説明

農作業機

【課題】トラクタに装着して容器内の内容物をモータにより排出して農作業を行い、排出の際のモータの出力状態を確認可能な農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタに装着してホッパー21、31内の内容物をモータ22、32の回転により排出して農作業を行う農作業機であって、モータ22、32の出力を制御する制御部70と、モータ22、32に対する出力状態を段階的に表示する表示部60とを有する。さらに、制御部70はPWM(Pulse Width Modulation)によってモータ22、32の制御を行い、表示部60はPWMによるデューティー比の出力を段階的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、トラクタに装着して容器内の内容物をモータにより排出して農作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、施肥機や播種機において、モータの回転等により、肥料や種子を排出する構成のものがあるが、この場合、モータが過電流となった場合いきなり停止する。これは、回転センサが働いたり、電流検出により停止させたり、モータ単体のロックで停止する等の構成を有しているためである。
【0003】
一方、特許文献1には、回転体の負荷を検知し、この検知に基づいて作動する報知手段を備える散布装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−252236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来例では、モータの回転にどれだけ余力があるかを知ることができない。これを知ることができれば、作業者はその情報に基づき作業速度を上げ、作業効率をアップさせることも可能となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着して容器内の内容物をモータにより排出して農作業を行い、排出の際のモータの出力状態を確認可能な農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、トラクタに装着して容器内の内容物をモータの回転により排出して農作業を行う農作業機であって、前記モータの出力を制御する制御部と、前記モータの出力状態を段階的に表示する表示部とを有することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の農作業機は、前記制御部はPWM(Pulse Width Modulation)によって前記モータの制御を行い、前記表示部はPWMによるデューティー比の出力を段階的に表示することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、モータによる回転を検出する回転センサを有し、前記制御部はあらかじめ設定された内容物の排出量と入力されたトラクタの速度からモータによる回転速度を計算し、前記回転センサの情報から前記モータによる回転が計算された回転速度となるように前記デューティー比を算出し出力することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記内容物は肥料又は種子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トラクタに装着して容器内の内容物をモータにより排出して農作業を行う農作業機において、モータの出力状態を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の農作業機の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の農作業機が有するホッパー部の拡大図である。
【図3】本発明の農作業機が有するモータ動力部の拡大図である。
【図4】本発明の農作業機が有する制御システムのブロック図である。
【図5】本発明の農作業機が有する表示部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の農作業機の一実施形態を示す側面図である。図1の農作業機1は、施肥播種機である。装着部11を(図示しない)トラクタの後部に装着し、入力軸12から入力されたトラクタのPTO動力により耕耘部13を回転させて耕耘を行うロータリー10を有している。ロータリー10の上部には、肥料ホッパー21が設置されており、内容物として内部に肥料を有しており、肥料モータ22の回転にともない、肥料が肥料ホース23を通り肥料排出部24から排出される。さらに、肥料ホッパー21の後部には、種子ホッパー31が設置されており、内容物として内部に種子を有しており、種子モータ32の回転にともない、種子が種子ホース33a、33bを通り種子排出部34から排出される。
【0013】
肥料排出部24は、ロータリー10の前側に設置されているため、排出された肥料は、耕耘部13の回転にともない土中に攪拌される。一方、種子排出部34は、耕耘部13より後ろで、かつ、ディスク15の後部に設置されており、耕耘した土に、ディスク15で溝をつけ、その溝の中に種子が排出されるようになっている。さらに、種子排出部34の後部には、鎮圧輪16を有しており、これにより、地面を鎮圧し、種子を土中に埋め込むことができる。
【0014】
