説明

透明導電性積層体及びこれを用いたタッチパネル

【課題】透過率の低下を招くことなく、確実に熱処理工程後のカールの発生を抑制することが可能な透明導電性積層体及びこれを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】第1の光透過性フィルム1の片面に少なくともハードコート層3が形成されたハードコートフィルム31と、第2の光透過性フィルム2の片面に少なくとも透明導電膜4が形成された導電性フィルム32とが、第1の光透過性フィルム1のハードコート層3及び第2の光透過性フィルム2の透明導電膜4が形成されていない面同士を粘着層30で貼り合わせて成る透明導電性積層体10であって、第1及び第2の光透過性フィルム1及び2の厚みの差を0μm以上5μm以下として、第1及び第2の光透過性フィルム1及び2の配向角度の差Δを20°以下として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性積層体及びこの透明導電性積層体を用いて得られるタッチパネルに関し、更に詳しくは、加熱加工時にカールが生じにくい透明導電性積層体及びこれを用いたタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明高分子フィルム上に、透明でかつ抵抗値の小さい透明導電膜を設けた透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極など、電気、電子分野の用途で広く使用されている。
【0003】
近年、情報表示用の液晶ディスプレイと情報入力用のタッチパネルを搭載した携帯型の情報機器が広く使用されはじめているが、これらに搭載されるタッチパネルとしては抵抗膜方式のものが多い。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜が形成された2枚の透明導電基板をおよそ10〜150μmの間隔で相対させて構成する。指、ペン等でタッチした部分でのみ両透明電極基板が接触してスイッチとして動作し、例えばディスプレイ画面上のメニューの選択あるいは手書き文字の入力等を行うことが出来る。この様な透明導電基板としては、ガラス基板、各種の透明高分子フィルム基板、透明高分子シート基板及び透明高分子フィルムを弾性粘着剤で貼り合わせてなる透明導電性積層体等の基板上に、例えばインジウム‐スズ複合酸化物(ITO)等の金属酸化物の透明導電膜を形成したものが広く用いられている。
【0004】
低抵抗膜式タッチパネルの動作原理としては、透明導電膜の一方に電流を流し、他方の透明導電膜における電圧を測定する。対向する透明導電膜を指やペン等による押圧操作を介して接触させ、その接触部分での電流の流れにより座標を検知するものであり、通電のために透明導電膜の端部に銀ペースト等の導電性ペーストからなる回路が設けられている。
前記回路を高分子フィルム等フレキシブルな基板上に形成する場合は、基板を印刷面と反対面からエアー等で吸着し、表面を平滑に保ちながら、スクリーン印刷で形成する方法が一般的である。
【0005】
しかしながら透明導電性フィルムは、前記回路印刷の前に導電膜の結晶化及び表面抵抗値の安定化を目的として100〜150℃で30分以上のアニール処理を行う。この際にカールする問題があり、印刷工程で十分に平滑性を保つことができず、回路形成が困難か、あるいは線幅が膨張してしまい、これを用いてタッチパネルを構成する際に絶縁不良となる問題があった。
【0006】
また、透明導電性フィルムの用途によって前記アニール処理が不要な場合においても、印刷後に導電性ペーストを100〜150℃で1〜2時間加熱して乾燥あるいは硬化する工程があり、この熱処理工程を通った際にカールが発生する。問題なく回路形成ができたとしても、フィルムのカールが大きい状態でタッチパネルを組むとニュートンリングが発生し、画面の視認不良などの原因となる。この現象は最近市場の拡大がみられるフィルム−フィルムタイプ、すなわちフィルム基板上に透明導電性フィルムを貼り合わせる構成のタッチパネルにおいて顕著であり、問題となっている。
そこで、このような透明導電性フィルムのカールを抑制するために、基材の両面にハードコート処理フィルムを用いることが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
また、各層の熱収縮率と熱収縮率差を小さくすることによって、カールを抑制する方法も提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−138036号公報
【特許文献2】特開2002−73282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、両面にハードコート層を設けることによってコストが高くなる上、ITO膜との屈折率差が大きいため透過率が低下する。
また、上記特許文献2に記載の方法による場合は、十分にカールを抑制することは困難であった。また、フィルムの熱収縮率の低減化は、製膜後に加熱の影響を緩和するオフラインアニールを行うことで可能であるが、工程が増えるためコストの増大化を招くという問題がある。更に、このように熱収縮率、熱収縮率差を選定するには、積層する全材料の熱収縮率を管理しなければならず、材料の選択が煩雑化する問題がある。
本発明は、上述した各種透明導電性フィルムにおける問題を解決して、透過率の低下を招くことなく、またより確実に熱工程通過後のカールを抑制し、平坦性の良好な透明導電性積層体及びこれを用いたタッチパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体であって、上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が0μm以上5μm以下とされ、上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが20°以下とされて成ることを特徴とする。
