説明

迷走度検出装置及び迷走度検出方法

【課題】車両の迷走状態をオンタイムで検出する。
【解決手段】運転特徴算出手段3が、車両が右左折動作状態にある時のジャークJの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出し、迷走度判断手段6が、運転特徴算出手段3により算出された運転特徴に基づいて車両の迷走度を判断する。これにより、同一地点やその近傍領域の通過回数,不必要なウインカー操作回数,不必要なレーンチェンジ回数等の車両が迷走状態にある時に現れる運転者の特徴的な動作を検出する前に車両の迷走状態を検出できるので、車両の迷走状態をオンタイムで検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転時の運転者の迷走度を検出する迷走度検出装置及び迷走度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、同一地点やその近傍領域の通過回数,不必要なウインカー操作回数,不必要なレーンチェンジ回数から車両の迷走状態を検出し、車両が迷走状態にある場合、走行中の道路の名称,車両の進行方向にある道路の名称や地名を提示することにより、車両が現在どの地点を走行しているのかを運転者に迅速に知らせる走行情報提供装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平10−122881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記走行情報提供装置は、車両が迷走状態にある時に現れる運転者の特徴的な動作を検出することにより車両の迷走状態を検出しているために、車両の迷走状態をオンタイムに検出し、運転者が道に迷いそうになった時に情報提供を開始することができない。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の迷走状態をオンタイムで検出することが可能な迷走度検出装置及び迷走度検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明に係る迷走度検出装置及び迷走度検出方法は、自車両の車速の二階微分値をジャークとして算出し、所定の走行状態が検出されるのに応じて、算出されたジャークを利用して所定の走行状態における運転特徴を算出し、算出された運転特徴を利用して運転者の迷走度を判断する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るに迷走度検出装置及び迷走度検出方法によれば、ジャークを利用して算出された所定の走行状態における運転特徴に基づいて運転者の迷走度を判断するので、車両が迷走状態にある時に現れる運転者の特徴的な動作を検出する前に車両の迷走状態を検出し、車両の迷走状態をオンタイムで検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願発明の発明者らは、精力的な研究を重ねてきた結果、車両が迷走状態になる際、自車両の車速の二階微分値、すなわちジャークに特徴が現れることを知見し、このジャークをモニタすることにより車両の迷走状態をオンタイムに検出することができるという技術的思想を想到するに至った。以下、図面を参照して、この技術的思想に基づいてなされた本発明の第1,第2の実施形態となる迷走度検出装置の構成と動作について説明する。
【実施例1】
【0008】
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態となる迷走度検出装置の構成と動作について説明する。
【0009】
〔迷走度検出装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる迷走度検出装置1は、図1に示すように、前処理手段2,運転特徴算出手段3,右左折判断手段4,右左折時運転特徴データベース5,迷走度判断手段6,及び割込メッセージ作成手段7を主な構成要素として備え、車両が迷走状態にあると判断された際、液晶ディスプレイ等の表示装置8に地図を確認することを運転者に促す割込メッセージを表示するように構成されている。なお、前処理手段2,運転特徴算出手段3,右左折判断手段4,迷走度判断手段6,及び割込メッセージ作成手段7の各構成要素は、車載コンピュータ11が各構成要素の機能(動作)を規定したコンピュータプログラムを実行することにより実現される。また、右左折時運転特徴データベース5は、車載コンピュータ11内部のメモリやCD−ROM等の記録媒体内に保存され、使用時に読み出される構成になっている。また、この実施形態では、上記車載コンピュータ11には、自車両の車速を検出する車輪速センサ等の車速検出手段12と、ウインカーレバーの操作やステアリングの切れ角を検出することにより自車両の右左折動作を検出する右左折検出手段13とが接続されている。
【0010】
そして、このような構成を有する迷走度検出装置1は、以下に示す迷走度検出処理を実行することにより、車両の迷走状態をオンタイムで検出し、運転者が道に迷いそうになった時に情報提供を開始する。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この迷走度検出処理を実行する際の迷走度検出装置1の動作について詳しく説明する。
