説明

透明導電膜、透明導電膜付き基材、及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】透明導電膜、透明導電膜付き基材、及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子において、透明樹脂層同士の混合を抑制し、一方の透明樹脂層が他方の透明樹脂層によってダメージを受け難く、表面が平滑で導電性が均一とする。
【解決手段】透明導電膜3は、複数の金属細線7を含む第1の透明樹脂層8と、導電性高分子を含む第2の透明樹脂層9と、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との間に設けられる第3の透明樹脂層10と、を含む。第2の透明樹脂層9は、水に対して可溶な樹脂を含み、第3の透明樹脂層10は水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含む。第3の透明樹脂層10によって、第2の透明樹脂層9が第1の透明樹脂層8と混合することを抑制でき、第2の透明樹脂層9が第1の透明樹脂層8からダメージを受け難くできる。従って、第2の透明樹脂層9の表面が平滑で導電性が均一となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の光学デバイスに用いられる透明導電膜、透明導電膜付き基材、及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子は、一対の電極で挟持された有機発光層が透明な基材上に形成されたものであり、有機発光層からの光は、一方の電極を透過して基材側から取り出される。この種の有機EL素子において、基材側の電極の材料として、導電性及び透光性を有するものが用いられ、インジウムスズ酸化物(以下、ITOという)が広く用いられる。しかし、ITOを材料として用いた電極は曲げや物理的な応力に対して脆弱で壊れやすい。また、ITOを用いた電極の導電性を向上させるためには、高い蒸着温度及び/又は高いアニール温度が必要となり、有機EL素子を用いたデバイスの製造において、コスト高となる虞がある。
【0003】
そこで、ITOに代えて、複数の金属細線を含む透明導電膜を電極として用いた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の透明導電膜付き基材の構成例について、図3を参照して説明する。透明導電膜付き基材101は、透明性を有する基材102と、この基材102上に形成される透明導電膜103と、を備える。透明導電膜103は、細線状の複数の金属細線104と、バインダーとしての第1の透明樹脂層105と、第1の透明樹脂層105上を覆う第2の透明樹脂層106と、を含む。複数の金属細線104は、第1の透明樹脂層105によって、基材102上に接着されている。また、これら複数の金属細線104は、第1の透明樹脂層105の基材102と対向する面と反対側の一面から突出している。このため、その一面が凹凸状となり、表面平滑性が悪いので、この一面の表面平滑性を向上させるために、第1の透明樹脂層105上に第2の透明樹脂層106が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−505358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第2の透明樹脂層106が第1の透明樹脂層105上に塗工により重ねて塗られる場合、第1の透明樹脂層105と第2の透明樹脂層106とが混合することがある。また、第2の透明樹脂層106が凹凸状の第1の透明樹脂層105によってダメージを受けることがある。このように、各透明樹脂層の材料が混合したり、一方の層がダメージを受けると導電性が低下する又は不均一になる虞がある。さらに、第2の透明樹脂層106を第1の透明樹脂層105上に均一に塗工することができず、透明導電膜103の表面において、導電性が不均一になる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、金属細線を含む透明樹脂層と、これを平滑化する透明樹脂層とを備え、これらの透明樹脂層の混合を抑制すると共に、一方の透明樹脂層が他方の透明樹脂層によって、ダメージを受け難く、表面が平滑で且つ導電性が均一な透明導電膜、透明導電膜付き基材、及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透明導電膜は、金属細線を含む第1の透明樹脂層と、導電性高分子を含む第2の透明樹脂層と、前記第1の透明樹脂層と前記第2の透明樹脂層との間に設けられる第3の透明樹脂層と、を備え、前記第1の透明樹脂層及び前記第2の透明樹脂層の少なくとも一方は、水に対して可溶な樹脂を含み、前記第3の透明樹脂層は、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含むことを特徴とする。
【0008】
この透明導電膜において、前記金属細線は、金属ナノワイヤ、又はカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0009】
