説明

農業用生分解性積層フィルム

【課題】 引裂き強度及び柔軟性に優れる農業用生分解性積層フィルムの提供。
【解決手段】 下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(A)、下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(B)並びに下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(C)をこの順で有する積層フィルムであって、該積層フィルム中に無機充填剤を1〜49重量%含有することを特徴とする農業用生分解性積層フィルム、
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a):分子構成単位としてアジピン酸単位、1,4−ブタンジオール単位及びテレフタル酸単位を有する脂肪族芳香族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(b):分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位を有する脂肪族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(c):分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位及びアジピン酸単位を有する脂肪族ポリエステル

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチングフィルム(マルチフィルムともいう)・トンネルフィルム・ハウスフィルム・日覆い・防草シート・畦シート・発芽シート・植生マット等の農業用資材に使用される生分解性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄後速やかに分解され、自然環境下で蓄積されることのないフィルム製品が望まれており、このようなフィルム製品用として各種生分解性樹脂が市販されている。
例えば、特許文献1では、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂と脂肪族ポリエステル系樹脂を複合したフィルムが提案されている。しかしながら、このような複合材料では成形時の不安定性やフィルムの厚みムラ等よるフィルムの外観悪化の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−1704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂と脂肪族ポリエステル系樹脂とを複合化した場合の成形時の不安定性やフィルム等の成形体の厚みムラを防止して、自然環境下において分解性を有し、成形安定性並びに成形体としたときの引裂き強度及び柔軟性に優れ、農業用マルチフィルムをはじめとする様々な用途に好適に用いられる生分解性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、
(1)下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(A)、下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(B)並びに下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(C)をこの順で有する積層フィルムであって、該積層フィルム中に無機充填剤を1〜49重量%含有することを特徴とする農業用生分解性積層フィルム、
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a):分子構成単位としてアジピン酸単位、1,4−ブタンジオール単位及びテレフタル酸単位を有する脂肪族芳香族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(b)分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位を有する脂肪族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(c):分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位及びアジピン酸単位を有する脂肪族ポリエステル
(2)上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または脂肪族ポリエステル系樹脂(c)が分子構成単位として乳酸単位を有する上記(1)に記載の農業用生分解性積層フィルム、
(3)上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)のJIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が400%未満である上記(11)または(2)に記載の農業用生分解性積層フィルム、
(4)上記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)のJIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が400%以上である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルム、
(5)上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)がポリブチレンサクシネート系樹脂である上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルム、
(6)上記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)がポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂である上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルムに存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、引裂き強度及び柔軟性に優れ、農業用マルチフィルム用途等に好適に用いられる生分解性積層フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の農業用生分解性積層フィルムは、下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(A)、下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(B)並びに下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(C)をこの順で有することを特徴とする生分解性積層フィルムである。
樹脂層(A)及び(C)において、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)が35重量%未満で、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかが(脂肪族ポリエステル系樹脂(b)と(c)とも含有する場合は合計量が)60重量%を超えると引裂き強度が劣る。また、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)が90重量%を超え、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかが(脂肪族ポリエステル系樹脂(b)と(c)とも含有する場合は合計量が)5重量%より少ないとスリップ性が悪くなる。
樹脂層(B)において脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の含有量が50重量%未満であると積層フィルムの引裂き強度が劣る。脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の含有量は50〜100重量%、特に60〜100重量%であるのがより好ましい。なお、樹脂層(B)は脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含有していてもよい。
【0008】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(b)、(c)>
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。ここで、「主成分」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、脂肪族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることをいう。
脂肪族ポリエステル系樹脂を具体的に示すと、例えば、下記式(1)で表される鎖状脂肪族および/または脂環式ジオ−ル単位、並びに、下記式(2)で表される鎖状脂肪族および/または脂環式ジカルボン酸単位からなるものである。
【0009】
