説明

送信装置、基地局及びシンボル送信方法

【課題】MIMO−OFDM伝送方式において、周波数ダイバーシティ・時間ダイバーシティを向上させ、データ再送時の再送効率を上げる。
【解決手段】循環ダイバーシティを用いたMIMO−OFDM通信システムにおける送信装置において、循環遅延制御器209は、アンテナ213毎に異なる複数の遅延量を、所定のタイミング毎に循環遅延器207に設定する。循環遅延器207は、直交周波数分割多重され、複数のアンテナが割り当てられたアンテナ毎のシンボルを入力する。また、循環遅延器207は、設定された複数の遅延量に従い、アンテナ毎の各シンボルに対して循環遅延を与える。循環遅延されたシンボルはアンテナから出力される。上記遅延量は、ひとつのアンテナに対して、第1の送信タイミングにおける第1の遅延量と第2の送信タイミングにおける第2の遅延量とが異なり、かつ、ひとつの送信タイミングに対してアンテナ毎に遅延量が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、基地局及びシンボル送信方法に係り、特に、循環遅延ダイバーシティを用いたMIMO−OFDM通信システムにおける、データ再送効率の高い送信装置、基地局及びシンボル送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重接続(OFDM、Orthogonal Frequency Division Multiplexing)移動通信システムは、広帯域化、周波数利用効率及び耐無線伝搬特性において優れた特性を持つ伝送方式である。さらに、OFDMにおいて送信アンテナ及び受信アンテナを用いて送信信号を空間多重することで、伝送レートの向上を実現するMIMO(Multiple Input、Multiple Output)−OFDM伝送方式がある。
また、誤り訂正符号化されたOFDM信号における送信ダイバーシティ方式として、送信シンボル毎に各アンテナ間で異なった循環遅延を行って送信する循環遅延ダイバーシティや、逆フーリエ変換後のOFDM信号を時間シフトし、その後サイクリックプリフィックス(CP)を挿入して送信する方式がある。
この方式をMIMO−OFDM伝送方式に適用することにより、各アンテナ間で無相関な信号を送信するため、送信アンテナに比例して伝送レートを上げることができる。
一方、放送データの送信に際して、循環遅延ダイバーシティを用いて効率的に送信する方法等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、次世代移動通信の伝送方式としてMIMO−OFDM伝送方式が採用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−354708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、携帯電話のようなユニキャスト通信では、ARQ(自動再送要求)のようなデータ再送機能を持っている。しかしながら、特許文献1等の従来方式では、再送時の再送効率は考慮されていない。
本発明は、以上の点に鑑み、MIMO−OFDM伝送方式において、周波数ダイバーシティ・時間ダイバーシティを向上させることにより、データ再送時の再送効率を上げる送信装置、基地局及びシンボル送信方法を提供することを目的とする。
本発明は、高速無線通信のおけるH−ARQのプロセスにおいて、循環遅延制御器により循環遅延量の制御を行い、アンテナ毎、H−ARQ再送毎に異なった遅延量で循環遅延させたOFDM信号を送信して、送信信号の周波数特性を各々変化させ、周波数ダイバーシティを得ることを目的のひとつとする。また、本発明は、周波数選択性フェージングの影響を軽減することを可能とし、時間ダイバーシティを利用しているH−ARQの再送回数減らし、再送効率を高めることを目的のひとつとする。本発明は、時間ダイバーシティを高めることを目的のひとつとする。