図2を参照して説明する。図2は、
図1に示されるイベント刈り取り部101の動作のフローチャートである。
【0025】
図2に示されるように、イベント刈り取り部101は、SIPイベントを蓄積する(S201)。そして、イベント刈り取り部101は、イベント数がY以上であるか否かを判定する(S202)。Yは、イベント刈り取り部101が処理可能なイベント数である。
【0026】
そして、イベント刈り取り部101は、イベント数がY以上でなければ(NO)、SIPイベントをSIP信号処理部へ送信し(S203)、イベント数がY以上であれば(YES)、SIPイベントをイベント種別判定部へ送信する(S204)。
【0027】
次に、上述のSIPイベントのデータ構造について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示されるSIPサーバにおいて使用されるSIPイベントのデータ構造の概念図である。図3に示されるように、SIPイベントは、IPパケットに含まれる。そして、SIPイベントは、SIPヘッダと、SIPペイロードとを備える。SIPヘッダの先頭行には、INVITE、REGISTER、ACK、BYE、CACEL、OPTIONSのリクエスト信号や、1xx〜6xxのレスポンス信号のSIPメッセージ種別が判別可能な情報が含まれている。
【0028】
次に、イベント種別判定部108について説明する。イベント種別判定部108は、SIPヘッダ先頭行から判別可能なSIPメッセージ種別を元に接続遅延処理の対象とするイベントを特定する。イベント種別判定部108は、接続遅延処理の対象とならないイベントを破棄する。
【0029】
ここで、SIPヘッダについて、図4に示す。図4は、図3に示されるSIPヘッダの一例を示す概念図である。図4の(a)は、リクエスト信号例であり、図4の(b)は、レスポンス信号例である。
【0030】
次に、キューへのイベント振り分け部109について説明する。キューへのイベント振り分け部109は、キューへイベントを振り分けてPushする。キューへのイベント振り分け部109は、もし、キューに積まれているイベントが満杯であれば、イベントを破棄する。本実施形態では、SIPメッセージのうちINVITE及びREGISTERを対象にそれぞれのキューを用意する。そして、INVITE信号が詰まれるキューをINVITEキュー、REGISTER信号が詰まれるキューをREGISTERキューと呼ぶ。
【0031】
ここで、イベント種別判定部108及びキューへのイベント振り分け部109の動作について図5を参照して説明する。図5は、図1に示されるイベント種別判定部108及びキューへのイベント振り分け部109の動作のフローチャートである。
【0032】
イベント種別判定部108は、SIPイベントの判定処理を行う。すなわち、SIPヘッダの先頭行からSIPメッセージ種別を特定する(S501)。そして、イベント種別判定部108は、SIPメッセージ種別がINVITEもしくはREGISTERであるか否かを判定する(S502)。イベント種別判定部108は、SIPメッセージ種別がINVITEもしくはREGISTERでなければ(NO)、信号を破棄する(S504)。
【0033】
そして、イベント種別判定部108は、SIPメッセージ種別がINVITEもしくはREGISTERであれば(YES)、INVITEもしくはREGISTERをイベント振り分け部へ送信する(S503)。
【0034】
キューへのイベント振り分け部109は、SIPメッセージ種別がINVITEであればINVITEキューへ、REGISTERであればREGISTERキューへイベントをPushする(S505)。
【0035】
キューからのイベント取り出し部110は、キュー毎に決定されている処理速度に従い各々のキューからイベントをPopし、SIP信号処理部へイベントを渡す。
【0036】
ここで、キューからのイベント取り出し部110の動作について図6を参照して説明する。図6は、図1に示されるキューからのイベント取り出し部110の動作フローチャートである。
【0037】
図6に示されるように、まず、処理速度決定部は、該当時刻(t)における処理速度を定めるイベント取り出し周期T(t)と一周期単位で取り出されるイベントN(t)を保持する(S601)。
【0038】
そして、キューからのイベント取り出し部110は、INVITE及びREGISTERキューの処理速度を参照する。この際、キューからのイベント取り出し部110は、T(t)、N(t)の参照を行う(S602)。
【0039】
そして、キューからのイベント取り出し部110は、INVITE及びREGISTERキューからのN(t)個のイベントを取り出す(S603)。そして、そして、キューからのイベント取り出し部110は、INVITE及びREGISTERイベントをSIP信号処理部へ送信する。そして、そして、キューからのイベント取り出し部110は、この処理をT(t)周期で繰り返す。
【0040】
SIP信号処理部103は、SIPプロトコルに準拠してVoIP呼制御を行うSIPサーバ機能部である。
【0041】
トラヒックモデル保持部111は、トラフィック統計情報保持部105にて保持されているINVITE及びREGISTERの受信時刻及び受信数に関するトラフィックモデルをトラフィックモデルとして保持している。このトラフィックモデルは定期的に更新される。また、このトラフィックモデルは処理速度を決定するための情報となる。
【0042】
ここで、上記トラフィックモデルについて図7を参照して説明する。図7は、本発明の輻輳制御装置の一実施形態において使用されるトラフィックモデルの一例のグラフである。図7では、横軸に時刻、縦軸に受信イベント数を設定している。また、図7に示される例では、INVITEとREGISTERの例を示している。
【0043】
性能モデル保持部112は、事前に測定された装置性能モデルを保持する。この装置性能モデルは、通信処理量とCPU使用率を要素とする性能グラフと、例えば図7に示されるトラヒックモデルを基に算出された、性能リソースのイベント種別毎配分率(性能配分率X)にて決定されるモデルである。性能モデル保持部112は、性能配分率Xを時刻に従い動的に変化させる。このモデルは、処理速度を決定するための情報となる。
【0044】
