説明

透明ディスプレイ装置

【課題】表示部の表示の視認性を向上させると共に、表示部を挟んでの情報共有が容易となる透明ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】透明ディスプレイ装置100は、互いに対面する第1及び第2の表示面110a、110b、及び第1及び第2の表示面110a、110bの間に配置されて、第1及び第2の表示面110a、110bの両側に光を出力する発光層を備える透明ディスプレイパネル110と、第1及び第2の表示面110a、110bの少なくとも一方側に取り付けられ、発光層から入射する光を透過させ、且つ発光層と異なる光源から入射する光を拡散させるヘイズ層120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部の表示を両側から視認でき、かつ表示面の向こう側が透けて見える透明ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELなどの発光型ディスプレイの電極部の少なくとも一部分にITOなどの透明電極を用いることにより、背景が透けて見える両面発光型の透明ディスプレイ装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−71948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、透明ディスプレイ装置は、表示部の前面側にいる人と後面側にいる人とが、表示部の表示を見ながら、対面してコミュニケーションすることが可能である。しかし、表示部の表示と表示部を透過した背景とが重なると、上記表示の視認性が低下する。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、表示部の表示の視認性を向上させると共に、表示部を挟んでの情報共有が容易となる透明ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る透明ディスプレイ装置は、互いに対面する第1及び第2の表示面、及び前記第1及び第2の表示面の間に配置されて、前記第1及び第2の表示面の両側に光を出力する発光層を備える表示部と、前記第1及び第2の表示面の少なくとも一方側に取り付けられ、前記発光層から入射する光を透過させ、且つ前記発光層と異なる光源から入射する光を拡散させるヘイズ層とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明ディスプレイ装置を挟んで対話する際に、表示の視認性を向上させると共に、情報共有が容易となる透明ディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る透明ディスプレイ装置の概略断面図である。
【図2】透明ディスプレイパネルの断面構造を示す図である。
【図3】ヘイズ層に入射する光の進行方向を示す図である。
【図4】第1の表示面の一部をヘイズ層で覆う例を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る透明ディスプレイ装置の概略断面図である。
【図6】帯電粒子を用いたヘイズ層の例であって、ヘイズ値が高い状態の図である。
【図7】帯電粒子を用いたヘイズ層の例であって、ヘイズ値が低い状態の図である。
【図8】ヘイズ層の一部を選択的に高ヘイズ領域にした例を示す図である。
【図9】PDLCを用いたヘイズ層の例であって、ヘイズ値が高い状態の図である。
【図10】PDLCを用いたヘイズ層の例であって、ヘイズ値が低い状態の図である。
【図11】従来の透明ディスプレイ装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一形態に係る透明ディスプレイ装置は、互いに対面する第1及び第2の表示面、及び前記第1及び第2の表示面の間に配置されて、前記第1及び第2の表示面の両側に光を出力する発光層を備える表示部と、前記第1及び第2の表示面の少なくとも一方側に取り付けられ、前記発光層から入射する光を透過させ、且つ前記発光層と異なる光源から入射する光を拡散させるヘイズ層とを備える。
【0010】
上記構成において、「発光層と異なる光源」とは、例えば、表示部の向こう側に位置する光源(典型的には、背景)、及び/又は、表示部の手前側に位置する光源(典型的には、透明ディスプレイ装置の前に立っているユーザ自身)を指す。そして、上記構成によれば、発光層と異なる光源からの光の影響を受けずに、透明ディスプレイ装置に表示される画像をはっきり見ることができる。
【0011】
好ましくは、前記ヘイズ層の透過率は、5%以上で40%未満であってもよい。
【0012】
