透明導電膜の製造方法および透明導電膜
【課題】所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜を簡便な方法で製造可能とする、透明導電膜の製造方法を提供する。
【解決手段】透明導電膜の製造方法は、表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程(S10)と、基板を準備する工程(S20)と、基板上に、透明導電性前駆体材料と揮発性材料とを含む透明導電性前駆体層を形成する工程(S30)と、成形型の起伏形状を透明導電性前駆体層に押圧する工程(S40)と、揮発性材料を揮発させる工程(S50)と、透明導電性前駆体層から成形型を離型させる工程(S60)と、透明導電性前駆体層を熱処理する工程(S70)とを備える。
【解決手段】透明導電膜の製造方法は、表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程(S10)と、基板を準備する工程(S20)と、基板上に、透明導電性前駆体材料と揮発性材料とを含む透明導電性前駆体層を形成する工程(S30)と、成形型の起伏形状を透明導電性前駆体層に押圧する工程(S40)と、揮発性材料を揮発させる工程(S50)と、透明導電性前駆体層から成形型を離型させる工程(S60)と、透明導電性前駆体層を熱処理する工程(S70)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜およびその製造方法に関し、特に、太陽電池などに用いられる透明導電膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換装置の低コスト化と高効率化とを両立させるために、資源の観点からも好ましい薄膜太陽電池が注目され、その開発が精力的に行われている。
【0003】
ところで、高効率な薄膜太陽電池を実現する上で重要な技術の1つに、光閉込効果がある。光閉込効果とは、光電変換層に接する透明導電層または金属層の表面を凹凸化して、その界面で光を散乱させることで光路長を延長させ、光電変換層での光吸収量を増大させるものである。
【0004】
光閉込効果により光電変換効率を向上させることで、光電変換層の膜厚を低減する作用がある。これにより、特にアモルファスシリコン太陽電池の場合には光劣化を抑制することができる。また、光吸収特性のためにアモルファスシリコンと比較して数倍から十数倍となる数μmオーダーもの厚さが必要とされる結晶質シリコン太陽電池の場合には、大幅に成膜時間を短縮化することができる。すなわち、光閉込によって、薄膜太陽電池の実用化への大きな課題である高効率化、安定化、低コスト化の全てを向上させることが可能である。
【0005】
例えば、特許文献1には、ガラス基板上に、不連続な複数の山部によるマクロな凹凸(テクスチャ)と、この山部間をうめる複数の平坦部とを有しており、該山部および該平坦部の外表面は、ミクロの多数の凹凸(テクスチャ)を有する構造(いわゆるダブルテクスチャ構造)である透明導電性酸化物膜付き基体が開示されている。上記山部および上記平坦部の外表面を、山部による凹凸(マクロな凹凸)よりも小さな凹凸(ミクロな凹凸)とすることにより、短波長の光を強く散乱することができ、全体として広い領域の光を有効に散乱することが可能になる。
【0006】
すなわち、大きな凹凸である山部により長波長の光を散乱し、小さな凹凸表面により短波長の光を散乱することができるため、全体として高い光散乱性を達成することができる。このような透明導電性酸化膜付き基体を薄膜太陽電池に用いた場合、光電変換効率の高い太陽電池を製造することができる。また、上記凹凸は、いずれも常圧CVD法により形成することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、金属有機化合物または有機金属錯体および必要により有機化合物を添加した透明導電性溶液の膜を基板上に形成し、上記膜上に、任意の形状を有するスタンパーを押し付けて、凹凸形状からなる複数の突出部を成型し、上記膜を熱処理することで、複数の突出部を備えた透明電極を製造する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−347490号公報
【特許文献2】特開2005−310387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のガラス基板状に形成される凹凸は、小さすぎると光の散乱効果が見込めず、大きすぎると入射光の反射成分が多くなり、光電変換層への入射光が減少する。したがって、光閉じ込め効果を最大限に生かすためには、凹凸の大きさ、形状、および透明導電膜の膜厚などを、精密に制御する必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、凹凸の大きさが透明導電膜の膜厚に応じて変化するため、膜厚と凹凸形状との組合せに制限があった。また、マクロな凹凸とミクロな凹凸との2層を成膜する必要があり、これらの界面での膜剥離の問題があった。このように、特許文献1に記載の方法では、膜剥離、成膜条件などの観点から、実現できる凹凸形状、膜厚などには制限があり、形状の制御性、再現性に問題があった。
