説明

透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれを用いたタッチパネル

【課題】タッチパネルに用いた際の額縁近傍でのペン摺動耐久性に優れ、特にポリアセタール製のペンを使用し、2.5Nの荷重で1万回の摺動試験後でも透明導電性薄膜が破壊されない、透明導電性フィルム又は透明導電性シート、及びこれを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルム(基材)上に、硬化物層を介して金属酸化物を構成成分とする透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムであって、前記透明導電性薄膜が非晶質で、かつ透明導電性薄膜中に含まれる炭素濃度が、1×1020〜1×1022(atoms/cm3)であることを特徴とする透明導電性フィルム。また、前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に粘着剤を介して透明樹脂シートが貼り合わされた透明導電性シート。さらに、少なくとも一方のパネル板が前記の透明導電性フィルム又は透明導電性シートからなるタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明プラスチックフィルムからなる基材上に硬化物層を介して透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれらを用いたタッチパネルに関するものであり、特にタッチパネルの額縁近傍でのペン摺動耐久性に優れる透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれを用いたタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチックフィルムからなる基材上に、透明でかつ抵抗が小さい薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極など、電気、電子分野の用途に広く使用されている。
【0003】
近年、携帯情報端末やデジタルビデオカメラ、デジタルカメラなどの小型化とともに、操作キーを省くため表示ディスプレイにタッチパネルを搭載するケースが増えている。しかしながら、これらの記録媒体は、小型化とともに、表示ディスプレイそのものは大画面化が望まれている。そのため、表示ディスプレイを囲む筐体エリア(額縁)はより狭くなり、タッチパネルとしてもより狭い額縁化が望まれるようになってきた。さらに、額縁近傍は筐体内に収まらず表示エリア上に存在する状態になってきている。
【0004】
タッチパネルをペン入力する際、固定電極側の透明導電性薄膜と可動電極(フィルム電極)側の透明導電性薄膜同士が接触するが、特に額縁近傍では、可動電極側の透明導電性薄膜に、ペン荷重による強い曲げストレスがかかる。このため、ペン荷重による強い曲げストレスがかかっても、透明導電性薄膜にクラック、剥離などの破壊が生じない、額縁近傍でのペン摺動耐久性に優れる透明導電性フィルムが要望されている。しかしながら、従来の透明導電性フィルムは、次のような問題を有していた。
【0005】
厚さが120μm以下の透明プラスチックフィルムからなる基材上に透明導電性薄膜を形成し、粘着剤層で他の透明基体と貼りあわせた透明導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような粘着剤層を有する透明導電性フィルムを用いたタッチパネルは、後述のタッチパネルの額縁近傍におけるペン摺動耐久性を満足するものの、タッチパネルとして使用する際のペン入力荷重(以下、ON荷重とする)が重いため、ペン入力ができたか否かの認識がしづらい。さらに、該技術を用いた場合、製造工程、特に、貼り合わせ工程において、異物が混入し製品の歩留まりが低下し、製造コストが高くなる。そのため、前記のタッチパネルでは、近年のタッチパネルの低コスト化という市場要求を満足させることができない。
【特許文献1】特開平2−66809号公報
【0006】
また、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、有機ケイ素化合物の加水分解により生成された下地層を設け、さらに、結晶質の透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献2〜7を参照)。
【特許文献2】特開昭60−131711号公報
【特許文献3】特開昭61−79647号公報
【特許文献4】特開昭61−183809号公報
【特許文献5】特開平2−194943号公報
【特許文献6】特開平2−276630号公報
【特許文献7】特開平8−64034号公報
【0007】
しかしながら、これらの透明導電性フィルムは非常に脆く、後述のタッチパネル額縁近傍でのペン摺動耐久性試験後には、透明導電性薄膜にクラックが発生するという問題があった。
【0008】
一方、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、硬化物層を介して非晶質の透明導電性薄膜を設けた透明導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献8を参照)。しかしながら、硬化物層と透明導電性薄膜の密着性を改善するために、硬化物層を酸やアルカリ水溶液で表面処理して作製された透明導電性フィルムを用いたタッチパネルは、タッチパネルの中央部におけるペン筆記特性は改善されるもの、額縁近傍でのペン摺動特性は不十分であった。
【特許文献8】特開平11−224539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑み、タッチパネルに用いた際の額縁近傍でのペン摺動耐久性(エッジ耐久性)に優れ、特にポリアセタール製のペンを使用し、タッチパネルの額縁近傍において、2.5Nの荷重で1万回の摺動試験後でも透明導電性薄膜が破壊されない、透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、及びこれを用いたタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネルとは、以下の通りである。
【0011】
すなわち、本発明における第1の発明は、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、硬化物層を介して金属酸化物を構成成分とする透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムであって、前記透明導電性薄膜が非晶質であり、かつ透明導電性薄膜中に含まれる炭素濃度が、1×1020〜1×1022(atoms/cm3)であることを特徴とする透明導電性フィルムである。
【0012】
第2の発明は、前記の金属酸化物がインジウム−スズ複合酸化物であり、インジウムに対するスズの含有量の比が15〜60質量%であることを特徴とする第1の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0013】
第3の発明は、前記透明導電性薄膜と硬化物層の間に、少なくとも2層以上の屈折率の異なる層を設けてなることを特徴とする第1または2の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0014】
第4の発明は、前記硬化物層が粒子を含有し、透明導電性薄膜面の中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmであることを特徴する第1〜3の発明のいずれかに記載の透明導電性フィルムである。
