説明

透明容器口部の刻印検査

【課題】透明容器の口部に刻印される凹凸模様の金型キャビティ番号を、文字種や凹凸の深さやエッジの先鋭度などに影響を受けずに精度良く識別できる検査手法を提供する。
【解決手段】検査装置は、照明部30、反射ミラー部40、撮像カメラ部50、画像処理部60を備える。反射ミラーは、ミラーにより反射される撮像カメラの光軸が常に搬送される容器の中心部を通過するように制御される。照明部30は部分発光が制御可能な構造で、常にカメラと被検査物の中心部を結ぶ線上の狭い部分で発光するように制御され、撮像カメラは刻印の輪郭が明瞭な画像を取得する。容器は、自転する機構で把持されて検査区域を通過する。容器が検査区域を通過する間に撮像カメラは複数回の撮像を行い、画像処理部により刻印文字の識別が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な円筒容器(例えば、PETプリフォーム)の口部に刻印される金型番号をインラインで自動検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、複数(例えば、144種が一般的である)のキャビティを備える成形機により製造され、各々を成形したキャビティの番号が口部に凹凸模様として刻印されている。キズや化成不良などの欠陥については、目視あるいは検査装置によりインラインで全数検査している。しかし、刻印されたキャビティ番号については、機械装置に狂いが生じることは無く常に整列された金型番号の順番で搬送されると考え、識別検査をしていない。
【0003】
検査工程で検出した欠陥品の分析を行う場合や、分析結果に基づいて特定のキャビティ番号の製品を抽出・分離する必要が発生した場合には、作業員がオフラインで目視確認を行い選別している。
【0004】
自動検査の手法として、刻印部をカメラで撮像し、画像処理による文字認識手法を適用することが考えられる。
【0005】
しかし、特許第3422967号などにおいて、透明容器口部の異物やキズ検査に適した照明や画像処理法が開示されているが、口部の刻印検査に適した検査法は開発されていない。異物やキズを検査するのに適した照明光学系を利用して刻印の画像を取得すると刻印の輪郭が不明瞭となり誤認識を発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3422967号 容器の口部検査装置
【特許文献2】特許第4229251号 PETプリフォームの異物検査装置
【特許文献3】特許第4429177号 透明容器の欠陥検査方法及び装置
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、透明な円筒形状容器の口部に刻印されているキャビティ番号を、インラインで高精度に自動検査する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査装置は、透明な円筒容器の口部に刻印された文字を検査する検査装置であって、容器を背後から照射するLED照明とその制御部、容器を搬送する機構、前方から撮像するカメラ、容器とカメラの間に位置する反射ミラーとその制御部、撮像した口部画像の文字認識を行う画像処理装置を備え、反射ミラーは搬送と同期しカメラ光軸が常に容器の中心部を通過するように角度制御され、LED照明はLED素子が短いピッチ(例えば4mmなど)で検査区間よりも広い範囲(例えば、150mm)に渡ってマウントされ、カメラ光軸上を中心とする狭い部分においてパルス的に発光するよう制御され、カメラはパルス的に発光される照明と同期して撮像制御されることを特徴とする。
【0009】
LED照明制御部の調整により発光幅の狭い照明を実現し、刻印の字体や凹凸の深さなどに影響を受けにくい輪郭の明瞭な画像を取得することで、精度の高い文字認識が可能となる。
【0010】
容器は、自転する機構により把持されて自転しながら検査区間を通過する。容器は、検査区間を通過する間に1回転以上の自転を行い、この間にカメラは口部の全周検査を可能とする複数回(例えば、20〜40回)の撮像と文字認識処理を繰り返し、刻印番号の識別検査を行う。
【0011】
搬送装置は、直線的に搬送する機構であっても、公転する機構であっても良い。カメラ光軸が常に被検査物の中心部を通るように反射ミラーを角度制御し、カメラ光軸を中心とする狭い範囲で照明を部分発光制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明な容器の口部に刻印されるキャビティ番号の明瞭な画像を取得し、汎用のコンピュータや専用の画像処理装置により高速に文字認識を行うことで、高精度にインライン自動検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示すシステム説明図。
【図2】検査領域の位置および照明とカメラの配置説明図。
【図3】本発明の発光制御法を示す説明図。
【図4】本発明による方式における刻印部の撮像結果を示す図面代用写真である。
【図5】従来方式における刻印部の撮像結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明による透明容器口部の刻印検査システム(以下、単に検査システムという)の構成を説明するための図である。本検査システムでは、例えば、1分あたり250個という高速で透明円筒容器(例えば、PETプリフォーム)の検査が行われる。
【0016】
同図に示すように、本発明による検査システムは、LED照明30、照明発光制御部31、撮像カメラ50、画像処理部60、反射ミラー40およびミラー制御部41を備える。
【0017】
本検査システムは、図2に示すように、検査対象である透明円筒容器10の口部11の刻印領域Zに施される凹凸模様の識別検査を行うものである。検査対象となる円筒容器は、上端に開口部、下端に底部を有した円筒状の容器であって、不図示の搬送機構によって、所定の検査位置まで順次搬送され、自転機構により回転しつつ検査が行われ、止まることなく搬送される。搬送機構には、円筒容器の口部を把持し、所定の速度(例えば、600rpm以上)で自転させる回転機構(不図示)が設けられている。
【0018】
照明部30は、検査位置において、円筒容器10の後背部に配置される透過照明光源である。照明部30から発して容器を透過した光は、反射ミラー40を経由して撮像カメラ50に記録される。図2は反射ミラーを省いた図となっている。
【0019】
図3は、本発明の照明器内部の構造を示している。LED素子がマトリクス状(例えば、40列×4段)に配列された構造となっており、発光幅Bと、発光中心位置C、あるいは発光開始位置Sを指定することにより、発光の位置と範囲を制御できる構造となっている。
【0020】
反射ミラーは、カメラの光軸が、常に容器の中心部を通過するように制御される。この時、照明部は、カメラ光軸上のLED素子を中心とした狭い範囲(例えば、±20mm程度)において、カメラと同期してパルス的に発光(例えば、1/4000秒の発光)するように制御される。
【0021】
幅の狭い発光部は、容器に入射する光の角度を制約する効果が大きく、カメラ光軸と平行に近い入射光が容器を透過しカメラに集光され記録される。この効果により、刻印輪郭のコントラストが飛躍的に向上する。
【0022】
図4は、本発明の検査システムにおける刻印の撮像結果を示す図面代用写真と、一般的な全面発光方式による刻印の撮像結果を示す図面代用写真を比較したものである。全面発光方式による画像は輪郭が不鮮明で、画像処理による文字認識の確率が低く、誤識別が発生し易い。本発明方式では、認識率が飛躍的に高くなり、精度のよい識別が可能となる。
【0023】
撮像カメラは、自転しながら搬送される容器をミラー経由で連続的に撮像する。例えば、1分間に250個の検査を行うシステムでは、容器が検査区間を通過する時間間隔は240ミリ秒であり、この時間内に容器は2回以上の自転を行う。カメラは、反射ミラーの復帰時間を控除したその2/3程度の時間内(この場合、160ミリ秒)で複数回(例えば、20から40回)の撮像を行い全周の画像を取得する。
【0024】
容器口部の外周速度は約700mm/秒となるので、ブレの少ない画像を取得するために、カメラのシャッター速度および照明の発光時間は1/4000秒に設定される。本発明の照明は、常時全面発光の照明と比較して、輪郭の明瞭な画像を取得できるだけでなく、LEDの熱損失が非常に小さく、明るさが安定した、寿命の長い照明を実現している。
【0025】
画像処理部は、次の容器が検査区間に到達するまでに全画像の処理行いキャビティ番号の識別を完了する。
【符号の説明】
【0026】
10 透明容器
11 口部
30 LED照明
31 照明発光制御部
40 反射ミラー
41 ミラー制御部
50 撮像カメラ
60 画像処理部
A 搬送経路
B 光源の発光幅
S 発光位置の開始位置数)
C 発光の中心位置
Z 刻印画像の検査領域