【0011】
また、特許文献2では、予め凹凸パターンを形成させた膜表面に有機化合物を添加した金属有機化合物または有機金属錯体の膜をコートして、nmオーダーの凹凸をつけた構造を形成できると言及されているが、具体的な方法について何ら記載がない。また、凹凸を形成する手段としてスタンパーを用いることが記載されているが、その材質、押圧方法について何ら記載がない。したがって、特許文献2に記載の方法では、ダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜の形成は困難であった。
【0012】
すなわち、従来の方法では、所望の形状を有するダブルテクスチャ構造の透明導電膜を、制御性よく製造することは困難であった。
【0013】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜を簡便な方法で製造可能とする、透明導電膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る透明導電膜の製造方法は、表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程と、基板を準備する工程と、基板上に、導電性を有する透明な前駆体材料と揮発性材料とを含む前駆体層を形成する工程と、成形型の起伏形状を前駆体層に押圧する工程と、揮発性材料を揮発させる工程と、前駆体層から成形型を離型させる工程と、前駆体層を熱処理する工程とを備える。
【0015】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、成形型は、起伏形状を有する第一部材と、第一部材よりもヤング率が小さい第二部材とを含み、第一部材と第二部材とが積層されて形成されている。
【0016】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、第一部材は、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含む。
【0017】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、揮発させる工程において、前駆体層は、揮発性材料が揮発する下限温度をTsとし、前駆体材料が結晶化する下限温度をTcとして、数式Ts<T<Tcで表される温度Tに加熱される。
【0018】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、押圧する工程において、前駆体層の成形型と接触する接触面には、成形型の起伏形状を反映した起伏が形成される。熱処理する工程において、接触面には、起伏に重畳して、起伏よりも高低差の小さい凹凸が形成される。
【0019】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、起伏の高低差が100nm以上15μm以下であり、凹凸の高低差が10nm以上200nm以下である。
【0020】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む。
【0021】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、前駆体材料は、UV硬化材料を含む。
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、押圧する工程と揮発させる工程との間に、成形型を前駆体層に再押圧する工程を備える。
【0022】
本発明に係る透明導電膜は、上記のいずれかの局面の製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透明導電膜の製造方法によると、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜を、簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態の透明導電膜の製造方法を示す流れ図である。
【図2】本実施の形態の透明導電膜の製造に用いる成形型の製造方法を示す流れ図である。
【図3】マスター型の構成を示す断面模式図である。
【図4】マスター型にゴム原料の溶液を塗布した状態を示す断面模式図である。
【図5】マスター型からゴム層が剥離された状態を示す断面模式図である。
【図6】成形型の構成を示す断面模式図である。
【図7】基板上に透明導電性前駆体層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図8】透明導電性前駆体層に成形型を押圧した状態を示す断面模式図である。
【図9】成形型を透明導電性前駆体層から離型させた状態を示す断面模式図である。
【図10】熱処理により形成された透明導電膜を示す断面模式図である。
【図11】図10中に示す領域XI付近を拡大して示す断面模式図である。
