説明

農畜産物の分配整列装置

【課題】 供給コンベアからの農畜産物の搬送量が第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに超え、第1コンベア上の下流側で農畜産物が過剰に集積した場合でも、第2コンベア上の農畜産物を第3コンベアへ押し出すことを抑制する農畜産物の分配整列装置を提供する。
【解決手段】 第1コンベア、第2コンベア及び第3コンベアの単位時間当たりの搬送能力をQ1、Q2、Q3とし、処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力をQ4とすると、搬送能力Q1及び搬送能力Q3は搬送能力Q2よりも高く、搬送能力Q2は搬送処理能力Q4と等しく、第2コンベアでは、コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力が、第1コンベアのコンベア本体が農畜産物の動きを制限する力よりも高く設定された農畜産物の分配整列装置において、集積状態検出手段にて検出された第1コンベア上の下流側における農畜産物の集積状態に基づいて供給コンベアの駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムに供給される卵、果実、野菜等を所定の列に区分けをする農畜産物卵の分配整列装置の改良発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏舎で産卵された農畜産物の一種である卵は、並設された原卵コンベアにより搬出され、供給コンベアに移し替えられる。その後、卵は搬送途中において、搬送方向と直交する幅方向に例えば、6列または12列の所定列に区分けをされる。
【0003】
区分けをされた卵は、その状態で洗浄処理、乾燥処理、選別処理等を施す処理装置に送り込まれる。その処理装置の処理能力を最大限に発揮させるためには、供給コンベアによって搬送される卵を円滑に、かつ、効率的に区分けをする必要がある。
【0004】
ところで、鶏舎において産卵される卵は、鶏の個体差や季節等の諸条件により一定ではなく、搬送される卵の数にばらつきが生じる。また、卵の外形形状の非対称性により、供給コンベアではランダムに搬送されることになる。
【0005】
そのため、卵を所定の列に区分けする際に複数の列に対して均一に区分けすることができなかったり、あるいは、卵が渋滞をしてしまい円滑に区分けをすることができなくなってしまったりする事態がしばしば発生することがある。
【0006】
前述の卵が渋滞するとは、卵を所定列に区分けする際に、特定の列で卵が集中してロックしたり、卵同士が接触することによって卵が盛り上がったりする状態をいう。このような現象が発生すると、卵が均等に区分けされずに処理装置へ供給されるため、処理装置の処理効率の低下を招くという問題があった。また、搬送方向の上流側に位置する卵が下流側に位置する卵に圧力を及ぼして、卵が損傷したり破損したりするという問題があった。
【0007】
このような問題を解消するため、卵をランダムに供給する供給コンベアと、下流側の処理装置へ卵を送り出す送出コンベアとの間に配置され、ランダム供給される卵を所定列に区分けする卵の分配整列装置であって、搬送経路の上流側から順に第3コンベア、第2コンベアおよび第1コンベアを配置し、前記第3コンベアに卵の密集度を検出するセンサを備え、そのセンサの検出信号に基づいて、供給コンベアの駆動速度を制御する卵の分配整列装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−206016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の卵の分配整列装置では、次のような問題があった。すなわち、コンベアにおいて卵が密集していることをセンサが検出した時点では、既にそのコンベアにおいて卵が渋滞しており、卵の渋滞を緩和させることは困難であった。
【0010】
そこで、本出願人は、前記卵の分配整列装置の問題点を根本的に解決するため、PCT/JP2006/312599(未公開)にて、第1コンベア、第2コンベアおよび第3コンベアを備えて構成され、第1コンベア、第2コンベアおよび第3コンベアの単位時間当たりの搬送能力をそれぞれQ1、Q2、Q3とし、処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力をQ4とすると、搬送能力Q1及び搬送能力Q3は搬送能力Q2よりも高く、搬送能力Q2は搬送処理能力Q4と等しく、第2コンベアでは、コンベア本体が卵の動きを制限する力が、第1コンベアにおけるコンベア本体が農畜産物の動きを制限する力よりも高く設定された農畜産物の分配整列装置を出願した。
【0011】