【0015】
第5の発明は、前記透明導電性薄膜面とは反対面に、ハードコート層が積層されていることを特徴とする第1〜4の発明のいずれかに記載の透明導電性フィルムである。
【0016】
第6の発明は、前記ハードコート層が防眩性を有することを特徴とする第5の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0017】
第7の発明は、前記ハードコート層が低反射処理を施したことを特徴とする第5または6の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0018】
第8の発明は、第1〜7の発明のいずれかに記載の透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、粘着剤を介して透明樹脂シートが貼り合わされていることを特徴とする透明導電性シートである。
【0019】
第9の発明は、前記透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、少なくとも一方のパネル板が第1〜8の発明のいずれかに記載の透明導電性フィルムもしくは透明導電性シートからなることを特徴とするタッチパネルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、硬化物層を介して金属酸化物を主たる構成成分とする透明導電性薄膜を積層した構成を有し、前記透明導電性薄膜として、非晶質で、かつ透明導電性薄膜中に含まれる炭素濃度が1×1020〜1×1022(atoms/cm3)である透明導電性薄膜を用いることにより、透明プラスチックフィルムからなる基材との密着力が向上し、曲げに対する機械強度を向上させることができる。そのため、タッチパネル額縁近傍においてペン摺動試験を行った際に、透明導電性薄膜に剥離およびクラックが発生しにくくなり、額縁近傍でのペン摺動耐久性を向上させることができるという利点がある。
【0021】
さらに、透明導電性薄膜のインジウムに対するスズの含有量の比を15〜60質量%とすることにより、透明導電性薄膜にペン摺動試験を行った際に、透明導電性薄膜の耐削れ性を向上させることができる。そのため、タッチパネルの中央部でのペン摺動耐久性を向上させることができる。また、透明導電性薄膜面の中心線平均粗さ(Ra)を0.1〜0.5μmとすることにより、タッチパネルとした際にペン摺動耐久性とニュートンリングの発生防止を両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材とは、有機高分子を溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどが挙げられる。
【0023】
これらの有機高分子のなかで、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これらの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合してもよいし、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0024】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材の厚みは、10μmを越え、300μm以下の範囲であることが好ましく、上限値は260μm、下限値は70μmであることが特に好ましい。プラスチックフィルムの厚みが10μm以下では機械的強度が不足し、特にタッチパネルに用いた際のペン入力に対する変形が大きくなる傾向があり、耐久性が不十分となりやすい。一方、厚みが300μmを越えると、タッチパネルに用いた際に、フィルムを変形させるためのペン荷重を大きくする必要がある。そのため、透明導電性薄膜にかかる荷重も必然と大きくなり、透明導電性薄膜の耐久性の点で好ましくない。
【0025】
本発明で用いる透明プラスチックフィルムからなる基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0026】
また、本発明では、基材と透明導電層との密着性を向上させ、ペン入力耐久性、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止を目的として、基材と透明導電性薄膜層の間に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層を設けてもよい。
【0027】
前記の硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に限定されなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とする硬化型樹脂が好ましい。
【0028】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。必要に応じて、これらの多官能性の樹脂に単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレンなどを加えて共重合させることができる。
【0029】
また、透明導電性薄膜と硬化物層との付着力を向上するために、硬化物層を表面処理することが有効である。具体的な方法としては、グローまたはコロナ放電を照射する放電処理法を用いて、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加させる方法、酸またはアルカリで処理する化学薬品処理法を用いて、アミノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させる方法、などが挙げられる。
【0030】
紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に限定なく使用することができ、このような光重合開始剤としては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜5質量部とすることが好ましい。
【0031】
塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティング法に応じた粘度などを考慮して適切に選択することができる。例えば、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤の合計量が占める割合は、通常は20〜80質量%である。また、この塗布液には、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤などを添加してもよい。
【0032】
本発明において、調製された塗布液は透明プラスチックフィルムからなる基材上にコーティングされる。コーティング法には特に限定されなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法などの従来から知られている方法を使用することができる。
【0033】
また、硬化物層の厚みは0.1〜15μmの範囲であることが好ましい。硬化物層の厚みの下限値は、0.5μmがより好ましく、特に好ましくは1μmである。また、硬化物層の厚みの上限値は、10μmがより好ましく、特に好ましくは8μmである。硬化物層の厚みが0.1μm未満の場合には、十分に架橋した構造が形成されにくくなるため、ペン入力耐久性や耐薬品性が低下しやすくなり、オリゴマーなどの低分子量による密着性の低下もおこりやすくなる。一方、硬化物層の厚みが15μmを超える場合には、生産性が低下する傾向がある。
【0034】