また、本発明は、第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体であって、上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚み差が5μmを超え50μm以下であり、かつ上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが10°以下とされて成ることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明は、上述の透明導電性席層体において、上記第1及び第2の光透過性フィルムは、上記粘着剤に対して厚みが対称になるように形成されることを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
また、本発明は、上述の各透明導電性席層体において、上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが、それぞれ25μm以上125μm以下とされて成ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述の各透明導電性席層体において、上記第1及び第2の光透過性フィルムは、二軸延伸フィルムにより形成されて成ることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明は、上述の透明導電性席層体において、上記二軸延伸フィルムは、配向性PET及びPENにより形成されて成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のタッチパネルは、第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体を有するタッチパネルであって、上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが0μm以上5μm以下とされ、上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが20°以下とされて成り、上記透明導電性積層体とは別体の基材上に、少なくとも透明導電膜及びドットスペーサーが形成され、上記透明導電性積層体及び上記基材が、互いの上記透明導電膜が向かい合うように所定の間隔をもって配置されて成ることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明のタッチパネルは、第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体を有するタッチパネルであって、上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚み差が5μmを超え50μm以下であり、かつ上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが10°以下とされて成り、上記透明導電性積層体とは別体の基材上に、少なくとも透明導電膜及びドットスペーサーが形成され、上記透明導電性積層体及び上記基材が、互いの上記透明導電膜が向かい合うように所定の間隔をもって配置されて成ることを特徴とする。
【0014】
上述の本発明の透明導電性積層体においては、積層する第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μm以下で略厚みが等しい場合においては、各光透過性フィルムの配向角度の差Δを20°以下とし、また厚みの差が5μmを超え50μm以下の場合においては、配向角度の差Δを10°以下に選定することによって、良好に熱処理後のカールの発生を抑制し、良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
光透過性フィルムの配向角度は、フィルム原反の長手方向(延伸方向)を横断する方向(幅方向)に関して、中央部と両端部とにおいて異なる。一般的には、熱収縮率等の特性を考慮して中央部の限られた材料を用いて透明導電性積層体を構成することが好ましいとされ、コストも増大化する。しかしながら、原反の中央部の材料のみを用いても、配向角度が一定範囲内でない場合は、カールが増加する恐れもある。これに対し、本発明を適用することによって、フィルムの厚みの差と、これに対応した配向角度の差を一定範囲内に選定することによって、確実にカールの発生を抑制でき、十分な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように本発明によれば、透明導電性積層体の第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μm以下の場合は、これらの光透過性フィルムの配向角度の差を20°以下とし、第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μmを超え50μm以下の場合は、これらの光透過性フィルムの配向角度の差を10°以内に選定することによって、確実にカールを抑制し、良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
【0016】
また、本発明において、透明導電性積層体の第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが対称となるように構成することによって、厚みの小さい光透過性フィルム同士を積層する場合においても、良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
更に、本発明において、透明導電性積層体の第1及び第2の光透過性フィルムの厚みを、それぞれ25μm以上125μm以下とすることによって、確実に良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
また、本発明において、透明導電性積層体の第1及び第2の光透過性フィルムを、二軸延伸フィルムにより形成することによって、確実に良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