本出願人が出願した農畜産物の分配整列装置は、前述の構成により第2コンベアの搬送能力Q2を超える卵が第1コンベアに送り込まれるようなことがあった場合、第1コンベアがバッファとなって第2コンベアの搬送能力Q2を超える卵を第3コンベアに送り込むのを阻止することができる。その結果、第2コンベアよりも高い搬送能力Q3を有する第3コンベアでは、幅方向に並ぶ所定の列に区分けをする際に、大量の卵が搬送されることに伴って生じる卵の渋滞現象やロック現象、あるいは、卵の盛り上がり現象が確実に抑制され、卵の損傷や破損を大幅に低減することができる。そして、処理装置では、搬送処理能力Q4を超える卵が送り込まれるようなことはなく、所定の処理を効率良く円滑に卵に施すことができるという効果を奏する。
【0012】
しかしながら、本出願人が出願した農畜産物の分配整列装置においては、処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力に対応した量の卵を送り込むという課題の面で改善の余地が残されていた。すなわち、供給コンベアからの卵の搬送量が、第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに超え、第1コンベアの下流側近傍で卵を一時的に蓄えきれなくなった場合、該第1コンベアの下流側近傍に溜まって停滞する卵が下流側に位置する卵に圧力を及ぼして、第2コンベア上の卵を第3コンベアへ押し出してしまうことがある。その結果、処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力Q4以上の卵が送り込まれてしまうという問題があった。
【0013】
また、供給コンベアからの卵の搬送量が、第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに下回った場合、空きが生じた状態のまま卵を処理装置へ送り込まざるを得なかった。
【0014】
したがって、本発明は、前記問題点を解決することを課題としてなされたものであり、その目的とするところは、供給コンベアからの農畜産物の搬送量が、第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに超え、第1コンベア上の下流側で農畜産物が過剰に集積した場合でも、第2コンベア上の農畜産物を第3コンベアへ押し出してしまうことを抑制することができる農畜産物の分配整列装置を提供することにある。また、供給コンベアからの農畜産物の搬送量が、第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに下回った場合は、空きを生じさせることなく速やかに農畜産物を下流側の処理装置に送り込むことができる農畜産物の分配整列装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の農畜産物の分配整列装置における発明では、供給コンベアによりランダムに供給される農畜産物を搬送する第1コンベアと、前記第1コンベアの下流側に配置され、前記第1コンベアによって搬送された農畜産物第2コンベアと、前記第2コンベアの下流側に配置され、前記第2コンベアによって搬送された農畜産物を搬送方向に直交する幅方向に並ぶ所定の列に区分けをしながら搬送し、農畜産物に対して所定の処理を施す処理装置に送り込む第3コンベアとを備え、前記第1コンベア、前記第2コンベアおよび前記第3コンベアの単位時間当たりの搬送能力をそれぞれQ1、Q2、Q3とし、前記処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力をQ4とすると、前記搬送能力Q1および前記搬送能力Q3のそれぞれは、前記搬送能力Q2よりも高く、前記搬送能力Q2は前記搬送処理能力Q4と等しく、第2コンベアでは、第2コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力が、第1コンベアにおける第1コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力よりも高く設定された農畜産物の分配整列装置において、前記第1コンベアは、該第1コンベア上の下流側における農畜産物の集積状態を検出する集積状態検出手段を備え、さらに、前記集積状態検出手段により検出された検出信号に基づいて供給コンベアの駆動を制御する制御手段を備えたことを特徴としたものである。
【0016】
請求項2に記載の農畜産物の分配整列装置における発明では、請求項1に記載の発明において、前記集積状態検出手段は、第1コンベア上の下流側における農畜産物の過剰な集積状態を検出し、前記制御手段は、前記第1コンベア上の下流側における農畜産物の過剰な集積状態を検出した集積状態検出手段からの検出信号に基づいて供給コンベアの駆動速度を減速、あるいは、駆動を停止するよう制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる農畜産物の分配整列装置は、第1コンベアの搬送能力Q1および第3コンベアの搬送能力Q3のそれぞれは第2コンベアの搬送能力Q2よりも高く、第2コンベアの搬送能力Q2は処理装置の搬送処理能力Q4と等しく設定され、第2コンベアの搬送能力Q2が農畜産物の分配整列装置の搬送能力を律速する構成となっている。また、第2コンベアでは、第2コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力が、第1コンベアにおける第1コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力よりも高く設定されている構成となっている。さらに、集積状態検出手段により検出された第1コンベア上の下流側における農畜産物の集積状態に基づいて、供給コンベアの駆動を制御する構成となっている。
