説明

逆流防止弁

【課題】微差圧でも操作可能であると共に大流量の気体も流すことが可能な逆流防止弁を提供する。
【解決手段】気体が流入する側に配置される一次側通気口5cと気体の流出する側に接続された二次側通気口7cとを有する気体流路12内に、一次側通気口5cを経て付与される気体の圧力と二次側通気口7cを経て付与される気体の圧力との圧力差により作用する力で移動動作可能な弁体2と、弁体2と面接触することによって一次側開口部を密閉する弾性体シートからなるシール部材3と、を有する構造からなる逆流防止弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の空間の気圧よりも大きな気圧にて所定の空間内に気体を供給することによって該所定空間内の該気体の濃度を高める、所謂パージ(与圧)操作を実施するにあたり、該気体の逆流を防止する逆流防止弁に関する。より詳細には、該所定空間内と周囲空間との差圧が僅かであっても安定して動作して、実用上十分な気体の供給量を確保し得る逆流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
磁力の強い所謂希土類磁石等に用いられる金属磁石材料は、粉体の状態で高活性であって急激に酸化されることから、圧粉-焼結操作に至るまでその酸化を好適に抑制することが必要となる。従って、圧縮成形工程等、各種製造工程においては、例えば窒素の供給等によって材料周辺或いは処理装置自体の雰囲気を低酸化濃度に制御しなければならない。特許文献1には、製造装置全体を囲うと共にその空間内の気体を窒素置換することを目的とし、製造ラインの気密化を図る技術が開示されている。当該技術において、例えば所謂メンテナンスゾーンと呼ばれる空間内部の低酸素濃度化を図る場合、該空間内部の気体を窒素によって急速にパージ・置換して、製造工程を実施可能な状態を得ている。また、その後の濃度維持においては窒素の供給量を減少させて、且つその状態で窒素の供給を継続することによって窒素の使用量の低減による製造コストの低減を図っている。
【0003】
前述した急速パージ時では、ある程度以上の流量にて窒素を供給できれば、所定の低酸素濃度となった空間を得ることは比較的容易である。更にパージ効率を高所下場合でも、窒素流量の増加によって所謂パージ時間の短縮は容易である。また、装置全体を筐体にて密閉する様式の場合、該筐体の密閉度が高ければパージに要する窒素の量も抑制可能である。しかし、実際の製造装置の可動時においては、低酸素濃度を維持した状態で用いられる窒素量が、製造コスト上大きな問題となる場合が多い。よって、濃度維持に要する窒素量については、極力小さな流量とすることが好ましい。しかしこの場合、特に筐体内部の空間と外部空間との差圧が僅かな条件となることから、窒素供給ラインにおいて所謂上流と下流との間の差圧が十分に取ることは容易ではない。この場合、周囲或いは装置内部と接続される経路において、上流と下流との間で得られる差圧が小さい場合には、供給される窒素の逆流等が生じることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−083280号公報
【特許文献2】特開平9−042499号公報
【特許文献3】実用新案登録第3100586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体の供給に際して逆流を防止する構成として、特許文献2或いは3に開示される所謂逆流防止弁が知られている。しかしながら、特許文献2に開示される構成は液体を対象としており、上述したような気体を対象とした場合と比較して当該弁の上流と下流において明確な圧力差を得ることが可能である。従って、該文献に開示される構成をそのまま本発明が対象とするパージ装置に用いたとしても、作用する差圧が僅かであることから十分な効果は得られないと考えられる。また、特許文献3に開示される構成は気体を対象とするものであるが、上述した急速パージの際の大流量の気体の供給時と、装置の状態維持時の小流量の気体の供給時に関しては何ら考慮されていない。即ち、開示される装置は、実際には何れか一方の条件での使用にしか供せられない。以上から、微差圧で動作可能であると同時に大流量(例えば3000L/min)から小流量(例えば10L/min)まで対応可能な逆流防止弁の提供が望まれる。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、配置される上流と下流との間の圧力差が僅かであっても動作可能であって、且つ必要に応じて大流量から小流量までの気体の供給を可能とする逆流防止弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る逆流防止弁は、気体が一次側から二次側に流れる系に配置されて、二次側から一次側への気体の逆流を防止する逆流防止弁であって、一次側及び二次側に接続されて気体が流れることが可能な気体流路と、気体流路の中に配置されて、一次側に存在する気体から作用する一次側圧力と二次側に存在する気体から作用する二次側圧力との圧力差により作用する力によって所定領域を移動可能な弁体と、気体流路の一方の端部を構成し、気体流路の一部である一次側通気口を有する一次側部材と、一次側通気口の一次側開口に固定されて一次側開口と同軸のシール開口を有するシート状の弾性部材であって、弁体と密着することによって気体流路を閉鎖可能なシール部材と、を有し、シール部材におけるシール開口の内径は一次側開口の内径よりも小さく、シール部材は一次側開口の内側にはみ出すはみ出し部分を有することを特徴としている。
