説明

送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造

【課題】送電用鋼管柱鉄塔の据付レベルの調整に際し、据付調整用のアンカーナットによるレベルの微調整が可能になると共に、レベル調整を簡単に短時間に行うことができる送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造を提供する。
【解決手段】鉄塔の塔柱2の最下部ベースプレート3と、基礎コンクリート4から突出する先端部がベースプレート3を貫通するように基礎コンクリート4に埋設される複数本のアンカーボルト5と、ベースプレート3の上面でアンカーボルト5に取り付けられる固定用のアンカーナット6と、ベースプレート3の下面でアンカーボルト5に取り付けられる据付調整用のアンカーナット7からなる基礎構造において、アンカーナット7の側面に係止孔11または係止突起や係止凹部を有するリング状プレート12を設け、基礎鉄筋8の間から挿入されるナット回転用棒状部材の先端を係止で固定できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電用鋼管柱鉄塔の塔柱の最下部を基礎コンクリートに固定するための基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単柱形式の送電用鋼管柱鉄塔の基礎には、図5に示す基礎構造が採用されている。この基礎構造は、送電用鋼管柱鉄塔1の塔柱2の最下部に設けられるリング状のベースプレート3と、基礎コンクリート4から突出する先端部がベースプレート3を貫通するように基礎コンクリート4に埋設される複数本のアンカーボルト5と、ベースプレート3の上面においてアンカーボルト5に取り付けられる固定用のアンカーナット6と、ベースプレート3の下面においてアンカーボルト5に取り付けられる据付調整用のアンカーナット7から構成されている。
【0003】
アンカーボルト5は塔柱2を取り囲むように配置され、プレート等で連結することにより基礎底面上に組み立てられる。アンカーボルト5の周囲には基礎鉄筋8が配置されており、コンクリートの打設によりアンカーボルト5と基礎鉄筋8が埋設された基礎コンクリート4が構築される。基礎コンクリート4の上面からはアンカーボルト5と基礎鉄筋8の先端部が所定長さで突出しており、アンカーボルト5の先端部がベースプレート3を貫通するように塔柱2が建て込まれる。
【0004】
ベースプレート3の下面には据付調整用のアンカーナット7が配置されており、このアンカーナット7を回転させて位置調整することによりベースプレート3の据付レベルが調整される。このレベル調整後、固定用のアンカーナット6でベースプレート3が固定され、ベースプレート3と基礎コンクリート4との間の隙間にはグラウト材が充填され、アンカーボルト5と基礎鉄筋8の先端部を覆うフーチングコンクリート9が打設される。
【0005】
従来、据付調整用のアンカーナット7を回転させる場合、その周囲には基礎鉄筋8が約20cm間隔で配置されているため、スパナ等の締付用治具では回転させることができず、アンカーナット(六角ナット)の角を棒鋼などの棒状の物で叩いて回転させ、据付レベルの調整を行っていた。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1には、アンカーボルトとアンカーナットを用いた露出型柱脚構造において、ベースプレートの下部に配置したアンカーナットを回転させてレベル調整を行うこと(従来技術)、柱脚のベースプレートの下面とアンカーボルト据付け用架台の上面との間に、アンカーボルトが貫通するレベル調整用管材を配置してレベル調整を行うことが記載されている。
【0007】
また、引用文献2には、機器据え付け設定用の基礎ボルトにおいて、機器のベースプレートの下部に、コンクリート基礎台に埋設された基礎ボルトの先端部が貫通するレベル調整筒を設け、このレベル調整筒を回転させることにより機器レベルを調整することが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−1916号公報
【特許文献2】実開平4−53840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
送電用鋼管柱鉄塔の据付レベルの調整において、従来の据付調整用のアンカーナット(六角ナット)の角を棒鋼などの棒状の物で叩いて回転させる方法では、(1)棒状のもので角を叩くため、ナットを締め付ける方向や弛める方向の微調整が難しい、(2)叩く時に滑ってしまい、うまく叩けないため、据付レベル調整に手間がかかるなど、施工面において大きな問題が生じている。
【0010】
本発明は、前述のような課題の解決を図ったものであり、送電用鋼管柱鉄塔の据付レベルの調整に際し、据付調整用のアンカーナットによるレベルの微調整が可能になると共に、レベル調整を簡単に短時間に行うことができる送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、送電用鋼管柱鉄塔の塔柱の最下部を基礎コンクリートに固定するための基礎構造であり、塔柱の最下部に設けられるベースプレートと、基礎コンクリートから突出する先端部が前記ベースプレートを貫通するように基礎コンクリートに埋設される複数本のアンカーボルトと、前記ベースプレートの上面においてアンカーボルトに取り付けられる固定用のアンカーナットと、前記ベースプレートの下面においてアンカーボルトに取り付けられる据付調整用のアンカーナットから構成され、据付調整用のアンカーナットの側面には、ナットを回転させるための棒状の部材の先端を係止できる係止手段が設けられていることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造である(図1、図2参照)。