本発明において、透明導電性薄膜を構成する金属酸化物としては、透明性及び導電性をあわせもつ材料であれば特に限定されないが、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀または銀合金、銅または銅合金、金などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物が好適である。また、本発明で用いる透明導電性薄膜は、金属酸化物を主たる構成成分とするが、その他の成分として炭素が1×1020〜1×1022(atoms/cm3)の濃度で含まれている。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、金属酸化物や炭素以外の成分が5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の範囲で含まれていてもよい。
【0035】
透明導電性薄膜の層構造は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造でもよい。2層以上の積層構造を有する透明導電性薄膜の場合、各層を構成する前記の金属酸化物は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
透明導電性薄膜の膜厚は、4〜100nmの範囲が好ましく、特に好ましくは下限が5nmで、上限が50nmである。透明導電性薄膜の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる。一方、透明導電性薄膜の膜厚が100nmよりも厚い場合、透明性が低下しやすくなるとともに、タッチパネルの額縁近傍での曲げストレスに耐えることができる機械強度を有する膜を得ることが困難になる。
【0037】
本発明における透明導電性薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0038】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0039】
本発明において、透明導電性薄膜として非晶質からなる膜を用いる目的は、透明導電性薄膜の結晶、非晶界面や結晶界面などの局部に応力が集中することを防止し、ペン摺動試験における曲げストレスによる導電性膜のクラック発生を抑制するためである。
【0040】
非晶質な透明導電性薄膜を得るためには、次の2つの方法が有効である。
(1)成膜時の基板となるフィルムの温度を低くする方法
(2)インジウムに対するスズなどのドーパント量を増加させることにより、結晶構造を形成しにくくする方法
【0041】
まず、上記の(1)の方法について説明する。
透明導電性薄膜の成膜を、水分や有機物の不純物をできる限り取り除いた成膜雰囲気下では、蒸着粒子のエネルギーの低下が小さいため、基板(フィルム)表面でのマイグレーションが生じやすくなる。その結果、透明導電性薄膜中に結晶を含む、透明導電性フィルムが生じやすくなる。このような成膜雰囲気下で、非晶質な透明導電性薄膜を得るためには、基板となるフィルムの温度を低くするによって、蒸着粒子が堆積する際に基板(フィルム)表面でのマイグレーションを生じにくくする効果がある。
【0042】
例えば、スパッタリング法により巻き取り式装置を用いて、透明導電性薄膜をフィルム上に成膜する場合には、フィルム背面(透明導電性薄膜形成面とは反対面)に接触するロール温度を低くすることで、基板となるフィルムの温度を低くすることが可能である。
【0043】
基板となる透明プラスチックフィルムに透明導電性薄膜を成膜する際の温度は、−20〜30℃とすることが好ましい。成膜時の温度が30℃を越えると、透明導電性薄膜中に結晶が形成しやすくなる。また、−20℃未満の温度では透明プラスチックフィルムが脆くなり好ましくない。
【0044】
ロール温度を制御するには、ロール内に水路を設けて、この水路中に温度調整された熱媒を流せばよい。この熱媒としては、特に限定はないが、水やオイル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの単体およびこれらの混合物が好適である。
【0045】
さらに、前記のような成膜雰囲気中の水分や有機物をできる限り取り除いた雰囲気で、非晶質な透明導電性薄膜を得るためには、インジウムに対してスズなどのドーパント量を増加させることにより、結晶構造を形成しにくくすることも有効な方法である。具体的なドーパントとしてはSn、Si、Ti、W、Zr、Hf、Znなどが挙げられる。これらのドーパントの中でも導電性および膜硬度向上という観点から、スズをドーパントすることが好ましい。
【0046】
インジウムに対するスズのドーパント量は15〜60質量%が好ましい。15質量%未満であれば非晶質な状態での膜硬度の向上が不十分であり、このような透明導電性フィルムを用いたタッチパネルではタッチパネル中央部でのペン摺動耐久性が不十分となり、ペン摺動試験後に透明導電性薄膜が削れてしまう。また、60質量%を超えると導電性が不十分となり、タッチパネルとして使用できる導電性を維持しようとすると透明導電性薄膜の膜厚が厚くせざるを得ない。そのため、透明導電性フィルムの透明性が低下しやすくなる。このような透明性に劣る透明導電性フィルムを用いてタッチパネルを製造すると、タッチパネルの視認性が低下する。
【0047】
また、本発明において、透明導電性薄膜中の炭素濃度を、1×1020〜1×1022(atoms/cm3)とする目的は、透明導電性薄膜とフィルムからなる基材との密着力を向上させ、タッチパネルの額縁近傍での曲げストレスに対して剥離およびクラックの発生しにくい透明導電性薄膜を得るためである。透明導電性薄膜中の炭素濃度が1×1020(atoms/cm3)未満であると、透明導電性薄膜と基材との密着力の改善効果が不十分となる。一方、1×1022(atoms/cm3)を超えるような透明導電性薄膜を得ることは技術的に困難である。
【0048】
透明導電性薄膜中の炭素濃度が1×1020(atoms/cm3)以上の透明導電性薄膜を得るためには、透明導電性薄膜を成膜する際に成膜雰囲気中の水分をできるだけ取り除いた状態で炭素を含有するガス成分を導入する方法が重要である。
【0049】
炭素を含有するガス成分としては、一酸化炭素、二酸化炭素、四塩化炭素、メタンなどが挙げられる。これらの中でも、一酸化炭素、二酸化炭素などの炭素と酸素のみを含有するガスが好ましい。
【0050】
例えば、スパッタリング法にて成膜する場合には、スパッタリングを行う前に真空チェンバー内の圧力を0.0001Pa以下の真空度まで排気した後に、Arなどの不活性ガスと酸素および二酸化炭素などの炭素を含有する反応性ガスを真空チェンバーに導入し、0.01〜10Paの圧力範囲において放電を発生させ、スパッタリングを行うのが好ましい。また、蒸着法、CVD法などの他の方法においても同様である。
【0051】
成膜雰囲気中に水分が残留していると、透明導電性薄膜中に水素が取り込まれ、透明導電性薄膜のネットワーク(例えば、In−O−)の成長が停止する場合がある。その場合、透明導電性薄膜中に炭素が取り込まれにくくなり、特定の炭素濃度を有する透明導電性薄膜が得られにくくなる。その結果、透明導電性薄膜とフィルムからなる基材との密着力が不十分となり、このような透明導電性フィルムを用いたタッチパネルは透明導電性フィルムの曲げストレスによる機械強度が低下し、額縁近傍でのペン摺動耐久性は低下しやすくなる。
【0052】
このような透明導電性薄膜中の炭素濃度の低い透明導電性薄膜が積層された透明導電性フィルムは、透明導電性薄膜と基材との密着力が不十分となる。このような透明導電性フィルムをタッチパネルに用いると、額縁近傍において、2.5Nの荷重で1万回の直線摺動試験を行った後に、透明導電性薄膜に剥離またはクラックが発生しやすくなる。
