送信装置および送信方法
【課題】干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現する技術を提供する
【解決手段】送信部10は、送信アンテナ46から信号を送信する。処理部14中の確認部は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48、受信部12にて受信しているかを確認する。処理部14中の指示部は、確認部が信号の受信を未確認である場合、送信部10による送信を停止させる。表示部18は、確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する。
【解決手段】送信部10は、送信アンテナ46から信号を送信する。処理部14中の確認部は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48、受信部12にて受信しているかを確認する。処理部14中の指示部は、確認部が信号の受信を未確認である場合、送信部10による送信を停止させる。表示部18は、確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術に関し、特に所定の信号を送信する送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、他の送信装置が信号を送信しているタイミングに同一の周波数で信号を送信すると、信号同士に干渉が生じる。干渉が生じている環境は、電波環境が悪化している環境といえ、信号の送信に適さない。これに対応するため、例えば、送信サイト側に送信機と送信用アンテナとを有し、受信サイト側に受信機と受信用アンテナとを有するレーダ装置では、送信サイト側に、電波環境を調査する電波環境監視装置が設けられる。また、送信が行われていないタイミングで電波環境監視装置による受信が行われ、電波環境監視装置の出力により送信機と受信機の使用チャンネルが制御される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−27012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エリアワンセグメント放送とは、地上デジタル放送のひとつであるワンセグメント放送を利用し、放送事業者によって使用される送信電力よりも小さい送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。このようなエリアワンセグメント放送の送信装置を設置する場合、既存の放送局からの地上デジタル放送の信号を受信するテレビジョン受信装置に影響を与えないことが必要とされる。そのため、その場所で放送に使用されていないチャンネルを送信装置に設定してから、サービスが開始される。一方、エリアワンセグメント放送の送信装置の場合、前述のごとく、送信出力が小さいので、サービスエリアはたとえば数十メートルに制限される。そのため、送信装置を気軽に扱えるので、地上デジタル放送の中継局の存在などを確認しないまま、送信用のチャンネルが設定されてしまうことによって、妨害波を送信してしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の送信装置は、送信アンテナから信号を送信する送信部と、送信部が送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認する確認部と、確認部が信号の受信を未確認である場合、送信部による送信を停止させる指示部と、を備える。
【0007】
確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0008】
本発明の別の態様は、送信方法である。この方法は、送信アンテナから信号を送信するステップと、送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認するステップと、信号の受信を未確認である場合、送信を停止させるステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システムの構成を示す図である。
【図2】図1のエリアワンセグメント放送用送信装置の構成を示す図である。
【図3】図2のチャンネル別受信データメモリのデータ構造を示す図である。
【図4】図2の地域別チャンネルデータメモリのデータ構造を示す図である。
【図5】図2のエリアワンセグメント放送用送信装置による送信手順を示すフローチャートである。
【図6】図5の初期スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図5の第1処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図2の処理部の構成を示す図である。
【図9】図5の第2処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図2の処理部の別の構成を示す図である。
【図11】図11(a)−(b)は、エリアワンセグメント放送用送信装置間の干渉を説明するための図である。
【図12】図12(a)−(b)は、図11(a)−(b)に対応した距離対減衰量を示す図である。
【図13】図2の処理部のさらに別の構成を示す図である。
【図14】図5の第3処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】図14のサービス推奨チャンネルの算出手順を示すフローチャートである。
【図16】図2の処理部のさらに別の構成を示す図である。
【図17】図2の処理部に記憶される前回実行結果データのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、エリアワンセグメント放送におけるコンテンツ配信サービスを実現するために、コンテンツデータが含まれたOFDM信号を送信するエリアワンセグメント放送用送信装置に関する。前述のごとく、エリアワンセグメント放送用送信装置は気軽に扱えるので、地上デジタル放送の中継局の存在などを確認しないまま、送信用のチャンネルが設定されてしまうことによって、妨害波を送信してしまうおそれがある。これに対して最初に考えられる対策がキャリアセンスの実行である。その場所で使用されているチャンネルが判明するので、ユーザが、重複したチャンネルを無意識に設定しても、同一チャンネルには送信できなくなる。その結果、妨害波を送信してしまうリスクが減少する。
【0013】
しかしながら、キャリアセンスを実行しても、以下の懸念事項が残る。ひとつは、エリアワンセグメント放送用送信装置を設定するユーザが意図的にキャリアセンスを実行させないようにした場合である。別のひとつは、隣接する場所で希望するチャンネルを使用したエリアワンセグメント放送が送信されている場合である。また、別のひとつは、一部のチャンネルの地上デジタル放送の信号だけ受信した場合である。さらに別のひとつは、希望チャンネルでは、隣接チャンネル等の干渉の影響が強すぎて想定のサービスエリアが確保できない場合である。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システム200の構成を示す。エリアワンセグメント放送システム200は、エリアワンセグメント放送用送信装置100を含む。また、地上デジタル放送用送信装置102も設置される。ここで、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、エリアワンセグメント放送用エリア104を形成し、地上デジタル放送用送信装置102は、地上デジタル放送用エリア106を形成する。地上デジタル放送用送信装置102は、地上デジタル放送の信号を送信する。地上デジタル放送として公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。地上デジタル放送用送信装置102は、放送事業者によって設置されるとともに、運用されている。
【0015】
一方、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、地上デジタル放送用送信装置102等から送信される13セグメントのうちの少なくともワンセグメントだけを使用して信号を送信する。また、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、前述のごとく、地上デジタル放送用送信装置102の送信電力よりも小さな送信電力で信号を送信する。そのため、エリアワンセグメント放送用エリア104は、地上デジタル放送用エリア106よりも狭い。また、図1では省略されているが、エリアワンセグメント放送用送信装置100や地上デジタル放送用送信装置102からの信号を受信する受信装置が、エリアワンセグメント放送用エリア104や地上デジタル放送用エリア106内に存在する。
【0016】
図2は、エリアワンセグメント放送用送信装置100の構成を示す。エリアワンセグメント放送用送信装置100は、送信部10、受信部12、処理部14、入力部16、表示部18、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22、制御部24を含む。送信部10は、撮像素子26、マイク28、エンコード部30、OFDMフレーム構成部32、OFDM変調部34、周波数変換部36、RF部38、送信アンテナ46を含み、受信部12は、受信アンテナ48、チューナ部40、OFDM復調部42、デコード部44を含む。
