説明

送受信機

【課題】基地局専用の第一受信回路に加えて一波単信方式の送受信回路を備えた送受信機において、送受信回路の送信周波数の精度を向上させる。
【解決手段】第一受信回路で受信した信号の周波数を計測する第一周波数計測部と、送受信回路の第二受信回路で受信した信号の周波数を計測する第二周波数計測部を設け、第一周波数計測部で計測された周波数を基準として第二周波数計測部で計測された周波数の誤差を検出する周波数誤差検出部を設け、送受信回路で送信する際、送信信号を第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少するように基準クロックとなる電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防無線など基地局との無線通信に使用される送受信機に関するものである。さらに詳しくは、送受信機内に設けられた局部発振器の温度変化や経時変化による発振周波数の変動による送信時の送信周波数の変動を補償する送受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
業務用の狭帯域デジタル無線通信システムは、標準規格のARIB STD−T61に、基地局から送信されてくる安定した周波数の信号に基づいて移動局での送受信に用いる発振信号を生成する内部基準クロックの周波数を制御してもよいとされている。この制御の従来例について以下説明する。
【0003】
図6は第1の従来例(特許文献1)の送受信機を示すブロック図である。
この図6の送受信機は、無線回路部101、ロジック回路部102、アンテナ110、操作部146からなり、無線回路部101は、アンテナ共用器111を介して受信回路と送信回路へ接続されている。
【0004】
受信回路は、無線回路部101内のアンテナ共用器111からの受信信号を増幅器112で増幅し、増幅した受信信号を第1ミキサ113と第2ミキサ116によって受信信号の周波数を2回ダウンコンバートし、増幅器119を介して受信信号を復調する復調部120、さらに前記ロジック回路部102内のA/D変換器133を介して受信信号処理部143で信号処理をして音声信号を出力する。
送信回路は、ロジック回路部102内の送信信号処理部142で入力された音声信号をデジタル処理してからD/A変換器130でアナログ信号に変換後、無線回路部101内の変調部121で変調した信号を増幅器122で増幅し、第2ミキサ123、第1ミキサ125によって送信信号の周波数を2回アップコンバートし、送信アンプである増幅器127を介してアンテナ共用器111へ送りアンテナ110から送信される。
【0005】
ロジック回路102内には制御部144が設けられ、受信信号処理部143では音声信号を出力するための信号処理と共に、基地局から送信される周波数情報を検出し、制御部144に供給する。制御部144では、この周波数情報とVC−TCXO(電圧制御温度補償型水晶発振器)128の発振周波数とを比較し、周波数偏差Δfを算出する。そして、制御部144は、この周波数偏差Δfが零となるようにVC−TCXO128の発振周波数を制御するデジタル電圧を発生し、D/A変換器132を介してVC−TCXO128の周波数調整端子に印加する。これによってVC−TCXO128の発振周波数は、基地局の発振周波数に基づいてAFC制御される。また、温度検出部129からの温度情報は、A/D変換器131を介して制御部144に供給され、制御部144でVC−TCXO128の発振周波数の制御に用いられる。
このVC−TCXO128の発振信号は、第1PLL回路115、第2PLL回路118の基準クロックとして接続されている。
【0006】
第1PLL回路115は、VC−TCXO128の発振信号を基準クロックとしてVCO(電圧制御発振器)114、VCO126の発振周波数を制御する。VCO114は受信側の第1局部発振回路としてミキサ113に接続し、VCO126は送信側の第2局部発振回路としてミキサ125に接続している。
第2PLL回路118は、VC−TCXO128の発振信号を基準クロックとしてVCO117、VCO124の発振周波数を制御する。VCO117は受信側の第1局部発振回路としてミキサ113に接続し、VCO126は送信側の第2局部発振回路としてミキサ125に接続している。
【0007】
以上の第1の従来例では、制御部144が、受信信号処理部143から出力される基地局からの送信周波数情報と、VC−TCXO128の発振周波数と、温度検出部129からの温度情報から記憶部145に記憶された補償用の情報に基づいてVC−TCXO128に与える制御電圧を生成するようになっている。
基準となる基地局からの信号を受信していないときは、記憶部145に記憶された基地局からの信号を受信したときのVC−TCXO128の制御電圧の値を基に制御電圧を生成する。
【0008】
次に第2の従来例について説明する。