【0008】
なお、上述した逆流防止弁にあっては、一次側通気口の一次側開口の内径は一次側通気口の他の部分の内径に対して大きいことが好ましい。また、該逆流防止弁は、弁体の移動範囲である所定領域を規定し、弁体のシール部材上の所定の位置への着座を促す弁体動作範囲規制手段を更に有することが好ましい。更に、該弁体は複数存在し、一次側通気口及びシール部材は前記弁体各々に対応して配置されることが好ましい。この場合、複数の弁体は、重量の異なる弁体を含むことがより好ましい。或いは複数の弁体に応ずる複数の一次側通気口は、前記開口の内径が異なる一次側通気口を含むことがより好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る逆流防止弁は、気体が一次側から二次側に流れる系に配置されて、二次側から前記一次側への前記気体の逆流を防止する逆流防止弁であって、一次側及び二次側に接続されて気体が流れることが可能な気体流路と、気体流路の中に配置されて、一次側に存在する気体から作用する一次側圧力と二次側に存在する気体から作用する二次側圧力との圧力差により作用する力によって所定領域を移動可能な弁体と、気体流路の一方の端部を構成し、気体流路の一部である一次側通気口を有する一次側部材と、一次側通気口の一次側開口に固定されて、弁体と密着することによって気体流路を閉鎖可能なシール部材と、を有し、弁体は複数存在し、一次側通気口及びシール部材は弁体各々に対応して配置されることを特徴としている。
【0010】
なお、上述した逆流防止弁にあって、複数の前記弁体は、重量の異なる弁体を含むことが好ましい。或いは複数の弁体に応ずる複数の一次側通気口は、一次側開口の内径が異なる一次側通気口を含むことが好ましい。また、上述した逆流防止弁に合っては、シール部材における一次側開口と同軸に固定されたシール開口の内径は、一次側開口の内径よりも小さく、シール部材は一次側開口の内側にはみ出すはみ出し部分を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逆流防止弁を配置した所謂上流と下流との間の差圧が微量な場合であっても、逆流防止弁として安定し且つ応答性に優れた逆流防止動作を為すことが可能となる。また、十分な気体流路の確保が可能であることから、大流量から小流量まで気体を供給することが可能である。更に、本発明によれば、ケースを例えば透明な樹脂材料によって形成することにより機構の動作を実際に目視することが可能であり、動作の適否等を容易に知ることが可能となる。また、電気的な制御が不要であることから、気体の供給系の構築に要するコストの低減、管理維持費の低減といった効果も得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る逆流防止弁の一態様について、第一の実施形態である該逆流防止弁を気体の流れ方向(逆流防止弁の軸方向)に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図2】シール厚さとはみ出し量との関係を説明するための側面模式図である。
【図3A】本発明に係る逆流防止弁の第一の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図3B】図3Aに示す構成において、実際に逆流を防止した状態を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第二の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第三の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図6A】本発明の第四の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図6B】図6Aに示した実施形態において、該逆流防止弁を同図中の線6B−6Bに沿って切断した断面を図中B方向から見た状態を模式的に示す図である。
【図7A】本発明の第五の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図7B】図7Aに示した実施形態において、該逆流防止弁が実際に小流量の気体の供給を為す状態を模式的に示す図である。
【図8A】本発明の第六の実施形態について、該逆流防止弁を気体の流れ方向に沿って切断した断面における主要部の構成を模式的に示す図である。
【図8B】図8Aに示した実施形態において、該逆流防止弁が実際に小流量の気体の供給を為す状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一の実施形態)
本発明に係る逆流防止弁の第一の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る逆流防止弁1の主要構成について、該逆流防止弁における気体の流れ方向に沿ってこれを切断した際の断面における概略構成を示している。該逆流防止弁1は、弁体2、シール部材3、一次側部材5、二次側部材7、ケース部材9、締結部材11、ガイド部材13、及びストッパ部材19を有する。該逆流防止弁1において、一次側部材5が配置される図中下側より二次側部材7が配置される図中上側に気体は流れ、該逆流防止弁1はこれと逆向きの気体の流れを防止する。本実施形態では、便宜上、該逆流防止弁1に対し、気体を供給する側であって一次側部材5に接続される系の一次側を上流側とし、気体を排出させる側であって二次側部材7に接続される系の二次側を下流側とする。
