説明

透明ジェル化粧料

【課題】特定の尿素安定剤を含有し、ジェル剤型の長期安定性を有し、かつ、べたつき感が少なく、さっぱりとした使用感を有し、かつ、滑らかな延展性を有し、肌なじむが良好な使い勝手に優れた透明ジェル化粧料を提供する。
【解決手段】(A)尿素、(B)ヒドロキシ酸及びその塩の組み合わせからなる尿素安定剤、(C)カルボキシビニルポリマーを含有し、(C)カルボキシビニルポリマーを化粧料の総量を基準として、0.65〜2質量%含有することを特徴とする透明ジェル化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は尿素を安定に含有する透明ジェル化粧料に関し、さらに詳しくは、特定の尿素安定剤を含有し、ジェル剤型の長期安定性を有し、かつ、べたつき感が少なく、さっぱりとした使用感を有し、かつ、滑らかな延展性を有した使い勝手に優れた透明ジェル化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NMF(天然保湿因子)の1つとして知られている尿素は、皮膚に対して角質内水分保持作用、創傷治癒作用、殺菌作用等の優れた作用を有していることが知られている。そして、尿素は安価で、粉末状で取り扱いが容易なことから、尿素を配合した様々な製剤(軟膏、クリーム、乳液、ローション、ジェル、エアゾール等)の化粧料が多数開発されている(特許文献1〜9参照)。
【0003】
尿素は水溶性の化合物であり、水液溶による調整直後は中性で、ほぼ無色・無臭であり、それを塗布すると即時に保湿作用が発現される。しかし、時間経過とともに水溶液中で尿素が加水分解され、炭酸ガスとアンモニアを生じ、このため、アンモニア臭の発生やpHの上昇による皮膚への刺激の増大、製剤の変色、分離や沈殿等が生ずるという問題が生じていた。特に酸、アルカリ、熱等の存在により加水分解が促進されてしまう。
【0004】
このため、尿素水溶液における尿素の分解を抑制する方法として当該水溶液に尿素安定化剤として種々の物質、例えば、アンモニウム塩又はアラントイン(特許文献1参照)、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸等の脂肪族ヒドロキシ酸(特許文献2参照)、N−アシルグルタミン酸塩又はN−アシルアスパラギン酸塩(特許文献6参照)、丁子、緑茶、葛根、桑白皮、甘草、オウゴン、アロエ及び橙皮の混合抽出物(特許文献7参照)、乳酸、リン酸、クエン酸、エデト酸及びこれらの塩(特許文献8参照)、等を添加する方法が知られている。
【0005】
さらに尿素の製剤中の含有量に比例して保湿作用は顕著に増加していくが、尿素を高濃度配合した場合、従来から市販されている軟膏、クリーム、乳液等の剤型ではベタつき感が強くなりすぎ、使用感が著しく低下するという問題があった。また、ローション状の製剤では粘性が低いため、液だれ等が生じやすく取り扱い性が悪い、尿素の保湿作用の実感が低く感じられてしまうことから、ジェル剤型について検討されている(特許文献3、4、5、9参照)。
【特許文献1】特開昭51−048441号公報
【特許文献2】特開昭52−105225号公報
【特許文献3】特開昭58−002341号公報
【特許文献4】特開昭59−020217号公報
【特許文献5】特開昭63−166825号公報
【特許文献6】特開平04−001129号公報
【特許文献7】特開平06−024954号公報
【特許文献8】特開2002−012513号公報
【特許文献9】特開2006−306734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ジェル製剤では、尿素がゲル構成成分のカルボキシビニルポリマー、プロピルメチルセルロース、プロピルエチルセルロース等に代表される水溶性高分子に影響
を与え、製剤の粘度が維持できないという問題もあった。粘度を維持するために、製剤中の水溶性高分子の含有量を増やすと、極端な粘度変化を防ぐことができるが、製剤が非常に固くなり、使用後のべたつき感が増長され、使用感が極めて悪くなる。
そのため、ジェル製剤を用いる場合、尿素安定化剤を添加して尿素水溶液を安定化させるだけでなく、水溶性高分子がゲル化領域で粘度変化が少ない、長期間保存安定性の高い製剤を見いだすことが必要であった。
【0007】
例えば、引用文献3には、水、水溶性溶剤及びこれらの混合物にカルボキシルビニルポリマーと尿素を含有したゲル組成物が開示されている。しかし、得られるゲル組成物のpHは3程度であって、尿素の経時的な加水分解抑制効果はほとんど見られず、さらにカルボキシビニルポリマーを中和して用いていないため、粘度安定性も低いものであった。
【0008】
引用文献4には、尿素、カルボキシビニルポリマーとともに、尿素安定化剤としてアンモニウム塩を配合し、pHを6〜9とする水性ゼリー状組成物が開示されている。しかし、一般に化粧品の品質保証期間が5年間であることを考慮すれば、このジェル製剤においても、長期保存安定性が十分ではなかった。また、温度が加わるとアンモニウム塩自体が分解してアンモニア臭を発生してしまうという問題もあった。
【0009】
引用文献5には、尿素と、カルボキシビニルポリマーと、無機又は有機の塩基性物質と、多量の多価アルコールを含有する透明ゲル製剤が開示されている。しかし、水の配合量をできるだけ少なくし、代わりに多量の多価アルコールを配合することによってゲル基剤中の尿素の安定性を向上させているが、経時的な粘度変化が著しく、使用に耐えうるものではなかった。また、多量の多価アルコールの添加によってべたつき感が必然的に強くなり、また製剤の肌へのなじみが悪く、使用感の悪化が顕著であった。
