説明

送風装置

【課題】充分な指向性と高いスポット感を有する風を供給できる送風装置を得る。
【解決手段】本車両用送風装置10では、叩きつけるように押圧部46を押圧するとピストン38は空気室36内の空気を瞬間的に加圧する。これにより、瞬間的に勢いのある加圧空気W2がダクト54を介してダクト16に流れ込み、車両12の室内には瞬間的に勢いのある混合気W3が供給される。このような混合気体W3を受ける乗員は充分な指向性と高いスポット感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内に風を供給する送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用空気吹出装置では、通風路を通過する気流が通風路に配置された朝顔状のスポット整流板を通過する際に絞られ、車両室内の特定位置に気流をスポット状に集中させることができる。
【0003】
一方、下記特許文献2に開示された風向調整装置では、通気ダクトを通過した気流は内側に通気抵抗板が設けられたドーム型の風向制御体の内側を通って吹出口から吹き出される。これにより、気流の拡散が抑制されて気流を指向性があるスポット風にすることができる。
【特許文献1】特開平5−240496号の公報
【特許文献2】特開2005−247185の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、気流がスポット整流板を通過する際にスポット状に絞られるものの、吹出グリルを通過して車両の室内に送られることで気流が拡散してしまう。
【0005】
また、特許文献2に開示された構成では、風向制御体の内で通気抵抗板に干渉されない気流に対し、通気抵抗板により切り裂かれた気流が合流することで拡散を抑制しているが、吹出口を通過した気流は拡散されてしまう。
【0006】
このように、上記の各特許文献に開示された構成では、例えば、車両室内の座席に着座した乗員にスポット風を供給しようとしても、気流が拡散されるために乗員はスポット感を感じられない。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、充分な指向性と高いスポット感を有する風を供給できる送風装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る送風装置は、車両室内側で開口した送風口に直接又は間接的に接続され、作動することで空気を加圧し、この加圧した空気を前記送風口へ送る圧力付与手段を備えている。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る送風装置では、圧力付与手段が作動すると、この圧力付与手段によって空気が加圧され、更に、加圧された空気は車両の室内側で開口した送風口へ送られる。これにより、加圧された空気が車両の室内へ供給される。このように、送風口から車両室内に供給される空気が加圧されていることで送風口から送出される空気の勢いが向上し、これにより、送風口から車両室内に供給される風の指向性が向上すると共に、この風にあたる乗員は高いスポット感を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る送風装置は、一端が車両室内側で開口した送風口に接続された内部を空気が通過可能な通風部と、前記通風部の他端に接続されると共に、物理的に所定の条件に調整された空気である調和空気を生成し、前記通風部及び前記送風口を介して前記車両の室内へ前記調和空気を供給する空調手段と、前記通風部の一端と他端との間に直接又は間接的に接続され、作動することで前記通風部内の空気を加圧して空気を前記送風口へ送る圧力付与手段と、を備えている。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る送風装置では、空調手段が作動すると、温度や風量等の空気の物理的条件が所定の条件で調整された調和空気が生成される。空調手段で生成された調和空気は通風部及び送風口を通過して、車両の室内に供給される。
【0012】
ここで、圧力付与手段が作動すると、通風部内の空気(空調手段の作動状態では通風部を通過する調和空気)が加圧されて送風口へ送られる。これにより、空調手段が作動しているのであれば、更に加圧された調和空気が車両の室内へ供給される。このように、送風口から車両室内に供給される調和空気が加圧されていることで送風口から送出される調和空気の勢いが向上し、これにより、送風口から車両室内に供給される調和空気の指向性が向上すると共に、この調和空気にあたる乗員は高いスポット感を得ることができる。
【0013】