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器口部に凹凸模様として刻印される金型キャビティ番号を識別検査する検査装置であって、被検査物を後背部から照射するLED照明光源と、被検査物の前方に配置して刻印部を撮像するカメラと、被検査物とカメラの間に設置される反射ミラーと、撮像した画像を文字認識処理する画像処理装置とを備え、反射ミラーは容器の搬送に同期してカメラの光軸が常に被検査物の中心部を通るように制御され、照明光源は部分発光が可能な構造となっており、被検査物の搬送と同期して発光領域が順次移動する機能を特長とする。
【請求項2】
前記照明光源の発光部は、LED素子がマトリクス状に一定間隔で配置された面状の光源であり、1列単位で発光のON/OFF制御が可能であり、発光の開始位置と同時発光させる列数とを指定することができる。これにより、被検査物の搬送と同期して、常にカメラ光軸上のLED素子列を中心とする狭い範囲で発光制御することが可能で、撮像カメラは常に刻印の輪郭が明瞭な画像を取得できる。
【請求項3】
前記撮像カメラによって撮像された画像データに基づいて、前記円筒容器の口部の刻印文字を識別する画像処理部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記円筒容器を自転させる回転機構と、検査位置まで搬送する搬送機構を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記円筒容器が一回以上の自転をしている間に、複数回の撮像と画像認識を行い、次の被検査物が検査区域に到達までに全周検査を完了することを特徴とする請求項4に記載の検査装置。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150072(P2012−150072A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10535(P2011−10535)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(510202307)ダイナテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】