【0017】
チューナ部40は、受信アンテナ48を介して、図示しないエリアワンセグメント放送システム200や他のエリアワンセグメント放送用送信装置100から送信された信号を受信する。また、チューナ部40は、受信アンテナ48を介して、送信アンテナ46から送信された信号も受信する。チューナ部40は、所定のチャンネルに含まれた13セグメントの信号を同時に受信可能である。チューナ部40が受信するチャンネルは、処理部14によって設定される。チューナ部40は、受信した信号をOFDM復調部42に出力する。
【0018】
OFDM復調部42は、チューナ部40からの信号を入力する。OFDM復調部42は、信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。OFDM復調部42は、周波数領域の信号をサブキャリア単位に復調する。OFDM復調部42は、復調結果をデコード部44に出力する。デコード部44は、OFDM復調部42からの復調結果を入力する。デコード部44は、復調結果に対してTMCCを捕捉しデコードする。
【0019】
撮像素子26は、動画像あるいは静止画像(以下、これらを「画像」と総称する)を撮像する。撮像素子26は、撮像した画像のデジタルデータ(以下、これを「画像」という)をエンコード部30に出力する。マイク28は、音声を取得する。マイク28は、取得した音声のデジタルデータ(以下、これを「音声」という)をエンコード部30に出力する。画像および音声は、エリアワンセグメント放送用送信装置100によって配信されるコンテンツデータに相当する。なお、コンテンツデータは、これに限定されるものではなく、他のものであってもよい。例えば、予め記憶された画像や、図示しないネットワークを介して取得された情報がコンテンツとされてもよい。エンコード部30は、撮像素子26から画像を入力するとともに、マイク28から音声も入力する。エンコード部30は、画像および音声に対してエンコードを実行する。なお、エンコードには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。エンコード部30は、エンコード結果(以下、「データ」という)をOFDMフレーム構成部32に出力する。
【0020】
OFDMフレーム構成部32は、エンコード部30からデータを入力する。OFDMフレーム構成部32は、シンボルタイミングにしたがってデータをOFDMシンボルに配置させる。なお、フレームに含まれた複数のOFDMシンボルは、フレーム信号と総称される。また、OFDMフレーム構成部32は、データに対して誤り訂正符号を付加してもよい。OFDMフレーム構成部32において生成される信号は、周波数領域のフレーム信号に相当する。OFDMフレーム構成部32は、周波数領域のフレーム信号をOFDM変調部34に出力する。
【0021】
OFDM変調部34は、OFDMフレーム構成部32からの周波数領域の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行することによって、有効シンボルを生成する。また、OFDM変調部34は、GI(Guard interval)を有効シンボルに付加することによって、ベースバンドのOFDMシンボルを生成する。OFDM変調部34は、ベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換部36に出力する。
【0022】
周波数変換部36は、OFDM変調部34から、ベースバンドのOFDMシンボルを入力する。周波数変換部36は、局部信号によってベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換することによって、無線周波数のOFDMシンボルを生成する。周波数変換部36は、無線周波数のOFDMシンボルをRF部38に出力する。RF部38は、周波数変換部36からの無線周波数のOFDMシンボルを増幅した後、送信アンテナ46から送信する。
【0023】
入力部16は、ユーザからの入力を受けつける。入力部16は、キーボード等の操作部を含んでいてもよい。入力部16は、入力した内容を処理部14に出力する。表示部18は、処理部14からのデータを受けつけ、データを表示する。チャンネル別受信データメモリ20は、処理部14から受けつけたキャリアセンスの結果を記憶する。キャリアセンスは、後述のごとく、受信部12を介して処理部14にてなされる。図3は、チャンネル別受信データメモリ20のデータ構造を示す。図示のごとく、13チャンネルから52チャンネルのそれぞれに対してEフラグ、Fフラグ、network_id、service_id、remote_control_key_ID、エリアワンセグ情報IDが含まれる。
【0024】
Eフラグは、チャンネルの使用状況を示す。Eフラグが「1」であればチャンネルが使用されていることを検出したことを示し、Eフラグが「0」であればチャンネルが使用されてないことを示す。Fフラグは、Eフラグが「1」の場合に、さらに広域放送としての地上デジタル放送によってチャンネルが使用されていることを示す。Fフラグが「1」であれば広域放送としての地上デジタル放送の信号にチャンネルが使用されていることを示し、Fフラグが「0」であれば広域放送としての地上デジタル放送の信号にチャンネルが使用されていないことを示す。地上デジタル放送は、基幹放送ともよばれる。図2に戻る。
【0025】
地域別チャンネルデータメモリ22は、予め登録されているチャンネルに関するデータを記憶する。図4は、地域別チャンネルデータメモリ22のデータ構造を示す。図示ごとく、地上デジタル放送の放送局ごとに、送信地点、送信電力、基幹放送/エリアワンセグフラグ、network_id、service_id、remote_control_key_ID、エリアワンセグ情報IDが含まれる。図2に戻る。
【0026】
処理部14は、送信部10、受信部12に対して所定の処理を実行する。ここでは、特に、送信部10から信号を送信するまでの処理を説明する。信号を送信するまでの処理とは、例えば、チャンネル、送信電力等を決定するための処理である。処理部14は、チャンネル、送信電力等を決定するために、受信部12、入力部16、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22を使用する。以下では、処理部14の処理をフローチャートをもとに説明する。
【0027】
図5は、エリアワンセグメント放送用送信装置100による送信手順を示すフローチャートである。入力部16からの入力をもとに、処理部14は、希望チャンネルを設定するとともに、サービス距離を設定する(S10)。サービス距離は、図1に示されたエリアワンセグメント放送用エリア104の半径に相当する。処理部14は、初期チャンネルを設定して、チャンネルスキャンを開始する(S12)。ここで、F=0、E=0に設定される。Eは、前述のEフラグを示し、Fは、前述のFフラグを示す。
【0028】
処理部14は、初期スキャンを実行する(S14)。E=0、F=0であれば(S16のY)、つまりチャンネルが空いていれば、処理部14は第1処理を実行する(S18)。E=0、F=0でなく(S16のN)、E=1、F=0であれば(S20のY)、つまりチャンネルは使用されているものの、広域の地上デジタル放送に使用されていなければ、処理部14は、第2処理を実行する(S22)。E=1、F=0でなく(S20のN)、E=1、F=1であれば(S24のY)、つまり広域の地上デジタル放送にチャンネルが使用されていれば、処理部14は、第3処理を実行する(S26)。E=1、F=1でなければ(S24のN)、処理は終了される。以下では、(1)初期スキャン、(2)第1処理、(3)第2処理、(4)第3処理の順に説明する。
【0029】
(1)初期スキャン
図6は、初期スキャンの処理手順を示すフローチャートである。受信部12が信号を受信できれば(S30のY)、処理部14は、チャンネル別受信レベルをチャンネル別受信データメモリ20に保存するとともに、E=1に設定する(S32)。NITを取得でき(S34のY)、広域の地上デジタル放送すなわち基幹放送であれば(S36のY)、処理部14は、チャンネル別地域コード、その他の周波数をチャンネル別受信データメモリ20に保存するとともにF=1に設定する(S42)。NITを取得できず(S34のN)、あるいは基幹放送でなければ(S36のN)、エリアワンセグ放送であるかが確認される。
【0030】
エリアワンセグ放送であれば(S38のY)、処理部14は、エリアワンセグ情報IDをチャンネル別受信データメモリ20に保存する(S40)。エリアワンセグ情報IDはそのエリアワンセグ放送を特定するための情報で、たとえばnetwork_IDやservice_ID、original_network_ID、TMCC情報の一部やその他の情報を組み合わせたものである。エリアワンセグ放送でなければ(S38のN)、ステップ40はスキップされる。一方、受信部12が信号をできなければ(S30のN)、ステップ32からステップ42はスキップされる。最終チャンネルまでスキャンされていなければ(S44のN)、チャンネルを更新し(S46)、ステップ30に戻る。最終チャンネルまでスキャンされていれば(S44のY)、処理は終了される。
【0031】
(2)第1処理
