説明

透明導電膜の形成に用いられる塗膜形成用組成物

【課題】単一の塗布工程で、導電性、光透過性、環境耐性、プロセス耐性および密着性の優れた透明導電膜を得ることができる材料、それを用いた透明導電膜及びデバイス素子を提供する。
【解決手段】第1成分として金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブからなる群から選ばれた少なくとも1種、第2成分として多糖類およびその誘導体、第3成分として熱硬化性樹脂化合物、第4成分として水を含有する塗膜形成用組成物を調製し、その塗膜によって透明導電膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成用組成物に関する。より詳しくは、該組成物から得られる導電性および光透過性、環境耐性、プロセス耐性の優れた透明導電膜を有する基板、および該基板を用いたデバイス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)、太陽電池(PV)およびタッチパネル(TP)の透明電極、帯電防止(ESD)フィルムならびに電磁波遮蔽(EMI)フィルム等の種々の分野で使用されており、(1)低い表面抵抗、(2)高い光線透過率、(3)高い信頼性が要求される。
【0003】
これらの透明電極に用いられる透明導電膜には、従来、ITO(酸化インジウム錫)が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、ITOに用いられるインジウムは供給不安と価格高騰の問題を抱えている。また、ITOの製膜には、高真空を必要とするスパッタ法が用いられているため、製造装置が大規模となり、製造時間とコストが大きい。更に、ITO膜は曲げ等の物理的な応力によってクラックが発生し壊れ易い。ITO膜のスパッタの際に高熱が発生するため、フレキシブル基板の高分子がダメージを受ける。フレキシブル性を付与した基板に対して適用することは困難である。そのため、これらの問題点を解消したITO代替材料の探索が活発に進められている。
【0005】
そこで、「ITO代替材料」の中でも、スパッタリングが不要である塗布製膜可能な材料として、たとえば、(i)ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)(たとえば、特許文献1参照)等の高分子系導電材料、ならびに(ii)金属ナノワイヤを含有する導電性材料(たとえば、特許文献2および非特許文献1参照)および(iii)銀微粒子によるランダムな網目状構造からなる導電性材料(たとえば、特許文献3参照)、(iv)カーボンナノチューブを含有する導電性材料(たとえば特許文献4参照)等のナノ構造の導電性成分を含有する導電性材料、(v)金属の微細配線を用いた微細メッシュからなる導電性材料(たとえば、特許文献5参照)が報告されている。
【0006】
しかしながら、(i)は光線透過率が低く、かつ導電材料が有機分子であるため環境耐性が乏しく、(iii)は自己組織化を用いて透明導電膜を調製するため工程が複雑であり、(iv)はカーボンナノチューブのために色味が黒くなり、かつ光線透過率が低くなる、(v)は写真技術を利用するため従来の工程が利用できず、という欠点を有している。
【0007】
これらの中でも(ii)の金属ナノワイヤを含有した導電性材料は、低表面抵抗かつ高光線透過率を示すことが報告されており(たとえば、特許文献2および非特許文献1参照)、更に、フレキシブル性も有しているため、「ITO代替材料」に最適である。
【0008】
これらのITO代替材料の開発が進められる一方で、近年、環境負荷の低減も求められ、法的な規制や企業の自主的な取り組みにより有機溶媒の排出抑制が進められている。取り組みの一例として、有機溶媒より低環境負荷の水または水と水溶性の有機溶媒との混合物を溶媒とした組成物、いわゆる水性組成物が開発されている。
【0009】
しかしながら、水は、大きな極性、水素結合性、活性な水素を有する、およびイオン性の塩を溶解する等有機溶媒には見られない特性を有し特異な液体であるが故に、水溶液中での安定性あるいは水溶液への溶解性等の面から水溶液中で用いることのできる有機化合物は限られている。そのため、水性組成物では、有機溶媒系の組成物を用いることで容易に達成可能だった分散性、プロセス耐性、環境耐性等の特性を達成できない。
【0010】
このような水系組成物のプロセス耐性の乏しさは従来の一般的な製造工程において問題になる。
【0011】
例えば、透明導電膜は用途に応じたパターニングが必要であり、一般的にパターニングにはレジスト材料を用いたフォトリソグラフィー法が利用される。フォトリソグラフィー法はレジストの塗布、焼成、露光、現像、エッチング、剥離の工程を含み、実際には、各工程の前後に、適当な基板表面処理、洗浄および乾燥工程等を含む。特に電子材料などの用途では、基板の表面への微粒子状の不純物やちりやホコリなどの付着や混入を防ぐために洗浄工程は必須である。
【0012】
水性組成物を用いて形成された塗膜は水に溶解しやすい化合物を用いているために、特に、水溶液を用いた工程、つまり、現像、エッチング、剥離および洗浄の工程で、膜の溶解および剥離等が起きる。さらに塗膜は高温高湿下で特性の悪化が起き、十分な環境耐性を有していない。
【0013】
特許文献2に記載の膜形成用組成物はプロセス耐性が乏しいと考えられる。また、特許文献6および7に記載の透明導電膜は、一層目に銀ナノワイヤを用いた透明導電膜を製膜し、二層目に有機導電材料を製膜し、さらにはどちらかの層へ架橋性化合物を加えてられている。この方法では有機導電材料のために環境耐性が低いと考えられる。また、2層の形成が必須であるため工程が増える。
【0014】
したがって、(1)導電性、(2)光透過性、(3)環境耐性および(4)プロセス耐性に優れ、従来の一般的な工程を利用できるITO代替透明導電膜が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−59666号公報
【特許文献2】特表2009−505358号公報
【特許文献3】特開2008−78441号公報
【特許文献4】特開2007−112133号公報
【特許文献5】特開2007−270353号公報
【特許文献6】特開2010−244747号公報
【特許文献7】特開2010−205532号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Shin−Hsiang Lai,Chun−Yao Ou,“SID 08 DIGEST”,2008、P1200−1202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを導電成分として、水溶液中での分散安定性および保存安定性の優れた塗膜形成用組成物を提供すること、および、該組成物を用いて単一の塗布工程で、導電性、光透過性、環境耐性およびプロセス耐性の優れた塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが分散された組成物に特定の熱架橋性樹脂、アルコキシシリル基を有する化合物、またはその両方を添加することにより、水溶液中での分散安定性および保存安定性が優れた塗膜形成用組成物が得られ、かつ、該組成物が、従来の一般的な単一の塗布工程で、導電性、光透過性、環境耐性およびプロセス耐性の優れた透明導電膜を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明が含む特定の熱架橋性樹脂は、焼成時に水溶性高分子化合物のヒドロキシル基を熱硬化性樹脂によって熱架橋することにより、塗膜の環境耐性およびプロセス耐性を改善させることが可能となる。
【0020】
また、本発明が含むアルコキシシリル基を有する化合物は、焼成時に、塗布基板表面上に存在するヒドロキシル基と化学結合を形成すると同時に、水溶性高分子化合物と親和性を持つ。あるいは、焼成時に該化合物同士で熱架橋する。これらの機能により、塗膜の環境耐性およびプロセス耐性を改善させることが可能となる。
【0021】
本発明は、たとえば以下の項[1]〜[19]である。
【0022】
[1]第1成分として金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種、第2成分として多糖類およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種、第3成分として(ブロック)イソシアネート基、アミンイミド基、エポキシ基、オキセタニル基、N−メチロール基、N−メチロールエーテル基、およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する化合物、第4成分として水を含有する塗膜形成用組成物。
[2]第3成分が、N−メチロール基あるいはN−メチロールエーテル基を有する化合物である、項[1]に記載の塗膜形成用組成物。
[3]第3成分が、以下の(A)群に示される化合物の少なくとも一種と(B)群に示される化合物の少なくとも一種の縮合生成物である、項[2]に記載の塗膜形成用組成物。
(A) ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン
(B) 尿素、メラミン、ベンゾグアナミン
[4]第3成分が、ホルムアルデヒドとメラミンの縮合生成物である項[3]に記載の塗膜形成用組成物。
[5]第3成分が、N−メチロールエーテル基を有する化合物である項[4]に記載の塗膜形成用組成物。
[6]第3成分が、アルコキシシリル基を有する化合物である、項[1]に記載の塗膜形成用組成物。
[7]アルコキシシリル基を有する化合物がアミノ基あるいはエポキシ基を有する、項[6]に記載の塗膜形成用組成物。
[8]第3成分が、下記一般式(I)あるいは(II)で示される化合物である、項[7]に記載の塗膜形成用組成物。




(式中、Rは独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nおよびmは独立して2〜5の整数である。)
[9]第3成分が、下記一般式(III)で示される化合物である、項[6]に記載の塗膜形成用組成物。



(式中、Rは独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nは2〜5の整数である。)
[10]第1成分が、銀ナノワイヤである、項[1]〜[9]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
[11]第1成分が、短軸の長さの平均が5nm以上100nm以下であり、かつ長軸の長さの平均が2μm以上50μm以下の銀ナノワイヤである、項[10]に記載の塗膜形成用組成物。
[12]第2成分が、セルロースエーテル誘導体である、項[1]〜[11]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物
[13]第2成分がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、項[12]に記載の塗膜形成用組成物。
[14]アミン化合物、アミン化合物の塩類および金属塩類から選ばれる化合物の少なくとも一種を含有する、項[1]〜[13]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
[15]第1成分が塗膜形成用組成物の全重量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下、第2成分が第1成分100重量部に対して、50重量部以上300重量部以下、第3成分が第2成分100重量部に対して、1.0重量部以上50重量部以下の量である、項[1]〜[14]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
[16]25℃における粘度が10mPa・s以上70mPa・s以下である項[1]〜[15]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
[17]導電性を有する塗膜の形成に用いられる、項[1]〜[16]のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
[18]項[17]に記載の塗膜形成用組成物を用いて得られた透明導電膜を有する基板であり、透明導電膜の膜厚が20nm以上80nm以下であって、透明導電膜の表面抵抗が10Ω/□以上5,000Ω/□以下であり、透明導電膜の全光線透過率が85%以上である、透明導電膜を有する基板。
[19]項[18]に記載の基板を用いたデバイス素子
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが良好に分散された組成物が得られる。また透明導電膜の製造においては、該組成物を基板に塗布することにより、導電性、光透過性、環境耐性、プロセス耐性および密着性の優れた塗膜を形成することができる。また、このようにして得られた透明導電膜は、低い表面抵抗値と、良好な光線透過率等の光学特性とを併せ持つことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、「透明導電膜」は、104Ω/□以下の表面抵抗を有し、かつ、80%以上の全光線透過率を有する膜を意味する。「水性組成物」は、組成物中の溶媒が水あるいは水と水溶性の有機溶媒との混合物である組成物を意味する。「バインダー」は、導電性膜中において金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブの導電性材料を分散させ、かつ担持させるために用いられる樹脂である。
【0025】
[1.塗膜形成用組成物]
本発明の塗膜形成用組成物は第1成分として金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブからなる群から選ばれた少なくとも1種(以下では、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブと言うことがある)、第2成分として多糖類およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種(以下では、多糖類およびその誘導体と言うことがある)、第3成分として、第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物、またはその両方、第4成分として水を含有する。
【0026】
[1−1.第1成分:金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブ]
本発明の塗膜形成用組成物は、第1成分として、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。第1成分は、本発明の組成物から得られる塗膜中でネットワークを形成して、塗膜に導電性を与える。
【0027】
本明細書において、「金属ナノワイヤ」とはワイヤ状の形状を有する導電性材料であり、直線状でも、緩やかにあるいは急峻に屈曲していてもよい。柔軟であっても剛直であってもよい。
【0028】
本明細書において、「金属ナノチューブ」とは、ポーラスあるいはノンポーラスのチューブ状の形状を有する導電性材料であり、直線状でも、緩やかにあるいは急峻に屈曲していてもよい。性状は、柔軟であってもよく、剛直であってもよい。
【0029】
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、いずれかを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。
【0030】