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基および/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のRが含まれていてもよい。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基および/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のRが含まれていてもよい。]
【0010】
なお、上記式(1)、式(2)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基および/または2価の脂環式炭化水素基」の「および」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂の1分子中に2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下、「鎖状脂肪族および/または脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂(b)と(c)は各々、上記式(1)のジオ−ル単位として、1,4ブタンジオール単位を必須成分として含むものである。1,4ブタンジオール単位は脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、30〜60モル%、特に40〜50モル%であるのが好ましい。1,4−ブタンジオール単位以外のジオール単位としては特に限定されないが、炭素数3〜10個の脂肪族ジオール単位が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール単位が特に好ましい。具体的には、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。前記脂肪族ジオール単位を与えるジオール成分は2種類以上を用いることもできる。
【0011】
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)と(c)は各々、上記式(2)のジカルボン酸単位として、コハク酸単位必須の成分として含むものである。コハク酸単位は、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、下限が通常30〜60モル%であるのが好ましく、特に35〜50モル%であるのが好ましい。
更に脂肪族ポリエステル系樹脂(c)は、ジカルボン酸単位として、アジピン酸単位を必須成分として含むものである。アジピン酸単位は、脂肪族ポリエステル系樹脂(c)を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0.5〜20モル%であるのが好ましく、更に1〜15モル%であるのが好ましい。なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)はアジピン酸単位を実質的に含まないものである。
コハク酸単位、アジピン酸単位以外のジカルボン酸単位としては特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸単位が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸単位が特に好ましい。具体的には、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
更に、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、またはこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸またはグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0012】
上記脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0〜30モル%であるのが好ましく、更に0.01〜20モル%であるのが好ましく、特に0.01〜10モル%であるのが好ましい。
【0013】
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)は、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸またはその酸無水物」または「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」を共重合させたものであると、得られる脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)の溶融粘度を高めることができるため好ましい。
【0014】
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。また、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0015】
3官能の脂肪族多価カルボン酸またはその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。また、4官能の多価カルボン酸またはその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸またはその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0016】
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、リンゴ酸等が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0017】
このような3官能以上の化合物の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を構成する単量体全体を基準(100モル%)として、0〜5モル%であるのが好ましく、特に0.01〜2.5モル%であるのが好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(b)及び(c)は、分子中に芳香族環を実質的に有さない。
【0018】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができる。中でも、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
【0019】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート錯体等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムまたはカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物またはゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒が重合時に溶融または溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、触媒は、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物であること好ましい。
【0021】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
【0022】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであり、常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限は通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
【0023】
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.001×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0024】
脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一または異なる反応装置を用いて、エステル化および/またはエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した撹拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
【0025】
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)には、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0026】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、0.1g/10〜100g/10分が好ましく、更に0.1〜50g/10分が好ましく、特に0.1〜30g/10分が好ましい。
【0027】
ポリエステル系樹脂(b)は、JIS K6781に準拠した引張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が、400%未満であるのが好ましく、更に200%未満であるのが好ましく、特に160%未満であるのが好ましい。
ポリエステル系樹脂(b)の融点は100℃以上であるのが好ましい。また130℃以下であるのが好ましい。