【0053】
また、成膜雰囲気中の水分を減少させるためには、スパッタリング等を行う真空チェンバーの中でフィルムを真空暴露することで水分を減少させることが有効な方法である。真空暴露の際に、フィルムに接触するロール温度を高くする方法、あるいは赤外線ヒーターによるフィルム加熱を併用する方法を用いることで、成膜雰囲気中の水分や有機物などの不純物を、より減少させることが可能となる。このときの加熱処理温度は100〜200℃の範囲が好ましい。100℃未満では水分や有機物などの不純物を減少させる効果が不十分となりやすく、200℃を越える温度では、フィルムの平面性を保つのが難しくなる傾向にある。
【0054】
さらに、成膜雰囲気中の水分を除去するために、成膜室内にクライオコイルを設けることも有効な方法である。
【0055】
このように成膜雰囲気中の水分を可能な限り除去し、反応性ガスとして炭素を含有する気体を導入することにより、非晶質でかつ、透明導電性薄膜中の炭素濃度が高い透明導電性フィルムが得られる。そのため、この透明導電性薄膜をタッチパネルに用いると、ポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)を用いて、額縁近傍で2.5Nの荷重で1万回の直線摺動試験を行った後でも、透明導電性薄膜の劣化が見られない。
【0056】
さらに、透明導電性薄膜の導電率が悪化しない範囲で、透明導電性薄膜の厚み方向の炭素濃度を、フィルム基板側から透明導電性薄膜内部に向かうにつれて低くすることが好ましい。さらに好ましくは、フィルム基板から5nm以内にのみ炭素原子を局在化させる。このように透明導電性薄膜の厚み方向の炭素濃度を局在化させることによって、透明導電性薄膜と基材の密着性を向上し、かつ炭素原子を含有しない場合と同程度の導電率を有する透明導電性薄膜を得ることができる。炭素濃度の制御は、成膜時に反応性ガスとして供給する炭素を含有する気体の流量を調整することにより可能である。
【0057】
また、透明導電性フィルムの透過率、カラー、反射率を変える目的で、透明導電性薄膜と硬化物層の間に屈折率の異なる層を少なくとも2層以上設けることが好ましい。屈折率の異なる層として、例えば2層を設ける場合には、透明プラスチックフィルム側から屈折率が1.60以上2.50以下の層、屈折率が1.30以上1.60以下の層を積層することが好ましい。
【0058】
屈折率が1.60以上2.50以下の層は、無機物、有機物と無機物の混合物からなる層である。無機物としては、In、TiO、Nbなどの透明金属酸化物が一般的に用いられる。
【0059】
有機物と無機物の混合物からなる層としては、電離放射線による硬化樹脂と金属酸化物を含み、屈折率が1.60〜1.80の範囲にある(以下、この層を高屈折層と称する)。前記の層の屈折率が1.60未満の場合、反射防止性能に優れる透明導電性フィルムが得られにくくなる。また、前記の層の屈折率が1.80を超える場合には、層を形成することが難しくなる。好ましい屈折率は、下限が1.70であり、上限が1.80である。
【0060】
前記金属酸化物としては、屈折率が1.60〜1.80の範囲にある層が得られるものであればよく、特に限定されないが、透明導電性フィルムの透過率をさらに、向上させるために、その上に設けられる層との密着性に優れることが好ましい。このような点から、前記金属酸化物としては、上記条件を満たすものであればよく、特に限定はないが、例えば低屈折層がシロキサン系ポリマーの場合、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化錫などを好ましく挙げることができる。これらの金属酸化物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
屈折率が1.30以上1.60以下の層も、有機物、無機物、または有機物と無機物の混合物からなる。無機物としては一般にSiO、Alなどの透明金属酸化物が用いられる。
【0062】
有機物としては、透明導電性薄膜との密着性という観点から、シロキサン系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、アクリルのうち少なくとも1種類を含むものであって、屈折率が1.30〜1.55の範囲にあるものが好ましい。前記の屈折率が範囲外となる場合には、色表示性に優れる透明導電性フィルムが得られにくくなる。
【0063】
また、タッチパネルとした際にニュートンリングの発生を防止する目的で前記硬化物層に中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmの範囲になるように粒子を含有させることが好ましい。Raが0.1未満の場合には、ニュートンリングの発生を防止することが難しくなる。一方、Raが0.5μmを超える場合には、透明導電性薄膜表面が粗くなりすぎて、ペン摺動耐久性が悪くなる傾向がある。
【0064】
前記硬化物層に含有させる粒子としては特に限定はないが、無機粒子(例えば、シリカ、炭酸カルシウムなど)、耐熱性有機粒子(例えば、シリコン粒子、PTFE粒子、ポリイミド粒子など)、架橋高分子粒子(架橋PS粒子、架橋アクリル系粒子など)が例示される。これらの粒子の平均粒径(電子顕微鏡法による)は、0.5〜5μmであることが好ましい。また、硬化物層中に含有させる粒子の含有量は0.01〜10質量%とすることが好ましい。
【0065】
また、タッチパネルとした際の最外層(ペン入力面)の耐擦傷性を、さらに改善させるために、透明プラスチックフィルムの透明導電性薄膜を形成させた表面とは反対面(タッチパネルとした際の最外層のペン入力面)に、ハードコート層を設けることが好ましい。前記ハードコート層の硬度は、鉛筆硬度で2H以上であることが好ましい。2H未満の硬度では、透明導電性フィルムのハードコート層としては耐擦傷性の点で不十分である。
【0066】
前記のハードコート層の厚みは0.5〜10μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満では、耐擦傷性が不十分となりやすく、10μmよりも厚い場合には生産性の観点から好ましくない。
【0067】
前記のハードコート層に用いられる硬化型樹脂組成物は、アクリレート系の官能基を有する樹脂が好ましく、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能性化合物の(メタ)アクリート等のオリゴマーまたはプレポリマーなどが挙げられる。
【0068】
また、反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0069】
本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合することが好ましい。
【0070】
また、前記ハードコート層に用いられる硬化型樹脂組成物としては、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物が特に好適である。ポリエステルアクリレートは塗膜が非常に硬くてハードコート層として適している。しかしながら、ポリエステルアクリレート単独の塗膜では耐衝撃性が低く脆くなりやすいという問題がある。そこで、塗膜に耐衝撃性及び柔軟性を与えるために、ポリウレタンアクリレートを併用することが好ましい。すなわち、ポリエステルアクリレートにポリウレタンアクリレートを併用することで、塗膜はハードコート層としての硬度を維持しながら、耐衝撃性及び柔軟性という機能を具備することができる。
【0071】