金属の種類としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種およびこれら金属を組み合わせた合金等が挙げられる。低い表面抵抗かつ高い全光線透過率である塗膜を得るための観点からは、金、銀および銅のいずれかを少なくとも1種含むことが好ましい。これらの金属は、導電性が高いため、所望の表面抵抗を得る際に、面に占める金属の密度を減らすことができるため、高い透過率を実現できる。中でも、金または銀の少なくとも1種を含むことがより好ましい。最適な態様としては、銀が好ましい。
【0031】
塗膜形成用組成物中の第1成分の短軸の長さ、長軸の長さおよびアスペクト比は一定の分布を有する。この分布は、本発明の組成物から得られる塗膜が、全光線透過率が高くかつ表面抵抗が低い塗膜となる観点から選択される。具体的には、第1成分の短軸の長さの平均は、1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましく、5nm以上100nm以下がさらに好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。また、第1成分の長軸の長さの平均は、1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、2μm以上50μm以下がさらに好ましく、5μm以上30μm以下が特に好ましい。第1成分は、短軸の長さの平均および長軸の長さの平均が上記範囲を満たすとともに、アスペクト比の平均が1より大きいことが好ましく、10以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、200以上であることが特に好ましい。ここで、アスペクト比は、第1成分の短軸の平均的な長さをb、長軸の平均的な長さをaと近似した場合、a/bで求められる値である。a及びbは、走査電子顕微鏡を用いて測定できる。本発明においては、走査型電子顕微鏡SU−70((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0032】
第1成分の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤは、ポリオール(Poly−ol)法を用いて、ポリビニルピロリドン存在下で硝酸銀を還元することによって合成することができる(Chem.Mater.,2002,14,4736)。また、特許文献5で記載されているように、ポリビニルピロリドンを用いず、核形成とダフルジェット法を経て、硝酸銀を還元することによっても合成することができる。
【0033】
また、ナノワイヤの径と長さは反応条件や還元剤の変更や塩の添加により制御可能である。国際公開第2008/073143号パンフレットには、反応温度や還元剤を変更することでナノワイヤ径と長さを制御している。また、臭化カリウムの添加により径を制御することもできる(ACS NANO,2010,4,5,2955)。
【0034】
金ナノワイヤも同様に、ポリビニルピロリドン存在下で塩化金酸水和物を還元することによって合成することができる(J.Am.Chem.Soc.,2007,129,1733)。銀ナノワイヤおよび金ナノワイヤの大規模な合成および精製の技術に関しては国際公開第2008/073143号パンフレットと国際公開2008/046058号パンフレットに詳細な記述がある。
【0035】
ポーラス構造を有する金ナノチューブは、銀ナノワイヤを鋳型に、塩化金酸溶液を用いて銀ナノワイヤ自身との酸化還元反応により合成することができる。銀と塩化金酸との酸化還元反応により銀ナノワイヤ表面は金で覆われ、一方で鋳型に用いた銀ナノワイヤは溶液中に溶け出し、結果としてポーラス構造を有する金ナノチューブができる。(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,3892−3901)。また、鋳型の銀ナノワイヤはアンモニア水溶液を用いても除去することができる(ACS NANO,2009,3,6,1365−1372)。
【0036】
第1成分の含有量は、高い導電性と透明性の観点から、第1成分〜第4成分の合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上0.75重量%以下がより好ましく、0.1重量%以上0.5重量%以下がさらに好ましい。
【0037】
[1−2.第2成分:多糖類およびその誘導体]
本発明の塗膜形成用組成物は、第2成分として多糖類およびその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する。第2成分は、組成物の粘度を増加させることによって第1成分に水溶媒中での分散性を付与する。製膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。またバインダーの役割を果たす。第2成分は、第1成分の組成物中における分散性を妨げることなく、かつ該組成物から得られる塗膜中で本発明の組成物の第1成分が形成する導電性のネットワークを破壊することなく、良好な分散性、高い導電性および高い光透過性等の機能を発揮すると考えられる。さらに、第2成分の分子中に存在するヒドロキシル基は第3成分と架橋する。
【0038】
本発明の組成物に用いられる多糖類およびその誘導体の例としては、デンプン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、キトサン、デキストラン、グアーガム、グルコマンナン等の多糖類およびその誘導体が挙げられる。好ましくは、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、グアーガム、グルコマンナン等の多糖類およびその誘導体、より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテル誘導体、特に好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。また、第2成分において、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等を有する多糖類およびその誘導体は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム等の塩であってもよく、窒素原子を有する多糖類およびその誘導体は塩酸塩、クエン酸塩等の構造を有していてもよい。第2成分は1種でも複数種でも使用することができる。また複数種を用いる場合は、多糖類だけでもよく、多糖類の誘導体だけでもよく、多糖類と多糖類の誘導体の混合物であってもよい。
【0039】
本発明に係る多糖類およびその誘導体の粘度としては、高粘度であるほうが金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの沈降が抑えられ長期間均一な分散性が得られる。さらには、厚膜で高い銀ナノワイヤ密度が得られるため高い導電性が得られる。一方で、低粘度であるほうが塗膜の平滑性および均一性が良い。以上より本発明に係る多糖類およびその誘導体の粘度としては、20℃における2.0重量%水溶液の粘度が、4,000mPa・s以上1,000,000mPa・s以下が好ましく、10,000mPa・s以上200,000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0040】
例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースについて言えば、重量平均分子量が、300,000以上3,000,000以下が好ましく、400,000以上900,000以下がさらに好ましい。粘度は分子量に比例し、同濃度の溶液を同条件下で測定を行なったとき、粘度の高いものは分子量が高く、粘度の低いものは分子量が低い。
【0041】
第2成分の含有量は、組成物中の第1成分に対する良好な分散性と高い透過率および製膜性、密着性の観点から、第1成分100重量部に対して、50重量部以上300重量部以下が好ましく、75重量部以上250重量部以下がより好ましく、100重量部以上200重量部以下がさらに好ましい。
【0042】
市販品として、例えばメトローズ90SH−100000、メトローズ90SH−30000、メトローズ90SH−15000、メトローズ90SH−4000、メトローズ65SH−15000、メトローズ65SH−4000、メトローズ60SH−10000、メトローズ60SH−4000、メトローズSM−8000、メトローズSM−4000、メトローズSHV−PF(商品名;信越化学工業(株))、メトセルK100M、メトセルK15M、メトセルK4M、メトセルF4M、メトセルE10M、メトセルE4M(商品名;ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)を用いることができる。
【0043】
[1−3.第3成分]
本発明の塗膜形成用組成物は、第3成分として、第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物、アルコキシシリル基を有する化合物、またはその両方を含有する。
【0044】
第3成分は、第1成分の組成物中における分散性を妨げることなく、かつ該組成物から得られる塗膜中で本発明の組成物の第1成分が形成するネットワークを破壊し導電性と光学特性を悪化させることなく、膜の物理的強度の増加および水溶性の低下とそれに伴う環境耐性とプロセス耐性と密着性を改善する。
【0045】
[A.第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物]
第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物は、焼成時に、本発明の第2成分および第3成分同士で架橋することで第2成分の水溶性を減じるとともに膜の物理的強度を増加させる。架橋は膜全体に均一に存在し強度増加に寄与する。本発明の透明導電膜は一層であるために多層膜の透明導電膜と比べて、架橋が均一であるために膜界面での剥がれは起きない。また、架橋による膜の水溶性の減少は膜中への水溶性溶媒の浸透を防ぐ。これはエッチングの際に、フォトレジストで覆われた部分のエッチング現象(アンダーエッチングと呼ばれる)を防ぎ、エッチング液の濃度や温度、浸漬時間の適用可能範囲(マージン)を広くする。
【0046】
なお、前記化合物は第2成分中の全てのヒドロキシル基と反応する必要はなく、一部のヒドロキシル基と反応すればよい。
【0047】
前記化合物は、第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する熱反応性基を含む。熱反応性基は一種以上複数種有していてもよく、さらには1分子中に2個以上複数個有していてもよい。熱反応性基としては、イソシアネート基およびエポキシ基、オキセタニル基、N−メチロール基などが挙げられる。ここで、N−メチロール基は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンからなる群から選ばれる少なくとも一種を有する化合物とアミノ基あるいはアミド基の反応で生成する官能基であって、任意のアルコールなどでエーテル化されていてもよい。また、イソシアネート基とはイソシアネート基を任意のアルコールで保護した(ブロック)イソシアネート基およびイソシアネート基の前駆体であるアミンイミド基でもよい。第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物としては、(ブロック)イソシアネート基、アミンイミド基、エポキシ基、オキセタニル基、N−メチロール基またはN−メチロールエーテル基を有する化合物が好ましく、(ブロック)イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−メチロールエーテル基を有する化合物がより好ましく、N−メチロール基あるいはN−メチロールエーテル基を有する化合物がさらに好ましい。
【0048】
熱反応性基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリルアミド、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、それらの前駆体等を用いることができる。また、それらは1種でも複数種でも使用することができる。さらには、フェノール樹脂およびアミノ樹脂、エポキシ樹脂、それらの前駆体等を用いる場合、触媒等を用いるのが好ましい。後述する触媒等は一種以上複数種用いてよい。第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物としては、(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリルアミド、アミノ樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、アミノ樹脂がより好ましく、N−メチロールメラミンまたはエーテル化N−メチロールメラミンを有する化合物がさらに好ましい。
【0049】
[A−1.フェノール樹脂]
本発明の第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物として用いることができるフェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類との縮合反応により得られるノボラック樹脂、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む)、ビニルフェノールとこれと共重合可能な化合物とのビニルフェノール系共重合体(水素添加物を含む)などが好ましく用いられる。
【0050】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−キシレノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ホドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テルペン骨格含有ジフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールが挙げられる。
【0051】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
【0052】
ビニルフェノールと共重合が可能な化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸またはその誘導体、スチレンまたはその誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリルが挙げられる。
【0053】
フェノール樹脂としては各種の市販品を用いることができ、例えば、TD−4304、PE−201L、PE−602L(商品名;DIC(株))、ショウノールBRL−103、BRL−113、BRP−408A、BRP−520、BRL−1583、BRE−174(商品名;昭和電工(株))が挙げられる。
【0054】
フェノール樹脂は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
[A−2.アミノ樹脂]
本発明の第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物として用いることができるアミノ樹脂は、アルデヒド基を有する化合物、およびアミノ基あるいはアミド基を有する化合物の縮合生成物であれば特に限定はされない。ここで、アルデヒド基を有する化合物はホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンからなる群から選ばれる少なくとも一種を有する化合物である。例えば、アミノ樹脂としては、メチロール尿素樹脂、メチロールメラミン樹脂、エーテル化メチロールメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂、エーテル化メチロールベンゾグアナミン樹脂、およびそれらの縮合物が挙げられる。これらの中でも、架橋前の時点での水溶性、製膜後のプロセス耐性および環境耐性が良好である点で、メチロールメラミン樹脂およびエーテル化メチロールメラミン樹脂が好ましい。