【0011】
〔迷走度検出処理〕
図2に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオン状態になり、迷走度検出装置1に電源が供給されるのに応じて開始となり、迷走度検出処理はステップS1の処理に進む。
【0012】
ステップS1の処理では、右左折判断手段4が、右左折検出手段13を介して車両が右左折動作状態にあるか否かを判別する。そして、車両の右左折動作が検出されるのに応じて、右左折判断手段4は迷走度検出処理をステップS2の処理に進める。
【0013】
ステップS2の処理では、前処理手段2が、車速検出手段12を介して車速Vを検出し、以下に示す数式1を利用することにより、検出された車速Vの二階微分値(以下、ジャークと表記)Jを算出する。なお、数式1中のパラメータAは自車両の加速度を示す。また、この実施形態では、前処理手段2は、車両の右左折動作が検出されるのに応じてジャークJを算出することとしたが、車両走行中常にジャークJを算出し、車両の右左折動作が検出されるのに応じて後述のステップS3以後の処理を実行させるようにしてもよい。これにより、このステップS2の処理は完了し、この迷走度検出処理はステップS2の処理からステップS3の処理に進む。
【数1】

【0014】
ステップS3の処理では、運転特徴算出手段3が、算出されたジャークの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出し、図3に示すように、算出された運転特徴を現在日時情報と関連付けさせて右左折時運転特徴データベース5に記録する。なお、運転特徴算出手段3は、車両の現在位置情報を取得し、算出された運転特徴を車両の現在位置情報と現在日時情報と関連付けさせて右左折時運転特徴データベース5に記録してもよい。これにより、このステップS3の処理は完了し、この迷走度検出処理はステップS3の処理からステップS4の処理に進む。
【0015】
ステップS4の処理では、迷走度判断手段6が、運転特徴算出手段3により算出されたジャークの最大値が所定値以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、ジャークの最大値が所定値以下でない場合、迷走度判断手段6は、車両は迷走状態にないと判断し、一連の迷走度検出処理を終了する。具体的には、ジャークの最大値が7.0[m/s]以上である場合、緊急度が高く、外的要因による右左折動作であると予想されるので、迷走度判断手段6は、一連の迷走度検出処理を終了する。一方、ジャークの最大値が所定値以下である場合には、迷走度判断手段6は迷走度検出処理をステップS5の処理に進める。
【0016】
ステップS5の処理では、迷走度判断手段6が、運転特徴算出手段3により算出されたジャークの平均値と発生時間の積を運転者の迷走度として算出する。これにより、このステップS5の処理は完了し、この迷走度検出示処理はステップS5の処理からステップS6の処理に進む。
【0017】
ステップS6の処理では、迷走度判断手段6が、ステップS5の処理により算出された迷走度が所定値以上であるか否かを判別する。具体的には、ジャークは、通常の減速時にも0.5〜4.0[m/s]程度の大きさで発生していることが知られており、右左折時についても同様であると考えられる。従って、4.0[m/s]以内の大きさのジャークが減速初期の立ち上がり時間(0.2[s]程度)発生する状態は通常の動作状態であると考えられ、この時の状態の迷走度は|4.0[m/s]|×0.2[s]=0.8となる。そこで、この実施形態では、迷走度判断手段6は、算出された迷走度が0.8以上である場合、迷走によって運転のスムーズさが失われ、車両が迷走状態にあると判断する。そして、判別の結果、迷走度が所定値以上でない場合、迷走度判断手段6は、一連の迷走度検出処理を終了する。一方、迷走度が所定値以上である場合には、迷走度判断手段6は、車両が迷走状態にあると判断して、この迷走度検出処理をステップS7の処理に進める。
【0018】
ステップS7の処理では、割込メッセージ作成手段7が、運転者に地図確認を促す割込メッセージを作成し、作成した割込メッセージを表示装置8に表示する。これにより、このステップS7の処理は完了し、一連の迷走度検出処理は終了する。
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる迷走状態検出装置1によれば、運転特徴算出手段3が、車両が右左折動作状態にある時のジャークJの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出し、迷走度判断手段6が、運転特徴算出手段3により算出された運転特徴に基づいて車両の迷走度を判断する。そして、このような構成によれば、同一地点やその近傍領域の通過回数,不必要なウインカー操作回数,不必要なレーンチェンジ回数等の車両が迷走状態にある時に現れる運転者の特徴的な動作を検出する前に車両の迷走状態を検出することができるので、車両の迷走状態をオンタイムで検出することができる。