【0014】
一次側部材5は、平板上の部材であり、中央部に平板の表面5aから裏面5bに貫通する略円形の開口を有した一次側通気口5cを有する。一次側通気口5cの裏面5b側の開口部を、一次側開口5dと定義する。なお、ここで述べる表面5aは逆流防止弁1に繋げられる上流側(図中において一次側と記される側)に配置される面であり、裏面5bは逆流防止弁1の内部側に向かう面である。また、二次側部材7も、平板状の部材であり、中央部に平板の表面7aから裏面7bに貫通する略円形の開口を有した二次側通気口7cを有する。なお、ここで述べる表面7aは逆流防止弁1に繋げられる下流側(図中において二次側と記される側)に配置される面であり、裏面7bは逆流防止弁1の内部側に向かう面である。
【0015】
中空を有するケース部材9は、一次側部材5の裏面5bと二次側部材7の裏面7bとの間に挟まれるように配置され、その一次側端面9a及び二次側端面9bにおいて各々一次側気密用部材15及び二次側気密用部材17と密着する。本実施形態では、一次側及び二次側気密用部材15、17には所謂Oリングを用いる。締結部材11は例えば所謂ボルトナットによって構成され、一次側部材5と二次側部材7との間にケース部材9を挟持させ、これらを一体化させて筒状の逆流防止弁1のケースを形成する。なお、これら一次側部材5における一次側通気口5c、ケース部材9における中空部、及び二次側部材7における二次側通気口7cは、本発明における逆流防止弁1における気体流路12を構成する。
【0016】
弁体2は、所定の重量を有する球形状の部材である。シール部材3は例えばシリコンゴムからなるシート状の弾性部材であり一次側開口5dの内径より大きな外寸と、該一次側開口5dの内径より小さな内径の貫通孔を有する。シール部材3のシート面を貫通する該貫通孔の開口をシール開口3aとする(図3A及び図4参照)。逆流防止弁1は、一次側部材5は鉛直方向における下方に配置されている。従って、気体の圧力が弁体2に与えられない状態において、重力の影響を受ける弁体2はシール部材3のシール開口3aの周囲面によって支えられ、該周囲面と密着した状態となる。なお、シール開口3aと一次側開口5dとの関係の詳細については後述する。ガイド部材13は弁体2の動作方向を規制して、弁体2のシール部材3上の所定位置への着座を促す作用を呈する。本実施例では、ガイド部材13は棒状の部材からなり、ケース部材9の内部において、逆流防止弁1の二次側部材7側から一次側部材5側に延在するように一次側開口5dを囲んで複数本配置される。
【0017】
次に、図1に示す実施形態の逆流防止弁1の動作原理について、同図を参照して説明する。弁体2はシール部材3とは接離自在である。ガイド部材13は弁体2の移動方向を規制し、該弁体2とシール部材3との当接時の位置関係を好適な状態に維持する働きを有する。ストッパ部材19はガイド部材13と協働して弁体2の移動範囲を規制するが、詳細については後述する。上述したように逆流防止弁1は上流側の系(一次側の気体経路)と下流側の系(二次側の気体経路)との間に配置され、これら両系各々から作用する気体の圧力差、及び重力によって弁体2は逆流防止弁1の内部を移動する。一次側の経路に存在する気体の圧力より弁体2が受ける力が、二次側の経路に存在する気体の圧力より弁体2が受ける力と弁体2に作用する重力との和よりも大きい場合には、弁体2はシール部材3から離れる。その結果、一次側通気口5cから二次側通気口7cに繋がる気体流路12が開放される。よって、一次側の経路から二次側の経路に向けて気体が流される。
【0018】
逆に、一次側の経路に存在する気体の圧力より弁体2が受ける力が二次側の経路に存在する気体の圧力より弁体2が受ける力と弁体2に作用する重力との和よりも小さい場合には、弁体2はシール部材3の所定位置に着座する。これにより、弁体2はシール部材3と当接、密着し、一次側通気口5cから二次側通気口7cに繋がる気体流路12は閉鎖される。よって、一次側の経路から二次側の経路に向けて気体が流されなくなる。即ち、重力の作用を無視したとすると、気体流路12における一次側或いは上流側に存在する気体から作用する上流側(一次側)圧力と、二次側或いは下流側に存在する気体から作用する下流側(二次側)圧力と、の圧力差、即ち差圧により作用する差圧力の変化によって、弁体2は所定領域14を移動する。ここで、所定領域14とは、本実施形態ではシール部材3、ストッパ部材19(或いは二次側部材7)、及びガイド部材13によって規制された、弁体2の移動可能な領域を言う。
【0019】
なお、本実施の形態では、ケース部材9には例えばガラス、アクリル、ポリカーボネイト、塩化ビニル等、透明な材料が用いられる。当該材料を用いることによって、弁体2の動作を直接目視にて確認することが可能となり、動作異常についての特別な検出機構を配することなく、該動作の適否を確認できるという効果が得られる。また、本形態では、ケース部材9を円筒形状としているが、断面多角形の筒状の部材よりこれを構成することとしても良い。
【0020】
