説明

送風機、送風機ユニット及び冷却塔

【課題】大がかりな部材を用いることなく騒音を低減させることができる送風機、及び該送風機を備えた冷却塔を提供する。
【解決手段】冷却塔に用いられる送風機であって、ハブ1と、該ハブに設けられ、該ハブを中心にして回転する複数枚の羽根2と、を備え、該羽根の前縁2aから後縁2bに向かう外周端部2cにおいて吐き出し側に立設した翼端板3を有する送風機10、及び該送風機を備えた冷却塔100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔において強制通風を行うために用いられる送風機、該送風機を備えた送風機ユニット、及び該送風機ユニットを備えた冷却塔に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に設けられた空調や冷凍機などの設備に用いられる冷却水は、使用すると温度が上昇する。このように温度が上昇した冷却水を冷却して再度利用するためには、一般的に冷却塔が用いられている。冷却塔とは、冷却水などの熱媒体を大気と直接又は間接的に接触させて冷却することができる熱交換器の一種である。冷却塔における熱媒の冷却は、送風機を用いて冷却塔内に強制的に吸い込んだ空気と熱媒とを直接又は間接的に接触させることによって行われる。よって、送風機の送風能力は冷却塔における熱媒の冷却効率に大きな影響を与える。したがって、冷却塔には送風能力が高い(送風量が多い)送風機を備えることが好ましい。
【0003】
しかしながら、送風機はその送風能力に比例して騒音が大きくなる傾向がある。かかる問題点に鑑みて、冷却塔の騒音対策に関する技術がこれまでにいくつか開示されている。例えば特許文献1には、冷却塔のファンケーシングの出口周囲に音波の干渉作用によって減音を行う干渉型減音装置を取り付けると共に、冷却塔本体のルーバー面に吸音材を貼付したことを特徴とする低騒音型冷却塔が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、強制通風用の軸流型送風機において、各ファンは幅広のものとしてあり、ケーシングである円筒体は直管部と、この直管部の排気側に連なり排気口を形成する末広がりのテーパ部とからなり、このテーパ部と前記直管部の接続箇所は、前記各ファンの中心とこのファン下流側端部との中間で、ファン上流側端部から羽根高さの50%〜70%程度の高さに位置していることを特徴とする送風機が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、冷却塔で強制通風を行う冷却塔用送風機において、前記冷却塔の熱交換部分より通風経路下流側に配設され、前記熱交換部分を通じて空気を軸方向から吸い込み、略遠心方向に送出する遠心ファンと、当該遠心ファンの周囲を取囲む略矩形又は方形開口形状の略筒状体で形成され、当該略筒状体の前記冷却塔熱交換部分側とは逆側の端部開口を空気の吐出口とされてなるケーシングと、前記ケーシングの通風経路上流側端部を閉塞する略板状体で形成され、前記遠心ファンの空気吸込側端部周囲に所定の隙間を介して近接する口縁を有する開口部が前記略板状体の略中央に形成されてなる気流案内板とを備えることを特徴とする冷却塔用送風機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−196374号公報
【特許文献2】実開平6−030667号公報
【特許文献3】特開2000−145698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3に記載された技術によれば、冷却塔に備えられた送風機の騒音を低減することができると考えられる。しかしながら、これらの従来技術では、大がかりな部材を用いることで騒音の低減を図っているため、冷却塔の製造コストが大幅に増大するという問題があった。また、大がかりな部材を設置することによって、冷却塔上部の歩行スペース(メンテナンス時に作業者が歩行するスペース)が狭くなり、冷却塔のメンテナンス性が悪くなるという問題もあった。さらに、大がかりな部材を設置することによって冷却塔の全高が高くなり、輸送時には送風機と冷却塔本体とを分割しなければならなくなるという問題もあった。この場合、設置現場で送風機と冷却塔本体とを組み立てなければならなくなり、設置に多くの時間と費用を要するという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、大がかりな部材を用いることなく騒音を低減させることができる送風機、該送風機を備えた送風機ユニット、及び該送風機ユニットを備えた冷却塔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
本発明の第1の態様は、冷却塔に用いられる送風機であって、ハブと、該ハブに設けられ、該ハブを中心にして回転する複数枚の羽根と、を備え、羽根の前縁から後縁に向かう外周端部において吐き出し側に立設した翼端板を備える、送風機である。
【0011】
