説明

追尾アンテナ装置、追尾制御方法およびそのプログラム

【課題】 固有の振幅誤差や位相誤差を補正し、さらに雑音の影響を低減したモノパルス方式を実現し、高い指向精度を達成する。
【解決手段】 アンテナは、目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を備え、各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する和信号・差信号生成手段と、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の振幅誤差を保有する経路上振幅誤差保有手段と、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の位相誤差を保有する経路上位相誤差保有手段と、和信号レベルおよび差信号レベルと振幅誤差を用いて受信信号間の位相差を算出する受信信号間位相差算出手段と、受信信号間の位相差と経路上位相誤差保有手段から入力する位相誤差を用いて、アンテナの指向誤差角を算出して指向方向可変手段に出力する指向誤差角算出・制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体に搭載され、電波を発する目標物を自動追尾する追尾アンテナ装置、追尾制御方法およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、飛行機、電車、自動車などの移動体において、衛星放送の受信や衛星通信を利用した高速インターネットアクセスを実現するためには、移動中においても衛星を精度よく追尾するアンテナ装置が必要になる。衛星からの電波を利用したアンテナ追尾方式には、モノパルス方式やステップトラック方式などがある。
【0003】
モノパルス方式は、2つ以上の給電部をもつアンテナを使用し、衛星に正対している状態(指向誤差角0度)のときに、各給電部の受信信号の位相差が0度であることを利用し、指向誤差が生じると受信信号間に位相差が生じるため、これを指向誤差角として検出してアンテナの方向を制御する方式である。一方、ステップトラック方式は、アンテナの指向方向を変化させながら、最も受信レベルが高くなる方向を探索する方式である。
【0004】
モノパルス方式は指向誤差角を直接求めることができるが、ステップトラック方式は誤差を与えながら徐々に指向誤差を補正する方式であることから、精度ではモノパルス方式が優れている。このモノパルス方式には様々な方式が提案されており、例えば特許文献1では、2つのアンテナ給電部の各受信信号の積の直流成分と、各受信信号の一方を90°移相した信号との積の直流成分とを利用し、受信信号間の位相差を求めている。
【特許文献1】特許2641544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際には2つの給電部からの経路上には、周波数に依存する固有の振幅誤差や位相誤差が存在し、モノパルスによる指向誤差角の算出精度の劣化要因になっている。また、衛星通信などでは受信レベルが低いために相対的に雑音レベルが高く、これも指向誤差角の算出精度の劣化要因になっている。特に、受信信号間の位相差が0°付近、すなわち通常のモノパルスでは指向誤差角0°付近では雑音の影響が顕著になる。
【0006】
本発明は、固有の振幅誤差や位相誤差を補正し、さらに雑音の影響を低減したモノパルス方式を実現し、高い指向精度をもつ追尾アンテナ装置、追尾制御方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置において、アンテナは、目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を備え、各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する和信号・差信号生成手段と、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の振幅誤差を保有する経路上振幅誤差保有手段と、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の位相誤差を保有する経路上位相誤差保有手段と、和信号・差信号生成手段から入力する和信号レベルおよび差信号レベルと、経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて、受信信号間の位相差を算出する受信信号間位相差算出手段と、受信信号間位相差算出手段から入力する受信信号間の位相差と、経路上位相誤差保有手段から入力する位相誤差を用いて、アンテナの指向誤差角を算出して指向方向可変手段に出力する指向誤差角算出・制御手段とを備える。
【0008】