本発明は、周波数ダイバーシティにより、特定のパスでのデータ欠落を防ぐことによりH−ARQの再送回数を減らし、時間再送効率を高め、信頼性の高い高速無線通信を可能とすることを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いて、誤り訂正符号(例えばターボ符号)を用いたチャネル符号化及び自動再送要求(ARQ)を組み合わせたH−ARQ(Hybrid−ARQ)を適用した直交周波分割(OFDM)信号を空間多重するMIMO−OFDM伝送方式において、各送信信号が受信された際に直交するように各送信タイミング及び送信アンテナにおいて異なった循環遅延を施す循環遅延ダイバーシティ(CDD)を行う送信装置であり、装置内の循環遅延制御器によってアンテナ毎及びH−ARQ再送毎に異なった循環遅延量を与えることにより、それぞれ位相の異なるOFDM信号を生成する。したがって各受信アンテナで合成される信号波形の周波数特性が送信毎(例えば、H−ARQ再送毎)に変わる。
【0006】
本発明のシンボルを送信する方法は、例えば、OFDM通信システムにおいて、循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送する方法であって、
送信装置の各アンテナにおけるシンボルもしくはフレーム毎で異なる遅延値を有するように設定するステップと、
前記送信装置で前記データを含むOFDM信号を生成するステップと、
前記各アンテナ及び各シンボルで異なる遅延値を用いて前記各OFDM信号を遅延させるステップと、
前記遅延した複数のOFDM信号を、各アンテナを用いて送信するステップと
を含むことを特徴のひとつとする。
本発明の送信装置は、例えば、MIMO−OFDM通信システムにおいて、循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送する装置において、各アンテナにおいてシンボルもしくフレーム毎で異なる遅延量を割当てる機能を持つ循環遅延制御器を有する。
また、上述の割当てられた遅延量で、各アンテナにおいてシンボル毎に循環遅延させる循環遅延器を有する。
例えば、循環遅延制御器の制御により、ランダムな遅延量もしくは固定的なパターンを持つ遅延量を保持する記憶媒体から値を読み出し、循環遅延器に入力する。
また、例えば、H−ARQ制御器より入力するH−ARQの送信及び再送毎のタイミング信号に同期して遅延量を変化させる。
【0007】
本発明の第1の解決手段によると、
複数のアンテナを用いて空間多重し、かつ、直交周波数分割多重で通信する通信システムにおいて循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送する送信装置であって、
データを直交周波数分割多重し、前記複数のアンテナを割り当ててアンテナ毎のシンボルを生成するシンボル生成部と、
アンテナ毎に異なる複数の遅延量を、所定のタイミング毎に設定する循環遅延制御器と、
前記循環遅延制御器により設定された複数の遅延量に従い、アンテナ毎の各シンボルに対して循環遅延を与える循環遅延器と、
循環遅延されたシンボルを前記アンテナから出力する送信部と
を備え、
前記遅延量は、ひとつのアンテナに対して、第1の送信タイミングにおける第1の遅延量と第2の送信タイミングにおける第2の遅延量とが異なり、かつ、ひとつの送信タイミングに対してアンテナ毎に遅延量が異なる前記送信装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の解決手段によると、
上述の送信装置と、
前記送信装置により送信されたデータが端末で正常に受信されたことを示す確認通知及び/又は該データが端末で正常に受信されずデータの再送を要求する再送要求を、前記アンテナを介して端末から受信する受信装置と
を備え、
端末から前記確認通知を所定時間内に受信しない場合又は前記再送要求を受信した場合に、前記送信装置からデータを端末に再送する基地局が提供される。
本発明の第3の解決手段によると、
複数のアンテナを用いて空間多重し、かつ、直交周波数分割多重で通信する通信システムにおいて循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送するシンボル送信方法であって、
データを直交周波数分割多重し、複数のアンテナを割り当ててアンテナ毎のシンボルを生成するステップと、
アンテナ毎に異なる複数の遅延量を、所定のタイミング毎に設定するステップと、
設定された複数の遅延量に従い、アンテナ毎の各シンボルに対して循環遅延を与えるステップと、
循環遅延されたシンボルを前記アンテナから出力するステップと