【0056】
アミノ樹脂としてエーテル化メチロールメラミン樹脂を使用した場合、組成物に高い保存安定性を付与することもできる。エーテル化メチロールメラミン樹脂は、N−メチロールエーテル基を有しており、メチロール基と比較して反応性が低いため、保存安定性に優れる。第2成分のヒドロキシル基との熱架橋反応を制御する等の目的で、アミノ樹脂触媒および反応開始剤を適宜用いてもよい。
【0057】
アルデヒド基を有する化合物としては、架橋前の時点での水溶性、製膜後のプロセス耐性および環境耐性が良好である点で、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
【0058】
アミノ基あるいはアミド基を有する化合物としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、等が挙げられる。
【0059】
さらには、化合物自身が腐食防止剤として働き、塗膜の環境耐性をさらに改善することが出来るために、ホルムアルデヒドおよびメラミンの組み合わせが特に好ましい。
【0060】
アミノ樹脂としては各種の市販品を用いることができ、例えば、リケンレヂンRG−80、リケンレヂンRG−10、リケンレヂンRG−1、リケンレヂンRG−1H、リケンレヂンRG−85、リケンレヂンRG−83、リケンレヂンRG−17、リケンレヂンRG−115E、リケンレヂンRG−260、リケンレヂンRG−20E、リケンレヂンRS−5S、リケンレヂンRS−30、リケンレヂンRS−150、リケンレヂンRS−22、リケンレヂンRS−250、リケンレヂンRS−296、リケンレヂンHM−272、リケンレヂンHM−325、リケンレヂンHM−25、リケンレヂンMA−156、リケンレヂンMA−100、リケンレヂンMA−31、リケンレヂンMM−3C、リケンレヂンMM−3、リケンレヂンMM−52、リケンレヂンMM−35、リケンレヂンMM−601、リケンレヂンMM−630、リケンレヂンMS、リケンレヂンMM−65S(商品名;三木理研工業(株))、ベッカミンNS−11、ベッカミンLF−K、ベッカミンLF−R、ベッカミンLF−55Pコンク、ベッカミンNS−19、ベッカミンFM−28、ベッカミンFM−7、ベッカミンNS−200、ベッカミンNS−210L、ベッカミンFM−180、ベッカミンNF−3、ベッカミンNF−12、ベッカミンNF−500K、ベッカミンE、ベッカミンN−13、ベッカミンN−80、ベッカミンJ−300S、ベッカミンN、ベッカミンAPM、ベッカミンMA−K、ベッカミンMA−S、ベッカミンJ−101、ベッカミンJ−101LF、ベッカミンM−3、ベッカミンM−3(60)、ベッカミンA−1、ベッカミンR−25H、ベッカミンV−60、ベッカミン160(商品名;DIC(株))、ニカレジンS−176、ニカレジン−260(商品名;日本カーバイド(株))、ニカラックMW−30M、ニカラックMW−30、ニカラックMW−22、ニカラックMX−730、ニカラックMX−706、ニカラックMX−035、ニカラックMX−45、ニカラックBX−4000(商品名;(株)三和ケミカル)が挙げられる。
【0061】
アミノ樹脂は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
[A−2−1.アミノ樹脂触媒および反応開始剤]
本発明の塗膜形成用組成物がアミノ樹脂あるいは前駆体を含有している場合は、その自己硬化性をより向上させるために、触媒あるいは反応開始剤を含むことが好ましい。このような触媒としては、例えば芳香族スルホン酸化合物や燐酸化合物などの有機酸類およびそれらの塩、アミン化合物、アミン化合物の塩類、イミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、N原子を含む複素環式化合物、有機金属化合物、ステアリン酸亜鉛やミリスチン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウムやステアリン酸カルシウムなどの金属塩類が挙げられる。反応開始剤の例としては、光酸発生剤、光塩基発生剤が挙げられる。
【0063】
アミノ樹脂触媒および反応開始剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、異なる機構に基づくアミノ樹脂触媒および反応開始剤を用いてもよい。
【0064】
アミノ樹脂触媒および反応開始剤の本発明の塗膜形成用組成物における含有量は、反応性と組成物中の各成分の良好な分散性ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の高い導電性、良好な光透過性、良好な環境耐性、良好なプロセス耐性および良好な密着性の観点から、アミノ樹脂あるいは前駆体100重量部に対して、0.1重量部以上100重量部以下であることが好ましく、1重量部以上50重量部以下がより好ましく、5重量部以上25重量部以下がさらに好ましい。
【0065】
アミノ樹脂触媒としては各種の市販品を用いることができ、例えば、リケンフィクサーRC、リケンフィクサーRC−3、リケンフィクサーRC−12、リケンフィクサーRCS、リケンフィクサーRC−W、リケンフィクサーMX、リケンフィクサーMX−2、リケンフィクサーMX−18、リケンフィクサーMX−18N、リケンフィクサーMX−36、リケンフィクサーMX−15、リケンフィクサーMX−25、リケンフィクサーMX−27N、リケンフィクサーMX−051、リケンフィクサーMX−7、リケンフィクサーDMX−5、リケンフィクサーLTC−66、リケンフィクサーRZ−5、リケンフィクサーXT−329、リケンフィクサーXT−318、リケンフィクサーXT−53、リケンフィクサーXT−58、リケンフィクサーXT−45、(商品名;三木理研工業(株))、キャタリスト376、キャタリストACX、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストX−80、キャタリストG、キャタリストX−60、キャタリストGT、キャタリストX−110、キャタリストGT−3、キャタリストNFC−1、キャタリストML(商品名;DIC(株))、ネイキュア155、ネイキュア1051、ネイキュア5076、ネイキュア4054J、ネイキュア2500、ネイキュア5225、ネイキュアX49−110、ネイキュア4167(商品名;米国キング・インダストリイズ社)が挙げられる。
【0066】
[A−2−2.アミノ樹脂添加剤]
アミノ樹脂の保存安定性を向上させる目的で、本発明の特性を損なわない範囲でアルコールが添加されていてもよい。本発明で使用できるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの含有量は、アミノ樹脂100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下がより好ましく、1重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。アミノ樹脂添加剤は1種で用いても複数種で用いてよい。
【0067】
[A−3.エポキシ樹脂]
本発明の組成物は、第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物としてエポキシ基あるいはオキセタニル基を分子中に有しているエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ化合物;脂環式もしくは複素環式のエポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型もしくはナフタレン型の構造を有するエポキシ化合物;エチレンオキサイド型の構造を有するエポキシ化合物が挙げられる。
【0068】
また、エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを挙げることもできる。
【0069】
エポキシ樹脂としては、架橋前の時点での水溶性、製膜後のプロセス耐性および環境耐性が良好であるという理由で、各種の市販品を用いることができ、例えばデナコールEX−614B、デナコールEX−512、デナコールEX−521、デナコールEX−421、デナコールEX−313、デナコールEX−314、デナコールEX−810、デナコールEX−811、デナコールEX−851、デナコールEX−821、デナコールEX−830、デナコールEX−841、デナコールEX−832、デナコールEX−861(商品名;ナガセケムテックス(株))が挙げられる。
【0070】
本発明の組成物に用いられるエポキシ樹脂は、1種であっても、2種以上の混合物であってもよい。
【0071】
[A−3−1.エポキシ硬化剤]
本発明の塗膜形成用組成物がエポキシ樹脂を含有している場合は、その耐薬品性をより向上させる点で、該組成物はさらにエポキシ硬化剤を含有することが好ましい。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、触媒型硬化剤などが好ましい。また、エポキシ硬化剤として酸発生剤および塩基発生剤などを用いることができる。
【0072】
酸無水物系硬化剤としては、例えばマレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。酸無水物系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して1重量部以上200重量部以下であることが好ましく、50重量部以上150重量部以下がより好ましく、80重量部以上120重量部以下がさらに好ましい。
【0073】
ポリアミン系硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンが挙げられる。ポリアミン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して1重量部以上100重量部以下であることが好ましく、5重量部以上80重量部以下がより好ましく、10重量部以上50重量部以下がさらに好ましい。
【0074】
触媒型硬化剤としては、例えば3級アミン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。酸触媒型硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して1重量部以上100重量部以下であることが好ましく、5重量部以上80重量部以下がより好ましく、10重量部以上50重量部以下がさらに好ましい。
【0075】
エポキシ硬化剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
[A−4.多糖類およびその誘導体との熱架橋の例]
以下の(1)に、第2成分としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、第3成分としてトリメチロールメラミンを用いたときの熱架橋の様子を模式的に示した。なお、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの構造については、β−セルロースを繰り返し単位に、任意のヒドロキシル基をメチルエーテル基およびヒドロキシプロピルエーテル基で置き換えることで表現した。本発明は以下の(1)に限定されない。


【0077】
[A−5.その他の第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物]
前述のフェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、それらの前駆体以外の第2成分が有するヒドロキシル基と熱架橋する化合物としては、(ブロック)イソシアネート基、活性化エステル基、カルボジイミド基、酸無水物、酸ハライドなどを有する化合物があげられる。環境耐性とプロセス耐性と密着性の改善という観点から、ブロックイソシアネート基を有する化合物が好ましい。例えば、エラストロンBN−69、エラストロンBN−37、エラストロンBN−45、エラストロンBN−77、エラストロンBN−04、エラストロンBN−27、エラストロンBN−11、エラストロンE−37、エラストロンH−3、エラストロンBAP、エラストロンC−9、エラストロンC−52、エラストロンF−29、エラストロンH−38、エラストロンMF−9、エラストロンMF−25K、エラストロンMC、エラストロンNEW BAP−15、エラストロンTP−26S、エラストロンW−11P、エラストロンW−22、エラストロンS−24(商品名;第一工業製薬(株))が挙げられる。
【0078】
[B.アルコキシシリル基を有する化合物]
第3成分として、アルコキシシリル基を有する化合物を用いることができる。アルコキシシリル基は加水分解性を有し、水分と反応してシラノール基が生成する。その後、ガラス等の基板表面に存在するヒドロキシル基と水素結合を形成し、さらに焼成することで脱水縮合反応が起こり、強固な共有結合であるシロキサン結合を基板との間に形成する。これらの結果、焼成後の膜と基板との密着性を増加させることが可能となる。化学結合は膜と基板界面全体に均一に存在し、密着性の増加に寄与する。また、本発明の透明導電膜は一層であるために、多層膜の透明導電膜と異なり、基板との化学結合を形成することができるため、膜界面での剥がれはおきない。密着性の増加によって、塗膜の環境耐性およびプロセス耐性を改善させることが可能となる。
【0079】
また、前記シラノール基は、焼成時にそれ同士の脱水縮合反応によりシロキサンオリゴマーを形成する。この場合、第1成分あるいは第2成分中にシロキサンオリゴマーが膜全体に均一に介在するために、膜の物理的強度が増加する。本発明の透明導電膜は一層であるために、多層膜の透明導電膜と比べて架橋が均一であるために膜界面での剥がれは起きない。
【0080】
アルコキシシリル基を有する化合物は全て基板と反応してもよいし、全てオリゴマー化しても良い。また、一部が基板と反応し、一部がオリゴマー化し、一部が未反応であってもよい。また、1分子中で、基板とのシロキサン結合と、別のアルコキシシリル基を有する化合物とシロキサン結合を複数形成してもよい。
【0081】
アルコキシシリル基は、反応性や工業的入手の容易さから、メトキシシリル基、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、エトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基が好ましい。アルコキシ基を2個以上持つアルコキシシリル基の場合、形成されるシロキサン結合が高次元的な架橋構造となり、より膜の密着性および物理的強度のより大きい増加が期待できるため、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が最も好ましい。また、アルコキシシリル基は、一種以上複数種有していてもよく、さらには1分子中に2個以上複数個有していてもよい。
【0082】
アルコキシシリル基を有する化合物としては、例えば、アルキルアルコキシシラン類、アルコキシシラザン類、シランカップリング剤、両末端にアルコキシシリル基を有する化合物、またはそれらの前駆体等を使用することができる。また、それらは1種でも複数種でも使用することができる。第3成分として用いるアルコキシシリル基を有する化合物としては、反応性等の観点から、シランカップリング剤、または両末端にアルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。
【0083】