第2の発明は、アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置において、アンテナは、目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を備え、各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する和信号・差信号生成手段と、和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較するレベル比較手段と、和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、レベル比較手段の比較結果により和信号レベルが高い場合は、和信号ベクトルを差信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、レベル比較手段の比較結果により差信号レベルが高い場合は、差信号ベクトルを和信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力するベクトル補正手段と、ベクトル補正手段から補正後和信号ベクトルおよび補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルから受信信号間の位相差を算出する受信信号間位相差算出手段と、受信信号間位相差算出手段から入力する受信信号間の位相差から、アンテナの指向誤差角を算出して指向方向可変手段に出力する指向誤差角算出・制御手段とを備える。
【0009】
第3の発明は、第1の発明の構成に加えて、和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較するレベル比較手段と、和信号・差信号生成手段から入力する和信号ベクトルおよび差信号ベクトルと、経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて、和信号ベクトルと差信号ベクトルのベクトル間角度を算出するベクトル間角度算出手段と、和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、レベル比較手段の比較結果により和信号レベルが高い場合は、和信号ベクトルを差信号ベクトル方向へベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、レベル比較手段の比較結果により差信号レベルが高い場合は、差信号ベクトルを和信号ベクトル方向へベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力するベクトル補正手段とを備え、受信信号間位相差算出手段は、補正後和信号ベクトルおよび補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルと経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて受信信号間の位相差を算出する構成である。
【0010】
第3の発明におけるベクトル補正手段は、和信号レベルが高い場合は和信号の品質を監視し、該品質が所定の品質より高い場合は差信号ベクトルの補正を行わない構成であり、差信号レベルが高い場合は差信号の品質を監視し、該品質が所定の品質より高い場合は和信号ベクトルの補正を行わない構成である。
【0011】
第1の発明または第2の発明における指向方向可変手段は、アンテナの受信信号の位相を変えることによりアンテナの指向方向を変える構成であり、指向誤差角算出・制御手段は、指向誤差角から指向方向可変手段に与える位相を算出する位相算出手段を含む構成である。この位相算出手段は、受信信号の波長と異なる波長を用いて算出する構成である。
【0012】
第4の発明は、アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾制御方法において、アンテナは、目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を有し、各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する第1のステップと、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の振幅誤差を保有する第2のステップと、指向誤差がない状態で予め計測された受信信号間の位相誤差を保有する第3のステップと、第1のステップで得られた和信号レベルおよび差信号レベルと、第2のステップで保有している振幅誤差を用いて、受信信号間の位相差を算出する第4のステップと、第4のステップで得られた受信信号間の位相差と、第3のステップで保有している位相誤差を用いて、アンテナの指向誤差角を算出して指向方向可変手段に出力する第5のステップとを有する。
【0013】
第5の発明は、アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾制御方法において、アンテナは、目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を有し、各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する第1のステップと、第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較する第2のステップと、第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、第2のステップの比較結果により和信号レベルが高い場合は、和信号ベクトルを差信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、第2のステップの比較結果により差信号レベルが高い場合は、差信号ベクトルを和信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力する第3のステップと、第3のステップで得られた補正後和信号ベクトルおよび補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルから受信信号間の位相差を算出する第4のステップと、第4のステップで得られた受信信号間の位相差から、アンテナの指向誤差角を算出して指向方向可変手段に出力する第5のステップとを有する。
