説明

退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維

退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維を、溶融染料を含む染料可溶の芯ポリマーにより形成された芯と、染料を含まない染料不溶の鞘ポリマーにより形成された鞘とから製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
着色繊維は、衣類、屋外用布帛、医療用ドレープなどを含む多種多様な製品に有用である。染料を繊維の表面または繊維の本体に含有させることにより、繊維を着色することができる。しかしながら、紫外(UV)線暴露、摩耗、摩損、漂白または洗濯の後に、染料の損傷または損失のために繊維の色が、退色することがある。
【0003】
米国特許第5,888,651明細書には、1つのドメインは着色され、他のドメインには着色のない2成分繊維が開示されている。着色剤は、顔料であって染料ではない。
【0004】
米国特許第6,531,218明細書には染浴で着色される芯鞘2成分繊維が開示され、染料は鞘を通って芯を着色する。
【0005】
必要なものは、退色しにくい着色繊維である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶融染料を含む染料可溶の芯ポリマーにより形成された芯と、染料を含まない染料不溶の鞘ポリマーにより形成された鞘とから製造された退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、芯が染料を含有するポリマーで形成され、鞘が実質的に染料を含まないポリマーで形成されている退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維を提供する。より具体的には、染料は芯ポリマーに溶融可溶であり、染料は鞘ポリマーには実質的に溶融可溶でない。染料を含まない鞘は、好ましくは染料を含有する芯を完全に内包する。繊維は、芯からの染料の損失を防止すること、および紫外線または漂白洗浄剤を拡散して染料の照射による損傷効果を低減することにより、鞘が芯の染料を保護しているため退色抵抗性である。
【0008】
本発明の2成分繊維は、芯鞘横断面を有する。鞘は、芯を完全に内包して、芯を保護する。芯は、繊維の断面積の約10〜約90%を占め、鞘は、繊維の断面積の約10〜約90%を占める。芯は、同心状であっても偏心状であってもよい。繊維は、通常、丸断面形状をしている。
【0009】
本発明に適している染料は、鞘ポリマーにはほとんど溶解しないか、または不溶であるが、芯ポリマーには可溶の染料である。可溶な染料の場合、染料分子は、分子レベルまで完全に溶解してポリマーと単一相を形成する必要がある。多くの有機染料は、極性特性を有するポリマーによく溶解し非極性特性を有するポリマーにあまり溶解しないか、または不溶である極性分子基を有する。有機極性染料からは、明るい蛍光色を含んでいる多くの色が入手できる。たとえば蛍光染料、クレジルバイオレットとしても知られているオキサジン9は、種々の極性官能基を含んでおり、エタノールに可溶である。典型的な蛍光染料は、ローダミンB、クマリン9およびサリチル酸ナトリウムである。有機極性染料は、ポリ(エチレンテレフタレート)を含むポリエステル、ナイロン6およびナイロン6,6を含むポリアミド、コポリマー並びにそれらの混合物等の極性特性を有するポリマーに可溶である。有機極性染料は、ポリエチレンおよびポリプロピレン、コポリマー並びにそれらの混合物を含むポリオレフィン等の無極性特性を有するポリマーにあまり溶解しないか、または不溶である。有機極性染料を含む2成分繊維用のポリマーの特に有用な組み合わせは、ポリエチレン/ポリ(エチレンテレフタレート)芯鞘繊維、ポリエチレン/ナイロン6芯鞘繊維およびポリエチレン/ナイロン6,6芯鞘繊維である。一実施形態では、芯ポリ(エチレンテレフタレート)の量は、繊維の20wt%〜80wt%に調整することができる。鞘にポリエチレンが存在するため、点結合操作を紡糸速度に応じて130℃〜145℃で実施を促進する。
【0010】
本発明の2成分繊維を、芯ポリマーに染料を溶融混入して製造する。染料は、紡糸の前に染料を含まないポリマーを追加して溶融混合する、高濃度の形態すなわち約5%〜約30重量%のマスターバッチとしてポリマーに混入することができるか、または、約0.1%〜約10wt%の紡糸濃度に調整してポリマーに混入することができる。染料を含む染料可溶な芯ポリマーと、染料を含まない染料不溶の鞘ポリマーとは、従来の2成分繊維溶融紡糸方法によって紡糸することができる。従来の溶融紡糸方法では、集めて糸にし、長繊維として使用するか、または細断して短繊維にすることが可能な繊維を生産する。これらの種類の溶融紡糸方法の他の例には、スパンボンド法およびメルトブロー法がある。これらの方法では、不織布ウェブとして集められる繊維を紡糸する。これらのウェブは、更に加工あるいは処理たとえば接着、コーティング等をすることができ、または他のウェブと結合させ、たとえばスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド複合不織布ウェブを作ることができる。これらの繊維およびウェブは、衣類、屋外用布帛、医療用ドレープなどを作製することに使用できる。
【0011】
試験方法
以上の記述および以下の実施例において報告した種々の特性および性質は、以下の試験方法を用いて決定した。
【0012】
紫外線安定化は、紫外線暴露後の色彩強度の損失の尺度である。キセノンアークUV促進耐候試験機により試験を実施した。この試験は、ASTM G26(A)に準拠して実施したが、これは参照により本願明細書に含まれたものとし、x値、y値およびY値として報告する。ASTM G26が取り下げられ、G155に置き換えられているが、試験は前者に従って実施した。x値およびy値は、表現されている色の精度を決定するために用いる色度座標である。Yは、蛍光性レーザ光強度の尺度である。試験は340nmの放射照度フィルタを使用し、光サイクル設定は63℃および50%相対湿度で0.35W/m2であった。サイクル時間は、1200分であった。
【0013】
目付け(basis weight)は、布帛あるいはシートの単位面積あたりの質量の尺度でありASTM D−3776によって測定されるが、これは参照により本願明細書に含まれたものとし、g/m2で報告する。
【実施例】
【0014】
次に、本発明の実施形態を、以下の実施例で更に詳細に説明する。
【0015】
退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維を、溶融染料を含む染料可溶の芯ポリマーにより形成された芯と、染料を含まない染料不溶の鞘ポリマーにより形成された鞘とから製造した。Clariantの有機極性染料Solvent Yellow 98を、DuPontのコポリ(エチレンテレフタレート)Crystar 4446と、270℃で溶融混合し、染料40重量%の高濃度の染料/ポリマーマスターバッチを作製した。高濃度のマスターバッチに、さらにポリ(エチレンテレフタレート)Crystar 4415を溶融混合し染料濃度0.05〜5%を得た。この着色ポリ(エチレンテレフタレート)を、2成分繊維スパンボンド装置の同心状芯成分から紡出した。鞘ポリマーは、EquistarのポリエチレンEquistar XH4620であった。ポリエチレンを、2成分繊維スパンボンド装置の鞘成分から紡出した。ポリ(エチレンテレフタレート)の溶融温度を約290℃に維持し、ポリエチレンの温度を約270℃に維持した。スパンボンドウェブを、目付け85g/m2で集めた。このウェブを、140℃、300PSIで点結合した。
【0016】
このウェブを、1層または2層にしたサンプルで、キセノンアークUV促進耐候試験機暴露の前後に試験した。結果を表に示す。
【0017】