更に、本発明において、二軸延伸フィルムとして、配向性PET及びPENにより形成することによって、確実に良好な平坦性をもって透明導電性積層体を構成することができる。
【0017】
また、本発明によるタッチパネルは、確実に良好な平坦性をもって透明導電性席層体を構成することができ、特性の良好なタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に適用して好適な透明導電性積層体の一構成例の断面図である。透明高分子フィルム等より成る第1の光透過性フィルム1の片面に少なくともハードコート層3が形成されてハードコートフィルム31が構成される。一方、高分子フィルム等より成る第2の光透過性フィルム2の片面に少なくとも透明導電膜4が形成され、導電性フィルム32が構成される。そして、これら2枚のフィルム11及び12のハードコート層3及び透明導電膜4が形成されていない面同士を、粘着層30を介して貼り合わせることによって、1枚の透明導電性積層体10を構成している。
【0019】
図2は、本発明による透明導電性積層体を利用して構成したタッチパネル20の一例の要部の略線的拡大断面図である。この例においては、ガラス基板等より成る基材11の上に、例えばITOより成る透明導電膜12が成膜され、その上に所定のピッチ及び形状をもって例えば光硬化型樹脂より成るドットスペーサー13が形成されていわゆる固定電極基板21が構成される。
この上に、図1に示した本発明による透明導電性積層体10、すなわちいわゆる可動電極基板22を対向させ、図示しないが所定の間隔をもって、互いの透明導電膜2及び12が向かい合うように配置してタッチパネル20が構成される。
なお、図2においては、タッチパネルの一部の概略構成を示し、周囲の絶縁部、粘着層、外部への引き出し回路等は省略してある。
【0020】
図3は、光透過性フィルムを所定の幅に切り出す前のフィルム原反内の分子配向を模式的に示した概略構成図である。第1及び第2の光透過性フィルムは、延伸成型される原反から所定のサイズで切り取られたシートまたはロールより成る。図3に示すように、原反50の矢印eで示す延伸方向に対して直交する矢印wで示す幅方向に沿って、原反50の面内における分子配向51にはズレが生じており、原反50の幅方向について中央から端に近づくほど分子配向51の向きは延伸方向に近づく傾向とされる。したがって、第1及び第2の光透過性フィルムとして用いられるフィルムとしては、互いの配向角度の差が第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μm以下で厚みが略等しい場合には20°以下、第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが5μmを超えて異なる場合には10°以下となるように原反50の所要の範囲を選択して切り取られたシートまたはロールを用いればよい。例えば、図3において、原反50内の領域50aと隣り合う領域50bから切り取られたフィルムをそれぞれ第1及び第2の光透過性フィルムとすれば、各フィルムの厚みを略等しく、かつ配向角度の差を20°以下に選定して透明導電性積層体を構成することができる。
【0021】
本発明の透明導電性積層体における第1及び第2の光透過性フィルムは、粘着層を介して対称に接着されている。第1及び第2の光透過性フィルムは、分子配向性を有するシートであり、延伸成型して得られる二軸延伸フィルムを用いることができる。
このような二軸延伸フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、が挙げられ、従来から用いられている樹脂フィルムの中から適宜選択して利用することが可能であるが、光透過性に優れるものが好ましい。
【0022】
更に、本発明の透明導電性積層体における第1及び第2の光透過性フィルムとして、二軸延伸フィルムを良好に用いることができる。この二軸延伸フィルムは、これを形成する際のシートの延伸方向の収縮率と、延伸方向と直交する方向の収縮率とが異なることにより、導電膜結晶化時の熱処理工程及び銀ペースト印刷乾燥工程に100〜150℃の熱が加わる際にカールが発生する。そこで、従来は一般に収縮率が少ない原反の中央部のみの材料を用いて透明導電性積層体に用いることが好ましいとされ、コスト高を招来する要因となっていた。
これに対し、本発明では、第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差は第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μm以下と略等しい場合は20°以下とし、第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが異なりかつ厚みの差が5μmを超え50μm以下の場合は分子配向の配向角度の差を10°以下に選定することにより、十分な平坦性をもって、また後段の実施例において詳細に説明するように、吸着性、印刷性を良好に保持して透明導電性積層体を構成することができて、上述した比較的高価な中央部でなく、両端部に近い材料を用いることによって、コストの低減化を図ることも可能である。
これは、このような配向角度の範囲内で接着される第1及び第2の光透過性フィルムによれば、第1及び第2の光透過性フィルムから粘着層に加わる応力の不均一さを抑制することができるためである。更に、第1及び第2の光透過性フィルムの厚みを略等しく、厚みを対称に選定する場合は、粘着層に対して両フィルムが対称に接着されることから、これら第1及び第2の光透過性フィルムから粘着層に加わる応力の不均衡を抑制することが可能となり、熱工程通過後の透明導電性フィルムに殆ど反りを発生させることがない。
【0023】
本発明において、第1の光透過性フィルム1の片面に形成するハードコート層3を構成する材料としては、公知の透明樹脂を用いることができる。