【0018】
したがって、供給コンベアからの農畜産物の搬送量が、第2コンベアの単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに超え、第1コンベア上の下流側で農畜産物を一時的に蓄えきれなくなった場合、供給コンベアの駆動を減速あるいは停止させるよう制御することにより、第1コンベア上の下流側に集積する農畜産物が第2コンベア上の農畜産物に圧力を及ぼす作用を未然に防止できるので、第2コンベア上の農畜産物を第3コンベアへ押し出しまうという問題を解消できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、本発明にかかる農畜産物の分配整列装置の実施形態として、卵の分配整列装置Tについて添付図面に従って説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる卵の分配整列装置Tの平面図、図2は、図1に示す卵の分配整列装置Tの概略側面図であり、図3は、第2コンベア2による卵Eの搬送状態を説明する部分側面図である。図1および図2に示すように、分配整列装置Tは、第1コンベア1、第2コンベア2および第3コンベア3から構成されている。
【0021】
鶏舎(図示せず)から供給コンベア10によって供給される卵Eは、第1コンベア1から第2コンベア2を経て第3コンベア3へ送られた後、卵Eに洗浄や選別等の所定の処理を施す処理装置20へ送り込まれる。また、供給コンベア並びに第1コンベア1〜第3コンベア3の駆動を含む卵の分配整列装置Tの一連の動作は、制御手段4によって制御される。
【0022】
第1コンベア1は、図1に示すように、供給コンベア10により供給される卵E(図示せず)を第2コンベア2へ向けて搬送するコンベア本体としてメッシュベルト1aが備えられている。このメッシュベルト1aとしては、卵Eとの摩擦が小さくなるように例えば、10数mm×数mm程度の大きさの開口部が約40%程度の開口率をもって形成されたプラスチック樹脂製のメッシュベルトが好ましい。なお、開口率とは、メッシュベルト1aの総面積に対する開口部の面積の割合をいう。
【0023】
また、図1に示すように、前記メッシュベルト1aの上方の所定位置に、メッシュベルト1aによって搬送される卵Eを搬送方向Xとほぼ直交する幅方向に振り分ける振り分け部材1bを設けることが好ましい。
【0024】
前記第1コンベア1において、卵Eが搬送幅方向に隙間なく詰まった状態になると、搬送幅方向に広がろうとする卵Eの力が該第1コンベア1の両側壁に加わり、卵Eが損傷してしまったり破損してしまったりする可能性がある。このような事態を防止するため、第1コンベア1の両側壁を90度以上、例えば、125度〜135度に形成することが好ましい。より好ましくは135度である。
【0025】
このようにすれば、第1コンベア1において搬送幅方向に広がろうとする卵Eの力を斜め上方に逃がすことができる。その結果、卵Eの損傷や破損を防止することができるとともに、後述する第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3へ押し出してしまうという現象を緩和することができる。
【0026】
第2コンベア2は、図1に示すように、第1コンベア1により搬送された卵Eを第3コンベア3へ向けて搬送するコンベア本体としてバーコンベア2aを備えている。バーコンベア2aは、幅方向に延在する複数のバー2bからなり、それぞれのバー2bは、搬送方向に所定間隔をもって取り付けられている。図3に示すように、このバーコンベア2aでは、卵Eが前後に位置する2本のバー2bの間に載置された状態で搬送される。
【0027】
卵Eとの摩擦が小さいメッシュベルト1aでは、メッシュベルト1a上に載置された卵Eはメッシュベルト1aに対して比較的容易に動きやすい。これに対して、バーコンベア2aでは、2本のバー2bの間に卵Eが載置されることでメッシュベルト1a上の場合と比べて卵Eの動きが制限される。
【0028】
すなわち、第2コンベア2におけるバーコンベア2aが卵Eの動きを制限する力は、第1コンベア1におけるメッシュベルト1aが卵Eの動きを制限する力よりも強い。図3に示すように、卵Eは、搬送幅方向に延在する複数のバー2bにより搬送の前後方向に支持されるため、卵Eはバーコンベア2aに対して搬送方向の動きが特に制限される。
【0029】