を含み、
前記遅延量は、ひとつのアンテナに対して、第1の送信タイミングにおける第1の遅延量と第2の送信タイミングにおける第2の遅延量とが異なり、かつ、ひとつの送信タイミングに対してアンテナ毎に遅延量が異なる前記シンボル送信方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、MIMO−OFDM伝送方式において、周波数ダイバーシティ・時間ダイバーシティを向上させることにより、データ再送時の再送効率を上げる送信装置、基地局及びシンボル送信方法を提供することができる。
本発明によると、高速無線通信のおけるH−ARQのプロセスにおいて、循環遅延制御器により循環遅延量の制御を行い、アンテナ毎、H−ARQ再送毎に異なった遅延量で循環遅延させたOFDM信号を送信することにより、送信信号の周波数特性を各々変化させ、周波数ダイバーシティを得ることができる。これにより、周波数選択性フェージングの影響を軽減することが可能となり、時間ダイバーシティを利用しているH−ARQの再送回数減らせ、再送効率が高まる。つまり、時間ダイバーシティを高めることができる。
放送データのようなブロードキャスト通信と異なり、不特定の相手と1対1で通信を行うユニキャスト通信では受信側でうまく復号できなかった場合の為に、H−ARQのような再送プロセスが設けられている。本発明によって、周波数ダイバーシティにより、特定のパスでのデータ欠落を防ぐことによりH−ARQの再送回数を減らせ、時間再送効率が高まり、信頼性の高い高速無線通信が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本実施の形態について説明する。
図1に、本実施の形態におけるMIMO−OFDM通信システムにおける基地局の構成例を示す。
本システムの基地局は、ネットワーク101より入出力を行うラインインタフェース部102と、インタフェース部102より送信データを入力し、MIMO−OFDM変調を行う変調部219と、変調部219より変調信号を入力し、電力増幅を行うフロントエンドユニット(FEU)221と、FEU221より送信信号を入力し、空間に信号を放射する複数のアンテナ213a〜213nと、またアンテナ213a〜213nによって空間より受信し、FEU221によって増幅された信号を入力して復調し、ラインインタフェース部102へと出力する復調部220とを備える。本実施の形態では、例えば、直交周波数分割多重接続(OFDM)通信システムにおいて、基地局103と端末間104で複数のパスにより空間多重して通信する。
【0011】
図2及び図3は、基地局の変調部219、復調部220、及びFEU221の構成を示す機能ブロック図である。
変調部219は、例えば、S/P(シリアル/パラレル)変換器201と、H−ARQ制御器(再送制御部)202と、符号器203と、シンボルマッピング部204と、アンテナマッピング部205と、逆フーリエ変換部(IFFT)206と、循環遅延器207と、メモリ208aと、循環遅延制御器209と、P/S(パラレル/シリアル)変換器210と、CP器211とを有する。復調部220は、例えば、復調モジュール216と、ACK/NAK受信部217と、P/S変換器218とを有する。FEU221は、例えば、送信部212と、受信部215とを有する。FEU221とアンテナ213との間には例えばデュプレクサ214を備える。
【0012】
図3に示す構成は、図2におけるメモリ208aに変えて乱数発生器208bを有するものである。他の構成は図2と同様である。
ラインインタフェース部102より入力されたデータは、S/P変換器201と符号器203a〜203nを経て符号化される。例えば、ターボ符号により符号化される。この時、符号化したデータは、再送用に例えば符号器203a〜203n内のメモリに格納しておく。なお、他の適宜のメモリを用いてもよい。次にシンボルマッピング204a〜204nでは送信データが複素平面上にマッピングされ、サブキャリア変調(例えばQAM変調)される。その後、アンテナマッピング205にて、どのアンテナでどの送信シンボルを送信するかのマッピングが実施される。IFFT206a〜206nにて、逆高速フーリエ変換処理がなされ、送信シンボルは周波数領域から時間領域の信号に変換される。なお、本実施の形態において、符号器203〜IFFT206をまとめてシンボル生成部又はOFDM信号生成部と称することがある。