この透明導電膜において、前記第3の透明樹脂層は、多孔質層として形成され、前記第3の透明樹脂層の孔径は、0.5nm以上1μm以下であることが好ましい。
【0010】
この透明導電膜において、前記多孔質層の膜厚は、5nm以上1μm以下であることが好ましい。
【0011】
この透明導電膜において、前記第3の透明樹脂層の表面における水に対する接触角は、75°以下であることが好ましい。
【0012】
この透明導電膜において、前記第3の透明樹脂層は、シリコーン樹脂から成るバインダーを含むことが好ましい。
【0013】
この透明導電膜が基材上に形成されて、透明導電膜付き基材として構成されることが好ましい。
【0014】
この透明導電膜付き基材は、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る透明導電膜によれば、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含む第3の透明樹脂層が第1の透明樹脂層と第2の透明樹脂層との間に設けられるので、第1の透明樹脂層及び第2の透明樹脂層を形成する際、一方が他方に混合することを抑制できる。また、第1の透明樹脂層と第2の透明樹脂層とが混合しないので、一方が他方からダメージを受け難くすることができる。従って、表面が平滑で導電性が均一な透明導電膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る透明導電膜付き基材を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の断面構成図。
【図2】同透明導電膜付き基材の断面図。
【図3】従来の透明導電膜付き基材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る透明導電膜について、図面を参照して説明する。本実施形態の透明導電膜は、透光性を有する基材上に形成され、透明導電膜付き基材として構成され、例えば有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子に用いられる。図1は、有機EL素子の断面構成を示す。有機EL素子1は、基材2と、透明導電膜3と、有機発光層4と、導体層5と、を備え、基材2上に透明導電膜3、有機発光層4、及び導体層5が順次積層された構成となっている。基材2と透明導電膜3とが、透明導電膜付き基材6を構成する。透明導電膜3は、有機EL素子1の陽極として機能し、有機発光層4に正孔(ホール)を注入する。一方、導体層5は、有機EL素子1の陰極として機能し、有機発光層4に電子を注入する。
【0018】
有機発光層4は、透明導電膜3からの正孔の注入を促進する正孔注入層が、透明導電膜3との間に設けられることが好ましく、導体層5からの電子の注入を促進する電子注入層が導体層5との間に設けられることが好ましい。さらに、正孔を効率的に輸送する正孔輸送層や、電子を効率的に輸送する電子輸送層が設けられてもよい。
【0019】
このように構成された有機EL素子1において、透明導電膜3と導体層5との間に透明導電膜3側を+電位として電圧が印加されると、正孔が透明導電膜3から有機発光層4に注入され、電子が導体層5から有機発光層4に注入される。そして、有機発光層4に注入された正孔と電子とが、有機発光層4内で再結合することにより、有機発光層4が発光する。有機発光層4から発せられた光は、透明導電膜付き基材6(透明導電膜3及び基材2)を透過して、有機EL素子1の外へ取り出される。なお、導体層5に照射された光は、導体層5の表面で反射され、透明導電膜付き基材6を透過して、有機EL素子1の外へ取り出される。
【0020】
なお、基材2の材料は、透光性を有する透明なものであれば、特に限定されない。このような基材2としては、例えばソーダガラス若しくは無アルカリガラス等のリジッドな透明ガラス板、又はポリカーボネイト若しくはエチレンテレフタレート等のフレキシブルな透明プラスチック板等が用いられる。基材2としてリジッドな透明ガラス板が用いられた場合、この基材2を用いたデバイスの強度が優れると共に、基材2上への透明導電膜3の形成を容易にすることができる。基材2としてフレキシブルな透明プラスチック板が用いられた場合、基材2を用いたデバイスを軽量化できると共に、柔軟性を有するデバイスとすることができる。
【0021】
また、有機発光層4の材料としては、例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、若しくはこれらの誘導体、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、又はこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物若しくは高分子等が用いられる。また、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体若しくはユーロピウム錯体等の発光材料、又はこれらを分子内に有する化合物若しくは高分子等の燐光発光材料も用いることができる。これらの材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0022】