両者の配合割合は、ポリエステルアクリレート樹脂100質量部に対し、ポリウレタンアクリレート樹脂を30質量部以下とするのが好ましい。ポリウレタンアクリレート樹脂の配合割合が30質量部を超えると、塗膜が柔らかくなりすぎて耐衝撃性が不十分となる傾向がある。
【0072】
前記の硬化型樹脂組成物の硬化方法は、通常の硬化方法、すなわち、加熱、電子線または紫外線の照射によって硬化する方法を用いることができる。例えば、電子線硬化の場合は、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用される。また、紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハイライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0073】
さらに、電離放射線硬化の場合には、前記の硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤や光増感剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。また、光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が好ましい。
【0074】
ハードコート層に防眩性を付与するためには、硬化型樹脂中にCaCOやSiOなどの無機粒子を分散させる方法、あるいはハードコート層の表面に凹凸形状を形成させる方法が有効である。例えば、凹凸を形成するためには、硬化型樹脂組成物を含む塗液を塗工後、表面に凸形状を有する賦形フィルムをラミネートし、この賦形フィルム上から紫外線を照射し硬化型樹脂を硬化させた後に、賦形フィルムのみを剥離することにより得られる。
【0075】
前記の賦型フィルムには、離型性を有するポリエチレンテレフタレート(以後、PETと略す)等の基材フィルム上に所望の凸形状を設けたもの、あるいは、PET等の基材フィルム上に繊細な凸層を形成したもの等を用いることができる。その凸層の形成は、例えば、無機粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用いて基材フィルム上に塗工することにより得ることができる。
【0076】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートで架橋されたアクリルポリオールを用い、無機粒子としては、CaCOやSiOなどを用いることができる。また、この他にPET製造時にSiO等の無機粒子を練込んだマットタイプのPETも用いることができる。
【0077】
この賦型フィルムを紫外線硬化型樹脂の塗膜にラミネートした後紫外線を照射して塗膜を硬化する場合、賦型フィルムがPETを基材としたフィルムの場合、該フィルムに紫外線の短波長側が吸収され、紫外線硬化型樹脂の硬化が不足するという欠点がある。したがって、紫外線硬化型樹脂の塗膜にラミネートする賦型フィルムの全光線透過率が20%以上のものを使用することが必要である。
【0078】
また、タッチパネルに用いた際に可視光線の透過率をさらに向上させるために、ハードコート層上に低反射処理を施してもよい。この低反射処理は、ハードコート層の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。
【0079】
単層構造の場合、ハードコート層よりも小さな屈折率を有する材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層構造とする場合は、ハードコート層と隣接する層は、ハードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、この上の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料を選ぶのがよい。このような低反射処理を構成する材料としては、有機材料でも無機材料でも上記の屈折率の関係を満足すれば特に限定されない。例えば、CaF、MgF、NaAlF、SiO、ThF、ZrO、Nd、SnO、TiO、CeO、ZnS、In、などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0080】
この低反射処理は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などのドライコーティングプロセスでも、グラビア方式、リバース方式、ダイ方式などのウェットコーティングプロセスでもよい。
【0081】
さらに、この低反射処理層の積層に先立って、前処理として、コロナ放電処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、プライマ処理、易接着処理などの公知の表面処理をハードコート層に施してもよい。
【0082】
本発明の透明導電性フィルムを用い、透明導電性薄膜を形成していない面と粘着剤を介して透明樹脂シートと積層することで、タッチパネルの固定電極に用いる透明導電性積層樹脂シートが得られる。すなわち、タッチパネルの固定電極の基板をガラスから透明樹脂シートに変更することで、軽量かつ割れにくいタッチパネルを作製することができる。
【0083】
前記の粘着剤は、透明性を有するものであれば特に限定はないが、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着剤の厚さは特に限定はないが、通常1〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満の厚さの場合、実用上問題のない接着性を得るのが難しく、100μmを越える厚さでは生産性の観点から好ましくない。
【0084】
この粘着剤を介して貼合わせる透明樹脂シートは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使用するものであり、厚さは0.05〜5mmの範囲が好ましい。前記透明樹脂シートの厚みが0.05mm未満では、機械的強度がガラスに比べ不足する。一方、厚さが5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用いるには不適当である。また、この透明樹脂シートの材質は、前記の透明プラスチックフィルムと同様のものを使用することができる。
【0085】
図1に、本発明の透明導電性フィルムを用いた、タッチパネルの例を示す。これは、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィルムを用いたものである。
【0086】
このタッチパネルは、ペンにより文字を入力した時に、ペンからの押圧により、対向した透明導電性薄膜同士が接触し、電気的にONの状態になり、タッチパネル上でのペンの位置を検出することができる。このペン位置を連続的かつ正確に検出することで、ペンの軌跡から文字を認識することができる。この際、ペン接触側の可動電極が本発明の透明導電性フィルムを用いると、ペン摺動耐久性に優れるため、長期にわたって安定なタッチパネルとすることができる。
【0087】
なお、本発明の透明導電性フィルム及び透明導電性シートを使用して得た、ガラス基板を用いないプラスチック製のタッチパネルの断面図を図2に示した。このプラスチック製のタッチパネルは、ガラスを用いていないため、非常に軽量であり、かつ、衝撃により割れたりすることがない。
【実施例】
【0088】
以下に実施例により本発明をさらに、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、透明導電性フィルムの性能および透明導電性薄膜の結晶性、タッチパネルのペン摺動耐久性試験は、下記の方法により測定した。
【0089】
(1)光線透過率及びヘイズ