【0014】
第6の発明は、第4の発明において、第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較する第6のステップと、第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルと、第2のステップで保有する振幅誤差を用いて、和信号ベクトルと差信号ベクトルのベクトル間角度を算出する第7のステップと、第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、第6のステップの比較結果により和信号レベルが高い場合は、和信号ベクトルを差信号ベクトル方向へベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、第6のステップの比較結果により差信号レベルが高い場合は、差信号ベクトルを和信号ベクトル方向へベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力する第8のステップとを有し、第4のステップは、補正後和信号ベクトルおよび補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルと第2のステップで保有する振幅誤差を用いて受信信号間の位相差を算出する。
【0015】
第7の発明は、第4の発明〜第6の発明のいずれかに記載の各ステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、2つ以上の給電部からの受信信号を用いて指向誤差角を算出するモノパルス方式において、経路上の振幅誤差および位相誤差を補正した指向誤差角を算出することができ、精度の高いモノパルス方式を実現し、追尾アンテナ装置の高精度化が可能となる。
【0017】
さらに、本発明は、雑音の影響を低減した指向誤差角を算出することができ、精度の高いモノパルス方式を実現し、追尾アンテナ装置の高精度化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の追尾アンテナ装置に用いるアンテナの一例の概略構成を示す。図2は、本発明の追尾アンテナ装置の回路構成の一例を示す。ここでは、移動体のルーフなどに設置するための追尾アンテナ装置を想定しており、特に薄型化のために方位角方向には機械的にアンテナを回転させ、仰角方向には電子的にビームを走査する1次元のフェーズドアレイアンテナを示す。以下、仰角方向の追尾制御の例として、アンテナの指向誤差角を求め、その指向誤差角に基づいてフェーズドアレイアンテナの移相器に設定する位相を制御する例を示すが、通常の平面アンテナを用いる場合には、求めた指向誤差角に基づいて指向方向を機械的に制御する構成となる。
【0019】
図1および図2において、アンテナは、仰角方向にアンテナ面を2分割して構成される給電部1,2を有し、モノパルスで指向誤差角を検出するものとする。給電部1の受信信号E1 および給電部2の受信信号E2 は和信号・差信号生成部5に入力されるが、ここでは給電部2と和信号・差信号生成部5との間に、実遅延線路(TTD)3および移相器(PS)4が挿入される。なお、和信号・差信号生成部5としては、例えば 180°ハイブリッドが用いられる。和信号・差信号生成部5から出力される和信号Σおよび差信号Δは指向誤差角算出・制御部10に入力され、所定の演算処理により指向誤差角を検出し、その指向誤差角に基づいて移相器4の位相を算出し、移相器4に設定する。このとき算出する位相は、受信信号の波長と異なる波長を用いて算出するようにしてもよい。
【0020】
実遅延線路3は仰角方向の周波数依存性を低減するために挿入され、移相器4はアンテナの仰角方向のビーム走査に用いられる。ここでは、方位角方向の追尾は簡単のために省略しているが、同じくアンテナ面を2分割してモノパルスで指向誤差角を求めてもよいし、ステップトラック方式などを用いて追尾する構成としてもよい。
【0021】
図2に示すように、水平面に設置するフェーズドアレイアンテナの場合、衛星から2つの給電部1,2までの経路長が異なるため、周波数や仰角によって給電部間の位相差が大きく変化する。そのため、和信号・差信号生成部5においてある特定の周波数と仰角で同相合成(和信号出力)されるように移相器4の位相を調整すると、他の周波数では位相がずれて合成される結果となり、受信レベルが減少する。その影響を低減するためには、使用する周波数帯域の中心付近の周波数で同相合成されるように移相器4の位相を調整することにより、周波数端における受信レベルの減少を抑えることができる。しかし、例えばKu 帯衛星通信(12.25 〜12.75 GHz)の場合、モノパルスに使用できるビーコンやテレメトリなどの信号は 12.25GHzや 12.75GHzなど周波数端にある。したがって、通常のモノパルスを使用した場合には、周波数端で同相合成される結果となるため、他端の周波数では受信レベルが大きく減少する。そのため、周波数端のモノパルス信号、ここでは和信号と差信号を使って例えば中心周波数で同相合成されるように、移相器4に設定する位相を算出する必要がある。
