説明

透明導電性積層フィルム、これの製造方法及びこれを含むタッチパネル

【課題】光透過率が高く、透過着色が少ない透明導電性積層フィルム、これの製造方法及びこれを含むタッチパネルを提供する。
【解決手段】光学的透明基材10上に屈折率と厚さを調節した20および30の2層構造を含む積層体100をプラズマ−強化化学気相蒸着法を含む工程を通じて、緻密でかつ安定した構造の透明導電性積層フィルム100を提供することができ、可視光透過率が高く、透過着色が少なく、高温・高湿環境で表面抵抗の変化率が少なく、高い薄膜耐久性を有する透明導電性積層フィルムを提供することができ、大面積生産性を高めて製造費用を低くすることができる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、互いに異なる屈折率を有する積層体を含む透明導電性積層フィルム、これの製造方法及びこれの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、ディスプレイ装置の表面に取り付けられてユーザの指、タッチペンなどの物理的接触を電気的信号に変換して出力する装置であり、液晶表示装置(liquid crystal display)、プラズマディスプレイパネル(plasma display panel)、EL(electro−luminescence) 素子などに応用されている。
【0003】
このようなタッチパネルは、情報ディスプレイ機器の特殊な入力装置であり、具現方式によって抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、赤外線方式、弾性波方式などに区分される。
【0004】
最近、使用量と適用範囲が拡大されているモバイル機器やナビゲーションのような小型携帯用機器には、抵抗膜方式及びデジタル静電容量方式のタッチパネルが広く適用されている。特に、抵抗膜方式は、動作具現が容易であり、製造費用が少なく、一般的なタッチスクリーン式携帯電話とナビゲーション機器に多く使用されているが、既存のタッチパネルのタッチ方法であるタブ(Tab)及びドラッグ(Drag)しかできない単純動作から逸脱して多様な方式のマルチタッチ具現が容易な静電容量方式のタッチパネルが、最近スマートフォン及びプレミアム級モバイル機器のディスプレイに搭載されることが拡大されている。
【0005】
静電容量方式のタッチパネルは、タッチパターン層を含んでおり、前記タッチパターン層は、外部の物理的接触に対応して電気的信号を発生させる役割をするが、静電容量方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムの場合、可視光透過率が高く、透過着色が低くて、透明電極パターンのエッチング工程後に生成される透明電極パターンの視認性が良好でなければならない。特に、静電容量方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムは、ディスプレイされる画面の色相を歪みなく表現するために透過着色が低くなければならず、タッチパネル製品の構造上、透明電極パターンのエッチング工程後に生成されたパターンの視認性が良くなければならない。低い透過着色性と高いパターンの視認性を得るためには、パターンが透過されて目に見えることを最小化しなければならず、このために反射される光の量を減らして透過量を増大させる積層構造が必要である。しかし、既存のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムは、一般的に電気抵抗膜方式に適合した可視光透過率を有している。これを克服するための多層構造のフィルムの場合、透過率を向上させ、高温、高湿(150℃、90%湿度)及び熱衝撃に対する耐久性及び抵抗安定性を確保した場合もあるが、多層膜の積層による生産時間の増加によって製造費用が多くかかるという問題点がある。
【0006】
前記問題を解決するために、従来は、透明基材の屈折率よりは大きく、透明導電層よりは小さい屈折率を有する中間層を形成して、透過光の色差計b*値を減らして透過色が黄色及び茶色に変わる問題は解決したが(大韓民国公開特許10−2005−0004165号)、静電容量方式に用いられる高透過率を有した導電性積層フィルムを製作することができなかった。
【0007】
また、高透過率を有する導電性積層フィルムを製作するためのまた他の従来技術は、高屈折率と低屈折率の酸化物膜を形成する導電性積層フィルムの中間層を形成する過程で、乾式プロセスとして、物理的蒸気蒸着法(PVD;physical vapor deposition)のうち、スパッタリング(Sputtering)で成膜する方法を提案して透過率を向上させて耐久性を向上させた。しかし、高屈折率と低屈折率を有した2層の金属及び無機酸化物をスパッタリング方法で形成して長時間の成膜時間が必要であり、ロールツーロール(roll−to−roll)方式の連続生産工程では、製造費用が多く必要な問題点も解決できずにいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、光透過率が高く、透過着色性が低い透明導電性積層フィルムを提供し、高温・高湿の劣っている環境でも表面抵抗変化率が少なく耐久性に優れており、透明電極パターンの視認性を高めながらも製造費用を低くすることができる透明導電性積層フィルム及びこれの製造方法を提供し、前記透明導電性積層フィルムを含むタッチパネルを提供しようとする。