【0020】
また、本発明の第1の実施形態となる迷走状態検出装置1によれば、運転特徴算出手段3により算出された運転特徴は右左折時運転特徴データベース5に記録されるので、右左折時運転特徴データベース5を参照して、車両の現在位置や運転者により設定された目的地までの経路における運転者の迷走度を推定することができる。
【0021】
また、本発明の第1の実施形態となる迷走状態検出装置1によれば、車両が迷走状態にあると判断された際、割込メッセージ作成手段7が、運転者に地図確認を促す割込メッセージを作成し、作成した割込メッセージを表示装置8に表示するので、運転者が道に迷いそうになった際に必要な情報を速やかに提示することができる。
【実施例2】
【0022】
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の第2の実施形態となる迷走度検出装置の構成と動作について説明する。
【0023】
〔迷走度検出装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる迷走度検出装置21は、図4に示すように、前処理手段2,運転特徴算出手段3,迷走度判断手段6,割込メッセージ作成手段7,カーブ判断手段22,及びカーブ時運転特徴データベース23を主な構成要素として備える。なお、前処理手段2,運転特徴算出手段3,迷走度判断手段6,割込メッセージ作成手段7,及びカーブ判断手段22の各構成要素は、車載コンピュータ11が各構成要素の機能(動作)を規定したコンピュータプログラムを実行することにより実現される。また、カーブ時運転特徴データベース23は、車載コンピュータ11内部のメモリやCD−ROM等の記録媒体内に保存され、使用時に読み出される構成になっている。また、この実施形態では、上記車載コンピュータ11には、自車両の車速を検出する車輪速センサ等の車速検出手段12と、ステアリングの切れ角を検出する舵角センサ等のカーブ検出手段24とが接続されている。
【0024】
そして、このような構成を有する迷走度検出装置21は、以下に示す迷走度検出処理を実行することにより、車両の迷走状態をオンタイムで検出し、運転者が道に迷いそうになった時に情報提供を開始する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この迷走度検出処理を実行する際の迷走度検出装置21の動作について詳しく説明する。
【0025】
〔迷走度検出処理〕
図5に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオン状態になり、迷走度検出装置21に電源が供給されるのに応じて開始となり、迷走度検出処理はステップS21の処理に進む。なお、図5に示すステップS24以後の処理は、図2に示すステップS4以後の処理と同じであるので、以下ではステップS21乃至ステップS23の処理についてのみ説明する。
【0026】
ステップS21の処理では、カーブ判断手段22が、カーブ検出手段24を介して車両がカーブ走行状態にあるか否かを判別する。そして、車両がカーブ走行状態にあることが検出されるのに応じて、カーブ判断手段22は迷走度検出処理をステップS22の処理に進める。
【0027】
ステップS22の処理では、前処理手段2が、車速検出手段12を介して車速Vを検出し、検出された車速Vを利用してジャークJを算出する。これにより、このステップS22の処理は完了し、この迷走度検出処理はステップS22の処理からステップS23の処理に進む。
【0028】
ステップS23の処理では、運転特徴算出手段3が、ジャークの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出し、図6に示すように、算出された運転特徴を現在日時情報と関連付けさせてカーブ時運転特徴データベース23に記録する。なお、運転特徴算出手段3は、車両の現在位置情報を取得し、算出された運転特徴を車両の現在位置情報と現在日時情報と関連付けさせて右左折時運転特徴データベース5に記録してもよい。これにより、このステップS23の処理は完了し、この迷走度検出処理はステップS23の処理からステップS24の処理に進む。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる迷走状態検出装置21によれば、運転特徴算出手段3が、カーブ走行時のジャークJの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出し、迷走度判断手段6が、運転特徴算出手段3により算出された運転特徴に基づいて車両の迷走度を判断する。そして、このような構成によれば、同一地点やその近傍領域の通過回数,不必要なウインカー操作回数,不必要なレーンチェンジ回数等の車両が迷走状態にある時に現れる運転者の特徴的な動作を検出する前に車両の迷走状態を検出することができるので、車両の迷走状態をオンタイムで検出することができる。
【0030】
また、本発明の第2の実施形態となる迷走状態検出装置21によれば、運転特徴算出手段3により算出された運転特徴はカーブ時運転特徴データベース23に記録されるので、カーブ時運転特徴データベース23を参照して、車両の現在位置や運転者により設定された目的地までの経路における運転者の迷走度を推定することができる。