また、導体層5の材料としては、例えばアルミニウム等が用いられる。また、アルミニウムと他の材料とを組み合わせて積層構造としてもよい。このような組み合わせとしては、アルカリ金属とアルミニウムとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムとの積層体、アルカリ金属の酸化物とアルミニウムとの積層体、アルカリ土類金属若しくは希土類金属とアルミニウムとの積層体、又はこれらの金属種と他の金属との合金などが挙げられる。具体的には、ナトリウム、ナトリウムとカリウムとの合金、リチウム、若しくはマグネシウム等とアルミニウムとの積層体、マグネシウムと銀との混合物、マグネシウムとインジウムとの混合物、アルミニウムとリチウムとの合金、フッ化リチウムとアルミニウムの混合物との積層体、又はアルミニウムと酸化アルミニウム(Al)の混合物との積層体等が挙げられる。
【0023】
次に、透明導電膜付き基材6の詳細について、図2を参照して説明する。透明導電膜付き基材6は、基材2と、この基材2上に形成される透明導電膜3と、を備える。透明導電膜3は、複数の金属細線7を含む第1の透明樹脂層8と、導電性高分子を含む第2の透明樹脂層9と、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との間に設けられる第3の透明樹脂層10と、を含む。基材2上に、第1の透明樹脂層8、第3の透明樹脂層10、及び第2の透明樹脂層9が順次積層されている。第3の透明樹脂層10は、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含み、第1の透明樹脂層8及び第2の透明樹脂層9の少なくとも一方は、水に対して可溶な樹脂を含む。これら第1の透明樹脂層8、第3の透明樹脂層10、及び第2の透明樹脂層9が、順次基板2上に塗工される。
【0024】
複数の金属細線7は、第1の透明樹脂層8により、基材2上に接着される。この状態において、これら複数の金属細線7の一部は、第1の透明樹脂層8の基材2と対向する面と反対側の一面から突出しており、第1の透明樹脂層8の上記一面が、凹凸状になっている。
【0025】
第1の透明樹脂層8に含まれる複数の金属細線7は、互いに接触又は近接し合い、三次元的なネットワークを構成する。また、第1の透明樹脂層8から突出した金属細線7の一部は、第3の透明樹脂層10を貫通して、第2の透明樹脂層9に達している。これら突出した金属細線7が、第2の透明樹脂層9と第1の透明樹脂層8とを電気的に接続し、透明導電膜3全体として高い導電性が保持される。
【0026】
本実施形態では、第2の透明樹脂層9が、水に対して可溶な樹脂を含む。この第2の透明樹脂層9が塗工される際、第2の透明樹脂層9は、第1の透明樹脂層8上に形成された第3の透明樹脂層10上に水を主溶媒として塗布される。この場合、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含む第3の透明樹脂層10が、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との間に介在するので、第2の透明樹脂層9が、第1の透明樹脂層8に侵入することを抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、第1の透明樹脂層8の一面から突出した金属細線7の一部のみが、第3の透明樹脂層10の第1の透明樹脂層8と対向する面と反対側の一面から突出するので、第3の透明樹脂層10の上記一面は平滑化されている。そのため、第2の透明樹脂層9の塗工の際、第2の透明樹脂層9を第3の透明樹脂層10上に均一に塗工することができる。
【0028】
金属細線7は、数nm以上数十μm以下の線幅を有する繊維状金属、金属、又は金属微粒子から成る。金属細線7の長さは、金属細線7の長さ方向に垂直な断面の直径よりも十分に長い。透明導電膜3内に含まれる複数の金属細線7の量は、0.1mg/m以上1000mg/mであることが好ましく、1mg/m以上100mg/mであることがより好ましい。複数の金属細線7のそれぞれの長さは、透明導電膜3の透光性を考慮して、300nm以下であることが好ましく、複数の金属細線7の平均直径は、0.3nm以上200nm以下であることが好ましい。また、同様に、複数の金属細線7の平均アスペクト比は、10以上10000以下であることが好ましい。さらに、透明導電膜3の導電性を考慮して、第1の透明樹脂層8の厚さは、複数の金属細線7の平均直径以上500nm以下であることが好ましい。
【0029】
金属細線7の材料としては、カーボン系繊維状材料、金属系繊維状材料、金属酸化物系繊維状材料、又は複合系繊維状材料等が用いられる。カーボン系繊維状材料としては、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、又はカーボンナノワイヤ等が用いられる。金属系繊維状材料としては、例えば金属ナノワイヤ、金属ナノチューブ、又は金属ナノロッド等が用いられる。金属酸化物系繊維状材料としては、例えば金属酸化物ナノワイヤ、金属酸化物ナノチューブ、又は金属酸化物ナノロッド等が用いられる。複合系繊維状材料としては、例えば金属又は金属酸化物により表面がコーティングされた有機物繊維等が用いられる。
