説明

農作業機

【課題】ガススプリングをチェーンケース部より前方の位置に配設する必要がない農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機11は、チェーンケース部27を有する作業機本体12と、回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能な延長作業体13とを備える。農作業機11は、延長作業体13の上方向への回動を補助するガススプリング14を備える。ガススプリング14の作業機本体12側の端部を作業機本体13のうちチェーンケース部27より外側方に位置する部分に回動可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機本体と上下方向に回動可能な延長作業体とを備える農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図3に示すような、耕耘体1を回転させるためのチェーン(図示せず)を収容したチェーンケース部2を有する作業機本体3と、作業機本体3の端部に支軸4を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業体5と、一端部が作業機本体3に回動可能に取り付けられ他端部が延長作業体5に回動可能に取り付けられた付勢手段であるガススプリング6とを備え、このガススプリング6の一端部が作業機本体3のうちチェーンケース部2より内側方に位置する部分に回動可能に取り付けられた折畳み式の農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23814号公報(第5頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、ガススプリング6がチェーンケース部2を越える必要があるため、ガススプリング6をチェーンケース部2より前方の位置に配設しなければならない。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、付勢手段をチェーンケース部より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、耕耘体を回転させるためのチェーンを収容したチェーンケース部を有する作業機本体と、この作業機本体の端部に回動中心軸線を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業体と、一端部が前記作業機本体に回動可能に取り付けられ、他端部が前記延長作業体に回動可能に取り付けられた付勢手段とを備え、前記付勢手段の一端部は、前記作業機本体のうち前記チェーンケース部より外側方に位置する部分に回動可能に取り付けられているものである。
【0006】
そして、付勢手段の一端部が作業機本体のうちチェーンケース部より外側方に位置する部分に回動可能に取り付けられているため、付勢手段がチェーンケース部を越える必要がなく、付勢手段をチェーンケース部より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止することが可能である。
【0007】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、付勢手段の一端部は、延長作業体の回動中心軸線の略真下に位置し、前記付勢手段は、前記延長作業体の重心が前記回動中心軸線の略真上に位置したときに最も伸びた状態となるものである。
【0008】
そして、付勢手段の一端部が延長作業体の回動中心軸線の略真下に位置し、付勢手段は延長作業体の重心が回動中心軸線の略真上に位置したときに最も伸びた状態となるため、付勢手段からの力を延長作業体に対して効率的に作用させることが可能である。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、付勢手段は、ガススプリングであるものである。
【0010】
そして、ガススプリングがチェーンケース部を越える必要がなく、ガススプリングをチェーンケース部より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、付勢手段の一端部が作業機本体のうちチェーンケース部より外側方に位置する部分に回動可能に取り付けられているため、付勢手段がチェーンケース部を越える必要がなく、付勢手段をチェーンケース部より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、付勢手段の一端部が延長作業体の回動中心軸線の略真下に位置し、付勢手段は延長作業体の重心が回動中心軸線の略真上に位置したときに最も伸びた状態となるため、付勢手段からの力を延長作業体に対して効率的に作用させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、ガススプリングがチェーンケース部を越える必要がなく、ガススプリングをチェーンケース部より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1および図2において、11は折畳み式の農作業機で、この農作業機11は、走行車であるトラクタ(図示せず)に連結して使用する牽引式のものである。そして、農作業機11は、トラクタに連結された状態でこのトラクタの走行により圃場上を移動しながら農作業である耕耘整地作業をする。