ヘイズ層の透過率を上記の範囲内とすることで、発光層からの光を選択的に透過させ、発光層以外の光源からの光を遮断することができる。なお、本明細書中の「遮断」とは、発光層以外の光源からの光を全く通さないことまでを必要とせず、表示部に表示される画像がはっきり見える程度に減光されればよい。
【0013】
一例として、前記ヘイズ層は、透明樹脂内に微粒子を拡散させた層、又は繊維を編んで構成される層であってもよい。
【0014】
他の例として、前記ヘイズ層は、高分子液晶または帯電粒子を含む層であってもよい。
【0015】
さらに、該透明ディスプレイ装置は、前記ヘイズ層の前記表示部と反対側の面に取り付けられるタッチパネルを備えてもよい。そして、前記ヘイズ層は、前記タッチパネルで選択された領域のヘイズ値を選択的に増大させてもよい。
【0016】
上記構成によれば、例えば、実際に画像が表示されている領域のヘイズ値を相対的に高くし、それ以外の領域を相対的に低くすることにより、透明ディスプレイ装置を挟んで対面するユーザが、第1及び第2の表示面に表示される画像を見ながら、コミュニケーションを図ることが可能となる。
【0017】
以下に、本発明の一実施の形態を説明するが,当然ながら本発明はこれらの形態に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、説明上「透明」は、「透明または透光性を有する」という概念を含むものとする。また、「透過率」は、パネルに入射される可視光の明るさに対する、パネルを通してでる可視光の明るさの割合を指す。
【0019】
また、「ヘイズ」とは、フィルムの透明性に関する値で、濁度(曇度)を表す。より具体的には、「ヘイズ」とは、拡散透過光の全光線透過光に対する割合から求められるもので、表面の粗さの影響を受ける。ヘイズの測定方法は、例えば、JIS−K−7105、JIS−K−7136に準じており、ヘイズメーターで計測し、下記式1で求められる。なお、下記式1のTdは拡散透過率を、Ttは全光線透過率を指す。
【0020】
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100 ・・・・・(式1)
【0021】
さらに、本明細書において、画像とは、表示装置に表示可能なあらゆるコンテンツを指し、典型的には、動画像、静止画像、及び文字情報のいずれか、又はこれらの組み合わせを指す。動画像としては、放送波映像等の1フレーム全体の画像であってもよく、動的なオブジェクト画像であってもよい。また、静止画像としては、例えば、写真やイラストなどを示す画像がある。
【0022】
図11は、従来の透明ディスプレイ装置10の概略斜視図である。この透明ディスプレイ装置10は両面発光型であるので、図11に示されるように、透明ディスプレイ装置10の手前側にいるユーザ30及び奥側にいるユーザ40の両方が表示部20に表示されている画像を視認することができる。
【0023】
また、この透明ディスプレイ装置10は透過型であるので、手前側にいるユーザ30は、表示部20に表示される画像21と、透明ディスプレイ装置10の後ろ側(ユーザ40の側)の像(背景)との両方を見ることができる。同様に、奥側にいるユーザ40は、表示部20に表示される画像21と、透明ディスプレイ装置10の前側(ユーザ30の側)の像との両方を見ることができる。
【0024】
それにより、ユーザ30、40は、表示部20に表示される画像21を見ながら、互いにコミュニケーションを図ることができる。しかしながら、背景からの光が外光のように強いと、表示部20に表示されている画像21の暗い部位も影響を受けて明るくなり、コントラストの低い見えにくい画像21となる。また、表示される画像21の色も白っぽくなるため、視認性が大きく低下するという課題が発生する。
【0025】
そこで、図1〜図4を参照して、本発明の実施の形態1に係る透明ディスプレイ装置100を説明する。図1は、実施の形態1に係る透明ディスプレイ装置100の概念を概略的に示す断面図である。
【0026】
本発明の実施の形態1に係る透明ディスプレイ装置100は、図1に示されるように、透明ディスプレイパネル(表示部)110と、透明ディスプレイパネル110の少なくとも一方側の面(表示面)に取り付けられるヘイズ層120とを備える。
【0027】
図1に示される透明ディスプレイパネル110は、第1の表示面110aと第2の表示面110bとを有する。透明ディスプレイパネル110の一方側の面(図1の左側の面)が第1の表示面110aとなり、透明ディスプレイパネル110の他方側の面(図1の右側の面)が第2の表示面110bとなる。すなわち、第1及び第2の表示面110a、110bは、透明ディスプレイパネル110の両側の面を構成しており、互いに対面している。
【0028】
