説明

逆止弁

【課題】低圧から高圧までの流体に対して、シール部材が弁座を充分に密封でき、逆流が確実に防止されるとともに、シール部材が長期間にわたって使用可能とされて寿命が長い逆止弁を提供すること。
【解決手段】流体の流入路33と流出路34とを有し、内周面32aが円筒形状に形成されるとともに前記流入路33に向かって縮径される弁座35が形成された弁室32と、弁座35に接離することで流入路33と弁室32の間を開閉自在とするシール部材58と、前記シール部材58が設けられ前記弁室32内で往復自在とされた弁体5と、弁体5を前記弁座35側に付勢する付勢手段6とを備えた逆止弁1であって、前記弁座35は、前記弁室32の軸線O1を含む断面において、前記流入路33から前記内周面32aに至る間に、前記弁室32側に突出して屈曲するとともに前記シール部材58と密着可能な屈曲部が少なくともひとつ形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス等の流体が回路内で逆流するのを防止するための逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、逆止弁は、逆止弁の上流又は下流に設けられた制御弁等が作動して逆止弁の上流から下流に向けて流体が流れる場合に、圧力が高くなった1次側流体の圧力によって弁体が押圧され、押圧された弁体が流入路から離間して弁体に設けられたシール部材が弁座を開放することで流体が逆止弁の流入路側から流出路側に流通するようになっている。
一方、制御弁等が流体を停止する側に作動して1次側流体の圧力が下がった場合には、弁体を流入路側に付勢している付勢手段の付勢力によって、弁体が流入路側に押圧されるとともに弁体のシール部材が弁座を密封して弁座が閉塞され、流入路から流出路への流体の流通が停止されるとともに、流体が流出路側から流入路側に逆流しないようになっている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−302680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように構成された逆止弁において、例えば、1次側流体の圧力が70MPa以上の高圧となる条件で使用する場合、シール部材が高圧の流体に曝されて変形し易くなるため、シール部材が弁座を確実に密封することが困難になり、シール部材が経年変化によって摩耗又は変形してくると、その影響はさらに大きくなる。
また、高圧の使用条件下では、逆止弁が開閉して1次側流体が突入してくる場合に、1次側流体の衝撃圧によって、シール部材が変形、又は脱落して逆止弁としての機能が失われる場合がある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、低圧から例えば70MPa以上の高圧の流体に対して使用された場合であっても、弁体が開閉される際に1次側流体に生じる衝撃圧を含めた流体の圧力によってシール部材が大きく変形されることなく、シール部材が弁座を充分に密封でき、逆流が確実に防止されるとともに、シール部材が長期間にわたって使用可能とされて寿命が長い逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、流体の流入路と流出路とを有し、内周面が円筒形状に形成されるとともに前記流入路に向かうにつれて縮径される弁座が形成された弁室と、前記弁座に接離することで流入路と弁室の間を開閉自在とするシール部材と、前記シール部材が設けられ前記弁室内で往復自在とされた弁体と、前記弁体を前記弁座側に付勢する付勢手段とを備えた逆止弁であって、前記弁座は、前記弁室の軸線O1を含む断面において、前記流入路から前記内周面に至る間に、前記弁室側に突出して屈曲するとともに前記シール部材と密着可能な屈曲部が少なくともひとつ形成されていることを特徴とする。
【0006】
この発明に係る逆止弁によれば、弁室に内周面が円筒形状に形成されるとともに流入路に向かうにつれて縮径される弁座が形成され、弁座に、弁室の軸線O1を含む断面において、流入路から円筒部に至る間に弁室側に突出して屈曲し、前記シール部材と密着可能とされる屈曲部が形成されているので、シール部材がこの屈曲部において強く押圧され、シール部材が、屈曲部を挟んで弁座に沿って内周面側と流入路側とに凹むように変形される。その結果、シール部材は、流入路と内周面に向かう方向にシール部材の幅が広がるように変形され、シール部材が屈曲部を挟んだ両側に接触してシール部材と弁座とのシール面積が大きく確保される。また、シール部材と弁座との密着面が屈曲されて、流体が流通しにくくなることで確実に密封される。
