説明

近位連結触媒

【課題】安定な近位連結触媒、近位連結触媒を含む製品の提供。
【解決手段】この近位連結触媒は、触媒担体及びパラジウム触媒成分を含んでなる。好ましくは及び随時、アルカリ金属酸化物、並びにネオジム及びランタン成分から選択される希土類金属成分を含む安定剤が存在する。近位連結触媒組成物はプラセオジム又はセリウムのような更なる酸素貯蔵成分を実質的に含まない。好ましくは近位連結触媒の下流には、スリ−ウエイ触媒のような触媒が存在する。この下流触媒は好ましくは酸化セリウム又は酸化プラセオジムのような酸素貯蔵成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる汚染物質を減ずるために該ガスを処理するのに有用な触媒組成物を含んでなる製品及び排ガスの処理法に関する。更に特に、本発明は、エンジンの冷始動条件下でのエンジン排気ガス中の汚染物質を減ずるように設計された、一般に「触媒組成物」として言及される種類の触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
カリフォルニア州低排気ガス車両規格は、特に炭化水素及び窒素酸化物に対してかなり高い排気ガス軽減を必要とする。典型的な車両の場合、炭化水素窒素酸化物の大部分(80%まで)は連邦試験法(「FTP])の第1期間において発生する。冷始動炭化水素窒素酸化物を減ずるためには、非特許文献1に開示されているような近位連結触媒;非特許文献2及び非特許文献3に開示されているような電気加熱触媒;非特許文献4及び非特許文献5に開示されているような炭化水素吸収剤;非特許文献6に開示されているようなバイパス触媒;並びに非特許文献7に開示されているようなバーナーを含めて種々の技術が開発されつつある。近位連結触媒、特にPd含有触媒が、非特許文献1;非特許文献8並びに非特許文献9に開示されているように、FTPサイクルの冷始動中のHC排気ガスの提言に非常に有効である。最近、フォード社は、非特許文献10に開示されているような厳しい排気ガス規格に適合させるためのPd単独触媒の適用成功例を報告した。
【0003】
「プレキャット(precat)」及び「暖機」触媒としても言及される近位連結触媒の主たる機能は、冷始動中の炭化水素排気ガスを軽減することである。冷始動は、エンジンを大気条件から始動させた直後の期間である。この冷始動期間は、大気温度、エンジンの種類、エンジンの制御システム及びエンジンの操作に依存する。典型的には、冷始動期間はエンジンを大気温度で始動してから最初の2分以内であり、FTP試験1975は冷始動を、エンジンを大気温度、典型的には26℃から始動させて最初の505秒間持続するFTPドライビング・サイクルの第1期間帯(bag)として特徴付けている。この期間の排気ガス軽減は伝統的な「床下触媒」よりもエンジンの近くに、全排気システム触媒の少なくとも一部分を位置させることによって達成される。床下触媒は、典型的には車両の床の直ぐ下に位置する。近位連結触媒はエンジン室に、即ちフードの直ぐ下に及び排気マニホールドに隣って位置する。この近位連結触媒を使用するのには、2つの方策がある。近位連結触媒は全触媒容積を占めることができ、或いは床下触媒と一緒に用いるため少容積の触媒であってもよい。設計の選択はエンジンの形、寸法、及び存在する空間に依存する。近位連結位置での触媒は、エンジンの暖機後にエンジンを出た途端の高温排ガスにさらされる。結果として、近位連結触媒は、非特許文献11に開示されているように、厳しい排気ガス規格に適合させるために十分耐える高温安定性を有さねばならない。今日の車両規制政策では、高負荷運転中又は高排ガス温度条件下におけるエンジン排ガスを触媒前で冷却するために、過剰燃料又は燃料過多の条件を使用する。この方策は、炭化水素排気ガスを増大させ、非特許文献12に開示されているように、将来の規制では排除されるかもしれない。しかしながら、これは触媒に対して50〜100℃より高い露呈温度をもたらすであろう。かくして、近位連結触媒は1050℃ほどの高温に露呈される。更に高速道路での運転条件は、近位連結触媒をそのような高温にさらすであろう。
【0004】
典型的な自動車触媒は、排ガス中の酸素による未燃焼炭化水素及び一酸化炭素の酸化並びに窒素酸化物の窒素への還元を触媒する床下スリーウエイ(three way)転化触媒(TWC)である。良好な活性と長寿命を示すTWC触媒は、1つ又はそれ以上の白金族金属(例えば白金又はパラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム)を、高表面積の耐火性酸化物担体、例えば高表面積のアルミナコーテイング上に含んでなる。この
担体は、適当な支持体又は基材例えば耐火性セラミック又は金属ハニカム構造体を含んでなる一体化支持体、或いは適当な耐火性材料の球又は押し出された短い断片上に保持される。
【0005】
特許文献1は、触媒構造体の製法を開示する。この触媒組成物は、白金族金属、卑金属、希土類金属及び耐火性物例えばアルミナ担体を含むことができる。組成物はハニカムのような比較的不活性な支持体上に付着させうる。
【0006】
「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」とも呼ばれる高表面積のアルミナ担体材料は、典型的には60m/g以上の、しばしば約200m/g又はそれ以上までのBET表面積を示す。そのような活性アルミナは、普通アルミナのガンマ及びデルタ相の混合物であるが、実質的な量のイータ、カッパ及びシータアルミナ相を含んでいてもよい。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物も、与えられた触媒中の触媒成分の少なくともいくつかに対する担体として使用できることが開示されている。例えばバルク(bulk)なセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、及び他の材料はそのような用途に対して公知である。これらの材料の多くは活性アルミナよりもかなり低いBET表面積を持つという欠点があるけれど、その欠点は得られる触媒の多大な耐久性によって相殺される傾向にある。
【0007】
移動する車両において、排ガスの温度は1000℃に達することがあり、そのような昇温度は活性アルミナ(又は他の)担体材料を、特に水蒸気の存在下における付随した容量収縮を伴った相転移によって引き起こされる熱劣化に巻き込み、その結果触媒金属は収縮した物質中に内包され、かくして露呈触媒表面積の損失と対応する触媒活性の低下を誘導する。アルミナ担体を、ジルコニア、チタニア、アルカリ土類金属例えばバリア、カルシア又はストロンチア或いは希土類金属酸化物例えばセリア、ランタニア及び2つ又はそれ以上の希土類金属酸化物の混合物によりそのような熱的劣化に対して安定化させることは同業者には公知である。例えばC.D.キース(Keith)らの特許文献2を参照。
【0008】
バルクな酸化セリウム(セリア)はロジウム以外の白金族金属に対して優秀な耐火性酸化物支持体を与えることが開示され、セリア粒子上には高分散した白金の小さい結晶子を付着させることができ、またバルクなセリアはアルミナ化合物の溶液を含浸させ、ついで焼成することによって安定化させることができる。C.Z.ウアン(Wan)らの特許文献3は、随時アルミナと組み合わせた、アルミナで安定化されたバルクなセリアが、それに含浸される白金族金属成分に対して耐火性酸化物支持体として役立つことを開示している。バルクなセリアを、ロジウム以外の白金族金属触媒に対する触媒担体として使用する方法は、C.Z.ウアンらの特許文献4及びチャタらの特許文献5にも開示されている。
【0009】
特許文献6は、少なくとも1つの酸素貯蔵成分及び少なくとも1つの貴金属成分が分散された第1の担体を含んでなり、及びその直ぐ上に、酸化ランタン及び随時第2の担体の被覆層が分散されている排ガス処理用の触媒組成物を開示する。この触媒相は酸化ランタンから隔離されている。貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムを含むことができる。酸素貯蔵成分は、鉄、ニッケル、コバルト及び希土類からなる群からの金属酸化物を含んでいてよい。これらの例は、セリウム及びランタン、ネオジム、プラセオジム、などである。セリウム及びプラセオジムの酸化物は、酸素貯蔵成分として特に有用である。
【0010】
特許文献7は、支持体物質、支持体物質上に形成された触媒担体層及び触媒担体層上に配置された触媒成分を含んでなる改良された耐性の排ガスを浄化するための触媒を開示する。この触媒担体層は、ランタン原子の、全希土類原子に対するモル画分が0.05〜0,20であり、全希土類原子数の、アルミニウム原子数に対する比が0.05〜0.25である、ランタン及びセリウムの酸化物を含んでなる。