透明ディスプレイパネル110は、図2に示されるように、ガラス基板111上にAl配線112が形成され、Al配線112上にITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zinc Oxide)の透明なアノード電極113が積層され、アノード電極113上に発光層114が積層され、発光層114上に光透過性のカソード電極115が積層され、カソード電極115上に保護層116が積層され、保護層116上(すなわち、最上部)にガラス基板117が取り付けられた構造となっている。
【0029】
発光層114は、例えば、光を発する有機EL層である。また、カソード電極115もアノード電極113と同様に、ITO等からなる透明電極で構成することができる。カソード電極115側の透明な保護層116は、発光層114を劣化させる水分の浸入を防ぐものである。
【0030】
なお、本実施の形態1における透明ディスプレイパネル110の例として、自発光型表示パネルである有機ELパネルを用いたが、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、PDP(Plasm Display Panel)、無機ELを用いたパネル、又は、無機LEDを用いたパネルを用いてもよい。無機ELとしては、例えば、ZnS、CdS、ZnSe(Gaドープ:Ga、GaSe、GaAs、Alドープ:Al、AlSe、Inドープ:In、InSe)等がある。また、無機LEDとしては、P型とN型の不純物をドープしたGaN半導体等がある。
【0031】
このような構造の透明ディスプレイパネル110において、アノード電極113とカソード電極115とに所定の電圧を印加すると、発光層114に所定の電流が供給され、発光層114自体が発光する。発光層114から放出された光の一部は、光透過性のカソード電極115を経由して上部方向(第1の表示面110a側)に出力される。一方、発光層114から放出された光の他の一部は、下部側の透明なアノード電極113とガラス基板111とを透過して下部方向(第2の表示面110b側)にも出力される。このようにして、発光層114から放出される光が、アノード電極113側及びカソード電極115側の両面から放出される。
【0032】
また、透明ディスプレイパネル110は、透明なフラット型パネルであり、第1及び第2の表示面110a、110bに何も表示されていない場合に、向こう側が透けて見えるように構成されている。すなわち、第1の表示面110a側にいるユーザ(例えば、図10のユーザ30)は、第2の表示面110b側にいるユーザ40及び背景を透明ディスプレイパネル110を通して見ることができる。
【0033】
さらに、透明ディスプレイパネル110に入射する光は、内部の保護層116、Al12、アノード電極113、及びカソード電極115などで反射して、入射面側から出力される。その結果、例えば、図10のユーザ30から出た光(ユーザ30で反射した光)が透明ディスプレイパネル110に入射し、内部で反射して戻ってくることにより、ユーザ30には、第1の表示面110a付近に自分の姿が映っているように見える。この反射像が第1の表示面110aに表示される画像に重なって、さらにみえにくくなるという課題が発生する。
【0034】
そこで、図1の例のように、ヘイズ層120は、透明ディスプレイパネル110の第1の表示面110a側に取り付けられる。しかしながら、第2の表示面110b側にヘイズ層120を取り付けてもよいし、第1及び第2の表示面110a、110bの両方にヘイズ層120を取り付けてもよい。
【0035】
ここで、ヘイズ層120としては、透過性と散乱性とを有する必要がある。ヘイズ層120の具体的な構成の例としては、例えば、透明樹脂内に微粒子を拡散させた層、トレーシングペーパーのように繊維を編んで構成される層、すりガラスのように表面に微細な凹凸を付加した層とすることができる。
【0036】
なお、上記構成のヘイズ層120は、例えば、従来の液晶テレビの表示面に取り付けられている反射防止膜(AGフィルタ等)とは、その目的も構成も大きく異なる。具体的には、従来の反射防止膜は表示面への映り込みを防止するためのものであり、非常に高い透過率(例えば、90%以上)に設定される。
【0037】
これに対して、本実施の形態1に係るヘイズ層120の主な目的は、透明ディスプレイパネル110の向こう側にある光源(背景)からの透過光を遮断し、発光層114から放出される光を選択的に透過させることであり、その透過率は、5%以上で40%未満であることが望ましく、7%以上で20%未満であることがより望ましく、10%前後(例えば、9%以上で15%未満)であることがさらに望ましい。
【0038】
図3を参照して、ヘイズ層120の構成及び効果を詳細に説明する。図3は、ヘイズ層120に入射する光の進行方向を示す図である。まず、図3に示されるヘイズ層120は、入射光を透過させる透明樹脂121と、透明樹脂121に入射する光を拡散させる微粒子122とで構成される。より具体的には、図3に示されるヘイズ層120は、透明樹脂121内に微粒子122を拡散させて構成される。