[B−1.シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、1分子中に、アルコキシシリル基と有機官能基を有する化合物である。第3成分としてこれを用いた場合、シランカップリング中の有機官能基が第2成分である多糖類およびその誘導体と親和性を持つために、基板に対する膜の密着性をより一層増加させることができる。有機官能基としては、例えばアミノ基、メルカプト基、エポキシ基、ビニル基、プロペニル基、アクリル基等が挙げられる。これらの中でも、多糖類およびその誘導体との高い親和性の観点から、アミノ基あるいはエポキシ基を含む化合物が好ましく、工業的な入手の用意さ、および反応性の観点から、下記一般式(I)、または(II)で示されるシランカップリング剤が好ましい。





(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nおよびmは2〜5の整数である。)
さらに、プロセス耐性、および環境耐性の観点から、3-アミノプロピルトリエトキシシランあるいは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0084】
アルコキシシリル基を含む化合物としては各種の市販品を用いることができ、例えば、サイラエースS210、サイラエースS220、サイラエースS310、サイラエースS320、サイラエースS330、サイラエースS360、サイラエースS510、サイラエースS520、サイラエースS530、サイラエースS710、サイラエースS810、サイラエースS340、サイラエースS350、サイラエースXS1003(商品名;JNC(株))、Z―6610、Z―6011、Z―6020、Z―6094、Z―6883、Z―6032、Z―6040、Z―6044、Z―6042、Z―6043、Z―6075、Z―6300、Z―6519、Z―6825、Z―6030、Z―6033、Z―6062、Z―6862、Z―6911、Z―6026、AZ―720、Z―6050(商品名;東レダウコーニング(株))等が挙げられる。
【0085】
[B−2.両末端にアルコキシシリル基を有する化合物]
第3成分として両末端にアルコキシシリル基を有する化合物を用いた場合、焼成時にアルコキシシリル基を有する化合物どうしで分子量の大きいシロキサンオリゴマーを生成し、より一層膜の膜の物理的強度を増加することが可能となる。これらの化合物は、例えば、下記一般式(III)で示される化合物である。



(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nは2〜5の整数である。)
Rとしては反応性、工業的な入手の容易さからメチル基、エチル基が好ましく、nは2または3が好ましい。
【0086】
第3成分の含有量は、得られる透明導電膜の環境耐性およびプロセス耐性、密着性の観点から、第2成分100重量部に対して、1.0重量部以上50重量部以下が好ましく、2.5重量部以上25重量部以下がより好ましく、5.0重量部以上15重量部以下がさらに好ましい。
【0087】
以下の(2)に、第3成分として3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いたときの反応の様子を示す。図では、3−アミノプロピルトリエトキシシランが加水分解して生じた3−アミノプロピルトリシラノールと基板、および3−アミノプロピルトリシラノール同士でのシロキサン結合形成の様子を模式的に示した。本発明は以下の(2)に限定されない。


【0088】
[1−4.第4成分:水]
本発明の塗膜形成用組成物は、溶媒として第4成分の水を含有する。第4成分は、第1成分を分散し、第2成分および第3成分を溶解するとともに、製膜時には蒸発することで導電性を有する膜を形成する。粘度や蒸発速度の制御と分散性の観点から、第4成分は、アルコール、ケトン、エーテル等を含んでもよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム等の塩を含んでもよく、塩酸、アンモニア、等の酸または塩基を含んでもよい。
【0089】
[1−5.任意成分]
本発明の塗膜形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、第2成分以外のバインダー成分、腐食防止剤、密着促進剤、界面活性剤、粘度調整剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0090】
[1−5−1.第2成分以外のバインダー成分]
請求項に記載以外のバインダー成分としては、例えば、ポリビニル酢酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール等のビニル化合物、タンパク質、ゼラチン、ポリアミノ酸等の生体高分子化合物、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のポリアクリロイル化合物、ポリエチレンテレフタラート、ポリエステルナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンタン、環式オレフィン等のポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマーが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0091】
[1−5−2.腐食防止剤]
腐食防止剤としては、芳香族トリアゾール、イミダゾール、チアゾール、チオールなどの特定の窒素含有および硫黄含有有機化合物、金属表面に特定の親和性を示す生体分子、金属と競合して腐食要素を封鎖する化合物、等が知られている。また、異なる腐食防止剤により、異なる機序に基づいて、金属ナノワイヤが保護されてもよい。
【0092】
腐食防止剤の例としては、トリルトリアゾールおよびブチルベンジルトリアゾールなどのアルキル置換ベンゾトリアゾール、2−アミノピリミジン、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、システイン、ジチオチアジアゾール、飽和C6−C24直鎖状アルキルジチオチアジアゾール、飽和C6−C24直鎖状アルキルチオール、アクロレイン、グリオキサール、トリアジン、およびn−クロロコハク酸イミド、が挙げられるが、それだけに限定されない。また、腐食防止剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
[1−5−3.界面活性剤]
本発明の塗膜形成用組成物は、例えば下地基板への濡れ性や、得られる硬化膜の膜面均一性を向上させるために、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0094】
界面活性剤の市販品としては、例えば、Zonyl FSO−100、Zonyl FSN、Zonyl FSO、Zonyl FSH(商品名;デュポン(株))、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−45(商品名;シグマアルドリッチジャパン(株))、Dynol 604、Dynol 607(商品名;エアープロダクツジャパン(株))、n−Dodecyl−β−D−maltoside、Novek、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、Byk−370、Byk−354、Byk−358、Byk−361(商品名;ビックケミー・ジャパン(株))、DFX−18、フタージェント250、フタージェント251(商品名;(株)ネオス)、メガファックF−444、メガファックF−479、メガファックF―472SF(商品名;DIC(株))、が挙げられるが、それだけに限定されない。また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
[1−5−3.有機溶媒]
本発明の塗膜形成用組成物は相溶性を調整する目的で有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられるが、それだけに限定されない。また、有機溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
【0096】
[塗膜形成用組成物の組成および物性]
本発明の塗膜形成用組成物における各成分の含有量は、組成物中の各成分の良好な分散性ならびに本発明の組成物から得られる塗膜の高い導電性、良好な光透過性、良好な環境耐性、良好なプロセス耐性および良好な密着性の観点から、第1成分が塗膜形成用組成物の全重量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下、第2成分が第1成分100重量部に対して、50重量部以上300重量部以下、第3成分が第2成分100重量部に対して、1.0重量部以上50重量部以下が好ましく、第1成分が塗膜形成用組成物の全重量に対して、0.05重量%以上0.75重量%以下、第2成分が第1成分100重量部に対して、75重量部以上250重量部以下、第3成分が第2成分100重量部に対して、2.5重量部以上25重量部以下がより好ましく、第1成分が塗膜形成用組成物の全重量に対して、0.1重量%以上0.5重量%以下、第2成分が第1成分100重量部に対して、100重量部以上200重量部以下、第3成分が第2成分100重量部に対して、5.0重量部以上15重量部以下がさらに好ましい。
【0097】
すなわち、各成分の組成は第1成分〜第4成分の合計量に対して、好ましくは、第1成分が0.01重量%以上1.0重量%以下、第2成分が0.005重量%以上3.0重量%以下、第3成分が0.00005重量%以上1.5重量%以下、第4成分が94.5重量%以上99.9395重量%であり、より好ましくは、第1成分が0.05重量%以上0.75重量%以下、第2成分が0.0375重量%以上1.875重量%以下、第3成分が0.0009375重量%以上0.46875重量%以下で、第4成分が96.90625重量%以上99.9115625重量%以下であり、さらに好ましくは、第1成分が0.1重量%以上0.5重量%以下、第2成分が0.1重量%以上1.0重量%以下、第3成分が0.005重量%以上0.15重量%以下、第4成分が98.35重量%以上99.795重量%である。
【0098】
本発明の塗膜形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。
【0099】
本発明の塗膜形成用組成物の粘度としては、高粘度であるほうが金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの沈降が抑えられ長期間均一な分散性が得られる。また、高粘度であるほうが一定の塗布条件で膜厚を厚くできるので、高い導電性を有する膜を得ることができる。一方、低粘度であるほうが塗膜の平滑性および均一性が良い。このことから、本発明の塗膜形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上70mPa・s以下であることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
【0100】
[透明導電膜を有する基板の製造方法]
本発明の塗膜形成用組成物を用いて、透明導電膜を有する基板を製造することができる。該製造方法は、基板に上記組成物を塗布した後、30℃以上80℃以下の加熱を行い、次いで120℃以上240℃以下の焼成を行うことで、基板上に塗膜を形成する工程を含む。
【0101】
基板に上記組成物を塗布した後、溶媒を除去して、基板上に導電性、環境耐性およびプロセス耐性を有する塗膜を形成する。
基板としては、堅くてもよく、曲がり易くてもよい。また、着色されていてもよい。基板の材料としては、たとえばガラス、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリロイル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルが挙げられる。これらは、高い光線透過率と低いヘイズ値を有することが好ましい。基板には、更に、TFT素子等の回路が形成されていてもよく、カラーフィルターおよびオーバーコート等の有機機能性材料、窒化シリコン、シリコン酸化膜等の無機機能性材料が形成されていてもよい。また基板は多数積層されていてもよい。
【0102】
本発明の組成物の基板への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等の一般的な方法を用いることができる。膜厚の均一性および生産性の観点から、スピンコート法とスリットコート法が好ましく、スリットコート法がより好ましい。
【0103】
用途により表面抵抗は決定される。
表面抵抗は膜厚と第1成分の面密度で決定される。膜厚と第1成分の面密度は粘度と塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度により決定される。膜厚は塗布条件により決定される。したがって、所望の表面抵抗は粘度と塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度により制御される。
【0104】
膜厚は、低い表面抵抗の観点からは厚いほど良く、段差による表示不良の発生を抑制する観点からは薄いほど良いことから、これらを総合的に勘案すると、5nm〜500nmの膜厚が好ましく、5nm〜200nmの膜厚がより好ましく、5nm〜100nmの膜厚がさらに好ましい。
【0105】
溶媒の除去は、必要に応じて塗布物を加熱処理して行う。加熱温度としては、溶媒の種類によっても異なるが、通常30℃〜溶媒の沸点+50℃に加熱する。
得られた膜の表面抵抗および全光線透過率は、膜厚すなわち組成物の塗布量および塗布方法の条件の調整、本発明の塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度の調整により、所望の値とすることができる。
【0106】
一般に膜厚が厚いほど、表面抵抗および全光線透過率は低くなる。また、塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度が高いほど、表面抵抗および全光線透過率は低くなる。
上記のようにして得られた塗膜は、表面抵抗が1Ω/□以上10,000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることが好ましく、表面抵抗が10Ω/□以上5,000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が85%以上であることがより好ましい。
なお、本発明において、表面抵抗は、特に断らない限り、後述する非接触式測定法による測定値をいう。
【0107】
[透明導電膜のパターニング]
本発明を用いて作成された透明導電膜は、用途に応じてパターニングを行なうことができる。方法としては、ITOのパターニングに一般的に用いられるレジスト材料を用いたフォトリソグラフィー法が利用できる。フォトリソグラフィー法の手順を以下に示す。
(1)レジストの塗布
(2)焼成
(3)露光
(4)現像
(5)エッチング
(6)剥離
【0108】
[任意の工程]
上記の組成物の製膜およびパターニングの各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等が挙げられる。また、水に浸漬する工程を入れてもよい。このように水に浸漬することは、低い表面抵抗の観点から好ましい。
【0109】