【0030】
上記の金属細線7の材料に中でも、特に、金属ナノワイヤ、又はカーボンナノチューブを用いることが好ましい。それにより、透明導電膜3の導電性を向上させることができると共に、透明導電膜3の抵抗を低下させることができる。また、透明導電膜3の光の透過率を向上させることができる。
【0031】
金属ナノワイヤは、細線状に形成され、金属元素を含む。金属ナノワイヤの長さは、透明導電膜3の導電性を考慮して、3μm以上であることが好ましく、3μm以上500μm以下であることがより好ましく、3μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。また、金属ナノワイヤの平均直径は、透明導電膜3の透光性を考慮すれば、300nm以下であることが好ましく、導電性を考慮すれば、10nm以上であることが好ましい。また、これら透光性及び導電性の両方を考慮すれば、金属細線7の平均直径は、30nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0032】
金属ナノワイヤに含まれる金属として、銀、銅、金、アルミニウム、ロジウム、イリジウム、コバルト、亜鉛、ニッケル、インジウム、鉄、パラジウム、白金、錫、若しくはチタン等、又はこれらの合金が挙げられる。透明導電膜3の導電性を向上させるために、銀、銅、金、アルミニウム、又はコバルトを用いることが好ましい。金属ナノワイヤの製造方法は、特に限定されることなく、例えば液相法又は気相法等の公知の方法が用いられる。
【0033】
カーボンナノチューブは、炭素原子が六角網目状に配置されたグラフェンシートがチューブ状に巻かれた立体構造を有する炭素系繊維材料である。カーボンナノチューブは、一枚のチューブからなる単層ナノチューブ(SWCNT:シングルウォールナノチューブ)と複数のチューブが積層された多層ナノチューブ(MWCNT:マルチウォールナノチューブ)とに分類される。また、カーボンナノチューブは、グラフェンシートの構造の違いから、カイラル型のカーボンナノチューブとジグザグ型のカーボンナノチューブとアームチェア型のカーボンナノチューブとに分類される。
【0034】
カーボンナノチューブとしては、導電性に優れる単層カーボンナノチューブを用いることが好ましく、金属性を有するアームチェア型の単層カーボンナノチューブを用いることがより好ましい。カーボンナノチューブの製造方法としては、特に限定されることなく、例えば二酸化炭素の触媒水素還元、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長(CVD)法、又はHiPco法等の公知の方法が用いられる。
【0035】
カーボンナノチューブのアスペクト比は、透明導電膜3の導電性を考慮して、102以上であることが好ましく、103以上であることがより好ましい。また、カーボンナノチューブの平均長さは、3μm以上であることが好ましく、3μm以上500μm以下であることがより好ましく、3μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。また、カーボンナノチューブの平均直径は、100nm以下であることが好ましく、0.1nm以上50nm以下であることがより好ましく、1nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
第1の透明樹脂層8の材料は、特に限定されることなく、例えばシリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、又はその他の熱可塑性樹脂等が用いられる。また、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が用いられてもよい。
【0037】
また、第1の透明樹脂層8の導電性及び光取り出し効率を向上させるために、ナノ粒子が第1の透明樹脂層8に添加されてもよい。このナノ粒子としては、例えば銅、銀、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物、金、カーボン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、又は酸化アルミニウム等の微粒子が用いられる。また、これらナノ粒子の形状は、特に限定されることなく、例えば球形状に形成されてもよい。
【0038】
第1の透明樹脂層8の塗工法としては、特に限定されることなく、例えばスピンコート、スクリーン印刷、ディップコート、ダイコート、キャスト、スプレーコート、又はグラビアコート等の公知の工法が用いられる。また、第1の透明樹脂層8の表面を平滑化させると共にこれらの表面の抵抗値を安定させるために、例えば円筒形状のローラーを用いて、第1の透明樹脂層8の表面を加圧してもよい。