図7は、第1処理の手順を示すフローチャートである。送信部10は、送信アンテナ46から信号を送信する。ここでは、希望チャンネルで微弱送信がなされる(S50)。図8は、処理部14の構成を示す。処理部14は、確認部50、指示部52を含む。確認部50は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48にて受信しているか、つまり送信内容通り受信しているかを確認する。図7に戻る。受信している場合(S52のY)、入力部16から地域が入力される(S54)。処理部14は、入力された地域と、地域別チャンネルデータメモリ22とデータを照合する(S56)。希望チャンネルが照合データにあれば(S58のY)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけ(S60)、ステップ56に戻る。
【0032】
希望チャンネルが照合データになければ(S58のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S62)。受信していない場合(S52のN)、つまり図8の確認部50が信号の受信を未確認である場合、指示部52は送信部10による送信を停止させるとともに、表示部18は、その旨を通知する。図7に戻り、例えば、周辺環境を確認できないため送信できませんのメッセージが表示される(S64)。このような処理によって、ユーザがキャリアセンスを意図的にさせないようにした場合に、受信できないことが意図的かが判別される。つまり、自ら送信した信号が確認できないときは周辺環境が確認できないので、送信がなされない。
【0033】
(3)第2処理
図9は、第2処理の手順を示すフローチャートである。入力部16から地域が入力される(S70)。処理部14は、入力された地域と、地域別チャンネルデータメモリ22とデータを照合する(S72)。希望チャンネルが照合データにない場合(S74のN)、処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20とのデータ照合を実行する(S76)。希望チャンネルが照合データにある場合(S78のY)、エリアワンセグ放送であり(S80のY)、受信レベルが基準値以下であれば(S82のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。
【0034】
図10は、処理部14の別の構成を示す。処理部14は、測定部60、推定部62、取得部64、送信電力決定部66を含む。図示しない受信部12は、他の送信装置からの信号を受信する。ここで、他の送信装置には、エリアワンセグメント放送用送信装置100、広域の地上デジタル放送用送信装置102が含まれる。測定部60は、受信部12が受信した信号に対する受信電力を測定する。推定部62は、送信部10が受信した信号の送信元である他の送信装置との距離をもとに、受信電力を推定する。取得部64は、推定部62が推定した受信電力よりも、測定部60が測定した受信電力の方が小さい場合に、差分を正のマージンとして取得する。送信電力決定部66は、取得部64が取得したマージンを加えながら、他の送信装置からの信号を受信装置が所定の位置で受信する際のDU比がしきい値よりも大きくなるように、送信電力を決定する。図示しない送信部10は、送信電力決定部66が決定した送信電力によって、信号を送信する。
【0035】
ここでは、このような処理をさらに詳細に説明する。相手からの電波の電界強度が基準(例えば51[dBμV/m])以上であれば、現在の送信地点が相手のエリアワンセグメント放送用エリア104に入っていることになり、送信は不可である。相手からの電波の電界強度が基準(例えば51[dBμV/m])未満であれば、相手のエリアワンセグメント放送用エリア104に対して自分の電波がどれ位の電波強度になるかを計算することになる。通常損失を計算する一番基本的な方法は自由空間損失(これは電力の損失計算式)である。
L=((4πd)/λ)2 [dB] 式(1)
ここで、dは送信局と測定点との距離、λは送信電波の周波数である。
【0036】
相手からの電波が自由空間損失で計算した場合に対して通常は差分がある。これは実際にはビルや山など遮蔽物や大地反射があるからで、多くの場合差分はより減衰した状態になる。そのような状況が、図11(a)−(b)のように示される。図11(a)−(b)は、エリアワンセグメント放送用送信装置100間の干渉を説明するための図である。図11(a)において、第1エリアワンセグメント放送用送信装置100aが自局に相当し、第2エリアワンセグメント放送用送信装置100bが相手局に相当する。また、第2エリアワンセグメント放送用送信装置100bは、第2エリアワンセグメント放送用エリア104bを形成しており、第2エリアワンセグメント放送用エリア104b内に障害物120が存在する。例えば、図11(a)では主な減衰原因は相手局から100mのところにある建物によるものとする。また、図12(a)−(b)は、距離対減衰量を示す。図11(a)の場合の減衰の状態は、図12(a)のようになり、建物のところでNdB(ここでは10dB)の減衰が発生するとしている。
【0037】
図11(b)も、図11(a)と同様に示されるが、第2エリアワンセグメント放送用エリア104b外に、障害物120が存在する。例えば、図11(b)では主な減衰原因は相手局から600mのところにある建物によるものとする。その場合の減衰の状態は図12(b)のようになり、建物のところでNdB(ここでは10dB)の減衰が発生するとしている。いずれにしても同じ建物による相手局の減衰とこちらの電波の減衰量はほぼ同じと考えられることから、エリアワンセグメント放送用エリア104上での減衰はこの差分を前提として考えてよいことになる。すなわち図11(b)、図12(b)のような場合であっても図11(a)、図12(a)の場合と同じに扱ってよいことになる。
【0038】
これを式で書くと以下のようになる。相手局からの距離をd0[m]とする。また波長をλ0とする。自由空間損失L0は式(1)をもとに次のように示される。
L0=((4πd0)/λ0)2 [dB] 式(2)
相手局の出力をP0[dBm]として、実際に受信できた電力をPg[dBm]とすると、損失の差分Ng[dB]は、本来P0−L0[dBm]で受信できるべきところが、Pg[dBm]になったので次のように示される。
Ng=P0−L0−Pg[dB] 式(3)
ただしNgは正のときに余分な減衰があることを示し、取得部64において取得されるマージンに相当する。
【0039】
相手のエリアワンセグメント放送用エリア104の限界が51[dBμV/m]とすると、dBmとdBμV/mの換算差20log(λ/π)−10log(4×73.13)−90=131であることから、これは51−131=−80dBmに相当する。相手局のこの限界にあるところが相手局からd1[m]のところにあるとする。相手局から距離d1[m]での損失L1[dB]は次のように示される。
L1=((4πd1)/λ0)2 式(4)
相手局の出力がP0[dBm]であるから、次の式を逆算することによって、d1が導出される。
P0−L1=−80[dBm] 式(5)
【0040】
相手のエリアワンセグメント放送用エリア104までの自局からの距離d2[m]は、d2=d−d1[m]となる。そのため、自局の相手のエリアワンセグメント放送用エリア104の位置までの減衰量L2[dBm]は次のように示される。
L2=((4πd2)/λ0)2 式(6)
自局の出力をP2[dBm]とすると、自由空間を仮定すれば相手のエリアワンセグメント放送用エリア104上での自局の電力P3[dBm]は次のように示される。
P3=P2−L2[dBm] 式(7)
これに上記の差分Ng[dB]がマージン(減衰する方が正の符号なので)が見込めるので、式(5)と(7)から、相手のエリアワンセグメント放送用エリア104上におけるDU比は、次のように示される。
D/U=−80−P3+Ng[dB] 式(8)
このD/U[dB]が混信基準である11[dB]以上になるようなP2が、送信電力決定部66によって決定される。図9に戻る。
【0041】
希望チャンネルが照合データにない場合(S78のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。希望チャンネルが照合データにある場合(S74のY)、あるいはエリアワンセグ放送でない場合(S80のN)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけ(S82)、ステップ72に戻る。
【0042】
受信レベルが基準値以下でない場合(S82のN)、入力部16は、IDの入力を受けつける(S84)。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20をもとに該当チャンネルのIDを照合する(S86)。IDが一致すれば(S88のY)相手のサービスと同じグループのサービスであると判断できるので、電波がある程度干渉しても良いことを前提に送信可能と判断し、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。IDが一致しなければ(S88のN)、相手のサービスは全く別のグループのサービスであると判断し、相手に対して干渉するような電波を出力してはいけないと判断し、ステップ72に戻る。ここでは、図13を使用して、ステップ82からステップ90までの処理を説明する。
【0043】