本発明において「吐き出し側」とは、送風機によって空気が吐き出される側を意味する。また、以下の本発明の説明において、送風機に空気が吸い込まれる側を「吸い込み側」という。「羽根の前縁から後縁に向かう外周端部において吐き出し側に立設した翼端板」とは、羽根の外周端部側の一部を折り曲げることによって翼端板が形成されている形態、及び、翼端板が別部材として作製された後に羽根の外周端部に取り付けられた形態を含む概念である。また、「羽根の前縁から後縁に向かう外周端部において吐き出し側に立設した翼端板」とは、羽根の前縁と後縁との間の外周端部の少なくとも一部において翼端板が立設されていることを意味し、羽根の前縁と後縁との間の外周端部の全体に翼端板が立設されている形態に限定される概念ではない。ここに「立設」とは、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板のハブ側の面が羽根の回転軸に対して平行になっている形態を含み、当該断面視において、翼端板のハブ側の面が羽根の回転軸に対して±30度となるように翼端板が形成されている形態も含む概念である。また、「立設」とは、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板の根元(翼端板の立ち上がり部分)に角ができるように翼端板が形成される形態に限定されず、翼端板の根元に角ができないように翼端板が形成される形態も含む概念である。上記翼端板を設けることによって、羽根の外周端部において吐き出し側から吸い込み側へと流れる空気を減らし、騒音を低減させることができる。
【0012】
上記本発明の第1の態様の送風機において、翼端板の高さが羽根の回転直径に対して0.2%以上6.0%以下であることが好ましい。
【0013】
羽根の外周端部において吐き出し側から吸い込み側へと流れる空気を減らすためには、翼端板の高さは高い方が好ましい。しかしながら、翼端板が大き過ぎると羽根が重くなることによって様々な問題を生じる虞がある。したがって、翼端板の高さは羽根の回転直径に対して0.2%以上6.0%以下であることが好ましく、0.3%以上4.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以上2.0%以下がより好ましい。なお、「翼端板の高さ」とは、送風機を設置した状態で、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板の根元(翼端板の立ち上がり部分)から翼端板の吐き出し側の端部までの羽根の回転軸に平行な方向の距離を意味する。場所によって翼端板の高さが異なる場合は、翼端板の高さの平均値を上記範囲とすることが好ましい。
【0014】
上記本発明の第1の態様の送風機において、翼端板のハブ側の面が羽根の回転軸に対して略平行であることが好ましい。
【0015】
本発明において「翼端板のハブ側の面が羽根の回転軸に対して略平行である」とは、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板のハブ側の面と羽根の回転軸とが略平行であることを意味する。また、ここで「略平行」とは、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、羽根の回転軸に対する翼端板のハブ側の面の傾きが±5度であることを意味する。このように翼端板のハブ側の面を羽根の回転軸に対して略平行にすることによって、羽根の外周端部において吐き出し側から吸い込み側へと空気が流れるのを妨げ易くなり、騒音を低減し易くなる。
【0016】
本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様の送風機、及び該送風機を覆う円筒状のケーシングを備えた送風機ユニットである。
【0017】
上記本発明の第2の態様の送風機ユニットにおいて、ケーシングの内面と送風機に備えられた翼端板のケーシング側の面とが略平行であることが好ましい。
【0018】
本発明において「ケーシングの内面と送風機に備えられた翼端板のケーシング側の面とが略平行である」とは、ケーシングの内面と送風機に備えられた翼端板のケーシング側の面との距離が、翼端板のケーシング側の面のどの地点においても同一であり、送風機を設置した状態で、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、ケーシングの内面と翼端板のケーシング側の面とを略平行であるとみなせる状態であって、羽根を回転させた際に生じる翼端板とケーシングとの間での空気の乱流の低減効果が得られる程度の状態を意味する。また、ここで「略平行」とは、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、ケーシングの内面に対する翼端板のケーシング側の面の傾きが±5度であることを意味する。このようにケーシングの内面と翼端板のケーシング側の面とを略平行に設置することで、上記乱流を低減させることができるため、騒音を低減させることができる。