例えば硬化型樹脂として、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のケイ素アルコキシドの重合体やエーテル化メチロールメラミン等のメラミン系熱硬化性樹脂、フェノキシ系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の多官能アクリレート系放射線硬化性樹脂等がある。これらの中でも、多官能アクリレート系樹脂等の放射線硬化性樹脂は、放射線の照射により比較的短時間に架橋度の高い層が得られることから、製造プロセスへの負荷が少なくまた膜強度が強い特徴があり、最も好ましく用いられる。
【0024】
尚、ハードコート層は光透過性フィルム上に直接、もしくは適当なアンカー層を介して積層される。こうしたアンカー層としては例えば、ハードコート層と光透過性フィルムとの密着性を向上させる機能を有する層や、K値が負の値となる三次元屈折率特性を有する層等の各種の位相補償層、水分や空気の透過を防止する機能もしくは水分や空気を吸収する機能を有する層、紫外線や赤外線を吸収する機能を有する層、基板の帯電性を低下させる機能を有する層等が好ましく挙げられる。
【0025】
ハードコート層の光透過性フィルムへの実際の塗工法としては、前記の化合物ならびに各種添加剤(硬化剤、触媒等)を各種有機溶剤に溶解して、濃度や粘度を調節した塗工液を用いて、第1の光透過性フィルム上に塗工後、放射線照射や加熱処理等により層を硬化させる。塗工方式としては例えば、マイクログラビヤコート法、マイヤーバーコート法、ダイレクトグラビヤコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、コンマコート法、ダイコート法、ナイフコート法、スピンコート法等の各種塗工方法が用いられる。
【0026】
また、ハードコート層に微粒子を含有させることにより、滑り性、干渉縞防止性、アンチグレア性を付与することが可能である。含有させる微粒子は、平均粒径1〜4μmの粒径のものを含有させることにより、ハードコート層表面に微細な凹凸を形成するのが好ましい。
【0027】
ハードコート層に含有させる微粒子としては公知の各種無機及び有機フィラーを用いることができる。具体的には、例えば、シリカ微粒子、架橋アクリル微粒子、架橋ポリスチレン微粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
このような微粒子を含有するハードコート層はフィルム基材上に直接、もしくは適当なアンカー層を介して積層される。アンカー層としては例えば、上記微粒子を含有するハードコート層とフィルム基材との密着性を向上させる機能を有する層や、水分や空気の透過を防止する機能、もしくは水分や空気を吸収する機能を有する層、紫外線や赤外線を吸収する機能を有する層、基板の帯電性を低下させる機能を有する層等が上げられる。
【0029】
第2の光透過性フィルム2の片面に形成する透明導電膜4の材料としては、透明な導電性の膜を形成しうるものを適宜に選択して用いることが出来る。例えば、金、銀、白金、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、スズ及びこれらの合金からなる金属、また酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウム、酸化亜鉛及びこれらの混合物からなる金属酸化物、ヨウ化銅からなる他の金属化合物などが用いることができる。
前記導電性材料の中で、透明性及び導電性の上でもっとも好ましいのは一般にITOと呼ばれる酸化インジウムと酸化スズの複合導電膜である。更に好ましくは前記ITOのスズ含有量が1.5重量%以上8重量%以下とされたターゲットを用いてスパッタ法により形成した透明導電膜であり、タッチパネルのペン摺動耐久性において、良好な結果を示す。
【0030】
また、透明導電膜4の表面抵抗値は、タッチパネルに用いる場合は、200〜1000Ω/sq.であり、好ましくは300〜500Ω/sq.である。膜厚は比抵抗値によって決まるが、抵抗値の均一性、透明性の観点から10〜100nmが好ましい。
【0031】
本発明の透明導電膜を成膜する方法は、特に限定されず公知の慣用手法により成膜することが可能である。具体的には、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
例えばスパッタ法では、ターゲットのスズ添加量を変え、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法ではペレットのスズ組成を変えることにより上記組成重量比の透明導電膜を容易に形成することが可能である。
特に最適には、スズ含有量が1.5重量%以上8重量%以下とされたターゲットを用い
てスパッタにより成膜することによって、5nm以上50nm以下の結晶粒径の範囲をもって透明導電膜を形成することができ、ペン摺動などの機械的耐久性を向上させることができる。
尚、第2の光透過性フィルム2と透明導電膜2との間には、その他反射防止(AR)層、SiO等、スパッタ法で形成された下地層を公知の技術を用いて設けることが可能である。
【0032】
本発明の透明導電性積層体におけるハードコートフィルムと、導電性フィルムを接着するための粘着層30としては、透明性を有するものを適宜に選択して用いられる。例えばアクリル系の粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のように適度な弾性を有するものが好ましく、1μm以上、特に5〜500μmの厚みが好ましい。粘着層の形成法は特に制限されず、適宜な段階に適宜な方式で設けることが出来る。例えば、ハードコートフィルムまたは導電性フィルムにあらかじめ付設して両フィルムの接着に供してもよいし、当該接着時に塗布することもできる。
【0033】
次に、本発明の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明する。なお、以下の各実施例では具体的な数値を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
各例ともに、図2において説明した構成のフィルム−ガラスタイプのタッチパネル、または、図4に示すように、固定電極基板21の基材としてフィルム状の基材11を用いるいわゆるフィルム−フィルムタイプのタッチパネルを製して、その評価を行った。図4において、図2と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0034】