プラズマ表面処理は、塗膜形成用組成物または現像液に対する塗れ性を上げるために用いることができる。例えば、酸素プラズマを用いて、100ワット、90秒、酸素流量50sccm(sccm;standard cc / min)、圧力50パスカルの条件で、基板または塗膜形成用組成物の表面を処理することができる。超音波処理は、溶液中に基板を浸漬し、例えば、200kHz程度の超音波を伝播させることによって、基板上に物理的に付着した微粒子等を取り除くことができる。オゾン処理は、基板に空気を吹きつけると同時に紫外光を照射し、紫外光によって発生したオゾンの酸化力によって基板上の付着物等を効果的に取り除くことができる。洗浄処理は、例えば、純水を霧状あるいはシャワー状等に吹きつけ、溶解性と圧力で微粒子状の不純物の洗い流し、取り除くことができる。加熱処理は、取り除きたい化合物を揮発させることによって基板中の化合物を取り除く方法である。加熱温度は、取り除きたい化合物の沸点を考慮して適宜設定する。例えば、取り除きたい化合物が水である場合は、50℃〜80℃程度の範囲で加熱する。
【0110】
上記製造方法により得られたパターニングされた透明導電膜を有する基板の透明導電膜の表面抵抗および全光線透過率は、表面抵抗が1Ω/□以上10,000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が80%以上であることが好ましく、表面抵抗が10Ω/□以上5,000Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が85%以上であることがより好ましい。
【0111】
ここで、「全光線透過率」は入射光に対する透過光の割合であり、透過光は直接の透過成分と散乱成分からなる。光源はC光源であり、スペクトルはCIE輝度関数yである。また、膜厚は、用途により異なるが、5nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上80nm以下がさらに好ましい。
【0112】
このような表面抵抗および全光線透過率は、膜厚すなわち組成物の塗布量および塗布方法の条件の調整、本発明の塗膜形成用組成物中の第1成分の濃度の調整により、所望の値とすることができる。
上記パターニングされた透明導電膜は、さらにその表面に絶縁膜、保護機能を有するオーバーコート、または配向機能を有するポリイミド層を設けることができる。
【0113】
[パターニングされた透明導電膜を有する基板の用途]
パターニングされた透明導電膜を有する基板は、その導電性および光学特性から、デバイス素子に用いられる。
デバイス素子としては、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー、タッチパネル素子、太陽電池素子が挙げられる。
【0114】
デバイス素子は、堅い基板を用いて作製されてもよく、曲がり易い基板を用いて作製されてもよく、さらにはそれらの組み合わせでもよい。また、デバイス素子に用いられる基板は透明であっても、着色されていてもよい。
【0115】
液晶表示素子に用いられる透明導電膜は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板側に形成される画素電極およびカラーフィルター基板側に形成される共通電極等がある。LCDの表示モードには、TN(Twisted Nematic)、MVA(Multi Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment)、IPS(In Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、PSA(Polymer Stabilized Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated Bend)、CPA(Continuous Pinwheel Aligment)、BP(Blue Phase)等がある。また、これらの各々のモードに対して、透過型、反射型および半透過型がある。LCDの画素電極は、画素毎にパターニングされており、TFTのドレイン電極と電気的に接合されている。その他、例えば、IPSモードは、櫛歯電極構造を有しており、PVAモードは、画素内にスリットが入った構造を有している。
【0116】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる透明導電膜は、パッシブタイプの駆動方式の導電領域として用いられる場合は、通常基板上にストライプ状にパターニングされる。ストライプ状の導電領域(陽極)とこれに直交して配置されたストライプ状の導電領域(陰極)間に直流電圧を印加することによってマトリックス状の画素を発光させて表示する。アクティブタイプの駆動方式の電極として用いられる場合は、TFTアレイ基板側に画素毎にパターニングされる。
【0117】
タッチパネル素子は、その検出方法によって抵抗膜式や静電容量方式等があり、いずれも透明電極が用いられる。静電容量方式に用いられる透明電極はパターニングされる。
【0118】
電子ペーパーは、その表示方法によって、マイクロカプセル方式、電子粉流体方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式、電気泳動方式、化学変化方式等があり、いずれも透明電極が用いられる。透明電極はそれぞれ任意の形状にパターニングされる。
【0119】
太陽電池素子は、光吸収層の材料によって、シリコン系、化合物系、有機系、量子ドット型等があり、いずれも透明電極が用いられる。透明電極はそれぞれ任意の形状にパターニングされる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例や比較例において、構成成分としての水は超純水を用いたが、以下では単に水と言うことがある。超純水はピューリック FPC−0500−0M0(商品名:オルガノ(株))を用いて調製した。
【0121】
各評価項目における測定方法または評価方法は下記方法に従った。
(1)〜(4)は、ことわりのない限り、評価試料の透明導電膜を形成した領域について測定した。
【0122】
(1)表面抵抗の測定
評価方法は、四探針法と非接触式測定法の2種類用いた。
【0123】
四探針測定法(JIS K 7194に準拠)には、Loresta−GP MCP−T610(三菱化学(株))を用いた。測定に用いたプローブは、5mmのピン間距離と2mmのピン先の直径を有する専用のESP型プローブである。このプローブを評価試料に接触させて、外側2端子に一定の電流を流したときの内側2端子の電位差を測定し、この測定によって得られた抵抗に補正係数を乗ずることによって、表面抵抗(Ω/□)を算出した。このようにして得られた表面抵抗値と導電膜の厚みにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。
【0124】
導電膜上に少なくとも1層以上の絶縁膜を形成した基板における導電膜の表面抵抗、および本明細書に示されるような金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが絶縁体中に分散した導電膜の表面抵抗は、四探針測定法では安定して測定できない場合がある。この場合は渦電流を用いた非接触式の表面抵抗測定法を用いた。非接触式測定法としては、717B−H(DELCOM)を用いて、表面抵抗(Ω/□)を測定した。この場合も得られた表面抵抗値と導電膜の厚みにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。なお、四探針法と非接触式測定法の測定値はほぼ一致する。なお、特に断りのない限り、非接触式測定法を用いた。
【0125】
(2)全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定
全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定には、ヘイズガードプラス(BYKガードナー(株))を用いた。リファレンスは空気とした。
【0126】
(3)膜厚
膜厚の測定には、段差計P−16+(KLA−Tencor)を用いた。
【0127】
膜厚の測定は、「ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式粗さ計による測定方法(JIS−R−1636)に準じた。パターニングされていない膜の膜厚を測定する場合は、評価試料の膜の一部を削り取り、その境界面の段差を測定した。
【0128】
(4)環境耐性試験
70℃の恒温オーブン中および70℃/90%RHの高温高湿オーブン中に透明導電膜を静置し、500時間後の表面抵抗および全光線透過率、曇度(ヘイズ)を測定し、初期値と比較することにより環境耐性を評価した。
【0129】
評価結果は、表面抵抗および全光線透過率、ヘイズの変化率が初期値と比較して、これら全ての特性の変化率が0%以上50%以下であるものを○、少なくとも1つの特性の変化率が51%以上100%以下であるものを△、少なくとも1つの特性の変化率が101%以上であるものを×とした。
【0130】
(5)プロセス耐性試験
現像機EX−25D(吉谷商会(株))を用いて、評価試料に水を270kPaの圧力で1または5分間スプレーした。スプレー前後の(a)膜剥がれの有無の目視検査、(b)表面抵抗の測定、(c)全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定、を行い、プロセス耐性を評価した。
【0131】
目視で観察を行い、評価結果は、270kPa/1分間の条件で、膜の剥離が無いものを○、基板の1%以上50%未満の面積で剥離が見られるものを△、基板の50%以上100%以下の面積で剥離が見られるものを×とした。評価結果が○のものについては、270kPa/5分間の条件で評価を行い、膜の剥離が無いものを◎とした。
【0132】
(6)組成物の粘度の測定
実施例で用いた組成物の粘度はTV−22形粘度計(東機産業(株))を用いて、25℃およびせん断速度100s−1のときの粘度を測定した。
【0133】
(7)組成物の分散安定性試験(分散性)
実施例で用いた組成物10gを20mLスクリュー瓶に入れ、十分に振り混ぜた後、室温下で1週間静置した。静置後の銀ナノワイヤの沈降を目視で確認した。沈降の全く見られないものを○、溶液の濃淡が見られるものを△、スクリュー瓶の底に銀ナノワイヤの沈殿が見られるものを×とした。
【0134】
(8)密着性試験
3M396テープ(商品名:住友スリーエム(株))を用いて碁盤目剥離試験(クロスカット試験)を行い、1mm角の碁盤目100個中におけるテープ剥離後の残存数を評価した。剥離の全く無いものを○、1個以上50個未満の剥離の見られるものを△、50個以上100個以下の剥離が見られるものを×とした。
【0135】
本発明で用いた第1成分(金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブ)を以下のように合成した。
<銀ナノワイヤの合成>
ポリ(N−ビニルピロリドン)(商品名;ポリビニルピロリドンK30、Mw40,000、東京化成工業(株)) 4.171gとテトラブチルアンモニウムクロリド(商品名;テトラブチルアンモニウムクロリド、和光純薬工業(株)) 70mgと硝酸銀(商品名;硝酸銀、和光純薬工業(株)) 4.254gとエチレングリコール(商品名;エチレングリコール、和光純薬工業(株)) 500mLを1,000mLのフラスコに入れ、15分間撹拌し均一に溶解した後、オイルバス中110℃で16時間撹拌することで、銀ナノワイヤを含有した反応液を得た。
【0136】
次いで、反応液を室温(25〜30℃)に戻した後、遠心分離機(アズワン(株))により反応溶媒を水に置換し、任意の濃度の銀ナノワイヤ分散水溶液Iを得た。この操作により反応液中の未反応の硝酸銀、鋳型として用いたポリ(N−ビニルピロリドン)やテトラブチルアンモニウムクロリド、エチレングリコール及び粒径の小さな銀のナノ粒子を除去した。濾紙上の沈殿物を水に再分散させることで任意の濃度の銀ナノワイヤ分散水溶液を得た。銀ナノワイヤの短軸、長軸およびアスペクト比の平均値はそれぞれ68nm、18μm、265であった。
【0137】
本発明で用いた第2成分(多糖類およびその誘導体)である、バインダー溶液を以下のように調製した。
<バインダー溶液Iの調製>
風袋重量が予め測定された300mLビーカーに超純水 100gを入れ加熱撹拌した。液温80〜90℃で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCと略す。商品名;メトローズ60SH−10000、信越化学工業(株)、2重量%水溶液の粘度10,000mPa・s) 2.00gを少しずつ入れ、強く撹拌し均一に分散させた。強く撹拌したまま、超純水 80gを加えると同時に加熱を止め、氷水でビーカーを冷却しながら均一な溶液になるまで撹拌した。20分間の撹拌の後、水溶液重量が 200.00gになるように超純水を加え、均一な溶液になるまで室温でさらに10分間撹拌し、1重量%HPMC水溶液Iを調製した。
1重量%HPMC溶液I 32.00g、0.1重量%TritonX−100(商品名;シグマアルドリッチジャパン(株))水溶液 3.20g、超純水 4.80gを量りとり均一な溶液になるまで撹拌することで、0.8重量%バインダー溶液Iを調製した。
【0138】
<バインダー溶液IIの調製>
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを分子量の大きいもの(商品名;メトローズ90SH−100000、信越化学工業(株)、2重量%水溶液の粘度100,000mPa・s)に変更し、バインダー溶液Iの調製と同様の方法で、0.8重量%バインダー溶液IIを調製した。
【0139】
<バインダー溶液IIIの調製>
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを分子量の小さいもの(商品名;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルドリッチ社、2重量%水溶液の粘度4,000mPa・s)に変更した以外、バインダー溶液Iの調製と同様の操作を行い、0.8重量%バインダー溶液IIIを調製した。
【0140】
<バインダー溶液IVの調製>
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを分子量の大きいもの(商品名;メトローズSHV−PF、信越化学工業(株)、2重量%水溶液の粘度200,000mPa・s)に変更した以外、バインダー溶液Iの調製と同様の操作を行い、0.8重量%バインダー溶液IVを調製した。
【0141】
[実施例1]
<ポリマー水溶液I(第3成分)の調製>
固形分濃度80重量%のリケンレヂンMM−35(商品名;メチロールメラミン樹脂、三木理研工業(株)) 0.10g、および固形分濃度35重量%のリケンフィクサーRC−3(触媒、商品名;三木理研工業(株)) 22.9mgを量り取り、超純水 7.88gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液Iを調製した。
【0142】
<塗膜形成用組成物の調製>
0.8重量%バインダー溶液I 4.00g、1.0重量%銀ナノワイヤ分散水溶液I 1.60g、超純水 2.08gを量りとり均一な溶液になるまで撹拌した。ついで、固形分1.0重量%ポリマー水溶液I 0.32gを加え、均一な溶液になるまで撹拌し、以下の組成の塗膜形成用組成物を得た。調製した塗膜形成用組成物は、粘度15mPa・sであり、良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0143】
<透明導電膜の調製>
照射エネルギー1,000mJ/cm(低圧水銀灯(254ナノメートル))を照射し、基板表面をUVオゾン処理された厚さ0.7mmのEagleXGガラス(商品名;コーニング(株))上に、得られた塗膜形成用組成物1mLを滴下し、スピンコーター(商品名;MS−A150 ミカサ(株))を用いて800rpmでスピンコートを行った。前記ガラス基板を50℃のホットステージ上で90秒間の条件で予備焼成を行い、その後、140℃のホットステージ上で3分間本焼成を行い、透明導電膜を調製した。