【0011】
特許文献8は、基材上に使用するためのアルミナに担持された触媒を開示する。この触媒は高温で安定である。安定化物質はバリウム、ケイ素、希土類金属、アルカリ及びアルカリ土類金属、硼素、トリウム、ハフニウム及びジルコニウムに由来するものを含むいくつかの化合物の1つであると開示されている。安定化物質の中で、酸化バリウム、二酸化ケイ素及びランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジムなどを含む希土類酸化物などは好適であることが示されている。それらと焼成されたアルミナフィルムとの接触が、焼成されたアルミナフィルムに、高温において高表面積を保持させ得ると開示されている。
【0012】
特許文献9、特許文献10及び特許文献11は、アルミナ、セリア、アルカリ金属酸化物促進剤及び貴金属を含んでなるスリーウエイ触媒組成物を開示する。特許文献12は、ランタナ成分、セリア、アルカリ金属酸化物及び白金族金属から本質的になる成分が付着されたアルミナ担体を含んでなる触媒を開示する。特許文献11は、アルミナに担持された白金族金属触媒を開示する。この担体は引き続きランタナ又はランタナに富む希土類酸化物による担体安定化、並びにセリア及びアルカリ金属酸化物及び随時酸化ニッケルによる二重促進を含むように改善される。
【0013】
例えば特許文献13は、パラジウム含有触媒組成物が高温での用途に有用であることを見出した。ランタン及びバリウムの組み合わせは、触媒成分のパラジウムを担持するアルミナの優れた水熱安定性を提供することが示されている。
【0014】
特許文献14は、触媒コンバーターの装備された自動車のテールパイプからの窒素酸化物中のHC,CO及びNOx,並びにHSを制御し得る触媒を開示する。ニッケル及び/又は鉄の酸化物の使用は化合物のHSの除去に必要と開示されている。
【0015】
特許文献15は、バリウム化合物及びジルコニウム化合物をセリア及びアルミナと共に導入することにより貴金属を含むTWC触媒の熱安定性を改善する方法を開示している。これはアルミナ・ウオッシュコート(washcoat)の、高温にさらした時の熱安定性を高めるための触媒残部を形成すると述べている。
【0016】
特許文献16(及び特許文献17)は、パラジウム、ロジウム、活性アルミナ、セリア化合物、ストロンチウム化合物及びロジウム化合物を含んでなる触媒組成物を開示する。これらに特許は、アルカリ土類金属をセリア、ジルコニアと一緒に用いて、ウオッシュコートを含む熱安定性のアルミナに担持されたパラジウムを生成させうる可能性を暗示する。
【0017】
特許文献13及び特許文献18は、セリア−ジルコニア含有粒子を開示する。セリアはセリア−ジルコニア複合物の全重量の30重量%まででジルコニア・マトリックス全体に均一に分散して固溶液を形成できることが発見された。共生成させた(共沈殿させた)セリア酸化物−ジルコニア粒子複合物は、セリア−ジルコニア混合物を含む粒子中においてセリアの有用性を高め得る。セリアはジルコニアを安定化させ、また酸素貯蔵成分としても働く。上記特許文献18の特許は、ネオジム及び/又はイットリウムをセリア−ジルコニア複合物に添加して、得られる酸化物の性質を所望に応じて改変できることを開示する。
【0018】
特許文献19は耐高温性TWC触媒の製造法を開示する。この方法はガンマ又は活性アルミナ粒子の水性スラリーを生成させ、このアルミナに、セリウム、ジルコニウム、少なくとも1つの鉄及びニッケル並びに少なくとも1つの白金、パラジウム及びロジウム並びに随時少なくとも1つのネオジム、ランタン及びプラセオジムを含む選択された金属の可溶性塩を含浸させる工程を含む。含浸させたアルミナを600℃で焼成し、ついで水に分
散させてスラリーを生成せしめ、これをハニカム担体にコーテイングし、乾燥して最終触媒を製造する。
【0019】
特許文献20は、触媒担体に担持されかつ白金、パラジウム及びロジウムからなる群から選択される1つの触媒成分を含む触媒層を開示する。触媒層上にアルミナ被覆層を付与する。この被覆層は酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化鉄及び少なくとも1つのランタン及びネオジムの酸化物からなる群から選択される1つの酸化物を含む(1〜10重量%)。
【0020】
特許文献21及び特許文献22は、(a)アルミナ、希土類金属酸化物、及びクロム、タングステン、第IVB族金属及びこれらの混合物からなる群から選択される金属酸化物の、触媒的に活性な焼成された複合物並びに(b)該複合物の焼成後に添加される触媒有効量の白金族金属、を有する触媒組成物を開示する。この希土類金属はセリウム、ランタン、及びネオジムを含む。
【0021】
特許文献23は、アルミナ、ランタン及び他の希土類酸化物を含んでなる担体上に分散されたパラジウムを含む第1層及びアルミナ、ジルコニア、ランタン及び他の希土類酸化物を含んでなる担体上に分散されたロジウムを含む第2被覆層を有する層状自動車触媒を開示する。
【0022】
特許文献24は、排ガス生成のための一体化スリーウエイ触媒の製造法を開示する。第1に、酸化セリウムを含む活性アルミナ粉末をセリア粉末と一緒に分散させたコーテイング液で支持体を処理し、そしてこの処理した支持体を焼くことによって、混合酸化物コーテイングを一体化支持体上に生成させる方法を開示する。ついでこの酸化物コーテイング上に、白金、ロジウム、及び/又はパラジウムを熱分解によって付着させる。随時、ジルコニア粉末を、コーテイング液に添加してもよい。
【0023】
特許文献18は、内燃機関例えば自動車の排ガスのスリーウエイ転化触媒に適当な、担体上の2つのはっきりしたコーテイングに導入された触媒物質を含む触媒組成物を開示する。第1のコーテイングは、第1の白金触媒成分が分散されている安定化されたアルミナ担体及びバルクなセリアを含み、そしてバルクな酸化鉄、硫化水素排気ガスの抑制に有効である金属酸化物(例えばバルクな酸化ニッケル)、及び第1のコーテイング中に熱安定剤として分散されたバリア及びジルコニアの1つ又は両方を含んでいてよい。この第1のコーテイングの上に位置する表面コーテイングをなす第2のコーテイングは、第1のロジウム触媒成分が分散された共生成(例えば共沈殿)希土類酸化物−ジルコニア担体及び第2の白金触媒成分の分散された第2の活性アルミナ担体を含む。またこの第2のコーテイングは、活性アルミナ担体として分散された第2のロジウム触媒成分及び随時第3の白金触媒成分を含んでいてもよい。
【0024】
安価で安定な近位連結触媒系を開発することは、引き続いての目標である。この系は炭化水素を低温で酸化する能力を持たねばならない。
【0025】
【特許文献1】米国特許第4,134,860号
【特許文献2】米国特許第4,171,288号
【特許文献3】米国特許第4,714,694号
【特許文献4】米国特許第4,727,052号
【特許文献5】米国特許第4,708,946号
【特許文献6】米国特許第4,923,842号
【特許文献7】米国特許第4,808,564号
【特許文献8】米国特許第4,438,219号
【特許文献9】米国特許第4,476,246号
【特許文献10】米国特許第4,591,578号
【特許文献11】米国特許第4,591,580号
【特許文献12】米国特許第4,591,518号
【特許文献13】米国特許第4,624,940号
【特許文献14】米国特許第4,780,447号
【特許文献15】米国特許第4,965,243号
【特許文献16】JO第1210032号
【特許文献17】AU−615721号
【特許文献18】米国特許第5,057,483号
【特許文献19】米国特許第4,504,598号
【特許文献20】特公昭62−71538号
【特許文献21】米国特許第3,956,188号
【特許文献22】米国特許第4,021,185号
【特許文献23】日本国特許第63−077544号
【特許文献24】米国特許第4,587,231号
【非特許文献1】ボール(Ball),D.J.,「暖機及び床下触媒容積の分布」、SAE922338(1992)
【非特許文献2】ピオトロウスキー(Piotrowski),G.K.,「抵抗加熱モノリス触媒コンバーターの、ガソリン燃料車両における評価」、EPA/AA/CTAAB/88−12(1988)
【非特許文献3】ハーリー(Hurley),R.G.,「金属及び電気加熱金属触媒の、ガソリン燃料車両における評価」、SAE900504(1990)
【非特許文献4】ハイムリッヒ(Heimtich),M.J.,スミス(Smith),Lr、及びキトウスキー(Kitowski),J.,「進歩した窒素酸化物制御のための冷始動炭化水素捕集」、SAE920847(1992)
