説明

逆止弁内蔵止水栓

【課題】従来、逆止弁付き止水栓は、スピンドルの締め過ぎによる止水コマの変形や摩耗による止水コマの短期交換の必要、逆止弁が栓体の2次側に止水栓本体とは別に設定され、スピンドルも栓胴本体に直接嵌装されるため、分解や部品の交換が極めて面倒であるという問題があった。
【解決手段】スピンドル嵌装枠5のスピンドル挿通孔下端内周部に、スピンドル先端外周凹部に係掛する掛止リング6を設定し、同嵌装枠に止水機能を有する逆止弁カートリツジ3を接合すると共に、同カートリツジ弁体31の昇降操作によって栓体通水路の開閉操作を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、栓体の2次側に止水栓本体とは別に設定される逆止弁を、止水栓本体に内蔵させて止水コマとして活用すると共に、スピンドルの締め過ぎによる止水コマとシール部材の硬化変形と消耗を防止し、更に、止水栓本体を分解可能な構成にして逆止弁カートリツジやストレーナユニット等の部材設定や交換が容易に行えるようにした逆止弁付き止水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、逆止弁付き止水栓は、例えば特許文献1に示されるように栓体の2次側に止水栓本体とは別に逆止弁が設定され、主栓スピンドルも栓胴本体に直接嵌装され、他の機構と一体に構成されてきた。
【0003】
また、例えば特許文献2に示されるように、給水を停止するための止水は、止水コマを流路に圧接することによって行われ、1次側から2次側への通水路のゴミを除去するストレーナの設定も固定的に行われてきている。
【特許文献1】特開2000−345591号公報
【特許文献2】特開平11−210896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の逆止弁付き止水栓は、逆止弁が栓体の2次側に止水栓本体とは別に設定されて余計なスペースが必要であるほか、主栓スピンドルも栓胴本体に直接嵌装され、他の機構と一体に構成されるため、分解が極めて面倒であり部品の交換にも多くの時間と労力が必要であった。
【0005】
また、ハンドル付きのスピンドルによる止水は人手によって行われるので、止水に必要な力だけに制御することができずスピンドルの締め過ぎによる止水コマの硬化変形や摩耗によって止水コマの止水性能が短期間で失われ、止水コマの交換を頻繁に行わなければならない無駄が問題とされてきている。
【0006】
更に、地下に埋設するメーターボックス内に設置される止水栓は、逆止弁の交換及びストレーナの清掃を頻繁に行わなければならないため、その度ごとに栓本体を構成する躯体の分解組立てに多大の時間と労力が必要とされる。
【0007】
しかも、従来のストレーナは通水路中に嵌着する方式を採っているため、ストレーナユニットが外れ易く嵌着した筈のユニットが何時の間にか外れて故障の原因ともなっていた。
【0008】
また、止水栓の設定環境に応じてスピンドルのストロークを制御する必要が生じるが、現状ではスピンドルの昇降ストロークが固定的であるため、浮動弁体の逆止弁を用いた場合ハンドルの位置が高くなり、止水栓に連結する埋設メーターボックス内の高さを確保しなければならないため、特殊なボックスを用いたり、配管位置を下げたりして対応しなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、主栓スピンドルを挿通螺合する嵌装枠のスピンドル挿通孔下端内周部に、スピンドル先端外周凹部に係掛する係止リングを設定して締め過ぎを防止し、同嵌装枠に逆止弁カートリツジを接合すると共に、同カートリツジ弁体の昇降操作によって栓体通水路の開閉操作を行うように構成し、同栓体通水路の下部に1次側給水路からの給水と止水を切り換えるボールバルブを設定した。
【0010】
この構成により、スピンドルのハンドルが締め過ぎ状態となる前に、嵌装枠のスピンドル挿通孔下端内周部に設定された係止リングにスピンドル先端外周凹部が突合し、止水機構に必要以上の力が掛かることを阻止すると共に、逆止弁カートリツジを止水機構に組み入れて設定スペースを大幅に節約した。
【0011】