消防無線などで使用される移動局の送受信機は、図7に示すように、基地局からの指令、連絡などが送られてくる信号を受信する受信回路と、基地局への送信または、他の移動局(現場の緊急車両など)相互間での通信に使用される1波単信方式の送受信回路とで構成されていて、基地局との通信は2波複信方式となり、他の移動局との通信は1波単信方式となる。
この図7に示す送受信機は、基地局からの送信信号を受信するための第一受信回路41と基地局受信アンテナ1、及び送信回路43と第二受信回路44からなる送受信回路42と送受信アンテナ9で構成されている。
【0009】
第一受信回路41は、基地局受信アンテナ1から増幅器2、第1ミキサ3、BPF(バンドパスフィルタ)4、第2ミキサ5、BPF6、A/D変換器7、第一復調部8で構成され、受信信号処理部30に接続されている。
【0010】
また、第一復調部8の出力は、第一周波数計測部18、周波数制御部25、D/A変換器24で構成して、VC−TCXO23の発振周波数を制御するための制御電圧を生成してVC−TCXO23に入力している。
このVC−TCXO23の発振信号は、並列に接続された第一受信用シンセサイザ(PLL回路)20、第二受信用シンセサイザ21及び送信用シンセサイザ22の基準クロックとなり、20、21、22の各センセサイザ回路は局部発振信号を生成して第1ミキサ3、12及び直交変調部27へ入力されている。
また、第一受信回路41の第2ミキサ5と第二受信回路44の第2ミキサ15には、局部発振用のTCXO(温度補償型水晶発振器)14が接続されている。
【0011】
送受信回路42は、送信回路43と第二受信回路44とで構成され、それぞれ送受信アンテナ9に送受信切換えスイッチ10を介して接続されている。
第二受信回路44は、前記送受信切換えスイッチ10の一方の端子から増幅器11、第1ミキサ12、BPF13、第2ミキサ15、BPF16、A/D変換器17、第二復調部19で構成され、受信信号処理部31に接続されている。
【0012】
送信回路43は、送信信号処理部32から変調部29、D/A変換器28、直交変調部27、増幅器26で構成され、送受切換えスイッチ10の他方の端子を介して送受信アンテナ9に接続されている。
【0013】
以上の構成において、基地局受信アンテナ1に接続している第一受信回路は、基地局からの信号を受信した受信信号を増幅器2で増幅し、VC−TCXO23の発振信号を基準クロックとして第一受信用シンセサイザ20で生成される局部発振信号と第1ミキサ3にて混合することで受信信号の周波数をダウンコンバートして第1IF(中間周波)信号に変換し、さらにTCXO14の発振信号と第2ミキサ5にて混合して周波数をダウンコンバートして第2IF信号に変換する。
【0014】
BPF4により第1IF信号、BPF6により第2IF信号の各々の必要な周波数帯域の信号だけを取り出し、A/D変換器7で量子化して第一復調部8に入力する。第一復調部8に入力された信号は、第一復調部によりベースバンド信号(デジタル信号)に復調される。
この復調されたベースバンド信号は、受信信号処理部30によりデジタル信号処理されて音声信号として再生される。
【0015】
第二受信回路44は、他の移動局からの信号を受信した受信信号を増幅器11で増幅し、VC−TCXO23の発振信号を基準クロックとして第二受信用シンセサイザ21で生成される局部発振信号と第1ミキサ12にて混合することで受信信号の周波数をダウンコンバートして第1IF(中間周波)信号に変換する。さらにTCXO14の発振信号と第2ミキサ15にて混合して周波数をダウンコンバートして第2IF信号に変換し、A/D変換器17で量子化して第二復調部19に入力する。第二復調部19に入力された信号は、第二復調部によりベースバンド信号(デジタル信号)に復調される。
この復調されたベースバンド信号は、受信信号処理部31によりデジタル信号処理されて音声信号として再生される。
【0016】
送信回路43は、送信信号処理部32で入力された音声信号をデジタル信号処理後、変調部29で変調した信号をD/A変換器28でアナログ信号に変換し、直交変調器27で送信用シンセサイザ22から入力された搬送波とともに変調波が生成され、増幅器26で増幅されて送受信切換えスイッチ10に送られる。
【0017】
また、第一復調部8により出力されるベースバンド信号より受信したシンボルから周波数誤差を第一周波数計測部18により計測し、周波数制御部25でこの計測した周波数誤差を最小となるようにVC−TCXO23の発振周波数の制御を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−219719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図6に示す第1の従来例の送受信機では、受信信号を第1IF信号と第2IF信号に変換するために、周波数安定度が高いVC−TCXO128を基準クロックとして2つのPLL回路115、118を用いて局部発振信号を生成している。PLL回路を2つ使用することでIF周波数の精度は向上するが、回路構成が複雑でかつ高価であり、また、消費電力も増加するという問題点があった。
