説明

逆走検出装置

【課題】駐車エリア内において正しい進行方向への走行を促すことができる逆走検出装置を提供する。
【解決手段】逆走検出装置1は、高速道路のサービスエリアSにおいて、駐車中の他車両M1〜M5の駐車方向Y又はサービスエリアSに設けられた駐車線21の延在方向に基づいて、自車両M0の前方の走路Lの正しい進行方向Aを推定する進行方向推定手段と、進行方向推定手段で推定された進行方向Aに対して自車両が逆走方向に走路を走行しようとする場合には、報知を行う報知手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の逆走検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、特に、高速道路上のサービスエリアやパーキングエリアからの車両の逆走が問題になりつつある。一般走路と異なりサービスエリア等からの車両の逆走が発生し易い原因としては、サービスエリア等に明確な標識が無い或いはあったとしても点在するのみであることや、定常的な車両の流れが少なく正しい進行方向の確認が難しいこと、仮に車両の流れがあったとしても駐車車両が多いため確認が困難であること、などが考えられる。この車両逆走の対策のための技術として、下記特許文献1に記載の逆走防止装置が知られている。この装置は、サービスエリア等において路面標示を撮像し、高速道路本線と誘導道路の境界を示す区画線のパターンから逆走パターンを認識し警報を発することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−129281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の逆走防止装置では、高速道路本線の直前で区画線パターンを逆走の判断基準としているので、警報に対応して正しい進行方向に復帰しようとしても、既に復帰が困難である場合が多い。
【0005】
そこで、本発明は、駐車エリア内において正しい進行方向への走行を促すことができる逆走検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の逆走検出装置は、高規格道路の駐車エリアにおいて、駐車中の他車両の駐車方向又は駐車エリアに設けられた駐車線の延在方向に基づいて、自車両の前方の走路の正しい進行方向を推定する進行方向推定手段と、進行方向推定手段で推定された正しい進行方向に対して逆走方向に自車両が前方の走路を走行しようとする場合には、報知を行う報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
高規格道路の駐車エリアでは、正しい進行方向で走路に進入し易いように駐車線が設定されていると考えることができる。また、高規格道路の駐車エリアでは、正しい進行方向で走路に進入し易いように他車両が駐車されていると考えることができる。従って、進行方向推定手段は、駐車線の延在方向又は他車両の駐車方向に基づいて正しい進行方向を推定することができる。そして、報知手段は、前方の走路で推定された進行方向に対して逆走方向に自車両が走行しようとする場合に報知を行うので、駐車エリア内で逆走発生の報知を行うことができる。従って、自車両の逆走があった場合にも、駐車エリア内で正しい進行方向への方向転換を促すことができる。
【0008】
また、本発明の逆走検出装置は、進行方向推定手段で推定された正しい進行方向を表示する進行方向表示手段を更に備えてもよい。この構成によれば、自車両の逆走が発生する前においても、駐車エリア内で正しい進行方向への走行を促すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の逆走検出装置によれば、駐車エリア内において正しい進行方向への走行を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の逆走検出装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の逆走検出装置が用いられる状況の一例を示すサービスエリアの平面図である。
【図3】図1の逆走検出装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る逆走検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示す逆走検出装置1は、自動車に搭載され、運転者に正しい進行方向への走行を促して逆走を防止する装置である。逆走検出装置1は、図2に示すように、自車両が高規格道路の駐車エリアに位置するときに用いられる。ここで、高規格道路には、例えば高速道路が含まれ、駐車エリアには、例えばパーキングエリアやサービスエリアが含まれる。逆走検出装置1は、前方監視カメラ3と、ミリ波レーダ5と、駐車線認識器7と、駐車車両認識器9と、走路方向推定器11と、ナビゲーション装置13と、ヘッドアップディスプレイ15と、を備えている。
【0013】
前方監視カメラ3は、車両の前方を撮像する車載カメラである。前方監視カメラ3は、撮像で取得した車両前方の映像情報を映像信号として駐車線認識器7及び駐車車両認識器9に送信する。ミリ波レーダ5は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ5は、自車の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ5は、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ5では、そのミリ波の送受信情報をレーダ信号として後述の駐車車両認識器9に送信する。
【0014】