また、ボールバルブが1次側から2次側への給水路を閉鎖した状態において、主栓スピンドル挿通孔、逆止弁カートリツジ収納室、ボールバルブの通水孔口が直線状に連結するように構成し、止水栓本体の上部開口部からL字形状のボールバルブ通水孔の屈曲部まで容易に部材等を挿入できるようにし、ストレーナのビスによる取付け固定を可能にした。
【0012】
次いで、止水栓胴本体の上端外周に雄ねじを刻設し、スピンドルを挿通螺合する嵌装枠を着脱可能に同栓胴本体に嵌装して、前記雄ねじと螺合する袋ナットにより固定し、栓胴本体の上端袋ナットを外せばスピンドルの嵌装枠を本体から引き抜くことができ、全体の分解を容易にして逆止弁の交換及びストレーナの清掃等を簡単に行えるようにした。
【0013】
更に、スピンドルを挿通螺合する嵌装枠の上端外周に雄ねじを刻設し、上端にフランジを形成した筒状弾性シール部材を、前記嵌装枠の上端に同シール部材のフランジを覆着して装嵌し、この筒状弾性シール部材を介してスピンドルを嵌装枠に挿通すると共に、スピンドルの周腹所要区間に刻設した雄ねじと嵌装枠内周に刻設した雌ねじとを螺合し、嵌装枠上端雄ねじと螺合するグランドナットにより固定するように構成した。
【0014】
この構成により、ハンドル基部を下降規制部においてグランドナットに当たる長さにしたり、スピンドルの所定位置に嵌着溝を設けC型リングを嵌着してストッパーを設定する等、スピンドルのストロークを制御できるようにした。
【0015】
また、ボールバルブが1次側から2次側への給水路を閉鎖した状態において、逆止弁カートリツジの開閉弁座に孔口が連結するボールバルブの通水孔に、ストレーナユニットを着脱可能に嵌着して、従来、通水路に設けたストレーナユニットをボールバルブの通水孔に設定して設定スペースの節約を図るとともに、ストレーナのビスによる取付け固定を可能にしストレーナの機能を向上させた。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。1は止水栓の栓本体で、内部にL字型に屈曲した通水孔21を穿設したボール弁体2が設けられ、通水状態においては通水孔21の開口部21aが1次側給水路11に接合し、21bが弁室22の流出口23と流路として接続した状態となっている。
【0017】
本体1の側部に設けられた操作機構25の回動操作によって通水孔21の開口部21aが弁室22の流出口23に流路として接続されると、1次側給水路11はボール弁体2の側腹部によって閉鎖され給水が停止される。
【0018】
この状態において図4に示すようにスピンドル挿通孔51、逆止弁カートリツジ収納室13、ボールバルブの通水孔口が21aが直線状に連結し、開口部21aの突き当たり部21cが上向くので、開口部21aから突き当たり部21cの通水孔内径に対応して形成されたストレーナユニット8を同内径に嵌装し、ユニット8の底部に設けられた止めビス81により螺着固定する。
【0019】
弁室の流出口23の上部には逆止弁カートリッジ3の弁座32の嵌着部24がカートリツジ収納室13の着床部として設定されている。また、逆止弁カートリッジ3は、スプリング33によって伸長方向に付勢された弁体31をカートリッジケース34内に収納設定して構成され、通水状態では給水圧が弁体31をスプリング33に抗して押し上げ、ケース34の上部枠と弁座32を連結するリブの間を通過して2次側通水路12に通水するようになっている。2次側通水路12には水道メータを連結する伸縮管16が連結されている。
【0020】
栓本体1の上端には、スピンドル4を挿通螺合する嵌装枠5が装着され、そのスピンドル挿通孔51の下端内周部52に、スピンドル先端外周凹部41に係掛する掛止め環6が設定される。嵌装枠5のスピンドル挿通孔51の内壁には所定長さの雌ねじ53が刻設され、スピンドル4の外周に刻設された雄ねじ42と螺合してハンドル54の回動により挿通孔51内を昇降する。
【0021】
ハンドル54の回動によりスピンドル4を下降する場合、スピンドル4の先端がジスク61を介して設定された係止リング6の位置に達すると、下降螺進は係止リング6によって阻止され、ハンドル54に掛けられた必要以上の力はジスク61に吸収されて締め過ぎ状態となることが防止される。
【0022】