【0009】
しかし、本願が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限らず、言及されなかったまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、本願の第1側面は、光学的透明基材;プラズマ−強化化学気相蒸着法(PECVD)を利用して前記光学的透明基材上に10nm〜300nmの厚さに積層され、無機酸化物を含み、屈折率1.3〜2.5を有する第1積層体と、プラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して前記第1積層体上に10nm〜300nmの厚さに積層され、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体と、前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに積層された透明導電層とを含む透明導電性積層フィルムを提供する。
【0011】
一具現例において、前記透明導電層の厚さが50nm以上である場合、前記第2積層体の屈折率は、前記第1積層体の屈折率より大きい屈折率を有するが、これに限らない。
【0012】
一具現例において、前記第1積層体及び第2積層体の総厚さは、50〜350nmであるが、これに限らない。
【0013】
一具現例において、前記第2積層体の色差計のL、a*、b*値で透過色座標値が−7<b*<2であるが、これに限らない。
【0014】
一具現例において、前記透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる群から選択される1種以上を含むが、これに限らない。
【0015】
一具現例において、前記光学的透明基材は、プラスチックフィルムを含み、前記光学的透明基材の厚さが25um〜 350umであるが、これに限らない。
【0016】
一具現例において、前記光学的透明基材の一面または両面に透明ハードコート膜を含むが、これに限らない。
【0017】
本願の第2側面は、光学的透明基材上に、無機酸化物を含み、屈折率が1.3〜2.5である第1積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、前記第1積層体上に、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに透明導電層を積層することを含む透明導電性積層フィルムの製造方法を提供する。
【0018】
一具現例において、前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、ロールツーロール方式のプラズマ−強化化学気相蒸着法を含むが、これに限らない。
【0019】
一具現例において、前記透明導電層を積層することは、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学蒸着法及びプレーティング法からなる群から選択される1つ以上の方法及びロールツーロール工程を利用して前記透明導電層を連続形成することを含むが、これに限らない。
【0020】
一具現例において、前記透明導電層を積層した後に120℃〜150℃で熱処理して前記透明導電層を結晶化させることをさらに含む透明導電性積層フィルムの製造方法であるが、これに限らない。
【0021】
本願の第3側面は、前記透明導電性積層フィルムを含むタッチパネルを提供するが、これに限らない。
【発明の効果】
【0022】
本願によると、光学的透明基材上に屈折率と厚さを調節した2層構造を含む積層体をプラズマ−強化化学気相蒸着法を含む工程を通じて、緻密でかつ安定した構造の透明導電性積層フィルムを提供することができ、可視光透過率が高く、透過着色が少なく、高温・高湿環境で表面抵抗の変化率が少なく、高い薄膜耐久性を有する透明導電性積層フィルムを提供することができる。
【0023】
一方、屈折率と厚さを調節した2層構造を含む積層体の製造にロールツーロールタイプのプラズマ−強化化学気相蒸着法を含む工程を適用する場合、他のPVD工程(スパッタリング、電子ビーム蒸着など)に比べて成膜速度を5倍〜7倍以上高めることができるため、大面積生産性を高くし、製造費用を低くすることができる効果がある。
【0024】
さらに、前記の高い光透過率、透過着色性の底さ、及び高温・高湿環境における表面抵抗の変化率が低い透明導電性積層フィルムを含むタッチパネルにおいて、静電容量方式のタッチパネル、抵抗膜方式のタッチパネルを含む多様な方式のタッチパネルに制限なく活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本願の一具現例において、透明導電性積層フィルムの断面図である。