ポリエステル系樹脂(c)は、JIS K6781に準拠した引張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が、400%以上であるのが好ましく、更に600%以上であるのが好ましく、特に700%以上であるのが好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂の(c)の破断伸び率が上記の値であると、積層フィルムの機械物性、特に引裂き強度を向上させることができるので好ましい。
ポリエステル系樹脂(C)の融点は80℃以上であるのが好ましい。また100℃以下であるのが好ましい。
【0028】
脂肪族ポリエステル系樹脂(b)としては、例えば三菱化学(株)社製GSPla(登録商標)AZ91TNのようなポリブチレンサクシネート系ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(c)としては、例えば三菱化学(株)社製GSPla(登録商標)AD92WNのようなポリブチレンサクシネートアジペート系ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0029】
<脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)>
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)は、脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族および/または脂環式ジオール単位とを含むものであり、芳香族ジカルボン酸単位の含有量が、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、5〜60モルであるものである。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、および、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものである。
【0030】
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基および/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基および/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0031】
式(3)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2〜10のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0032】
式(4)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、コハク酸またはアジピン酸が好ましい。
【0033】
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸が挙げられる。なお、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分および芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0034】
本発明における脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、またはこれらの混合物等が挙げられる。さらに、これらの低級アルキルエステル又は分子内エステルであってもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体またはラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体または水溶液のいずれであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸またはグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0035】
この脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を構成する全構成成分中、0〜30モル%であるのが好ましく、更に0.01〜20モル%であるのが好ましい。脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)は、上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または(c)と同様の製法により製造することができる。
【0036】
本発明に用いられる脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した場合、0.1〜100g/10分であるのが好ましく、更に0.1〜50g/10分であるのが好ましく、特に0.1〜30g/10分であるのが好ましい。
【0037】
<無機充填剤>
本発明の生分解性積層フィルムは、無機充填剤を配合させる。かかる無機充填剤としては、シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム及び珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム並びに硫酸バリウム等が挙げられ、中でもタルクや炭酸カルシウムが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
無機充填剤の配合量は、生分解性積層フィルム中1〜49重量%であるのが好ましい。配合量が1重量%未満の場合、無機充填剤の配合効果が少なく、また49重量%を超えて配合した場合にはフィルムの成形性、スリップ性、物性等が低下する場合がある。
特に、樹脂層(A)及び(C)に無機充填剤、好ましくはタルクを各層当たり0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%含有するのが、積層フィルムの滑り性が改善されるので好ましい。
【0039】
<各種添加剤>
本発明の生分解性積層フィルムには、さらに、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散剤や各種界面活性剤、加水分解防止剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤は配合した方が好ましい。
【0040】
スリップ剤としては、炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられ、エルカ酸アマイド、エルカ酸ビスアマイドが好ましい。
【0041】
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、または飽和脂肪酸ビスアマイド(例えばステアリン酸アマイド、ステアリン酸ビスアマイド)、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン等通常農業用マルチフィルムに使用される着色剤が使用できる。着色剤は各樹脂層に配合してもよく、特定の層、例えば樹脂層(B)に配合してもよい。
【0042】
耐光剤としては具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2−ビス(3−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物及びそのN−メチル化合物、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ[{6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。
【0043】
これらの中で、ポリ[{6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]が特に好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル6−(tert-ブチル)フェノール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
【0045】
酸化防止剤としては、BHT、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド、n−オクタデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物などが例示できる。 この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0046】
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤は、アデカスタブAO−50(ADEKA社製)、イルガノックス3790、イルガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスHP2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP−30(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミライザーBBM−S(住友化学社製)が用いられる。最も好ましい酸化防止剤はイルガノックス3790(1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン)、イルガノックス1330(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール)が用いられる。