なお、本発明では、通風部と圧力付与手段とは直接接続されていてもよいし、ダクト等の筒状部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0014】
また、圧力付与手段は、通風部内の空気を直接加圧してもよいし、調和空気とは別の空気を加圧した状態で通風部に送り込み、この加圧された空気と調和空気とを混合することで結果的に加圧された調和空気を生成する構成としてもよい。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る送風装置は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、内部が前記送風口に直接又は間接的に連通した空気室と、前記空気室内の空気を加圧して圧縮する圧縮手段と、を含めて前記圧力付与手段を構成したことを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係る送風装置によれば、空気室内の空気が圧縮手段により加圧されて圧縮されると、この圧縮された空気が送風口から車両の室内に供給される。このため、送風口から車両室内に供給される風の指向性が向上すると共に、この風にあたる乗員は高いスポット感を得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る送風装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記圧力付与手段は、作動することで瞬間的に空気を加圧して前記送風口へ前記空気を送ることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係る送風装置によれば、圧力付与手段は瞬間的に空気を加圧して送風口へ送る。このため、送風口からは加圧された空気が長時間連続して車両室内に供給されるのではなく、瞬間的に勢いのある空気が車両室内に供給されることになる。
【0019】
このように、勢いのある空気(風)を瞬間的に車両室内の乗員にあてることで、長時間連続して送られる風にあたるよりも、むしろ乗員は充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係る送風装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記圧力付与手段は、断続的に空気を加圧して前記送風口へ前記空気を送ることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の本発明に係る送風装置によれば、圧力付与手段は断続的に空気を加圧して送風口へ送る。このため、送風口からは加圧された空気が時間的に所定間隔毎に車両室内に供給される。
【0022】
このため、乗員には断続的に勢いのある強い風があてられることになり、長時間連続して送られる風にあたるよりも、むしろ乗員は充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る送風装置では、充分な指向性と高いスポット感を有する風を供給できる。
【0024】
請求項2に記載の本発明に係る送風装置では、充分な指向性と高いスポット感を有する調和空気を供給できる。
【0025】
請求項3に記載の本発明に係る送風装置では、空気室内の空気が圧縮手段で圧縮され手車両の室内に供給されるため、充分な指向性と高いスポット感を有する風を供給できる。
【0026】
請求項4に記載の本発明に係る送風装置では、勢いのある空気(風)を瞬間的に車両室内の乗員にあてることができ、これにより、乗員に充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じさせることができる。
【0027】
請求項5に記載の本発明に係る送風装置では、断続的に勢いのある空気(風)を車両室内の乗員にあてることができ、これにより、乗員に充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔基本構成〕
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係る送風装置を適用した車両用送風装置10を搭載した車両12の構成の要部が概略的な断面図によって示されており、図2には車両12の室内が概略的な斜視図によって示されている。
【0029】
図1に示されるように、車両用送風装置10は空調手段としての空調装置本体14を備えている。空調装置本体14は、例えば、車両の室内又は室外の空気を吸引するブロワモータや、エバポレータ(蒸発器)、コンデンサ(凝縮器)等により構成された冷却装置、ヒータコアにより構成された加熱装置等により構成され、ブロワモータで吸引した空気を冷却装置で冷却して冷風を生成すると共に、この冷風の一部を加熱して温風を生成し、冷風と温風とを所望の温度に応じた割合で混合して調和空気W1を生成する。