【0010】
引用文献9には、トリエタノールアミンと酒石酸、塩化アンモニウム及び/又はグリシンを含有した尿素配合外用剤が開示されている。しかし、開示される製剤は乳化剤を用いた白色クリーム状のエマルション製剤であって、べたつき感を感じ、肌へのなじみが悪いものであった。
【0011】
このように、尿素を配合したジェル化粧料では、尿素の加水分解を低く抑えたとしても、べたつき感などの使用感が悪く、温度変化による経時的な粘度変化が著しい、白濁するなどの欠点のために製剤化が困難であり、これまで商品として開発、販売されていないのが現状である。
【0012】
そこで、本発明は、尿素の加水分解を抑制し、かつ、カルボキシビニルポリマーの分散水溶液の粘度低下も抑制した、長期保存安定性に優れたジェル化粧料であって、尿素を高濃度配合しても使用感や取り扱い性に優れた透明ジェル化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、鋭意研究した結果、尿素とともに特定の尿素安定剤をジェル基剤に含有させることにより高濃度の尿素含有が可能となり、剤型の長期保存安定性に優れ、べたつき感が少なく、さっぱりとした使用感を有し、かつ、滑らかな延展性を有する使い勝手に優れた透明ジェル化粧料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の透明ジェル化粧料は、(A)尿素、(B)ヒドロキシ酸及びその塩の組み合わせからなる尿素安定剤、(C)カルボキシビニルポリマーを含有し、(C)カルボキシビニルポリマーを化粧料の総量を基準として、0.65〜2質量%含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の透明ジェル化粧料においては、上記(B)尿素安定剤が、クエン酸及びその塩、乳酸及びその塩の組み合わせからなることが好ましく、上記(B)尿素安定剤の含有量が、化粧料の総量を基準として0.1〜5.0質量%であることが好ましい。さらに(D)界面活性剤及び/又は(E)多価アルコールを含有することが好ましい。そして、油性成分を含有しないジェル製剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明ジェル化粧料は、尿素を高濃度に配合しても、皮膚に好適な中性領域における剤型の安定性に優れ、しかも尿素自体の安定性も高いため、尿素独自の速攻性の保湿作用が長期保存後も維持される。しかも、本発明の透明ジェル化粧料はべたつき感が少なく、さっぱりとした使用感を有し、かつ、滑らかな延展性を有するため使い勝手が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0018】
本発明で用いられる「ジェル」とは、外観状態が均一で、水溶性高分子のゲル化により、系全体が網目構造を作り、弱い応力下で弾性をもっている状態の形態を言う。また、本発明で用いられる「透明」とは、透明〜半透明を示しており、具体的には透明なガラス容器に化粧料を厚さ15mmとし、容器の下に置かれた12ポイントの文字を認識できる状態のものを言う。
【0019】
本発明に用いられる(A)尿素の配合量は、化粧料の総量を基準として0.1〜20質量%(以下、単に%で示す)が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10%であり、特に好ましくは2〜6%である。当該範囲内であれば保湿効果が十分に発揮され、使用感が良好となる。
【0020】
本発明に用いられる(B)尿素安定剤には、ヒドロキシ酸及びその塩の組み合わせが用いられる。具体的な(B)尿素安定剤としては、ヒドロキシ酪酸及びその塩、酒石酸及びその塩、メバロン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、乳酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩等が挙げられる。これらのうち、好ましくはクエン酸及びその塩、乳酸及びその塩、特に乳酸及びその塩を用いるのが、尿素の分解抑制とジェル製剤の長期保存安定性(透明性・粘度維持率)のいずれにおいても良好な結果が得られることから好ましい。
【0021】
ヒドロキシ酸の塩とは、生理学上許容される塩であれば特に制限されない。具体的にはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる(B)尿素安定剤の配合量は、化粧料の総量を基準として0.1〜5.0%が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜3.0%である。特に(B)尿素安定剤として、乳酸及び乳酸塩のみを用いた場合、0.3〜0.6%であることが好ましい。ヒドロキシ酸とその塩の含有比率は特に制限されないが、ヒドロキシ酸とその塩が2:1〜1:1の範囲にあることが好ましい。当該範囲内であれば、尿素を安定性に維持することでき、皮膚に一過性の刺激を生じることがなく、安全性上も好ましい。
【0023】