ここで、上記性能モデルについて図8及び図9を参照して説明する。図8は、本発明の輻輳制御装置の一実施形態におけるINVITEのSIPメッセージに対する性能モデルの概念図であり、図9は、本発明の輻輳制御装置の一実施形態におけるREGISTERのSIPメッセージ種別に対する性能モデルの概念図である。図8において、横軸は、BHCAを示し、縦軸はCPU使用率を示す。BHCAとは、1時間あたりに処理するコール数である。また、性能配分率Xとは、CPUの性能を各イベントの処理に配分する率で
ある。この性能配分率Xについては後述する。また、図9において、横軸はAPSを示し、縦軸はCPU使用率を示す。APSとは、1秒間におけるレジスタイベント処理量である。
【0045】
処理速度算出部113は、上記トラヒックモデルと性能モデルを基に処理速度を各キューごとに決定する。すなわち、処理速度算出部113は、トラヒックモデルを基にある時刻におけるイベント種別毎性能配分率(X)を決定し、さらに性能配分率と性能モデルから時刻tにおけるイベント種別毎最大通信性能を求める。このように、前述の図8及び図9に示されるイベント種別毎性能配分率(X)は、各イベントの各時刻のトラフィックモデルに比例して決定される値である。処理速度算出部113は、このイベント種別毎最大通信性能を満たすための処理速度をイベント種別毎キューごとに算出する。
【0046】
トラヒック統計情報収集部105は、イベント受信情報(イベント受信時刻とイベント種別)をロギングする。トラヒックモデルはイベント受信情報を基に作成される。ここで、トラフィック統計情報収集部105の動作について図10を参照して説明する。図10は、図1に示されるトラフィック統計情報収集部105の動作のフローチャートである。
【0047】
まず、SIP信号処理部は、SIPイベントの判定処理を行う(S1001)。ここで、SIP信号処理部は、SIPヘッダの先頭行からSIPメッセージ種別を特定する。このSIPメッセージ種別は、トラフィック統計情報収集部に通知される。トラフィック統計情報収集部は、受信したSIPメッセージ種別とその受信時刻をロギングする。また、該当SIPメッセージ種別に対応するメッセージ受信数カウンタを加算する(S1002)。
【0048】
CPU使用率監視部106は、現状のCPU使用率を監視する。CPU使用率は、OSが提供するシステムインターフェースから取得が可能である。
【0049】
キュー長監視部107は、図11に示されるように、各キュー毎にキュー長(キューに積まれたイベント数)を監視し、ある閾値を越えた場合に、該当イベントに対する処理性能をUPさせるために処理速度の再設定を行うように処理速度決定部104へ通知を行う。また、キュー長監視部107は、キュー長がある閾値を下回った場合に処理速度を通常状態に戻す契機を処理速度決定部104に与える。図11は、本発明の輻輳制御装置の一実施形態における処理速度の再設定動作の概念図である。
【0050】
ここで、キュー長監視部107の動作について図12を参照して説明する。図12は、図1に示されるキュー長監視部107の動作のフローチャートである。まず、キューへのイベント振り分け部は、SIPメッセージ種別がINVITEであればINVITEキューへ、REGISTERであればREGISTERキューへイベントをPushする(S1201)。そして、キューへのイベント振り分け部は、キュー長が閾値を超えたか否かを判定する(S1202)。キューへのイベント振り分け部は、キュー長が閾値を超えた場合(YES)、キュー長閾値オーバ検出通知をキュー長監視部へ送信する(S1203)。
【0051】
そして、キュー長監視部は、処理速度変更通知を処理速度決定部に送信する(S1204)。処理速度変更通知を受信した処理速度決定部は、T’(t)、N’(t)の再設定を行う(S1205)。
【0052】
そして、キューへのイベント振り分け部は、SIPメッセージ種別がINVITEであればINVITEキューへ、REGISTERであればREGISTERキューへイベントをPushする(S1206)。そして、キューへのイベント振り分け部は、キュー長
が閾値を下回ったか否かを判定する(S1207)。キューへのイベント振り分け部は、キュー長が閾値を下回った場合(YES)、キュー長閾値オーバ解除検出通知をキュー長監視部に送信する(S1208)。
【0053】
そして、キュー長監視部は、処理速度変更通知を処理速度決定部に送信する(S1209)。処理速度変更通知を受信した処理速度決定部は、T(t)、N(t)の再設定を行う(S1210)。
【0054】
<処理速度の再設定について>
ここで、処理速度の再設定についてさらに説明する。処理速度決定部104は、あるイベントの性能分配率がXであった場合、1−X分が他イベントの処理のために確保されるが、1−X分の性能リソースが未使用若しくは空きがある場合に、本性能配分率Xよりも性能リソース(CPU使用率)を該当イベントのために多く割り当てる様に接続遅延レートを決定する。処理速度決定部104は、性能リソースの未使用分は「100%−現状のCPU使用率」で算出し、本値と性能モデルからさらに処理可能な通信処理量を求めて接続遅延レートを再設定する。本処理速度の再設定により未使用分の性能リソースが有効に活用される。
【0055】
(付記1)
コンピュータを、
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを保持する性能モデル保持手段、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段、及び、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し手段として機能させるための輻輳制御プログラム。
【0056】
(付記2)
前記コンピュータを、
前記受信イベント数を収集し、前記トラフィックモデルを生成する収集手段として機能させる付記1記載の輻輳制御プログラム。
【0057】
(付記3)
前記コンピュータを、
キューに積まれたイベントの数が所定の数を超えた場合に、検出通知を出力する振り分け手段、及び、
前記検出通知を受信した際に、処理速度を変更するための処理速度変更通知を出力する監視手段として機能させ、
前記処理速度算出手段は、前記処理速度変更通知に基づいて、イベント毎の処理速度を変更する付記1記載の輻輳制御プログラム。
【0058】
(付記4)
前記処理速度算出手段は、