【0144】
<透明導電膜の評価>
得られた透明導電膜は、表面抵抗値 47.4Ω/□、全光透過率 91.4%、ヘイズ 1.6%、膜厚35nmであった。また、環境耐性、プロセス耐性、密着性は良好であった。さらには、窒化シリコンおよびオーバーコート(製品名;PIG−7424、JNC(株))上でも、環境耐性、プロセス耐性、密着性は良好であった。
【0145】
これらの評価結果を表1に示す。なお、ガラスを用いての評価のみを表にまとめた。
【0146】
[実施例2]
1.0重量%のリケンレヂンMM−35水溶液を0.080gとした以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.01 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.001 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.385 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して2.5重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0147】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 43.9Ω/□、全光透過率 91.3%、ヘイズ 1.6%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0148】
[実施例3]
1.0重量%リケンレヂンMM−35水溶液を1.28gとした以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.16 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.016 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.220 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して40重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0149】
500rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 103Ω/□、全光透過率 89.3%、ヘイズ 2.3%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0150】
[実施例4]
用いたバインダー溶液を0.8重量%バインダー溶液II 4.00gとした以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0151】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 30.8Ω/□、全光透過率 91.2%、ヘイズ 1.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0152】
[実施例5]
0.1重量%TritonX−100水溶液 3.20gではなく、0.1重量%フタージェント251(商品名;(株)ネオス)3.20gを用いた以外は実施例4と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
フタージェント251 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0153】
実施例4と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 29.8Ω/□、全光透過率 91.2%、ヘイズ 1.8%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0154】
[実施例6]
用いたバインダー溶液を0.8重量%バインダー溶液III 4.00gとした以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0155】
800rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 60.3Ω/□、全光透過率 92.0%、ヘイズ 1.3%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0156】
[実施例7]
用いたバインダー溶液を0.8重量%バインダー溶液IV 4.00gとした以外は実施例1と同様の組成と手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0157】
2,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 33.8Ω/□、全光透過率 91.8%、ヘイズ 1.3%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0158】
[実施例8]
<ポリマー水溶液VI(第3成分)の調製>
固形分濃度80%のリケンレヂンMA−156(商品名;メチロールメラミン樹脂、三木理研工業(株)) 0.10g、および、固形分濃度31%のリケンフィクサーRC(触媒、商品名;三木理研工業(株)) 25.8mgを量り取り、超純水 7.87gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液VIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液VIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMA−156 0.04 重量%
リケンフィクサーRC 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMA−156はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMA−156 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0159】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 51.1Ω/□、全光透過率 91.3%、ヘイズ 1.6%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0160】
[実施例9]
<ポリマー水溶液VII(第3成分)の調製>
固形分濃度80重量%のリケンレヂンMM−35 0.10g、および固形分濃度31重量%のリケンフィクサーRC(商品名;三木理研工業(株)) 25.8mgを量り取り、超純水 7.87gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液VIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液VIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0161】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 52.8Ω/□、全光透過率 91.2%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0162】
[実施例10]
<ポリマー水溶液VIII(第3成分)の調製>
固形分濃度80重量%のリケンレヂンMA−156 0.10g、および固形分濃度35重量%のリケンフィクサーRC−3 22.9mgを量り取り、超純水 7.87gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液VIIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液VIIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMA−156 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.352 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、リケンレヂンMA−156はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMA−156 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0163】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 54.0Ω/□、全光透過率 91.4%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0164】
[実施例11]
<ポリマー水溶液IXの調製>
固形分濃度30重量%のスミレーズ633(エポキシ基を有する。商品名;田岡化学工業(株)) 0.264gを量り取り、超純水 7.75gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液IXを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液IXを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
スミレーズ633 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、スミレーズ633はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0165】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 31.4Ω/□、全光透過率 90.4%、ヘイズ 2.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0166】
[実施例12]
<ポリマー水溶液Xの調製>
固形分濃度34.5重量%のエラストロンBN−11(イソシアネート基を有する。商品名;第一工業製薬(株)) 1.16gを量り取り、超純水 6.84gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液Xを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液Xを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
エラストロンBN−11 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、エラストロンBN−11はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0167】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 36.0Ω/□、全光透過率 91.1%、ヘイズ 5.9%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0168】
[実施例13]
<ポリマー水溶液XIの調製>
固形分濃度22.9重量%のエラストロンH−3(イソシアネート基を有する。商品名;第一工業製薬(株)) 1.75gを量り取り、超純水 6.25gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液XIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
エラストロンH−3 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、エラストロンH−3はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0169】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 25.7Ω/□、全光透過率 88.3%、ヘイズ 3.8%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0170】
[実施例14]
<ポリマー水溶液XIIの調製>
固形分濃度21.7重量%のエラストロンH−38(イソシアネート基を有する。商品名;第一工業製薬(株)) 1.84gを量り取り、超純水 6.16gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液XIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
ポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
エラストロンH−38 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、エラストロンH−38はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0171】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 22.6Ω/□、全光透過率 87.9%、ヘイズ 5.0%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0172】
[実施例15]
<ポリマー水溶液XIIIの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMW−22(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.08gを量り取り、超純水 7.92gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液XIIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XIIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−22 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−22はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0173】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 32.1Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0174】
[実施例16]
1.0重量%のニカラックMW−22水溶液を0.08gとした以外は実施例15と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−22 0.01 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.386 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−22はHPMC 100重量部に対して2.5重量部に相当する。
【0175】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 30.9Ω/□、全光透過率 91.4%、ヘイズ 1.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0176】
[実施例17]