【0030】
空調装置本体14にて生成された調和空気W1の空調装置本体14での出口部分には通風部としての筒状のダクト16の一端が接続されている。このダクト16の他端に対応して車両12の室内とエンジンルームとを仕切るインスツルメントパネル18には開口部20が形成されており、この開口部20には送風口を構成するレジスタ22が装着されている。レジスタ22にはダクト16の他端が接続されており、ダクト16を通過した調和空気W1がレジスタ22を通過することで車両12の室内に供給される。
【0031】
また、レジスタ22には、車両12の高さ(上下)方向に沿って長手方向とされた細幅板状の縦フィンと、車両12の幅(左右)方向に沿って長手方向とされた細幅板状の横フィンと、が設けられている。縦フィン及び横フィンは、各々の長手方向を軸方向とする軸周りに回動可能とされており、これらの縦フィン及び横フィンの各々の幅方向を適宜に傾けることで、レジスタ22から車両12の室内に供給される調和空気W1の向きが調整される。
【0032】
一方、図2に示されるように、車両12には圧力付与手段としての加圧装置30を備えている。加圧装置30は、例えば、車両12の運転席と助手席との間のセンターコンソール32又はセンターコンソール32の近傍に設けられたシリンダ部34を備えている。図1に示されるように、シリンダ部34には空気室36が形成されている。空気室36には上方から圧縮手段としてのピストン38が嵌挿されている。ピストン38の上下方向中間部の外周部からはピストン38の外方へ向けてフランジ40が延出されている。このフランジ40に対応して空気室36は上下方向中間部では空気室36の内周部がフランジ40を含めてピストン38の嵌挿が可能に拡径されており、空気室36の拡径部分と拡径されていない部分との境の中縁部42上には圧縮コイルスプリング44が載置されている。
【0033】
圧縮コイルスプリング44は中縁部42とは反対の端部(すなわち、圧縮コイルスプリング44の上側の端部)にて下方からフランジ40に接しており、その付勢力でピストン38を押し上げている。また、ピストン38の上端部には外周形状が中縁部42よりも上側での空気室36の内周形状よりも大きな押圧部46が一体的に設けられており、圧縮コイルスプリング44の付勢力に抗して押圧部46を上方から押圧すると、下降するピストン38により空気室36内の空気が圧縮される構成になっている。
【0034】
また、図1に示されるように、空気室36の下端側にはシリンダ部34の内周一部に連通孔48が形成されている。連通孔48がシリンダ部34の外周部にて開口しており、シリンダ部34の内外を連通している。この連通孔48に対応してシリンダ部34には逆止弁50が設けられている。逆止弁50は空気室36内の内圧が低下すると連通孔48を開放し、シリンダ部34の外部から空気を取り入れる。さらに、空気室36の下端側ではシリンダ部34の外周一部に筒状の連結筒52が設けられている。連結筒52の一端は空気室36に連通しており、下降するピストン38に加圧された空気は連結筒52から空気室36の外部に放出される。
【0035】
この連結筒52の他端にはダクト54の一端が接続されており、連結筒52を通過した空気がダクト54の内部に流れ込む。また、ダクト54の一端部近傍ではダクト54の内側に逆止弁56が設けられている。逆止弁56は逆止弁56よりもダクト54の一端側(すなわち、連結筒52や空気室36の側)で内圧が上昇した際に開放移動してダクト54の一端側と他端側とを連通させる。さらに、ダクト54の他端部はダクト16の中間部でダクト16に繋がっており、ダクト54を通過した空気W2がダクト16の内部に流れ込み、更に、空気W2を開口部20から車両12の室内に供給できるようになっている。
【0036】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
本車両用送風装置10では、車両12の室内の所定位置(例えば、インスツルメントパネル18)に設けられた空調装置用スイッチ(図示省略)を操作すると空調装置本体14が作動し、空調装置用スイッチの操作状態に応じた温度や風量の調和空気W1が空調装置本体14にて生成される。空調装置本体14にて生成された調和空気W1は空調装置本体14を構成するブロワによってダクト16に送り込まれる。ダクト16に送り込まれた調和空気W1はダクト16及びレジスタ22を通過することで車両12の室内に供給され、これにより、例えば、車両12の室内温度が調整される。
【0038】