先ず、タッチパネルの製造方法の一例について図5A〜Cの製造工程図を参照して説明する。先ず、図5Aに示すように、ガラス、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等より成る基材11上に、ITO等より成る透明導電膜12をスパッタ法等により成膜し、更にスクリーン印刷及び紫外線照射等によって光硬化性樹脂等より成るドットスペーサー13を所定のパターンに形成する。
そして次に、図5Bに示すように、基材1の四辺に沿う各配線部14a〜14d及び外部回路引き出し用の接続部15を、銀ペースト等を用いて例えばスクリーン印刷の適用によって所定のパターンに形成する。
【0035】
この後、図5Cに示すように、基材1上の接続部15に外部への引き出し電極部16を接続して固定電極基板21を構成し、この上に本発明構成による透明導電性フィルム10より成る可動電極基板22を矢印aで示すように対向させ、接着剤等によって接続してタッチパネルが構成される。図5Cにおいて、図2又は図4と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0036】
このような製造方法を適用して、以下の実施例1〜8、比較例1〜6に示す各例の透明導電性積層体、これを用いたタッチパネルを作製した。以下これを説明する。
(1)実施例1
この例においては、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを作製した。タッチパネルの固定電極基板21の基材11として、厚さ0.5mmのガラス基板を用いてその両面にディップコーティング法にてSiO膜(図示せず)を設けた後、400℃の電気炉にて焼結を行い、スパッタ法により厚さ20nmのITO膜を透明導電膜12として設けた。そしてこの上に、高さ10μm、直径50μm、ピッチ1.5mmのドットスペーサー13を設け、ガラス電極基板からなる固定電極基板21を作製した。
【0037】
次に、可動電極基板22を作製した。ハードコートフィルム31と導電性フィルム32に使用する第1及び第2の光透過性フィルム1及び2として、75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:コスモシャインA4300、東洋紡績(株)製)を用いた。第1及び第2の光透過性フィルム1及び2は以下の方法で配向角を測定し、差を求めた結果、Δ°(配向角度差)=0°であった。
【0038】
〔配向角度の測定〕
分子配向計(商品名:MOA−2001A型、王子計測機器(株)製)を用い、第1及び第2の光透過性フィルムの配向角を測定し、その差(Δ°)を求めた。
【0039】
前記第1の光透過性フィルム1の片面にハードコート層3を形成するために、下記の組成成分をロールミルにて混合し、均一に分散させ、塗料を作製して、ポリエチレンテレフタレートより成る第1の光透過性フィルム1の易接着処理が施されている面にバーコーターで塗布した。オーブンで70℃、5分間乾燥したのち、UV照射機(商品名ESC−401GX、岩崎電気(株)製、)にて硬化することにより3μmのハードコート層3を形成した。塗料組成を以下に示す。
【0040】
ポリエステルアクリレート(商品名:KAYARADO DPHA、日本化薬(株)製)90重量部
ポリエステルアクリレート(商品名:M101、東亞合成(株)製) 10重量部
反応希釈剤 N−ビニルピロリドン 50重量部
(商品名:M150、東亞合成(株)製)
光重合開始剤 2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 4重量部
(商品名:ダロキュア1173、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)
【0041】
前記ハードコートフィルム31のハードコート層3を形成した側とは反対側の面に、厚さ25μmのアクリル系粘着層30を設けた。
【0042】
次に第2の光透過性フィルムに、結晶質のITOより成る透明導電膜2を20nmの厚さで形成した。
透明導電膜2の形成は、ターゲットとして酸化スズを5.0重量%含有した酸化インジウム(ジャパンエナジー(株)製、密度7.1g/cm)を用いた。DCマグネトロン装置内に、第2の光透過性フィルム2をセットし、1.5W/cmのDC電力を印加した。
【0043】
装置内にはArガスを150sccm、Oガスを5sccmの流速で流し、0.3Paの雰囲気下としてDCマグネトロンスパッタ法により成膜し、導電性フィルムを得た。
【0044】
そして、このようにして形成したハードコートフィルム31と、導電性フィルム32とを、それぞれ透明導電膜とハードコート層とがお互いに外を向くように対向させ、前記の粘着層30を介して両フィルム31及び32を接着し、本発明構成による透明導電性積層体10を得た。
【0045】
得られた透明導電性積層体10を、150℃に調整した熱風乾燥機中でITOより成る透明導電膜2を上側にして60分間熱処理し、ITOの結晶化を行った。
そしてこの透明導電性積層体10を、ITO面を上側にしたまま室温に60分放置した後、以下の方法でカールの測定を行った結果、3mmであった。
【0046】
〔カールの測定法〕
定盤上にITO面を上側になるようにシートを置き、定磐から垂直に立てたスケール(1/10目盛り)で、最大値を計測し、カール量とした。
【0047】
前記フィルムのITO面側に銀ペースト(熱硬化エポキシタイプ、商品名:AF4810、太陽インキ製造(株)製)により回路を形成した。回路を形成する際、ハードコート層側からエアーにより吸着し、フィルムを平坦に支持したが、問題なく支持することができた。次にスクリーン印刷により回路パターンを印刷した。印刷された回路の線幅を目視で観察した結果、ぶれやにじみは見られなかった。印刷パターンを乾燥するため、150℃に調整した熱風乾燥機中でITO面を上側にして60分間熱処理した。
これを可動電極基板22として、フィルム−ガラスタイプのタッチパネル20を形成した。