【0022】
以下、和信号と差信号を使って指向誤差角を求め、指向誤差角から移相器4に設定する位相を算出する方法について、図2を参照して説明する。
【0023】
まず、和信号・差信号生成部5に入力する受信信号E1 ,E2 間の位相差Φを求める手順について説明する。受信信号E1 ,E2 は、
1 =Eexp(jφ0), E2 =EAexp(j(φ0+Φ)) …(1)
と表す。ここで、Aは、受信信号E1 の振幅Eを基準とした受信信号E2 の振幅比を示す。
【0024】
和信号・差信号生成部5の出力時の和信号Σ(=E2+E1)と差信号Δ(=E2−E1)のレベル比C(=Δ2/Σ2)を「誤差信号」と呼ぶと、誤差信号Cは式(1) から
C=Δ2/Σ2=(Aexp(jΦ)−1)2/(Aexp(jΦ)+1)2
=(A2−2AcosΦ+1)/(A2+2AcosΦ+1) …(2)
と表される。この式(2) を変形すると、誤差信号Cから位相差Φは
Φ=sign(∠Δ−∠Σ)cos-1[((1+A2)/2A)((1−C)/(1+C))] …(3)
と求めることができる。ここで、∠は位相角を表し、±πの範囲で与えられる。
【0025】
なお、差信号のみを利用して位相差Φを簡易的に求める方法もあり、この場合は、
Δ2 =E2(A2−2AcosΦ+1)≒E2 Φ2 …(4)
を利用し、A≒1(受信信号間のレベル差は小さい)、Φ≒0(受信信号間の位相差も微小範囲内)の仮定で、
Φ= (Δ2/E2)1/2 …(5)
で求められる。ただし、式(4),(5) は受信レベル(E2)があらかじめ分かっている場合に有効であるが、実際は気温や天候によって受信信号の振幅は変動するため、精度よく位相差Φを求めることが難しい。一方、式(3) では、差信号と和信号の比を計算するため、受信レベル(E2)が相殺され、気温や天候の変動による受信信号の振幅変動の影響を受けないモノパルスが実現する。
【0026】
次に、式(3) で得られた位相差Φから指向誤差角Δθを求める。給電部1を基準にすると、給電部2の出力は、
2/E1=aarexp[j2πXsin(θ+Δθ)/λ] exp(-j2πL/λ)exp(jφ)exp(jφr) …(6)
と与えられる。ここで、aは受信電力比、Xは給電部1と給電部2間の位相中心間距離であり、θはビーム走査方向、λはモノパルスに使用する信号(和信号、差信号)の波長、Lは実遅延線路3の長さ、φは移相器4で設定している位相である。また、ar 、φr は、それぞれ線路上の振幅誤差、位相誤差である。
【0027】
式(6) と式(1) を比較すると、振幅比Aおよび位相差Φは、
A=aar …(7)
Φ=2π{Xsin(θ+Δθ)−L}/λ+φ+φr …(8)
と得られる。したがって、式(8) より指向誤差角Δθは、
Δθ=sin-1[{(Φ−φ−φr)λ/(2π)+L}/X]−θ …(9)
と得られる。
【0028】
以上により指向誤差角Δθを求めることができる。図3は、誤差信号と指向誤差角の関係を示す。誤差信号Cは 12.25GHzであり、中心周波数12.5GHzで同相合成されるように移相器4の位相を設定するものとする。実遅延線路3の長さLはL=Xsin 40°であり、アンテナの開口径は1mとした。また、経路上の振幅誤差と位相誤差は無視した。図のように、誤差信号Cが0でも、指向誤差角Δθは0°ではなく、仰角に依存することがわかる。
【0029】
ところで、ビーム走査方向θへ指向させるための移相器4の位相φは、ビーム走査方向から到来する電波のアンテナ到達時の経路長差X sinθと、実遅延線路3の長さLから、全体の経路長差は
X sinθ−L …(10)
となるので、この経路長差に相当する特定の中心周波数の波長λ0 をキャンセルするように設定すればよいので、
φ=−2π(X sinθ−L)/λ0 …(11)
となる。したがって、指向誤差角算出・制御部10は、式(9) のように得られた指向誤差角Δθを用い、移相器4の位相φを
φ=−2π{Xsin(θ+Δθ)−L}/λ0 …(12)
のように設定することにより、所望の走査角度における中心周波数で同相合成することができる。
【0030】
また、通常のモノパルスのように衛星にほぼ正対するアンテナを用いる場合には、L=0、φ=0を式(9) に代入し、
Δθ=sin -1〔{(Φ−φr)λ/(2πX)〕 …(13)
で指向誤差角Δθを求めることができる。そして、この指向誤差角Δθを補正するようにアンテナの指向方向を駆動制御すればよい。
【0031】
なお、従来のモノパルス方式のように上記の議論で経路誤差を無視した場合は、式(3) と式(9) でA=1、φr =0を代入し、
Φ=sign(∠Δ−∠Σ)cos-1{(1−C)/(1+C)} …(14)
Δθ=sin -1〔{(Φ−φ)λ/(2π)+L}/X〕−θ …(15)
で指向誤差角Δθを求められる。通常のモノパルスでは、L=0、φ=0を式(15)に代入し、