また、この発明に係る構成によれば、シール部材と弁座との間に摺動がないため、シール部材の破損や摩耗が抑制され、シール部材の寿命が延長される。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の逆止弁であって、前記弁体の軸線O2の廻りに、前記弁室の軸線O1と一致して配置されたOリングからなる前記シール部材と、前記弁座に形成された屈曲部のうちひとつは、前記弁室の軸線O1を含む断面が、前記屈曲部を起点として前記流入路側に延在する直線部と、前記屈曲部から内周面側に延在する直線部とを備え、
前記断面の、前記屈曲部がなす点を屈曲点Pcとし、
前記弁座の、屈曲点Pcから前記流入路側に延在する直線を線分L1とし、
前記弁座の、屈曲点Pcから前記内周面側に延在する直線を線分L2とし、
前記Oリングの軸線O3を含む断面の、Oリングの直径をd1とし、
前記Oリングが、前記L1の延長線と接するように配置されたときの接点をP1とし、
前記延長線上を、前記P1から流入路側に、(1/3)d1離間した位置をP2とし、
前記線分L1の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθ1とし、
前記線分L2の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθとしたときに、
前記屈曲点Pcは、前記P1と前記P2の間に配置され、
かつ前記θは、
θ1<θ≦90°
を満足することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の逆止弁であって、前記弁体の軸線O2の廻りに、前記弁室の軸線O1と一致して配置されたOリングからなる前記シール部材と、前記弁座に形成された屈曲部のうちひとつは、前記弁室の軸線O1を含む断面が、前記屈曲部を起点として前記流入路側に延在する直線部と、前記屈曲部から内周面側に延在する直線部とを備え、弁室の軸線O1を含む断面における、前記屈曲部がなす点を屈曲点Pcとし、前記弁座の屈曲点Pcから前記流入路側に延在する直線を線分L1とし、前記弁座の屈曲点Pcから前記内周面側に延在する直線を線分L2とし、前記L1の延長線と前記弁室の軸線O1とが交差する点を原点P0とし、軸線O1をX軸と仮定し、前記原点P0において軸線O1と直交する線をY軸と仮定し、前記Oリングの軸線O3を含む断面の、Oリングの直径をd1とし、前記弁室の軸線O1から、前記Oリングの軸線O3を含む断面のOリングの中心までの距離をR1としたときに、
屈曲点Pcの座標位置(Xc、Yc)は、
(R1+(1/2)・d1・(cosθ1−(2/3)・sinθ1))・cotθ1≦Xc≦(R1+(1/2)・d1・cosθ1)・cotθ1

R1+(1/2)・d1・cosθ1−(2/3)・(1/2)・d1・sinθ1≦Yc≦R1+(1/2)・d1・cosθ1
を満足し、
かつ、前記線分L1の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθ1とし、前記線分L2の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθとしたときに、
前記θは、
θ1<θ≦90°
を満足することを特徴とする。
【0009】
この発明に係る逆止弁によれば、線分L2の延長線が前記弁室の軸線となす角度θが、前記、式(1)、(4)に示すように、θ1<θ≦90°とされることで、Oリングが屈曲部Pcにおいて強く押圧され、Oリングは、屈曲部Pcを挟んで、弁座に沿って内周面側と流入路側とに屈曲するとともに、流入路と内周面に向かう方向に幅が広がるように変形され、Oリングと弁座とのシール面積を大きく確保することができる。
【0010】
また、前記屈曲点Pcと前記弁座と前記流入路の接続部を結ぶ線分を線分L1とした場合に、線分L1の延長線とOリングとの接点をP1とし、P1から流入路側に、線分L1の延長線上を(1/3)・d1離間した位置をP2とした場合に、屈曲点Pcは、接点P1と点P2との間に配置されることで、屈曲点Pcが接点P1よりも流入路側に配置されているため、Oリングが弁座に押圧、当接された際に、Oリングと弁座との接触が、軸線O1を中心とした、屈曲点Pcよりも径方向内方に偏ってOリングと弁座の接触面積が小さくなるのが防止され、特に、高差圧での逆止状態では、Oリングの損傷、劣化を防止できる。