【図2a】本願の実施例1による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【図2b】比較例1による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【図3a】本願の実施例2による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【図3b】比較例3による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【図4a】本願の実施例2による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【図4b】比較例5による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本願が属する技術分野で通常の知識を持った者が容易に実施することができるように本発明の具現例及び実施例を挙げて詳しく説明する。
【0027】
しかし、本願は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限らない。そして、図面で本願を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて類似した部分に対しては類似した図面符号を付けた。
【0028】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0029】
本願明細書全体において、ある層または部材が他の層または部材と「上に」位置しているとすると、これは、ある層または部材が他の層または部材に接している場合だけでなく、二つの層または二つの部材の間にまた他の層またはまた他の部材が存在する場合も含む。
【0030】
本願明細書全体で使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される時、その数値でまたはその数値に近接した意味で使用され、本発明の理解を助けるために、正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。本願明細書全体で使用される用語「〜(する)段階」または「〜の段階」は、「〜のための段階」を意味しない。
【0031】
本願の第1側面は、光学的透明基材;プラズマ−強化化学気相蒸着法(PECVD)を利用して前記光学的透明基材上に10nm〜300nmの厚さに積層され、無機酸化物を含み、屈折率1.3〜2.5を有する第1積層体と、プラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して前記第1積層体上に10nm〜300nmの厚さに積層され、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体と、前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに積層された透明導電層とを含む透明導電性積層フィルムを提供する。
【0032】
図1は、本願の一具現例において、透明導電性積層フィルム100の断面図である。図1を参照して、本願の一具現例を以下で詳しく説明する。
【0033】
前記無機酸化物は、金属酸化物または両性金属酸化物を含み、具体的な例として、チタン酸化物(titanium oxide)、亜鉛酸化物(zinc oxide)、セリウム酸化物(cerium oxide)、アルミニウム酸化物(aluminium oxide)、タンタル酸化物(tantalum oxide)、イットリウム酸化物(yttrium oxide)、イッテルビウム酸化物(ytterbium oxide)、及びジルコニウム酸化物(zirconium oxide)、酸化ケイ素 (silicon oxide)、アンチモンスズ酸化物(antimony tin oxide)、及びインジウムスズ酸化物(indium tin oxide)からなる群から選択される1種以上を含むが、これに限らない。例示的具現例において、前記無機酸化物は、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上を含むが、これに限らない。例示的具現例において、透明電極パターンの視認性を向上するために、前記無機酸化物は酸化チタンまたは酸化ケイ素を含むが、これに限らない。
【0034】
前記第1積層体20の屈折率は、1.3〜2.5であり、厚さは、10〜300nmであるが、これに限らない。前記数値範囲は、前記第1積層体20及び第2積層体30を含む積層体において、前記プラズマ−強化化学気相蒸着法を利用した蒸着工程で2層膜の光の挙動及び多層の積層体を構成する場合、積層体の物理的特性を考慮しなければならないが、前記数値範囲内で積層体物質の安定性が大きく、積層体間のストレスマッチング(matching)になり、屈折率の変化が少ない。前記ストレスマッチングの例として、第1積層体20の場合、酸化チタン(TiO)を積層して約1.46の屈折率を有するようにし、第2積層体30は、酸化ケイ素(SiO)を用いて屈折率を調節して2層膜の積層体を構成すると、前記酸化チタンが含まれた積層体は、外部のストレスを受ける場合、引張力(tensile)を受け、酸化ケイ素を含む積層体は、収縮力(compressive strain)を受けて、光学的透明基材10に対する力の均衡を保つことができるという長所がある。