Δθ=sin -1{Φλ/(2πX)} …(16)
である。しかし、この方法では経路誤差の影響により、指向誤差角Δθの推定誤差が生じる。
【0032】
(指向誤差角算出・制御部10の構成例)
図4は、経路誤差を補正した指向誤差角Δθを算出する指向誤差角算出・制御部10の第1の構成例を示す。
【0033】
まず、アンテナ完成後に、ビーム走査方向にある電波源から比較的大きな電力をアンテナに向けて照射する、あるいは長時間測定するなどの方法でノイズの影響を低減し、受信信号E1 ,E2 間の振幅比A0 と位相差Φ0 を計測する。部品別に振幅特性と位相特性があらかじめ分かっている場合は、計算やシミュレーションなどで振幅比A0 と位相差Φ0 を求めてもよい。このときの受信信号E1 ,E2 の振幅比A0 は、指向誤差がない状態での経路上の振幅誤差に相当する。また、受信信号E1 ,E2 間の位相差Φ0 と、指向誤差がない状態での経路上の位相誤差φr0との関係は、式(8) から
φr0=Φ0 −2π{Xsin(θ)−L}/λ−φ …(17)
と計算される。これらの指向誤差がない状態での経路上の振幅誤差A0 と位相誤差φr0は、固定的な値である。この値をあらかじめ各周波数、各走査角で測定しておき、図4に示すように経路上振幅誤差テーブル11および経路上位相誤差テーブル12に保有しておく。
【0034】
和信号・差信号生成部5から出力される和信号Σと差信号Δを入力する受信信号間位相差算出部13は、和信号Σと差信号Δの誤差信号Cから受信信号E1 ,E2 間の位相差Φを求める式(3) に対して、経路上振幅誤差テーブル11に保有する振幅誤差A0 を用いて、
Φ=sign(∠Δ−∠Σ)cos-1[((1+A02)/2A0)((1−C)/(1+C))] …(18)
と補正する。次に、指向誤差角算出部14は、受信信号間位相差算出部13で補正した受信信号E1 ,E2 間の位相差Φから指向誤差角Δθを求める式(9) に対して、経路上位相誤差テーブル12に保有する位相誤差φr0を用いて
Δθ=sin-1[{(Φ−φ−φr0)λ/(2π)+L}/X]−θ …(19)
と補正する。
【0035】
通常のモノパルスでは、L=0、φ=0を式(19)に代入し、
Δθ=sin -1[(Φ−φr0)λ/(2πX)] …(20)
である。なお、A0 、φr0は、指向誤差角がない状態での経路上の振幅誤差および位相誤差であるため、指向誤差角が生じた場合とやや異なる値であるが、指向誤差角の範囲が小さい場合には十分な効果が得られる。
【0036】
図5は、振幅誤差・位相誤差を補正しない場合の指向誤差角Δθを推定誤差を示す。図6は、振幅誤差・位相誤差を補正した場合の指向誤差角Δθを推定誤差を示す。このとき、受信信号のC/Nは15dBであり、和信号(差信号)の周波数は 12.25GHzとする。図に示すように、振幅誤差と位相誤差を考慮することにより、指向誤差角の推定誤差が大きく低減していることがわかる。ただし、図3の誤差信号が0付近、すなわち受信信号間の位相差が0°付近の指向誤差角においては、雑音の影響により推定誤差がやや高いことが確認できる。
【0037】
図7は、受信信号に含まれる雑音を補正する指向誤差角算出・制御部10の第2の構成例を示す。
【0038】
まず、和信号Σと差信号Δは、受信信号E1 ,E2 の振幅が一致(振幅比A=1)であれば、位相差にかかわらず直交することになる。式(1) より
Σ=Eexp(jφ0)(Aexp(jΦ)+1)
=Eexp(jφ0)(AcosΦ+jAsin Φ+1) …(21)
Δ=Eexp(jφ0)(Aexp(jΦ)−1)
Eexp(jφ0)(AcosΦ+jAsin Φ−1) …(22)
となり、ベクトルの内積(Σ・Δ)は、
Σ・Δ=re(Σ)re(Δ)+im(Σ)im(Δ)=E2(A2−1) …(23)
となり、振幅が一致(振幅比A=1)であれば必ず直交する。ここで、reは実数成分、imは虚数成分を表す。
【0039】
しかし、図8のベクトル空間図に示すように、信号に雑音が含まれていれば直交性が失われる。そのため、レベル比較部15は和信号のレベルと差信号のレベルを比較し、信号レベルの高い方を判別する。ベクトル補正部16は、信号レベルが高い方を基準に、他方の信号の平行成分を雑音と見なして除去する。図8では、雑音を含んだ差信号ベクトルについて、雑音を含んだ和信号ベクトル方向の成分を除去し、直交方向成分を補正後の差信号ベクトル(図中、補正後のΔ)としている。このように補正することにより、雑音の影響を緩和することができる。
【0040】
図9は、雑音および経路誤差を補正した指向誤差角Δθを算出する指向誤差角算出・制御部10の第3の構成例を示す。
【0041】
経路上の振幅誤差を考慮する場合は和信号と差信号は直交しないため、以下のようにして雑音の影響を補正する。レベル比較部15は、和信号のレベルと差信号のレベルを比較し、信号レベルの高い方を判別する。ここでは、和信号のレベルが高いものとする。次に、ベクトル間角度算出部17は、雑音を含まないときの和信号ベクトルと差信号ベクトルとのなす角ψを、ベクトルの内積の式である
Σ・Δ=|Σ||Δ|cosψ …(24)
に式(21),(22) を代入し、
ψ=sign(∠Δ−∠Σ)cos-1[(A2−1)/((1+A2)2−4A2cos2Φ)1/2] …(25)