一方、空調装置本体14の作動状態で圧縮コイルスプリング44の付勢力に抗して上方から押圧部46を急激に押圧すると(更に言えば、上方から押圧部46を叩くと)、ピストン38が急降下して空気室36内の空気を急激に圧縮する。このようにして加圧された空気は図1における加圧空気W2として連結筒52に向かい逆止弁56を押圧してダクト54の一端側と他端側とを連通させる。ダクト54の一端側と他端側とが連通すると、加圧空気W2はダクト54の内部を通過し、ダクト16の中間部にてダクト16の内部に流れ込む。
【0039】
加圧空気W2がダクト16に流れ込むことでダクト16内を流れる調和空気W1が加圧され、加圧された調和空気W1と加圧空気W2との混合気W3がレジスタ22を介して車両12の室内に供給される。ここで、混合気W3は加圧空気W2と加圧空気W2に加圧された調和空気W1により構成されるため、調和空気W1だけが車両12の室内に供給される場合に比べて車両12の室内に供給される際の勢いがよくなる。これにより、縦フィン及び横フィンによる風向調整しだいでは、例えば、運転席や助手席のみならず、運転席や助手席の後方に設けられた後部座席に着座する乗員にも混合気W3が届く。これにより、レジスタ22を通過して車両12の室内に供給される混合気W3の指向性が向上すると共に、この混合気W3にあたる乗員は高いスポット感を得ることができる。
【0040】
しかも、例えば、叩きつけるように押圧部46を押圧することで、ピストン38は空気室36内の空気を瞬間的に加圧する。このため、ダクト54を通過した加圧空気W2は長時間連続してダクト16に流れ込むのではなく、瞬間的に勢いのある加圧空気W2がダクト16に流れ込む。このため、車両12の室内には瞬間的に勢いのある混合気W3が供給されることになる。
【0041】
このように、勢いのある混合気W3を瞬間的に車両12の乗員にあてることで、乗員は長時間連続して送られる風にあたるよりも、むしろ充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【0042】
なお、これまでの説明では、空調装置本体14の作動状態で押圧部46を押圧することで調和空気W1と加圧空気W2との混合気W3を車両12の室内に供給していたが、空調装置本体14が停止した状態で押圧部46を押圧して、加圧空気W2だけを車両12の室内に供給してもよい。この場合には、空調装置本体14が作動していないため、混合気W3とは異なり温度等は調整されないが、勢いのある加圧空気W2を瞬間的に車両12の乗員にあてることができ、これにより、乗員は充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【0043】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よいも前出の実施の形態にて説明した部位と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0044】
図3には本発明の第2の実施の形態に係る送風装置を適用した車両用送風装置80の要部の構成が断面図により示されている。この図に示されるように、車両用送風装置80は加圧装置30を備えておらず、代わりに、圧力付与手段としての加圧装置82を備えている。加圧装置82は内側が空気室84とされたシリンダ部86を備えている。シリンダ部86の内側(すなわち、空気室84)には圧縮手段としてのピストン88が上下に摺動可能に収容されている。
【0045】
また、ピストン88の最下点よりも下方ではシリンダ部86の周壁に連通孔90が形成されており、シリンダ部86の内外が連通孔90により連通している。この連通孔90に対応してシリンダ部86には逆止弁92が形成されている。逆止弁92は通常状態で連通孔90を閉止しており、空気室84内に負圧が発生すると連通孔90を開放し、連通孔90を介してシリンダ部86の外部の空気を空気室84に取り込む。また、シリンダ部86の底壁には略直角に湾曲した筒状の連結筒94が形成されている。この連結筒94のシリンダ部86とは反対側の端部はダクト54の一端に接続されている。
【0046】
一方、上記のピストン88の上部には連結部96が形成されており、この連結部96にはクランクロッド98の先端が連結部96に対して回転可能に連結されている。クランクロッド98の基端側には回転板100が設けられている。回転板100はシャフト102に一体的に連結されており、シャフト102が自らの軸心周りに回転すると、回転板100がシャフト102と共に回転する。
【0047】
上記のクランクロッド98の基端部は回転板100がシャフト102と共に回転した際の回転中心に対して偏心して回転板100に連結されており、回転板100が回転することでクランクロッド98の基端はシャフト102を中心に回転しつつ連結部96、ひいては、ピストン88を昇降させる。また、上記のシャフト102はシリンダ部86を通過してシリンダ部86の外部に設けられた駆動手段としてのモータ104の出力軸を構成している。