屈曲点PcがP2よりも流入路から離間する側に配置されているため、また、Oリングと弁座との接触が、軸線O1を中心とした、屈曲点Pcよりも径方向外方に偏って、Oリングと弁座の接触面積が小さくなるのが防止されるため、低差圧から高差圧まで、幅広い範囲で確実に密封することができる。
【0011】
また、屈曲点Pcの座標が、Oリングの軸線O3を含む断面における、Oリングの断面における中心をP3とし、軸線O3からP3までの距離をR1とし、線分L1の延長線と弁室の軸線O1とが交差する点P0を原点とし、軸線O1をX軸と仮定し、原点P0において軸線O1と直交する線をY軸と仮定した場合に、P1(X、Y)が、上記関係式(2)、(3)を満足することにより、Oリングが屈曲点Pcの流入路側又は弁室の内周面側に偏ることが防止され、その結果、Oリングと弁座の接触面積が小さくなるのが防止される。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の逆止弁であって、前記シール部材は、保持リングで支持されていることを特徴とする
【0013】
この発明に係る逆止弁によれば、シール部材が、保持リングで支持されているので、Oリングの柔軟性を維持して、弁座を確実に密封する一方、流入路から流入する1次側流体の圧力による変形が抑制され、また、制御弁等の切り換わりにより、流入路から1次側流体が衝撃的に流入する場合であっても、かかる衝撃による変形が抑制されて確実な密封を実現するとともに、かかる切り換わり時の衝撃や通常の作動にいおいてシール部材が弁体から外れるのを抑制して、流体の逆流を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る逆止弁によれば、シール部材が弁座に大きな面積で接触するので、非常に高い圧力の流体に対しても確実な密封を行なうことができ、その結果、流体の逆流を確実に防止することができる。
また、高い圧力の流体に適用した場合であっても、シール部材が脱落することがないので、逆止弁の寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る逆止弁を示す図であり、符号1は逆止弁を示しており、流入路から弁室への接続部が閉塞された状態の図である。
逆止弁1は、逆止弁本体2と、弁体5と、コイルスプリング(付勢手段)6とを備えており、逆止弁本体1は、第1の部材3と第2の部材4とから構成され、略多段円筒状に形成され、弁体5は、Oリング58(シール部材)を備えている。
また、この実施の形態において、逆止弁1は、装置M1(斜線部)に収納可能とされている。
【0016】
第1の部材3は、第1の部材3の一方端に形成された凹部からなる弁室32と、第1の部材3の他方端から弁室32に向かって形成された流入路33と、弁室32の内周面32aから第1の部材3の外周側に向けて形成された流出路34と、弁室32の流入路33側の端面に形成された弁座35とを備えており、一方端には第2の部材4が接続可能とされている。
また、第1の部材3には、第1の部材3の外周に周方向に形成された溝36が形成され、Oリング37と、Oリング37の軸線O1方向の前後にバックアップリング38a、38bが嵌挿可能とされている。
【0017】
弁室32は、軸線O1を中心として形成された円筒形状の内周面32aから構成され、この内周面32aから第1の部材3の外周に向かって流出路34が形成されている。
また、弁室32の流入路33側の面32aには、流入路33から内周面32aに向かって拡径され、軸線O1を含む断面が、流入路33と内周面32aの間で屈曲して少なくとも2つの円錐形状の傾斜面から構成される弁座35が形成されている。
軸線O1は、逆止弁本体2、第1の部材3、第2の部材4の軸線と同軸に構成されている。
【0018】
弁座35には、弁室32の軸線O1を含む断面において、流入路33から内周面32に至る間に、弁室32側に突出して屈曲するとともに、Oリング等のシール部材と密着可能な屈曲部をなす屈曲点Pcが少なくともひとつ形成されている。
この実施の形態においては、弁座35には、ひとつの屈曲部が形成され、図2に示すように、弁室32の軸線O1を含む断面にて、屈曲部をなす屈曲点Pcを起点として流入路33側に延在する線分L1からなる第1傾斜部35aと、屈曲点Pcを起点として内周面32a側に延在する線分L2からなる第2傾斜部35bとを備えている。