【0035】
前記第2積層体30は、前記第1積層体20に含まれた金属酸化物及び/または無機酸化物と異なる無機酸化物を含み、10nm〜300nmの厚さであるが、これに限らない。例示的具現例において、前記第1積層体20が酸化チタンを含む場合、第2積層体30は、前記酸化チタンを除いた金属酸化物または無機酸化物として酸化ケイ素を含む。このように、互いに異なる金属酸化物及び/または無機酸化物を含む理由は、上記で説明したように、積層体の安定性、光学透過率の優秀性などを確保することができるからである。
【0036】
一具現例において、前記透明導電層40の厚さが50nm以上である場合、前記第2積層体30の屈折率は、前記第1積層体20の屈折率より大きい屈折率を含む透明導電性積層フィルムを提供するが、これに限らない。透明導電層40の厚さが50nm以上である場合、前記第2積層体30の屈折率が前記第1積層体20の屈折率より高くなければ、高光透過性の効果を有することができない。
【0037】
一具現例において、前記第1積層体20及び第2積層体30の総厚さは、50〜350nmであるが、これに限らない。例示的具現例において、前記第1積層体20及び第2積層体30の総厚さは、90〜310nmであるが、これに限らない。前記数値範囲内で積層体の高安定性、高い光学的透過率の優秀性を確保することができる。
【0038】
前記第1積層体20と第2積層体30とは、緩衝の役割をして前記透明導電層40の面抵抗より、外部環境、特に湿度と熱あるいはフィルムの曲げ(Bending)のような衝撃による電気的安定性を高めるようになる。また、積層される酸化物の高い密度と緻密な膜構造は、透明な樹脂フィルム基材から発生する水分やソルベントのような有機物が透明導電体層への拡散を防ぐバリアーの役割と曲げ衝撃に対する緩衝機能を向上させる。
【0039】
一具現例において、前記第2積層体30の色差計のL、a*、b*値で透過色座標値が−7<b*<2であることを含む透明導電性積層フィルムを提供する。前記L、a*、及びb*は色差表を意味し、前記L値は明度を表し、0〜100まで表示される。そして、前記a*及びb*は、xy座標系のような平面座標系であり、横軸がa*値、縦軸がb*値を意味し、+aの方は赤色、−aの方は緑を表し、+bの方は黄色、−bの方は青色を示す。本願の例示的具現例において、前記色差計のL、a*、b*値で透過色座標値が−5<b*<3であることを含む透明導電性積層フィルムを提供する。前記数値範囲内で、前記透明導電性積層フィルムの完全な透過率と色座標値を具現することができ、前記互いに異なる屈折率を有する2層積層体の表面の局部最低反射率波長が350〜500nm領域で最低値を有することができ、積層体の屈折率と厚さを調節し、前記プラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して蒸着させる場合、前記色差計の透過色座標値の数値範囲内で、紫色光乃至青色光の反射が減少することができ、透過光の着色も減少することができる。
【0040】
一具現例において、前記透明導電層40は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる群から選択される1種以上を含むが、これに限らない。前記透明導電層40は、金属または金属酸化物を含むが、これに限らない。例示的具現例において、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、金、銀、銅、白金及びニッケルからなる群から選択される1種以上を含むが、これに限らない。
【0041】
一具現例において、前記光学的透明基材10は、プラスチックフィルムを含み、前記光学的透明基材の厚さが25〜350umであるが、これに限らない。従って、前記光学的透明基材の厚さ数値範囲で、前記透明導電性積層フィルムの透明度及び生産性の観点で望ましい。前記光学的透明基材10は、その基材の厚さが透明度が確保されることができる光学的に透明な物質であれば、当業者が必要に応じて適宜選択可能な基材が含まれる。例示的具現例において、前記光学的透明基材10は、例えば、ガラス、または、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリ(メチルメタクリレート)共重合体(poly(methylmethacrylate)copolymer)、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose)、ポリオレフイン(polyolefin)、ポリアミド(polyamide)、ポリ(ビニルクロライド)(poly(vinyl chloride))及び非結晶ポリオレフイン(amorphous polyolefin)からなる群から選択される1種以上を含む基材を含むが、これに限らない。前記光学的透明基材10の形態は、シート、板または薄膜であるが、これに限らない。
【0042】