【0048】
図4に示されるように、モータ104はドライバ106を介してバッテリー108に電気的に接続されていると共に、制御手段としてのECU110に電気的に接続され、ECU110から出力された駆動制御信号Ds2の信号レベルに基づき、ドライバ106がモータ104に対する通電を制御する。また、ECU110はドライバ112を介して前記第1の実施の形態で説明した空調装置本体14に電気的に接続されている。
【0049】
ドライバ112はバッテリー108にも電気的に接続されており、ECU110から出力された駆動制御信号Ds1の信号レベルに基づいて空調装置本体14に対する通電を制御する。さらに、ECU110はスイッチ114に電気的に接続されている。スイッチ114は、例えば、前記第1の実施の形態にて説明したインスツルメントパネル18やセンターコンソール32等に設けられており、車両12の乗員がスイッチ114を操作すると操作信号OsがECU110に対して出力される。
【0050】
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0051】
本車両用送風装置80では、スイッチ114が操作されることでスイッチ114から出力された操作信号OsがECU110に入力される。ECU110では入力された操作信号Osに基づいて駆動制御信号Ds1、Ds2を生成して出力する。空調装置本体14を作動させるべく駆動制御信号Ds1がECU110から出力されると、ドライバ112は適宜に空調装置本体14を通電し、これにより、調和空気W1が生成されてダクト16に送り込まれる。
【0052】
また、モータ104を作動させるべく駆動制御信号Ds2がECU110から出力されると、ドライバ106は適宜にモータ104を通電する。モータ104が通電されて作動するとシャフト102が回転し、更に、シャフト102と共に回転板100が回転する。回転板100が回転するとクランクロッド98がピストン88を昇降させる。ピストン88が下降すると、空気室84内の空気が加圧された加圧空気W2となり、連結筒94からダクト54に送り込まれる。したがって、本実施の形態では、シャフト102の回転周期に応じた間隔で断続的に加圧空気W2が生成されて、この加圧空気W2と調和空気W1との混合気W3がレジスタ22を介して車両12の室内に供給される。
【0053】
これにより、前記第1の実施の形態と同様にレジスタ22を通過して車両12の室内に供給される混合気W3の指向性が向上すると共に、この混合気W3にあたる乗員は高いスポット感を得ることができる。
【0054】
しかも、例えば、シャフト102の回転で下降するピストン88によって空気室84内の空気がピストン88により急激に加圧されることで、空気室84内の空気は瞬間的に加圧され、しかも、瞬間的に勢いのある加圧空気W2が断続的にダクト16に流れ込む。このため、車両12の室内には瞬間的に勢いのある混合気W3が供給されることになる。
【0055】
このように、勢いのある混合気W3を瞬間的に車両12の乗員にあてることで、乗員は長時間連続して送られる風にあたるよりも、むしろ充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【0056】
なお、これまでの説明では、空調装置本体14の作動状態でモータ104が作動することで調和空気W1と加圧空気W2との混合気W3を車両12の室内に供給していたが、空調装置本体14が停止した状態モータ104を作動させて、加圧空気W2だけを車両12の室内に供給してもよい。この場合には、空調装置本体14が作動していないため、混合気W3とは異なり温度等は調整されないが、勢いのある加圧空気W2を瞬間的に車両12の乗員にあてることができ、これにより、乗員は充分な指向性と高いスポット感を有する風を感じることができる。
【0057】
〔応用例〕
<第3の実施の形態の構成>
次に、前記第1の実施の形態及び前記第2の実施の形態を更に発展させた応用例を本発明の第3の実施の形態及び第4の実施の形態として説明する。
【0058】
図5には本発明の第3の実施の形態に係る車両用送風装置130の要部の構成が断面図により示されている。この図に示されるように、本車両用送風装置130では連結筒52とダクト54との間に貯留手段としての貯留筒132を備えている。貯留筒132はその一端が連結筒52に接続され、他端がダクト54に接続されており、加圧装置30にて生成された加圧空気W2が筒本体134の内部に供給される。
【0059】
また、この筒本体134の下部には貯留部136が設けられている。貯留部136は上方へ向けて開口した凹形状に形成されており、その上端部で筒本体134の内部に連通している。貯留部136の内部には揮発性の固形香料138が収容されており、筒本体134内を加圧空気W2が通過する際には、揮発した固形香料138の香気成分が加圧空気W2に混ざり合い、加圧香気W4としてダクト54に送り込まれる。