【非特許文献5】ホッホムス(Hochmuth),Jk、バーク(Burk),Pl.テレンチノ(Telentono),C.,及びミグナノ(Mignano),M.J、「冷始動窒素酸化物を制御するための炭化水素捕集」、SAE930739(1993)
【非特許文献6】フレイドル(Fraidl),Gk、クイスルク(Quissrk),F.,及びウインクルホファー(Winklhofer),E.,「燃料効率高性能エンジンのLEV/ULEVポテンシャルの改良」、SAE920416(1992)
【非特許文献7】マ(Ma),T.,コリングス(Collings),N.,及びハンズ(Hands),T.,「排ガス燃焼−自動車排ガス触媒の急速なライト−オフ(Light−off)に対する新しい概念」SAE920400(1992)
【非特許文献8】サマーズ(Summers),J.C.,スコウロン(Skowron),J.F.,及びミラー(Miller),M.J.,「カリフォルニア州LEV/ULEV規格に適合させるためのライト−オフ触媒の使用」、SAE930386(1993)
【非特許文献9】ボール(Ball),D.J.,「暖機及び床下触媒コンバーターのパラメター研究」、SAE932765(1993)
【非特許文献10】デットリング(Dettling),J.,フ(Hu),Z.,ルイ(Lui),Y.,スマリング(Smaling),R.,ワン(Wan),C.,及びプンケ(Punke),A.,「厳しい規格に適合させるためのスマートPd TWC技術」、触媒及び自動車汚染制御に関するCAPoC3第3回国際会議、1994年4月20〜22、ブリュッセル市
【非特許文献11】バーシン(Bhasin),M.,ら、「内燃及び静置源エンジンからの排ガスを処置するための新規触媒」SAE93054(1993)
【非特許文献12】「加速過多は大きな汚染源となりうる」、ワーズ・エンジン・アンド・ビヒクル・テクノロジー・アップデート(Ward′s Engine and Vehicle Technology Update)、1993年12月1日号、4ページ
【発明の開示】
【0026】
発明の概略
本発明は、安定な近位連結触媒(close coupled catalyst)、そのような近位連結触媒を含んでなる製品、及び関連する運転法に関する。本発明の近位連結触媒は、冷始動中のガソリンエンジンからの炭化水素排気ガスを減ずるように設計されている。更に特に、本近位連結触媒は350℃程度の低温、好ましくは300℃程度の低温、更に好ましくは200℃程度の低温において、自動車排ガス流中の汚染物質を減ずるように設計されている。本発明の近位連結触媒は低温反応を触媒する近位連結触媒組成物を含んでなる。この性能はライト−オフ温度で示される。特別な成分に対するライト−オフ温度は、その成分の50%が反応する温度をいう。
【0027】
近位連結触媒はできるだけ早く反応温度に達しうるようにエンジンの近くに配置される。しかしながらエンジンの一定状態での運転中、近位連結触媒がエンジンに対して典型的には1フィート(30.48cm)以下、更に特に6インチ(15.24cm)以下で、通常排ガスマニフォールドの出口に直接取り付けられるという近位は、近位連結触媒を1100℃までの非常に高温へ露呈する。触媒床中の近位連結触媒は、熱排ガスからの熱により及び排ガス中に存在する炭化水素及び一酸化炭素の燃焼により発生した熱により、高温へ加熱される。近位連結触媒組成物は、低温における非常に高反応性の他、エンジンの運転寿命に対して安定でなければならない。「背景の技術」で示すように、ガソリンエンジンは、典型的には炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を含む排ガス汚染物質を放出する。典型的な触媒コンバーターは、自動車の「床下」に位置する。そのような触媒コンバーターは「スリーウエイ触媒」(TWC)として働く触媒組成物を含んでなる。TWC触媒は一酸化炭素及び炭化水素を酸化し、窒素酸化物を還元する。一酸化炭素は二酸化炭素へ酸化され、炭化水素は水及び一酸化炭素へ酸化される。窒素酸化物は典型的には窒素ガスへ還元される。
【0028】
本発明の近位連結触媒は、「背景の技術」で論じた「冷始動」条件において、一酸化炭素及び炭化水素の酸化と窒素酸化物の減少を達成する。そのような条件は350℃程度の低温、好ましくは300℃程度の低温、更に好ましくは200℃程度の低温である。同時に本近位連結触媒は1100℃までの非常に高温へ露呈されたときに熱的に安定である。これは、触媒コーテイングの熱安定性を向上させることにより、及び近位連結触媒床中での一酸化炭素の反応を制御し、従って触媒床での一酸化炭素に関連する温度上昇を低下させることにより達成される。同時に本近位連結触媒組成物は比較的高い炭化水素転化率を与える。近位連結触媒の下流には、床下触媒又は下流触媒が存在しうる。汚染物質を減ずるのに十分高温まで床下触媒を加熱する場合には、近位連結触媒中での一酸化炭素の転化率を低下させることにより近位連結触媒の温度を低くする。一方この結果下流触媒、典型的には床下触媒は残存した一酸化炭素の燃焼を行うために高温となり、より効果的に作用することができる。
【0029】
本発明の近位連結触媒組成物は、実質的に酸素貯蔵成分が存在しない以外、TWC触媒組成物に使用される種類の成分を含んでなる。本発明の近位連結触媒組成物からの酸素貯蔵成分の排除は、一酸化炭素の制御されたバイパスをもたらす。本発明の目的に対して、酸素の貯蔵及び遊離能力を有する成分は酸化セリウム及び酸化プラセオミジウムを含む。酸素貯蔵能力が幾分低い他の希土類は、酸素貯蔵及び遊離能力を有する成分であるとは考えない。更に、白金族金属成分は酸素貯蔵成分であるとは考えない。特に近位連結触媒組成物は実質的にセリアを有さないスリーウエイ触媒組成物であってよい。少量のセリア又
はプラセオジムは不純物として又は痕跡量存在してもよい。酸素貯蔵成分例えば酸化セリウムは酸素を貯蔵し、炭化水素及び一酸化炭素の酸化をより効率よく進行させるために更なる酸素が必要な条件下にそれを遊離する。しかしながら、この機能は過剰な酸化と近位連結触媒の過熱をもたらすことが発見された。本組成物はパラジウム成分を、好ましくは比較的高濃度で含む。従って、冷始動運転中、比較的高量の炭化水素が酸化され、一酸化炭素のすべてではないが、かなりの量のそれが酸化される。更にかなりの量の窒素酸化物が還元される。更に、近位連結触媒中の酸素貯蔵成分、特にセリウム化合物の不存在は、エンジンの排ガスが熱く、下流(床下)触媒が運転温度に達した時でさえ、近位連結触媒中での一酸化炭素の酸化量を制限する。近位連結触媒中で反応しない一酸化炭素は下流触媒へ通過し、そこで接触的に酸化される。そのような酸化は下流触媒の温度を上昇させ、より効率よい運転をもたらす。従って、本発明の近位連結触媒は、汚染物質のかなりの量を低温で除去するのに十分有効であり、一方長期のエンジンの運転にわたって安定であり、その間かなりの量の一酸化炭素を下流の触媒へ渡してこれを効率よく働かせる。
【0030】
本発明は、典型的には排ガスマニフォールドの出口に通じて連結された排気ガス出口を有するガソリンエンジンを含んでなる製品を包含する。近位連結触媒は排ガス出口に通じ、典型的には排ガスマニフォールド出口に通じて連結される。また近位連結触媒はガソリンエンジンの出口又は排ガスマニフォールド出口に直接連結することができる。他にそれは典型的にはガソリンエンジンの排ガス出口又は排ガスマニフォールド出口へ、長さ約1フィート(30.48cm)までの短い排ガスパイプによって連結されていてよい。本近位連結触媒は、下流の、好ましくは床下触媒コンバーターの出口に通じて連結される出口を有する。排ガスパイプは、近位連結触媒出口の出口及び床下触媒コンバーター入口の入口を連結することができる。床下触媒コンバーターは出口排ガスパイプに連結できる出口を有し、これを通して排ガスは自動車から大気へ放出される。近位連結触媒は近位連結触媒組成物を含んでなる。床下触媒は好ましくはセリアを含むスリーウエイ触媒組成物を含んでなる。
【0031】