【0039】
また、図3には、3つの光源A、B、Cが図示されている。光源Aは、例えば、透明ディスプレイパネル110の発光層114である。また、光源Bは、図10のユーザ40の側の任意の光源(例えば、背景)である。そして、光源Cは、図10のユーザ30側の任意の光源(例えば、ユーザ30自身)である。
【0040】
透明樹脂121は、透過率が極めて高い。これに対して、微粒子122は、光の角度を変化させる機能と、光を反射し分散させる機能とを有する。その結果、図3に示されるように、ヘイズ層120に近い光源Aから放出される光は、微粒子122の間を通り抜けて光源Cの位置(すなわち、ユーザ30の位置)に到達する。すなわち、微粒子122による散乱の影響は比較的少ない。
【0041】
これに対して、ヘイズ層120から離れた位置の光源Bから放出される光は、ヘイズ層120に到達した時点で既に広範囲に拡散しており、この拡散光がさらに微粒子122で散乱される。その結果、光源Bからの光は、ヘイズ層120を透過して光源Cの位置まで到達しにくい。すなわち、光源Cの位置にいるユーザは、透明ディスプレイ装置100の向こう側の像(背景)をほとんど認識することがない。
【0042】
同様に、光源Cから放出される光は、ヘイズ層120に到達するまでに拡散しており、ヘイズ層120の表面および内部でさらに散乱される。その結果、光源Cの位置にいるユーザは、第1の表示面110aに映る自分自身の像をほとんど認識できなくなる。
【0043】
このように、ヘイズ層120は、近い位置(図3の光源A)から放出される光をより多く透過させ、遠い位置(図3の光源B、C)から放出される光をより多く拡散させる機能を有する。その結果、光源Cの位置にいるユーザは、光源B、Cからの光に邪魔されることなく、光源Aからの光を認識することができる。すなわち、このユーザは、背景や自分自身の像の影響を受けずに、第1の表示面110aに表示される画像をはっきりと見ることができる。
【0044】
図4は、第1の表示面110aに取り付けられたヘイズ層120の他の例を示す図である。図4に示されるヘイズ層120は、第1の表示面110aの一部に選択的に設けられている。
【0045】
上記構成の場合において、例えば、第1及び第2の表示面110a、110bのヘイズ層120に対面する領域に、選択的に画像を表示させる。一方、第1及び第2の表示面110a、110bのヘイズ層120に対面する領域以外には何も表示されないので、透明ディスプレイ装置100の向こう側にいるユーザが透過して見える。このため、透明ディスプレイ装置100を挟んで対面するユーザは、互いのアイコンタクトや動作を確認することができる。これにより、透明ディスプレイ装置100を挟んで対面するユーザは、第1及び第2の表示面110a、110bに表示される同一の画像を見ながら、互いにコミュニケーションをとることができる。
【0046】
一方、ヘイズ層120が第1の表示面110aの全面を覆っている場合は、透明ディスプレイ装置100の向こう側にいるユーザが見えないので、透明ディスプレイ装置100に表示される画像を見ながらコミュニケーションをとろうとすると、透明ディスプレイ装置100の同じ側で表示画像を見る必要がある。しかしながら、この場合には、各ユーザの視線が同じ方向を向く必要があるので、互いにアイコンタクトしにくい。従って、ヘイズ層120は、第1及び第2の表示面110a、110bの一方に部分的に配置されているのが好ましい。
【0047】
ヘイズ層120の透過率と透明ディスプレイ装置100の向こう側のユーザの見え方とについて、屋内においてNDフィルターと両面発光有機ELディスプレイとを重ねて検討した。このとき、NDフィルターの透過率が20%以上では向こう側のユーザの顔の細部がわかる。これに対して、10〜20%では表情はわかるが肌色がみえにくくなり、逆に自分の反射像がじゃまをする。一方、10%以下では、表情ではなくシルエットとして認知され、手の動作や顔の動きなどわかるが、表情まではわからない。そのため、表情の変化を知りたい場合は、透過率を20%以上にするか、顔に照明をあてて見やすくする必要がある。
【0048】
上記構成の透明ディスプレイ装置100の場合、背景と表示画像とが重なり、どこに焦点を合わせればよいか迷う場合がある。そこで、画像を表示する領域をヘイズ値の高い領域に固定することにより、透明ディスプレイ装置100を挟んで対面するユーザが同じ表示画像を認識しやすく、且つ互いにコミュニケーションもしやすくなる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、図5〜図8を参照して、本発明の実施の形態2に係る透明ディスプレイ装置200を説明する。図5は、実施の形態2に係る透明ディスプレイ装置200の概略断面図である。