【0020】
図7に示す第2の従来例の送受信機では、第2ミキサ5、15へ供給する第二局部発振信号をTCXO14の発振信号を用いるので、第1の従来例のような第2PLL回路を必要とせず回路構成が簡単で安価である。
しかし、TCXO14の発振周波数の補償は、発振器自身が行なう温度補償のみであって、発振器の経時変化などによる誤差の補償を行なえないため、設計上の発振周波数と実際の発振周波数との間に誤差を生じる可能性がある。
第2の従来例の送受信機の受信周波数の制御は、基地局からの周波数精度が高い信号を受信し、第1ミキサ3、第2ミキサ5によりそれぞれ第一IF周波数、第二IF周波数に変換して後段の第一復調部8から出力されるベースバンド信号の周波数を周波数計測部18で計測し、誤差のない正規のベースバンド信号の周波数との誤差を周波数制御部25で検出して、検出した誤差を打ち消すためのVC−TCXO128の発振周波数を制御するデジタル電圧を出力し、D/A変換器24を介して制御されるVC−TCXO23の発振周波数を補正するようになっている。従って、TCXO14の発振周波数に誤差が生じた場合、基地局からの受信信号に基づいてVC−TCXO23を制御して第一受信用シンセサイザで生成する第一局部発振周波数を変えることでTCXO14の発振周波数の誤差を補正する。また、このVC−TCXO23の発振信号は、送信回路の搬送波を生成するためのクロックにも用いられていて、TCXO14の発振周波数に誤差によりVC−TCXO23の発振周波数が補正されると、送信信号の周波数も変動して周波数の精度が落ちるという問題点があった。
【0021】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、基地局専用の第一受信回路に加えて一波単信方式の送受信回路を備えた送受信機において、送信時において基準クロックとなるVC−TCXO23の発振周波数を制御して送信周波数の精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の請求項1は、基地局からの送信信号を受信し、復調する第一受信回路と、基地局からの送信周波数と異なる周波数の信号を送信する送信回路と受信し、復調する第二受信回路からなる一波単信方式の送受信回路を有し、前記第一受信回路と前記第二受信回路の各々の第一局部発振信号及び前記送信回路の送信信号を生成するための共通の基準クロックとなる電圧制御型発振器と、前記第一受信回路と前記第二受信回路の共通の第二局部発振信号を生成する発振器を有する送受信機において、前記第一受信回路で受信した信号を第一復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第一周波数計測部と、前記第二受信回路で受信した信号を第二復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第二周波数計測部と、前記第一周波数計測部で計測された周波数誤差と前記第二周波数計測部で計測された周波数誤差との差分を検出する周波数誤差検出部を設け、前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際、送信信号を前記第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少させるように前記電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設けたことを特徴とする送受信機である。
【0023】
本発明の請求項2は、基地局からの送信信号を受信し、復調する第一受信回路と、基地局からの送信周波数と異なる周波数の信号を送信する送信回路と受信し、復調する第二受信回路からなる一波単信方式の送受信回路を有し、前記第一受信回路と前記第二受信回路の各々の第一局部発振信号及び前記送信回路の送信信号を生成するための共通の基準クロックとなる電圧制御型発振器と、前記第一受信回路と前記第二受信回路の共通の第二局部発振信号を生成する発振器を有する送受信機において、前記第一受信回路で受信した信号の第二中間周波数を計測する第一周波数計測部と、前記第二受信回路で受信した信号の第二中間周波数を計測する第二周波数計測部と、前記第一周波数計測部で計測された第二中間周波数と前記第二周波数計測部で計測された第二中間周波数の差分を検出する周波数誤差検出部を設け、前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際、送信信号を前記第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少させるように前記電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設けたことを特徴とする送受信機である。