JIS−K7105に準拠し、日本電色工業(株)製NDH−1001DPを用いて、光線透過率及びヘイズを測定した。
【0090】
(2)表面抵抗率
JIS−K7194に準拠し、4端子法にて測定した。測定機は、三菱油化(株)製 Lotest AMCP−T400を用いた。
【0091】
(3)カラー(a値、b値)
JIS−K7105に準拠し、色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用いて、標準の光C/2でカラーa、b値を測定した。
【0092】
(4)透明導電性薄膜の結晶性
透明導電性フィルム試料片を300μm×300μmの正方形に切り出し、ウルトラミクロトームの試料ホルダに、導電性薄膜面を手前にして固定した。次いで、1μm×1μm以上の目的観察部位を持つ切片を得られる程度にナイフをフィルム面に対して極めて鋭角に設置し、設定厚み70nmで切削した。
【0093】
この切片の導電性薄膜表面側でかつ薄膜の著しい損傷がない部位において、1μm×1μmの観察視野を確保し、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率5万倍にて写真撮影を行った。視野内において電子密度の高い領域として観察される直径5nm以上の粒子を結晶粒子としてカウントし、10視野における平均粒子数をもって金属酸化物からなる結晶粒子の個数(個/μm)とした。
【0094】
(5)額縁近傍でのペン摺動耐久性試験
タッチパネルの貼合部の内側から1.5mm離れた位置をポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、1万回(往復5000回)の直線摺動試験をタッチパネルに行った。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とした。さらに、タッチパネルの上下基板のギャップは150μmであった。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察した。また、摺動部位近辺を顕微鏡にて観察し、クラックの発生がないか観察した。さらに、ペン荷重1.0Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定した。
【0095】
(6)ペン摺動耐久性試験
ポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、10万回(往復5万回)の直線摺動試験をタッチパネルに行った。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は60mm/秒とした。この摺動耐久性試験後に、まず、摺動部が白化しているかを目視によって観察した。さらに、ペン荷重0.5Nで上記の摺動部にかかるように20mmφの記号○印を筆記し、タッチパネルがこれを正確に読みとれるかを評価した。さらに、ペン荷重0.5Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定した。
【0096】
(7)付着力測定
40μm厚のアイオノマーフィルムを、ポリエステル系接着剤を用いて、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにラミネートし、付着力測定用積層体を作製した。この付着力測定用積層体のアイオノマー面と透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面を対向させ、130℃でヒートシールした。この積層体を付着力測定用積層体と透明導電性フィルムとを180度剥離法で剥離し、この剥離力を付着力とした。この時の剥離速度は1000mm/分とした。
【0097】
(8)透明導電性薄膜中の炭素濃度測定
導電性薄膜表面側において、140μm×224μmの検出エリアを確保し、一次加速電圧1kV、Cs+1次イオンを用いてSIMS(PHI社製、6650)で評価した。膜中の炭素の含有量は既知の炭素濃度をイオン注入した標準試料との相対感度係数を求めて導きだした。さらに、透明導電性薄膜中の水素濃度についても同時に測定していき、マトリック効果(層構成材料が変わることによる水素濃度の減少)のみられる深さを透明導電性薄膜と基材の界面として定義し、その界面から2nm透明導電性薄膜面側の深さでの炭素濃度を透明導電性薄膜中の炭素濃度とした。
【0098】
(9)表面粗さ
ガラス板上にサンプルを密着させ、JIS B0601に準拠し、二次元表面粗さ測定機(東京精密株式会社製、サーフコム300B)を用いて、カットオフ0.8、測定長4mm、触針の荷重4mN、触針速度0.3mm/分の条件で中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0099】
実施例1
光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)100質量部に、溶剤としてトルエン/MEK(80/20:質量比)の混合溶媒を、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した。
【0100】
両面に易接着層を有する二軸配向透明PETフィルム(東洋紡績社製、A4340、厚み188μm)に、塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液を、マイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm)し、塗膜を硬化させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分の低減を行った。
【0101】
また、この硬化物層を積層した二軸配向透明PETフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で巻き返し処理を行った。このときの圧力は0.002Paであり、暴露時間は20分とした。また、センターロールの温度は40℃とした。
【0102】
次に、この硬化物層上にインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0001Paとし、ターゲットとして酸化スズを36質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山社製、密度6.9g/cm)に用いて、2W/cmのDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、O2ガスを20sccm、COガスを20sccmの流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製RPG−100を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は10℃として、スパッタリングを行った。
【0103】
また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計およびDC電源にフィートバックした。以上のようにして、厚さ22nmのインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を堆積させた。
【0104】
<タッチパネルの作製>
この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム−スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜(日本曹達社製、S500)を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。