本発明の近位連結触媒組成物は、セリアおよびプラセオジミアのような酸素貯蔵成分を実質的に含まない。触媒組成物は好ましくはシリカ、アルミナ、チタニア及び後に第1のジルコニア化合物として言及される第1のジルコニア化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでなる。更に組成物は好ましくは一酸化炭素及び炭化水素を酸化し、窒素酸化物を減じて、比較的低い、好ましくは炭化水素の酸化に対して200〜350℃の範囲にある50%転化率での各ライトーオフ温度を有するに十分な量で、パラジウム成分を含んでなる。組成物は随時酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び酸化バリウム、最も好ましくは酸化ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物を含んでなる。また組成物は随時好ましくは白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む他の貴金属又は白金族金属を含んでなる。更なる白金族金属が包含される場合、もし白金が使用されるならば、それは60g/ft(2.12kg/m)以下の量で用いられる。他の白金族金属は約20g/ft(706g/m)までの量で使用される。組成物は随時安定剤として第2の酸化ジルコニウム及び随時酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物を含んでいてもよい。
【0032】
近位連結触媒は好ましくは支持体がハニカム型の支持体である支持体に担持された触媒の形である。好適なハニカム型支持体は、パラジウム成分少なくとも約50g/ft(1.77kg/m)、活性アルミナ0.5〜3.5g/in(0.03〜0.21g/cm)、及び少なくとも1つのアルカリ土類金属成分、最も好ましくは酸化ストロンチウム0.05〜0.5g/in(0.003〜0.03g/cm)を有する組成物を含んでなる。酸化ランタン及び/又はネオジムが存在する場合、それらは0.6g/in(0.036g/cm)までの量で存在する。
【0033】
本発明は一酸化炭素、炭化水素及び随時窒素酸化物を含む汚染物質を含んでなる排ガスを出すガソリンエンジンの運転法も含む。排ガス流はエンジン出口から、上述した種類の近位連結触媒の入口に至る。ガスは近位連結触媒と接触し、反応する。この近位連結触媒は実質的に酸素貯蔵成分、特にセリア及びプラセオジミア成分を含まない。ついで排ガスを、好ましくはセリアのような酸素貯蔵成分を含んでなる下流スリーウエイ触媒へ通流させる。
【0034】
随意の具体例において、スリーウエイ触媒は、近位連結触媒支持体の下流の近位連結触媒カニスター(canister)内にある支持体上に近位連結触媒製品の一部として含まれる。
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、添付する図面1、2、3、及び4を参照して、同業者の理解されるところである。
【0036】
本発明は、近位連結触媒組成物を、ガソリンエンジンの排ガス出口のごく近くに含んでなる近位連結触媒に関する。本触媒組成物は、担体、パラジウム成分、及び好ましくは少なくとも1つのアルカリ金属酸化物成分、好ましくは酸化ストロンチウムを含んでなる。近位連結触媒組成物は、ガソリンエンジンの運転中に実質的に酸素貯蔵及び遊離の能力を有さない成分から本質的になる。好ましくは近位連結触媒の下流に、少なくとも1つの酸素貯蔵成分特にセリア又はプラセオジミアを含んでなる触媒が存在する。
【0037】
本発明の特別なかつ好適な具体例を示す図1を参照しよう。図1はガソリンエンジン12を有する自動車10を示す。このガソリンエンジン12は、エンジン排ガス出口14を有する。典型的かつ好適な具体例において、エンジン排ガス出口14はマニフォールド入口18を通してエンジン排ガスマニフォールド16に通じる。近位連結触媒はエンジン排ガスマニフォールド19のごく近くにある。マニフォールド出口18は近位連結触媒入口22を通して近位連結触媒20に連結されかつ通じている。近位連結触媒20は下流触媒、例えば床下触媒コンバーター24に連結されかつ通じている。近位連結触媒は、近位連結触媒排ガスパイプ30により、床下触媒入口28で床下触媒14に連結される近位連結触媒出口を有する。床下触媒24は典型的にはかつ好ましくはマフラー32に通じる。特に床下触媒出口34は床下排ガスパイプ38を通してマフラー入口36に至る。マフラーはマフラー出口39を持ち、これが大気に開口しているテールパイプ出口42を有するテールパイプ40に連結されている。図2は、床下触媒24と組み合わせられた近位連結触媒20の系統的図面である。この好適な具体例において、近位連結触媒は近位連結触媒組成物がコーテイングされた近位連結触媒ハニカム支持体44を含んでなる。床下触媒24は床下触媒組成物がコーテイングされた床下触媒ハニカム46を含んでなる。図2の近位連結触媒ハニカムは近位連結触媒入口22及び近位連結触媒出口26を有する近位連結触媒カニスター52内に密閉して配置され、これが近位連結触媒排ガスパイプ30により床下触媒カニスター54内に密閉して配置された床下触媒24の入口28に連結されている。床下排ガスパイプ38は床下触媒出口34に通じる。
【0038】
図3は2つの隣るハニカムを含んでなる近位連結触媒の他の具体例を示す。この具体例において、近位連結触媒は近位連結触媒組成物がコーテイングされた組み合わせ近位連結触媒ハニカム支持体48を含んでなる。この下流触媒は、好ましくはスリーウエイ組み合わせ下流触媒組成物のコーテイングされた支持体50を含んでなる。組み合わせ近位連結触媒48及び組む合わせ下流触媒50は、好ましくは相当するハニカム構造を有して、互いに隣っていてよい。他に、図4に示すように、それらは離れていてもよい。最後に、1つ又はそれ以上複数の組み合わせ近位連結触媒ハニカム48及び1つ又はそれ以上の組み
合わせ下流触媒ハニカム50が存在してもよい。
【0039】
図3及び4は、組み合わせカニスター56内に密閉して配置された組み合わせ近位連結触媒ハニカム48及びスリーウエイ触媒ハニカム50を示す。この組み合わせカニスター56は、エンジンからの排ガスが流入する近位連結触媒入口22及び組み合わせ排ガスパイプ60に至る組み合わせ触媒出口58を有する。組み合わせ排ガスパイプ60は、マフラー32の入口に通じる。図3において、ハニカム48及び50は隣り合って、ぶつかり会い、そして同様の隣ったプロフィールを有する。図4のハニカム48及び50は間隔51だけ離れており、異なる相対したプロフィールを有する。好ましくは、近位連結触媒の嵩は下流の、即ち床下の触媒よりも小さい。近位連結触媒組成物の相対量は、触媒の容量当たりの重量(即ちg/cm)に基づいて、近位連結触媒及び床下触媒の組成物の合計の1/20〜1/2である。他に近位連結触媒の容量(ハニカムの容量)は、全触媒容量の1/20〜1/2である。本発明の製品は、好ましくは支持体、パラジウム成分、及び好ましくは少なくとも1つのアルカリ金属酸化物を含んでなる近位連結触媒組成物を含む。この組成物は、スリーウエイ触媒活性を提供するが、本質的にセリア、酸素貯蔵成分及び特にセリア又はプラセオジミアを含まない。近位連結触媒組成物は随時パラジウムの他に、白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウムからなる群から選択される少なくとも1つの白金族金属成分を、パラジウムに対して少量で含んでなる。随時かつ好ましくは、組成物は更に少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物及びネオジム酸化物及びランタン酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物を含んでなる。また組成物は随時第2のジルコニウム酸化物を含んでいてもよい。最も好適な近位連結触媒組成物は、活性アルミナ担体、パラジウム成分、ストロンチウム酸化物、ネオジム酸化物、ランタン酸化物及び第2のジルコニウム酸化物を含んでなる。近位連結触媒組成物は好ましくは支持体例えばハニカム基材支持体上にコーテイングされる。
【0040】
そのような支持体にコーテイングする場合、種々の成分の量は容量当たりのグラム数に基づいて表示される。組成物を薄いコーテイングとして一体化支持体基材に適用するとき、各成分の量は、通常白金族金属成分に対して立方フィート当たりのグラム数として及び触媒の立方インチ当たりの材料のグラム数として表現される。この手段は、異なる一体化支持体基材中の異なるガス流通過セル寸法に便宜的である。典型的な自動車排ガス触媒コンバーターに対して、一体化基材を含む触媒複合物は一般に触媒組成物コーテイングを約0.50〜約6.0(約0.03〜約0.36g/cm)、好ましくは約1.0〜約5.0g/in(約0.06〜約0.31g/cm)含んでいてよい。種々の成分の好適な量は、パラジウム成分約50〜約400g/ft(約1.77〜約14.1kg/m)、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される白金族金属成分0〜20g/ft(0〜0.7kg/m)及び白金成分0〜60g/ft(0〜2.1kg/m)である。炭化水素の所望の酸化及び一酸化炭素の調節された酸化を達成するためには、パラジウムの量は好ましくは他の白金族金属成分のすべての合計よりも多い。担体材料の量は好ましくは0.5〜約3.5g/in(0.03〜約0.21g/cm)であり、活性アルミナが最も好適である。アルカリ土類金属化合物の量は約0〜約0.6(約0〜約0.4g/cm)、好ましくは0.05〜約0.5g/in(0.003〜約0.03g/cm)である。希土類金属酸化物の量は、ランタン及びネオジム酸化物の、好ましくは0.0〜0.5(0.0〜0.3g/cm)、更に好ましくは0.05〜0.2(0.003〜0.012g/cm)である。第2のジルコニウム酸化物の量は0.00〜約0.5(0.00〜約0.03g/cm)、好ましくは0.05〜0,2g/in(0.003〜0.012g/cm)である。