【0024】
本発明の請求項3は、請求項1または2記載の送受信機において、前記送信回路からの送信信号を前記第二受信回路側へ取り込むためのスイッチを設けたことを特徴とするものである。
【0025】
本発明の請求項4は、請求項1または2記載の送受信機において、前記送信回路からの送信信号を前記第二受信回路側へ取り込むための方向性結合器を設けたことを特徴とするものである。
【0026】
本発明の請求項5は、請求項1または2記載の送受信機において、前記第一周波数計測部は前記第一受信回路が基地局からの送信信号を受信中に所定の時間毎に周波数を計測し、計測した周波数を次の計測まで保持し、前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際に基地局からの送信信号を受信していない場合、前記保持した周波数を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
請求項1、2記載の発明によれば、自局の送信信号を第二受信回路に取り込み、取込んだ信号のベースバンド信号の周波数または第二中間周波数を計測し、基準となる基地局からの送信信号を受信し、そのベースバンド信号の周波数または第二中間周波数と比較して、その差分がなくなるようにVC−TCXOの発振周波数を制御することで、第二局部発振のTCXOの発振周波数の誤差を補正して自局の送信周波数の精度が向上するという効果を有する。
【0028】
請求項3、4記載の発明によれば、自局が発信した送信信号を送信回路側から第二受信回路側へ取り込むための構成が極めて簡単であるという効果を有する。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、周波数の基準となる基地局からの信号は常時送信しているとは限らないので、基地局受信時に所定の時間毎に周波数を計測し、最新の計測値を保持することで、自局が送信する際に基地局からの送信信号を受信していない場合でも、保持した周波数を用いて周波数誤差検出部で誤差を検出が可能となるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による送受信機の回路の実施例1を示すブロック図である。
【図2】(a)は復調部のブロック図、(b)は復調したIQ信号の大きさと位相を表すコンスタレーション図である。
【図3】周波数計測部の作用を説明するコンスタレーション図である。
【図4】本発明による実施例2を示すブロック図である。
【図5】本発明による実施例3を示すブロック図である。
【図6】第1の従来例を示すブロック図である。
【図7】第2の従来例を示すブロック図ある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
基地局からの送信信号を受信し、復調する第一受信回路と、基地局からの送信周波数と異なる周波数の信号を送信する送信回路と受信し、復調する第二受信回路からなる一波単信方式の送受信回路を有し、前記第一受信回路と前記第二受信回路の各々の第一局部発振信号及び前記送信回路の送信信号を生成するための共通の基準クロックとなる電圧制御型発振器と、前記第一受信回路と前記第二受信回路の共通の第二局部発振信号を生成する発振器を有する送受信機において、前記第一受信回路で受信した信号を第一復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第一周波数計測部と、前記第二受信回路で受信した信号を第二復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第二周波数計測部と、前記第一周波数計測部で計測された周波数誤差と前記第二周波数計測部で計測された周波数誤差との差分を検出する周波数誤差検出部を設け、前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際、送信信号を前記第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少させるように前記電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設けることで、第二局部発振信号を生成する発振器の発振周波数の誤差を補正して自局の送信周波数の精度を向上させるようにする。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明の実施例1を説明する。
本発明の送受信機は、図1のブロック図で示した構成になっている。送受信機としての基本的な構成は、図7に示した第2の従来例と共通であり、この第2の従来例と共通な部分については説明を省略する。