第3コンベア3は、図1に示すように、第2コンベア2により搬送された卵Eを処理装置20に向けて搬送するメッシュベルト3aを備えている。メッシュベルト3aの開口率および材質については第1コンベア1のメッシュベルト1aとほぼ同じであることが好ましい。
【0030】
また、第3コンベア3には、搬送される卵Eを幅方向に、例えば、12に区分けをしてガイドする複数のガイド部材3bが設けられている。複数のガイド部材3bのそれぞれは、搬送方向に延在し、幅方向に卵E1個が横向けに入る程度の間隔を隔てて設けられている。ガイド部材3bにより区分けをされて卵Eが搬送される1つの通路を列と称すると、第3コンベア3では、卵Eはガイド部材3bにより12列に区分けされていることになる。このように、区分けをされて処理装置20に送り込まれた卵Eは、処理装置20により例えば、洗浄、乾燥および選別等の所定の処理が施される。
【0031】
この卵の分配整列装置Tでは、前記第1コンベア1、第2コンベア2および第3コンベア3の単位時間当たりの卵Eの搬送能力をそれぞれQ1、Q2、Q3とし、処理装置20の単位時間当たりの搬送処理能力をQ4とすると、搬送能力Q1および搬送能力Q3は、搬送能力Q2よりも高く設定されている。そして、搬送能力Q2は搬送処理能力Q4と等しく設定され、卵の分配整列装置Tの搬送能力を律速する。
【0032】
前述の構成により、卵の分配整列装置Tは、第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超える卵Eが上流側から搬送されてきても、第2コンベア2によって搬送しきれない卵Eは、第1コンベア1上の下流側に集積する機能、すなわち、第1コンベア1が第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超えて搬送される卵Eを一時的に蓄えるバッファ機能を備えている。
【0033】
なお、搬送能力は、所定のサイズの卵を理想的に並べた状態で単位時間当たりに搬送できる量を見積もったものである。卵の搬送においては例えば、サイズの異なる卵も当然に含まれているため、実際の搬送能力は見積もられた搬送能力の値に対してある程度のばらつきがある。したがって、本明細書で説明している搬送能力Q2が搬送処理能力Q4と等しいという条件は、数学的に等しいということを意図するものではなく、このような数値のばらつきも当然に含まれることを予定する。
【0034】
図1および図2に示すように、この卵の分配整列装置Tには、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの集積状態を検出する集積状態検出手段5が備えられている。前記集積状態検出手段5は、投光器5aと、受光器5bと、受光器5bと電気的に接続され、投光器5aから出射された光が遮断される時間を検出するタイマ5cとから構成されている。
【0035】
具体的に説明すると、図1に示すように、前記集積状態検出手段5の投光器5aおよび受光器5bは、第1コンベア1の排出端近傍の所定位置にメッシュベルト1aを挟んで対向配置されている。
【0036】
これにより、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eが極端に増加して、投受光器5a、5bの位置まで集積すると、投光器5aから出射される光が卵Eで遮断されて受光器5bに到達しなくなる。そして、タイマ5cにより連続して遮光されている時間が検出され、検出された遮光時間に基づく電気信号が後述するコントローラ6へ出力される仕組みとなっている。
【0037】
さらに、図1および図2に示すように、卵の分配整列装置Tは、集積状態検出手段5にて検出された遮光時間に基づく電気信号に基づいて、供給コンベア10の駆動速度を制御するコントローラ6を備えている。
【0038】
詳述すると、コントローラ6は、前記集積状態検出手段5にて検出された前記遮光時間が、該コントローラ6に予め設定された設定時間t1(例えば、2秒以上3秒未満)である場合、制御手段4に電気信号を出力する。そして、該電気信号を受信した制御手段4が供給コンベア10の駆動手段M0に制御信号を出力して該駆動手段M0の駆動速度を低くするよう制御する。
【0039】
その結果、供給コンベア10の駆動速度が減速し、供給コンベア10から第1コンベア1へ搬送される卵Eの搬送量が抑えられることとなる。したがって、第1コンベア1上の下流側に集積している卵Eが徐々に次工程へ搬送されるため、第1コンベア1上の下流側に集積した卵Eの圧力により第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3へ押し出してしまうという現象を未然に防止することができる。
【0040】
また、コントローラ6は、前記集積状態検出手段5により検出された前記遮光時間が、該コントローラ6に予め設定された設定時間t2(例えば、3秒以上)である場合、制御手段4に電気信号を出力する。そして、該電気信号を受信した制御手段4が供給コンベア10の駆動手段M0に制御信号を出力して該駆動手段M0の駆動を停止するよう制御する。