【0041】
下流触媒は好ましくはスリーウエイ触媒である。技術的に公知の適当なスリーウエイ触媒が使用でき、これは好ましくは酸素貯蔵成分、特にセリアを含んでなる。そのような触媒は典型的には白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群
から選択される少なくとも1つの白金族金属成分を含んでなる。シリカ、アルミナ及びチタン化合物から選択できる少なくとも1つの触媒担体が存在し、それは典型的にはかつ好ましくはアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−シリケート、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、及びアルミナ−セリアからなる群から選択される活性化合物である。スリーウエイ触媒は、好ましくはセリウム及びプラセオジム化合物、好ましくはセリウム酸化物及びプラセオジム酸化物からなる群から選択される酸素貯蔵成分を含んでなる。組成物は好ましくはマグネシウム、バリウム、カルシウム及びストロンチウムに由来する成分を含むアルカリ土類金属成分から選択しうる少なくとも1つの安定剤を含んでなる。スリーウエイ触媒は更に希土類金属、好ましくはランタン及びネオジム化合物を含むことができる。本発明の近位連結触媒と共に使用できる最も好適なスリーウエイ触媒は、本明細書に参考文献として引用される表題「層状触媒複合物」の米国特許願第08/265076号に開示されている。
【0042】
近位連結触媒又は下流触媒(TWC)を製造する場合、触媒成分を活性アルミナ担体粒子上に分散させるためには、白金族金属触媒成分例えば白金族金属のいずれかの適当な化合物及び/又は錯体が利用できる。本明細書で使用するような「白金族金属成分」とは、触媒の焼成又は使用時に分解し又はさもなければ触媒的に活性な形、普通金属又は金属酸化物に転化するいずれかの白金属金属の化合物、錯体などを意味する。1つ又はそれ以上の白金族金属の水溶性化合物又は水に分散し得る化合物或いは錯体は、触媒金属化合物をアルミナ担体粒子に含浸させる又は付着させるために用いる液体が触媒金属或いはその化合物又は錯体並びにスラリーの他の成分と悪い反応をしない、かつ加熱及び/又は真空の適用で蒸発または分解により触媒から除去できる限りにおいて、使用できる。いくつかの場合、液体の完全な除去は、触媒を使用して運転中に遭遇する高温にさらされるまで、行わなくてもよい。一般に、経済的及び環境的観点から、白金族金属の可溶性化合物及び錯体の水溶液は好適である。例えば適当な化合物は、クロロ白金酸、アミン可溶化白金水酸化物、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサミンロジウムクロライド、硝酸パラジウム又は塩化パラジウムなどである。焼成工程中又は少なくとも触媒の使用初期中、そのような化合物は白金族金属又はその化合物の触媒的に活性な形に転化される。
【0043】
近位連結触媒を製造する場合、パラジウム成分の量はパラジウム500(17.7kg/m)まで、好ましくは50−400(1.77〜14.1kg/m)、更に好ましくは75〜400g/ft(2.65〜14.1kg/m)を達成するのに十分な量である。他の白金族金属成分は約60g/ft(2.1kg/m)までであることができ、白金の量が約60g/ft(2.1kg/m)まで、そしてロジウム又はイリジウムの量が約20g/ft(0.71kg/m)までである。
【0044】
床下触媒、又は単一の近位連結触媒カニスター内に隣る及びその下流の触媒ブロックを考える場合、白金金属成分の量は用いる白金族金属成分に依存する。白金が主成分の時、白金100(3.53kg/m)まで、好ましくは20〜50g/ft(0.71〜1.77kg/m)が存在し得る。パラジウムを使用する時、パラジウム500(17.7kg/m)まで、好ましくは50〜300g/ft(1.77〜10.60kg/m)が存在し得る。ロジウム、ルテニウム及びイリジウムを白金又はパラジウムと組み合わせて使用する時、100(3.53kg/m)まで、好ましくは50g/ft(1.77kg/m)までが存在し得る。
【0045】
近位連結触媒組成物及び下流触媒組成物の両方は、安定化を付与する成分を含んでなる。この安定剤はアルカリ土類金属化合物からなる群から選択することができる。好適な化合物はバリウム、カルシウム及びストロンチウムから選択される金属に由来する化合物を含む。米国特許第4727052号から、担体材料、例えば活性アルミナは熱的に安定化されていて、望ましくないアルミナ相の、昇温度におけるガンマからアルファへの転移を
、安定剤又は安定剤の組み合わせ物の使用で遅延させ得ることが知られている。このアルカリ土類金属成分は、好ましくはアルカリ土類金属酸化物である。特に好適な具体例では、ストロンチウムを、そして好ましくはバリウムをも近位連結触媒組成物中の化合物をして使用することが望ましい。アルカリ土類金属は、焼成時に酸化物になる可溶性形で適用できる。ストロンチウム及びバリウム成分は水溶性化合物、例えば硝酸バリウム又は水酸化バリウム、硝酸ストロンチウムとして付与することが好適である。これらの化合物はすべてが焼成時に酸化物になる。更に近位連結触媒組成物及び下流触媒組成物の両方はジルコニウムに由来する化合物、好ましくは酸化ジルコニウムを含む。第2のジルコニウム化合物は水溶性化合物例えば酢酸ジルコニウムとして或いは比較的不溶性の化合物例えば水酸化ジルコニウムとして付与し得る。これらは各組成物の安定化及び促進性を高めるのに十分な量で存在すべきである。
【0046】
活性アルミナ及び触媒成分の、支持体基材上のあらかじめ焼成したコーテイングに対しては、1つ又はそれ以上の熱安定剤が適用できる。他に又は更に、アルミナ粒子を、支持体基材上に付着した焼成コーテイングにする前又はその後に、活性アルミナに1つ又はそれ以上の改変剤を適用してもよい。(本明細書で使用するような「前駆体」とは、熱安定剤或いは他の改変剤又は他の成分に拘らず、触媒の焼成時又は使用時にそれぞれ熱安定剤、他の改変剤又は他の成分に分解する或いはさもなければ転化する化合物、錯体などである。)1つ又はそれ以上の金属酸化物熱安定剤の存在は、高表面積のアルミナ例えばガンマ及びイータアルミナの、低表面積のアルファアルミナへの相転移を遅延させる傾向がある。そのような相転移の遅延は触媒金属成分のアルミナによる内包、結果としての触媒活性の低下を防止し、又は減少させる傾向を示す。
【0047】
近位連結触媒触媒及び下流触媒の組成物において、アルミナと組み合わせられた金属酸化物熱安定剤の量は組み合わせアルミナ、安定剤及び触媒金属成分の全重量に基づいて約0.05〜30、好ましくは約0.1〜25重量%であってよい。
【0048】
近位連結触媒組成物及び下流組成物の両方は、ランタン金属成分及びネオジム金属成分、好適には酸化ランタン(ランタナ)及び酸化ネオジム(ネオジミア)からなる群から選択される少なくとも1つの第1の促進剤を含有することができる。これらの化合物は安定剤として働くことが開示されているけれども、それらは各第1及び第2層組成物に対する反応促進剤としても働くことができる。促進剤は期待する化合物の他への転化を速める物質であると考えられる。下流触媒組成物において、促進剤は一酸化炭素及び炭化水素の水及び二酸化炭素への並びに窒素酸化物の窒素及び酸素への触媒転化を高める。
【0049】
ランタン及びネオジミア及び/又はネオジムは、好ましくはその酸化物の形で存在する。しかしながら、これらの化合物は好ましくは可溶性形で、例えば酢酸塩、ハライド、硝酸塩、硫酸塩などとして最初に付与して、固体成分に含浸させ、酸化物に転化される。表面コーテイング及び下層コーテイングの両方において、促進剤は特に白金族金属を含む組成物中で他の成分とよく接触して存在することが好適である。
【0050】