【0047】
安定剤としては脂肪酸金属塩が挙げられる。脂肪酸金属塩の脂肪酸成分としてはカルボキシル基を有する通常炭素数が6〜30の鎖状のカルボン酸であり、直鎖状でも分岐状でもよく、また飽和結合のみでも不飽和結合を有していてもよい。脂肪酸の具体例としてはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エルシン酸、エライジン酸、トランス11エイコセン酸、トランス13ドコセン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エルカ酸等が挙げられる。
一方、金属原子としては、周期表の1A、2A、2B及び3B族の原子が好ましい。好ましい例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛などが挙げられる。
脂肪族金属塩の具体例としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種でもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム及びラウリン酸アルミニウムが好ましい。
防曇剤は積層フィルム全体に配合されていてもよいが、内層(農業用フィルムとして展張した際に内側になる層)にのみ配合されていてもよく、また内層表面に防曇剤を含有する塗膜を設けてもよい。使用する防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。
分散剤としては、モンタンワックス等のエステル系ワックスが挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、積層フィルム中、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.02〜5重量%である。
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で生分解性樹脂および天然物、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末またはこれらの混合物を配合することができる。
【0048】
<積層フィルムの成形方法>
本発明の生分解性積層フィルムの厚さは用途によって異なるが、10μm〜200μm程度が好ましく、樹脂層(A)、(B)及び(C)の厚さの比は特に制限されないが、1/8/1〜3/4/3程度が好ましい。
本発明の生分解性積層フィルムの各層を構成する樹脂組成物の混練方法は、樹脂組成物の混練方法として一般的な方法が使用できる。具体的には、ペレットや粉体、固体の細片等をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸や2軸の押出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの公知の溶融混練機に供給して溶融混練することができる。各層を構成する樹脂組成物から積層フィルムを成形加工する方法は、複数の押出機を用いて多層Tダイにて積層したフィルムをキャストロールで冷却固化する共押出成形や、多層インフレーション成形機により成形する方法が適している。
本発明の積層フィルムは、マルチングフィルム(マルチフィルムともいう)・トンネルフィルム・ハウスフィルム・日覆い・防草シート・畦シート・発芽シート・植生マット等の農業用資材に好適に使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、評価は次の方法により行った。
(1)引裂き強度
23℃条件において、東洋精機社製エルメンドルフ引裂き試験機を用い、積層フィルムを8枚重ねた試料のMD方向(機械の成形方向)の引裂き強度を測定し、以下の基準で評価した。
◎:引裂き強度が0.8N以上
○:引裂き強度が0.5以上、0.8N未満
△:引裂き強度が0.5N未満
(2)スリップ性
積層フィルムを製造する際、インフレーション成形機から共押出された積層フィルムの重なった2枚のフィルムを親指と人差し指で剥がす際に要する抵抗感から、次の基準で評価した。
○:指先の力で容易に剥がすことが出来る。
△:指先の力で剥がすことが出来るが、重い。
×: 指先の力で剥がすことが出来ない。
(実施例1〜7、比較例1〜6)
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)、脂肪族ポリエステル系樹脂(c)、無機充填剤を表−1に示した組成(重量%)で配合し、二軸の押出し機で溶融混練してコンパウンド化してペレット化し、160℃で三層インフレーション成形機にて成形を行い、樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)の順に積層した20μm厚味の3層積層フィルムを得た。但し、実施例1、7、比較例1、2の成形は、150℃で実施した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の農業用生分解性積層フィルムは、引裂き強度等の物性に優れるため破損し難く、マルチングフィルム(マルチフィルムともいう)・トンネルフィルム・ハウスフィルム・日覆い・防草シート・畦シート・発芽シート・植生マット等の農業用資材に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(A)、下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)を50〜100重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(B)並びに下記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a)を35〜90重量%及び下記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または下記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)の少なくともいずれかを5〜60重量%含有する樹脂組成物からなる樹脂層(C)をこの順で有する積層フィルムであって、該積層フィルム中に無機充填剤を1〜49重量%含有することを特徴とする農業用生分解性積層フィルム。
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(a):分子構成単位としてアジピン酸単位、1,4−ブタンジオール単位及びテレフタル酸単位を有する脂肪族芳香族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(b):分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位を有する脂肪族ポリエステル
脂肪族ポリエステル系樹脂(c):分子構成単位としてコハク酸単位及び1,4−ブタンジオール単位及びアジピン酸単位を有する脂肪族ポリエステル
【請求項2】
上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)または脂肪族ポリエステル系樹脂(c)が分子構成単位として乳酸単位を有する請求項1に記載の農業用生分解性積層フィルム。
【請求項3】
上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)のJIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が400%未満である請求項1または2に記載の農業用生分解性積層フィルム。
【請求項4】
上記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)のJIS K6781に準拠した引っ張り試験により測定した樹脂流れに垂直方向(TD)の破断伸び率が400%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルム。
【請求項5】
上記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)がポリブチレンサクシネート系樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルム。
【請求項6】
上記脂肪族ポリエステル系樹脂(c)がポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の農業用生分解性積層フィルム。

【公開番号】特開2010−253902(P2010−253902A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109988(P2009−109988)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(504137956)MKVドリーム株式会社 (59)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(591276651)丸井加工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】