説明

透光式表示パネル

【課題】生産性を向上させることができる透光式表示パネル。
【解決手段】透光式表示パネル10は、アクリル部材12と、黒塗装部分16及び光透過部18が形成された塗装部14と、PCシート20と、接着剤22と、カラー印刷層28と、を備える。透光式表示パネル10は、カラー印刷層28がPCシート20及び接着剤22を介してアクリル部材12の塗装部14側に取り付けられる構成なので、透光式表示パネル10を製造する際には、光透過部18にクリア塗装を施す必要がなく、透光式表示パネル10の生産性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のシフトレバー装置を覆う上カバーに適用できる透光式表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
シフトレバー装置の上カバーとして黒塗装を用いた透光式表示パネルが用いられている。
【0003】
この透光式表示パネルは、透光性を有する基材(例えば、アクリル系樹脂)の裏側に、遮光性を有する黒塗装が施されている。ここで、塗装部には、一部に表示形状の光透過部(非塗装部分)が形成されている。この光透過部及びその周囲に、表示形状に色付与をするための熱転写箔がホットスタンプ工法によって貼り付けられている(塗装部に熱転写箔を付与する技術としては、例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、光透過部の周縁付近では、塗装処理の施された部分と凹部である光透過部との境界に段差が形成されており、この段差部分では、熱転写箔が塗装部との間に隙間を設けたまま光透過部及びその周囲に貼り付けられているため、熱転写箔が薄い場合には屈曲して塗装部から剥がれたり、割れが生じる原因となる。
【0005】
そこで、光透過部である凹部へクリヤ塗装処理を施して充填し上記の段差部分を無くし、このクリヤ塗装処理の施された部分に熱転写箔を貼り付けて、熱転写箔貼り付け面の凹凸を少なくしている。
【0006】
しかしながら、光透過部にクリヤ塗装処理を施さなければならないため、製造工程が増え、透光式表示パネルの生産性が低下する。
【特許文献1】特開2003−15556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、生産性を向上させることができる透光式表示パネルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、透光性を有する基材と、遮光性を有し、前記基材の一側に塗装処理が施されると共に一部に表示形状をした光透過部が形成された塗装部と、シート状に形成され、前記基材の前記塗装部側に配置される透明シートと、前記透明シートの前記基材側に直接又は間接的に設けられ、前記光透過部の周囲で前記透明シートを前記塗装部に固定させる接着剤と、前記塗装部とは異なる色を有し、前記透明シートの一側又は他側に設けられ、前記接着剤による前記透明シートの前記固定状態で前記光透過部と対向する色表示層と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の発明では、色表示層が透明シート及び接着剤を介して基材の塗装部側に取り付けられる構成なので、透光式表示パネルを製造する際には、光透過部にクリヤ塗装を施す必要がなく、透過式表示パネルの生産性を向上させることができる。また、透明シートを別体としたことで色表示層の色調調整、調光が容易となり、生産性が向上する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記透明シートと塗装部との間に設けられる接着剤は、前記光透過部に対応しない部分に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、光透過部に臨む部分には、接着剤が設けられていない。このため、基材に対して色表示層とは反対の視認者側に、この色表示層の色を明瞭に表示させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記接着剤は前記光透過部を取り囲むと共に、当該接着剤には取り囲まれた領域を外部と連通させる連通路が設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、接着剤によって取り囲まれた領域が外部と連通されているので、この領域内のエアが外部に逃げることができて、組み立て時や温度変化時における領域内の異常な圧力上昇がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
図1には、本発明の実施の形態に係る透光式表示パネル10の主要部が平面図にて示されており、図2には、透光式表示パネル10の主要部が斜め方向から見た断面図(図1の2−2線に沿った断面図)にて示されている。また、図3には、透光式表示パネル10の主要部が断面図(図1の3−3線に沿った断面図)にて示されており、図4には、透光式表示パネル10が図1に対応する透視図にて示されている。以下、透光式表示パネル10が車両のシフトレバー装置を覆う上カバーに適用された場合を例に取り、説明する。