また、スピンドル4の嵌装は、スピンドル嵌装枠5の上端外周縁部に雄ねじ55を刻設し、スピンドル挿通孔51の内壁には所定長さの雌ねじ53にスピンドル4の外周所要区間に刻設した雄ねじ42を螺合して所定位置まで螺入し、上端にフランジ57を形成した筒状弾性シール部材56を、嵌装枠5の上端縁にフランジを覆着して装嵌し、この筒状弾性シール部材を介してスピンドルを嵌装枠5に挿通すると共に、嵌装枠上端雄ねじ55と螺合するグランドナット62により固定する。
【0023】
更に、スピンドル4の回動ハンドルとグランドナットとの間の側腹外周部所定位置に嵌着溝43を設けC型ストッパーリング44を嵌着してスピンドル4の昇降範囲を規制する。
また、他の昇降範囲規制方法として、図2に示すようにハンドル54の基部59の長さを伸長若しくは短縮調整して、スピンドルが所定長さ下降すると、ハンドル基部の底面がグランドナットの頂面に当接して下降が阻止されるようにして、スピンドルのストロークを制御する。
【0024】
スピンドル嵌装枠5の先端には嵌着溝が設けられ、逆止弁カートリッジケース34の上部枠に設定された係掛溝35に対応する対向位置に角形に屈曲下降する係掛部71、71と切り割り72を設けた掛止め環7を嵌着し、係掛部71とカートリッジケース34の係掛溝35とを掛合させ、逆止弁カートリッジ3をスピンドル嵌装枠5の先端に係止する。
【0025】
逆止弁カートリッジ3を先端に掛止したスピンドル嵌装枠5は、止水栓本体1の上部から挿入されてカートリッジ3の底部弁座32が、収納室22の嵌着部24に着合されると共に、栓本体1の上縁外周に刻設した雄ねじ14と螺合する袋ナット15により栓本体1内に締着固定される。なお、スピンドル4と逆止弁カートリッジ3の接合は、掛止め環7によることなくカートリッジ3の落とし込みと袋ナット15の締着固定によっても良い。
【0026】
このように構成した逆止弁内蔵止水栓は、2次側からの逆流に対してはスプリング33によって伸長方向に付勢された弁体31によって阻止され、1次側からの給水についてはハンドル54の回動によりスピンドル4を下降し、スピンドル嵌装枠5の先端に接合するカートリッジ3の弁体31の尾端を押圧して弁座32に圧接して止水することができる。
【0027】
なお、ボール弁体2の操作機構25は、水道管理者若しくは工事作業者だけが回動操作するもので、操作機構25に嵌着する回動ハンドルはこれらの者が管理し、工事その他特別の場合に給水遮断を行う場合に使用するものである。
【0028】
本発明は以上のように構成したので、スピンドルの締め過ぎによる止水コマの硬化変形や摩耗を防止でき、栓本体と袋ナットの螺合を解くだけで栓胴の機構部を分解できるので、ストレーナや逆止弁カートリッジの交換や整備を容易に行え、しかも、独立して逆止弁を設定することなく、止水栓と逆止弁の両方の機能を備えることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例による逆止弁内蔵止水栓を示すもので、逆止弁内蔵止水栓の縦断正面図
【図2】同じく、逆止弁内蔵止水栓のボール弁体操作機構の構造を示す逆止弁内蔵止水栓の縦断側面図
【図3】同じく、逆止弁カートリッジをスピンドル嵌装枠先端に係掛する掛止め環の構造を示す平面図と側面図の対比図面
【図4】同じく、ストレーナユニットとボール弁体通水孔の嵌合関係を示すストレーナユニットと栓本体の分解縦断正面図
【図5】同じく、スピンドルとスピンドル嵌装枠要部、逆止弁カートリッジの関係を示す分解縦断正面図とスピンドルの締め過ぎ防止機構部要部の部分拡大図を対比的に示す説明図
【符号の説明】
【0030】
1 止水栓の栓本体
11 1次側給水路
12 2次側通水路
13 逆止弁カートリツジ収納室
14 栓本体上縁外周に刻設した雄ねじ
15 栓本体上縁外周に刻設した雄ねじと螺合する袋ナット
16 水道メータを連結する伸縮管
2 ボール弁体
21 ボール弁体のL字型通水孔
21a L字型通水孔の流入側開口部
21b L字型通水孔の流出側開口部
21c L字型通水孔の流入側突き当たり部
22 ボール弁体の弁室
23 ボール弁体弁室の流出口
24 逆止弁カートリッジ弁座の嵌着部
25 ボール弁体の回動操作機構