【0013】
メモリ208aは、互いに異なる複数の遅延量を含む循環遅延パターンが複数格納される。送信タイミング毎に、異なる又は分散された遅延量列(パターン)が循環遅延制御器209によってメモリ208aから読みだされる。循環遅延制御器209から各循環遅延器207a〜207nへそれぞれ異なったパターンが例えばH−ARQの送信タイミングに同期して出力される。
乱数発生器208bは、ランダムな又は分散された遅延量列を発生し、循環遅延制御器209に出力する。循環遅延制御器209は、上述のようにメモリ208aから読みだす以外にも、図3のように送信タイミング毎に乱数発生器208bから遅延量列を入力し、各循環遅延器207の遅延量を設定してもよい。
遅延量を変更するタイミングとしては、例えば、シンボルの送信タイミング毎、複数のシンボルを含むフレームの送信タイミング毎など、定期的に変更してもよい。また、再送データの送信タイミング毎に変更してもよい。その他、オリジナルのデータを送信するタイミングと、再送データを送信するタイミングで遅延量が異なるような適宜のタイミングで遅延量を変更するようにしてもよい。
【0014】
これらのパターン信号とIFFT206a〜206nからの出力信号(シンボル)とが、各循環遅延器207a〜207nに入力されると各シンボルの循環遅延がなされる。なお、循環遅延の詳細は後述する。P/S変換器210にてシリアル信号に変換された後、CP器211a〜211nでサイクリックプリフィックス(CP)が付与される。CPが付与された送信OFDMシンボルは、送信部212a〜212nにてアップコンバートされ、デュプレクサ214a〜214nを経て、アンテナ213a〜213nから送信される。
また、端末からデータが送信されてきた場合は、アンテナ213a〜213nで受信される。受信信号は、デュプレクサ214a〜214nを経て、受信部215a〜215nにてダウンコンバートされる。その後、復調モジュール216にて復調処理がなされ、P/S変換器218を経て、ラインインタフェース部102を経由し、外部ネットワーク101へ出力というプロセスを踏む。
【0015】
ACK/NAK受信部217は、端末104からのACK信号(確認通知、肯定信号)及びNAK信号(再送要求、否定信号)を受信する。H−ARQ制御器202は、データの再送を制御する。例えば、端末104からNAK信号を受信した場合、又は、端末104にデータを送信してから所定時間内にACK信号を受信しなかった場合は、符号器203に格納された送信データを読み出して再送する。一方、端末104からACK信号を受信した場合には、符号器203に格納された送信データを消去する。
【0016】
図4は、循環遅延及びサイクリックプリフィックス(CP)の説明図である。
図4において、シンボル301は、IFFT206a〜206nから出力されたシンボルが複数のサンプルを含むことを示している。循環遅延制御器209によって制御された循環遅延パターンの各遅延量に対応する、シンボル後部のサンプルが循環遅延器207a〜207nでシンボル先頭にシフトされる(302〜303)。図示のシンボル302、303は、遅延量が2の例である。さらに、予め仕様にて規定されているCP長に対応するシンボル後部の複数のサンプルをシンボル先頭にコピーすると、シンボル間干渉保護用であるCPが付与された送信OFDMシンボル305となる(304〜305)。
【0017】
図8及び図9は、H−ARQ再送時の説明図(1)及び(2)である。
図8(a)及び図9(a)は、メモリ208aの構成例を示す。
メモリ208aは、例えば、送信タイミング毎に、アンテナ毎に異なる複数の遅延量を含む遅延パターンが複数記憶される。遅延量は、例えば、ひとつのアンテナaに対して、送信タイミング1における遅延量1aと、送信タイミング2における遅延量2aと、・・・送信タイミングMにおける遅延量Maとがそれぞれ異なる。なお、Mは正の整数であり、M個の遅延パターンを繰り返し使用することができる。また、ひとつの送信タイミング1に対してアンテナ毎の遅延量1a、1b・・・1Nがそれぞれ異なる。これらの遅延量は予めメモリ208aに記憶しておくことができる。
【0018】