弁体2は、ポリプロピレン(PP)樹脂から構成することが好ましい。PP樹脂は、比重が0.9g/ccと軽く、高強度、低吸湿性で薬品に強いという特性を有する。また、形状としては所謂真球が好ましいが、本実施形態の如くシール部材3としてシート状の部材を用いることにより、弁体2とシール部材3との接触が面接触可能となり、真球度が低くとも必要十分なシール特性を得ることが可能となっている。シール部材3として、本実施形態では弾性体シートである、厚さ0.2mmのシリコンゴムシートを用いている。シール部材3におけるシール開口3aの内径は前述したように一次側通気口5cにおける一次側開口5dの内径よりも小さくし、逆流防止弁1の軸方向(気体の流れ方向)の断面で見た場合に、一次側開口5dの内側にシリコンゴムシートがはみ出た状態としている。このはみ出た部分は該シート厚さを薄くしたことと、及び該シートが弾性体であることと、によって撓むことが容易である。従って、弁体2が軽量且つ低真球度であっても、この撓みによって弁体2の表面とシール部材3の表面とが面接触となり、必要十分なシール性が確実に得られる。なお、本実施形態では耐久性、加工の容易性、弾性、等の観点から、シール部材の材料としてシリコンゴムシートを用いているが、適当な弾性を有するシート状の材料であれば、これを用いることが可能である。また、シール開口3aの形状は、弁体2を気体の流れ方向から見た場合の透視形状と相似であって該透視形状よりも小さく、形状の中心を一致させた場合に弁体2の外縁がシール開口3aの周囲当接する形状であれば上述した円形に規定されない。
【0021】
次に、図2を参照して、一次側通気口5cの開口径とシール部材のはみ出し部分3bとの関係について述べる。図2は逆流防止弁1を気体の流れ方向に切断した断面であって、シール部材3及び該シール部材3が固定される一次側部材5の一次側開口5dにおける開口部端及びその近傍を模式的に示している。同図においてはみ出し部分3bのはみ出し量(シール部材3の一次側開口5dの内縁から略円形の開口の中心部に向けて突出する量)をhとし、シート厚さをtとする。はみ出し量hが小さい場合にはシート自体の撓み量が小さくなり、シール効果が低減されてしまう。また、はみ出し量hが大きい場合には、シール効果自体は大きく変動しない反面、一次側側通気口5を狭める影響が大きくなり、当該弁を通過する実際の気体流量に影響を及ぼし始めてしまう。実験によれば、シート厚さt=0.2mmの場合、はみ出し量hが1.0mmの条件が最も好適であり、0.8mm以上1.2mm以下の範囲において好適なシール効果が得られることが確認されている。なお、上述したようにシール開口3aの形状は弁体2の形状の相似形状とされることが好ましいのと同様、一次側開口5dの形状もシール開口3aと形状の中心が同心で配置された相似形状であることが好ましい。しかし一次側開口5dの形状はシール開口3aの形状と異ならせることも可能である。
【0022】
図3A及び図3Bを用いて、これまで述べてきた第一の実施形態、及び該実施形態における弁体2の挙動等に関して以下に更に詳細に説明する。同図に示すように、一次側部材5には一次側通気口5cが設けられている。また、一次側部材5における裏面5bには、円形の一次側開口5dの中心とシール開口3aの中心とを一致させ、一次側開口5dをシール部材3にて囲むようにシール部材3が固定されている。先にも述べたように、シール開口3aの内径D3は一次側開口5dの内径D5よりも小さく設定され、且つ一次側開口5dに対するシート部材3のはみ出し部分3bのはみ出し量は上述したhとされている。
【0023】
一次側部材5が鉛直下方に配置されることによって、弁体2には該弁体の重量に応じた重力が作用している。しかし、図3Aに示すように上流側から供給される気体の圧力と下流側から作用する気体の圧力との差圧により弁体2に作用する力(以下差圧力と称する。)が、弁体2に作用する重力に抗する場合には、弁体2は該差圧力によって持ち上げられる。即ち図3Aに示されるように弁体2はシート部材3から離れ、一次側通気口5cは開放されて逆流防止弁1内、言い換えれば気体流路12内への気体の流入が可能となる。二次側たる下流側に十分に気体が供給される等により該下流側の圧力が上昇する、或いは一次側たる上流側の気体の供給量が低下して該上流側の圧力が低下する等の状態となると、前述した差圧力が弁体2に作用する重力に抗することができなくなる。その結果、弁体2はシート部材3に向かって落下し、図3Bに示すようにシート部材3のシール開口3a周囲と、所定の位置関係にて着座、当接する。シート部材3は弁体2によって撓められ、該撓みによってシート部材3は弁体2の表面と面接触し、その結果、上流側から逆流防止弁1における気体流路12を完全に閉鎖する。以上の弁体2等の動作によって、該逆流防止弁1を介しての下流側からの上流側への気体の逆流は好適に防止される。
【0024】
ここで、弁体2の重量による弁開閉圧力(所謂クラッキング圧力)について検証する。なお、気体の流入経路、流出経路、及び逆流防止弁内等の配管内抵抗は、実際には気体の流量に応じて変化する。しかし、以下の検証ではこれらを無視し、最終的には逆流防止弁における逆流防止状態での気密性であることから、空間内での圧力上昇が例えば1〜2Kpaといったある限界値を超えなければ良いとして考える。ここで、例えば、シール部材3におけるシール開口3aの穴径をφ30mmとした場合、
断面積=30×π/4=707mm=7.07 cm
受圧面は球面だが、平面と仮定しても良いので、推力は、
7.07 cm ×100Pa=7.07gf
弁体2の重さは5.0gの場合、クラッキング圧力は、
100Pa/7.07gf×5.0gf=70.72Pa
つまり、70.72Paで弁が開く。
弁体2の重さが5.1gの場合
100Pa/7.07gf×5.1gf=72.14Pa となる。