【0048】
(2)実施例2
第1及び第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンナフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は4°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0049】
(3)実施例3
第1及び第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は20°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0050】
(4)実施例4
第1及び第2の光透過性フィルムに25μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は20°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0051】
(5)実施例5
第1及び第2の光透過性フィルムに125μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は20°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0052】
(6)実施例6
この例においては、フィルム−フィルムタイプのタッチパネルを作製した。タッチパネルの固定電極基板41の基材31として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートを用いて、スパッタ法により厚さ20nmのITO膜を透明導電膜42として設けた。そしてこの上に、高さ10μm、直径50μm、ピッチ
1.5mmのドットスペーサー12を設け、ポリエチレンテレフタレート基材からなる固定電極基板41を作製した。
【0053】
次に、実施例3と同様の可動電極基板52を作製した。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0054】
(7)実施例7
第1の光透過性フィルムに25μm、第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は4°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0055】
(8)実施例8
第1の光透過性フィルムに25μm、第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は10°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0056】
(6)比較例1
第1及び第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は26°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを形成した。
【0057】
(7)比較例2
第1及び第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は28°であった。
【0058】
(8)比較例3
第1及び第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は176°であった。
【0059】
(9)比較例4
比較例1と同様の可動電極基板を用い、実施例6と同様のフィルム−フィルムタイプのタッチパネルを作製した。
【0060】
(10)比較例5
第1の光透過性フィルムに25μm、第2の光透過性フィルムに75μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は15°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを作製した。
【0061】
(11)比較例6
第1の光透過性フィルムに25μm、第2の光透過性フィルムに100μmのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、上述の実施例1と同様にして透明導電性積層体を作製した。第1及び第2の光透過性フィルムの配向角差Δ°は10°であった。これを可動電極基板とし、フィルム−ガラスタイプのタッチパネルを作製した。
【0062】
(12)評価
これら実施例1〜8及び比較例1〜6に係る透明導電性積層体をタッチパネルに加工する工程において吸着性、印刷性を評価した。またこれら実施例1〜5及び比較例1〜4に係る透明導電性積層体に係るタッチパネルについて、ニュートンリングの有無及びペン摺動耐久性の評価を行った。以下これらの評価方法について説明する。
【0063】
〔吸着性〕
スクリーン印刷で回路を形成する際、ハードコート層側からエアーにより吸着し、フィルムを平坦に支持するときの状況を評価した。
問題なく支持することができた場合は○、自動に吸着せずに手で押さえつけることにより、吸着できた場合は△、手で押さえつけても吸着できなかった場合は×を表中に記載した。
【0064】
〔印刷性〕
スクリーン印刷により形成した回路の状態を評価した。印刷で形成した線を目視で観察し、異常(にじみ、線幅が太い、ぶれ)が見られた場合は×、異常が見られなかった場合は○を表中に記載した。
【0065】
〔ニュートンリング〕
これら実施例1〜8及び比較例1、4、5に係るタッチパネルについて、ニュートンリングの有無を評価した。評価は三波長蛍光ランプ下で机上には黒色ボード板を敷き行った。タッチパネルの傾斜を変えて、目視でニュートンリングの有無を確認した。
ニュートンリングが1つ以上見られた場合には×、ニュートンリングは見られなかった場合には○を表に記載した。
【0066】
〔ペン摺動耐久性〕