本発明に用いられる(C)カルボキシビニルポリマーはカルボキシル基をもった水溶性のビニルポリマーで、主としてアクリル酸の共重合体である。GoodRich社で開発され、「カーボポール」の商品名で市販されている。その他、Vシグマ社から商品名「シンタレン」などが市販されている。
【0024】
調製時のカルボキシビニルポリマーは見た目は濁様な粘性液で、分散水溶液はpH2〜
3の酸性を示す。この分散水溶液に中和剤を添加することで透明感に優れたジェル剤型が得られる。(C)カルボキシビニルポリマー分散水溶液の中和値はpH5〜9の範囲内、さらに好ましくはpH6〜8の範囲内に調整することが粘度安定性や使用面から好ましい。
【0025】
中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩及び、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン等の有機アミンが用いられる。これらのうち好ましくは、トリエタノールアミン、水酸化カリウムであり、更に好ましくはトリエタノールアミンである。
【0026】
本発明に用いられる(C)成分の配合量(実質純分換算)は、化粧料の総量を基準として0.65〜2.0%であり、好ましくは、0.7〜1.5%である。当該範囲内であれば、ジェル剤型の安定性を維持し、べたつき感が強くなりすぎることがなく、使用感が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる(D)非イオン性界面活性剤は、HLB値が10以上のもの、好ましくはHLB10〜17のものであり、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限はない。HLB値が10未満のものでは、外観の透明性に変化を生じ、保存安定性に満足なものが得られない。尚、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic
Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村等による次式を用いて算出した値を用いている。
【0028】
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
HLB値が10以上である非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、モノ又はポリグリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、トリメチロールプロパン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンピログルタミン酸エステル等のポリオキシアルキレン型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、その他(商品名:プルロニック)等が挙げられる。これらは、アルキル基、フェニル基、脂肪酸残基等の疎水基の炭素数が8〜36のものが好ましい。
【0029】
具体的には、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(15)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(25)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレン(25)ヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(16)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(25)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(15)グリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)グリセリルトリイソステ
アレート、ポリオキシエチレン(40)グリセリルトリイソステアレート、ポリオキシエチレン(30)トリメチロールプロパントリミリステート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(60)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビトールモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビトールヘキサオレート、ポリオキシエチレン(60)ソルビトールテトラオレート、ポリオキシエチレン(6)ソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレン(60)ソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレン(30)ソルビットテトラオレート、ポリオキシエチレン(40)ソルビットテトラオレート、ポリオキシエチレン(60)ソルビットテトラオレート、ポリオキシエチレン(22)ポリオキシプロピレン(16)グリコール、ポリオキシエチレン(92)ポリオキシプロピレン(16)グリコール、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(21)グリコール、ポリオキシエチレン(15)ポリオキシプロピレン(30)グリコール等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は透明性及び保存安定性に優れていて特に好ましい。