図13は、処理部14のさらに別の構成を示す。処理部14は、測定部60、受付部70、送信決定部72を含む。測定部60は、他の送信装置からの信号を受信した場合に、受信電力を測定する。受付部70は、測定部60において測定した受信電力がしきい値よりも大きい場合に、放送サービスを識別するための識別番号の入力を受けつける。識別番号は、例えば、network_id、service_id、original_network_id、TMCCのデータ等である。送信決定部72は、受付部70が受けつけた識別番号と、受信した信号に含まれた識別番号とが一致する場合に、信号の送信を決定する。送信部10は、送信決定部72が送信を決定した場合に、信号を送信する。このように、隣接する場所で希望するチャンネルを使用した同一識別番号のエリアワンセグメント放送があった場合、スキャンによりその電波のレベルを確認する。その電波のレベルが相当低い基準以下であった場合は送信を行う。その電波のレベルが比較的高い場合は、隣接する場所でサービスを行っているユーザと電波強度などについて了解を得てから同一の識別番号を設定し、送信する。
【0044】
(4)第3処理
図14は、第3処理の手順を示すフローチャートである。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22をもとに、データ照合を実行する(S100)。処理部14は、サービス推奨チャンネルを算出する(S102)。ここでは、サービス推奨チャンネルを算出するための処理を図15をもとに説明する。図15は、サービス推奨チャンネルの算出手順を示すフローチャートである。処理部14は、データ照合を実行し(S130)、空きチャンネルリストを作成する(S132)。処理部14は、初期空きチャンネルを設定する(S134)。微弱送信を行った後(S136)、処理部14は、設定チャンネルを受信設定する(S138)。
【0045】
処理部14は、受信状態を空きチャンネルリストに記録する(S140)。受信状態として、BER、CNRが記録される。空きチャンネルリストが最終でなければ(S142のN)、次の空きチャンネルに設定され(S144)、ステップ136に戻る。空きチャンネルリストが最終であれば(S142のY)、処理部14は、BER=0の空きチャンネルを読み出し(S146)、空きチャンネルCNR順にチャンネルを並び替える(S148)。表示部18は、推奨チャンネルを表示する(S150)。
【0046】
さらに、このような処理を実行するための構成を説明する。図16は、処理部14のさらに別の構成を示す。処理部14は、測定部60、空きチャンネルリスト80、付与部82を含む。送信部10は、複数のチャンネルのいずれかを切りかえながら、送信アンテナ46から信号を送信する。送信部10は、所定の位置における伝搬損失に応じた値だけ送信電力を低減させてもよい。受信部12は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48にてチャンネルごとに受信する。
【0047】
測定部60は、受信部12が受信した信号に対する受信品質をチャンネルごとに測定する。受信品質として、前述のごとく、誤り率(BER)とCNRが測定されている。測定部60は、測定した受信品質を空きチャンネルリスト80に記憶させる。付与部82は、空きチャンネルリスト80が測定した受信品質を空きチャンネルリスト80から抽出し、受信品質をもとに、放送に適したチャンネルの優先順位をチャンネルに付与する。ここでは、誤り率が低くなり、CNRが高くなるほど、高い優先順位をチャンネルに付与する。表示部18は、付与部82が付与したチャンネルの優先順位をもとに、放送に適したチャンネルに関する情報を通知する。
【0048】
希望チャンネルに隣接したチャンネルの電波の電力が強すぎてサービスエリアが確保できない場合、ある程度のチャンネルの受信レベルはRFのAGCやIFのAGCの関係でわかる。しかしながら、RF入力の総合電力や隣接チャンネルとのDU比の関係などを正確に把握することは困難である。そこでサービスエリア内で希望チャンネルが想定可能な最小電力となる電波を受信部12で受信させるように送信し、受信状態をBERやCNRで評価することによって、希望チャンネルが有効かを判断する。またこのような処理を空きチャンネルで行うことにより、ユーザに対してBERやCNRの状況が良い推奨チャンネルは提示される。図14に戻る。
【0049】
希望チャンネルが照合データになく(S104のN)、希望チャンネルが推奨でなければ(S106のN)、表示部18は、推奨チャンネルを表示する(S108)。チャンネルを変更する場合(S110のY)、ステップ100に戻る。希望チャンネルが照合データにあり(S104のY)、エリアワンセグメント放送であり(S112のY)、受信レベルが基準値以下であれば(S118のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。エリアワンセグメント放送でなければ(S112のN)、表示部18は、推奨チャンネルを表示し(S114)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけて(S116)、ステップ100に戻る。
【0050】
受信レベルが基準値以下でない場合(S118のN)、図9のS82でNの場合の動作と同様であり、入力部16は、IDの入力を受けつける(S120)。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20をもとに該当チャンネルのIDを照合する(S122)。IDが一致すれば(S124のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。IDが一致しなければ(S124のN)、ステップ114に戻る。希望チャンネルが推奨である場合(S106のY)、あるいはチャンネルを変更しない場合(S110のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。
【0051】
なお、図16の付与部82は、放送のために過去に使用したチャンネルに対する受信品質が許容値よりも良好であれば、当該チャンネルに対する優先順位を高くしてもよい。例えば、前日に送信したチャンネルが、希望チャンネルのデフォルトとして、設定される。つまり、前日に送信したチャンネルを自動で希望チャンネルと仮定し、当該チャンネルにおいて新たな送信装置からの送信が検出され、送信ができなくなった場合にその旨が表示される。図17は、処理部14に記憶される前回実行結果データのデータ構造を示す図である。希望チャンネルが使用された場合に、前回出力チャンネル、前回判定日時、前回送信終了時刻、前回network_id、前回service_id、前回remote_control_key_ID、前回エリアワンセグ情報IDが記憶される。
【0052】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0053】
本発明の実施例によれば、送信アンテナから送信した信号を受信アンテナから受信しているかを確認し、未確認である場合に送信を停止するので、受信アンテナ等を意図的に隠している状況を検出できる。また、受信アンテナ等を意図的に隠している状況が検出されるので、キャリアセンスを正常に動作させることができる。また、キャリアセンスが正常に動作されるので、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現できる。また、未確認である場合にその旨を通知するので、通信環境をユーザに知らしめることができる。
【0054】
また、送信アンテナから送信した信号をもとにBERとCNRをチャンネルごとに測定し、各チャンネルに対して優先順位を付与して、推奨チャンネルを決定するので、隣接チャンネル干渉等の影響を考慮できる。また、送信アンテナから送信した信号を低減させるので、所定の位置におけるBERとCNRを容易に推定できる。また、前回に使用したチャンネルの優先順位を高くするので、同一のチャンネルを使用しやすくできる。また、受信電力がある程度大きくても、同一の識別番号であれば、信号を送信するので、広いエリアにおいて連続したサービスを提供できる。また、障害物の影響をマージンとして送信電力を決定する際に考慮するので、障害物が存在する場合に適した送信電力を使用できる。
【0055】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0056】