実施例1〜8及び比較例1、5、6に係るタッチパネルについて、ペン摺動耐久性を評価した。評価には同一条件で作製したタッチパネル2枚を使用し、1枚は額縁から2mmはなれた部分において、ペン摺動試験を行い、もう1枚はタッチパネルの中央部においてペン摺動試験を行った。当該試験は、試験前、及び1万回往復毎に10万回往復まで48ポイントでリニアリティの理論値ET、リニアリティLを測定し、リニアリティLが理論値ELの1.5%を超えていなければ、耐久性に問題なしとして試験を継続した。
【0067】
当該試験による各の実施例、比較例のペン摺動耐久性は、摺動回数10万回往復までリニアリティLが理論値ETの1.5%を超えない場合、ペン摺動耐久性が良好であると判断し、表中に○を記載した。
尚、当該試験において使用しているリニアリティLが理論値の1.5%を超えない範囲、及びペン摺動耐久性が8万回往復以上とする値は、タッチパネルの種類、搭載する機種の要求特性により異なるもので、この値に限定されない。
【0068】
ペン摺動試験の条件は、先端が0.8Rのポリアセタール製ペンを用いてタッチパネルの可動電極基板の表面(ハードコート面)をエッジに平行にペンを摺動させた。摺動速度は210mm/s、ストロークは35mm、ペン荷重は3Nとして行った。
【0069】
リニアリティの測定方法は、可動電極基板上又は固定電極基板上の平行電極間に直流電圧5Vを印加して、平行電極と垂直方向に9mm間隔で電圧を測定する。測定開始位置Aの電圧をEA、測定終了位置Bの電圧をEB、Aからの距離Xにおける電圧実測値をEX、理論値をET、リニアリティをLとすると、
ET=(EB−EA)・X/(B−A)+EA
L(%)=(|ET−EX|)/(EB−EA)・100
以上の実施例及び比較例の測定結果を下記の表1(第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが5μm以下で略等しい場合)及び表2(第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが異なる場合)に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
上記実施例1〜8による本発明の透明導電性積層体は、カール、吸着性、印刷性において良好な結果であった。また実施例1〜8による本発明の透明導電性積層体を可動電極基板に用いたフィルム−ガラス及びフィルム−フィルムタイプのタッチパネルにおいても、ニュートンリングは観察されず、ペン摺動耐久性も良好な結果であった。
一方、配向角差Δが20°を超える比較例1の透明導電性積層体は、カール量が8mmと大きいため、吸着時に自動吸着することができなかった。一時的にフィルムの四隅を手で押さえつけることによって、フィルムを支持することが出来た。比較例1の透明導電性積層体を可動電極基板に用いたフィルム−ガラスタイプのタッチパネルは、ニュートンリングは観察されず、ペン摺動耐久性も良好な結果であった。
【0073】
また、配向角差Δが20°を超える比較例2の透明導電性積層体は、カール量が10mmと大きいため、吸着時に自動吸着することができなかった。一時的にフィルムの四隅を手で押さえつけたが、吸着することは難しく、印刷が困難であった。よって、タッチパネルとして評価が出来なかった。
【0074】
更に、配向角差Δが20°を超える比較例3の透明導電性積層体は、カール量が21mmと大きいため、吸着時に自動吸着することができなかった。一時的にフィルムの四隅を手で押さえつけたが、吸着することが難しく、印刷が困難であった。よって、タッチパネルとして評価が出来なかった。
【0075】
また、比較例4においては、配向角差Δが20°を超える比較例1の透明導電性積層体を可動電極基板に用いてフィルム−フィルムタイプのタッチパネルを作製した。固定電極基板の平坦性がガラスよりも良好でなく、更に可動電極基板として用いた透明導電積層体のカールが大きいため、タッチパネルのエッジに近い部分にニュートンリングが発生した。また試験前のリニアリティLが理論値ETの1.5%を超えていたため、ペン摺動耐久性は実施しなかった。
【0076】
第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが異なり、配向角差Δが10°を超える比較例5の透明導電性積層体は、カール量が10mmと大きいため、吸着時に自動吸着することができなかった。一時的にフィルムの四隅を手で押さえつけたが、吸着することが難しく、印刷が困難であった。よって、タッチパネルとして評価が出来なかった。
【0077】
第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが異なり、厚み差が50μmを超える比較例7の透明導電性積層体は、カール量が10mmと大きいため、吸着時に自動吸着することができなかった。一時的にフィルムの四隅を手で押さえつけたが、吸着することが難しく、印刷が困難であった。よって、タッチパネルとして評価が出来なかった。
【0078】
以上述べたように、本発明の透明導電性積層体は、従来は好適に用いることがなかった光透過性フィルム原反の端部の比較的安価な材料を用いる場合においても、各フィルムの配向角差を選定することによって、熱工程で発生するカールを抑制することができ、印刷工程で問題となる平坦性を改善し、外観が良好なタッチパネルを、比較的安価に作製することができる。
特に、光透過性フィルムの厚みを略等しくして、すなわち厚みを対称として構成する場合、粘着層に対して両フィルムが対称に接着されることから、これら第1及び第2の光透過性フィルムから粘着層に加わる応力の不均衡を抑制することができて、熱工程通過後の透明導電性フィルムに殆ど反りを発生させることなく、良好な平坦性をもって透明導電性積層体、タッチパネルを構成することができた。このように、厚みを略等しく、また厚みの差を略一定範囲内とする場合は、製造工程上、材料管理を簡易化して、作業性の向上を図ることができる。したがって、従来に比して安価な材料を用い得ることとあいまって、生産性の向上、コストの低減化を図ることが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態の例について説明したが、勿論、本発明は以上説明した各例に限定されるものではない。例えば上述の各例において、透明導電膜2と第1の光透過性フィルム1との間に反射防止膜等の層を介在させるとか、またハードコート層3と第1の光透過性フィルム1との間に下地層等を設ける等の変形が可能である。また例えば、上述の各実施例においては透明導電膜2の厚さを20nmとした場合を示すが、この厚さを10nm以上40nm以下とする場合は例えばタッチパネルに適用して好適な導電性を得ることができるものであり、このように、透明導電性積層体及びタッチパネルの材料、構成において、本発明構成、技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による透明導電性積層体の一例の概略構成図である。