【0050】
透明ディスプレイ装置200は、図5に示すように、透明ディスプレイパネル110と、ヘイズ層220と、タッチパネル230とを備える。なお、透明ディスプレイパネル110の構成は、図2を用いて既に説明したので、再度の説明は省略する。また、タッチパネル230は、ヘイズ層220の外側の面(透明ディスプレイパネル110と反対側の面)に取り付けられている。
【0051】
図6及び図7を参照して、本発明の実施の形態2に係るヘイズ層220を説明する。図6に示されるヘイズ層220は、溶媒221と、帯電粒子222と、電極223、224とで構成され、溶媒221中に分散させた帯電粒子222の分散状態を変化させることによって、ヘイズ値を調整する。
【0052】
より具体的には、電極223は、図6及び図7に示すように、複数の小さな領域に区画されている。そして、各領域には、帯電粒子222を分散させた溶媒221が封入されると共に、中央に電極224が設置されている。なお、図6には2つの領域のみを図示しているが、実際には、多数の領域がマトリクス状に配列されている。また、各領域は、例えば、数十画素〜数百画素を含むことができる程度の大きさです。
【0053】
そして、このヘイズ層220は、電極223、224の間に電圧を印加することによって、領域毎にヘイズ値を変更することができる。具体的には、電極223、224を同電位(0V)にすると、図6に示すように帯電粒子222が溶媒221中に分散する。これにより、上から見ると白い帯電粒子222が分散して透過率が下がる。すなわち、帯電粒子222により光が散乱されてヘイズ値が高くなる。
【0054】
一方、電極224にマイナスの電位をかけると、負に帯電した帯電粒子222が反発して、図7に示すように、電極223の内壁面(隔壁)に付着する。これにより、透過率が上がり、ヘイズ値を低下させることができる。
【0055】
そして、上記構成のヘイズ層220は、各領域の電極224の電位を制御することにより、ヘイズ値を領域毎に制御することができる。その結果、ヘイズ値の高い領域と、ヘイズ値の低い領域とを動的に変更することができる。なお、帯電粒子222の直径、溶媒221中に分散させる帯電粒子222の量(数)、および隔壁の厚みを調節することで、ヘイズ値を変化させることが可能である。
【0056】
上記構成の透明ディスプレイ装置200において、ユーザは、ヘイズ層220の上に取り付けられたタッチパネル230にタッチして、ヘイズ値を高くしたい部位を特定すればよい。例えば図8に示されるように、ユーザがヘイズ値を高くしたい領域を囲むようにタッチパネル230をなぞると、その軌跡で囲まれた領域(高ヘイズ領域225)のヘイズ値が相対的に高く、それ以外の領域(低ヘイズ領域226)のヘイズ値が相対的に低くなるように、電圧を印加する領域を制御する。なお、タッチパネル230で特定された領域のヘイズ値を、その他の領域より低くするように制御してもよいことは言うまでもない。
【0057】
このように、ヘイズ値を変化させることのできるヘイズ層220と、タッチパネル230とを組み合わせることによって、ヘイズ値を高くしたい(若しくは、低くしたい)位置や大きさを自由に変化させることができる。図8の例では、高ヘイズ領域225では、第1及び第2の表示面110a、110bに表示される画像の視認性が高まる。一方、低ヘイズ領域226では、透明ディスプレイ装置200の向こう側にいる相手の顔の表情や動作を見ることにより、コミュニケーションしやすくなる。
【0058】
なお、タッチパネル230としては、抵抗膜方式や静電容量方式のように、直接指を表面に接触させた時に変化する抵抗変化や静電容量の変化で位置を検出する方式も使用できる。
【0059】
また、赤外線遮光方式のように、表示面の周囲にLEDを配置し、光の遮断位置からタッチ位置を検知する方式を用いてもよい。これによれば、表示面上に検出素子を配置する必要がなくなるので、表示面の透過率を低下させずに、ヘイズ調整位置を決めることができる。
【0060】
また、指以外でもヘイズ層220の位置を決定する他の方法として、赤外線検出機をディスプレイ側に設けておき、ワイヤレスリモコンの赤外線を検出して位置を決定してもよい。これにより、離れた位置からのヘイズ制御も可能となり、用途も広がる。
【0061】
(実施の形態3)
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施の形態3に係るヘイズ層320を説明する。図9及び図10は、実施の形態3に係るヘイズ層320の例を示す図である。実施の形態3に係るヘイズ層320は、実施の形態2に係るヘイズ層220と同様に、ヘイズ値を変化させることができるものであり、例えば、図8のヘイズ層220と置き換えて使用することができる。