【0060】
<第3の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本実施の形態では、ダクト54に加圧香気W4が加圧空気W2に代わって送り込まれるため、レジスタ22から車両12の室内に供給される混合気W3は加圧香気W4を含むことになる。このため、勢いのある混合気W3を瞬間的に車両12の乗員にあてることで、乗員は長時間連続して送られる風にあたるよりも、むしろ充分な指向性と高いスポット感を有するのみならず、香りを含んだ風を感じることができる。
【0061】
ところで、一般的にあまり強い香気を長時間連続して感じると、乗員はむしろ不快に感じることがある。このため、一般的に車両室内用の香料の香気はあまり強くない。しかしながら、弱い香気はそれ自体香りがあまりせず、乗員はあまり香気を感じることができない。
【0062】
ここで、本実施の形態では、一般的に車両室内用に適用される香料よりも強い香気を発する固形香料138を適用することで、充分な香気を加圧香気W4、ひいては、混合気W3に含ませることができ、これにより、乗員は充分に香気を感じることができる。しかも、香気を含む混合気W3は押圧部46を押圧した(叩いた)場合にのみ瞬間的に車両12の室内に供給されるだけであるため、乗員は香気を長時間感じることがなく、乗員が香気を不快と感じることがない。
【0063】
なお、本実施の形態では、加圧空気W2に香気を含ませる構成であったが、例えば、水分(例えば、霧状の水分)を加圧空気W2に含ませる構成としてもよい。このような構成では、例えば、瞬間的に水分を含む混合気W3が乗員に吹き掛けられ、乗員は清涼感を感じることができ、リフレッシュすることができる。
【0064】
<第4の実施の形態の構成>
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0065】
図6には本実施の形態に係る車両用送風装置160のシステムの構成がブロック図により示されている。
【0066】
この図に示されるように、車両用送風装置160は前方監視装置162を備えている点以外は基本的に前記第2の実施の形態に係る車両用送風装置80と同じ構成である。
【0067】
前方監視装置162は図示しないセンサ部と演算部とを含めて構成されている。センサ部は車両12の前端部等に設けられており、車両12の前方側へ向けて赤外線やレーダ等のセンサ信号を出力すると共に、前方の他の車両や障害物(以下、前方の他の車両も含めて障害物と称する)にて反射したセンサ信号が入力される。演算部ではセンサ部からのセンサ信号が出力されてから障害物等で反射したセンサ信号がセンサ部に入力されるまでの時間等に基づいて車両12から障害物までの距離を演算し、この演算結果に基づいた監視信号Wsを出力する。
【0068】
<第4の実施の形態の作用、効果>
本実施の形態に係る車両用送風装置160は基本的に前記第2の実施の形態に係る車両用送風装置80と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本車両用送風装置160では、車両12の走行中に前方監視装置162のセンサ部から車両12の前方へ向けてセンサ信号が出力され、車両12の前方の障害物までの距離が前方監視装置162の演算部により演算される。この演算結果に基づいた監視信号WsはECU110に入力されるが、車両12と障害物までの距離が一定値未満になった場合の監視信号Wsが入力されると、空調装置本体14の作動状態に関わらず、モータ104を作動させるべくECU110は駆動制御信号Ds2を出力する。
【0070】
これにより、ドライバ106がモータ104を作動させると、前記第2の実施の形態でも説明したように、ピストン88が昇降し、ピストン88が降下することで生成された加圧空気W2がダクト54、ダクト16、レジスタ22を介して車両12の室内に供給され、勢いのある加圧空気W2又は混合気W3を瞬間的に車両12の乗員にあてられる。これにより、自らが操作していないにも関わらず、勢いのある加圧空気W2又は混合気W3を瞬間的にあてられることで乗員は車両12と障害物までの距離が一定値未満になったことを認識できる。
【0071】
このように、前記第2の実施の形態に係る車両用送風装置80は前方監視装置162を付加することで、勢いのある加圧空気W2又は混合気W3を瞬間的に乗員にあてることによるリフレッシュ効果等が得られるのみならず、上記のような危険報知手段としても適用できる。
【0072】