を計算して得られる。実際の計算では、経路上振幅誤差テーブル11から振幅誤差A0 を入力し、式(25)にA=A0 と、式(18)を代入して和信号ベクトルと差信号ベクトルとのなす角ψを算出する。
【0042】
次に、ベクトル補正部16では、和信号ベクトルをベクトル間角度算出部17で算出したなす角ψだけ回転させ、補正後の和信号ベクトルΣ' を
Σ'=Σexp(jψ) …(26)
とする。差信号ベクトルをこのΣ' に投影した成分Δ' を補正後の差信号ベクトルとする。すなわち、内積の式
Δ・Σ'=|Δ||Σ'|cosψ'=|Δ'||Σ'| …(27)
より、補正後の差信号ベクトルΔ' は、
Δ' =(|Δ'|/|Σ'|)Σ' =(Δ・Σ'/|Σ'|2) Σ' …(28)
により求めることができる。
【0043】
受信信号間位相誤差算出部13は、この補正後の差信号ベクトルΔ' を用いて改めて誤差信号Cを
C=Δ'2/Σ2 …(29)
を計算し、上記と同様に振幅誤差A0 で補正した受信信号E1 ,E2 間の位相差Φを求め、指向誤差角算出部14も上記と同様にこの位相差Φと位相誤差φr0を用いて指向誤差角Δθを求める。
【0044】
図10は、雑音の補正、振幅誤差・位相誤差を補正した場合の指向誤差角Δθの推定誤差を示す。図5および図6と同様に、受信信号のC/Nは15dBであり、和信号(差信号)の周波数は 12.25GHzとする。図に示すように、振幅誤差と位相誤差を補正し、さらに雑音の影響を補正することにより、図5および図6に見られた誤差信号が0付近、すなわち受信信号間の位相差が0°付近の指向誤差角の推定誤差も大きく低減しており、さらに高精度なモノパルスが可能になっていることがわかる。
【0045】
ただし、信号のC/Nが非常に高い場合は、雑音の補正を行うと逆に信号品質が劣化し、指向誤差角の推定誤差が大きくなる場合がある。したがって、信号のC/Nを監視し、C/Nが一定以上ならば雑音補正を行わないことにすれば、より推定精度が向上する。すなわち、和信号レベルが高く品質がよい場合には差信号ベクトルの補正を行わず、差信号レベルが高く品質がよい場合には和信号ベクトルの補正を行わないようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の追尾アンテナ装置に用いるアンテナの一例を示す図。
【図2】本発明の追尾アンテナ装置の回路構成の一例を示す図。
【図3】誤差感度曲線を示す図。
【図4】指向誤差角算出・制御部10の第1の構成例を示す図。
【図5】振幅誤差・位相誤差を補正しない場合の指向誤差角Δθを推定誤差を示す図。
【図6】振幅誤差・位相誤差を補正した場合の指向誤差角Δθを推定誤差を示す図。
【図7】指向誤差角算出・制御部10の第2の構成例を示す図。
【図8】和信号と差信号の関係を示す図。
【図9】指向誤差角算出・制御部10の第3の構成例を示す図。
【図10】雑音の補正、振幅誤差・位相誤差を補正した場合の指向誤差角Δθを推定誤差を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1,2 給電部
3 実遅延線路(TTD)
4 移相器(PS)
5 和信号・差信号生成部
10 指向誤差角算出・制御部
11 経路上振幅誤差テーブル
12 経路上位相誤差テーブル
13 受信信号間位相差算出部
14 指向誤差角算出部
15 レベル比較部
16 ベクトル補正部
17 ベクトル間角度算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置において、
前記アンテナは、前記目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を備え、
前記各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する和信号・差信号生成手段と、
指向誤差がない状態で予め計測された前記受信信号間の振幅誤差を保有する経路上振幅誤差保有手段と、
指向誤差がない状態で予め計測された前記受信信号間の位相誤差を保有する経路上位相誤差保有手段と、
前記和信号・差信号生成手段から入力する和信号レベルおよび差信号レベルと、前記経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて、前記受信信号間の位相差を算出する受信信号間位相差算出手段と、
前記受信信号間位相差算出手段から入力する前記受信信号間の位相差と、前記経路上位相誤差保有手段から入力する位相誤差を用いて、前記アンテナの指向誤差角を算出して前記指向方向可変手段に出力する指向誤差角算出・制御手段と
を備えたことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項2】
アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾アンテナ装置において、
前記アンテナは、前記目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を備え、
前記各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する和信号・差信号生成手段と、