【0030】
本発明の(D)非イオン性界面活性剤は一種単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、化粧料の総量を基準として0.05〜5.0%が好ましく、特に好ましくは、0.1〜3%である。当該範囲内であれば十分な透明性を得ることができ、べたつき感が強くなりすぎることがなく、使用感が好ましい。
【0031】
本発明に用いられる(E)多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、POP(9)ジグリセリン、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、POE(10)メチルグルコシド、POE(20)メチルグルコシド等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの多価アルコールを適宜配合することにより、透明ジェル化粧料の透明性や感触、塗布時の伸び等を任意に調整することができる。
本発明に用いられる(E)多価アルコールの配合量は、化粧料の総量を基準として0.5〜20%が好ましく、さらに好ましくは1〜10%であり、特に好ましくは1〜5%である。当該範囲内であれば、塗布時の肌へ伸びが良く、塗布感(肌なじみ)も良好で、また、べたつき感が強くなりすぎることがなく、使用感が好ましい。
【0032】
本発明の尿素含有透明ジェル化粧料には、上述の必須成分以外に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種任意成分を、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜配合することができる。例えば一価アルコール、消炎剤、殺菌剤、色素、香料等が挙げられる。
【0033】
具体的には、一価アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等が挙げられ、消炎剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸モノアンモニウム等が挙げられる。
【0034】
本願発明の透明ジェル化粧料は、ローション、美容液、マッサージ料、洗顔料等の基礎化粧品やヘアワックス、整髪料、染毛料等の毛髪化粧料やリキッドファンデーション、下地化粧料、水系エナメル、アイライナー、エナメルリムーバー等のメイクアップ化粧料として用いることができる。
【0035】
本発明のジェル化粧料の製造直後のpHは6〜8に調整することが好ましく、さらに好ましくはpH6〜7.5である。当該範囲内であれば、ジェル製剤の長期保存安定性(透明性・粘度維持率)が良好となり、好ましい。
【0036】
本発明のジェル化粧料の製造直後の粘度は、7000〜50000mPa・Sであることが好ましく、さらに10000〜40000mPa・Sであることが好ましい。当該範囲内であれば、塗布時の肌へ伸びが良く、塗布感(肌なじみ)も良好で、使用時に液だれ等も生じず使い勝手が良い。
【0037】
本発明の透明ジェル化粧料には、べたつき感を生ずる原因となりやすい油性成分を主体としない製剤であることが好ましく、油性成分を含有していない水性ジェル製剤であることが特に好ましい。また、油性成分を添加する場合、その含有量は、製剤のべたつき感、透明性に影響を及ぼさない範囲であれば特に制限されないが、化粧料の総量を基準として5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に0.1%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1〜5、比較例1〜7
表1の組成のジェル化粧料を下記製造方法により調製し透明ジェル化粧料を得た。
(製造方法)
予め(1)純水2%に成分1を加え、攪拌機にて分散水溶液を調整する、同様に(2)純水5%に成分2又は3を加え、均一水溶液を調整しておく。調整後に残純水に成分4〜10を加え、均一に溶解撹拌し、これに成分11〜13を加えて均一に溶解させる。十分に溶解したことを確認後、TKロボミックス(Fmodel)撹拌機をセットし、予め調整した(1)を加え(約1000回転・2分間)均一に分散する。次に(2)を加えて(約8000回転・5分間)分散して透明ジェル化粧料を得た。
【0039】
実施例1〜5、比較例1〜7の透明ジェル化粧料に対し、下記の試験例1、2の評価を行った。試験結果及び評価結果を表1に合わせて記載する。
【0040】
【表1】

【0041】
試験例1 <使用性・使用感評価試験>
パネラー20名に、製造直後の実施例1〜5、比較例1〜7の透明ジェル化粧料を一週間連続使用し、使用感(さっぱり感、しっとり感)、使用性(肌なじみ、伸び)について、アンケート方式で下記評価基準で回答してもらい、良いと回答したパネラー数により使用感、使用性の評価を行った。尚、比較例3については製剤状態が悪く、官能評価自体をしていない。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
試験例2 <長期保存安定性の評価>