本発明の送受信機が第2の従来例の送受信機と相違する点は、送信回路43が基地局または他の移動局へ送信する際の送信信号を第二受信回路に取り込むための切換えスイッチ33と、第二受信回路44側の第二復調部19に接続されベースバンド信号より受信したシンボルから周波数誤差を計測する第二周波数計測部34を別途設け、この第二周波数計測部34で計測した周波数誤差と第一復調部8に接続された第一周波数計測部18で計測した周波数誤差とを周波数誤差検出部35に入力し、基地局からの受信信号の周波数誤差と自局の送信信号の周波数誤差との差分を検出するようにした点にある。
そしてこの周波数誤差検出部35で検出した差分値に基づいて前記周波数制御部25によりVC−TCXO23の発振周波数を電圧制御するようにしたものである。
【0033】
次に以上の構成の送受信機による作用を説明する。但し、送受信機としての一般的な送受信の作用については、図7と同様であるからその説明を省略する。
基地局からの送信信号が基地局受信アンテナ1で受信され、第一受信回路41により第2IF信号が生成され、第一復調部8でベースバンド信号に復調される。
復調されたベースバンド信号は、受信信号処理部30によりデジタル信号処理されて音声信号として再生されるとともに、第一周波数計測部18によりベースバンド信号の周波数が計測される。
【0034】
一方、送信回路43が基地局または他の移動局へ送信する際、送信信号処理部32で入力された音声信号をデジタル信号処理後、変調部29で変調した信号をD/A変換器28でアナログ信号に変換し、直交変調器27で送信用シンセサイザ22から入力された搬送波とともに変調波が生成され、増幅器26で増幅されて送受信切換えスイッチ10に送られるとともに、切換えスイッチ33によって、送信信号を第二受信回路に取り込むように送信回路側に切り換えられる。この時、送受信切換えスイッチ10は、第二受信回路側のままで送信されない。
第二受信回路44は、取込んだ送信信号を受信処理され第2IF信号が生成され、第二復調部19でベースバンド信号に復調し、復調したベースバンド信号より受信したシンボルから周波数誤差を第二周波数計測部34で計測される。
【0035】
前記第一周波数計測部18により計測された周波数誤差と、第二周波数計測部34により計測された周波数誤差とが、周波数誤差検出部35に入力されてその誤差が検出され、周波数制御部25がその誤差を減少させる方向にVC−TCXO23の発振周波数を制御してから送受信切換えスイッチ10を送信回路側に切り換えて本送信とする。
【0036】
なお、図1では切換えスイッチ33を増幅器11と第1ミキサ12との間に設けているが、取込む信号レベルが小さい場合には増幅器11の前に設けてもよい。
さらに詳しい制御動作については後述する。
【0037】
次に、各水晶発振子と各PLLの発振周波数について説明する。
基地局が移動局へ送信する基地局送信周波数をfFH、移動局が基地局へ送信する送信周波数(移動局間通信用周波数でもある)をfFL、第1IF周波数をfIF1、第2IF周波数をfIF2とし、送受信機のVC−TCXO23の発振周波数をfREF、VC−TCXO23の発振周波数fREFに対しての周波数偏差をΔα、TCXO14の発振周波数をfLO2、TCXO14の発振周波数fLO2に対しての周波数偏差をΔβとすると、VC−TCXO23、TCXO14の発振周波数は次のようになる。
VC−TCXO23の発振周波数:fREF×(1+Δα)…(1)
TCXO14の発振周波数:fLO2×(1+Δβ)…(2)
【0038】
このとき、各シンセサイザ20、21、22の発振周波数は、VC−TCXO23の発振周波数と同じ周波数偏差を有するため、次のようになる。
第一受信用シンセサイザ20の発振周波数:fLO1H=(fFH+fIF1)×(1+Δα)…(3)
第二受信用シンセサイザ21の発振周波数:fLO1L=(fFL+fIF1)×(1+Δα)…(4)
送信用シンセサイザ22の発振周波数:fFLT=fFL×(1+Δα)…(5)
【0039】
式(3)(4)より、第1ミキサ3、12から出力される第1IF周波数は、次のようになる。
第一受信回路41の第1IF周波数:fIF1H=fIF1×(1+Δα)+fFH×Δα…(6)
第二受信回路44の第1IF周波数:fIF1L=fLO1L−fFLT=fIF1×(1+Δα)…(7)
【0040】
式(6)(7)により、第2ミキサ5、15から出力される第2IF周波数は、次のようになる。
第一受信回路41の第2IF周波数:fIF2H=fIF1×(1+Δα)+fFH×Δα−fLO2×(1+Δβ)…(8)
第二受信回路44の第2IF周波数:fIF2L=fIF1×(1+Δα)−fLo2×(1+Δβ)…(9)
【0041】
従って、第一周波数計測部18と第二周波数計測部34で計測した周波数の差分(fIF2H−fIF2L)をとると、TCXO14の発振周波数偏差Δβが相殺されて、周波数誤差はfFH×Δαの項のみが残る。
この周波数誤差が0になるようにVC−TCXO23の発振周波数を制御すると、Δα=0となり、VC−TCXO23の発振周波数を基地局から送信信号の周波数に正確に追従させることができる。