前記和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較するレベル比較手段と、
前記和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、前記レベル比較手段の比較結果により前記和信号レベルが高い場合は、前記和信号ベクトルを前記差信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、前記差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、前記和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、前記レベル比較手段の比較結果により前記差信号レベルが高い場合は、前記差信号ベクトルを前記和信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、前記和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、前記差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力するベクトル補正手段と、
前記ベクトル補正手段から前記補正後和信号ベクトルおよび前記補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルから前記受信信号間の位相差を算出する受信信号間位相差算出手段と、
前記受信信号間位相差算出手段から入力する前記受信信号間の位相差から、前記アンテナの指向誤差角を算出して前記指向方向可変手段に出力する指向誤差角算出・制御手段と
を備えたことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の追尾アンテナ装置において、
前記和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較するレベル比較手段と、
前記和信号・差信号生成手段から入力する和信号ベクトルおよび差信号ベクトルと、前記経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて、前記和信号ベクトルと前記差信号ベクトルのベクトル間角度を算出するベクトル間角度算出手段と、
前記和信号・差信号生成手段から和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、前記レベル比較手段の比較結果により前記和信号レベルが高い場合は、前記和信号ベクトルを前記差信号ベクトル方向へ前記ベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、前記差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、前記和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、前記レベル比較手段の比較結果により前記差信号レベルが高い場合は、前記差信号ベクトルを前記和信号ベクトル方向へ前記ベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、前記和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、前記差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力するベクトル補正手段とを備え、
前記受信信号間位相差算出手段は、前記補正後和信号ベクトルおよび前記補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルと前記経路上振幅誤差保有手段から入力する振幅誤差を用いて前記受信信号間の位相差を算出する構成である
ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の追尾アンテナ装置において、
前記ベクトル補正手段は、前記和信号レベルが高い場合は和信号の品質を監視し、該品質が所定の品質より高い場合は前記差信号ベクトルの補正を行わない構成であり、前記差信号レベルが高い場合は差信号の品質を監視し、該品質が所定の品質より高い場合は前記和信号ベクトルの補正を行わない構成である
ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の追尾アンテナ装置において、
前記指向方向可変手段は、前記アンテナの受信信号の位相を変えることにより前記アンテナの指向方向を変える構成であり、
前記指向誤差角算出・制御手段は、前記指向誤差角から前記指向方向可変手段に与える位相を算出する位相算出手段を含む
ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の追尾アンテナ装置において、
前記位相算出手段は、前記受信信号の波長と異なる波長を用いて算出する構成である
ことを特徴とする追尾アンテナ装置。
【請求項7】
アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾制御方法において、
前記アンテナは、前記目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を有し、