【図12】図11中に示す領域XII付近を拡大して示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0026】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0027】
図1は、本実施の形態の透明導電膜の製造方法を示す流れ図である。図1を参照して、本実施の形態の透明導電膜の製造方法について説明する。図1に示すように、まず工程(S10)において、成形型を作製する。
【0028】
図2は、本実施の形態の透明導電膜の製造に用いる成形型の製造方法を示す流れ図である。図2を参照して、成形型を作製する工程(S10)の詳細について説明する。図2に示すように、工程(S11)において、マスター型2を準備する。図3は、マスター型2の構成を示す断面模式図である。図3に示すように、マスター型2の表面21には、起伏形状24が形成されている。起伏形状24は、表面21が突起した山部22と、表面21が窪んだ谷部23とを有する。表面21には、多数の山部22と谷部23とが交互に形成されている。
【0029】
マスター型2としては、たとえば、単結晶の結晶異方性エッチングや熱化学気相吸着(熱CVD)法などにより、予め凸凹が形成された基板を用いてもよい。また、基板を準備し、その基板に、フォトリソグラフィによるエッチング法、電鋳法などにより、凸凹を形成してもよい。
【0030】
続いて工程(S12)において、マスター型2の表面21に、適切な離型剤を塗布する。離型剤を塗布することにより、後述する表面21上に形成するゴム層4の、マスター型2からの離型性が高められ、ゴム層4をマスター型2から容易に剥離できる。
【0031】
続いて工程(S13)において、マスター型2の表面21上に、ゴム原料を溶解させた溶液3を塗布する。図4は、マスター型2にゴム原料の溶液3を塗布した状態を示す断面模式図である。図4に示すように、ゴム原料の溶液3は、起伏形状24に沿ってマスター型2の表面21全体に亘るように塗布されている。起伏形状24の全ての谷部23内にゴム原料が充填されるように、ゴム原料の溶液3が塗布されている。
【0032】
続いて工程(S14)において、ゴム原料の溶液3を乾燥し固化させ、ゴム層4を形成する。ゴム原料を固化させゴム層4を得る際には、ゴム層4の形状を安定に保持させるために、加熱、光照射、加圧の工程を含めてもよい。またゴム層4は、離型性を向上させる観点から、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含むことが好ましい。
【0033】
続いて工程(S15)において、マスター型2からゴム層4を剥離する。図5は、マスター型2からゴム層4が剥離された状態を示す断面模式図である。ゴム層4の表面41には、マスター型2の表面21の凹凸状テクスチャ構造の逆パターンである起伏形状44が形成されている。つまり、マスター型2の表面21の起伏形状24において、山部22が形成されている位置に対応して、ゴム層4の表面41の起伏形状44の谷部43が形成される。また、マスター型2の表面21に谷部23が形成されている位置に対応して、ゴム層4の表面41に山部42が形成される。
【0034】
続いて工程(S16)において、ゴム層4の表面41と反対側の裏面にクッション層5を貼り合わせ、成形型1とする。図6は、成形型1の構成を示す断面模式図である。クッション層5の形成材料は、プレス時のゴム層4と基板との接触不良を改善する観点から、発泡ゴム、綿布、織布、不織布などが好ましい。このようにして、表面41に起伏形状44を有する成形型1が作製される。成形型1は、起伏形状44を有する第一部材の一例としてのゴム層4と、第二部材の一例としてのクッション層5を含み、ゴム層4とクッション層5とが積層されて形成されている。クッション層5は、ゴム層4よりもヤング率が小さく形成されている。
【0035】
図1に戻って、次に工程(S20)において、主表面を有する基板6を準備する。続いて工程(S30)において、基板6の主表面上に、前駆体層の一例としての、透明導電性前駆体層7を形成する。図7は、基板6上に透明導電性前駆体層7を形成した状態を示す断面模式図である。透明導電性前駆体層7は、透明導電性前駆体層7を形成する形成材料を基板6の主表面に塗布することにより形成される。この形成材料は、透明であって導電性を有する前駆体材料の一例としての透明導電性前駆体材料と、揮発性材料とを含む。透明導電性前駆体材料は、加熱により結晶化して透明導電膜を形成する。揮発性材料は、加熱時に揮発する。
【0036】
透明導電性前駆体層7を形成する形成材料を塗布する塗布方法は、たとえばディップ法、スピンコート法、スクリーン印刷などの、公知の方法から適宜選択することができる。膜状に塗布された形成材料の形状保持のため、必要に応じて、熱処理、熱風吹き付けなどの乾燥工程を備えてもよい。
【0037】
透明導電性前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む。透明導電性前駆体材料は、上記元素群の酸化物から一つ、または複数組み合わせて選ばれてなる導電性材料を含む。特に、優れた導電性を有するZnO、SnO2、ITO(Indium Tin Oxide)などを含むのが望ましい。透明導電性前駆体材料は、紫外線の照射を受けて硬化するUV(ultraviolet)硬化材料を含んでもよい。この場合、後の揮発性材料を揮発させる工程において、UV光を照射しながら透明導電性前駆体層7を硬化させることができるので、処理時間の短縮が可能である。