図8(b)、図9(b)は、CP器211a〜211nから送信データが出力される様子を示している。H−ARQ再送データに含まれる送信OFDMシンボルは、前回送信時と異なる遅延量で循環遅延される。一方、同一H−ARQ再送データ内の送信OFDMシンボルの循環遅延値は全て同じ値である。各アンテナから送信されるH−ARQ再送データの送信方法は、例えば2パターンある。
図8(b)は、同一のH−ARQ再送データを同一のタイミングで各アンテナから送信する場合である。循環遅延値の異なる、同一のH−ARQ再送データを各アンテナで同期させ、同一再送タイミングで各アンテナから送信させる。アンテナ213の本数に比例し、循環遅延による効果に加え、さらに通信の信頼性を高めることが可能となる。例えば、通信の信頼性は後述する図9のパターンよりも高い。図8の実現には、H−ARQ再送データの再送前における各プロセス(例えば、符号器203、シンボルマッピング204、アンテナマッピング205、IFFT206、循環遅延器207、P/S210、CP器211、送信部212、デュプレクサ214、アンテナ213)において同期処理が必要である。
【0019】
一方、図9(b)は、各H−ARQ再送データを各アンテナで独立させて送信する場合である。したがって、図9の実現にはH−ARQ再送データの再送前における各プロセス(前述)では、1〜Nまでのいずれかのユニットで処理が行われればよい。例えば、符号器1〜符号器Nのいずれか、シンボルマッピング1〜Nのいずれか等で行われればよい。図9(b)の例では、H−ARQ再送データ(1)をアンテナaに対応する符号器等で処理してアンテナaから出力し、H−ARQ再送データ(2)をアンテナbに対応する符号器等で処理してアンテナbから出力している。また、再送データ(1)と(2)の送信タイミングは異なっていてもよい。本方法であれば、循環遅延による効果に加え、図8の場合よりも高スループットの通信が見込まれる。
各H−ARQ再送時においてアンテナ毎に循環遅延値のパターンは異なる(独立している)。遅延値はいずれも正の整数で、図2に示すようにメモリ208aに蓄積された各アンテナのパターン値か、図3に示すように乱数発生器208bで生成するランダムな値である。これらの値は、例えば循環遅延のタイミングに同期して、循環遅延制御器209により呼び出される。
【0020】
図5は、基地局−端末間データ送受信のフローチャートを示している。
図2及び図3における、送信部211a〜211nでアップコンバートされた信号は基地局103から端末へ向けて送信される(ステップ501)。基地局103から送信したデータは移動端末104で受信され復調される。その際に、移動端末104は、CRCチェックを行い、正しくパケットが復号できたかどうかの判定を行う(ステップ502)。CRCチェックがOKの場合(正しく復号できた場合)は、移動端末104はACK信号を基地局103に返し、一方、NGの場合(正しく復号できなかった場合)はNAK信号を基地局103に返す。正しく復号された場合、端末104からACK信号が基地局103へ向け送信され、基地局103はそのACK信号を受信する(ステップ503)。ACK信号は、ACK/NAK受信部217で受信された後、H−ARQ制御器202へ通知される(ステップ504)。その後、前回符号化の際、符号器203a〜203内に確保していた該データのメモリを開放し(ステップ505)、該データについての送信プロセスは終了する。
【0021】
一方、端末側で正しく復号されなかった場合、端末104からNAK信号が基地局103に向け送信され、基地局103はそのNAK信号を受信する(ステップ506)。NAK信号は、基地局のACK/NAK受信部217で受信された後、H−ARQ制御器202へ通知される(ステップ507)。
ここで、基地局103は、再送回数が予め定められた仕様規定に達していれば(ステップ507、Yes)、ステップ505に移り、前回符号化の際に符号器203a〜203内に確保していた該データのメモリを開放し(ステップ505)、該データについての送信プロセスは終了する。再送回数が仕様規定に達していなければ(ステップ507、No)、基地局103は、前回符号化の際、符号器203a〜203内に確保していた該データのメモリから該データを呼び出す(ステップ509)。呼び出された該符号化データは、上述の送信プロセスを経て、IFFT206a〜206nにてOFDMシンボルに変換され(ステップ510)、循環遅延器207a〜207nにて再びH−ARQ送信毎、アンテナ毎に循環遅延される(ステップ511)。ここでの遅延量は、前の送信タイミングで端末にデータを送信した遅延量(例えば、ステップ501でデータを送信する際の遅延量)とは異なる。循環遅延が与えられたデータは、再び基地局から端末へ送信される(ステップ501)。