【0039】
第2の透明樹脂層9に含まれる導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン等が用いられる。また、これらを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。また、導電性を高めるために、ドーパントを用いたドーピングを行っても良い。ドーパントは、特に限定されることなく、例えばスルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属等が用いられる。
【0040】
第2の透明樹脂層9の材料は、特に限定されることなく、例えばシリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリ酢酸ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、又はその他の熱可塑性樹脂等が用いられる。また、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が用いられてもよい。
【0041】
また、第2の透明樹脂層9の導電性及び光取り出し効率を向上させるために、第1の透明樹脂層8と同様に、第2の透明樹脂層9にナノ粒子が添加されてもよい。
【0042】
第2の透明樹脂層9の塗工法としては、第1の透明樹脂層8と同様である。また、第1の透明樹脂層8と同様に、例えば円筒形状のローラーを用いて、第2の透明樹脂層9の表面を加圧してもよい。
【0043】
第3の透明樹脂層10は、多孔質層として形成され、複数の孔部を有する。第3の透明樹脂層10の孔径が0.5nmより小さい場合、金属細線7を第2の透明樹脂層9へ貫通させることができなくなるので、透明導電膜3の導電性を確保できなくなる。また、第3の透明樹脂層10の孔径が1μmより大きい場合、水に対して可溶な樹脂を含む第2の透明樹脂層9が第1の透明樹脂層8に侵入してしまい、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との混合を抑制し難くなる。従って、第3の透明樹脂層10の孔径は、0.5nm以上1μm以下であることが好ましい。これにより、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9とが混合することを確実に抑制することができると共に、透明導電膜3の導電性を確保することができる。
【0044】
また、第3の透明樹脂層10の厚さが、5nmより小さい場合、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との混合を抑制し難くなる。また、第3の透明樹脂層10の厚さが、1μmより大きい場合、第3の透明樹脂層10の一面から金属細線7を突出さることができず、透明導電膜3の導電性が保たれなくなる。従って、第3の透明樹脂層10の厚さは、5nm以上1μm以下であることが好ましい。これにより、透明導電膜3の導電性を確保することができると共に、第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9とが混合することを確実に抑制することができる。
【0045】
また、第3の透明樹脂層10の表面における水に対する接触角は、75°以下であることが好ましい。それにより、第1の透明樹脂層8及び第2の透明樹脂層9を形成するための材料であるコーティング剤は、主溶媒が水であることが多いので、このようなコーティング剤に対して濡れ性が高くなり、均一塗工性に優れるようになる。
【0046】
第3の透明樹脂層10の材料としては、多孔質層を形成可能ならば特に限定されることなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、又はその他の熱可塑性樹脂等が用いられる。また、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が用いられてもよい。
【0047】
上記の第3の透明樹脂層10の材料として、特に、シリコン樹脂からなるバインダーを用いることが好ましい。それにより、第1の透明樹脂層8及び第2の透明樹脂層9を形成するためのコーティング剤に対して濡れ性が高くなり、均一塗工性に優れるようになる。
【0048】
このようなシリコーン樹脂としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ウレ5イドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、又は例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類が用いられる。これらのアルコキシシラン類は1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、多官能のアルコキシシランに加えて、1官能のアルコキシシランを併用することもできる。1官能のアルコキシシランとしては、例えばトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、又はトリエチルエトキシシラン等が用いられる。また、これらの縮合物であるメチルシリケートやエチルシリケート等も用いられる。