前記各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する第1のステップと、
指向誤差がない状態で予め計測された前記受信信号間の振幅誤差を保有する第2のステップと、
指向誤差がない状態で予め計測された前記受信信号間の位相誤差を保有する第3のステップと、
前記第1のステップで得られた和信号レベルおよび差信号レベルと、前記第2のステップで保有している振幅誤差を用いて、前記受信信号間の位相差を算出する第4のステップと、
前記第4のステップで得られた前記受信信号間の位相差と、前記第3のステップで保有している位相誤差を用いて、前記アンテナの指向誤差角を算出して前記指向方向可変手段に出力する第5のステップと
を有することを特徴とする追尾制御方法。
【請求項8】
アンテナの指向誤差角に基づいて指向方向可変手段を制御し、アンテナの指向方向を電波を発する目標物に自動追尾させる追尾制御方法において、
前記アンテナは、前記目標物からの電波を受信する2つ以上の給電部を有し、
前記各給電部からそれぞれ出力される受信信号の和信号と差信号を生成する第1のステップと、
前記第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較する第2のステップと、
前記第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、前記第2のステップの比較結果により前記和信号レベルが高い場合は、前記和信号ベクトルを前記差信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、前記差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、前記和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、前記第2のステップの比較結果により前記差信号レベルが高い場合は、前記差信号ベクトルを前記和信号ベクトルの方向へ90°回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、前記和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、前記差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力する第3のステップと、
前記第3のステップで得られた前記補正後和信号ベクトルおよび前記補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルから前記受信信号間の位相差を算出する第4のステップと、
前記第4のステップで得られた前記受信信号間の位相差から、前記アンテナの指向誤差角を算出して前記指向方向可変手段に出力する第5のステップと
を有することを特徴とする追尾制御方法。
【請求項9】
請求項7に記載の追尾制御方法において、
前記第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、そのレベル差を比較する第6のステップと、
前記第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルと、前記第2のステップで保有する振幅誤差を用いて、前記和信号ベクトルと前記差信号ベクトルのベクトル間角度を算出する第7のステップと、
前記第1のステップで得られた和信号ベクトルおよび差信号ベクトルを入力し、前記第6のステップの比較結果により前記和信号レベルが高い場合は、前記和信号ベクトルを前記差信号ベクトル方向へ前記ベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準差信号方向ベクトルを生成し、前記差信号ベクトルをこの基準差信号方向ベクトルへ投影した補正後差信号ベクトルを出力し、前記和信号ベクトルをそのまま補正後和信号ベクトルとして出力し、前記第6のステップの比較結果により前記差信号レベルが高い場合は、前記差信号ベクトルを前記和信号ベクトル方向へ前記ベクトル間角度算出手段で得られた角度だけ回転させた基準和信号方向ベクトルを生成し、前記和信号ベクトルをこの基準和信号方向ベクトルへ投影した補正後和信号ベクトルを出力し、前記差信号ベクトルをそのまま補正後差信号ベクトルとして出力する第8のステップとを有し、
前記第4のステップは、前記補正後和信号ベクトルおよび前記補正後差信号ベクトルを入力し、それぞれのレベルと前記第2のステップで保有する振幅誤差を用いて前記受信信号間の位相差を算出する
ことを特徴とする追尾制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項7〜請求項9のいずれかに記載の各ステップを実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−216070(P2008−216070A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54388(P2007−54388)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】