3 逆止弁カートリッジ
31 カートリッジの弁体
32 逆止弁カートリッジの弁座
33 逆止弁体付勢スプリング
34 弁体収納カートリッジケース
35 弁体収納カートリッジケースの上部枠に設定された係掛溝
4 スピンドル
41 スピンドル先端外周凹部
42 スピンドル外周に刻設された雄ねじ
43 スピンドルのC形ストッパー嵌着溝
44 スピンドルストローク制御C形ストッパーリング
5 スピンドル嵌装枠
51 スピンドル挿通孔
52 スピンドル挿通孔の下端内周部
53 スピンドル挿通孔内壁の雌ねじ
54 スピンドルの回動ハンドル
55 スピンドル嵌装枠の上端外周縁部雄ねじ
56 筒状弾性シール部材
57 筒状弾性シール部材のフランジ
58 筒状弾性シール部材収容部と雌ねじ刻設部を仕切る区画突条
59 スピンドル回動ハンドルの調整基部
6 締め過ぎ防止係止リング
61 締め過ぎ防止係止リング設定ジスク
62 スピンドル固定グランドナット
7 逆止弁カートリッジ掛止め環
71 掛止め環のカートリッジ係掛部
72 掛止め環の切り割り
8 ストレーナユニット
81 ストレーナユニットの止めビス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルを挿通螺合する嵌装枠のスピンドル挿通孔下端内周部に、スピンドル先端外周凹部に係掛する係止リングを設定し、同嵌装枠に逆止弁カートリツジを接合すると共に、同カートリツジ弁体の昇降操作によって栓体通水路の開閉操作を行うように構成し、同栓体通水路の下部に1次側給水路からの給水と止水を切り換えるボールバルブを設定したことを特徴とする逆止弁内蔵止水栓
【請求項2】
逆止弁カートリツジの接合を、環状部材の対向位置に角形に張出屈曲させた張出部分を下方に折り曲げて形成した係掛部と切割り部を設けた掛止め環を、スピンドル嵌装枠に設けた嵌着溝に嵌着すると共に、逆止弁カートリッジケースの上部枠両側に設けた係掛溝に前記掛止め環の前記係掛部とを掛合させて行うように構成したことを特徴とする請求項1記載の逆止弁内蔵止水栓
【請求項3】
スピンドル側腹外周の所定位置に嵌着溝を設け、同嵌着溝にC型ストッパーリングを嵌着してスピンドルの昇降範囲を規制することにより、スピンドルのストロークを制御するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の逆止弁内蔵止水栓
【請求項4】
スピンドルを昇降作動する回動ハンドルの基部の長さを伸長若しくは短縮調整して、スピンドルが所定長さ下降すると、ハンドル基部の底面がグランドナットの頂面に当接して下降が阻止されるようにして、スピンドルのストロークを制御するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の逆止弁内蔵止水栓
【請求項5】
ボールバルブが1次側から2次側への給水路を閉鎖した状態において、スピンドル挿通孔、逆止弁カートリツジ収納室、ボールバルブの通水孔口が直線状に連結するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の逆止弁内蔵止水栓
【請求項6】
ボールバルブが1次側から2次側への給水路を閉鎖した状態において、通水路開閉弁座に孔口が連結するボールバルブの通水孔に、ストレーナユニットを着脱可能に嵌着したことを特徴とする請求項5記載の逆止弁内蔵止水栓
【請求項7】
止水栓胴本体の上端外周に雄ねじを刻設し、スピンドルを挿通螺合する嵌装枠を着脱可能に同栓胴本体に嵌装して、前記雄ねじと螺合する袋ナットにより固定した請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項6記載の逆止弁内蔵止水栓

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−128350(P2008−128350A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313753(P2006−313753)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】