【0105】
実施例2
実施例1において成膜室内にクライオコイル(伯東社製、ポリコールド)を設け、CO2ガスの流量を40sccmとした以外は実施例1と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜を成膜した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0106】
実施例3〜4
酸化スズ含有率が20質量%(実施例2)、60質量%(実施例3)であるインジウム−スズ複合酸化物ターゲットを用い、酸素導入量を比抵抗値が最小となる量とした以外は実施例1と同様に成膜した。それぞれのターゲットを用いた際のインジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化スズ含有率は、それぞれ19質量%(実施例2)、59質量%(実施例3)であった。
【0107】
実施例5
実施例1において、二軸配向透明PETフィルムからなる基材/硬化物層からなる積層体の、硬化物層面とは反対面にハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥させた。この後、160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、紫外線硬化型樹脂を硬化させ、ハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0108】
このハードコート層/二軸配向透明PETフィルムからなる基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層上に、実施例1と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜を成膜した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0109】
実施例6
実施例1と同様にして、二軸配向透明PETフィルムからなる基材/硬化物層からなる積層体を作製した。この積層体の硬化物層面とは反対面に、ハードコート層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業社製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥した。その後、表面に微細な凸形状が形成されたPETフィルムのマット賦形フィルム(東レ社製、X)をマット面が紫外線硬化型樹脂と接するようにラミネートした。このマット賦形フィルムの表面形状は、平均表面粗さ0.40μm、山の平均間隔160μm、最大表面粗さ25μmである。
【0110】
このようにラミネートしたフィルムを160Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過させ、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、マット賦形フィルムを剥離して、表面に凹形状加工が施され防眩効果を有するハードコート層を形成させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理をおこない、揮発成分の低減を行った。
【0111】
この防眩性ハードコート層/二軸配向透明PETフィルムからなる基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層上に、実施例1と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜を透明導電性薄膜として成膜した。さらに、この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0112】
実施例7
実施例5と同様にして防眩性ハードコート層/二軸配向透明PETフィルムからなる基材/硬化物層/透明導電性薄膜層からなる積層体を作製し、次いで、この防眩性ハードコート層上に順次TiO薄膜層(屈折率:2.30、膜厚15nm)、SiO薄膜層(屈折率:1.46、膜厚29nm)、TiO薄膜層(屈折率:2.30、膜厚109nm)、SiO薄膜層(屈折率:1.46、膜厚87nm)を積層することで反射防止処理層を形成した。TiO薄膜層を形成するには、チタンをターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Paとし、ガスとしてArガスを500sccm、Oガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には表面温度が0℃の冷却ロールを設けて、透明プラスチックフィルムを冷却した。このときのターゲットには7.8W/cmの電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。
【0113】
SiO薄膜を形成するには、シリコンをターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング法で、真空度を0.27Pa、ガスとしてArガスを500sccm、Oガスを80sccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、透明プラスチックフィルムを冷却した。このときのターゲットには7.8W/cmの電力を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であった。さらに、この透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0114】
実施例8
実施例1と同様にして作製した透明導電性フィルムを、アクリル系粘着剤を介して、厚みが1.0mmのポリカーボネート製のシートに貼り付けて、透明導電性積層シートを作製した。この透明導電性積層シートを固定電極として用い、実施例6の透明導電性フィル
【0115】
実施例9
TiO2 含有アクリル系ハードコート剤[JSR(株)製、商品名「デソライトZ7252D」、固形分濃度45質量%、TiO2 :アクリル樹脂=75:25(質量比)]を、固形分濃度が3質量%になるように、メチルイソブチルケトンとイソプロピルアルコールとの質量比1:1の混合溶媒で希釈して、コート剤を調製した。
実施例4と同様な方法で作製したハードコート/二軸延伸PETフィルム/硬化物層の硬化物層上に、このコート剤を、完全硬化後の厚さが70nmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥したのち、これに紫外線を光量80mJ/cmで照射して、ハーフキュア状態に硬化させ、高屈折層を形成した。
【0116】
さらに、フッ素含有シロキサン系コーティング剤(信越化学工業(株)製、商品名「X−12−2138H」、固形分濃度:3質量%)に光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF−01J)を全固形分濃度が6質量%になるように添加した。この低屈折率層形成用塗布液を、加熱処理後の厚さが20nmになるように、上記の高屈折率層上に塗布し、80℃で1分間乾燥を行った。次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042−5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm)し、さらに、150℃で1分間加熱処理して、屈折率1.48の低屈折率層を形成した。次いで、実施例1と同様の方法で透明導電性薄膜層を形成し、透明導電性フィルムを得た。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0117】