10 送信部、 12 受信部、 14 処理部、 16 入力部、 18 表示部、 20 チャンネル別受信データメモリ、 22 地域別チャンネルデータメモリ、 24 制御部、 26 撮像素子、 28 マイク、 30 エンコード部、 32 OFDMフレーム構成部、 34 OFDM変調部、 36 周波数変換部、 38 RF部、 40 チューナ部、 42 OFDM復調部、 44 デコード部、 46 送信アンテナ、 48 受信アンテナ、 50 確認部、 52 指示部、 60 測定部、 62 推定部、 64 取得部、 66 送信電力決定部、 70 受付部、 72 送信決定部、 80 空きチャンネルリスト、 82 付与部、 100 エリアワンセグメント放送用送信装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術に関し、特に所定の信号を送信する送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、他の送信装置が信号を送信しているタイミングに同一の周波数で信号を送信すると、信号同士に干渉が生じる。干渉が生じている環境は、電波環境が悪化している環境といえ、信号の送信に適さない。これに対応するため、例えば、送信サイト側に送信機と送信用アンテナとを有し、受信サイト側に受信機と受信用アンテナとを有するレーダ装置では、送信サイト側に、電波環境を調査する電波環境監視装置が設けられる。また、送信が行われていないタイミングで電波環境監視装置による受信が行われ、電波環境監視装置の出力により送信機と受信機の使用チャンネルが制御される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−27012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エリアワンセグメント放送とは、地上デジタル放送のひとつであるワンセグメント放送を利用し、放送事業者によって使用される送信電力よりも小さい送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。このようなエリアワンセグメント放送の送信装置を設置する場合、既存の放送局からの地上デジタル放送の信号を受信するテレビジョン受信装置に影響を与えないことが必要とされる。そのため、その場所で放送に使用されていないチャンネルを送信装置に設定してから、サービスが開始される。一方、エリアワンセグメント放送の送信装置の場合、前述のごとく、送信出力が小さいので、サービスエリアはたとえば数十メートルに制限される。そのため、送信装置を気軽に扱えるので、地上デジタル放送の中継局の存在などを確認しないまま、送信用のチャンネルが設定されてしまうことによって、妨害波を送信してしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の送信装置は、送信アンテナから信号を送信する送信部と、送信部が送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認する確認部と、確認部が信号の受信を未確認である場合、送信部による送信を停止させる指示部と、を備える。
【0007】
確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0008】
本発明の別の態様は、送信方法である。この方法は、送信アンテナから信号を送信するステップと、送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認するステップと、信号の受信を未確認である場合、送信を停止させるステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システムの構成を示す図である。
【図2】図1のエリアワンセグメント放送用送信装置の構成を示す図である。
【図3】図2のチャンネル別受信データメモリのデータ構造を示す図である。
【図4】図2の地域別チャンネルデータメモリのデータ構造を示す図である。
【図5】図2のエリアワンセグメント放送用送信装置による送信手順を示すフローチャートである。
【図6】図5の初期スキャンの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図5の第1処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図2の処理部の構成を示す図である。
【図9】図5の第2処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図2の処理部の別の構成を示す図である。
【図11】図11(a)−(b)は、エリアワンセグメント放送用送信装置間の干渉を説明するための図である。
【図12】図12(a)−(b)は、図11(a)−(b)に対応した距離対減衰量を示す図である。
【図13】図2の処理部のさらに別の構成を示す図である。
【図14】図5の第3処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】図14のサービス推奨チャンネルの算出手順を示すフローチャートである。
【図16】図2の処理部のさらに別の構成を示す図である。
【図17】図2の処理部に記憶される前回実行結果データのデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、エリアワンセグメント放送におけるコンテンツ配信サービスを実現するために、コンテンツデータが含まれたOFDM信号を送信するエリアワンセグメント放送用送信装置に関する。前述のごとく、エリアワンセグメント放送用送信装置は気軽に扱えるので、地上デジタル放送の中継局の存在などを確認しないまま、送信用のチャンネルが設定されてしまうことによって、妨害波を送信してしまうおそれがある。これに対して最初に考えられる対策がキャリアセンスの実行である。その場所で使用されているチャンネルが判明するので、ユーザが、重複したチャンネルを無意識に設定しても、同一チャンネルには送信できなくなる。その結果、妨害波を送信してしまうリスクが減少する。
【0013】
しかしながら、キャリアセンスを実行しても、以下の懸念事項が残る。ひとつは、エリアワンセグメント放送用送信装置を設定するユーザが意図的にキャリアセンスを実行させないようにした場合である。別のひとつは、隣接する場所で希望するチャンネルを使用したエリアワンセグメント放送が送信されている場合である。また、別のひとつは、一部のチャンネルの地上デジタル放送の信号だけ受信した場合である。さらに別のひとつは、希望チャンネルでは、隣接チャンネル等の干渉の影響が強すぎて想定のサービスエリアが確保できない場合である。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システム200の構成を示す。エリアワンセグメント放送システム200は、エリアワンセグメント放送用送信装置100を含む。また、地上デジタル放送用送信装置102も設置される。ここで、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、エリアワンセグメント放送用エリア104を形成し、地上デジタル放送用送信装置102は、地上デジタル放送用エリア106を形成する。地上デジタル放送用送信装置102は、地上デジタル放送の信号を送信する。地上デジタル放送として公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。地上デジタル放送用送信装置102は、放送事業者によって設置されるとともに、運用されている。
【0015】
一方、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、地上デジタル放送用送信装置102等から送信される13セグメントのうちの少なくともワンセグメントだけを使用して信号を送信する。また、エリアワンセグメント放送用送信装置100は、前述のごとく、地上デジタル放送用送信装置102の送信電力よりも小さな送信電力で信号を送信する。そのため、エリアワンセグメント放送用エリア104は、地上デジタル放送用エリア106よりも狭い。また、図1では省略されているが、エリアワンセグメント放送用送信装置100や地上デジタル放送用送信装置102からの信号を受信する受信装置が、エリアワンセグメント放送用エリア104や地上デジタル放送用エリア106内に存在する。
【0016】
図2は、エリアワンセグメント放送用送信装置100の構成を示す。エリアワンセグメント放送用送信装置100は、送信部10、受信部12、処理部14、入力部16、表示部18、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22、制御部24を含む。送信部10は、撮像素子26、マイク28、エンコード部30、OFDMフレーム構成部32、OFDM変調部34、周波数変換部36、RF部38、送信アンテナ46を含み、受信部12は、受信アンテナ48、チューナ部40、OFDM復調部42、デコード部44を含む。
【0017】
チューナ部40は、受信アンテナ48を介して、図示しないエリアワンセグメント放送システム200や他のエリアワンセグメント放送用送信装置100から送信された信号を受信する。また、チューナ部40は、受信アンテナ48を介して、送信アンテナ46から送信された信号も受信する。チューナ部40は、所定のチャンネルに含まれた13セグメントの信号を同時に受信可能である。チューナ部40が受信するチャンネルは、処理部14によって設定される。チューナ部40は、受信した信号をOFDM復調部42に出力する。
【0018】
OFDM復調部42は、チューナ部40からの信号を入力する。OFDM復調部42は、信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)を実行することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。OFDM復調部42は、周波数領域の信号をサブキャリア単位に復調する。OFDM復調部42は、復調結果をデコード部44に出力する。デコード部44は、OFDM復調部42からの復調結果を入力する。デコード部44は、復調結果に対してTMCCを捕捉しデコードする。
【0019】