実施例1〜5及び比較例1〜7の透明ジェル化粧料をガラス製容器(35×45×100mm)に入れ、密封したものを室内(暗所・室温)に1年間保存した。製造直後と1年経過後にそれぞれの試料の性状を検査し、透明性、粘度、pH、尿素含有量について、下記の評価を行った。
(1)透明性評価
1年経過後の試料の性状を目視で検査し、下記の基準により評価を行った。
【0045】
【表4】

【0046】
(2)粘度維持評価
25℃の恒温室で一夜静置した後、ローター4号を取り付けた単一円筒回転粘度計(ビスメトロン:芝浦システム社製)に設置し、12rpm、30秒間回転させたときの粘度(mPa・S)を算出した。この操作を3回繰り返し、平均値を25℃における粘度とした。製造直後と1年間経過後の試料の粘度維持率(1年経過後の試料の粘度/製造直後の試料の粘度×100)より、下記の基準により評価を行った。尚、比較例3、4については目的とする初期粘度が得られていないため、1年経過後の粘度を測定していない。
【0047】
【表5】

【0048】
(3)pH維持評価
pHの測定は直接試料測定とし、製造直後と1年間経過後の試料のpHの差異より、下記の基準により評価を行った。
【0049】
【表6】

【0050】
(4)尿素の安定性評価
1年経過後の試料0.2gに水を加えて20mLとし、その後よく混ぜカートリッジ式逆相カラム(SUPELCO製 スペルクリン LC−18)に保持時間4.7分流す。初期の2mLは捨て、その後の溶出液を試料溶液とする。試料溶液を下記条件にて紫外線吸光光度計(測定波長:210nm)を用いて尿素含有量を測定した。製造直後と1年間経過後の試料の尿素残存率(1年経過後の尿素定量値/製造直後の尿素配合値×100)より、下記の基準により評価を行った。尚、比較例3はpHの変化率が大きく、アンモニア臭の発生具合から尿素の加水分解率が高いと推測され、評価自体を行っていない。
〔測定条件〕
カラム:Develosil NH2−5(野村化学製 4.6×150mm)
カラム温度:40℃付近
移動相:アセトニトリル850mLに0.01mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液150mLを加え、リン酸でpH2.5に調整する。
【0051】
流量:毎分1.0mL
【0052】
【表7】

【0053】
実施例と比較例を対比すると、比較例3は、ジェル化粧料の製造直後のpHが6未満であること、及び、カルボキシビニルポリマーの配合量が少ないため、十分な粘度が得られておらず、白濁して透明にならなかった。これは尿素安定剤を配合した場合には、尿素安定剤を用いていない比較例6と比べて、比較的多くのカルボキシビニルポリマーが必要であることを示している。
【0054】
比較例4は、ジェル化粧料の製造直後のpHが6未満であるため、十分な粘度が得られておらず、使用感及び使用性に劣るものであった。
【0055】
比較例5は、尿素安定剤をヒドロキシ酸とその塩の代わりに、リン酸及びその塩を用いたものであるが、化粧料の伸びが悪く、透明性に劣るものであった。
【0056】
比較例6は、尿素安定剤を配合しなかったものであるが、中和剤にトリエタノールアミン配合した事が効を奏し、尿素の安定性は良好であったが、長期保存安定性は劣り、特に粘度は1年間で91.6%も低下してしまい、使用に耐えないものであった。
【0057】
上記より明らかなように、本発明の透明ジェル化粧料は、尿素の加水分解を効果的に抑制し、製剤の透明性、粘度の長期保存安定性も極めて優れた性能を有していることが分かる。また、なめらかな伸びを有し、広範囲に均一に塗布することができ、肌なじみも良好である。更に既存の製剤の欠点である塗布後の油っぽいべたつき感はほとんど皆無であった。
実施例6 ジェルローション
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.92
水酸化カリウム 0.69
尿素 3
乳酸 0.25
乳酸ナトリウム 0.17
アロエエキス 3
95%合成無変性アルコール 15
ポリエチレングリコール200 3
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.7
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
純水 残 部
実施例7 ジェルローション
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.95
水酸化カリウム 0.60
尿素 3
乳酸 0.25
乳酸ナトリウム 0.17
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アロエエキス 1
95%合成無変性アルコール 11
グリセリン 3
1,3−ブチレングリコール 3
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 1
フェノキシエタノール 0.3
純水 残 部
実施例8 ジェル美容液
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.95
水酸化カリウム 0.6
尿素 5
乳酸 0.25
乳酸ナトリウム 0.17
白樺エキス 1
95%合成無変性アルコール 15
ジプロピレングリコール 3.5
グリセリン 1
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