【0019】
また、上記本発明の第2の態様の送風機ユニットにおいて、ケーシングの内面と送風機に備えられた翼端板との距離が0.5mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0020】
送風機に備えられる羽根が大きい方が送風能力を向上させ易いため、ケーシングの内面と翼端板との距離(以下、「チップクリアランス」ということがある。)は狭い方が好ましい。しかしながら、チップクリアランスが狭すぎると安全性に問題を生じる虞がある。すなわち、チップクリアランスが狭すぎると、ケーシングと羽根(翼端板)とが接触したり、ケーシングに付着した塵などの異物と羽根(翼端板)とが接触したりして、送風機が破損する虞がある。したがって、チップクリアランスは0.5mm以上50mm以下であることが好ましく、2mm以上30mm以下であることが更に好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明の第3の態様は、上記本発明の第2の態様の送風機ユニットを備えた冷却塔である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大がかりな部材を用いることなく騒音を低減させることができる送風機、該送風機を備えた送風機ユニット、及び該送風機ユニットを備えた冷却塔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】冷却塔100を概略的に示した断面図である。
【図2】送風機ユニット10を概略的に示した平面図である。
【図3】図3(A)は図2に示した一点鎖線IIIA−IIIAに沿った断面を概略的に示した図であり、図3(B)は図2に示した一点鎖線IIIB−IIIBに沿った断面を概略的に示した図である。
【図4】従来の送風機ユニットの断面の一部を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、各図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、簡略化している。また、各図面において、同様の構成のものには同じ符号を付しており、繰り返しとなる符号は一部省略している場合がある。
【0025】
図1は、本発明の冷却塔の一つの実施形態に係る冷却塔100を概略的に示した断面図である。冷却塔100は、冷却塔本体20及び冷却塔本体20の上部に設置された送風機ユニット10を備えている。冷却塔100は、後に詳述する本発明の送風機ユニット10を備える以外は、公知の送風機と同様の構成である。すなわち、冷却塔本体20としては、公知の冷却塔と同様のものを用いることができる。
【0026】
冷却塔本体20の側面にはルーバー21が形成されている。送風機ユニット10に備えられた送風機11を稼働させることによって、図1に白抜き矢印で示したように、冷却塔本体20の側面(ルーバー21)から冷却塔本体20内に空気が吸い込まれ、該空気は冷却塔本体20内を流通して冷却塔100の上部から吐き出される。このようにして送風機11によって冷却塔本体20内に空気を強制的に流すことにより、冷却塔本体20内において外部から供給された熱媒体を冷却することができる。より具体的には、冷却塔本体20の内部には充填材22が備えられており、冷却塔本体20内に空気を強制的に流すことによって、該充填材22において空気と外部から供給された熱媒体とを直接又は間接的に接触させることにより、空気と熱媒体との間で熱交換を行い、熱媒体を冷却することができる。
【0027】
次に、本発明の送風機ユニットの一つの実施形態に係る送風機ユニット10について説明する。図2は、送風機ユニット10を概略的に示した平面図である。図2において、紙面手前側が送風機ユニット10に備えられた送風機11によって空気が排出される側(吐き出し側)であり、紙面奥側が送風機11に空気が吸い込まれる側(吸い込み側)である。また、図2に示した破線は、羽根2を回転させたときに羽根2のケーシング4側の端部が形成する円である。図3は、送風機11に備えられる羽根2の断面を概略的に示した図である。すなわち、図3(A)は図2に示した一点鎖線IIIA−IIIAに沿った断面(羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面)を概略的に示した図であり、図3(B)は図2に示した一点鎖線IIIB−IIIBに沿った断面を概略的に示した図である。図3(A)及び図3(B)において、紙面上側が吐き出し側であり、紙面下側が吸い込み側である。
【0028】