本発明の下流(又は床下)触媒は、好ましくは酸素貯蔵成分、好ましくはセリウム又はプラセオジム化合物を含む。最も好適な酸素貯蔵成分は、酸化セリウム(セリア)である。この酸素貯蔵成分は、触媒組成物の少なくとも5、好ましくは少なくとも10、更に好ましくは少なくとも15重量%で存在できる。酸素貯蔵成分は技術的に公知の分散法で含有させ得る。そのような方法は酸素貯蔵成分を水溶液の形で白金族金属含有担体に含浸させ、得られた混合物を空気中で乾燥及び焼成して、酸素貯蔵成分を白金族金属とよく接触させて含有する第1層を与えることによる、第1組成物の含浸を含んでいてよい。典型的にはこの含浸は含浸される材料の細孔を満たすのに実質的に十分な液体が存在することを意味する。使用できる水溶性で、分解し得る酸素貯蔵成分の例は、これに限定されはしな
いが、酢酸セリウム、酢酸プラセオジム、硝酸セリウム、硝酸プラセオジムなどを含む。米国特許第4189404号はアルミナに基づく担体への硝酸セリウムの含浸を開示する。
【0051】
他に酸素貯蔵成分は好ましくはバルク形のセリア及び/又はプラセオジミアである。ここにバルク形とは、セリア及び/又はプラセオジミアが、第1層のように溶液に分散していたのとは反対に、直径1〜15ミクロン程度の小さい又はそれより小さい区別できる粒子として存在することを意味する。そのようなバルク成分の記述及び使用は、本明細書に参考文献として引用される米国特許4714694号に提示されている。これもまた参考文献として引用される米国特許第4727051号に示されるように、バルク形は例えばセリア化合物の溶液をアルミナ粒子に含浸させ、これを焼成時にアルミナ粒子内に付与したセリアに転化するというものとは反対に、セリアが固体またはバルク形で存在するように、活性アルミナ粒子と混合されていることを意味する。
【0052】
上述した下流触媒組成物の成分の他に、下流触媒組成物はジルコニア及び少なくとも1つの希土類酸化物を含有することができる。そのような物質は例えば本明細書に参考文献として引用される米国特許4624940号に提示されている。特に好適なものはジルコニアに基づく化合物50%以上、好ましくは60〜90%、セリア10〜30%、及び使用する場合ジルコニアを安定化するのに有用な、ランタナ、ネオジミア及びアトリアからなる群から選択される非セリア希土類酸化物随時10重量%まで、少なくとも0.1重量%を含んでなる粒子である。
【0053】
近位連結触媒、しかし更に好ましくは本発明の下流組成物は他の通常の添加剤、例えば硫化物抑制剤、例えばニッケルまたは鉄成分を含有できる。酸化ニッケルを使用する場合、第1コーテイングの約1〜25重量%の量が有効である。これは本明細書に参考文献として引用される本発明者による米国特許願打07/787192号に開示されている。
【0054】
本発明の近位連結触媒組成物及び本発明の下流触媒組成物は、公知の方法でペレットに製造かつ成形でき、或いは適当な基材、好ましくは金属またはセラミックのハニカム支持体に適用できる。
【0055】
いずれか適当な支持体、例えば通路が流体流に対して貫通しているように、複数の細かい平行なガス流通路が支持体の入口から出口面まで貫通して延びている種類の一体化支持体が使用できる。流体入口から出口まで本質的に真っ直ぐの通路は、触媒物質が「ウオッシュコート」としてコーテイングされた壁により囲まれており、かくしてその通路を流れるガスは触媒と接触できる。一体化支持体の流路は適当な断面形及び寸法のもの、例えば台形、長方形、正方形、シヌソイド形、六角形、楕円形、円形のものであってよい薄い壁の通路である。そのような構造体は、断面積1平方インチ当たり約60〜約600(1平方センチメートル当たり約9.3〜約92)又はそれ以上のガス入口開口(「セル」)を含んでいてもよい。セラミック支持体は、いずれか適当な耐火材料、例えばコーデイエライト、コーデイエライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルファアルミナマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルファアルミナ及びアルミナシリケートからなっていてよい。金属製ハニカムは、ステンレススチール又は他の適当な鉄に基づく対腐食性合金からなっていてもよい。
【0056】
そのような一体化支持体は、断面積1平方インチ当たり約700(1平方センチメートル当たり約108)まで又はそれ以上の流路(「セル」)を含み得るが、それ以下であってもよい。例えば支持体は1平方インチ当たり約60〜約600(1平方センチメートル当たり約9.3〜約92)、更に普通には約200〜400(31〜62)のセルを含ん
でいてもよい。
【0057】
本発明の運転法によれば、ガソリンエンジンは大気条件下に始動される。本方法によればいずれかの大気条件が使用できるが、比較の目的のため、大気エンジン温度は10〜30℃の範囲内、更に特に好ましくは約25℃であると考えられる。エンジンは冷始動から始動されかつ運転される。図1を参照すると、ガソリンエンジンは好ましくはエンジン排ガスマニホールド16を有する典型的なエンジン12である。排ガスはエンジン排ガス出口から、マニホールド入口を通って、エンジン排ガスマニホールド16へ、そしてマニホールドから、マニホールド出口19を通って、近位連結触媒入口22より近位連結触媒20へ通過する。
【0058】
排ガスは一酸化炭素及び水素、並びに随時、但し典型的には窒素酸化物を含んでなる。近位連結触媒20において、排ガスは上述したように酸素貯蔵成分を実質的に有さない近位連結触媒組成物と接触せしめられる。近位連結触媒は炭化水素の少なくともいくらかを酸化し、存在する窒素酸化物の少なくともいくらかを減ずるが、存在する一酸化炭素の一部分しか酸化しない。
【0059】
比較の目的で、FTP1975に従って試験したとき、近位連結触媒では一酸化炭素の90以下、好ましくは75以下、更に好ましくは30以下、最も好ましくは60モル以下が酸化される。言い換えると、RTP1975試験によれば、一酸化炭素の少なくとも10、好ましくは少なくとも25、更に好ましくは少なくとも30、最も好ましくは少なくとも40モル%が近位連結触媒中で酸化され、近位連結触媒から下流の、典型的には床下の触媒24へ通過する。
【0060】
下流触媒24は、好ましくは上述したように、セリウム及びプラセオジム成分、好ましくは酸化セリウム及び酸化プラセオジム、最も好ましくは酸化セリウムから最も好適に選択される酸素貯蔵成分を含んでなるスリーウエイ触媒組成物からなる。
【0061】
本発明の方法は、一酸化炭素の酸化量を限定するけれども、改良された炭化水素の冷始動酸化及び窒素酸化物の還元をもたらす。しかしながら、一酸化炭素の制限は、冷始動触媒が暖められたエンジンの運転に耐えねばならない高温での改良された長期安定性を有することを可能にする。最後に、冷始動触媒を、増大する一酸化炭素の迂回と共に使用することにより、本発明の冷始動触媒は下流触媒が増大した一酸化炭素の酸化中に発生した熱のためにより効果的になるようにすることを可能にする。
【実施例】
【0062】
次の実施例は、本発明を更に完全に理解できるように提示される。本発明の本質及び実施を例示するために示される特別の技術、条件、材料、割合及び報告するデータは、例示であり、本発明の範囲を制限するものと見做すべきでない。
【0063】
実施例1
表面積約160m/gのガンマアルミナ粉末738gに、パラジウム34.5gを含む水性硝酸パラジウム溶液を含浸させた。このパラジウム含有アルミナ及びZrO60.1gを形成するのに十分な量の酢酸ジルコニウム溶液を、脱イオン水と共にボールミル処理をし、スラリーにした。更にこのスラリーを、La114gを形成するのに十分な量の硝酸ランタン溶液、Nd95.9gを形成するのに十分な量の硝酸ネオジム、溶液、BaO 54gを形成するのに十分な量の酸化バリウム、SrO 60gを形成するのに十分な量の硝酸ストロンチウムと混合することによりウオッシュコートを調製した。このスラリーは、固体を約48重量%含んだ。コーデイエライト製の及び断面積1平方インチ当たり約400(1平方センチメートル当たり約62)の流路を含む一体化支
持体を、ウオッシュコートに浸した。過剰量を圧縮空気により一体化物から吹き飛ばした。450℃で焼成後に得られる一体化触媒は、パラジウム100g/ft(3.53kg/m)、アルミナ1.23g/in(0.075g/cm)、La0.19g/in(0.012g/cm)、ZrO0.1g/in(0.006g/cm)、酸化ストロンチウム0.1g/in(0.006g/cm)、及びNd.0.16g/in(0.009g/cm)を含んだ。
【0064】