【0015】
透光式表示パネル10は、基材としてのアクリル部材12を備えている。アクリル部材12は、主要部が平板状とされている。アクリル部材12は、アクリル樹脂材から成り、透光性を有している。
【0016】
アクリル部材12の裏面(一側)には、塗装部14が設けられている。塗装部14は黒塗装部分16を有しており、この黒塗装部分16は、アクリル部材12の裏面に塗装処理として黒塗装が施されることで形成されており、遮光性を有している。
【0017】
また、塗装部14は、表示形状の光透過部18を有している。光透過部18は、例えば、形成しようとする表示形状に合わせてレーザ光を黒塗装に照射し、この照射部分の黒塗装を剥がすことで形成されている。ここでは、光透過部18が表示形状であるアルファベット文字「R」に対応した形状とされている例を図示しているが、塗装部14には、その他に他のシフトレンジを示す表示文字、例えば、「P」、「N」、「S−D」、「+」、「−」に対応した形状も光透過部18によって形成されている(図示省略)。
【0018】
また、アクリル部材12の塗装部14側には、シート状に形成された透明シートとしてのPCシート(ポリカーボネートシート)20が配置されている。
【0019】
図4に示されるようにこのPCシート20のアクリル部材12側には、枠状とされ、かつ図3に示されるように薄肉の接着剤22の片面が光透過部18の周囲と対応する位置に接着されている。接着剤22の他の片面は塗装部14へ圧接されて、光透過部18の周囲でPCシート20を塗装部14に固定させると共に図2、3に示されるPCシート20の固定状態で図4に示されるように光透過部18を取り囲んでいる。このように、PCシート20と塗装部14との間に設けられる接着剤22は、光透過部18に対応しない部分に設けられている。さらに、図4に示されるようにこの接着剤22には枠状の一部が切除された連通路24が設けられており、連通路24は、接着剤22によって枠状に取り囲まれた内側の領域26を外部と連通させている。
【0020】
また、接着剤22によって取り囲まれた領域26では、色表示層としてのカラー印刷層28がPCシート20のアクリル部材12側に設けられており、カラー印刷層28は、光透過部18に対向している。このカラー印刷層28は、塗装部14の黒塗装部分とは異なる色(赤色や黄色等の黒以外の色)を有しており、PCシート20へ一体的に印刷や接着等により固着されている。このため、アクリル部材12に対して、カラー印刷層28の反対側(アクリル部材12の表面側であり車室内P側)から見ると、表示形状に対応した形が黒塗装部分16の色とは異なる色で表示される。なお、カラー印刷層28を薄肉にする等の変形により、PCシート20の黒塗装部分16への固定状態でカラー印刷層28を光透過部18の周囲の黒塗装部分16から離間する構成とすることで、接着剤22によって取り囲まれた領域26と光透過部18内の領域18Aとを連通させることが可能である。
【0021】
またさらに、カラー印刷層28は、透光性を有している。このカラー印刷層28に対応して、PCシート20に対してアクリル部材12の反対側(アクリル部材12の裏面側であり、シフトレバー装置の内部M側)では、光源としてのランプ30が光透過部18に面して設けられている。このライト30が点灯することで、カラー印刷層28の反対側(室内P側)では、表示形状に対応した形(シフトレンジを示す文字「R」、「P」、「N」、「S−D」、「+」、「−」に対応した形)が明瞭に表示される。
【0022】
次に、透光式表示パネル10の製作手順について説明する。
【0023】
まず、アクリル部材12の裏面全体に黒塗装処理を施す。
【0024】
次いで、形成しようとする表示形状に合わせてレーザ光をアクリル部材12の裏面の黒塗装に照射し、この照射部分の黒塗装を剥がすことで、光透過部18が形成される。このとき、黒塗装が残された光透過部18以外の部分は、黒塗装部分16とされる。このようにして、塗装部14がアクリル部材12の裏面に形成される。
【0025】
一方、PCシート20の一側に、接着剤22の片面を接着すると共に印刷や接着処理を施すことでカラー印刷層28を固着させる。このとき、接着剤22を枠状に形成すると共にその一部24を切除した形に形成し(連通路24を形成し)、カラー印刷層28が接着剤22の枠内に収まるようにする。なお、PCシート20の一側に、カラー印刷層28を先に固着させてから、このカラー印刷層28を取り囲むように上記形状の接着剤22の片面を接着してもよい。
【0026】
次いで、このようにして接着剤22及びカラー印刷層28が設けられたPCシート20を、アクリル部材12の裏面側に取り付ける。このとき、カラー印刷層28が光透過部18に対向するようにPCシート20を位置決めし、接着剤22の他の片面を光透過部18の周囲に接着する。このようにして、PCシート20がアクリル部材12の黒塗装部分16に固定される。ここで、接着剤22によって取り囲まれた領域26が連通路24によって外部と連通されているので、この領域26内のエアが外部に逃げることができて、組み立て時や温度変化時における領域26内の異常な圧力上昇がない。