【0049】
また、第3の透明樹脂層10の導電性及び光取り出し効率を向上させるために、第1の透明樹脂層8及び第2の透明樹脂層9と同様に、第3の透明樹脂層10にナノ粒子が添加されてもよい。
【0050】
第3の透明樹脂層10の塗工法としては、第1の透明樹脂層8、及び第2の透明樹脂層9と同様である。また、第1の透明樹脂層8、及び第2の透明樹脂層9と同様に、例えば円筒形状のローラーを用いて、第3の透明樹脂層9の表面を加圧してもよい。
【0051】
本実施形態の透明導電膜付き基材6によれば、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含む第3の透明樹脂層10が第1の透明樹脂層8と第2の透明樹脂層9との間に設けられているので、第2の透明樹脂層9が第1の透明樹脂層8に混合することを抑制できる。また、第3の透明樹脂層10上に第2の透明樹脂層9が形成されるので、第1の透明樹脂層8上に直接第2の透明樹脂層9が形成される場合に比べて、第2の透明樹脂層9が第1の透明樹脂層8からダメージを受け難くすることができる。また、第3の透明樹脂層10は、金属細線7を含む第1の透明樹脂層8よりも平滑なので、この第3の透明樹脂層10上に第2の透明樹脂層9を均一に塗工することができる。その結果、透明導電膜3の導電性を均一にすることができる。このような透明導電膜付き基材6が有機EL素子の基板として用いられることにより、均一な輝度で発光することができ、信頼性の高い面発光デバイスを提供することができる。
【0052】
次に、実施例1乃至10及び比較例1乃至6について説明する。
【0053】
以下の実施例1乃至10及び比較例1乃至6のサンプルを作製する前に、金属細線、第1の透明樹脂層の材料、第1の多孔質層の材料、第2の多孔質層の材料、第3の多孔質層の材料、及び第2の透明樹脂層の材料、を作製した。以下、これらについて順に説明する。
【0054】
(金属細線)
金属細線として、公知論文「Materials Chemistry and Physics vol.114 p333-338 “Preparation of Ag nanorods with high yield by polyol process”」に準じて銀ナノワイヤを作製した。この場合、銀ナノワイヤの平均直径を50nmとし、銀ナノワイヤの平均長さを5μmとした。
【0055】
(第1の透明樹脂層の材料)
上記の銀ナノワイヤ3質量部とセルロース樹脂1質量部とを水を分散媒として混合した。それにより、固形分4.0%の金属細線を含む第1の透明樹脂層の材料を作製した。
【0056】
(第1の多孔質層の材料)
三菱化学株式会社製シリコーン樹脂MS51(酸化物換算51%)9.8質量部をイソプロピルアルコール(以下、IPAという)85.2質量部に溶解した。次に、このシリコーン樹脂とIPAとの混合液に、0.1H硝酸5質量部を加えてよく混合した後、25℃の恒温雰囲気下において1時間撹拌混合した。それにより、固形分5%の第1の多孔質層の材料を作製した。
【0057】
(第2の多孔質層の材料)
三菱化学株式会社製シリコーン樹脂MS51(酸化物換算51%)5.88質量部をIPA82.54質量部に溶解した。次に、このシリコーン樹脂とIPAとの混合液にITOナノ粒子(シーアイ化成株式会社製、固形分30%のIPA分散液)6.67質量部を添加した。さらに、このITOナノ粒子が添加されたシリコーン樹脂とIPAとの混合液に0.1H硝酸5質量部を加えてよく混合した後、25℃の恒温雰囲気下において1時間撹拌混合した。それにより、固形分5%の第2の多孔質層の材料を作製した。
【0058】
(第3の多孔質層の材料)
三菱化学株式会社製シリコーン樹脂MS51(酸化物換算51%)9.8質量部をIPA85.2質量部に溶解した。次に、このシリコーン樹脂とIPAとの混合液に0.1Hアンモニア5質量部を加えてよく混合した後、25℃の恒温雰囲気下において1時間撹拌混合した。それにより、固形分5%の第3の多孔質層の材料を作製した。
【0059】
(第2の透明樹脂層の材料)
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)1質量部とポリアニオンポリ(スチレンスルホン酸塩)2.5質量部とを水を分散媒として混合した。それにより、固形分3.5%の導電性高分子を含む第2の透明樹脂層の材料を作製した。
【0060】
次に、実施例1乃至10及び比較例1乃至6のサンプルを作製した。
【0061】
(実施例1)
基材として、コーニング社製無アルカリガラスNo.1737(波長が500nmの光の屈折率が1.50〜1.53)を用意した。次に、この基材上に、スピンコート法により、予め作製した金属細線を含む第1の透明樹脂層の材料を厚さが100nmとなるように塗布し、100℃で5分間加熱した。それにより、基材上に第1の透明樹脂層を形成した。次に、第1の透明樹脂層上に、第1の多孔質層の材料を厚さが30nmとなるように塗布し、100℃で5分間加熱した。それにより、第1の透明樹脂層上に水との接触角が30度である多孔質層を形成した。次に、多孔質層上に、第2の透明樹脂層の材料を厚さが100nmとなるように塗布し、100℃で5分間加熱した。それにより、多孔質層上に、第2の透明樹脂層を形成した。こうして、実施例1のサンプルを作製した。