【0019】
この場合、Oリング58の軸線O3を含む断面における、Oリング58の直径をd1(半径=rとし、d1=2r)とし、Oリング58が、線分L1を延長した延長線と接するように配置されたときの接点をP1とし、線分L1の延長線上を、P1から流入路側に、(2/3)・(1/2)d1(=(1/3)d1)ほど離間した位置をP2としたときに、屈曲点Pcは、P1とP2の間に配置されている。
また、かかる前記線分L1の延長線が前記弁室の軸線となす角度をθ1とし、線分L2の延長線が弁室32の軸線O1となす角度をθとしたときに、θは、
θ1<θ≦90°
を満足するようにされている。
【0020】
Oリング58の軸線O3を含む断面における、Oリング58の断面における中心をP3とし、軸線O3からP3までの距離をR1とし、線分L1の延長線と弁室32の軸線O1とが交差する点P0を原点とし、軸線O1をX軸と仮定し、原点P0において軸線O1と直交する線をY軸と仮定した場合の、弁室32の軸線O1を含む断面における、弁座35の屈曲点Pcの座標位置について、図3に基づいて説明する。
【0021】
図3は、屈曲点Pcの座標を説明する図であって、P0を原点、軸線O1をX軸、P0にてX軸と直交する線をY軸、Oリング58の中心を点P3としているところが図2と異なり、屈曲点Pc、P1、P2、線分L1、線分L2、θ、θ1については、図2で説明したとおりであり同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
まず、P1(X、Y)のY座標について説明する。
Oリング58の中心をなすP3(X、Y)のY座標Yは、Y=R1で表され、P3とP1を結ぶ線分P1−P3のY軸方向の距離Y43は、Y43=rcosθ1で表される。
これは、図3に示した直角三角形P1P3P4を考えたとき、線分P1−P3はOリング58の半径rと同じ長さであり、線分P1−P3とY軸がなす角は、∠P1P3P4=θ1であるためである。
したがって、P1(X、Y)のY座標をYは、Y=Y+Y43であり、
=R1+rcosθ1 ・・・式(1)
で表される。
【0023】
一方、P2(X、Y)のY座標Yについて説明する。
P2は、線分L1の延長線上を、P1から原点P0方向に(2/3)・r移動して点であり、線分L1とX軸がなす角度は、θ1であるから、図3の直角三角形P1P2P5を考えると、線分P1−P2の長さは、(2/3)・rであり、線分P1−P5は、直角三角形P1P2P5のP2における角、∠P1P2P5=θ1の正弦(sin)であるから、Y15は、Y15=(2/3)・r・sinθ1で表される。
P2のY座標Yは、Y=Y−Y15であるので、
=R1+rcosθ1−(2/3)・r・sinθ1 ・・・式(2)
で表される。
【0024】
次に、P1(X、Y)のX座標Xについて説明する。
P1のY座標Yは、前述の通りY=R1+rcosθ1
であり、P1のX座標Xは、図3に示した直角三角形P1P0P6のP0における角∠P1P0P6=θ1の余接(cot)であるため、
=Y・cotθ1
である。
したがって、X=(R1+rcosθ1)・cotθ1 ・・・式(3)
である。
【0025】
同様に、P2(X、Y)のX座標Xは、図3に示した直角三角形P2P0P7のP0における角度∠P2P0P7=θ1の余接(cot)であるので、X=Y・cotθ1である。
したがって、X=(R1+rcosθ1−(2/3)・r・sinθ1)・cotθ1
・・・式(4)
である。
【0026】
屈曲点Pcは、線分P1−P2の間とされることが好適とされるため、
屈曲点Pcの座標Pc=(Xc、Yc)は、
≦Xc≦X、かつY≦Yc≦Y
を満足する座標である。
したがって、座標Pc=(Xc、Yc)は、式(1)、(2)、(3)、(4)より、
(R1+rcosθ1−(2/3)・r・sinθ1)・cotθ1≦Xc≦(R1+rcosθ1)・cotθ1 ・・・式(5)

R1+rcosθ1−(2/3)・r・sinθ1≦Yc≦R1+rcosθ1 ・・・式(6)
である。
r=(1/2)・d1に置き換えると、式(5)、(6)より、

(R1+(1/2)・d1・(cosθ1−(2/3)・sinθ1))・cotθ1≦Xc≦(R1+(1/2)・d1・cosθ1)・cotθ1 ・・・式(7)

R1+(1/2)・d1・cosθ1−(2/3)・(1/2)・d1・sinθ1≦Yc≦R1+(1/2)・d1・cosθ1 ・・・式(8)
となる。