その結果、送受信機の内部基準クロックは、TCXO14の発振周波数(第2局部発振周波数)の偏差に影響されることなく、基地局の送信周波数に正確に追従することができる。
【0042】
次に、第一周波数計測部18による受信周波数の計測から周波数制御部25によるVC−TCXO23の発振周波数の制御について詳しく説明する。
まず、第一復調部8は、図2(a)に示すように、第2IF信号とπ/2移相器40によりこの第2IF信号の搬送波49と位相をπ/2遅らせたクロック信号とをミキサ36、37で乗算(混合)し、LPF38、39で高調波成分を抑制してIQ信号(ベースバンド信号)を出力する。
このIQ信号と搬送波の位相、振幅との関係を図2(b)に示すようなコンスタレーションで表すことができる。QPSK変調方式の場合は、シンボルの位置が白丸の位置となる。1/4πシフトQPSK変調方式の場合は、シンボルの位置が白丸と黒丸の位置が交互になる。
【0043】
第一周波数計測部18は、基地局からの信号を受信、復調している時に、受信信号のシンボルから位相変化量Δθ、周波数変化量Δfを検出する。
第二周波数計測部34は、自局の送信信号を受信した信号のシンボルから位相変化量Δθ、周波数変化量Δfを検出し、検出した位相変化量Δθを数フレームにわたって平均し、周波数に換算して周波数誤差とする。
それぞれの位相変化量Δθの検出は、図3に示すように、前回検出のシンボルの位置から予測した基準位置を(I1,Q1)、実際の検出したシンボルの位置を(I2,Q2)として、Δθ=tan-1(Q2/I2)−tan-1(Q1/I1)により検出する。
周波数変化量Δfは、シンボルレート(変調速度)が4800spsの場合、Δf=Δθ/2π×4800により換算される。
【0044】
周波数誤差検出部35は、第一周波数計測部18の計測結果と、第二周波数計測部34の計測結果との差分を演算して出力する。
周波数制御部25は、周波数誤差検出部35で演算された周波数の差分値が、許容値(例えば、±200Hz以内)を超えた場合にVC−TCXO23の制御電圧を調整して、次の制御を行なう。
【0045】
第二周波数計測部34で計測された周波数が、第一周波数計測部18で計測された周波数よりも大きい場合、発振周波数を引き下げるようにVC−TCXO23への制御電圧を調整する。
逆に、第二周波数計測部34で計測された周波数が、第一周波数計測部18で計測された周波数よりも小さい場合、発振周波数を引き上げるようにVC−TCXO23への制御電圧を調整する。
つまり、自局の送信周波数の方が高い場合にはVC−TCXO23の発振周波数引き下げて送信周波数を低くし、自局の送信周波数の方が低い場合にはVC−TCXO23の発振周波数を引き上げて送信周波数を高くする。
【0046】
以上、自局が基地局または他の移動局へ送信する際、送信信号を第二受信回路44に取り込んでその周波数を第二周波数計測部34で計測して、周波数誤差検出部35による誤差検出を行い、VC−TCXO23への制御電圧を調整して送信周波数を補正するとしているが、送信中に送信信号の周波数を第二周波数計測部34で計測し、周波数誤差検出部35による誤差を検出し保持して、次の送信時に保持していた誤差に基づいて周波数制御部25を作動させて送信周波数を補正してもよい。
なお、自局が基地局または他の移動局へ送信する際、基地局が移動局に対して送信しているとは限らないので、第一受信回路41が基地局からの信号を受信している際、第一周波数計測部18で所定の時間毎に基地局からの信号の周波数を計測し、最新の計測値を保持して、自局が送信する際の送信周波数の補正に最新の計測値を用いるようにする。
【実施例2】
【0047】
以上の実施例では、第一復調部8で復調されたベースバンド信号と、第二復調部19で復調されたベースバンド信号とにより誤差を検出してVC−TCXO23の発振周波数の制御を行なうようにしたが、本発明はこれに限るものではなく、図4に示すように、第一受信回路41のA/D変換器7からの出力された第2IF周波数と、第二受信回路44のA/D変換器17から出力された第2IF周波数との周波数誤差検出部35で誤差を検出してVC−TCXO23の発振周波数の制御を行なうようにしてもよい。
【実施例3】
【0048】