一具現例において、前記光学的透明基材10は、それの少なくとも一面以上に透明ハードコート膜を含むが、これに限らない。前記光学的透明基材の表面硬度の向上及び曲げ性(bending)の向上のために、前記透明ハードコート膜の厚さは2〜15umであるが、これに限らない。例示的具現例においては、3〜15umであるが、これに限らない。前記ハードコート膜は、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、及びシリコーン系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む硬化型樹脂であるが、これに限らない。
【0043】
本願の第2側面は、光学的透明基材上に、無機酸化物を含み、屈折率が1.3〜2.5である第1積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、前記第1積層体上に、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに透明導電層40を積層することを含む透明導電性積層フィルムの製造方法を提供する。
【0044】
一具現例において、前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、ロールツーロール方式のプラズマ−強化化学気相蒸着法を含むが、これに限らない。前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、高い密度と純度を有する積層体を緻密でかつ均一に膜を形成することができる。一方、蒸着率(deposition rate)の調節が容易でかつ低い温度で前記光学的基材フィルムに蒸着する場合、安価で製造が可能である。前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、最適の均一な膜質を得るために、温度分布、反応器の位置による反応気体の流動などの流体力学的要素と熱伝逹要素を最適化して適用することができる。例示的具現例において、低い圧力で高い電気エネルギーをガスに供給してプラズマを発生させるプラズマイオンソース(plasma ion source)を通じて反応物質(precursor)と活性させ、活性化された反応ガスを反応器に移動して前記光学的透明基材上に相変化を誘導して所望の膜を低温で形成することができる。例示的具現例において、この時に使用される前記前駆体は、酸化チタンを含む積層体を形成する場合、チタンエトキシド(titanium ethoxide)またはチタンテトラクロライド(titanium tetrachloride)を用い、酸化ケイ素を含む積層体を形成する場合は、TMDSO(tetramethyldisiloxane)+OまたはSiH+Oを反応前駆体として用いるが、これに限らない。一方、前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、ロールツーロール方式を含むが、これに限らない。前記プラズマ−強化化学気相蒸着法を通じた前記第1積層体及び第2積層体の積層は、成膜時間が速く、成膜後の積層体の無機酸化物の緻密性と均一な分布性を確保することができ、これを通じてロールツーロール方式を含み、前記透明導電性積層フィルムの逐次的な連続生産が可能である。
【0045】
一具現例において、前記透明導電層を積層することは、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学蒸着法及びプレーティング法からなる群から選択される1つ以上の方法及びロールツーロール工程を利用して前記透明導電層を連続形成することを含むが、これに限らない。
【0046】
一具現例において、前記透明導電層を積層した後に120℃〜150℃で熱処理して前記透明導電層を結晶化させることをさらに含む透明導電性積層フィルムの製造方法であるが、これに限らない。例示的具現例において、前記熱処理は、120℃〜150℃で約90分間熱処理することをさらに含むが、これに限らない。
【0047】
本願の第3側面は、透明導電性積層フィルムを含むタッチパネルを提供するが、これに限らない。前記タッチパネルは、静電容量方式のタッチパネルであるが、これに限らず、抵抗膜方式のタッチパネルでも適用が可能である。例示的具現例において、前記透明導電性積層フィルムをパネル板とし、他方のパネル板としてガラス板上に酸化インジウムスズ(ITO)の薄膜を形成した後、透明導電性ガラスを利用してこの両パネル板を酸化インジウムスズ薄膜同士が対向するようにスペーサを介在させて対向配置し、スイッチ構造としてのタッチパネルを製造するが、これに限らない。
【0048】
以下、実施例を利用して本願をさらに具体的に説明するが、本願がこれに限られるものではない。
【実施例1】
【0049】
第1積層体の製造
厚さが125umであるPETフィルムからなる透明樹脂フィルム基材の一面に、大面積PECVD線形ソースを適用したプラズマ強化化学気相蒸着設備としてGPi社PECVDモジュレータを利用した。
【0050】
PECVDチャンバにPETを注入し、真空度を1〜20mtorrに維持したチャンバのプラズマイオンソースに40kHzのAC発電機からパワーを印加し、反応前駆体(Precusor)としてチタンテトラクロライド(Titanium Tetrachloride)をPECVD反応器に注入して、基板上に相変異を誘導して、屈折率2.32を有した34nm厚さのTiO膜を形成した。