【0041】
その結果、供給コンベア10の駆動が停止し、供給コンベア10から第1コンベア1へ卵Eが送り込まれなくなる。この場合、第1コンベア1上の下流側に集積している卵Eが速やかに次工程へ搬送されるため、第1コンベア1上の下流側に集積した卵Eの圧力により第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3へ押し出してしまうという現象を未然に防止することができる。
【0042】
なお、前記コントローラ6に設定されている設定時間t1、t2は適宜設定変更可能である。本実施の形態にかかる卵の分配整列装置Tは上述のように構成されている。
【0043】
つぎに、上述した卵の分配整列装置Tの動作について説明する。先ず、鶏舎において産卵される卵は鶏の個体差等により一定ではなく、搬送される卵の数にばらつきが生じる。そこで、本動作説明では、卵の分配整列装置Tに対して、搬送能力を律速する第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超える卵Eが搬送されてくる場合を想定して説明する。
【0044】
先ず、鶏舎において産卵された卵Eは、並設された原卵コンベアにより搬出され、供給コンベア10上に移し替えられる。
【0045】
供給コンベア10によって搬送されて第1コンベア1に送り込まれた卵Eは、図1に示すように、メッシュベルト1aの上方に設けられている振り分け部材1bにより、搬送方向Xと直交する幅方向に振り分けられる。第1コンベア1において幅方向に振り分けられた卵Eは、幅方向に隙間なく詰まった状態となり、その状態が維持されながら第2コンベア2に送り込まれる。
【0046】
第1コンベア1において幅方向に振り分けられた卵Eは、その状態で第2コンベア2に送り込まれる。図3に示すように、第2コンベア2では、卵Eが前後に位置する2本のバー2bの間に支持されてバーコンベア2aに対する卵Eの搬送方向の動きが制限された状態で卵Eが搬送されることになる。バーコンベア2aに対する卵Eの搬送方向の動き制限されることで、第2コンベア2では、一の卵Eがその前後に位置する他の卵Eを動かすような現象が抑制され、卵Eが幅方向に振り分けられた状態を維持することができる。
【0047】
特に、この場合には、第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超える卵Eが搬送されてくるため、第2コンベア2では、幅方向に隙間なく詰まった状態で、しかも、バーコンベア2aに対する卵Eの搬送方向の動きが制限された状態で卵Eが順次搬送される。また、第2コンベア2によって搬送しきれない卵Eは、第1コンベア1上の下流側に集積する。
【0048】
このとき、第1コンベア1のメッシュベルト1aは、卵Eとの摩擦力が比較的小さいプラスチック樹脂から形成されているので、第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超えて停滞しようとする卵Eの下をメッシュベルト1aが滑りながら駆動し、第2コンベア2によって搬送しきれない卵Eを下流側から上流側に向かって徐々に溜めることができる。すなわち、第1コンベア1が第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超えて搬送される卵Eを一時的に蓄えるバッファとしての機能を果たすことになる。
【0049】
このようにして、第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を超えて卵Eが搬送されてきても、第2コンベア2により、処理装置20の単位時間当たりの搬送処理能力Q4に対応した量の卵Eを第3コンベア3に送り込むことができる。第3コンベア3では、幅方向にほぼ隙間なく振り分けられた卵Eがメッシュベルト3aによって、ガイド部材3bで区切られた12の列にほぼ均一に送り込まれ、それぞれのガイド部材3bにガイドされながら搬送される。
【0050】
第3コンベア3によって区分けをされた卵Eは、処理装置20に搬送される。処理装置20の単位時間当たりの搬送処理能力Q4に対応した量の卵Eが送り込まれてきた処理装置20では、洗浄処理、乾燥処理、選別処理等の所定の処理が滞ることなく円滑に、かつ、効率良く施されることになる。
【0051】
ところで、卵1個当たりのメッシュベルト1aとの摩擦力は比較的小さくても、供給コンベア10からの卵Eの搬送量が、第2コンベア2の単位時間当たりの搬送能力Q2を遥かに超え、第1コンベア1上の下流側に集積している卵Eの数が極端に増加した場合、卵Eの下を滑りながら駆動するメッシュベルト1aの摩擦力は集積する卵E全体では大きな力となる。その結果、第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3に押し出してしまうことが想定される。
【0052】