弁体の重さが6.0gの場合
100Pa/7.07gf×6.0gf=84.86Pa となる。
以上より、本逆流防止弁1は70〜80Paといった10〜10クラスの差圧での動作が可能となり、10Paクラスの大気圧と比較して非常に僅かの圧力差であっても、動作することが可能となる。
【0025】
なお、本実施形態では弁体2としてPP樹脂からなる球体を用いることとした。しかし、本発明は当該形態に限定されず、例えばその他の樹脂、或いは材料より構成することとしても良い。例えば熱可塑性の樹脂を用いて中空状の球体を構成し、これを用いることとしても良い。該熱可塑性樹脂によれば真球度を高めることが容易であると共にPP樹脂に対して重量も軽く、更に高強度というメリットが存在する。熱可塑性という特性上利用範囲が限定されるが、シール部材3との面接触がより容易に得られるというメリットもあることから、より差圧が小さい場合であっても該差圧に追随して好適に使用可能と考えられる。
【0026】
また、本実施形態では、ガイド部材は複数の棒状部材により構成されることとしているが、ガイド部材の態様はこれに限定されない。例えばメッシュ或いはパンチングメタル等、十分な通気性を有する素材からなり、弁体2の径よりも大きな内径を有する筒状の構成物としても良い。この場合、該構成物は、ケース部材9の内部において、弁体2の移動範囲を所定領域14として規制し且つ気体流路12を閉鎖する際に弁体2のシート部材3上の着座位置への速やかな移動を促す作用を有すれば、例示した以外の形状等から構成されても良い。本発明では微差圧での動作を目的とすると同時に大流量での気体の供給も可能であることが必要な環境で使用可能な逆流防止弁の提供を目的としている。従って、ケース部材9の内径は弁体2の外径に対して十分な大きさを保つ値とされている。
【0027】
本形態の如くガイド部材を配置することによって、ケース部材9の内径を広げることによる十分な内径を有した気体流路の確保と、弁体2のシール部材3に対する適正位置、即ち着座位置への確実且つ速やかな移動とを両立するという効果が得られる。即ち、弁体2の気体流路12の軸方向(流路軸方向)と垂直な平面内での移動をガイド部材13によって規制し、シール部材3の所定位置への確実な着座を保障している。本実施形態の場合、ガイド部材13単体にて、弁体2の動作範囲を所定領域14と規定すると共に弁体2のシート部材3上の適正且つ所定位置への着座を促す、弁体動作範囲規制手段13を構成する。なお、本実施形態では図1に示す形態の変形例として、弁体2の下流側(二次側)への動作範囲を二次側部材7によって規定している。なお、ここで述べる所定位置とは、シール部材3のシール開口3aと弁体2の重心とが差圧力の作用する軸線上で整列し、且つ弁体2がシール開口3aの周囲と密着してシール開口3a及び一次側開口5dを閉鎖する位置(即ち図3Bに示される弁体2の位置)をいう。
【0028】
しかし、供給される気体の流量が大きい場合には、例えば弁体2がケース部材9内部で吹き上げられ、二次側開口7cに当接して気体流路12を閉鎖する場合も生じる恐れがある。本実施形態では、このような場合への対処として、図1に示すように、ケース部材9内部に更にストッパ部材19を配置し、弁体2の下流側開口への極端な接近を防止することとしている。即ち、シール部材3とストッパ部材19とによって弁体2の流路軸方向の移動範囲を主に規定し、ガイド部材13によって流路軸方向と水平な面内での移動範囲を主に規定し、よって弁体2の移動範囲を所定の領域として規定することが好ましい。この場合、ストッパ部材19は、ガイド部材13と共に、弁体2の動作範囲を所定範囲と規定すると共に弁体2のシート部材3上の適正位置への着座を促す、弁体動作範囲規制手段13、19を構成する。なお、ストッパ部材19は弁体2の動作範囲を規定可能であれば種々の形態が可能であり、図3Aに示し形態のように流す気体の流量に応じてはこれを無くすことも可能である。また、本実施形態では、シール開口3aに対して弁体2の動作方向は垂直であり、ガイド部材13もこれに合せて配置されている。また、二次側通気口7cも、中心が弁体2の動作軸と一致している。しかし、本発明では、弁体動作範囲規制手段が上述した機能を呈することが可能であれば、弁体2の動作方向がシール開口3aの開口方向に対して角度を有するものであっても良く、二次側通気口7cも該動作軸から隔置された場所に配置されても良い。
【0029】
以上に述べた構成により、大気圧と比較して10-4倍以下の非常に小さな圧力差においても弁体2とシール部材3とが十分な大きさの面接触を為すことで大きなシール作用を呈することができ、確実に動作し得る逆流防止弁1を構築することが可能となる。また、弁体2が気体流路12を開放した場合に、弁体2とケース部材9との間に十分な広さの気体流路12を確保することが可能となる。また、一次側経路と二次側経路との圧力差が徐々になくなった場合であっても、弁体2はシート部材3上の適切な位置に確実に移動することとなり、逆流防止弁1としての確実な動作を得ることが可能となる。
【0030】
(第二の実施形態)