【0038】
次に工程(S40)において、透明導電性前駆体層7に対し、工程(S10)で作製した成形型1を押し当てる。図8は、透明導電性前駆体層7に成形型1を押圧した状態を示す断面模式図である。成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧するときの、成形型1から透明導電性前駆体層7へ加えられる圧力を調整することで、透明導電性前駆体層7の厚みを調整できる。
【0039】
図8に示すように、成形型1が透明導電性前駆体層7に押圧されることで、成形型1と接触する透明導電性前駆体層7の接触面71には、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74が形成される。つまり、成形型1のゴム層4の表面41の起伏形状44において、山部42が形成されている位置に対応して、接触面71の起伏74の谷部73が形成される。また、ゴム層4の表面41に谷部43が形成されている位置に対応して、接触面71に山部72が形成される。
【0040】
成形型1の押し当て方としては、成形型1を金属薄板に貼り付けたものを、基板6端部から順番に押し当てる方法や、成形型1をローラに巻きつけたものを、基板6上を転がしながら押し当てる方法などが挙げられる。
【0041】
上述したように、成形型1は、ゴム層4と、ゴム層4よりもヤング率が小さいクッション層5と、の積層体として形成されている。剛性の高い透明導電性前駆体層7に対し、剛性の高いゴム層4を押圧する場合、印圧ムラが生じ、起伏74のテクスチャ形状または透明導電膜の膜厚に、面内分布が生じてしまう。特に大面積のプレスを行なう場合、この影響が顕著になる。そこで、ゴム層4の背面側に、印圧方向の硬さの指標であるヤング率がゴム層4の材質よりも小さい材質により形成されたクッション層5を設けることにより、成形型1(ゴム層4)の片当たりを防ぎ、上記印圧ムラを抑制することができる。
【0042】
ここで、起伏74を形成した後に、一旦成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させ、その後、透明導電性前駆体層7に対する成形型1の相対位置をずらして、透明導電性前駆体層7に成形型1を再押圧してもよい。成形型1を押圧する位置をずらして再度押圧することにより、成形型1の起伏形状44に対応する起伏74が重畳され、再押圧する前と後とで異なる形状の起伏が得られる。このように位置を変えながら複数回プレスすることで、単一の成形型1を用いて、様々な形状の起伏を形成することができる。したがって、成形型1の製造コストを増加させることなく、所望の形状を有する起伏を得ることができる。すなわち、様々な仕様の太陽電池セルに対応する、所望の光散乱効果を有する透明導電膜9を得る事ができる。
【0043】
次に工程(S50)において、成形型1を透明導電性前駆体層7に押し当てた状態で一定時間保持し、透明導電性前駆体層7に含まれる揮発性材料の一部または全部を揮発させる。
【0044】
このとき、透明導電性前駆体層7を加熱してもよい。すなわち、透明導電性前駆体層7に含まれる揮発性材料の一部が揮発し始める下限温度をTs、透明導電性前駆体層7に含まれる透明導電性前駆体材料が結晶化し始める下限温度をTcとしたとき、Ts<T<Tcで表される温度Tで、透明導電性前駆体層7を加熱する。このようにすれば、揮発性材料の揮発を加速することができるので、処理時間の短縮が可能である。
【0045】
Ts以下では、成形型1を離型させた際に、透明導電性前駆体層7の硬度が小さすぎて、成形型1の起伏形状44により押圧され変形した部分の形状が保持されない。Tc以上では、成形型1の透明導電性前駆体層7へのプレス中に、透明導電性前駆体材料が結晶化を開始し、成形型1の起伏形状44を反映したシングルテクスチャとなり、ダブルテクスチャは得られない。
【0046】
次に工程(S60)において、成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させる。図9は、成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させた状態を示す断面模式図である。揮発性材料の少なくとも一部を揮発させ透明導電性前駆体層7を乾燥させた後、成形型1を離型することで、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74が接触面71に形成され、凹凸(テクスチャ)構造を付与された透明導電性前駆体層7が得られる。
【0047】
次に工程(S70)において、透明導電性前駆体層7を熱処理する。熱処理温度は、透明導電性前駆体材料が結晶化する下限温度Tc以上とする。この熱処理により、残存する揮発性材料が揮発し、また透明導電性前駆体材料が結晶化して変質し、優れた導電性を発現する透明導電膜9が得られる。図10は、熱処理により形成された透明導電膜9を示す断面模式図である。図11は、図10中に示す領域XI付近を拡大して示す断面模式図である。図12は、図11中に示す領域XII付近を拡大して示す断面模式図である。