【0062】
(実施例2)
第1の多孔質層の材料の代わりに、第2の多孔質層の材料を用いて、孔径が10nmであり、水に対する接触角が60度である第2の多孔質層を形成した点を除いて、上記実施例1と同様にして、実施例2のサンプルを作製した。
【0063】
(実施例3)
基材上に第1の多孔質層の材料を厚さが300nmとなるように塗布した点を除いて、上記実施例1と同様にして、実施例3のサンプルを作製した。
【0064】
(実施例4)
第1の多孔質層の材料の代わりに、第3の多孔質層の材料を用いて、孔径が300nmであり、水に対する接触角が30度である第3の多孔質層を形成した点を除いて、上記実施例1と同様にして、実施例4のサンプルを作製した。
【0065】
(実施例5)
離型フィルム上に、実施例1と同様にして、順次、第1の透明樹脂層と、第1の多孔質層と、第2の透明樹脂層と、を形成した。次に、この離型フィルム、第1の透明樹脂層、第1の多孔質層、第2の透明樹脂層から成る積層体をガラス基板上に転写した。こうして、実施例5のサンプルを作製した。
【0066】
(実施例6)
実施例1のサンプル上に株式会社同人化学研究所製N,N−ジフェニル−N,N−ビス3−メチル−フェニル−1,1−ジフェニル−4,4ジアミンを真空蒸着した。これにより、実施例1のサンプル上に正孔輸送層を形成した。この場合、正孔輸送層の厚さを50nmとした。次に、正孔輸送層上に株式会社同人化学研究所製アルミキノリノール錯体(トリス(8−ヒドロキノリン)アルミニウム)を真空蒸着した。これにより、正孔輸送層上に有機発光層を形成した。この場合、有機発光層の厚さを50nmとした。次に、有機発光層上にアルミニウムを真空蒸着した。これにより、有機発光層上にアルミニウムから成る導体層を形成した。こうして、実施例1のサンプルを陽極とする有機EL素子を作製した。
【0067】
(実施例7)
有機EL素子の陽極として、実施例2のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、実施例7のサンプルを作製した。
【0068】
(実施例8)
有機EL素子の陽極として、実施例3のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、実施例8のサンプルを作製した。
【0069】
(実施例9)
有機EL素子の陽極として、実施例4のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、実施例9のサンプルを作製した。
【0070】
(実施例10)
有機EL素子の陽極として、実施例5のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、実施例10のサンプルを作製した。
【0071】
(比較例1)
第1の多孔質層と第2の透明樹脂層とを形成しなかった点を除いて、上記実施例1と同様にして、比較例1のサンプルを作製した。
【0072】
(比較例2)
第1の多孔質層を形成しなかった点を除いて、上記実施例1と同様にして、比較例2のサンプルを作製した。
【0073】
(比較例3)
第1の多孔質層の代わりに、スパッタ法により孔径が0.1mmの二酸化ケイ素(SiO)を形成した点を除いて、上記実施例1と同様にして、比較例3のサンプルを作製した。
【0074】
(比較例4)
有機EL素子の陽極として、比較例1のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、比較例4のサンプルを作製した。
【0075】
(比較例5)
有機EL素子の陽極として、比較例2のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、比較例5のサンプルを作製した。
【0076】
(比較例6)
有機EL素子の陽極として、比較例3のサンプルを用いた点を除いて、上記実施例6と同様にして、比較例6のサンプルを作製した。
【0077】
上記実施例1乃至5及び比較例1乃至3のサンプルについて、表面抵抗の測定試験、表面粗さRaの測定試験、及び塗工性の評価試験を行った。また、上記実施例6乃至10及び比較例4乃至6について、有機EL素子の動作の評価試験を行った。以下、表面抵抗の測定試験、表面粗さRaの測定試験、塗工性の測定、及び有機ELの動作の評価試験ついて順に説明する。
【0078】
(表面抵抗の測定)
三菱化学株式会社製ロレスタEP MCP−T360を用いて各サンプルの表面抵抗値を測定した。
【0079】
(表面粗さの測定)
株式会社島津製作所製ナノサーチ顕微鏡SFT−3500を用いて、測定視野を縦30μm及び横30μmとして、各サンプルの表面粗さを測定した。
【0080】
(塗工性の評価)
各サンプルの透明導電膜の表面の状態を目視により観察した。
【0081】
(有機EL素子の動作の評価)