したがって、式(7)、(8)を満足する、屈曲点Pcの座標Pc(Xc、Yc)が、好適な範囲であるといえる。
また、この場合も、θ1<θ≦90°である。
なお、製作時に研磨等により、屈曲点Pcが弁座35に形成されない場合は、屈曲点Pcは、線分L1と、線分L2とが交差する空間上の仮想点とされる。
【0027】
第2の部材4は、第2の部材4の外周に周方向に形成された溝42と、一方端に凹部45とを備えており、凹部45は、円錐形状の一部から構成されるとともに、底部が軸線O1に対して垂直な面に形成されて、コイルスプリング6の固定側端6bが配置されるようになっている。
溝42には、Oリング47とバックアップリング43が嵌挿可能とされている。
また、第2の部材4の他方端には、ネジが形成され、第2の部材4を装置M1から取外す際に接続する治具が接続可能とされている。
装置M1に収納された逆止弁本体2は、固定部材M2によって、軸線O1の後方から流入路33側に向かって固定され、流入路33側の流体圧力に抗して装置M1内に保持されるようになっている。
【0028】
弁体5は、図4に示すように、略多段円柱形状とされ、大径部52と、小径部54とを備え、大径部52は、弁体5が弁室32内で軸線O1方向に往復自在とされるように、外周が弁室32の内周面32aよりもわずかに小さく形成されている。
また、弁体5の一方端には、凹部55が形成され、コイルスプリング6の移動側端が収納されるようになっている。
また、小径部54は、先端側にシール部56が形成されるとともに、基端側に小径部54を周回する溝部54aが形成されている。
【0029】
シール部56は、弁座35に接離して弁座35を閉塞、又は開放するものであり、弁座35の第1傾斜部35aと相補的に構成され、先端に向かうにつれて縮径される円錐状の傾斜部56aを備えており、先端側には弁体5の軸線O2に対して垂直な面56bが形成されている。
【0030】
また、傾斜部56aの基端側には、軸線O2を含む断面が、傾斜面56aに対して垂直な略矩形状とされる、Oリング溝57が外周面に周回して形成されている。
Oリング58は、Oリング58を構成する環の軸線O3を弁体の軸線O2と同軸にして、Oリング溝57に嵌挿され、弁座35に接触することで弁座35を密封自在とされている。
また、溝部54aには、保持リング59が嵌挿されるとともに基端部59aがかしめられており、支持部59bが、弁体5の外周から内周側に向かってOリング58を支持するように構成されている。
【0031】
コイルスプリング6は、移動側端6aが、弁体5に形成された凹部55の底面部55aに配置されるとともに、固定側端6bが第2の部材4に形成された凹部45の底面部45aに配置され、弁体5を流入路33側に付勢するように構成されている。
【0032】
次に、上記構成の逆止弁1の作用について説明する。
まず、流体回路において、逆止弁1の上流又は下流に設けられた制御弁等が作動して、逆止弁1の上流から下流に向けて流体が流れる場合には、図5(a)に示されるように、圧力が高くなった1次側流体の圧力によって弁体が押圧され、押圧された弁体5が弁座35から離間して弁体5に設けられたOリング58が弁座35を開放することで、逆止弁1の流入路33側から流出路35側に流体が流通する。
【0033】
つぎに、制御弁等が作動して、流体が停止され、又は1次側流体の圧力が下がった場合には、図5(b)に示されるように、弁体5を流入路33側に付勢しているコイルスプリング6の付勢力によって、弁体5が流入路側に押圧されるとともに弁体5のOリング58が弁座35を密封して弁座35が閉塞され、流入路33から流出路34への流体の流通が停止されるとともに、流出路34側から流入路33側への流体の逆流が抑止される。
【0034】
このとき、弁座35とOリング58は、弁室32の軸線O1を含む断面において、図5(b)に示すように、Oリング58が屈曲点Pcに強く押圧され、Oリング58は、流入路33から内周面32a方向の幅が広がるように変形されるとともに、屈曲部Pcを挟んで内周面32a側と流入路33側とに弁座35に沿って凹むように変形される。
【0035】
シール部56が弁座35に接近した場合の流体に対する密封は、Oリング58が主にその役目を担うが、傾斜部56aが第1傾斜部35aと当接させた場合には、流体の流れを抑制する機能を有するとともに、コイルスプリング6の付勢力に対するストッパーとしての役目を持たせることもできる。
【0036】