【0018】
x値、y値およびY値は、色の変化および蛍光の十分な強度を供給する染料の能力を示す。
【0019】
表からのデータには、紫外線暴露後の色彩強度の劣化が全く見られない。これは、染料が分解しなかったことを示す。
【0020】
上記のウェブを、標準の洗濯サイクルで10回、熱水および石けんで洗浄し、更に上述のように試験した。得られたx、yおよびY座標から、ポリエチレンの鞘が芯ポリマーに埋め込まれた染料を保護していることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融染料を含む染料可溶の芯ポリマーにより形成された芯と、実質的に染料を含まない実質的に染料が不溶の鞘ポリマーにより形成された鞘とを含む退色抵抗性着色芯鞘2成分繊維。
【請求項2】
芯が同心状または偏心状である請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
芯鞘繊維が通常、丸断面形状である請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
芯が繊維の断面積の約10〜約90%を占め、鞘が繊維の断面積の約10〜約90%を占める請求項1に記載の繊維。
【請求項5】
芯ポリマーが、ポリエステル、ポリアミドおよびコポリマー並びにそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の繊維。
【請求項6】
鞘ポリマーが、ポリオレフィンおよびコポリマー並びにそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の繊維。
【請求項7】
芯ポリマーが、0.1wt%〜10wt%の染料を含む請求項1に記載の繊維。
【請求項8】
染料が有機染料から選択される請求項1に記載の繊維。
【請求項9】
染料が蛍光性である請求項8に記載の繊維。
【請求項10】
芯ポリマーがポリ(エチレンテレフタレート)であり、鞘ポリマーがポリエチレンであり、染料が蛍光性である請求項1に記載の繊維。
【請求項11】
繊維がスパンボンド法で紡糸される請求項1に記載の繊維。
【請求項12】
繊維がメルトブロー法で紡糸される請求項1に記載の繊維。
【請求項13】
請求項1に従って製造される繊維を含むウェブ。
【請求項14】
請求項11に従って製造される繊維を含むスパンボンドウェブ。
【請求項15】
請求項12に従って製造される繊維を含むメルトブローウェブ。
【請求項16】
2つのスパンボンドウェブの間に位置するメルトブローウェブを含むスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド複合不織布であって、前記スパンボンドウェブのうちの少なくとも1つが、請求項11に従って製造されるスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド複合不織布。
【請求項17】
メルトブローウェブが請求項12に従って製造される請求項16に記載の複合不織布。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか一項に記載のウェブまたは複合不織布を含む衣類。

【公表番号】特表2010−514952(P2010−514952A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544125(P2009−544125)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/026524
【国際公開番号】WO2008/082671
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】