【0027】
以上のような製作手順で透光式表示パネル10を製作できる。ここで、透光式表示パネル10は、カラー印刷層28がPCシート20及び接着剤22を介してアクリル部材12の塗装部14側に取り付けられる構成なので、透光式表示パネル10を製造する際には、光透過部18にクリヤ塗装を施すことなくカラー印刷層28をPCシート20を介してアクリル部材12へ取り付けることができ、透光式表示パネル10の生産性を向上させることができる。また、PCシート20を別体としたことでカラー印刷層28の色調調整、調光が容易となり、生産性が向上する。
【0028】
次に、第1の実施の形態の作用について説明する。
【0029】
車両のライトコントロールスイッチが操作されてオンとされると、シフトレバー装置の内部M側では、ランプ30が点灯されて、PCシート20に光が照射される。このとき、PCシート20は透明シートであるので、PCシート20を介してカラー印刷層28にもランプ30の光が照射される。カラー印刷層28は透光性を有するので、このランプ30の光は、カラー印刷層28、さらには塗装部14の光透過部18を経てアクリル部材12を透過し、車室内P側へと進み、車室内P側の乗員へ表示形状を明瞭に認識させることができる。このとき、ランプ30によって照射された光によって、シフトレンジを示すアルファベット文字「R」に対応する表示形状は勿論のこと、他のシフトレンジを示す文字「P」、「N」、「S−D」、「+」、「−」に対応した表示形状も併せて明瞭に表示される。
【0030】
ここで、透光式表示パネル10では、PCシート20と塗装部14との間に設けられる接着剤22が光透過部18を取り囲むように設けられているので、光透過部18に臨む部分には、接着剤22が設けられていない。このため、車室内P側の乗員に、このカラー印刷層28の色を一層明瞭に表示させることができる。
【0031】
また、透光式表示パネル10では、接着剤22によって取り囲まれた領域26が連通路24によって外部と連通されているので、この領域26内のエアが外部に逃げることができて、温度変化時における領域26内の異常な圧力上昇がない。
【0032】
なお、本実施の形態の透光式表示パネル10は、透明シートとしてPCシート20が適用される構成としたが、これに代えて、ポリカーボネート以外の樹脂から成るシート状部材が透明シートとして適用される構成としてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る透光式表示パネル10について説明する。なお、前述の本発明の第1の実施の形態と同一構成の箇所については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0033】
図5には、本発明の第2の実施の形態に係る透光式表示パネル10の主要部が断面図(前述の第1の実施の形態における図3に対応する断面図)にて示されている。第2の実施の形態に係る透光式表示パネル10は、接着剤22がアクリル部材12へ間接的に取り付けられている。
【0034】
本実施の形態に係る透光式表示パネル10では、PCシート20のアクリル部材12側に、前述の第1の実施の形態のカラー印刷層28よりも面積の大きなカラー印刷層28が設けられている。カラー印刷層28のアクリル部材12側周部は、光透過部18の周囲の黒塗装部分16に対応しており、このカラー印刷層28のアクリル部材12側周部には、枠状の接着剤22の片面が接着されている。従って、接着剤22はカラー印刷層28を介してPCシート20へ間接的に設けられている。
【0035】
接着剤22の他の片面は、光透過部18の周囲の黒塗装部分16に接着されており、接着剤22は、光透過部18の周囲でPCシート20を塗装部14に固定させると共に平面状態でPCシート20の固定状態で光透過部18を取り囲んでいる。さらに、この接着剤22には第1の実施の形態と同様の連通路24(本実施の形態においては図示省略)が設けられており、連通路24は、接着剤22によって取り囲まれた領域26を外部と連通させている。
【0036】
ここで、PCシート20と塗装部14との間に設けられている接着剤22は、光透過部18に対応しない部分に設けられており、接着剤22は、光透過部18内へはみ出さないようになっている。このため、カラー印刷層28の反対側(室内P側)からは、接着剤22がアクリル部材12を介して見えることはない。
【0037】
次に、第2の実施の形態に係る透光式表示パネル10の製作手順について説明する。
【0038】
まず、アクリル部材12の裏面に設ける塗装部14については前記実施形態と同様である。
【0039】
一方、PCシート20の一側に、印刷や接着処理を施すことでカラー印刷層28を固着させる。このとき、カラー印刷層28の一側周囲が光透過部18の周囲の黒塗装部分16に対応するように、カラー印刷層28をPCシート20に設ける。