次に、図4を参照して本発明の第二の実施形態について述べる。なお、上述した第一の実施形態と同じ構成要素については同じ参照番号を用いて図中これを示すこととし、ここでの詳細な説明は省略する。前述した第一の実施形態では、シール部材3が一次側通気口5cにおける一次側開口5dの内側にはみ出す構成であることから、気体の流路をシール部材3が狭めているとも考えられ、大流量対応という観点からは好ましくない、また、シール部材3が撓む際に一次側開口5dの開口縁部にのみシール部材3が押し付けられ、且つ略90度に折り曲げられることから、曲がり部分への過度の負荷が懸念される。図4に示す第二の実施形態では、一次側通気口5cにおいて、裏面5bに近づくにつれて一次側通気口5cの内径がD5を最小として徐々に大きくなる所謂テーパ部分5eが設けられている。この場合、一次側開口5dの内径D6は、テーパ部分5eの最大径として定義される。
【0031】
本実施形態では、テーパ部分5eを配することにより、シール部材3のシール開口3aの内径D3を、一次側通気口5cの内径と同等以上に維持可能としている。従って、流量の維持が容易であると共に、当該気体流路より得られる流量を確実に設計上の値として得ることが可能となる。ここで、シール開口3aの内径D3、一次側通気口5cでの内径D5、及び一次側開口5dの内径(即ちテーパ部5eにおける最大径)D6の関係はD5≦D3<D6となることが望ましい。即ち、一次側開口5dの内径は一次側通気口5cの該一次側開口5d以外の部分の内径より大きく、且つシール開口3aの内径より小さく設定される。また、該テーパ部分5eの存在により、弁体2がシール部材3に当接し、該シール部材3が撓められた際であっても、曲げ部分の角度をより緩やかなものとすると共に、テーパ部分5eによっても部分的にこれを支持することを可能としている。従って、シール部材3の特定部位に対する過度の負荷が避けられると言う効果も付随的に得られる。同時にテーパ部分5eが面として弁体2の表面に接することが可能であることから、シール部材3と弁体2との面接触をサポートし、シール効果をより確実なものとする効果も得られる。
【0032】
(第三の実施形態)
図4に示した第二の実施形態は、シール部材3への負荷の低減及びテーパ面によるシール効果の補助といった副次的な効果が得られる。図5に示す第三の実施形態は、第二の実施形態と比較してより加工容易な形態にて該逆流防止弁における大流量適応を可能とする形態である。なお、上述した第一或いは第二の実施形態と同じ構成要素については同じ参照番号を用いて図中これを示すこととし、ここでの詳細な説明は省略する。図5に示す実施形態では、一次側通気口5cの一次側開口5dにおいて、内径をD5より大きなD6とした所謂段差部分5fが設けられている。ここで、環状のシール部材3の内径D3、一次側通気口5cの内径D5、及び一次側開口5d(即ち段差部分5f)の内径D6の関係は、第二の実施形態と同様にD5≦D3<D6となっていることが望ましい。即ち、一次側開口5dの内径は一次側通気口5cの該一次側開口5d以外の部分の内径より大きく、且つシール開口3aの内径より小さく設定される。以上の関係を満たし、且つ段差部分5fにおける逆流防止弁1の軸方向の深さdをシール部材3の撓み量を収容可能となる値に設定することによって、気体の流れに対するシール部材3のはみ出し量の影響を極力抑制することが可能となる。
【0033】
(第四の実施形態)
第一から第三の実施形態において、更に該逆流防止弁を通過する気体の流量を増加させようとした場合、単純に上流側通気口となる一次側通気口5c及び下流側通気口となる二次側通気口7cを大きくし且つこれに対応して弁体2を大きくすることも考えられる。しかし、弁体2を大きくすることによって、微差圧での該逆流防止弁の好適な動作が困難となる。以下に述べる実施形態は当該状況に鑑みて構築された、より大流量への対応と微差圧動作とを両立し得る形態である。図6Aは、当該第四の実施形態に係る逆流防止弁1について、これを軸方向に沿い且つ該軸を含む面により切断した断面の概略構成を示す図である。また、図6Bは当該逆流防止弁1を図6A中の線6B−6Bに沿って切断した断面を矢印B方向から見た状態の概略構成を示している。なお、上述した第一の実施形態等と同じ構成要素については基本的には同じ名称及び同じ参照番号を用い、該構成要素が複数存在する場合には詳細な説明においては第一、第二等の付記、及び図中においてはa、b、c等の区別用の参照番号の付記にてこれらを示すこととし、ここでの詳細な説明は省略する。
【0034】
本実施形態では、単一のケース部材9の中に弁体2が複数個(本形態では四個)配置される構成を示している。弁体2に対応して一次側通気口5cも弁体2と同数個配置され、且つ個々の弁体2用のガイド部材13が弁体2各々に対して各一式ずつ配置されている。本実施形態では、二次側部材7には、大口径の単一の二次側通気口7cが設けられている。当該形態も、弁体2が二次側通気口7cから外部に飛び出す、或いは所定の移動範囲から外れることを防止するために、ストッパ部材19を有している。ストッパ部材はガイド部材13の気体の流れ方向における下流側(二次側部材7が配置される側)に配置され、ガイド部材13に規定される弁体2の動作範囲の一方の端部を規定する。ここで、動作範囲の他方の端部はシール部材3によって規定される。なお、本実施形態では二次側部材7より支柱たるサポート部材21を突き出させ、該サポート部材21によってストッパ部材19を支持している。
【0035】
ストッパ部材19は平板状の部材であり、サポート部材21によって二次側部材7と平行に支持された状態において、一次側通気口5aの各々と対向する位置に、弁体2が通過できない大きさの貫通孔19aが位置するように構成されている。また、ガイド部材13は該ストッパ部材19により一次側部材5に向かって延在するように各々支持される。なお、本実施形態におけるシール部材3のはみ出し部分3bのはみ出し量h、及び一次側通気口5aの一次側開口5dの形状は、前述した第一から第三の実施形態各々の形態とすることが望ましい。また、本実施形態では弁体2を四個としているが、本実施形態は当該個数に限定されず、八個、十六個等、弁体の数を更に増やした形態とすることも可能であり、更に二次側通気口7cは大口径の単一も貫通孔からなるのではなく、小口径の貫通孔(通気口)を複数設ける様式としても良い。