この組成物において、酸化セリウム又は酸化プラセオジムのような酸素貯蔵物質を使用しなかった。低ライト−オフ温度を与えるために、高有効性のパラジウム成分を使用した。酸素貯蔵成分の不存在は、一酸化炭素を、近位連結触媒を迂回させ、床下触媒に達しさせることを可能にした。これは近位連結触媒の最高温度を低下させ、触媒の耐久性を高め、床下触媒の温度及び効率を向上させる。
【0065】
実施例2(対照例)
実施例1に記述したものと同一の付加量を有する2層触媒を両層の組み合わせで用いることにより、触媒ウオッシュコート組成物をコーテイングした一体化触媒構造体を製造した。この対照例においては、組成物は共生成物セリア−ジルコニア複合物0.4g/in(0.024g/cm)、硝酸セリウムとしてスラリーに導入されたセリア0.3g/in(0.018g/cm)及び水酸化セリウムとして導入されたセリア0.23g/in(0.014g/cm)を更に含んだ。
【0066】
試験
実施例1及び2の一体化物から、直径1.5インチ、長さ3インチのシリンダーとして、触媒ハニカム構造体試料を取り出した。このシリンダーの軸はハニカムの通路の軸に平行であった。各試料をそれぞれ950℃、10%水蒸気空気中で12時間エージングした。エージング後、触媒試料を、実験室反応器により、50000VHSV(ガス容量/時/触媒容量)下にモデル排ガス組成物(供給ガス)に関して評価した。一定状態のガス組成はCO 0.33モル%、00.41モル%、CO15.80モル%、HO 10モル%、HC528ppm,NOx1500ppm,SOx45ppm及び残りNからなった。反応器の温度を室温から500℃までえ徐々に上げながら、HC/CO/NOxを測定した。炭化水素の濃度はフレーム・イオン化検知器(FID)で、一酸化炭素の濃度は赤外分析器で、そしてNOx濃度は化学発光分析器で測定した。ライト−オフ温度の結果を表Iに示す。このライト−オフ温度は転化率が50%になる温度である。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に要約される結果は、実施例1の触媒が対照例の触媒より低いCO,HC及びNOxに対するライト−オフ温度を持つことを示す。これは近位連結触媒における反応がより低温で始まり、またその温度で効果的であることを示す。
【0069】
実施例3、対照例4
実施例3において、酸化バリウムを含まない以外実施例1と同様の組成物を有する一体
化触媒を、直径3インチ及び長さ3インチの、切り取った断面積1平方インチ当たり350の通路を有するコーデイエライトにコーテイングし、4.6リットルエンジンの排ガスを用いて85時間エージングした。触媒入口におけるエンジン排ガスの最高温度は920℃であった。エージング後、州試験法(FTP)1975に従って、1.9リットルの自動車に関して評価した。対照例4は同一の基材を用いる対照例2と同一の組成物であり、実施例3と同一の方法で試験した。HC/CO/NOx転化率の結果を表IIに示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表IIに要約する結果は、実施例3の触媒が対照例の触媒より高いHC及びNOx転化率並びに低いCO転化率を有することを示す。この高いHC/NOx活性はエンジンエージング後の実施例3の触媒組成物における高いPd活性と関係するものである。対照例4における高いCO転化率は、CO転化率を高めることが知られるウオッシュコート中に導入されたセリアのためである。CO転化率は、実施例3に酸素貯蔵成分セリアを含有させないことにより、近位連結触媒での反応が制御され、COを床下触媒へ通過せしめた。近位連結触媒におけるCOの酸化の低下は、より低い運転温度とより大きい耐久性をもたらす。床下触媒へ送られたCOは、酸化され、床下触媒をより熱い条件下で運転せしめることになり、より効率よく排ガスが除去される。対照例4は床下触媒として有用である。
【0072】
本明細書に開示され、記述され且つ例示される本発明の好適な形態に対する改変、変化及び改良は、本発明の本質及び教示を理解した同業者にとって想起されることである。従って、ここに発効される本特許の範囲は、個々に示す本発明の特別な具体例に限定されず、むしろ本発明が技術を押し進めた利点によって制限されるべきである。
【0073】
以下に本発明の主な特徴及び態様を列挙する。
【0074】
1.排ガス出口を有するガソリンエンジン、及び
酸素貯蔵成分を実質的に有さない近位連結触媒組成物を含んでなる、排ガス出口に通じる近位連結触媒、
を含んでなり、但し該触媒組成物が、
担体、
パラジウム成分、
随時酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び酸化バリウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、
随時白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される少なくとも1つの白金族金属、及び
随時、酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物、
随時第2の酸化ジルコニウム、
を含んでなる、製品。
【0075】
2.酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物を更に含んでなる、1項の製品。
【0076】
3.酸化ネオジム及び酸化ランタンを更に含んでなる、1項の製品。
【0077】
4.第2の酸化ジルコニウムを更に含んでなる、1項の製品。
【0078】
5.担体がシリカ、アルミナ、チタニア及び第1のジルコニア化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでなる、1項の製品。
【0079】
6.担体がアルミナ、シリカ、第二のジルコニア及びシリカ−アルミナ、アルミナ−シリケ−ト、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、及びアルミナ−セリアからなる群から選択される少なくとも1つの活性化合物を含んでなる、5項の製品。
【0080】
7.担体が活性アルミナを含んでなる、6項の層状触媒複合物。
【0081】
8.アルカリ金属酸化物が酸化ストロンチウムである、1項の製品。
【0082】
9.近位連結触媒が近位連結触媒組成物を支持する近位連結触媒支持体を更に含んでなる、1項の製品。
【0083】
10.支持体がハニカム支持体である、9項の製品。
【0084】
11.活性アルミナ担体約0.50〜約3.5g/in
パラジウム成分少なくとも約50.0g/ft、及び
少なくとも1つのアルカリ土類金属成分約0.05〜約0.5g/in
が存在する、10項の製品。
【0085】
12.ストロンチウム約0.05〜約0.4g/in
第2の酸化ジルコニウム約0.0〜約0.5g/in、及び
酸化ランタン及び酸化ネオジムからなる群から選択される少なくとも1つの希土類金属酸化物約0.0〜約0.5g/in
が存在する、11項の製品。
【0086】
13.ロジウム成分が約20.0g/ftまで存在する、11項の製品。
【0087】
14.白金成分が約60.0g/ftまで存在する、11項の製品。
【0088】
15.パラジウム成分が約75〜約300g/ftで存在する、11項の製品。
【0089】
16.パラジウム成分が約75〜約300g/ft
活性アルミナ担体約0.75〜約2.0g/in
ストロンチウム約0.05〜約0.4g/in
酸化バリウム約0.05〜約0.2g/in
酸化ランタン約0.025〜約0.3g/in
酸化ネオジム約0.025〜約0.3g/in、及び
第2の酸化ジルコニウム約0.05〜約0.5g/in
が存在する10項の製品。
【0090】
17.近位連結触媒の下流で、これに通じるスリ−ウエイ触媒を更に含んでなる、1項の製品。
【0091】
18.近位連結触媒の下流に位置し且つこれに通じる下流触媒を更に含んでなり、但し下流触媒が酸素貯蔵成分を含んでなる、1項の製品。
【0092】
19.排ガス出口を有するガソリンエンジン、
セリウム成分及びプラセオジム成分からなる群から選択される酸素貯蔵成分を実質的に有さない近位連結触媒組成物を含んでなる、排ガス出口に通じる近位連結触媒、
を含んでなり、但し該触媒組成物が、
担体、
パラジウム成分、
随時酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び酸化バリウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、
随時白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される少なくとも1つの白金族金属、
随時酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物、及び