【0040】
次いで、接着剤22の片面をカラー印刷層28の一側周囲に接着してPCシート20の一側に間接的に設ける。このとき、接着剤22を枠状に形成すると共にその一部24を切除した形に形成(連通路24を形成)する。
【0041】
次いで、接着剤22が設けられたPCシート20を、アクリル部材12の裏面側に取り付ける。このとき、カラー印刷層28が光透過部18に対向するようにPCシート20を位置決めし、接着剤22の他の片面を光透過部18の周囲に接着する。このようにして、PCシート20がアクリル部材12の黒塗装部分16に固定される。
【0042】
以上のような製作手順で第2の実施の形態に係る透光式表示パネル10を製作できる。ここで、透光式表示パネル10では、カラー印刷層28がPCシート20の塗装部14側に固着されると共に、このPCシート20が接着剤22によってアクリル部材12の塗装部14側に取り付けられる構成、言い換えれば、カラー印刷層28がPCシート20及び接着剤22を介してアクリル部材12の塗装部14側に取り付けられる構成なので、透光式表示パネル10を製造する際には、光透過部18にクリヤ塗装を施す必要がなく、透光式表示パネル10の生産性を向上させることができる点は前記実施形態と同様である。また、PCシート20を別体としたことでカラー印刷層28の色調調整、調光が容易となり、生産性が向上する点は前記実施形態と同様である。
【0043】
第2の実施の形態の作用については、前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0044】
なお、本発明の第2の実施の形態の透光式表示パネル10は、透明シートとしてPCシート20が適用される構成としたが、これに代えて、ポリカーボネート以外の樹脂から成るシート状部材が透明シートとして適用される構成としてもよい。
【0045】
以上、本発明が車両のシフトレバー装置を覆う上カバーに適用された例について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明は、例えば、車両の計器、家庭用電化製品、オフィスオートメーション関連機器、工業分野及び医療分野における検査機器等の他、携帯電話、釣り具等のスポーツ用品等、様々な製品分野において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る透光式表示パネルの主要部を示す平面図である。
【図2】透光式表示パネルの主要部を斜め方向から見た拡大断面図(図1の2−2線に沿った断面図)である。
【図3】透光式表示パネルの主要部を示す拡大断面図(図1の3−3線に沿った断面図)である。
【図4】図1に対応する透光式表示パネルの透視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る透光式表示パネルの主要部を示す、図3に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 透光式表示パネル
12 アクリル部材(基材)
14 塗装部
18 光透過部
20 PCシート(透明シート)
22 接着剤
24 連通路
26 領域(接着剤に取り囲まれた領域)
28 カラー印刷層(色表示層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基材と、
遮光性を有し、前記基材の一側に塗装処理が施されると共に一部に表示形状をした光透過部が形成された塗装部と、
シート状に形成され、前記基材の前記塗装部側に配置される透明シートと、
前記透明シートの前記基材側に直接又は間接的に設けられ、前記光透過部の周囲で前記透明シートを前記塗装部に固定させる接着剤と、
前記塗装部とは異なる色を有し、前記透明シートの一側又は他側に設けられ、前記接着剤による前記透明シートの前記固定状態で前記光透過部と対向する色表示層と、
を備えた透光式表示パネル。
【請求項2】
前記透明シートと塗装部との間に設けられる接着剤は、前記光透過部に対応しない部分に設けられることを特徴とする請求項1記載の透光式表示パネル。
【請求項3】
前記接着剤は前記光透過部を取り囲むと共に、当該接着剤には取り囲まれた領域を外部と連通させる連通路が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の透光式表示パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−156104(P2007−156104A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351252(P2005−351252)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(595173248)株式会社原ネームプレート製作所 (1)
【出願人】(591178517)株式会社三和スクリーン銘板 (19)
【Fターム(参考)】