【0036】
(第五の実施形態)
上述した第四の実施形態では、弁体2は全て均等な構成物としている。ここで、先にクラッキング圧力の検証において示したように、当該圧力は弁体2の重量によって変化する。第五の実施形態では弁体2の重量をパラメータに用いることによって、より微差圧での逆流防止弁の動作を可能としている。当該実施形態を図7A及び図7Bを用いて説明する。なお、これら図は、第一の実施形態を示した図3Aと同様の様式にて本形態の主要構成物を示したものであって、先の述べたように同一の構成要素に関しては同一の参照符号等を用い、その説明は省略する。また、図7Aは上流側圧力P1と下流側圧力P2との間にP1<P2の関係が成立し、逆流防止弁1が気体の逆流を防止した状態を示す。また、図7Bはこの関係が逆転し、逆流防止弁1に対して部分的に気体の流入が生じ始めた状態を示している。
【0037】
本実施形態では、三個の弁体である第一の弁体2a、第二の弁体2b及び第三の弁体2cを用いているが、弁体各々の重量について夫々Wa、Wb、及びWcとし、これらの間においてWa>Wb>Wcの関係が成り立つこととしている。上流側の圧力が増加し、P1>P2の状態になった場合、小流量時には気体から各々の弁体に加えられるクラッキング圧力が小さいため、図7Bに示すように、この圧力に対応し得る軽い弁体、本形態では例えば第三の弁体2cのみがシート部材3から離れる。当該クラッキング圧力に対応する流量のみ、当該逆流防止弁1を介して気体を流すことが可能となる。即ち、弁体の重量に準じて、弁体各々に作用する圧力及び重力の均衡が崩れたものから順次作動し、弁体の重量に応じた気体を供給することが可能となる。この様に弁体の重量を適宜変えて設定することによって、差圧変化に対して弁体が各々応答性良く一次側通気口5cを開放することとなり、非常に小さな差圧変化にも対応することが可能となる。また、大流量時においては、全ての弁体が一次側通気口5cを開放し、前述した第四の実施形態の如く気体を流すことが可能となる。従って、差圧の小さな微小流量時から大流量時まで、広範な気体の流量域での動作が可能となる。
【0038】
(第六の実施形態)
また、上述したように、クラッキング圧力は弁体2の受圧面積によっても異なっている。よって、第五の実施形態と同様の効果は、該受圧面積、即ち一次側通気口5cの内径を変化させることによっても得られる。このような実施形態を第六の実施形態として図8A及び8Bを用いて説明する。図8A及び8Bは、図7A及び7Bと同様の様式にて当該実施形態を説明する図である。本形態では、上流側部材5の三個の一次側通気口であって、第一の一次側通気口5ca、第二の一次側通気口5cb及び第三の一次側通気口5ccを用いている。各々の内径はD5a、D5b及びD5cであって、D5a<D5b<D5cなる関係を満たしている。ここで、例えばD5b=30mm、D5c=32mmとした場合、
シール部材3のシール開口3aの内径(一次側通気口の内径に対応)をφ30mmとすると
断面積=30×π/4=707mm=7.07 cm
受圧面は球面だが、平面と仮定しても良いので、推力は、
7.07 cm ×100Pa=7.07gf
弁体2の重さを2.7gとすると、クラッキング圧力は、
100Pa/7.07gf×2.7gf=38.19Pa となる。
つまり、38.19Paで弁が開く。
これに対してシール部材3のシール開口3bの内径をφ32mmとすると
断面積=32×π/4=804mm=8.04 cm
100Paで8.04gfの推力
弁体2の重さは2.7gなので、クラッキング圧力は、
100Pa/8.04gf×2.7gf=33.58Pa となる。
従って、同じ弁体2の重さでも、クラッキング圧力の差が約4.6Pa確保できる。即ち、一次側通気口5c各々の内径(一次側開口5dの内径)に準じて、弁体各々に作用する圧力及び重力の均衡が崩れたものから順次作動し、該内径に応じた気体を供給することが可能となる。即ち、該形態の逆流防止弁では、複数の弁体に応じた複数の一次側通気口を有し、且つ該複数の一次側通気口においては一次側開口の内径が異なるものが含まれている。この様に一次側通気口の内径を適宜変えて設定することによって、差圧変化に対して弁体が各々応答性良く一次側通気口5cを開放することとなり、非常に小さな差圧変化にも対応することが可能となる。また、大流量時においては、全ての弁体が一次側通気口5cを開放し、前述した第四の実施形態の如く気体を流すことが可能となる。従って、差圧の小さな微小流量時から大流量時まで、広範な気体の流量域での動作が可能となる。
【0039】
なお、上述した第四及び第五の実施形態において、シール部材3として先に述べたシート状の弾性部材を用いた場合を示したが、本実施形態はこれに限定されない。即ち、各々の一次側通気口において対応するクラッキング圧力が設定可能であることから、例えばシール部材3としてOリング形状の部材を用いることも可能である。
【0040】