【0022】
図6は、ACK信号が返ってきた場合おける信号の流れのシーケンス図を示している。
基地局103からデータが送信され(ステップ601)、端末104にて受信後、データの復号が正しく行われると(ステップ602)、端末104から基地局103へACK信号が送信される(ステップ603)。その後、ACK/NAK受信部217でACK信号を受信する(ステップ604)と、H−ARQ制御器202にACKが通知される(ステップ605)。その後、前回符号化の際に符号器203a〜203内に確保していた該データのメモリを開放し(ステップ606)、該データについての送信プロセスは終了する。
【0023】
図7は、NAK信号が返ってきた場合における信号の流れのシーケンス図を示している。
基地局103からデータが送信され(ステップ701)、端末104にて受信後、データの復号に失敗すると(ステップ702)、端末104から基地局103へNAK信号が送信される(ステップ703)。その後、ACK/NAK受信部217でNAK信号を受信すると(ステップ704)、H−ARQ制御器202にNAKが通知される(ステップ705)。その後、再送回数が仕様規定に達していない場合、前回符号化の際に符号器203a〜203内に確保していた該データをメモリから呼び出す(ステップ706)。呼び出された該符号化データは、上述の送信プロセスを経て、IFFT206a〜206nにてOFDMシンボルに変換され(ステップ707)、循環遅延器207a〜207nにて再びH−ARQ送信毎、アンテナ毎に変更され(ステップ708)、再び基地局からデータが端末へ送信される(ステップ709)。この一連の再送プロセスは、再送回数が仕様規定に達するまで繰り返される。
本実施の形態において、上記処理によって、再送毎に異なった遅延量の循環遅延がアンテナ毎に与えられるため、周波数特性が変わり、周波数・時間ダイバーシティを得る。したがって、MIMO−OFDMにおいて、特定チャネルにおける固定的な落ち込みがなくなり、データの再送回数が削減できるため、平均的な基地局のスループット向上が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、例えば、MIMO−OFDM通信システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】MIMO−OFDM通信システムにおける基地局の構成を示すブロック図。
【図2】本実施の形態によるOFDM移動通信システムの基地局内における送受信部のブロック図(1)。
【図3】本実施の形態によるOFDM移動通信システムの基地局内における送受信部のブロック図(2)。
【図4】循環遅延及びサイクリックプリフィックス(CP)の説明図。
【図5】基地局−端末間データ送受信のフローチャート。
【図6】ACKが返ってくる場合のシーケンス図。
【図7】NAKが返ってくる場合のシーケンス図。
【図8】同一H−ARQ再送データを各アンテナで同期させて送信する場合のH−ARQ再送時の説明図。
【図9】H−ARQ再送データを各アンテナで独立させて送信する場合のH−ARQ再送時の説明図。
【符号の説明】
【0026】
101 ネットワーク
102 ラインインタフェース部
103 基地局
104 無線端末
201 S/P(シリアル/パラレル)変換器
202 H−ARQ制御器(再送制御部)
203 符号器
204 シンボルマッピング部
205 アンテナマッピング部
206 逆フーリエ変換部(IFFT)
207 循環遅延器
208a メモリ
208b 乱数発生器
209 循環遅延制御器
210 P/S(パラレル/シリアル)変換器
211 CP器
212 送信部
213 アンテナ
214 デュプレクサ
215 受信部
216 復調モジュール
217 ACK/NAK受信部
218 P/S変換器