上記実施の形態の逆止弁1によれば、Oリング58が弁座35に安定して大きな面積で当接されるので、非常に高い圧力の流体に対しても確実な密封を行なうことができ、その結果、流体の逆流を確実に防止することができる。
また、高い圧力の流体に適用した場合であっても、Oリング58が脱落することがないので、逆止弁1の寿命を長くすることが可能とされる。
【0037】
Oリング58が弁座35に押圧、当接される際に、Oリング58と弁座35との接触面が、軸線O1を中心とした場合の屈曲点Pcよりも径方向外方及び径方向内方に偏るのが防止されるので、Oリング58が、屈曲点Pcに対して安定して当接される。
【0038】
また、Oリング58は、流入路33から内周面32a方向の幅が広がるように変形されるとともに、Oリング58が屈曲部を挟んだ両側に接触することで、Oリング58と弁座35とのシール面積が大きく確保され、シール部材と弁座との密着面が屈曲して凹むように変形されることで、流体が流通し難くなり、低圧の流体から、例えば、70MPa以上の定常的な高圧流体に対しても流体の逆流を安定して抑止することができる。
また、かかる構成によれば、シール部材が弁座と摺動することがないため、シール部材の破損や摩耗が抑制され、シール部材の寿命が延長される。
【0039】
また、上記実施の形態の逆止弁1によれば、保持リング59の支持部59bが、弁体5の外周から内周側に向かってOリング58を支持しているので、例えば、70MPa以上の定常的な高圧流体の流れや、逆止弁1の上流又は下流に設けられた制御弁等が開放されて流入路33から流入した流体の衝撃的な圧力がOリング58に衝撃圧として加わった場合であっても、Oリング58が大きく変形されることが抑制され、その結果、Oリング58がOリング溝57からはみ出したり、外れることがないので、長期間にわたって確実に流体の逆流を防止することができる。
【0040】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
上記実施の形態においては、弁座35に屈曲点Pcが1箇所設けられた場合について説明したが、屈曲点Pcは、ひとつの場合に限定されず、たとえば、図5において示されたように屈曲点Pcから内周面32aに至るまでの間に、さらに形成された屈曲部を、シール部材を押圧させる屈曲部として複数のシール部材を押圧させる屈曲部としてもよい。
【0041】
また、上記実施の形態においては、流体の流出路34が弁室32の内周面32aから外周側方に向かって形成されている場合について説明したが、例えば、弁体5の大径部52の外周と弁室32の内周面32aとの間を流体が通過して、弁室32の後方から流体が流出される構成の流出路を設けてもよい。
【0042】
また、付勢手段がコイルスプリング6により構成される場合について説明したが、付勢手段については、円すい形等の他のコイルバネ、たけのこバネ、皿バネ、樹脂で形成された弾性体等、種々の構成のものを使用することが可能である。
【0043】
また、逆止弁1で使用可能な流体としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、メタン、エチレン等の可燃性ガス、酸素等の支燃性ガス、塩素、二酸化硫黄等の腐食性ガスをはじめとする気体や、その液化された液化ガス、水、酸又はアルカリを含有する液体等、種々の流体を対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態を示す全体断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態の弁座の詳細を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態の弁座の座標位置を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態の弁体を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態の弁座と弁体を示す図であり、(a)には、シール部材が弁座から離間したときの状態を、(b)には、シール部材が弁座に密着されたときの状態を示す。
【符号の説明】
【0045】
1 逆止弁
5 弁体
6 コイルスプリング(付勢手段)
35 流入路
32 弁室
32a 内周面
34 流出路
35 弁座
59 保持リング
58 Oリング(シール部材)
O1 弁室の軸線(X軸)
O2 弁体の軸線
O3 Oリングの軸線
P0 原点