図2に示したように、送風機ユニット10は、送風機11と送風機11を覆う円筒状のケーシング4とを備えている。また、送風機11は、ハブ1と、ハブ1に設けられ、ハブ1を中心にして回転する複数枚の羽根2とを備えている。羽根2は、前縁(羽根2の回転方向前方の縁)2aから後縁(羽根2の回転方向後方の縁)2bに向かう外周端部2cにおいて、吐き出し側(図2の紙面手前側)に立設した翼端板3を備えている。ここに「立設」とは、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板3のハブ1側の面が羽根2の回転軸に対して平行になっている形態を含み、当該断面視において、翼端板3のハブ1側の面が羽根2の回転軸に対して±30度となるように翼端板3が形成されている形態も含む概念である。また、「立設」とは、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、図3(A)に例示したように翼端板3の根元(翼端板の立ち上がり部分)3cに角ができるように翼端板3が形成される形態に限定されず、翼端板3の根元3cに角ができないように翼端板3が形成される形態も含む概念である。後に詳述するように、翼端板3を設けることによって、羽根2の外周端部2cにおいて吐き出し側から吸い込み側へと流れる空気を減らし、騒音を低減させることができる。
【0029】
送風機11は、ハブ1を中心にして複数の羽根2を図2に示した矢印Rの方向に回転させることによって、図2の紙面奥側から吸い込んだ空気を、図2の紙面手前側に吐き出すことができる。羽根2は図3(B)に示したように前縁2aから後縁2bに向かうにつれて反り返るように湾曲しているため、羽根2を上記のように回転させると、羽根2の一方の面2d側の空気の流れA1に比べて羽根2の他方の面2e側の空気の流れA2が速くなり、面2d側が正圧になるとともに面2e側が負圧になる。以下、面2dを正圧面2dと表記し、面2eを負圧面2eと表記することがある。
【0030】
羽根2の形態は、後述する翼端板3を備える以外は公知の送風機に備えられる羽根と同様とすることができる。また、ハブ1及びケーシング4の形態も特に限定されず、公知の送風機ユニットに備えられるハブ及びケーシングと同様のものを用いることができる。
【0031】
送風機ユニット10によれば、羽根2が翼端板3を備えていることによって、羽根2を回転させた際に生じる騒音を低減させることができるとともに、送風能力を向上させることができる。送風機ユニット10による効果を具体的に説明する前に、従来の送風機ユニットについて説明する。
【0032】
図4は、従来の送風機ユニット110の断面の一部を概略的に示した図であり、図3(A)と同様の視点から見た図である。送風機ユニット110は、送風機111と送風機111を覆う円筒状のケーシング104とを備えている。従来の送風機ユニット110では、羽根102を回転させた際、羽根102の外周端部102cにおいて、正圧面102d側からケーシング104と羽根102の外周端部102cとの隙間(チップクリアランス)C3を通って負圧面102e側に向かう空気の流れA3が形成される。このようにしてチップクリアランスC3に空気が流れ込むと、そこで騒音を生じる。すなわち、チップクリアランスC3が送風機ユニット110によって生じる騒音に大きな影響を与えている。したがって、この騒音を低減させるためには、チップクリアランスC3を小さくして空気の流れA3を少なくすることが考えられる。チップクリアランスC3を小さくするためには、羽根102が回転した際に羽根102とケーシング104とが接触することを防ぐため、ケーシング104の内面を精度良く形成することが求められる。しかしながら、実際には、ケーシング104の内面を精度良く形成することは困難を極めるとともに、精度を上げるとケーシング104の製造コストが上がることになる。また、チップクリアランスを極端に小さくすることは安全上好ましくない。すなわち、チップクリアランスが狭すぎると、ケーシングと羽根とが接触したり、ケーシングの内面に付着した異物と羽根とが接触したりして、送風機が破損する虞がある。また、送風機ユニットにおいて騒音を低減するためには、送風機の羽根の枚数を増やしたり、羽根を大きくして羽根の回転数を少なくしたりすることも考えられる。しかしながら、このような対策は送風機ユニットの製造コストを大幅に増加させることとなる。したがって、従来の送風機ユニットでは騒音を低減させることが難しかった。
【0033】
一方、本発明の送風機ユニットによれば、安全性を損なうことなく、製造コストを増大させずに騒音を低減させることができる。以下、図3に戻って、送風機ユニット10を例にして具体的に説明する。
【0034】
送風機11に備えられた羽根2は、前縁2aから後縁2bに向かう外周端部2cの少なくとも一部において、吐き出し側に立設した翼端板3を備えている。送風機11によれば、翼端板3が備えられていることによって、羽根2の外周端部2cにおいて正圧面2d側から負圧面2e側へと空気が流れ込むことを抑制することができる。すなわち、送風機ユニット10によれば、チップクリアランスC1(図3(A)参照)に空気が流れ込むことを抑制できる。そのため、送風機ユニット10によれば、騒音を低減させることができる。送風機ユニット10によれば、チップクリアランスC1側に流れようとする空気にとって翼端板3が壁となるため、チップクリアランスC1を極端に小さくすることなく、実質的にはチップクリアランスがゼロになったのと同様の効果を得ることができる。したがって、送風機ユニット10によれば、安全性を確保しつつ、製造コストを増大させずに騒音を低減することができる。