ナビゲーション装置13は、GPS衛星からの電波を利用して自車両の現在位置を取得する装置である。ナビゲーション装置13は、自車両の現在位置の情報をナビゲーション情報信号として後述の走路方向推定器11に送信する。また、ナビゲーション装置13は、映像が表示可能なディスプレイ表示部を備えている。そして、ナビゲーション装置13は、後述の走路方向推定器11からの画面表示信号を受信し、その画面表示信号に応じてディスプレイ表示を行うことで運転者に種々の情報を提示することが可能である。
【0015】
ヘッドアップディスプレイ15は、運転中の運転者の前方視野内に存在するフロントウインドなどに各種映像を表示するディスプレイである。ヘッドアップディスプレイ15は、走路方向推定器11から表示信号を受信し、その表示信号に応じて映像を表示する。
【0016】
駐車線認識器7は、前方監視カメラ3からの映像信号に基づいて映像処理を行う電子制御ユニットである。駐車線認識器7は、前方監視カメラ3で得られた映像情報に基づいて、前方の路面上に描かれた駐車線を認識する。駐車線は、パーキングエリアやサービスエリアといった駐車エリアにおいて路面上にペイントされた路面標示であり、例えば車両1台分ずつの駐車スペースを区画する表示である。車両は、この駐車線に沿って駐車される。
駐車線認識器7は、認識した駐車線の情報を駐車線情報信号として後述の走路方向推定器11に送信する。
【0017】
駐車車両認識器9は、ミリ波レーダ5からのレーダ信号に基づく前方障害物の検出処理及び前方監視カメラ3からの映像信号に基づく映像処理を行う電子制御ユニットである。駐車車両認識器9は、レーダ信号に基づいて障害物の速度を検知することができるので、走行中の他車両と駐車中の他車両とを区別することができる。駐車車両認識器9は、ミリ波レーダ5からのレーダ信号に基づいて、自車両前方に存在する駐車車両を検出する。更に、駐車車両認識器9は、前方監視カメラ3で得られた映像情報に基づいて、前方の駐車車両を認識する。駐車車両認識器9は、認識した駐車車両の情報を駐車車両情報信号として後述の走路方向推定器11に送信する。
【0018】
走路方向推定器11は、所定の情報処理を行う電子制御ユニットである。具体的には、走路方向推定器11は、駐車線認識器7からの駐車線情報信号に基づいて、自車両前方の駐車線の延在方向を認識する。また、走路方向推定器11は、駐車車両認識器9からの駐車車両情報信号に基づいて、自車両前方の駐車車両の駐車方向を認識する。そして、走路方向推定器11は、駐車線の延在方向及び駐車車両の駐車方向に基づいて、自車両前方の走路における正しい進行方向を推定し、推定された進行方向に対して自車両が異なる方向に走行しようとする場合に、警報を発する。
【0019】
なお、駐車線認識器7、駐車車両認識器9、走路方向推定器11は、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、これらのCPU、RAM、ROM等が、所定のプログラムに従い協働して動作することによって前述した各処理が実行される。
【0020】
以下、図2に示す駐車エリアの状況を例として、駐車エリア内で逆走検出装置1が行う処理を説明する。図2は、高速道路のサービスエリアSを示す平面図であり、北方を上として図示している。今、自車両M0が、サービスエリアS内を北向きに移動している。自車両M0の前方には、駐車線21で区切られて設定された複数の駐車スペースが存在している。駐車スペースは、東西方向に配列されており、各駐車スペースには車両M1〜M5が駐車されている。この駐車車両M1〜M5は、駐車線21の案内に従って駐車されているので、駐車車両M1〜M5の駐車方向(駐車車両がフロント部を向けている方向)は、駐車線21の延在方向に平行である。また、サービスエリアS内には、自車両M0から見て駐車車両M1〜M5の更に奥側に、東西方向に延在する走路Lが存在している。走路Lにあっては、車両通行の安全に鑑み、車両が走行すべき方向として、西向きの進行方向(矢印A)が設定されている。自車両M0は、矢印B1又はB2で示されるように、駐車スペース同士の間を抜けて、走路Lに進入しようとしている。
【0021】
この状況下において、図3に示すように、逆走検出装置1は、前方監視カメラ3及びミリ波レーダ5により、自車両M0の周辺の状況、特に自車両M0の前方の状況を認識する(S101)。認識された駐車線21の情報は、駐車線情報信号として駐車線認識器7に送信され、認識された駐車車両M1〜M5の情報は、駐車車両情報信号として駐車車両認識器9に送信される。そして、走路方向推定器11は、駐車車両認識器9からの駐車車両情報信号に基づいて映像処理を行い、駐車車両M1〜M5が何れの方向を向いて駐車しているかを推定する(S103)。ここでは、駐車車両M1〜M5の映像から駐車車両M1〜M5のフロント部を抽出するなどの映像処理によって、各駐車車両M1〜M5の駐車方向が南西方向であることが推定される。
【0022】
次に、走路方向推定器11は、駐車線認識器7からの信号に基づいて映像処理を行い、駐車線21が何れの方向に延びているかを推定する(S105)。ここでは、駐車線21の映像処理によって、駐車線21の延在方向が東北から南西への方向であることが推定される。
【0023】
次に、走路方向推定器11は、推定された上記駐車方向及び駐車線の上記延在方向に基づいて、走路Lに設定されている正しい進行方向Aが、東向きであるか西向きであるかを推定する(S107)。ここで、この種の高規格道路におけるサービスエリアやパーキングエリアの駐車スペースは、上記の正しい進行方向Aに対して駐車車両が進入し易い方向に設定されていることが一般的であり、駐車車両も進入し易い駐車方向で駐車されている可能性が最も高い。このような前提のもとでは、車両M1〜M5の駐車方向及び/又は駐車線21の延在方向を認識することにより、正しい進行方向Aが推定可能である。