Pc 屈曲点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と流出路とを有し、内周面が円筒形状に形成されるとともに前記流入路に向かうにつれて縮径される弁座が形成された弁室と、
前記弁座に接離することで流入路と弁室の間を開閉自在とするシール部材と、
前記シール部材が設けられ前記弁室内で往復自在とされた弁体と、
前記弁体を前記弁座側に付勢する付勢手段とを備えた逆止弁であって、
前記弁座は、前記弁室の軸線O1を含む断面において、前記流入路から前記内周面に至る間に、前記弁室側に突出して屈曲するとともに前記シール部材と密着可能な屈曲部が少なくともひとつ形成されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1記載の逆止弁であって、
前記弁体の軸線O2の廻りに、前記弁室の軸線O1と一致して配置されたOリングからなる前記シール部材と、
前記弁座に形成された屈曲部のうちひとつは、前記弁室の軸線O1を含む断面が、前記屈曲部を起点として前記流入路側に延在する直線部と、前記屈曲部から内周面側に延在する直線部とを備え、
前記断面の、前記屈曲部がなす点を屈曲点Pcとし、
前記弁座の、屈曲点Pcから前記流入路側に延在する直線を線分L1とし、
前記弁座の、屈曲点Pcから前記内周面側に延在する直線を線分L2とし、
前記Oリングの軸線O3を含む断面の、Oリングの直径をd1とし、
前記Oリングが、前記L1の延長線と接するように配置されたときの接点をP1とし、
前記延長線上を、前記P1から流入路側に、(1/3)d1離間した位置をP2とし、
前記線分L1の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθ1とし、
前記線分L2の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθとしたときに、
前記屈曲点Pcは、前記P1と前記P2の間に配置され、
かつ前記θは、
θ1<θ≦90°
を満足することを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項1記載の逆止弁であって、
前記弁体の軸線O2の廻りに、前記弁室の軸線O1と一致して配置されたOリングからなる前記シール部材と、
前記弁座に形成された屈曲部のうちひとつは、前記弁室の軸線O1を含む断面が、前記屈曲部を起点として前記流入路側に延在する直線部と、前記屈曲部から内周面側に延在する直線部とを備え、
弁室の軸線O1を含む断面における、
前記屈曲部がなす点を屈曲点Pcとし、
前記弁座の屈曲点Pcから前記流入路側に延在する直線を線分L1とし、
前記弁座の屈曲点Pcから前記内周面側に延在する直線を線分L2とし、
前記L1の延長線と前記弁室の軸線O1とが交差する点を原点P0とし、
軸線O1をX軸と仮定し、
前記原点P0において軸線O1と直交する線をY軸と仮定し、
前記Oリングの軸線O3を含む断面の、Oリングの直径をd1とし、
前記弁室の軸線O1から、前記Oリングの軸線O3を含む断面のOリングの中心までの距離をR1としたときに、
屈曲点Pcの座標位置(Xc、Yc)は、
(R1+(1/2)・d1・(cosθ1−(2/3)・sinθ1))・cotθ1≦Xc≦(R1+(1/2)・d1・cosθ1)・cotθ1

R1+(1/2)・d1・cosθ1−(2/3)・(1/2)・d1・sinθ1≦Yc≦R1+(1/2)・d1・cosθ1
を満足し、
かつ、前記線分L1の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθ1とし、
前記線分L2の延長線が前記弁室の軸線O1となす角度をθとしたときに、
前記θは、
θ1<θ≦90°
を満足することを特徴とする逆止弁。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の逆止弁であって、
前記シール部材は、保持リングで支持されていることを特徴とする逆止弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−205406(P2007−205406A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22883(P2006−22883)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000150981)日酸TANAKA株式会社 (33)
【Fターム(参考)】