【図2】本発明によるタッチパネルの一例の概略構成図である。
【図3】本発明による透明導電性席層体の光透過性フィルムの原反の一例の概略構成図である。
【図4】本発明によるタッチパネルの一例の概略構成図である。
【図5】Aはタッチパネルの一製造工程図である。Bはタッチパネルの一製造工程図である。Cはタッチパネルの一製造工程図である。
【符号の説明】
【0081】
1.第1の光透過性フィルム、2.第2の光透過性フィルム、3.ハードコート層、4.透明導電膜、10.透明導電性積層体、11.基材、12.透明導電膜、13.ドットスペーサー、21.固定電極基板、22.可動電極基板、30.粘着層、31.ハードコートフィルム、32.導電性フィルム、50.原反、51、分子配向、50a.領域、50b.領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体であって、
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が0μm以上5μm以下とされ、
上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが20°以下とされて成る
ことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項2】
第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体であって、
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が5μmを超え50μm以下であり、
かつ上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが10°以下とされて成る
ことを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項3】
上記第1及び第2の光透過性フィルムは、上記粘着剤に対して厚みが対称になるように形成される
ことを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項4】
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが、それぞれ25μm以上125μm以下とされて成る
ことを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項5】
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みが、それぞれ25μm以上125μm以下とされて成る
ことを特徴とする請求項2記載の透明導電性積層体。
【請求項6】
上記第1及び第2の光透過性フィルムは、二軸延伸フィルムにより形成されて成る
ことを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項7】
上記第1及び第2の光透過性フィルムは、二軸延伸フィルムにより形成されて成る
ことを特徴とする請求項2記載の透明導電性積層体。
【請求項8】
上記二軸延伸フィルムは、配向性PET及びPENにより形成されて成る
ことを特徴とする請求項6記載の透明導電性積層体。
【請求項9】
上記二軸延伸フィルムは、配向性PET及びPENにより形成されて成る
ことを特徴とする請求項7記載の透明導電性積層体。
【請求項10】
第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体を有するタッチパネルであって、
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚みの差が0μm以上5μm以下とされ、上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが20°以下とされて成り、
上記透明導電性積層体とは別体の基材上に、少なくとも透明導電膜及びドットスペーサーが形成され、
上記透明導電性積層体及び上記基材が、互いの上記透明導電膜が向かい合うように所定の間隔をもって配置されて成る
ことを特徴とするタッチパネル。
【請求項11】
第1の光透過性フィルムの片面に少なくともハードコート層が形成されたハードコートフィルムと、第2の光透過性フィルムの片面に少なくとも透明導電膜が形成された導電性フィルムとが、上記第1の光透過性フィルムの上記ハードコート層及び上記第2の光透過性フィルムの上記透明導電膜が形成されていない面同士を粘着剤で貼り合わせて成る透明導電性積層体を有するタッチパネルであって、
上記第1及び第2の光透過性フィルムの厚み差が5μmを超え50μm以下であり、
かつ上記第1及び第2の光透過性フィルムの配向角度の差Δが10°以下とされて成り、
上記透明導電性積層体とは別体の基材上に、少なくとも透明導電膜及びドットスペーサーが形成され、
上記透明導電性積層体及び上記基材が、互いの上記透明導電膜が向かい合うように所定の間隔をもって配置されて成る
ことを特徴とするタッチパネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−56117(P2006−56117A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239919(P2004−239919)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】