【0016】
農作業機11は、トラクタの3点リンク部に連結される左右方向長手状の作業機本体(中央作業部)12と、この作業機本体12の左右両側の端部に略前後方向の回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業体(延長作業部)13と、一端部が作業機本体12に回動可能に取り付けられ他端部が延長作業体13に回動可能に取り付けられ延長作業体13の上方向への回動を補助する長手状の伸縮可能な付勢手段であるガススプリング14とを備えている。
【0017】
作業機本体12は、左右方向長手状の機枠21と、機枠21に回転可能に設けられ入力軸20側からの動力で駆動回転しながら耕耘作業をする耕耘体22と、機枠21の後部に上下回動可能に設けられ圃場面に追従するように上下回動しながら整地作業をする整地体(図示せず)とを備えている。
【0018】
機枠21は、トラクタの3点リンク部に連結される3点連結部(図示せず)と、入力軸20を回転可能に支持した軸支部23とを有している。また、機枠21は、作業体被取付部24を左右方向端部に有し、この作業体被取付部24に延長作業体13が支軸25を介して上下方向に回動可能に取り付けられている。なお、この支軸25の軸芯が延長作業体13の回動中心軸線Xである。
【0019】
さらに、機枠21は、入力軸20側からの動力に基づいて耕耘体22を回転させるためのチェーン(図示せず)を収容したチェーンケース部27を左右方向一端部に有しかつこのチェーンケース部27と離間対向したブラケット部(図示せず)を左右方向他端部に有し、これらチェーンケース部27およびブラケット部にて耕耘体22の耕耘軸28が回転可能に支持されている。なお、耕耘体22の耕耘軸28には、耕耘爪およびクラッチ爪等が取り付けられている。また、機枠21は、耕耘体22のクラッチ爪を覆うクラッチカバー部29を左右方向端部に有している。
【0020】
また、機枠21は、この機枠21の側板部30から外側方に向って突出したスプリング被取付部31を有している。このスプリング被取付部31は、例えば側板部30から外側方に向って突出した断面略コ字状のコ字状部分32と、このコ字状部分32の先端側から上方に向って突出しチェーンケース部27より外側方の位置(つまり延長作業体13側の位置)にある板状部分33とにて構成されている。なお、スプリング被取付部31のコ字状部分32の先端部には、支軸25と平行に位置するロック用軸34が取り付けられている。
【0021】
延長作業体13は、作業機本体12の機枠21の作業体被取付部24に支軸25を介して回動可能に取り付けられた延長機枠41と、延長機枠41に回転可能に設けられ作業機本体12の耕耘体22からの動力で駆動回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体42と、延長機枠41の後部に上下回動可能に設けられ圃場面に追従するように上下回動しながら整地作業をする延長整地体(図示せず)とを備えている。
【0022】
延長機枠41は、この延長機枠41の側板部43から突出した突出部44を有している。この突出部44には、作業機本体12のロック用軸34と係合して延長作業体13を作業位置にロックするレバー付のロック用フック45が回動可能に取り付けられている。作業機本体12の機枠21には、延長作業体13のロック用軸35と係合して延長作業体13を非作業位置(折畳み位置)にロックするレバー付のロック用フック(図示せず)が回動可能に取り付けられている。また、延長作業体13の延長耕耘体42の耕耘軸46には、作業機本体12の耕耘体22と同様、耕耘爪およびクラッチ爪等が取り付けられている。
【0023】
一方、付勢手段であるガススプリング14は、例えば所定のガスが内部に充填された細長筒状のシリンダ本体51と、このシリンダ本体51内に対して出入りする細長棒状のピストンロッド52とにて構成されている。
【0024】
そして、シリンダ本体51の基端部は、延長作業体13の延長機枠41のスプリング被取付部49に支軸53を介して回動可能に取り付けられている。また、ピストンロッド52の先端部は、作業機本体12の機枠21のスプリング被取付部31の板状部分33の上端部に支軸54を介して回動可能に取り付けられている。すなわち、ガススプリング14の作業機本体12側の一端部が、作業機本体12のうちチェーンケース部27より外側方に位置する部分に支軸54を介して回動可能に取り付けられている。
【0025】
また、図1から明らかなように、ガススプリング14の作業機本体12側の一端部(ピストンロッド52の先端部)は、正面視で延長作業体13の回動中心軸線Xの略真下に位置する。そして、このガススプリング14は、延長作業体13が回動中心軸線Xを中心として回動する場合において、延長作業体13の重心Gが回動中心軸線Xの略真上に位置したときに、その回動中心軸線Xと交差した状態でかつ最も伸びた状態となる。
【0026】
次に、上記一実施の形態の動作等を説明する。
【0027】