撮像素子26は、動画像あるいは静止画像(以下、これらを「画像」と総称する)を撮像する。撮像素子26は、撮像した画像のデジタルデータ(以下、これを「画像」という)をエンコード部30に出力する。マイク28は、音声を取得する。マイク28は、取得した音声のデジタルデータ(以下、これを「音声」という)をエンコード部30に出力する。画像および音声は、エリアワンセグメント放送用送信装置100によって配信されるコンテンツデータに相当する。なお、コンテンツデータは、これに限定されるものではなく、他のものであってもよい。例えば、予め記憶された画像や、図示しないネットワークを介して取得された情報がコンテンツとされてもよい。エンコード部30は、撮像素子26から画像を入力するとともに、マイク28から音声も入力する。エンコード部30は、画像および音声に対してエンコードを実行する。なお、エンコードには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。エンコード部30は、エンコード結果(以下、「データ」という)をOFDMフレーム構成部32に出力する。
【0020】
OFDMフレーム構成部32は、エンコード部30からデータを入力する。OFDMフレーム構成部32は、シンボルタイミングにしたがってデータをOFDMシンボルに配置させる。なお、フレームに含まれた複数のOFDMシンボルは、フレーム信号と総称される。また、OFDMフレーム構成部32は、データに対して誤り訂正符号を付加してもよい。OFDMフレーム構成部32において生成される信号は、周波数領域のフレーム信号に相当する。OFDMフレーム構成部32は、周波数領域のフレーム信号をOFDM変調部34に出力する。
【0021】
OFDM変調部34は、OFDMフレーム構成部32からの周波数領域の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行することによって、有効シンボルを生成する。また、OFDM変調部34は、GI(Guard interval)を有効シンボルに付加することによって、ベースバンドのOFDMシンボルを生成する。OFDM変調部34は、ベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換部36に出力する。
【0022】
周波数変換部36は、OFDM変調部34から、ベースバンドのOFDMシンボルを入力する。周波数変換部36は、局部信号によってベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換することによって、無線周波数のOFDMシンボルを生成する。周波数変換部36は、無線周波数のOFDMシンボルをRF部38に出力する。RF部38は、周波数変換部36からの無線周波数のOFDMシンボルを増幅した後、送信アンテナ46から送信する。
【0023】
入力部16は、ユーザからの入力を受けつける。入力部16は、キーボード等の操作部を含んでいてもよい。入力部16は、入力した内容を処理部14に出力する。表示部18は、処理部14からのデータを受けつけ、データを表示する。チャンネル別受信データメモリ20は、処理部14から受けつけたキャリアセンスの結果を記憶する。キャリアセンスは、後述のごとく、受信部12を介して処理部14にてなされる。図3は、チャンネル別受信データメモリ20のデータ構造を示す。図示のごとく、13チャンネルから52チャンネルのそれぞれに対してEフラグ、Fフラグ、network_id、service_id、remote_control_key_ID、エリアワンセグ情報IDが含まれる。
【0024】
Eフラグは、チャンネルの使用状況を示す。Eフラグが「1」であればチャンネルが使用されていることを検出したことを示し、Eフラグが「0」であればチャンネルが使用されてないことを示す。Fフラグは、Eフラグが「1」の場合に、さらに広域放送としての地上デジタル放送によってチャンネルが使用されていることを示す。Fフラグが「1」であれば広域放送としての地上デジタル放送の信号にチャンネルが使用されていることを示し、Fフラグが「0」であれば広域放送としての地上デジタル放送の信号にチャンネルが使用されていないことを示す。地上デジタル放送は、基幹放送ともよばれる。図2に戻る。
【0025】
地域別チャンネルデータメモリ22は、予め登録されているチャンネルに関するデータを記憶する。図4は、地域別チャンネルデータメモリ22のデータ構造を示す。図示ごとく、地上デジタル放送の放送局ごとに、送信地点、送信電力、基幹放送/エリアワンセグフラグ、network_id、service_id、remote_control_key_ID、エリアワンセグ情報IDが含まれる。図2に戻る。
【0026】
処理部14は、送信部10、受信部12に対して所定の処理を実行する。ここでは、特に、送信部10から信号を送信するまでの処理を説明する。信号を送信するまでの処理とは、例えば、チャンネル、送信電力等を決定するための処理である。処理部14は、チャンネル、送信電力等を決定するために、受信部12、入力部16、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22を使用する。以下では、処理部14の処理をフローチャートをもとに説明する。
【0027】
図5は、エリアワンセグメント放送用送信装置100による送信手順を示すフローチャートである。入力部16からの入力をもとに、処理部14は、希望チャンネルを設定するとともに、サービス距離を設定する(S10)。サービス距離は、図1に示されたエリアワンセグメント放送用エリア104の半径に相当する。処理部14は、初期チャンネルを設定して、チャンネルスキャンを開始する(S12)。ここで、F=0、E=0に設定される。Eは、前述のEフラグを示し、Fは、前述のFフラグを示す。
【0028】
処理部14は、初期スキャンを実行する(S14)。E=0、F=0であれば(S16のY)、つまりチャンネルが空いていれば、処理部14は第1処理を実行する(S18)。E=0、F=0でなく(S16のN)、E=1、F=0であれば(S20のY)、つまりチャンネルは使用されているものの、広域の地上デジタル放送に使用されていなければ、処理部14は、第2処理を実行する(S22)。E=1、F=0でなく(S20のN)、E=1、F=1であれば(S24のY)、つまり広域の地上デジタル放送にチャンネルが使用されていれば、処理部14は、第3処理を実行する(S26)。E=1、F=1でなければ(S24のN)、処理は終了される。以下では、(1)初期スキャン、(2)第1処理、(3)第2処理、(4)第3処理の順に説明する。
【0029】
(1)初期スキャン
図6は、初期スキャンの処理手順を示すフローチャートである。受信部12が信号を受信できれば(S30のY)、処理部14は、チャンネル別受信レベルをチャンネル別受信データメモリ20に保存するとともに、E=1に設定する(S32)。NITを取得でき(S34のY)、広域の地上デジタル放送すなわち基幹放送であれば(S36のY)、処理部14は、チャンネル別地域コード、その他の周波数をチャンネル別受信データメモリ20に保存するとともにF=1に設定する(S42)。NITを取得できず(S34のN)、あるいは基幹放送でなければ(S36のN)、エリアワンセグ放送であるかが確認される。
【0030】
エリアワンセグ放送であれば(S38のY)、処理部14は、エリアワンセグ情報IDをチャンネル別受信データメモリ20に保存する(S40)。エリアワンセグ情報IDはそのエリアワンセグ放送を特定するための情報で、たとえばnetwork_IDやservice_ID、original_network_ID、TMCC情報の一部やその他の情報を組み合わせたものである。エリアワンセグ放送でなければ(S38のN)、ステップ40はスキップされる。一方、受信部12が信号をできなければ(S30のN)、ステップ32からステップ42はスキップされる。最終チャンネルまでスキャンされていなければ(S44のN)、チャンネルを更新し(S46)、ステップ30に戻る。最終チャンネルまでスキャンされていれば(S44のY)、処理は終了される。
【0031】
(2)第1処理
図7は、第1処理の手順を示すフローチャートである。送信部10は、送信アンテナ46から信号を送信する。ここでは、希望チャンネルで微弱送信がなされる(S50)。図8は、処理部14の構成を示す。処理部14は、確認部50、指示部52を含む。確認部50は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48にて受信しているか、つまり送信内容通り受信しているかを確認する。図7に戻る。受信している場合(S52のY)、入力部16から地域が入力される(S54)。処理部14は、入力された地域と、地域別チャンネルデータメモリ22とデータを照合する(S56)。希望チャンネルが照合データにあれば(S58のY)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけ(S60)、ステップ56に戻る。
【0032】
希望チャンネルが照合データになければ(S58のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S62)。受信していない場合(S52のN)、つまり図8の確認部50が信号の受信を未確認である場合、指示部52は送信部10による送信を停止させるとともに、表示部18は、その旨を通知する。図7に戻り、例えば、周辺環境を確認できないため送信できませんのメッセージが表示される(S64)。このような処理によって、ユーザがキャリアセンスを意図的にさせないようにした場合に、受信できないことが意図的かが判別される。つまり、自ら送信した信号が確認できないときは周辺環境が確認できないので、送信がなされない。
【0033】
(3)第2処理