【0012】
本発明は、図2に示すように、ベースプレートが基礎鉄筋により取り囲まれており、スパナ等の締付用治具では回転させることができない場合に適用されるものであり、ベースプレート下に配置される据付調整用のアンカーナット(六角ナットが好ましい)の側面に孔や突起などによる係止手段を設け、この係止手段に棒鋼等の棒状部材の先端を係止により固定し、棒状部材をハンマー等で叩くことによりナットを回転させてベースプレートの据付レベル調整を行うものである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基礎構造において、係止手段はナット側面にナット回転方向に間隔をおいて複数穿設された係止孔であることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造である。
【0014】
図3に示すように、ナットの側面に雌ねじ孔に達しない非貫通孔あるいは雌ねじ孔にまで貫通する貫通孔を穿設し、この係止孔に棒状部材の先端を挿入して固定できるようにしたものである。市販のナットに孔を明けるだけで係止手段を設けることができる。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の基礎構造において、係止手段は、ナット側面を取り囲むようにナットに設けられたリング状プレートの外周に、ナット回転方向に間隔をおいて複数形成された係止突起または係止凹部であることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造である。
【0016】
図4に示すように、リング状プレートはナット側面から外側に向かって突出するリング状のプレートであり、その内側の孔形状はナットの外形の形状に合わせて六角形とし、ナットの側面に溶接等で取り付ける。係止突起を設けるリング状プレートの外側の形状は幅をあまり取らないように六角形とするのが好ましく、その辺の中央位置または角部に外側に突出する係止突起を一体的に設ける。係止凹部を設けるリング状プレートの外側の形状は凹部を形成できるように円形とするのが好ましく、ナットの辺の中央位置または角部に内側に凹む係止凹部を設ける。リング状プレートにより係止突起または係止凹部がナット側面の外側に位置するため、棒状部材の先端を挿入しやすく、またナットを回転させやすい。
【0017】
また、係止孔の特殊ナットとリング状プレートの係止突起や係止凹部を有するリング状プレート構造を組み合わせて複合型とすることもできる。
【0018】
以上のような構成において、据付調整用のアンカーナットの側面に対して基礎鉄筋の間から棒状部材を挿入し、棒状部材の先端をナット側面の係止孔またはリング状プレートの係止突起や係止凹部などの係止手段に係止して固定し、棒状部材をハンマー等で叩くことによりナットを回転させてベースプレートの据付レベル調整を行う。棒状部材の先端がナット側面に固定されるため、ナットを締め付ける方向や弛める方向の微調整を容易に行うことができる。また、従来のように棒状部材の先端が滑ることがないため、レベル調整を簡単に短時間に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
(1)据付調整用のナットに係止孔または係止突起や係止凹部を有するリング状プレート等の係止手段を設け、棒状部材の先端を係止により固定できるようにしたため、ナットを締め付ける方向や弛める方向の微調整を容易に行うことができる。
【0020】
(2) 従来のように棒状部材の先端が滑ることがないため、レベル調整を簡単に短時間に行うことができる。
【0021】
(3) ナットの側面に孔やプレートを設けるなどの簡易で低コストの構造により、施工面で多大な効果を有する鉄塔の据付レベル調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は本発明の基礎構造が適用される単柱形式の送電用鋼管柱鉄塔の例を示す正面図である。図2は本発明の基礎構造の一例を示す平面図と鉛直断面図である。図3、図4は本発明で用いる据付調整用のアンカーナットの例を示す側面図、水平断面図である。
【0023】
図1において、送電用鋼管柱鉄塔1の塔柱2の上部には複数の腕金が設けられ、塔柱2の最下部にリング状のベースプレート3が設けられ、このベースプレート3が基礎コンクリート4にアンカーボルト5により固定される。
【0024】
本発明の基礎構造は、図2に示すように、上下2枚の水平リングプレートを縦リブ等で連結してなるベースプレート3と、基礎コンクリート4から突出する先端部がベースプレート3を貫通するように基礎コンクリート4に埋設される複数本のアンカーボルト5と、ベースプレート3の上面においてアンカーボルト5に取り付けられる固定用のアンカーナット(ダブルナット)6と、ベースプレート3の下面においてアンカーボルト5に取り付けられる据付調整用のアンカーナット(六角ナット)7から構成されている。
【0025】
アンカーボルト5は塔柱2を取り囲むように配置され、プレート等で連結することにより基礎底面上に組み立てられる。アンカーボルト5の周囲には基礎鉄筋8が配置されており、コンクリートの打設によりアンカーボルト5と基礎鉄筋8が埋設された基礎コンクリート4が構築される。基礎コンクリート4の上面からはアンカーボルト5と基礎鉄筋8の先端部が所定長さで突出しており、アンカーボルト5の先端部がベースプレート3を貫通するように塔柱2が建て込まれる。
【0026】
ベースプレート3の下面には据付調整用のアンカーナット7が配置されており、このアンカーナット7を回転させて上下位置調整することによりベースプレート3の据付レベルが調整される。このレベル調整後、固定用のアンカーナット6でベースプレート3が固定され、ベースプレート3と基礎コンクリート4との間の隙間にはグラウト材が充填され、アンカーボルト5と基礎鉄筋8の先端部を覆うフーチングコンクリート9が打設される。