このような場合、図4に示すように、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの群は第1コンベア1のほぼ中央部にまで及んでしまう。そうすると、集積状態検出手段5の投光器5aから出射された光が卵Eによって遮断されるとともに、その光の遮断時間に基づく電気信号がタイマ5cを介してコントローラ6へ出力される。
【0053】
コントローラ6は、集積状態検出手段5により検出された前記遮光時間が、該コントローラ6に予め設定された設定時間t1(例えば、2秒以上3秒未満)である場合、制御手段4に電気信号を出力する。そして、該電気信号を受信した制御手段4が供給コンベア10の駆動手段M0に制御信号を出力して該駆動手段M0の駆動速度を低くするよう制御する。
【0054】
その結果、供給コンベア10の駆動速度が減速し、供給コンベア10から第1コンベア1への卵Eの搬送量が抑えられることになる。したがって、第1コンベア1上の下流側に集積している卵Eが徐々に次工程へ搬送されるため、第1コンベア1上の下流側に集積した卵Eの圧力により第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3へ押し出してしまうという現象を未然に防止することができる。
【0055】
また、コントローラ6は、前記集積状態検出手段5により検出された前記遮光時間が、該コントローラ6に予め設定された設定時間t2(例えば、3秒以上)である場合、制御手段4に電気信号を出力する。そして、該電気信号を受信した制御手段4が供給コンベア10の駆動手段M0に制御信号を出力して該駆動手段M0の駆動を停止するよう制御する。
【0056】
その結果、供給コンベア10の駆動が停止し、供給コンベア10から第1コンベア1への卵Eが送り込まれなくなる。この場合、第1コンベア1上の下流側に集積している卵Eが速やかに次工程へ搬送されるため、第1コンベア1上の下流側に集積した卵Eの圧力により第2コンベア2上の卵Eを第3コンベア3へ押し出してしまうという現象を未然に防止することができる。これにより、卵Eを損傷させたり破損させたりすることなく、処理装置20の単位時間当たりの搬送処理能力Q4に対応した量の卵Eを処理装置20に送り込むことができる。
【0057】
本実施の形態では、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの集積状態を光学式センサで検知し、光学式センサからの光が遮断されている時間に基づいて供給コンベア10の駆動を制御する例で説明したが、これに限らず、次のように実施してもよい。
【0058】
例えば、モニタカメラ等の画像取得センサを第1コンベア1の上方位置に設け、取得された画像データに基づいて第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの集積状態を把握し、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの数が過剰な状態であると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を低くする、あるいは、駆動を停止するよう制御し、また、第1コンベア1上における卵Eの集積状態が極端に低下していると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を高くするよう制御してもよい。
【0059】
また、別の変形例として、第1コンベア1内に重量計を内蔵しておいて、計測された重量情報に基づいて第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの集積状態を把握し、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの数が過剰な状態であると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を低くする、あるいは、駆動を停止するよう制御し、また、第1コンベア1上における卵Eの集積状態が極端に低下していると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を高くするよう制御してもよい。
【0060】
他の変形例として、第1コンベア1の駆動手段M1の負荷トルク、すなわち、電流値を計測し、計測された電流値に基づいて第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの集積状態を把握し、第1コンベア1上の下流側に集積する卵Eの数が過剰な状態であると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を低くする、あるいは、駆動を停止するよう制御し、また、第1コンベア1上における卵Eの集積状態が極端に低下していると判定された場合は、供給コンベア10の駆動速度を高くするよう制御してもよい。
【0061】
さらに、第1コンベア1における卵Eの集積状態の検出を次のような方法で実施してもよい。
(a)第1コンベア1の両側壁を90度以上、例えば、135度に形成する。