なお、本実施の形態では、前方監視装置162をECU110に接続し、車両12と前方の障害物との距離が一定値未満になった場合に勢いのある加圧空気W2又は混合気W3を瞬間的に乗員にあてる構成としたが、例えば、運転席に着座している乗員の身体の一部(例えば、目)の挙動を監視する監視装置をECU110に接続し、例えば、乗員の疲労が大きい場合の挙動や乗員が居眠りをしている状態の挙動を監視装置が検出した場合に勢いのある加圧空気W2又は混合気W3を瞬間的に乗員にあてる構成としてもよく、このような構成では、リフレッシュ効果と危険報知効果との双方を効果的に発揮できる。
【0073】
なお、以上の各実施の形態では、ダクト16にダクト54を接続した構成となっており、加圧装置30、82で生成した加圧空気W2を調和空気W1と共にレジスタ22から車両12の室内に供給する構成で、言わば、従来の車両用空調装置に加圧装置30、82を付加した構成であった。しかしながら、調和空気W1を供給する車両用空調装置とは全く別体で加圧装置30、82を構成し、調和空気W1が供給されるレジスタ22とは別の送風口から車両12の室内に加圧空気W2を供給する構成としてもよい。
【0074】
また、上記の各実施の形態では、加圧空気W2は単にピストン38、88にて圧縮された空気のことを言ったが、充分な指向性と高いスポット感を得るという観点からすると、レジスタ22又はレジスタ22とは別の送風口から車両12の室内に供給される加圧空気W2(又は、混合気W3)は所謂「渦輪」を形成している方が好ましい。このような渦輪を形成している加圧空気W2(又は、混合気W3)は、その周囲の空気との摩擦が小さくなるため、このような渦輪を形成した加圧空気W2(又は、混合気W3)を受ける乗員は、より一層高い指向性とスポット感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る送風装置の構成の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る送風装置を適用した車両の室内を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る送風装置の構成の要部の概略を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る送風装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る送風装置の構成の要部の概略を示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る送風装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用送風装置
14 空調装置本体(空調手段)
22 レジスタ(送風口)
30 加圧装置(圧力付与手段)
36 空気室
38 ピストン(圧縮手段)
80 車両用送風装置
82 加圧装置(圧力付与手段)
84 空気室
88 ピストン(圧縮手段)
130 車両用送風装置
160 車両用送風装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内側で開口した送風口に直接又は間接的に接続され、作動することで空気を加圧し、この加圧した空気を前記送風口へ送る圧力付与手段を備える送風装置。
【請求項2】
一端が車両室内側で開口した送風口に接続された内部を空気が通過可能な通風部と、
前記通風部の他端に接続されると共に、物理的に所定の条件に調整された空気である調和空気を生成し、前記通風部及び前記送風口を介して前記車両の室内へ前記調和空気を供給する空調手段と、
前記通風部の一端と他端との間に直接又は間接的に接続され、作動することで前記通風部内の空気を加圧して空気を前記送風口へ送る圧力付与手段と、
を備える送風装置。
【請求項3】
内部が前記送風口に直接又は間接的に連通した空気室と、
前記空気室内の空気を加圧して圧縮する圧縮手段と、
を含めて前記圧力付与手段を構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記圧力付与手段は、作動することで瞬間的に空気を加圧して前記送風口へ前記空気を送ることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記圧力付与手段は、断続的に空気を加圧して前記送風口へ前記空気を送ることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−120118(P2008−120118A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302873(P2006−302873)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】