性能リソースの未使用分の値を、100%−現状のCPU使用率により算出し、該算出
した性能リソースの未使用分の値と前記性能モデルから、さらに処理可能な通信性能を求めて処理速度を再設定する付記1記載の輻輳制御プログラム。
【0059】
(付記5)
前記キューが、前記メッセージ毎に用意されている付記1記載の輻輳制御プログラム。
【0060】
(付記6)
コンピュータを、
前記キューに積むメッセージの種別を選別する判定手段として機能させる付記1記載の輻輳制御プログラム。
【0061】
(付記7)
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持手段と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段と、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し手段とを備える輻輳制御装置。
【0062】
(付記8)
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持工程と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持工程と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出工程と、
前記処理速度算出工程により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し工程とを備える輻輳制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の輻輳制御装置の一実施形態としてのSIPサーバの構成図である。
【図2】図1に示されるイベント刈り取り部101の動作のフローチャートである。
【図3】図1に示されるSIPサーバにおいて使用されるSIPイベントのデータ構造の概念図である。
【図4】図3に示されるSIPヘッダの一例を示す概念図である。
【図5】図1に示されるイベント種別判定部108及びキューへのイベント振り分け部109の動作のフローチャートである。
【図6】図1に示されるキューからのイベント取り出し部110の動作フローチャートである。
【図7】本発明の輻輳制御装置の一実施形態において使用されるトラフィックモデルの一例のグラフである。
【図8】本発明の輻輳制御装置の一実施形態におけるINVITEのSIPメッセージに対する性能モデルの概念図である。
【図9】本発明の輻輳制御装置の一実施形態におけるREGISTERのSIPメッセージ種別に対する性能モデルの概念図である。
【図10】図1に示されるトラフィック統計情報収集部105の動作のフローチャートである。
【図11】本発明の輻輳制御装置の一実施形態における処理速度の再設定動作の概念図である。
【図12】図1に示されるキュー長監視部107の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
101 イベント刈り取り部
102 接続遅延処理部
103 SIP信号処理部
104 処理速度決定部
105 トラフィック統計情報収集部
106 CPU使用率監視部
107 キュー長監視部
108 イベント種別判定部
109 キユーへのイベント振り分け部
110 キユーからのイベント取り出し部
111 トラフィックモデル保持部
112 性能モデル保持部
113 処理速度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持手段、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段、及び、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し手段として機能させるための輻輳制御プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記受信イベント数を収集し、前記トラフィックモデルを生成する収集手段として機能させる請求項1記載の輻輳制御プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
キューに積まれたイベントの数が所定の数を超えた場合に、検出通知を出力する振り分け手段、及び、
前記検出通知を受信した際に、処理速度を変更するための処理速度変更通知を出力する監視手段として機能させ、
前記処理速度算出手段は、前記処理速度変更通知に基づいて、イベント毎の処理速度を変更する請求項1記載の輻輳制御プログラム。
【請求項4】
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持手段と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持手段と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出手段と、
前記処理速度算出手段により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し手段とを備える輻輳制御装置。
【請求項5】
各メッセージ毎の時刻に対する受信イベント数を示すトラヒックモデルを格納するトラフィックモデル保持工程と、
前記各メッセージ毎の通信性能とCPU使用率との関係を示す性能モデルを格納する性能モデル保持工程と、
前記トラフィックモデルに基づいて算出された所定の時刻におけるイベント毎のCPUの性能配分率を算出し、前記性能モデルと前記性能配分率とに基づいて各メッセージに対する通信性能を算出し、該通信性能を満たすための処理速度を各メッセージ毎に算出する処理速度算出工程と、
前記処理速度算出工程により算出された処理速度に基づいて、キューからイベントを取り出すイベント取り出し工程とを備える輻輳制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−157802(P2006−157802A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348655(P2004−348655)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】