メチルパラベン 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.05
純水 残 部
実施例9 ジェル美容液
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.92
水酸化カリウム 0.69
尿素 3
クエン酸 1.65
クエン酸ナトリウム 1.25
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
95%合成無変性アルコール 19
ポリエチレングリコール200 1.5
ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
純水 残 部
実施例10 ボディローション
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.92
トリエタノールアミン 2
尿素 3
乳酸 0.25
乳酸ナトリウム 0.17
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アロエエキス 1
95%合成無変性アルコール 15
ポリエチレングリコール200 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 1
メチルパラベン 0.1
純水 残 部
実施例11 フィンガージェル
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.9
トリエタノールアミン 1.5
尿素 3
クエン酸 1.65
クエン酸ナトリウム 1.25
アロエエキス 5
95%合成無変性アルコール 11
ジプロピレングリコール 1
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.7
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
フェノキシエタノール 0.3
純水 残 部
実施例12 フットジェル
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.9
トリエタノールアミン 1.5
尿素 3
乳酸 0.2
乳酸ナトリウム 0.3
白樺エキス 5
95%合成無変性アルコール 19
ジプロピレングリコール 1.5
ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
フェノキシエタノール 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
純水 残 部
実施例13 ハンドジェル
(成分) (含有量 %)
カルボキシビニルポリマー 0.8
トリエタノールアミン 1
尿素 5
乳酸 0.3
乳酸ナトリウム 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
アロエエキス 1
95%合成無変性アルコール 15
ポリエチレングリコール200 1.5
グリセリン 1
1,3−ブチレングリコール 3
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1
メチルパラベン 0.1
フェノキシエタノール 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.05
純水 残 部
実施例6〜13の透明ジェル化粧料は、尿素の加水分解を効果的に抑制し、製剤の透明性、粘度の長期保存安定性に極めて優れた効果を有していることが分かった。また、滑らかな伸びを有し、広範囲に均一に塗布することができ、肌なじみも良好であった。更に既存の製剤の欠点である塗布後の油っぽいべたつき感もほとんど感じなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)尿素、(B)ヒドロキシ酸及びその塩の組み合わせからなる尿素安定剤、(C)カルボキシビニルポリマーを含有し、(C)カルボキシビニルポリマーを化粧料の総量を基準として、0.65〜2質量%含有することを特徴とする透明ジェル化粧料。
【請求項2】
(B)尿素安定剤が、クエン酸及びその塩、又は乳酸及びその塩の組み合わせからなる請求項1に記載の透明ジェル化粧料
【請求項3】
(B)尿素安定剤の含有量が、化粧料の総量を基準として0.1〜5.0質量%である請求項1又は2に記載の透明ジェル化粧料。
【請求項4】
さらに(D)界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明ジェル化粧料。
【請求項5】
さらに、(E)多価アルコールを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明ジェル化粧料。
【請求項6】
油性成分を含有しないジェル製剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明ジェル化粧料。


【公開番号】特開2009−190986(P2009−190986A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31018(P2008−31018)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】