1.0重量%のニカラックMW−22水溶液を1.28gとした以外は実施例15と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−22 0.16 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.236 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−22はHPMC 100重量部に対して40重量部に相当する。
【0177】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 121Ω/□、全光透過率 89.7%、ヘイズ 0.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0178】
[実施例18]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液IV 4.00g、およびポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XIIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−22 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−22はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0179】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 33.5Ω/□、全光透過率 91.3%、ヘイズ 1.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0180】
[実施例19]
<ポリマー水溶液XIVの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMW−30(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.114gを量り取り、超純水 7.886gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液XIVを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XIVを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−30 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−30はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0181】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 32.7Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0182】
[実施例20]
<ポリマー水溶液XVの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMX−035(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.1143gを量り取り、超純水 7.8857gで希釈し、1.0重量%ポリマー水溶液XVを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー水溶液として1.0重量%ポリマー水溶液XVを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMX−035 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMX−035はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0183】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 36.5Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0184】
[実施例21]
<ポリマー水溶液XVIの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMW−30(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.08gを量り取り、イソプロピルアルコール 7.92gで希釈し、1.0重量%ポリマー溶液XVIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー溶液として1.0重量%ポリマー溶液XVIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−30 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 95.356 重量%
イソプロピルアルコール 4 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−30はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0185】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 33.7Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0186】
[実施例22]
<ポリマー水溶液XVIIの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMW−22(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.114gを量り取り、イソプロピルアルコール 7.886gで希釈し、1.0重量%ポリマー溶液XVIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー溶液として1.0重量%ポリマー溶液XVIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMW−22 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 95.356 重量%
イソプロピルアルコール 4 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMW−22はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0187】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 33.1Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.4%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0188】
[実施例23]
<ポリマー水溶液XVIIIの調製>
固形分濃度100重量%のニカラックMX−035(N−メチロールエーテル基を有する。商品名;(株)三和ケミカル) 0.1143gを量り取り、イソプロピルアルコール 7.8857gで希釈し、1.0重量%ポリマー溶液XVIIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、およびポリマー溶液として1.0重量%ポリマー溶液XVIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
ニカラックMX−035 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 95.356 重量%
イソプロピルアルコール 4 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、ニカラックMX−035はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0189】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 37.1Ω/□、全光透過率 91.5%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0190】
[実施例24]
<アルコキシシリル基を有する化合物水溶液(第3成分)Iの調製>
サイラエースS330(アミノ基とアルコキシシリル基を有する化合物。商品名;JNC(株)) 0.1gを量り取り、超純水 19.9gで希釈し、0.5重量%の水溶液Iを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、ポリマー水溶液Iではなく0.5重量%の水溶液Iを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
サイラエースS330 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS330はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0191】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 36.4Ω/□、全光透過率 91.1%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0192】
[実施例25]
<アルコキシシリル基を有する化合物水溶液IIの調製>
サイラエースS510(エポキシとアルコキシシリル基を有する化合物。商品名;JNC(株)) 0.1gを量り取り、超純水 19.9gで希釈し、0.5重量%の水溶液IIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、ポリマー水溶液Iではなく0.5重量%の水溶液IIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
サイラエースS510 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS510はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0193】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 34.8Ω/□、全光透過率 91.4%、ヘイズ 1.6%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0194】
[実施例26]
<アルコキシシリル基を有する化合物水溶液IIIの調製>
1、2―ビス(トリメトキシシリル)エタン(両末端にアルコキシシリル基を有する化合物。東京化成工業(株)製) 0.1gを量り取り、超純水 19.9gで希釈し、0.5重量%の水溶液IIIを調製した。
<塗膜形成用組成物の調製>
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、ポリマー水溶液Iではなく0.5重量%の水溶液IIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
1、2―ビス(トリメトキシシリル)エタン 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、1、2―ビス(トリメトキシシリル)エタンはHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0195】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 36.8Ω/□、全光透過率 91.3%、ヘイズ 1.5%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0196】
[実施例27]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00gを用い、0.5重量%の水溶液Iを加えた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
サイラエースS330 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.312 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS330はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0197】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 35.8Ω/□、全光透過率 91.0%、ヘイズ 1.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0198】
[実施例28]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00gを用い、0.5重量%の水溶液IIを加えた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
リケンレヂンMM−35 0.04 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.004 重量%
サイラエースS510 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.312 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS510はHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0199】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 36.3Ω/□、全光透過率 91.0%、ヘイズ 1.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0200】
[実施例29]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00gを用い、0.5重量%の水溶液IIIを用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
1,2―ビス(トリメトキシシリル)エタン 0.04 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.356 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、1,2―ビス(トリメトキシシリル)エタンはHPMC 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0201】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 35.3Ω/□、全光透過率 91.1%、ヘイズ 1.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0202】
[実施例30]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、ポリマー水溶液Iではなく0.5重量%の水溶液Iを0.16g用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