【0035】
また、送風機11によれば、翼端板3が備えられていることによって、以下に説明するように、送風能力を向上させることもできる。従来の送風機111のように羽根102の外周端部102cにおいて正圧面102dからチップクリアランスC3を通って負圧面102e側に空気が流れた場合、送風機の効率が低下する(図4参照)。一方、送風機11によれば、翼端板3が備えられていることによって、羽根2の正圧面2d側から負圧面2e側に空気が流れ込むことを抑制できる。また、羽根2の外周端部2cにおいて渦流を整流化することができる。よって、送風機11によれば、正圧面2d側の空気を効率よく吐き出すことができ、送風能力を向上させることができる。
【0036】
翼端板3は、羽根2の前縁2aから後縁2bに向かう外周端部2c全体に設けてもよいが、上記効果を奏する範囲で外周端部2cの一部に設けてもよい。すなわち、上記のように羽根2の外周端部2cにおいて正圧面2d側から負圧面2e側へと空気が流れること抑制できればよく、少なくともこのような流れが形成される部分に翼端板3を設ければよい。同様の観点から、翼端板3は、羽根2の後縁2b側から羽根2の回転方向後方に突出した形態で備えられていてもよい。
【0037】
羽根2の外周端部2cにおいて正圧面2d側から負圧面2e側へと流れる空気を減らすためには、翼端板3の高さH1(図3(A)参照)は高い方が好ましい。しかしながら、翼端板3が大き過ぎると羽根が重くなることによって様々な問題を生じる虞がある。したがって、翼端板3の高さH1は羽根2の回転直径D1(図2参照)に対して0.2%以上6.0%以下であることが好ましく、0.3%以上4.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以上2.0%以下であることがより好ましい。なお、「翼端板3の高さH1」とは、送風機11を設置した状態で、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板3の根元(翼端板の立ち上がり部分)3cから翼端板3の吐き出し側の端部3dまでの羽根2の回転軸に平行な方向の距離を意味する。場所によって翼端板3の高さH1が異なる場合は、翼端板3の高さH1の平均値を上記範囲とすることが好ましい。
【0038】
また、羽根2の外周端部2cにおいて正圧面2d側から負圧面2e側へと流れる空気を減らすためには、翼端板3のハブ1側の面3a(図3(A)参照)を羽根2の回転軸に対して略平行とすることが好ましい。翼端板3のハブ1側の面3aを羽根2の回転軸に対して平行にすることによって、羽根2の外周端部2cにおいて正圧面2d側から負圧面2e側へと空気が流れるのを妨げ易くなり、騒音を低減し易くなるとともに送風能力を向上し易くなる。なお、「翼端板3のハブ1側の面3aが羽根2の回転軸に対して略平行」とは、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、翼端板3のハブ1側の面3aと羽根2の回転軸とが略平行であることを意味する。また、ここで「略平行」とは、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、羽根2の回転軸に対する翼端板3のハブ1側の面3aの傾きが±5度であることを意味する。
【0039】
また、翼端板3のケーシング4側の面3b(図3(A)参照)は、ケーシング4の内面と略平行であることが好ましい。ケーシング4の内面と翼端板3のケーシング4側の面3bとを略平行に設置することで、羽根2を回転させた際に生じる翼端板3とケーシング4との間での空気の乱流を低減させることができるため、騒音を低減させることができる。なお、「ケーシング4の内面と翼端板3のケーシング4側の面3bとが略平行」とは、ケーシング4の内面と送風機11に備えられた翼端板3のケーシング4側の面3bとの距離が、翼端板3のケーシング4側の面3bのどの地点においても同一であり、送風機11を設置した状態で、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、ケーシング4の内面と翼端板3のケーシング4側の面3bとを略平行とみなせる状態であって、ケ羽根2を回転させた際に生じる上記乱流の低減効果が得られる程度の状態を意味する。また、ここで「略平行」とは、羽根2の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、ケーシング4の内面に対する翼端板3のケーシング側の面3bの傾きが±5度であることを意味する。
【0040】