農作業機11の作業幅を最大にして耕耘整地作業をする場合は、左右の延長作業体13を作業位置にロックした状態で、中央の作業機本体12と左右の延長作業体13とをトラクタの走行により圃場上を移動させる。すると、作業機本体12の耕耘体22および延長作業体13の耕耘体42にて耕耘作業が行われ、作業機本体12の整地体および延長作業体13の延長整地体にて整地作業が行なわれる。
【0028】
そして、例えば作業終了後、延長作業体13を折畳む場合は、ロック用フック45によるロックを解除してから、延長作業体13を例えば作業者による手作業で回動中心軸線Xを中心として回動させて非作業位置にロックする。
【0029】
このとき、ガススプリング14が延長作業体13の上方向への回動を補助するため、作業者は軽く延長作業体13を上方向に回動させることが可能であり、また、ガススプリング14が延長作業体13の下方向への回動速度を減少するため、延長作業体13の回動がスムーズに行われる。
【0030】
そして、この農作業機11によれば、ガススプリング14の作業機本体12側の端部が作業機本体12のうちチェーンケース部27より外側方に位置する部分に回動可能に取り付けられているため、延長作業体13の回動時(折畳み時)にガススプリング14がチェーンケース部27を越える必要がなく、ガススプリング14をチェーンケース部27より前方の位置に配設しなければならないという不具合を防止できる。したがって、ガススプリング14をチェーンケース部27の外側方の位置に配設でき、ガススプリング14の作業機本体12側の端部をチェーンケース部27に近づけることができる。
【0031】
また、ガススプリング14の作業機本体12側の端部が延長作業体13の回動中心軸線Xの略真下に位置し、ガススプリング14は延長作業体13の重心Gが回動中心軸線Xの略真上に位置したときにその回動中心軸線Xと交差した状態でかつ最も伸びた状態となるため、ガススプリング14からの力を延長作業体13に対して効率的に作用させることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、ガススプリング14のシリンダ本体51の基端部が延長作業体13のスプリング被取付部49に回動可能に取り付けられ、ピストンロッド52の先端部が作業機本体12のスプリング被取付部31に回動可能に取り付けられた構成について説明したが、例えば逆にガススプリング14のシリンダ本体51の基端部が作業機本体12のスプリング被取付部31に回動可能に取り付けられ、ピストンロッド52の先端部が延長作業体13のスプリング被取付部49に回動可能に取り付けられた構成でもよい。
【0033】
また、作業機本体12の左右両側に延長作業体13を回動可能に設けた構成について説明したが、例えば、作業機本体12の左右いずれかのみに延長作業体13を回動可能に設けた構成でもよい。
【0034】
さらに、作業者による手作業で延長作業体13を回動させる手動式のものには限定されず、モータ或いは油圧シリンダ等の駆動手段で延長作業体13を回動させる自動式のものでもよい。
【0035】
また、延長作業体13の上方向への回動を補助する付勢手段は、ガススプリング14には限定されず、シリンダ本体と、このシリンダ本体内に対して出入りするピストンロッドと、このピストンロッドを付勢するコイルバネとにて構成されたもの等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の要部を示す正面図である。
【図2】同上農作業機の側面図である。
【図3】従来の農作業機の側面図である。
【符号の説明】
【0037】
11 農作業機
12 作業機本体
13 延長作業体
14 付勢手段であるガススプリング
22 耕耘体
27 チェーンケース部
G 重心
X 回動中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘体を回転させるためのチェーンを収容したチェーンケース部を有する作業機本体と、
この作業機本体の端部に回動中心軸線を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業体と、
一端部が前記作業機本体に回動可能に取り付けられ、他端部が前記延長作業体に回動可能に取り付けられた付勢手段とを備え、
前記付勢手段の一端部は、前記作業機本体のうち前記チェーンケース部より外側方に位置する部分に回動可能に取り付けられている
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
付勢手段の一端部は、延長作業体の回動中心軸線の略真下に位置し、
前記付勢手段は、前記延長作業体の重心が前記回動中心軸線の略真上に位置したときに最も伸びた状態となる
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
付勢手段は、ガススプリングである
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−115711(P2006−115711A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304513(P2004−304513)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】