図9は、第2処理の手順を示すフローチャートである。入力部16から地域が入力される(S70)。処理部14は、入力された地域と、地域別チャンネルデータメモリ22とデータを照合する(S72)。希望チャンネルが照合データにない場合(S74のN)、処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20とのデータ照合を実行する(S76)。希望チャンネルが照合データにある場合(S78のY)、エリアワンセグ放送であり(S80のY)、受信レベルが基準値以下であれば(S82のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。
【0034】
図10は、処理部14の別の構成を示す。処理部14は、測定部60、推定部62、取得部64、送信電力決定部66を含む。図示しない受信部12は、他の送信装置からの信号を受信する。ここで、他の送信装置には、エリアワンセグメント放送用送信装置100、広域の地上デジタル放送用送信装置102が含まれる。測定部60は、受信部12が受信した信号に対する受信電力を測定する。推定部62は、送信部10が受信した信号の送信元である他の送信装置との距離をもとに、受信電力を推定する。取得部64は、推定部62が推定した受信電力よりも、測定部60が測定した受信電力の方が小さい場合に、差分を正のマージンとして取得する。送信電力決定部66は、取得部64が取得したマージンを加えながら、他の送信装置からの信号を受信装置が所定の位置で受信する際のDU比がしきい値よりも大きくなるように、送信電力を決定する。図示しない送信部10は、送信電力決定部66が決定した送信電力によって、信号を送信する。
【0035】
ここでは、このような処理をさらに詳細に説明する。相手からの電波の電界強度が基準(例えば51[dBμV/m])以上であれば、現在の送信地点が相手のエリアワンセグメント放送用エリア104に入っていることになり、送信は不可である。相手からの電波の電界強度が基準(例えば51[dBμV/m])未満であれば、相手のエリアワンセグメント放送用エリア104に対して自分の電波がどれ位の電波強度になるかを計算することになる。通常損失を計算する一番基本的な方法は自由空間損失(これは電力の損失計算式)である。
L=((4πd)/λ)2 [dB] 式(1)
ここで、dは送信局と測定点との距離、λは送信電波の周波数である。
【0036】
相手からの電波が自由空間損失で計算した場合に対して通常は差分がある。これは実際にはビルや山など遮蔽物や大地反射があるからで、多くの場合差分はより減衰した状態になる。そのような状況が、図11(a)−(b)のように示される。図11(a)−(b)は、エリアワンセグメント放送用送信装置100間の干渉を説明するための図である。図11(a)において、第1エリアワンセグメント放送用送信装置100aが自局に相当し、第2エリアワンセグメント放送用送信装置100bが相手局に相当する。また、第2エリアワンセグメント放送用送信装置100bは、第2エリアワンセグメント放送用エリア104bを形成しており、第2エリアワンセグメント放送用エリア104b内に障害物120が存在する。例えば、図11(a)では主な減衰原因は相手局から100mのところにある建物によるものとする。また、図12(a)−(b)は、距離対減衰量を示す。図11(a)の場合の減衰の状態は、図12(a)のようになり、建物のところでNdB(ここでは10dB)の減衰が発生するとしている。
【0037】
図11(b)も、図11(a)と同様に示されるが、第2エリアワンセグメント放送用エリア104b外に、障害物120が存在する。例えば、図11(b)では主な減衰原因は相手局から600mのところにある建物によるものとする。その場合の減衰の状態は図12(b)のようになり、建物のところでNdB(ここでは10dB)の減衰が発生するとしている。いずれにしても同じ建物による相手局の減衰とこちらの電波の減衰量はほぼ同じと考えられることから、エリアワンセグメント放送用エリア104上での減衰はこの差分を前提として考えてよいことになる。すなわち図11(b)、図12(b)のような場合であっても図11(a)、図12(a)の場合と同じに扱ってよいことになる。
【0038】
これを式で書くと以下のようになる。相手局からの距離をd0[m]とする。また波長をλ0とする。自由空間損失L0は式(1)をもとに次のように示される。
L0=((4πd0)/λ0)2 [dB] 式(2)
相手局の出力をP0[dBm]として、実際に受信できた電力をPg[dBm]とすると、損失の差分Ng[dB]は、本来P0−L0[dBm]で受信できるべきところが、Pg[dBm]になったので次のように示される。
Ng=P0−L0−Pg[dB] 式(3)
ただしNgは正のときに余分な減衰があることを示し、取得部64において取得されるマージンに相当する。
【0039】
相手のエリアワンセグメント放送用エリア104の限界が51[dBμV/m]とすると、dBmとdBμV/mの換算差20log(λ/π)−10log(4×73.13)−90=131であることから、これは51−131=−80dBmに相当する。相手局のこの限界にあるところが相手局からd1[m]のところにあるとする。相手局から距離d1[m]での損失L1[dB]は次のように示される。
L1=((4πd1)/λ0)2 式(4)
相手局の出力がP0[dBm]であるから、次の式を逆算することによって、d1が導出される。
P0−L1=−80[dBm] 式(5)
【0040】
相手のエリアワンセグメント放送用エリア104までの自局からの距離d2[m]は、d2=d−d1[m]となる。そのため、自局の相手のエリアワンセグメント放送用エリア104の位置までの減衰量L2[dBm]は次のように示される。
L2=((4πd2)/λ0)2 式(6)
自局の出力をP2[dBm]とすると、自由空間を仮定すれば相手のエリアワンセグメント放送用エリア104上での自局の電力P3[dBm]は次のように示される。
P3=P2−L2[dBm] 式(7)
これに上記の差分Ng[dB]がマージン(減衰する方が正の符号なので)が見込めるので、式(5)と(7)から、相手のエリアワンセグメント放送用エリア104上におけるDU比は、次のように示される。
D/U=−80−P3+Ng[dB] 式(8)
このD/U[dB]が混信基準である11[dB]以上になるようなP2が、送信電力決定部66によって決定される。図9に戻る。
【0041】
希望チャンネルが照合データにない場合(S78のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。希望チャンネルが照合データにある場合(S74のY)、あるいはエリアワンセグ放送でない場合(S80のN)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけ(S82)、ステップ72に戻る。
【0042】
受信レベルが基準値以下でない場合(S82のN)、入力部16は、IDの入力を受けつける(S84)。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20をもとに該当チャンネルのIDを照合する(S86)。IDが一致すれば(S88のY)相手のサービスと同じグループのサービスであると判断できるので、電波がある程度干渉しても良いことを前提に送信可能と判断し、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S90)。IDが一致しなければ(S88のN)、相手のサービスは全く別のグループのサービスであると判断し、相手に対して干渉するような電波を出力してはいけないと判断し、ステップ72に戻る。ここでは、図13を使用して、ステップ82からステップ90までの処理を説明する。
【0043】
図13は、処理部14のさらに別の構成を示す。処理部14は、測定部60、受付部70、送信決定部72を含む。測定部60は、他の送信装置からの信号を受信した場合に、受信電力を測定する。受付部70は、測定部60において測定した受信電力がしきい値よりも大きい場合に、放送サービスを識別するための識別番号の入力を受けつける。識別番号は、例えば、network_id、service_id、original_network_id、TMCCのデータ等である。送信決定部72は、受付部70が受けつけた識別番号と、受信した信号に含まれた識別番号とが一致する場合に、信号の送信を決定する。送信部10は、送信決定部72が送信を決定した場合に、信号を送信する。このように、隣接する場所で希望するチャンネルを使用した同一識別番号のエリアワンセグメント放送があった場合、スキャンによりその電波のレベルを確認する。その電波のレベルが相当低い基準以下であった場合は送信を行う。その電波のレベルが比較的高い場合は、隣接する場所でサービスを行っているユーザと電波強度などについて了解を得てから同一の識別番号を設定し、送信する。
【0044】
(4)第3処理
図14は、第3処理の手順を示すフローチャートである。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20、地域別チャンネルデータメモリ22をもとに、データ照合を実行する(S100)。処理部14は、サービス推奨チャンネルを算出する(S102)。ここでは、サービス推奨チャンネルを算出するための処理を図15をもとに説明する。図15は、サービス推奨チャンネルの算出手順を示すフローチャートである。処理部14は、データ照合を実行し(S130)、空きチャンネルリストを作成する(S132)。処理部14は、初期空きチャンネルを設定する(S134)。微弱送信を行った後(S136)、処理部14は、設定チャンネルを受信設定する(S138)。