また、羽根2の回転半径が大きい方が送風能力を向上させ易いため、チップクリアランスC1は狭い方が好ましい。しかしながら、チップクリアランスC1が狭すぎると安全性に問題を生じる虞がある。すなわち、チップクリアランスC1が狭すぎると、ケーシング4と羽根2とが接触したり、ケーシング4の内面に付着した塵など異物と羽根とが接触したりして、送風機11が破損する虞がある。したがって、チップクリアランスC1の幅W1(図3(A)参照)は、0.5mm以上50mm以下であることが好ましく、2mm以上30mm以下であることが更に好ましく、2mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0041】
なお、翼端板3は別部材として作製した後に羽根2に取り付けられていてもよく、羽根2と一体に形成されていてもよい。翼端板を別部材として作製して羽根に取り付ける形態とすれば、既存の羽根に別部材として作製した翼端板を取り付ければ本発明の送風機とすることができるため、翼端板が一体となった羽根を新たに作製するより、金型の作製等にかかる費用を安価にすることができる。
【0042】
これまでの本発明の送風機の説明では、翼端板が羽根の吐き出し側にのみ形成されている形態を例示して説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。翼端板は羽根の吐き出し側及び吸い込み側の両方に形成されていてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
既存の冷却塔(三菱樹脂株式会社製、Riシリーズ型式200ME)の送風機に備えられる全ての羽根に翼端板を取り付けて、実施例1に係る冷却塔を作製した。翼端板の形態は下記の通りである。翼端板の高さ(図3(A)のH1参照)は、羽根の回転直径(図3のD1参照)に対して1.4%とした。また、翼端板のハブ側の面、翼端板のケーシング側の面、及びケーシングの内面は、羽根の回転軸を含み且つ該回転軸に平行な断面視において、それぞれ羽根の回転軸に対して平行となるようにした。
【0045】
(実施例2)
翼端板の高さを羽根の回転直径に対して0.8%とした以外は実施例1と同様にして、冷却塔を作製した。
【0046】
(比較例1)
送風機の羽根が翼端板を備えていない以外は実施例1と同様にして、冷却塔を作製した。
【0047】
(騒音の測定)
実施例1、2及び比較例1に係る冷却塔について、騒音の測定を行った。騒音の測定は、「日本冷却塔工業会」の規定による騒音基準に準拠し実施した。騒音測定位置は角形開方式冷却塔の空気吸い込み開放部(ルーバ面)から水平距離にて2m、5mの各位置かつ、床面より1.5mにて実施した。その結果を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示したように、送風機の羽根が翼端板を備えている実施例1及び2に係る冷却塔によれば、送風機の羽根が翼端板を備えていない比較例1に係る冷却塔に比べて大幅に騒音を抑えることができた。また、実施例1と実施例2とを比較すると、送風機の羽根が備える翼端板の高さが高い方が、騒音をより低減できることがわかった。
【符号の説明】
【0050】
1 ハブ
2 羽根
2a 前縁
2b 後縁
2c 外周端部
2d 正圧面
2e 負圧面
3 翼端板
4 ケーシング
10 送風機ユニット
11 送風機
20 冷却塔本体
21 ルーバー
22 充填材
100 冷却塔
C1、C3 チップクリアランス
A1、A2、A3 空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔に用いられる送風機であって、
ハブと、該ハブに設けられ、該ハブを中心にして回転する複数枚の羽根と、を備え、
前記羽根の前縁から後縁に向かう外周端部において吐き出し側に立設した翼端板を有する、送風機。
【請求項2】
前記翼端板の高さが前記羽根の回転直径に対して0.2%以上6.0%以下である、請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記翼端板の前記ハブ側の面が、前記羽根の回転軸に対して略平行である、請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の送風機、及び該送風機を覆う円筒状のケーシングを備えた送風機ユニット。
【請求項5】
前記ケーシングの内面と前記送風機に備えられた前記翼端板の前記ケーシング側の面とが略平行である、請求項4に記載の送風機ユニット。
【請求項6】
前記ケーシングの内面と前記送風機に備えられた前記翼端板との距離が0.5mm以上50mm以下である、請求項4又は5に記載の送風機ユニット。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の送風機ユニットを備えた冷却塔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−96307(P2013−96307A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240099(P2011−240099)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】