以上第四乃至第六の実施形態に示すように、複数の弁体を用いる様式からなる逆流防止弁において、複数の一次側通気口5cの各々について、その動作圧力を異ならせることによって、より微小な差圧による微小流量での気体の供給から全ての一次側通気口5cを開放した大流量での気体の供給まで対応することが可能となる。また、当該第四乃至第六の実施形態において、一次側通気口5cを始めとする第1乃至第三の実施形態に記載された種々の応用例を適用することが可能である。更に、これら弁の動作には電気的な制御が一切不要であることから、気体供給系の構築に要するコスト等を削減することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明における逆流防止弁は、パージ等で低圧ガスを無駄なく使用する点において、冒頭の金属磁石関連の製造装置のみならず、種々の用途に適用可能である。例えば、不活性ガスを常時充填することが必要な、例えばフラックスフリーの半田付け装置や設備、或いは防爆のために気中溶剤濃度を低減する必要があるエリアへの吸気、への採用など様々な応用が考えられる。
【符号の説明】
【0042】
1:逆流防止弁、 2、2a、2b、2c:弁体、 3:シール部材、 3a:シール開口、 3b:はみ出し部分、 5:一次側部材、 5a:表面、 5b:裏面、 5c、5ca、5cb、5cc:一次側通気口、 5d:一次側開口、 5e:テーパ部分、 5f:段差部分、 7:二次側部材、 7a:表面、 7b:裏面、 7c:二次側通気口、 9:ケース部材、 9a:一次側端面、 9b:二次側端面、 11:締結部材、 12:気体流路、 13:ガイド部材、 15:一次側気密用部材 、17:二次側気密用部材、 19:ストッパ部材、 19a:貫通孔、 21:サポート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が一次側から二次側に流れる系に配置されて、前記二次側から前記一次側への前記気体の逆流を防止する逆流防止弁であって、
前記一次側及び前記二次側に接続されて前記気体が流れることが可能な気体流路と、
前記気体流路の中に配置されて、前記一次側に存在する気体から作用する一次側圧力と前記二次側に存在する気体から作用する二次側圧力との圧力差により作用する力によって所定領域を移動可能な弁体と、
前記気体流路の一方の端部を構成し、前記気体流路の一部である一次側通気口を有する一次側部材と、
前記一次側通気口の一次側開口に固定されて前記一次側開口と同軸のシール開口を有するシート状の弾性部材であって、前記弁体と密着することによって前記気体流路を閉鎖可能なシール部材と、を有し、
前記シール部材における前記シール開口の内径は前記一次側開口の内径よりも小さく、前記シール部材は前記一次側開口の内側にはみ出すはみ出し部分を有することを特徴とする逆流防止弁。
【請求項2】
前記一次側通気口の前記一次側開口の内径は前記一次側通気口の他の部分の内径に対して大きいことを特徴とする請求項1に記載の逆流防止弁。
【請求項3】
前記弁体の移動範囲である所定領域を規定し、前記弁体の前記シール部材上の所定の位置への着座を促す弁体動作範囲規制手段を更に有することを特徴とする請求項1或いは2の何れかに記載の逆流防止弁。
【請求項4】
前記弁体は複数存在し、前記一次側通気口及び前記シール部材は前記弁体各々に対応して配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに一項に記載の逆流防止弁。
【請求項5】
複数の前記弁体は、重量の異なる弁体を含むことを特徴とする請求項4に記載の逆流防止弁。
【請求項6】
前記複数の弁体に応ずる複数の前記一次側通気口は、前記開口の内径が異なる一次側通気口を含むことを特徴とする請求項4に記載の逆流防止弁。
【請求項7】
気体が一次側から二次側に流れる系に配置されて、前記二次側から前記一次側への前記気体の逆流を防止する逆流防止弁であって、
前記一次側及び前記二次側に接続されて前記気体が流れることが可能な気体流路と、
前記気体流路の中に配置されて、前記一次側に存在する気体から作用する一次側圧力と前記二次側に存在する気体から作用する二次側圧力との圧力差により作用する力によって所定領域を移動可能な弁体と、
前記気体流路の一方の端部を構成し、前記気体流路の一部である一次側通気口を有する一次側部材と、
前記一次側通気口の一次側開口に固定されて、前記弁体と密着することによって前記気体流路を閉鎖可能なシール部材と、を有し、
前記弁体は複数存在し、前記一次側通気口及び前記シール部材は前記弁体各々に対応して配置されることを特徴とする逆流防止弁。
【請求項8】
複数の前記弁体は、重量の異なる弁体を含むことを特徴とする請求項7に記載の逆流防止弁。
【請求項9】
前記複数の弁体に応ずる複数の前記一次側通気口は、前記一次側開口の内径が異なる一次側通気口を含むことを特徴とする請求項7に記載の逆流防止弁。
【請求項10】
前記シール部材における前記一次側開口と同軸に固定されたシール開口の内径は、前記一次側開口の内径よりも小さく、前記シール部材は前記一次側開口の内側にはみ出すはみ出し部分を有することを特徴とする請求項8或いは9に記載の逆流防止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2011−226497(P2011−226497A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93995(P2010−93995)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】