【0051】
第2積層体の積層
前記第1積層体上に、前記の第1積層体の製造方法として、反応前駆体(Precusor)としてTMDSOと雰囲気ガスOとをPECVD反応器に注入し、屈折率1.45を有した61nm厚さのSiO膜を有する第2積層体を形成した。
【0052】
透明導電層の積層
第2積層体が成膜されたフィルムをスパッタチャンバに注入し、RFマグネトロンスパッタリング法で形成した。ターゲットは、一酸化スズ5重量%を含む95重量%酸化インジウム焼結体を用い、チャンバの初期真空度を5.0×10−5torrを維持してアルゴンガス80%及び酸素ガス20%分圧で注入して4.0×10−3torr雰囲気で屈折率2.05を有した25nm厚さの透明導電層としてのITO膜を積層して、透明導電性積層フィルムを製造した。
【0053】
<比較例1>
透明導電層の厚さを25nmに固定させ、中間層の構造による透過率と透過着色、高温・高湿環境による信頼性を調査するために、第1積層体であるTiOを形成しないことを除いては、実施例1と同様な方法で屈折率1.45と厚さ42nmのSiO膜を有する透明導電性積層フィルムを製作した。
【0054】
<比較例2>
透明導電層の厚さと抵抗の変化、屈折率の差による透過率と透過着色値の差を調査するために、第1積層体及び第2積層体を真空蒸着(Electron Beam Evaporation)工程を通じて形成した。
【0055】
厚さが125μmであるPETフィルムを蒸着チャンバに注入し、電子ビームの坩堝に第1積層体(TiO)と第2積層体(SiO)との薬品をそれぞれ注入し、初期真空を6.0×10−6torrに維持して電子ビームを照射しながら酸素ガスを注入して無機酸化物の反応性を高めた。無機酸化物の光学薄膜の最適化された酸素分圧圧力である5.0×10−5torrで作業が行われるようにした。
【0056】
2.16の屈折率を有する厚さ66nmのTiO膜と、1.43の屈折率を有する43nmのSiO膜を製造した。ITOの厚さと形成方法は、実施例1と同様な方法で透明導電性積層フィルムを製作した。
【0057】
本願の一実施例による前記実施例1によって製造された透明導電性積層フィルムの透過率、色座標値、面抵抗、及び信頼性などを測定し、これを比較例1及び比較例2と共にその結果を下記の[表1]に表した。
【0058】
【表1】

【0059】
<平均透過率と色座標値の測定方法>
本願の一実施例による透明導電性積層フィルムの透過率を比較例と共に測定し、透過率は、日立社U4300分光光度計(spectrophotometer)を使用して測定し、CIE色座標測定法とD75ソースを使用してそれぞれ測定した。
【0060】
<表面抵抗の測定と抵抗変化率の測定方法>
4端子法を利用して測定し、常温に放置した透明導電性積層フィルムのITO面の表面抵抗Ro(ohm/cm)を測定した後、加熱チャンバに入れて60℃、95%湿度の雰囲気に240時間放置した後、ITO面抵抗Rを測定して、面抵抗の変化率(R/Ro)を求めて高温・高湿の信頼性を評価した。
【0061】
<薄膜の屈折率及び厚さの測定方法>
各層に形成されるTiOとSiO、ITO膜の屈折率と膜の厚さの測定は、位相変調方式の分光楕円計(Phase Modulated Spectroscopic Ellipsometer)を使用した。
【0062】
前記[表1]から確認できるように、透明積層体としてのITO面抵抗の高温・高湿に対する信頼性(R/Ro)は、実施例1で2層の中間層(第1積層体と第2積層体)をPECVDで形成した場合が、単層の中間層のみをPECVDで形成した比較例1と、2層の中間体を電子ビール蒸着工程で形成した比較例2より優れた特性を持っていることが分かる。これは、上記で言及したように、TiOとSiO層が外部の熱的衝撃に対してそれぞれ引張力と収縮力に対応することで、ITO膜の表面張力が安定化できることが分かる。
【0063】
また、電子ビームで形成された中間層である第1積層体と第2積層体とは、低い密度と緩い膜構造によって熱と水分の衝撃に弱い結果を表しており、これは、本願による一実施例としての実施例1のPECVD工程を通じた高い密度と緻密な膜構造の第1積層体と第2積層体が熱と水分などの外部衝撃に対する信頼性特性が非常に優れていることが確認できる。
【0064】
図2aは、本願の実施例1による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフであり、図2bは、比較例1による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【0065】
前記[表1]、図2a及び図2bをみると、比較例1では、本願の一実施例による実施例1と比べて、透過着色の数値において微細な差があるが、低い可視光線透過率値を表しているので、高い透過率値を要求する静電容量方式のタッチパネルに使用するには不適当であることが確認できる。
【0066】
比較例2では、本願の一実施例による実施例1と比べて、透過率値では同じ程度の値であるが、透過着色(黄色)を示すb*値が相対的に高いことが分かる。