【0031】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態となる迷走度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる迷走度検出処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】図1に示す右左折時運転特徴データベースの内部構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態となる迷走度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となる迷走度検出処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】図4に示すカーブ時運転特徴データベースの内部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1,21:迷走度検出装置
2:前処理手段
3:運転特徴算出手段
4:右左折判断手段
5:右左折時運転特徴データベース
6:迷走度判断手段
7:割込メッセージ作成手段
8:表示装置
11:車載コンピュータ
12:車速検出手段
13:右左折検出手段
22:カーブ判断手段
23:カーブ時運転特徴データベース
24:カーブ検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速の二階微分値をジャークとして算出する前処理手段と、
前記自車両の走行状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により所定の走行状態が検出されるのに応じて、前記前処理手段により算出されたジャークを利用して当該所定の走行状態における運転特徴を算出する運転特徴算出手段と、
前記運転特徴算出手段により算出された運転特徴を利用して運転者の迷走度を判断する迷走度判断手段と、
前記迷走度判断手段により判断された運転者の迷走度に応じて所定の処理を実行する処理手段と
を備えることを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の迷走度検出装置であって、
前記検出手段は、前記自車両の右左折動作及び曲線路走行の少なくとも一方を検出することを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の迷走度検出装置において、
前記運転特徴算出手段は、前記ジャークの平均値、最大値、及び発生時間を運転特徴として算出することを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の迷走度検出装置において、
前記迷走度判断手段は、前記ジャークの平均値と発生時間の積を迷走度として算出することを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の迷走度検出装置において、
前記迷走度判断手段は、前記ジャークの最大値が所定値以上である場合、迷走度を算出しないことを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載の迷走度検出装置において、
前記運転特徴算出手段により算出された運転特徴を車両の現在位置情報と関連付けして記録する運転特徴データベースを備えることを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の迷走度検出装置において、
設定された目的地までの経路を探索する経路探索手段を備え、
前記迷走度判断手段は、前記運転特徴データベースを参照して、前記経路探索手段により探索された経路における運転者の迷走度を判断することを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち、いずれか1項に記載の迷走度検出装置において、
前記処理手段は、所定の処理として、地図を確認することを運転者に促すメッセージを提示する処理を実行することを特徴とする迷走度検出装置。
【請求項9】
自車両の車速の二階微分値をジャークとして算出するステップと、
前記自車両の走行状態を検出するステップと、
所定の走行状態が検出されるのに応じて、ジャークを利用して当該所定の走行状態における運転特徴を算出するステップと、
前記運転特徴を利用して運転者の迷走度を判断するステップと、
前記運転者の迷走度に応じて所定の処理を実行するステップと
を有することを特徴とする迷走度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−47083(P2006−47083A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227809(P2004−227809)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】