随時第2の酸化ジルコニウム、並びに
セリウム成分及びプラセオジム成分からなる群から選択される酸素貯蔵成分を含んでなる、近位連結触媒の下流に位置し且つこれに通じる下流触媒、
を含んでなる、製品。
【0093】
20.排ガス出口を有するガソリンエンジンを運転し、
一酸化炭素及び炭化水素、随時窒素酸化物を含んでなる排ガス流を、ガソリンエンジンの排ガス出口から近位連結触媒組成物を含んでなる近位連結触媒へ通し、
排ガスを、酸素貯蔵成分を実質的に有さない近位連結触媒組成物と接触させ、但し該触媒組成物が、
支持体、
パラジウム成分、
随時酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び酸化バリウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、
随時白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される少なくとも1つの白金族金属、
随時酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物、及び
随時第2の酸化ジルコニウム、
を含んでなり、そして
炭化水素の少なくともいくらか及び一酸化炭素の一部分だけを、近位連結触媒の存在下に酸化する、
工程を含んでなる方法。
【0094】
21.近位連結触媒における酸素が実質的に排ガス流から及びパラジウム成分から供給される酸素から直接与えられる、20項の方法。
【0095】
22.排ガスを近位連結触媒から下流触媒へ通す工程を更に含んでなる、21項の方法。
【0096】
23.近位連結触媒から下流触媒への排ガス流が一酸化炭素を含んでなる、22項の方
法。
【0097】
24.近位連結触媒から下流触媒への排ガス流が、FTP1975に従って測定したとき、近位連結触媒へ通過する一酸化炭素の少なくとも10%を含んでなる、22項の方法。
【0098】
25.一酸化炭素の少なくとも25%が近位連結触媒から通過する、24項の方法。
【0099】
26.一酸化炭素の少なくとも30%が近位連結触媒から通過する、25項の方法。
【0100】
27.一酸化炭素の少なくとも40%が近位連結触媒から通過する、26項の方法。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の好適な具体例を示す自動車の系統図である。
【図2】床下触媒に通じて使用される近位連結触媒を示す系統図である。
【図3】近位連結触媒が酸素貯蔵成分例えばセリアを含んでなる第2のスリーウエイ触媒と単一のハウジング内で組み合わされた本発明の他の具体例である。
【図4】近位連結触媒が下流触媒に通じて使用され且つ該触媒から離れて位置する本発明の他の具体例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス出口または排ガスマニホールド出口を有するガソリンエンジン、
セリウム成分及びプラセオジム成分からなる群から選択される酸素貯蔵成分を有さない、近位連結触媒組成物を含んでなり、エンジン排ガス出口または排ガスマニホールド出口から30.48cm(1ft)以下に位置し、排ガス出口に通じる、近位連結触媒、
を含んでなり、但し該触媒組成物が、
活性アルミナを含んでなる担体、
近位連結触媒が少なくとも1.77kg/m(50g/ft)で17.7kg/m(500g/ft)までのパラジウムを含んでなるような量のパラジウム成分、および、
マグネシウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる金属に由来するアルカリ土類金属化合物、
を含んでなる製品であって、
下流触媒が近位連結触媒の下流に位置し且つ近位連結触媒に通じ、下流触媒がセリウム成分及びプラセオジム成分からなる群から選択される酸素貯蔵成分を含んでなる、
上記製品。
【請求項2】
近位連結触媒組成物が酸化ネオジム及び酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物を更に含んでなる、請求項1の製品。
【請求項3】
近位連結触媒組成物が酸化ネオジム及び酸化ランタンを更に含んでなる、請求項1の製品。
【請求項4】
近位連結触媒組成物が酸化ジルコニウム安定剤を更に含んでなる、請求項1の製品。
【請求項5】
近位連結触媒が近位連結触媒組成物を支持する近位連結触媒支持体を更に含んでなる、請求項1の製品。
【請求項6】
支持体がハニカム支持体からなる、請求項5の製品。
【請求項7】
近位連結触媒が、
パラジウム成分2.65〜10.6kg/m(75〜300g/ft
活性アルミナ担体0.045〜0.12g/m(0.75〜2.0g/in
酸化ストロンチウム成分0.003〜0.024g/cm(0.05〜0.4g/in
酸化バリウム成分0.003〜0.012g/cm(0.05〜0.2g/in
酸化ランタン0.0015〜0.018g/cm(0.025〜0.3g/in
酸化ネオジウム0.0015〜0.018g/cm(0.025〜0.3g/in)、及び
酸化ジルコニウム0.003〜0.03g/cm(0.05〜0.5g/in
を含んでなる、請求項5の製品。
【請求項8】
下流触媒がスリーウェイ触媒である、請求項1の製品。
【請求項9】
近位連結触媒組成物が酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び酸化バリウムからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属酸化物を含んでなる請求項1の製品。
【請求項10】
アルカリ金属酸化物が酸化ストロンチウムである請求項9の製品。
【請求項11】
近位連結触媒組成物が白金、ロジウム、ルテニウム及びイリジウム成分からなる群から選択される少なくとも1つの白金族金属成分を更に含んでなる請求項1の製品。
【請求項12】
近位連結触媒が、
活性アルミナ担体0.03〜0.21g/cm(0.50〜3.5g/in
パラジウム成分少なくとも1.77kg/m(50g/ft
少なくとも1つのアルカリ土類金属成分0.003〜0.03g/cm(0.05〜0.5g/in
を含んでなる請求項6の製品。
【請求項13】
近位連結触媒が、
酸化ストロンチウム0.003〜0.024g/cm(0.05g/in〜0.4g/in
第2の酸化ジルコニウム0.0〜0.03g/cm(0.0〜0.5g/in
酸化ランタン及び酸化ネオジムからなる群から選択される少なくとも1つの希土類酸化物0.0〜0.03g/cm(0.0〜0.5g/in
を含んでなる請求項12の製品。
【請求項14】
近位連結触媒が、ロジウム成分706g/m(20g/in)を含んでなる請求項12の製品。
【請求項15】
近位連結触媒が、白金成分2.12kg/m(60g/in)を含んでなる請求項12の製品。
【請求項16】
近位連結触媒が、パラジウム成分2.65〜10.60kg/m(75〜300g/in)を含んでなる請求項12の製品。
【請求項17】
担体上の近位連結触媒および担体上の下流触媒が配置されたカニスターを更に含んでなり、下流触媒がスリーウエイ触媒である請求項1の製品。
【請求項18】
下流触媒が、ハニカム支持体を含んでなり、ハニカム支持体を含んでなり近位連結カニスター中にある近位連結触媒に隣り合っている、請求項17の製品。
【請求項19】
下流触媒が、ハニカム支持体を含んでなり、ハニカム支持体を含んでなり近位連結カニスター中にある近位連結触媒から離れている、請求項17の製品。
【請求項20】
下流触媒が床下触媒であり、容量当たりの重量に基づく近位連結触媒の相対量が下流触媒組成物および床下触媒組成物の合計の1/20〜1/2である請求項1の製品。
【請求項21】
近位連結触媒が排ガス出口又は排ガスマニホールドから15.24cm(6インチ)までに位置している請求項1の製品。
【請求項22】
近位連結触媒が排ガス出口又は排ガスマニホールドに直接連結した請求項1の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216227(P2007−216227A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130444(P2007−130444)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【分割の表示】特願平8−517569の分割
【原出願日】平成7年9月12日(1995.9.12)
【出願人】(591044371)エンゲルハード・コーポレーシヨン (43)
【氏名又は名称原語表記】ENGELHARD CORPORATION
【Fターム(参考)】