【0067】
さらに、図2a及び図2bを比べると、本願の一実施例による実施例1の場合が比較例3と比べて、可視光領域帯における反射率が低いことが確認でき、特に550nm波長帯で非常に低いことが確認でき、これを通じて本願の光透過性が高いことが確認できる。
【実施例2】
【0068】
透明導電層の厚さと抵抗の変化、屈折率の差による透過率と透過着色値の差を調査するために、TiO膜の厚さを61nm、SiO膜の厚さを25nmに積層し、透明導電層の厚さは40nmにしたことを除いては実施例1と同様に積層して透明導電性積層フィルムを製造した。
【0069】
<比較例3>
透明導電層の厚さを実施例2のように固定させ、中間階の構造による透過率と透過着色の変化を調査するために、第2積層体であるSiOの厚さを24nmに変化させたことを除いては比較例1と同様な方法で透明導電性積層フィルムを製作した。
【0070】
<比較例4>
前記比較例2において、第1積層体としてのTiO層と第2積層体としてのSiO層、透明導電層としてのITOの厚さをそれぞれ67nm、25nm、40nmであることを除いては比較例2と同様な方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0071】
本願の一実施例による前記実施例2によって製造された透明導電性積層フィルムの透過率と色座標値を測定し、これを比較例3及び比較例4と共にその結果を下記の[表2]に表した。
【0072】
【表2】

【0073】
図3aは、本願の実施例2による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフであり、図3bは、比較例3による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【0074】
前記[表2]、図3a及び図3bをみると、比較例3では、本願の一実施例による実施例2と比べて、透過着色数値において微細な差があるが、低い可視光線透過率値を表しているので、高い透過率値を要求する静電容量方式のタッチパネルに使用するには不適当であることが確認できる。
【0075】
比較例4では、本願の一実施例による実施例1と比べて、透過率値では同じ程度の値であるが、透過着色(黄色)を示すb*値が相対的に高いことが分かる。
【0076】
さらに、図3a及び図3bを比べると、本願の一実施例による実施例2の場合が比較例5と比べて、可視光領域帯における反射率が低いことが確認でき、特に550nm波長帯で非常に低いことが確認でき、これを通じて本願の光透過性が高いことが確認できる。
【実施例3】
【0077】
透明導電層(ITO;屈折率20.5)の厚さが50nm以上である場合、光学的透明樹脂としてPET上に形成される第1積層体と第2積層体の場合、第2積層体の屈折率が第1積層体の屈折率より高いことが要求される。
【0078】
PET上に1.45の屈折率を有するSiO層を282nmの厚さに積層して第1積層体を製作し、前記第1積層体上に屈折率2.32を有するTiOを57nmに積層し、透明導電層の厚さを70nmにして積層し、透明導電性積層フィルムを製造した。
【0079】
<比較例5>
透明導電層の厚さを実施例3と同様に固定させ、中間層の構造による透過率と透過着色の変化を調査するために、第2積層体であるSiOの厚さを55nmに変化させたことを除いては比較例1と同様な方法で透明導電性積層フィルムを製作した。
【0080】
<比較例6>
比較例2において、第1積層体であるSiO層、第2積層体であるTiO層及び透明導電層としてのITO層の厚さがそれぞれ288nm、64nm、70nmであることを除いては比較例2と同様な方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0081】
本願の一実施例による前記実施例3によって製造された透明導電性積層フィルムの透過率と色座標値を測定し、これを比較例5及び比較例6と共にその結果を下記の[表3]に表した。
【0082】
【表3】

【0083】
図4aは、本願の実施例2による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフであり、図4bは、比較例5による、透明導電性積層フィルムの反射率を測定したグラフである。
【0084】
前記[表3]、図4a及び図4bによると、比較例5では、本願の一実施例による実施例3と比べて、透過着色数値において微細な差があるが、低い可視光線透過率値を表しているので、高い透過率値を要求する静電容量方式のタッチパネルに使用するには不適当であることが確認できる。
【0085】
比較例6では、本願の一実施例による実施例1と比べて、透過率値では同じ程度の値であるが、透過着色(黄色)を示すb*値が相対的に高いことが分かる。
【0086】
さらに、図4a及び図4bを比べると、本願の一実施例による実施例3の場合が比較例5と比べて可視光領域帯における反射率が低いことが確認でき、特に550nm波長帯で非常に低いことが確認でき、これを通じて本願の光透過性が高いことが確認できる。
【0087】
本願による一実施例としての実施例1〜実施例3の結果は、本願が高い透過率の確保と低い透過着色、及び高温・高湿の外部環境に対する信頼性特性に非常に優れていることを表す。