【0062】
ヘイズ層320として、電圧で制御できるPDLC(高分子分散型液晶:Polymer Dispersed Liquid Crystal)321を用いることができる。このヘイズ層320は、電圧のオン、オフでヘイズ値を変えることができる。具体的には、図9及び図10に示すように、PDLC321を透明電極322、323ではさんで、この透明電極322、323に印加する電圧を制御することにより、ヘイズ層320のヘイズ値を動的に変更することができる。
【0063】
より具体的には、電圧を印加しない時は、図9に示すように、PDLC321内の液晶分子が不規則に配列しているため、光を散乱してヘイズの高い層となり、透過率は下がる。一方、電圧を印加することにより、図10に示すように、PDLC321内の液晶分子が規則的に配列するので、光が散乱しなくなるためヘイズの低い層となり、透過率が高くなる。
【0064】
そして、実施の形態3に係るヘイズ層320は、図9及び図10に示されるPDLC321をマトリクス状に配列して構成される。そして、各PDLC321に印加する電圧を制御することにより、ヘイズ値の高い領域と、ヘイズ値の低い領域とを動的に変更することができる。すなわち、図9及び図10に示される構成は、図6及び図7に示される1つの領域に対応する。
【0065】
このように、実施の形態3に係るヘイズ層320は、印加電圧を変えることによりヘイズ値および透過率を変えることが出来るため、多段階に透過率を変えて見せることも可能となる。ヘイズ値が高いと透過率は低くなる(一例:ヘイズ90%では透過率60%)。なお、透明性がすぐれると評価されるのは、ヘイズ値が1%未満であり、高透明性はヘイズ値が5%未満とされており、この場合、80%以上の透過率が得られる。
【0066】
上記実施の形態をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0067】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明にかかる透光性を有する透明ディスプレイ装置は、ユーザが透明ディスプレイ装置を挟んで対話する際に、表示の視認性を向上させると共に情報共有が容易となり有用である。
【符号の説明】
【0069】
10,100,200 透明ディスプレイ装置
20 表示部
21 画像
30,40 ユーザ
110 透明ディスプレイパネル
110a 第1の表示面
110b 第2の表示面
111 ガラス基板
112 Al配線
113 アノード電極
114 発光層
115 カソード電極
116 保護層
117 ガラス基板
120,220,320 ヘイズ層
121 透明樹脂
122 微粒子
221 溶媒
222 帯電粒子
223,224 電極
225 高ヘイズ領域
226 低ヘイズ領域
230 タッチパネル
321 PDLC
322,323 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面する第1及び第2の表示面、及び前記第1及び第2の表示面の間に配置されて、前記第1及び第2の表示面の両側に光を出力する発光層を備える表示部と、
前記第1及び第2の表示面の少なくとも一方側に取り付けられ、前記発光層から入射する光を透過させ、且つ前記発光層と異なる光源から入射する光を拡散させるヘイズ層とを備える
透明ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記ヘイズ層の透過率は、5%以上で40%未満である
請求項1に記載の透明ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記ヘイズ層は、透明樹脂内に微粒子を拡散させた層、又は繊維を編んで構成される層である
請求項1又は2に記載の透明ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ヘイズ層は、高分子液晶または帯電粒子を含む層である
請求項1又は2に記載の透明ディスプレイ装置。
【請求項5】
該透明ディスプレイ装置は、さらに、前記ヘイズ層の前記表示部と反対側の面に取り付けられるタッチパネルを備え、
前記ヘイズ層は、前記タッチパネルで選択された領域のヘイズ値を選択的に増大させる
請求項4に記載の透明ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−58406(P2013−58406A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196454(P2011−196454)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】