実施例10
高屈折層、低屈折層の膜厚をそれぞれ90nm、45nmとする以外は実施例8と同様な方法で透明導電性フィルムを得た。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0118】
実施例11
実施例1の硬化物層を形成する際に平均粒径が4.5μmのトスパール145(東芝シリコーン社製)をアクリル系樹脂100質量部に対して1質量部となるように添加し、分散させ、塗膜の厚みが4μmとなるようにマイヤーバーで塗膜を形成した。このように形成した硬化物層上実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性薄膜面の中心線平均粗さ(Ra)は0.24μmであった。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。なお、3波長の蛍光灯下でフィルムをガラスに押し付けながらニュートンリングの発生の有無を確認したが、ニュートンリングの発生は全く見られなかった。
【0119】
比較例1
180℃で1分間の加熱処理及び10分間の真空暴露処理による揮発成分低減プロセスを省略した以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0120】
比較例2
巻き返し時間を5分とする以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを作製した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0121】
比較例3
実施例1と同様にして得た硬化物層上にインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0001Paとし、ターゲットとして酸化スズを10質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山社製、密度7.1g/cm)に用いて、2W/cmのDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、Oガスを10sccmの流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製RPG−100を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は50℃として、スパッタリングを行った。このようにして得た透明導電性フィルムを、さらにオーブンで200℃に加熱し、5分間保持した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを製作した。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
表1、2の結果より、本願発明の範囲を満足する実施例1〜11記載の透明導電性フィルムまた、は透明導電性シートを用いたタッチパネルは、額縁近傍においてポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ1万回の摺動試験を行った後でも剥離やクラックの発生もなく、ON抵抗にも異常がなかった。
【0125】
一方、フィルム中の水分を十分に除去しなかった比較例1のおよび2の導電性フィルムは透明導電性薄膜中の炭素濃度が低く、これらの導電性フィルムを用いたタッチパネルは額縁近傍でポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ1万回の摺動試験を行った後にON抵抗に異常が生じた。さらに、顕微鏡でペン摺動部分を評価すると、透明導電性薄膜の剥離やクラックがみられた。
また、透明導電性薄膜が結晶質な比較例3の導電性フィルムはタッチパネルの額縁近傍でのペン摺動試験後に透明導電性薄膜にクラックが発生しており、ON抵抗に異常が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の透明導電性フィルムまたは透明導電性シートは、ペン入力用タッチパネルに用いた際に、タッチパネルの額縁近傍でも剥離、クラック等を生じることがなく、ペン摺動耐久性に優れており、かつ位置検出精度や表示品位にも優れているため、タッチパネルの狭額縁化に対応でき、携帯情報端末やデジタルビデオカメラ、デジタルカメラなどに用いられる、記録媒体の小型化と表示ディスプレイの大画面化が強く要求されるタッチパネルとして特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の透明導電性フィルムを用いた、タッチパネルの説明図である。
【図2】本発明の透明導電性フィルムを用いた、ガラス基板を使用しないタッチパネルの説明図である。
【符号の説明】
【0128】
10:透明導電性フィルム
11:透明プラスチックフィルム(基材)
12:硬化物層
13:透明導電性薄膜
14:ハードコート層
20:ビーズ
30:ガラス板
40:透明導電性シート
41:粘着剤
42:透明樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムからなる基材上に、硬化物層を介して金属酸化物を構成成分とする透明導電性薄膜を積層した透明導電性フィルムであって、前記透明導電性薄膜が非晶質で、かつ透明導電性薄膜中に含まれる炭素濃度が、1×1020〜1×1022(atoms/cm3)であることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記の金属酸化物がインジウム−スズ複合酸化物であり、インジウムに対するスズの含有量の比が15〜60質量%であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記透明導電性薄膜と硬化物層の間に、少なくとも2層以上の屈折率の異なる層を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記硬化物層が粒子を含有し、透明導電性薄膜面の中心線平均粗さ(Ra)が0.1〜0.5μmであることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記透明導電性薄膜面とは反対面に、ハードコート層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層が防眩性を有することを特徴とする請求項5記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層が低反射処理を施したことを特徴とする請求項5または6記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、粘着剤を介して透明樹脂シートが貼り合わされていることを特徴とする透明導電性シート。
【請求項9】
前記透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、少なくとも一方のパネル板が請求項1〜8のいずれかに記載の透明導電性フィルムもしくは透明導電性シートからなることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−95660(P2007−95660A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152111(P2006−152111)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】