【0045】
処理部14は、受信状態を空きチャンネルリストに記録する(S140)。受信状態として、BER、CNRが記録される。空きチャンネルリストが最終でなければ(S142のN)、次の空きチャンネルに設定され(S144)、ステップ136に戻る。空きチャンネルリストが最終であれば(S142のY)、処理部14は、BER=0の空きチャンネルを読み出し(S146)、空きチャンネルCNR順にチャンネルを並び替える(S148)。表示部18は、推奨チャンネルを表示する(S150)。
【0046】
さらに、このような処理を実行するための構成を説明する。図16は、処理部14のさらに別の構成を示す。処理部14は、測定部60、空きチャンネルリスト80、付与部82を含む。送信部10は、複数のチャンネルのいずれかを切りかえながら、送信アンテナ46から信号を送信する。送信部10は、所定の位置における伝搬損失に応じた値だけ送信電力を低減させてもよい。受信部12は、送信部10が送信した信号を受信アンテナ48にてチャンネルごとに受信する。
【0047】
測定部60は、受信部12が受信した信号に対する受信品質をチャンネルごとに測定する。受信品質として、前述のごとく、誤り率(BER)とCNRが測定されている。測定部60は、測定した受信品質を空きチャンネルリスト80に記憶させる。付与部82は、空きチャンネルリスト80が測定した受信品質を空きチャンネルリスト80から抽出し、受信品質をもとに、放送に適したチャンネルの優先順位をチャンネルに付与する。ここでは、誤り率が低くなり、CNRが高くなるほど、高い優先順位をチャンネルに付与する。表示部18は、付与部82が付与したチャンネルの優先順位をもとに、放送に適したチャンネルに関する情報を通知する。
【0048】
希望チャンネルに隣接したチャンネルの電波の電力が強すぎてサービスエリアが確保できない場合、ある程度のチャンネルの受信レベルはRFのAGCやIFのAGCの関係でわかる。しかしながら、RF入力の総合電力や隣接チャンネルとのDU比の関係などを正確に把握することは困難である。そこでサービスエリア内で希望チャンネルが想定可能な最小電力となる電波を受信部12で受信させるように送信し、受信状態をBERやCNRで評価することによって、希望チャンネルが有効かを判断する。またこのような処理を空きチャンネルで行うことにより、ユーザに対してBERやCNRの状況が良い推奨チャンネルは提示される。図14に戻る。
【0049】
希望チャンネルが照合データになく(S104のN)、希望チャンネルが推奨でなければ(S106のN)、表示部18は、推奨チャンネルを表示する(S108)。チャンネルを変更する場合(S110のY)、ステップ100に戻る。希望チャンネルが照合データにあり(S104のY)、エリアワンセグメント放送であり(S112のY)、受信レベルが基準値以下であれば(S118のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。エリアワンセグメント放送でなければ(S112のN)、表示部18は、推奨チャンネルを表示し(S114)、入力部16は、希望チャンネルの再入力を受けつけて(S116)、ステップ100に戻る。
【0050】
受信レベルが基準値以下でない場合(S118のN)、図9のS82でNの場合の動作と同様であり、入力部16は、IDの入力を受けつける(S120)。処理部14は、チャンネル別受信データメモリ20をもとに該当チャンネルのIDを照合する(S122)。IDが一致すれば(S124のY)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。IDが一致しなければ(S124のN)、ステップ114に戻る。希望チャンネルが推奨である場合(S106のY)、あるいはチャンネルを変更しない場合(S110のN)、送信部10は、希望チャンネルでのサービス距離に応じた送信を開始する(S126)。
【0051】
なお、図16の付与部82は、放送のために過去に使用したチャンネルに対する受信品質が許容値よりも良好であれば、当該チャンネルに対する優先順位を高くしてもよい。例えば、前日に送信したチャンネルが、希望チャンネルのデフォルトとして、設定される。つまり、前日に送信したチャンネルを自動で希望チャンネルと仮定し、当該チャンネルにおいて新たな送信装置からの送信が検出され、送信ができなくなった場合にその旨が表示される。図17は、処理部14に記憶される前回実行結果データのデータ構造を示す図である。希望チャンネルが使用された場合に、前回出力チャンネル、前回判定日時、前回送信終了時刻、前回network_id、前回service_id、前回remote_control_key_ID、前回エリアワンセグ情報IDが記憶される。
【0052】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0053】
本発明の実施例によれば、送信アンテナから送信した信号を受信アンテナから受信しているかを確認し、未確認である場合に送信を停止するので、受信アンテナ等を意図的に隠している状況を検出できる。また、受信アンテナ等を意図的に隠している状況が検出されるので、キャリアセンスを正常に動作させることができる。また、キャリアセンスが正常に動作されるので、干渉信号が存在する環境に適したエリアワンセグメント放送を実現できる。また、未確認である場合にその旨を通知するので、通信環境をユーザに知らしめることができる。
【0054】
また、送信アンテナから送信した信号をもとにBERとCNRをチャンネルごとに測定し、各チャンネルに対して優先順位を付与して、推奨チャンネルを決定するので、隣接チャンネル干渉等の影響を考慮できる。また、送信アンテナから送信した信号を低減させるので、所定の位置におけるBERとCNRを容易に推定できる。また、前回に使用したチャンネルの優先順位を高くするので、同一のチャンネルを使用しやすくできる。また、受信電力がある程度大きくても、同一の識別番号であれば、信号を送信するので、広いエリアにおいて連続したサービスを提供できる。また、障害物の影響をマージンとして送信電力を決定する際に考慮するので、障害物が存在する場合に適した送信電力を使用できる。
【0055】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0056】
10 送信部、 12 受信部、 14 処理部、 16 入力部、 18 表示部、 20 チャンネル別受信データメモリ、 22 地域別チャンネルデータメモリ、 24 制御部、 26 撮像素子、 28 マイク、 30 エンコード部、 32 OFDMフレーム構成部、 34 OFDM変調部、 36 周波数変換部、 38 RF部、 40 チューナ部、 42 OFDM復調部、 44 デコード部、 46 送信アンテナ、 48 受信アンテナ、 50 確認部、 52 指示部、 60 測定部、 62 推定部、 64 取得部、 66 送信電力決定部、 70 受付部、 72 送信決定部、 80 空きチャンネルリスト、 82 付与部、 100 エリアワンセグメント放送用送信装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナから信号を送信する送信部と、
前記送信部が送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認する確認部と、
前記確認部が信号の受信を未確認である場合、前記送信部による送信を停止させる指示部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
送信アンテナから信号を送信するステップと、
送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認するステップと、
信号の受信を未確認である場合、送信を停止させるステップと、
を備えることを特徴とする送信方法。
【請求項1】
送信アンテナから信号を送信する送信部と、
前記送信部が送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認する確認部と、
前記確認部が信号の受信を未確認である場合、前記送信部による送信を停止させる指示部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記確認部が信号の受信を未確認である場合、その旨を通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
送信アンテナから信号を送信するステップと、
送信した信号を受信アンテナにて受信しているかを確認するステップと、
信号の受信を未確認である場合、送信を停止させるステップと、
を備えることを特徴とする送信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−38708(P2013−38708A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175157(P2011−175157)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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