【0027】
このような基礎構造において、本発明では、図3、図4に示すように、六角ナットからなる据付調整用のアンカーナット7の側面に、ナットを回転させるための棒鋼などの棒状部材の先端を係止できる係止手段10を設け、この係止手段10に棒状部材の先端を係止で固定し、棒状部材をハンマー等で叩いてアンカーナット7を回転させる。
【0028】
図3の実施形態は、係止手段10に係止孔11を用いた特殊ナットの場合である。市販の六角ナットの6面にそれぞれ、内部の雌ねじ孔に到達しない非貫通孔または雌ねじ孔にまで貫通する貫通孔を穿設し、係止孔11とする。
【0029】
図4の実施形態は、係止手段10に、突起や凹部を設けたリング状プレート12を用いた場合である。リング状プレート12はナットの側面から外側に向かって突出するリング状のプレートであり、市販の六角ナットの側面に取り付けられるように内側の孔形状を六角形とし、六角ナットの側面に溶接等で取り付ける。
【0030】
突起を設けるリング状プレート12の外側の形状は幅をあまり取らないように六角形とするのが好ましく、この外周に外側に向かって突出する係止突起13をナット回転方向に間隔をおいて複数配置し、係止手段10とする。この係止突起13は六角形の各辺の中央位置に配置してもよいし、六角形の各角部の位置に配置してもよい。
【0031】
凹部を設けるリング状プレート12の外側の形状は凹部を形成できるように円形とするのが好ましく、この外周に内側に向かって凹む係止凹部14をナット回転方向に間隔をおいて複数配置し、係止手段10とする。この場合も、係止凹部14は六角ナットの各辺の中央位置に配置してもよいし、六角ナットの各角部の位置に配置してもよい。
【0032】
いずれの場合も、リング状プレート12の突出長さは20mm程度とし、外周にある基礎鉄筋8に当たらないようにする。
【0033】
また、図3の係止孔11を用いた特殊ナットと、図4のリング状プレート12とを組み合わせた複合型でもよい。その他、図示例に限らず、種々の係止手段10を用いることができる。
【0034】
以上のような構成において、図2に示すように、ベースプレート下の据付調整用のアンカーナット7の側面に対して基礎鉄筋8の間から棒状部材を挿入し、棒状部材の先端をナット側面の係止孔11またはリング状プレート12の係止突起13や係止凹部14に挿入あるいは当接により係止して固定し、棒状部材をハンマー等で叩くことによりナット7を回転させてベースプレート3の据付レベル調整を行う。棒状部材の先端がナット側面に固定されるため、ナット7を締め付ける方向や弛める方向の微調整を容易に行うことができる。また、従来のように棒状部材の先端が滑ることがないため、レベル調整を簡単に短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の基礎構造が適用される単柱形式の送電用鋼管柱鉄塔の例を示す正面図である。
【図2】本発明の基礎構造の一例であり、(a)は平面図、(b)は鉛直断面図、(c)は部分拡大鉛直断面図である。
【図3】本発明で用いる据付調整用のアンカーナットの係止孔タイプの例を示す側面図と水平断面図である。
【図4】本発明で用いる据付調整用のアンカーナットのリング状プレートタイプの例を示す水平断面図である。
【図5】従来の基礎構造であり、(a)は平面図、(b)は鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…送電用鋼管柱鉄塔
2…塔柱
3…ベースプレート
4…基礎コンクリート
5…アンカーボルト
6…固定用のアンカーナット
7…据付調整用のアンカーナット
8…基礎鉄筋
9…フーチングコンクリート
10…係止手段
11…係止孔
12…リング状プレート
13…係止突起
14…係止凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電用鋼管柱鉄塔の塔柱の最下部を基礎コンクリートに固定するための基礎構造であり、塔柱の最下部に設けられるベースプレートと、基礎コンクリートから突出する先端部が前記ベースプレートを貫通するように基礎コンクリートに埋設される複数本のアンカーボルトと、前記ベースプレートの上面においてアンカーボルトに取り付けられる固定用のアンカーナットと、前記ベースプレートの下面においてアンカーボルトに取り付けられる据付調整用のアンカーナットから構成され、据付調整用のアンカーナットの側面には、ナットを回転させるための棒状の部材の先端を係止できる係止手段が設けられていることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載の基礎構造において、係止手段はナット側面にナット回転方向に間隔をおいて複数穿設された係止孔であることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の基礎構造において、係止手段は、ナット側面を取り囲むようにナットに設けられたリング状プレートの外周に、ナット回転方向に間隔をおいて複数形成された係止突起または係止凹部であることを特徴とする送電用鋼管柱鉄塔の基礎構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−215815(P2009−215815A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62115(P2008−62115)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000153616)株式会社巴コーポレーション (27)
【Fターム(参考)】