実施例1、2では、切換えスイッチ33を用いて、送信回路43から第二受信回路44へ自局の送信信号を取り込むようにしたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば図5に示すように、方向性結合器46を用いてもよい。送受信アンテナ9から送信する前に取り込む場合、ダミー切換えスイッチ47、ダミー負荷器48を設けてダミー負荷器側にダミー切換えスイッチ37を切換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…基地局受信アンテナ、2…増幅器、3…第1ミキサ、4…BPF、5…第2ミキサ、6…BPF、7…A/D変換器、8…第一復調部、9…送受信アンテナ、10…送受信切換えスイッチ、11…増幅器、12…第1ミキサ、13…BPF、14…TCXO、15…第2ミキサ、16…BPF、17…A/D変換器、18…第一周波数計測部、19…第二復調部、20…第一受信用シンセサイザ、21…第二受信用シンセサイザ、22…送信用シンセサイザ、23…VC−TCXO、24…D/A変換器、25…周波数制御部、26…増幅器、27…直交変調部、28…D/A変換器、29…変調部、30…受信信号処理部、31…受信信号処理部、32…送信信号処理部、33…切換えスイッチ、34…第二周波数計測部、35…周波数誤差検出部、36、37…ミキサ、39、39…LPF、40…π/2移相器、41…第一受信回路、42…送受信回路、43…送信回路、44…第二受信回路、46…方向性結合器、47…ダミー切換えスイッチ、48…ダミー負荷器、49…搬送波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局からの送信信号を受信し、復調する第一受信回路と、基地局からの送信周波数と異なる周波数の信号を送信する送信回路と受信し、復調する第二受信回路からなる一波単信方式の送受信回路を有し、前記第一受信回路と前記第二受信回路の各々の第一局部発振信号及び前記送信回路の送信信号を生成するための共通の基準クロックとなる電圧制御型発振器と、前記第一受信回路と前記第二受信回路の共通の第二局部発振信号を生成する発振器を有する送受信機において、
前記第一受信回路で受信した信号を第一復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第一周波数計測部と、
前記第二受信回路で受信した信号を第二復調部で復調したベースバンド信号より受信周波数の周波数誤差を計測する第二周波数計測部と、
前記第一周波数計測部で計測された周波数誤差と前記第二周波数計測部で計測された周波数誤差との差分を検出する周波数誤差検出部を設け、
前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際、送信信号を前記第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少させるように前記電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設けたことを特徴とする送受信機。
【請求項2】
基地局からの送信信号を受信し、復調する第一受信回路と、基地局からの送信周波数と異なる周波数の信号を送信する送信回路と受信し、復調する第二受信回路からなる一波単信方式の送受信回路を有し、前記第一受信回路と前記第二受信回路の各々の第一局部発振信号及び前記送信回路の送信信号を生成するための共通の基準クロックとなる電圧制御型発振器と、前記第一受信回路と前記第二受信回路の共通の第二局部発振信号を生成する発振器を有する送受信機において、
前記第一受信回路で受信した信号の第二中間周波数を計測する第一周波数計測部と、
前記第二受信回路で受信した信号の第二中間周波数を計測する第二周波数計測部と、
前記第一周波数計測部で計測された第二中間周波数と前記第二周波数計測部で計測された第二中間周波数の差分を検出する周波数誤差検出部を設け、
前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際、送信信号を前記第二受信回路に取り込んで、前記周波数誤差検出部で検出された誤差を減少させるように前記電圧制御型発振器の発振周波数を制御する周波数制御部を設けたことを特徴とする送受信機。
【請求項3】
前記送信回路からの送信信号を前記第二受信回路側へ取り込むためのスイッチを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の送受信機。
【請求項4】
前記送信回路からの送信信号を前記第二受信回路側へ取り込むための方向性結合器を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の送受信機。
【請求項5】
前記第一周波数計測部は前記第一受信回路が基地局からの送信信号を受信中に所定の時間毎に周波数を計測し、計測した周波数を次の計測まで保持し、
前記送信回路で基地局または他の移動局へ信号を送信する際に基地局からの送信信号を受信していない場合、前記保持した周波数を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74391(P2013−74391A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210785(P2011−210785)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】