有機EL素子に逆電圧(発光させる際に流す電流と逆向き)を5[V]印加し、有機EL素子は点灯するか否かを調べた。
【0082】
実施例1乃至10及び比較例1乃至6について行った上記の試験の結果を表1に示す。なお、表中の「○」は、塗工がサンプルの表面に良好にされていることを示し、「×」は、塗工がサンプルの表面に良好にされていないことを示している。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示すように、表面抵抗の測定において、表面抵抗値は、実施例1乃至5では8〜15Ω/□であった。これに対して、比較例3では、表面抵抗値が、500Ω/□と非常に大きく、比較例2では、表面抵抗値が不安定だった。表面粗さRaの測定において、表面粗さRaは、実施例1乃至5では2〜8nmだった。これに対して、比較例1では、表面粗さRaが15nmであり、実施例2では、表面粗さRaが10nmだった。塗工性の評価において、塗工性は、実施例1乃至5ではいずれも良好だった。これに対して、比較例2では、塗工性は良好でなく、はじきが発生した。有機EL素子の動作の評価において、実施例6乃至実施例10では、いずれの有機EL素子も点灯した。これに対して、比較例4乃至6では、いずれの有機EL素子も点灯しなかった。
【0085】
これらの結果は、第1の透明樹脂層と第2の透明樹脂層との間に第3の透明樹脂層が設けられた透明導電膜付き基材は、表面抵抗値及び表面粗さが小さく、塗工性も良好であることを示す。また、このような透明導電膜付き基材を備えた有機EL素子は、信頼線の高いデバイスであることを示す。
【0086】
本発明は上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変更が
可能である。例えば、基材2上に、第2の透明樹脂層9と、第3の透明樹脂層10とが順次積層され、第1の透明樹脂層8が、水に対して可溶な樹脂を含んでもよい。つまり、水に対して可溶な上層の透明樹脂層を塗布により形成する場合に、それが下層の透明樹脂層と混合しないように、それらの間に水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含む透明樹脂層を設けたものであればよい。また、透明導電膜3は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は太陽有機電池等の透明電極として用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 有機エレクトルミネッセンス素子
2 基材
6 透明導電膜付き基材
7 金属細線(金属ナノワイヤ又はカーボンナノチューブ)
8 第1の透明樹脂層
9 第2の透明樹脂層
10 第3の透明樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属細線を含む第1の透明樹脂層と、
導電性高分子を含む第2の透明樹脂層と、
前記第1の透明樹脂層と前記第2の透明樹脂層との間に設けられる第3の透明樹脂層と、を備え、
前記第1の透明樹脂層及び前記第2の透明樹脂層の少なくとも一方は、水に対して可溶な樹脂を含み、
前記第3の透明樹脂層は、水に対して不溶な又は耐水性を持つ樹脂を含むことを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
前記金属細線は、金属ナノワイヤ、又はカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項3】
前記第3の透明樹脂層は、多孔質層として形成され、
前記第3の透明樹脂層の孔径は、0.5nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記第3の透明樹脂層の厚さは、5nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の透明導電膜。
【請求項5】
前記第3の透明樹脂層の表面における水に対する接触角は、75°以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の透明導電膜。
【請求項6】
前記第3の透明樹脂層は、シリコーン樹脂から成るバインダーを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の透明導電膜。
【請求項7】
基材上に請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の透明導電膜が形成されたことを特徴とする透明導電膜付き基材。
【請求項8】
請求項7に記載の透明導電膜付き基材を備えたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−187824(P2012−187824A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53424(P2011−53424)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】