【0024】
例えばここでは、南西向きの駐車方向で車両M1〜M5が駐車するには、走路Lにおける進行方向Aが「東向き」であるよりも「西向き」である方が進入が容易であると考えられる。具体的には、例えば、車両M1〜M5の駐車方向のベクトルをYとし、東向きのベクトルをEとし、西向きのベクトルをWとすれば、走路方向推定器11は、ベクトルYとベクトルEとがなす角度と、ベクトルYとベクトルWとがなす角度と、の大小比較を行う。そして、走路方向推定器11は、ベクトルEとベクトルWのうち、ベクトルYとなす角度がより小さい方を正しい進行方向Aとして推定する。ここでは、走路方向推定器11は、駐車車両M1〜M5における南西向きの駐車方向に比較的進入し易い「西向き」を、正しい進行方向Aとして推定する。また、「東向き」を、走路Lにおける逆走方向として推定する。このように、走路方向推定器11は、進行方向推定手段として機能する。
【0025】
次に、走路方向推定器11は、ヘッドアップディスプレイ15に表示信号を送信し、正しい進行方向Aが西向きである旨の情報を画面表示させる(S109)。同様に、走路方向推定器11は、ナビゲーション装置13に画面表示信号を送信し、正しい進行方向Aが西向きである旨の情報を画面表示させる(S109)。自車両M0から見れば、正しい進行方向Aは「左向き」であるので、ナビゲーション装置13及びヘッドアップディスプレイ15には、前方走路Lにおける正しい進行方向が「左向き」である旨の情報を表示させれば運転者にも理解し易い。なお、このような表示は、ナビゲーション装置13及びヘッドアップディスプレイ15の双方で行ってもよく、何れか一方で行ってもよい。
【0026】
次に、走路方向推定器11は、走路Lに到達したときのナビゲーション情報信号に基づき、自車両M0が走路Lにおいて逆走方向で進入しようとしているか否かを判断する(S113)。すなわち、走路方向推定器11は、S107で推定された逆走方向である「東向き」と、ナビゲーション情報が示す自車両M0の走行方向と、を比較する。そして、上記逆走方向と自車両M0の走行方向とが一致する場合(S113でYes)、走路方向推定器11は、自車両M0の逆走を検出し、運転者に対する警報を発する(S115)。この警報としては、例えば、ナビゲーション装置13及び/又はヘッドアップディスプレイ15に警告表示を行う。図2においては、自車両M0が矢印B2方向に走行した場合に、上記警告表示がなされる。この場合、走路方向推定器11、ナビゲーション装置13、及びヘッドアップディスプレイ15は、報知手段として機能する。一方、上記逆走方向と自車両M0の走行方向とが一致しない場合(S113でNo)、警報を発せずに処理を終了する。図2においては、自車両M0が矢印B1方向に走行した場合には、上記警報は行われない。
【0027】
以上のような逆走検出装置1によれば、サービスエリアS内の走路Lにおいて、自車両M0の逆走を検出し運転者への報知により正しい進行方向への走行を促すことができる。従って、逆走による報知がなされた時点では、自車両M0は駐車エリア内にあるので、正しい進行方向への復帰が可能である。このように、逆走検出装置1は、駐車エリア内で正しい進行方向への自車両M0の誘導を行うことで、その後、高規格道路の本線に合流する場合にも正しい進行方向での合流を行わせることができる。従って、逆走検出装置1によれば、高規格道路の本線における自車両M0の逆走の可能性を低減することができる。
【0028】
逆走検出装置1によれば、サービスエリアやパーキングエリアといった駐車車両が多い環境下で走行しながら、自車両の自立認識により走路の推定が可能である。高速道路のサービスエリアやパーキングエリアなど進行方向が判りにくい駐車エリアにおいて、特に、運転者の判断能力が低下した状態にあっても、逆走検出装置1により正しい進行方向が推定され提示され、誤った場合には警告がなされるので、逆走の可能性を低減することができる。
【0029】
また、逆走検出装置1は、推定された進行方向Aをナビゲーション装置13及び/又はヘッドアップディスプレイ15に表示することとしているので、自車両M0の逆走が発生する前においても、駐車エリア内で正しい進行方向への走行を促すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1…逆走検出装置、11…走路方向推定器(進行方向推定手段、報知手段)、13…ナビゲーション装置(進行方向表示手段、報知手段)、15…ヘッドアップディスプレイ(進行方向表示手段、報知手段)、21…駐車線、L…前方の走路、M0…自車両、M1〜M5…他車両、S…サービスエリア(高規格道路の駐車エリア)、Y…駐車方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高規格道路の駐車エリアにおいて、駐車中の他車両の駐車方向又は前記駐車エリアに設けられた駐車線の延在方向に基づいて、自車両の前方の走路の正しい進行方向を推定する進行方向推定手段と、
前記進行方向推定手段で推定された前記正しい進行方向に対して逆走方向に前記自車両が前記前方の走路を走行しようとする場合には、報知を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする逆走検出装置。
【請求項2】
前記進行方向推定手段で推定された前記正しい進行方向を表示する進行方向表示手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の逆走検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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