219 変調部
220 復調部
221 フロントエンドユニット(FEU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを用いて空間多重し、かつ、直交周波数分割多重で通信する通信システムにおいて循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送する送信装置であって、
データを直交周波数分割多重し、前記複数のアンテナを割り当ててアンテナ毎のシンボルを生成するシンボル生成部と、
アンテナ毎に異なる複数の遅延量を、所定のタイミング毎に設定する循環遅延制御器と、
前記循環遅延制御器により設定された複数の遅延量に従い、アンテナ毎の各シンボルに対して循環遅延を与える循環遅延器と、
循環遅延されたシンボルを前記アンテナから出力する送信部と
を備え、
前記遅延量は、ひとつのアンテナに対して、第1の送信タイミングにおける第1の遅延量と第2の送信タイミングにおける第2の遅延量とが異なり、かつ、ひとつの送信タイミングに対してアンテナ毎に遅延量が異なる前記送信装置。
【請求項2】
アンテナ毎に異なる複数の遅延量を含む遅延パターンが複数記憶されたメモリ
をさらに備え、
前記循環遅延制御器は、前記メモリから遅延パターンを順次読み出して、該遅延パターンに含まれる複数の遅延量を所定のタイミング毎に前記循環遅延器に設定する請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
ランダムな又は分散された複数の遅延量を発生する乱数発生器
をさらに備え、
前記循環遅延制御器は、前記乱数発生器からの前記複数の遅延量を所定のタイミング毎に前記循環遅延器に設定する請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記所定のタイミングは、シンボルの送信タイミング、複数のシンボルを有するフレームの送信タイミング、及び、再送データの送信タイミングのいずれかである請求項1乃至3のいずれかに記載の送信装置。
【請求項5】
第1の送信タイミングで送信したデータを第2の送信タイミングで再送する再送制御部
をさらに備える請求項1乃至4のいずれかに記載の送信装置。
【請求項6】
同一の再送データを、アンテナ毎に異なる遅延量を与え、送信タイミングを同期させて前記複数のアンテナから送信する請求項1乃至5のいずれかに記載の送信装置。
【請求項7】
複数の再送データを、前記複数のアンテナのいずれかから独立に送信する請求項1乃至5のいずれかに記載の送信装置。
【請求項8】
請求項1に記載の送信装置と、
前記送信装置により送信されたデータが端末で正常に受信されたことを示す確認通知及び/又は該データが端末で正常に受信されずデータの再送を要求する再送要求を、前記アンテナを介して端末から受信する受信装置と
を備え、
端末から前記確認通知を所定時間内に受信しない場合又は前記再送要求を受信した場合に、前記送信装置からデータを端末に再送する基地局。
【請求項9】
複数のアンテナを用いて空間多重し、かつ、直交周波数分割多重で通信する通信システムにおいて循環ダイバーシティを用いてデータを送信及び再送するシンボル送信方法であって、
データを直交周波数分割多重し、複数のアンテナを割り当ててアンテナ毎のシンボルを生成するステップと、
アンテナ毎に異なる複数の遅延量を、所定のタイミング毎に設定するステップと、
設定された複数の遅延量に従い、アンテナ毎の各シンボルに対して循環遅延を与えるステップと、
循環遅延されたシンボルを前記アンテナから出力するステップと
を含み、
前記遅延量は、ひとつのアンテナに対して、第1の送信タイミングにおける第1の遅延量と第2の送信タイミングにおける第2の遅延量とが異なり、かつ、ひとつの送信タイミングに対してアンテナ毎に遅延量が異なる前記シンボル送信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−290823(P2009−290823A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144125(P2008−144125)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】