【0088】
以上、具現例及び実施例を挙げて本発明を詳しく説明したが、本発明は、前記具現例及び実施例に限らず、様々な形態で変形されることができ、本発明の技術的思想内で当分野で通常の知識を持った者によって様々な多くの変形が可能であることが明らかである。
【符号の説明】
【0089】
10:光学的透明基材
20:第1積層体
30:第2積層体
40:透明導電層
100:透明導電性積層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的透明基材;
プラズマ−強化化学気相蒸着法(PECVD)を利用して前記光学的透明基材上に10nm〜300nmの厚さに積層され、無機酸化物を含み、屈折率1.3〜2.5を有する第1積層体と、
プラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して前記第1積層体上に10nm〜300nmの厚さに積層され、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体と、
前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに積層された透明導電層と
を含む透明導電性積層フィルム。
【請求項2】
前記透明導電層の厚さが50nm以上である場合、前記第2積層体の屈折率は、前記第1積層体の屈折率より大きい屈折率を有する請求項1に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項3】
前記第1積層体及び第2積層体の総厚さは、50〜350nmである請求項1または2に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項4】
前記透明導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)からなる群から選択される1種以上を含む請求項1から3の何れか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項5】
前記光学的透明基材は、ガラスまたはプラスチックフィルムを含み、前記光学的透明基材の厚さが25um〜350umである請求項1から4の何れか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項6】
前記第2積層体の色差計のL、a*、b*値で透過色座標値が−7<b*<2であることを含む請求項1から5の何れか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項7】
前記光学的透明基材は、一面または両面に透明ハードコート膜を含む請求項1から6の何れか1項に記載の透明導電性積層フィルム。
【請求項8】
光学的透明基材上に、無機酸化物を含み、屈折率が1.3〜2.5である第1積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、
前記第1積層体上に、前記第1積層体に含まれた無機酸化物と異なる無機酸化物を含む第2積層体を10nm〜300nmの厚さにプラズマ−強化化学気相蒸着法を利用して積層し、
前記第2積層体上に10〜100nmの厚さに透明導電層を積層する
ことを含む透明導電性積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ−強化化学気相蒸着法は、ロールツーロール方式のプラズマ−強化化学気相蒸着法を含む請求項8に記載の透明導電性積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記透明導電層を積層することは、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学蒸着法及びプレーティング法からなる郡から選択される1つ以上の方法及びロールツーロール工程を利用して前記透明導電層を連続形成することを含む請求項8または9に記載の透明導電性積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記透明導電層を積層した後に120℃〜150℃で熱処理して前記透明導電層を結晶化させることをさらに含む請求項8から10の何れか1項に記載の透明導電性積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の透明導電性積層フィルムを含むタッチパネル。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2012−101544(P2012−101544A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247076(P2011−247076)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(511274237)ビーエムシー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】