図2は、本発明の農作業機が有するホッパー部の拡大図である。図3は、本発明の農作業機が有するモータ動力部の拡大図である。これらにより、種子ホッパー31側を例として、本発明の農作業機が有する排出機構について説明する。
【0015】
種子ホッパー31の下部には、凹部35a、36aを有する操出ローラ35、36が上部と下部が開口した円筒39、40内で回転するようになっている。凹部35a、36aが上側にあるときは、内容物である種子がこの凹部35a、36aに入り、操出ローラ35、36が回転すると凹部内の種子が円筒39、40にそって下側に運ばれ種子ホース33a、33bから排出される。凹部内に入る種子の量は決まっているため、操出ローラ35、36の回転が速ければその分だけ、単位時間当たりの排出量が増えることになる。また、軸37、38の長手方向に、他の操出ローラを設置して、トラクタの進行方向に対して横方向に複数の排出機構を設けてもよい。
【0016】
種子モータ32の動力は、回転軸41、チェーン42、軸37,38やギア43、44等により伝達され操出ローラ35、36を回転させる。このとき、種子モータ32の回転数を上げれば、その分、操出ローラ35、36の回転数も上がり、排出量を増加させる。
【0017】
これらの機構は、肥料ホッパー21側の肥料モータ22による肥料の排出でも同様である。また、操出ローラは図のように2つでなく1つの構成でもよい。
【0018】
図4は、本発明の農作業機が有する制御システムのブロック図である。図5は、本発明の農作業機が有する表示部の拡大図である。制御システムは、操作表示部50と、制御部70と、回転センサ80と、モータ32(22)とを有している。操作表示部50の操作信号は、制御部70に送られ、制御部70では、回転センサ80の情報を加味して、モータ32(22)を制御する。また、操作表示部50では、モータ32(22)に対する出力状態の情報を表示する。なお、図5で、「左」「右」の表示があるが、これはトラクタの進行方向に対して直角横方向の左右にそれぞれ別の排出機構を有していることを示す。
【0019】
操作表示部50は、各操作スイッチ(51〜56)と表示部60とが一体に構成されている。別々でも構成可能であるが一体にすることでコンパクトな構成となる。操作表示部50はトラクタの運転席近傍等、作業者にとって作業しやすい場所に配置される。また、表示部60は液晶表示や有機EL等により表示可能となる。
【0020】
制御部70は、例えば、必要なデバイス等をボックス内に格納して構成されてもよいし、操作表示部50と一体に構成してもよい。設置場所は、トラクタや農作業機1等のふさわしい場所に設置することができる。
【0021】
回転センサ80は、モータ32(22)からの回転を検出するもので、回転センサ80は各モータに対してそれぞれ有しているものである。図4の例では、磁気感知部80aが、回転軸41に取り付けられる4つの磁石81からの回転による磁気の変化を検知して、回転軸41の回転数を算出することを可能としている。なお、モータからの回転を検出する回転センサの回転の検出位置は、これ以外の位置でも(例えば、操出ローラ35、36の回転等)可能である。この他、回転センサは光の検知によるセンサ等でもよい。
【0022】
電源スイッチ51を入れると操作表示部50の電源が入る。電源確認灯66で電源が入っているか否かを確認できる。
【0023】
速度スイッチ52は、トラクタの作業速度を入力するためのスイッチであり、この情報は、表示部60の入力速度表示63で表示される。作業者は、作業するトラクタの速度を速度スイッチ52により入力する。また、トラクタ側から現在の速度情報が直接入力される場合は、入力速度表示63での表示のみでこのスイッチは使用しなくてもよい。
【0024】
肥料スイッチ53は、肥料ホッパー21から排出する肥料の単位面積あたりの排出量をあらかじめ設定しておくスイッチである。設定された情報は、表示部60の肥料設定量表示61に表示される。図5の例では単位はKg/10aである。
【0025】
種子スイッチ54は、種子ホッパー31から排出する種子の単位面積あたりの排出量をあらかじめ設定しておくスイッチである。設定された情報は、表示部60の種子設定量表示62に表示される。図5の例では単位はKg/10aである。
【0026】
肥料残量警告灯67は、例えば、肥料ホッパー21にセンサを設けておき、量が少なくなったときに消灯や点灯、点滅するなどして知らせるものである。
【0027】
肥料モータ回転確認灯68や種子モータ回転確認灯69は、肥料モータ22や種子モータ32からのそれぞれの回転を検出する回転センサ80が、回転を検知しなくたった場合、消灯や点灯、点滅するなどして知らせるものである。これにより作業者は、モータが実際に回転しているか否かを知ることができる。
【0028】
肥料モータスイッチ55や種子モータスイッチ56は、それぞれ個別のモータのスイッチである。これにより、内容物を排出したくない箇所のモータをOFFにしておくことができる。モータスイッチ確認灯57、58により、スイッチの入切を確認できるようになっている。
【0029】
制御部70では、設定された肥料設定量や種子設定量と、入力された作業速度から、モータの回転数を計算する。そして、回転センサ80の情報から現在のモータの回転数を計算し、現在のモータの回転数と計算されたモータの回転数との差から、PWM(Pulse Width Modulation)による必要なデューティー比を算出し、モータ32(22)へ出力する。そして、モータ32(22)は、このデューティー比に基づく制御により回転する。デューティー比は高ければそれだけモータの出力は増加し回転数は上がる。