(b) 第1コンベア1の排出端近傍のそれぞれの壁面に投光器および受光器が一体に形成された拡散反射型の光電センサを設置する。
(c)光電センサの設置については、投光器から出射される光の方向が、第1コンベア1の搬送方向Xとは反対の方向となるよう設置する。
(d)光電センサから例えば、180mm〜200mm前方の遮蔽物を安定して検出できるように感度を調節する。
(d)そして、第1コンベア1において、卵Eが搬送幅方向に隙間なく詰まった状態となって、搬送幅方向に広がろうとする卵Eが壁面に沿って斜め上方に押し出されたときに前記光電センサにてそれを検出し、この検出信号に基づいて供給コンベア10の駆動を制御する。
【0062】
前記(d)の場合、第1コンベア1における卵Eの集積状態を検出するタイミングについては、前記光電センサを第1コンベア1のメッシュベルト1a近傍に設置すれば、卵Eの集積状態を早く検出することができる。また、前記光電センサを第1コンベア1のメッシュベルト1aから離間させて設置すれば、卵Eの集積状態を遅めに検出することができる。前記光電センサの好ましい設置位置はメッシュベルト1aの側端部から約75mmの位置である。
【0063】
なお、本実施の形態では、分配整列装置により分配整列される対象物として卵を例に説明したが、この分配整列装置は卵の分配整列装置に限定するものではなく、例えば、球状の野菜や球状の果実等の農畜産物の分配整列にも適用可能であることはいうまでもない。
【0064】
今回、開示された実施の形態は単なる例示であってこれに制限されるものではない。本発明は、上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、養鶏産業のほか、農畜産物を扱う農畜産業にも有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる卵の分配整列装置Tの平面図である。
【図2】図1に示す卵の分配整列装置Tの概略側面図である。
【図3】第2コンベア2による卵Eの搬送状態を説明する部分側面図である。
【図4】図1に示す卵の分配整列装置Tによる卵Eの搬送動作を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 第1コンベア、2 第2コンベア、3 第3コンベア、4 制御手段、5 集積状態検出手段、6 コントローラ、10 供給コンベア、20 処理装置、M0〜M3 供給コンベアおよび第1コンベア〜第3コンベアの各駆動手段、E 卵


【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給コンベアによりランダムに供給される農畜産物を搬送する第1コンベアと、
前記第1コンベアの下流側に配置され、前記第1コンベアによって搬送された農畜産物を搬送する第2コンベアと、
前記第2コンベアの下流側に配置され、前記第2コンベアによって搬送された農畜産物を搬送方向に直交する幅方向に並ぶ所定の列に区分けをしながら搬送し、農畜産物に対して所定の処理を施す処理装置に送り込む第3コンベアとを備え、
前記第1コンベア、前記第2コンベアおよび前記第3コンベアの単位時間当たりの搬送能力をそれぞれQ1、Q2、Q3とし、前記処理装置の単位時間当たりの搬送処理能力をQ4とすると、
前記搬送能力Q1および前記搬送能力Q3のそれぞれは、前記搬送能力Q2よりも高く、
前記搬送能力Q2は前記搬送処理能力Q4と等しく、
第2コンベアでは、第2コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力が、第1コンベアにおける第1コンベア本体が農畜産物の動きを制限する力よりも高く設定された農畜産物を所定の列に区分けをする農畜産物の分配整列装置において、
前記第1コンベアは、該第1コンベア上の下流側における農畜産物の集積状態を検出する集積状態検出手段を備え、
さらに、前記集積状態検出手段により検出された検出信号に基づいて供給コンベアの駆動を制御する制御手段を備えたことを特徴とする農畜産物の分配整列装置。
【請求項2】
前記集積状態検出手段は、第1コンベア上の下流側における農畜産物の過剰な集積状態を検出し、
前記制御手段は、前記第1コンベア上の下流側における農畜産物の過剰な集積状態を検出した集積状態検出手段からの検出信号に基づいて供給コンベアの駆動速度を減速、あるいは、駆動を停止するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の農畜産物の分配整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30868(P2008−30868A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203786(P2006−203786)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(597017812)株式会社ナベル (56)
【Fターム(参考)】