サイラエースS330 0.02 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.376 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS330はHPMC 100重量部に対して5重量部に相当する。
【0203】
1,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 34.0Ω/□、全光透過率 91.0%、ヘイズ 1.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0204】
[実施例31]
バインダー溶液として0.8重量%バインダー溶液II 4.00g、ポリマー水溶液Iではなく0.5重量%の水溶液Iを0.08g用いた以外は実施例1と同様の手順で以下の組成の塗膜形成用組成物を調製した。調製した塗膜形成用組成物は良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
サイラエースS330 0.01 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.386 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当し、サイラエースS330はHPMC 100重量部に対して2.5重量部に相当する。
【0205】
4,000rpmでスピンコートを行った以外は実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値 65.0Ω/□、全光透過率 93.0%、ヘイズ 0.7%であった。また、環境耐性、プロセス耐性は良好であった。
【0206】
[実施例32]透明導電膜のパターニング
実施例1で調製した透明導電膜上に、ポジ型フォトレジストであるZPP−1700PG(商品名;日本ゼオン(株))1mLを滴下し、スピンコーターを用いて4,000rpmでスピンコートを行った。前記ガラス基板を100℃のホットステージ上で90秒間焼成した。露光機(型式 HB−20201CL、光源は超高圧水銀ランプ、型式 USH−2004TO、ウシオ電機(株))を用いて、Cr蒸着のフォトマスクを介して、前記フォトレジストの塗膜上に、上方から50mJ/cmの条件でUV光を照射した。UV照射後の塗膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(TMA−208、商品名;関東化学(株))に30秒間浸漬することで露光部を除去し現像した。現像操作後の塗膜をAlエッチング液(商品名;関東化学(株))に30秒間浸漬することで、露出している透明導電膜中の銀ナノワイヤのエッチングを行った。エッチング後の塗膜をアセトンに2分間浸漬することで、フォトレジストを除去した。エアガンを用いて塗膜および基板に乾燥空気を吹きつけて乾燥させた。
倍率500倍の暗視野落射顕微鏡で観察を行った。径または幅5μmのドット/ライン/スペースが形成された。また、パターンの欠けや剥がれはなく良好にパターニングされた。
【0207】
[実施例33]パターニングのマージンの確認
Alエッチング液への浸漬時間を15、30、45、60、90、120、180、300秒とした以外は実施例32と同様の組成と手順で透明導電膜のパターニングを行った。倍率500倍の暗視野落射顕微鏡で観察を行った。いずれの条件でも径または幅5μmのドット/ライン/スペースおよび逆パターンが形成された。また、いずれの条件でも透明導電膜にパターンの欠けや剥がれはなく良好にパターニングされた。
【0208】
[比較例1]
国際公開第2008/046058号パンフレットの実施例17に記載の塗膜形成用組成物を以下の手順で調製した。なお、成分量は所望の表面抵抗を示すように適宜決定された。 0.8重量%バインダー溶液I 4.00g、1.0重量%銀ナノワイヤ分散水溶液 1.60g、超純水 2.40gを量りとり均一な溶液になるまで撹拌し、以下の組成の塗膜形成用組成物を得た。調製した塗膜形成用組成物は、粘度56mPa・sであり、1週間後にも良好な分散性を示した。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
HPMC 0.4 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.396 重量%
なお、HPMCは銀ナノワイヤ 100重量部に対して200重量部に相当する。
【0209】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値48.2Ω/□、全光透過率92.0%、ヘイズ1.3%であった。環境耐性、プロセス耐性、および密着性は十分でなく、本発明の塗膜形成用組成物より劣っていた。さらには、窒化シリコンおよびオーバーコート(製品名;PIG−7424、JNC(株))上でも、環境耐性、プロセス耐性、および密着性は十分でなく、本発明の塗膜形成用組成物より劣っていた。
比較例1は本発明の塗膜形成用組成物と成分構成が異なるため、環境耐性、プロセス耐性、および密着性が十分でないことを確認した。
【0210】
[比較例2]
特開2010−205532号公報では、一層目に銀ナノワイヤと架橋性化合物を成膜し、二層目に有機導電材料を製膜したものである。特開2010−205532号公報の実施例中の[透明電極108の作製]に記載の一層目を、以下に示す手順で製膜した。
1.0重量%に希釈されたPVA203(商品名;(株)クラレ、4重量%水溶液の粘度3.4mPa・s)水溶液 3.20g、0.1重量%Triton X−100水溶液 0.32g、超純水 2.48gを量りとり均一な溶液になるまで撹拌した。1.0重量%銀ナノワイヤ分散水溶液 1.60gを加え、均一な溶液になるまで撹拌した。さらに、0.1重量%に希釈されたグリオキザール(和光純薬工業(株))水溶液 0.40gを加え、均一になるまで撹拌し、以下の組成の塗膜形成用組成物を得た。調製した塗膜形成用組成物は、一週間後にスクリュー瓶の底に銀ナノワイヤの沈殿が見られ、分散性は不良であった。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
PVA203 0.05 重量%
グリオキザール 0.005 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.741 重量%
なお、PVA203は銀ナノワイヤ 100重量部に対して25重量部に相当し、グリオキザールはPVA203 100重量部に対して10重量部に相当する。
【0211】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値150Ω/□、全光透過率92.3%、ヘイズ0.9%であった。環境耐性、プロセス耐性、密着性は不良であった。
【0212】
比較例2は本発明の塗膜形成用組成物と成分構成が異なるため、環境耐性、プロセス耐性、および密着性が不良であることを確認した。
【0213】
[比較例3]
特開2010−205532号公報では、一層目に銀ナノワイヤと架橋性化合物を成膜し、二層目に有機導電材料を製膜したものである。特開2010−205532号公報の実施例中の[透明電極113の作製]に記載の一層目を、以下に示す手順で製膜した。
1.0重量%に希釈されたPVA203(商品名;(株)クラレ、4重量%水溶液の粘度3.4mPa・s)水溶液 3.20g、0.1重量%Triton X−100水溶液 0.32g、超純水 2.48gを量りとり均一な溶液になるまで撹拌した。1.0重量%銀ナノワイヤ分散水溶液 1.60gを加え、均一な溶液になるまで撹拌した。さらに、0.1重量%に希釈されたリケンレヂンMM−35水溶液 0.40g、0.1重量%に希釈されたリケンフィクサーRC−3水溶液 0.40gを加え、均一になるまで撹拌し、以下の組成の塗膜形成用組成物を得た。調製した塗膜形成用組成物は、一週間後にスクリュー瓶の底に銀ナノワイヤの沈殿が見られ、分散性は不良であった。
銀ナノワイヤ 0.2 重量%
PVA203 0.05 重量%
リケンレヂンMM−35 0.005 重量%
リケンフィクサーRC−3 0.005 重量%
Triton X−100 0.004 重量%
水 99.736 重量%
なお、PVA203は銀ナノワイヤ 100重量部に対して25重量部に相当し、リケンレヂンMM−35はPVA203 100重量部に対して10重量部に相当し、リケンフィクサーRC−3はリケンレヂンMM−35 100重量部に対して100重量部に相当する。
【0214】
実施例1と同様の手順で透明導電膜を調製した。調製した塗膜形成用組成物は、一週間後にスクリュー瓶の底に銀ナノワイヤの沈殿が見られ、分散性は不良であった。得られた透明導電膜は、表面抵抗値142Ω/□、全光透過率93.0%、ヘイズ0.6%であった。環境耐性、プロセス耐性、密着性は不良であった。
【0215】
比較例3は本発明の塗膜形成用組成物と成分構成が異なるため、環境耐性、プロセス耐性、および密着性が不良であることを確認した。
【0216】
[比較例4]パターニングのマージンの確認
比較例1で調製した塗膜形成用組成物を用いた以外は実施例33と同様の手順で透明導電膜のパターニングを行った。倍率500倍の暗視野落射顕微鏡で観察を行った。Alエッチング液への浸漬時間が15、30秒の場合は、径または幅5μmのドット/ライン/スペースおよび逆パターンが形成された。Alエッチング液への浸漬時間が45秒以上の場合は、パターンの径または幅は浸漬時間に比例して小さくなり、また逆パターンの径または幅は浸漬時間に比例して大きくなり、本発明の塗膜形成用組成物の方がパターニングのマージンが広いことを確認した。


表1

【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の塗膜用組成物は、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー、タッチパネル素子、太陽電池素子などのデバイス素子の製造工程に用いることができる。また本発明の透明導電膜は、導電性、光透過性、環境耐性、プロセス耐性および密着性に優れ、透明導電膜は、低い表面抵抗値と、良好な光線透過率等の光学特性とを併せ持つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種、第2成分として多糖類およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種、第3成分として(ブロック)イソシアネート基、アミンイミド基、エポキシ基、オキセタニル基、N−メチロール基、N−メチロールエーテル基、およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する化合物、第4成分として水を含有する塗膜形成用組成物。
【請求項2】
第3成分が、N−メチロール基あるいはN−メチロールエーテル基を有する化合物である、請求項1に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項3】
第3成分が、以下の(A)群に示される化合物の少なくとも一種と(B)群に示される化合物の少なくとも一種の縮合生成物である、請求項2に記載の塗膜形成用組成物。
(A) ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン
(B) 尿素、メラミン、ベンゾグアナミン
【請求項4】
第3成分が、ホルムアルデヒドとメラミンの縮合生成物である請求項3に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項5】
第3成分が、N−メチロールエーテル基を有する化合物である請求項4に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項6】
第3成分が、アルコキシシリル基を有する化合物である、請求項1に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項7】
アルコキシシリル基を有する化合物がアミノ基あるいはエポキシ基を有する、請求項6に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項8】
第3成分が、下記一般式(I)あるいは(II)で示される化合物である、請求項7に記載の塗膜形成用組成物。




(式中、Rは独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nおよびmは独立して2〜5の整数である。)
【請求項9】
第3成分が、下記一般式(III)で示される化合物である、請求項6に記載の塗膜形成用組成物。



(式中、Rは独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。また、nは2〜5の整数である。)
【請求項10】
第1成分が、銀ナノワイヤである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項11】
第1成分が、短軸の長さの平均が5nm以上100nm以下であり、かつ長軸の長さの平均が2μm以上50μm以下の銀ナノワイヤである、請求項10に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項12】
第2成分が、セルロースエーテル誘導体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物
【請求項13】
第2成分がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項12に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項14】
アミン化合物、アミン化合物の塩類および金属塩類から選ばれる化合物の少なくとも一種を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項15】
第1成分が塗膜形成用組成物の全重量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下、第2成分が第1成分100重量部に対して、50重量部以上300重量部以下、第3成分が第2成分100重量部に対して、1.0重量部以上50重量部以下の量である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項16】
25℃における粘度が10mPa・s以上70mPa・s以下である請求項1〜15のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項17】
導電性を有する塗膜の形成に用いられる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の塗膜形成用組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の塗膜形成用組成物を用いて得られた透明導電膜を有する基板であり、透明導電膜の膜厚が20nm以上80nm以下であって、透明導電膜の表面抵抗が10Ω/□以上5,000Ω/□以下であり、透明導電膜の全光線透過率が85%以上である、透明導電膜を有する基板。
【請求項19】
請求項18に記載の基板を用いたデバイス素子

【公開番号】特開2013−16455(P2013−16455A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279719(P2011−279719)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】