【0030】
このときの制御部70から出力される、肥料モータ22へのデューティー比は肥料モータデューティー比表示64に、種子モータ32へのデューティー比は種子モータデューティー比表示65にそれ表示する。表示は、段階的に行い、図5の例では、0〜9の数字が使用されている。例えば、デューティー比が0%は「0」、1%〜11%は「1」、12%〜23%は「2」、24%〜35%は「3」、36%〜47%は「4」、48%〜59%は「5」、60%〜71%は「6」、72%〜83%は「7」、84%〜95%は「8」、96%〜100%は「9」、のように表示する。このように段階的に表示して、制御により変化するデューティー比に不感帯を設けることによって頻繁に表示が変化することを防止でき、作業者は表示を見やすくなる。さらに表示の変更間隔を一定間隔とすれば、(例えば、0.5秒ごと)とすれば、リアルタイムで表示させる時よりも表示変化が少なく作業者はさらにこの表示を見やすくなる。
【0031】
これらのデューティー比の段階的な表示は数字でなくても、グラフ表示や、発行ダイオード(LED)を複数並べ点灯させる表示等によっても実現可能である。
【0032】
このように、デューティー比を段階的に表示すことで、作業者は、モータにあとどれくらい余裕があるかということが分かる。上記の場合、最大値が「9」であるので、例えば表示が「6」であれば、あと3だけ余裕がある。このため、余裕をみて、作業者は、トラクタの速度を上げて作業を行うことができる。この場合、入力されたトラクタの作業速度が上がると、単位面積あたりの排出量が一定であると、単位時間あたりの排出量を増やす必要がある。このため、制御部70は、デューティー比を増やしモータ32(22)の回転を上げる。このようにすることで、より効率よく作業することが可能となる。さらに、操作表示部50にブザーを設置しておき、デューティー比が100%に近くなると警告するようにすれば、作業者は、モータの出力が上限であることを知ることができる。
【0033】
また、逆に、デューティー比の表示が「8」や「9」である場合、作業者はモータ32(22)の出力に余裕がないことが分かる。このとき、作業者はモータ32(22)の出力に余裕をみた着実な作業をしたい場合、トラクタの作業速度を少し下げる。それに伴い、入力されたトラクタの作業速度が下がると、モータ32(22)の回転数が下がり、例えば、表示が「6」や「7」程度の余裕のある出力状態での作業とすることが可能となる。
【0034】
上記の実施形態は、PWMのデューティー比によるモータの制御を示したが、これ以外に、電流値の違いによる制御も可能である。この場合、制御部70でモータへ出力される電流値を制御し、モータ32(22)は電流値によってその出力を変化させる。そして、デューティー比表示64、65の代わりに、電流値を段階的に表示させるようにする。このときの表示は、過電流値近傍の値までの範囲で設定される。また、過電流に近くなるとブザー等で警告するようにしてモータの出力が上限であることを知らせることもできる。
【0035】
上記の実施形態は、トラクタに装着する農作業機として、施肥播種機について説明したが、これ以外に、モータの回転によってホッパー(容器)内の内容物を排出する機構を有する農作業機に適用するこが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 ロータリー
13 耕耘部
21 肥料ホッパー
22 肥料モータ
24 肥料排出部
31 種子ホッパー
32 種子モータ
34 種子排出部
35、36 操出ローラ
50 操作表示部
70 制御部
80 回転センサ
52 速度スイッチ
53 肥料スイッチ
54 種子スイッチ
60 表示部
61 肥料設定量表示
62 種子設定量表示
63 入力速度表示
64 肥料モータデューティー比表示
65 種子モータデューティー比表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して容器内の内容物をモータの回転により排出して農作業を行う農作業機であって、
前記モータの出力を制御する制御部と、前記モータの出力状態を段階的に表示する表示部とを有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
前記制御部はPWM(Pulse Width Modulation)によって前記モータの制御を行い、前記表示部はPWMによるデューティー比の出力を段階的に表示することを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の農作業機において、
モータによる回転を検出する回転センサを有し、前記制御部はあらかじめ設定された内容物の排出量と入力されたトラクタの速度からモータによる回転速度を計算し、前記回転センサの情報から前記モータによる回転が計算された回転速度となるように前記デューティー比を算出し出力することを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機であって、
前記内容物は肥料又は種子であることを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83247(P2011−83247A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239624(P2009−239624)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】