【0048】
図10〜図12に示すように、熱処理の結果、透明導電膜9の表面91には、成形型1の押圧により形成されたテクスチャ(起伏74)に加え、起伏74の表面に、起伏74より微細な形状のテクスチャである凹凸94が形成される。このようにして、テクスチャ(起伏74)上に微細テクスチャ(凹凸94)が重畳された、いわゆるダブルテクスチャが形成される。
【0049】
透明導電性前駆体材料を熱処理することにより、微小な結晶粒が成長し、結果として微細テクスチャ(凹凸94)が形成される。成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧するプレスを施すことによりテクスチャ(起伏74)を形成した後、この熱処理を行なうことで、起伏74の斜面から核生成および成長が起こり、起伏74に凹凸94が重畳されたダブルテクスチャ形状を得ることができる。
【0050】
成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧したまま熱処理すると、起伏74の斜面での結晶粒の成長は起こらず、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74のみしか得られない。上記のように、起伏74の斜面に成形型1が押し当てられておらずフリーな状態で熱処理することにより、初めて、起伏74上に凹凸94が形成される。
【0051】
図11に示す起伏74の山部72と谷部73との高低差H1は、図12に示す凹凸94の凸部92と凹部93との高低差H2よりも、大きくなっている。透明導電膜9の表面91には、成形型1の押圧により形成された起伏74に重畳して、起伏74よりも高低差の小さい凹凸94が形成されている。たとえば、起伏74の高低差H1を100nm以上15μm以下とし、凹凸94の高低差H2を10nm以上200nm以下とするように、起伏74および凹凸94を形成することができる。
【0052】
大テクスチャである起伏74により、特に長波長の光の散乱が向上する。起伏74は、長波長の散乱アップをもたらす。起伏74の高低差H1が小さすぎると長波長の光の散乱向上効果が得られず、また高低差H1が大きすぎると入射光の反射成分の増加、膜厚増加に伴う透明導電膜での吸収損失増加や、透明導電膜の上層のカバレッジ不足などをもたらす。一方、小テクスチャである凹凸94により、特に短波長の光の散乱が向上する。凹凸94は、短波長の散乱アップをもたらす。凹凸94の高低差H2が小さすぎると短波長の光の散乱向上効果が得られず、また高低差H2が大きすぎると起伏74との差が縮小するためやはり短波長の散乱向上効果が得られないなどの問題がある。そこで、高低差H1,H2を上記の範囲に収めることによって、広範囲の波長において、光散乱を向上させることができる。
【0053】
以上説明した本実施の形態の製造方法によって、起伏74に凹凸94が重畳された、ダブルテキスチャを有する透明導電膜9を作製することができる。本実施の形態の方法により製造された透明導電膜9は、長波長から短波長まで幅広い波長域で、高い光散乱効果を発揮することができ、その結果、広い波長域で透明導電膜9の分光感度がアップ(すなわち光電流アップ)する。
【0054】
また、本実施の形態の製造方法において、成形型1を基板6に押圧するプレス条件、成形型1をを作製する際のマスター型2の仕様(プレスマスター仕様)、および熱処理条件などを適切に調整することにより、CVD法などの他の透明導電膜の製造方法によってダブルテクスチャを有する透明導電膜を形成する場合に比べて、テクスチャ形状の制御性を拡大できる。したがって、種々のテキスチャ形状を有する透明導電膜9を実現することが可能となる。
【0055】
このようにして得られたテクスチャ付き透明導電膜9の上に、pinからなる発電層を形成し、その上に、取り出し電極を形成することで、太陽電池セルが完成する。このようにして得られた太陽電池は、透明導電膜9のダブルテクスチャにより、光閉じ込め効果が向上するため、高い変換効率が実現できる。
【0056】
なお、これまでの説明においては、基板6上に透明導電膜9を形成する方法について説明したが、これに限定されず、表面形状の制御性が必要とされる透明導電膜であれば、本発明の透明導電膜9の製造方法を適用できる。例えば、発電層と裏面電極との間に形成する裏面導電層や、複数の発電層を直鉄接合させる際に、異なる発電層間に形成する中間層などの表面形状にも、本発明の透明導電膜9の製造方法の適用が可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の透明導電膜の製造方法の実施例について詳細に説明する。事前に、成形型を作製した。成形型は、マスターとなる型にシリコーンゴムを塗布、乾燥し固化してゴム層を形成することにより作製した。
【0058】
ここで、マスター型として、Siウエハに対して、KOH等のアルカリ溶液を用いて、エッチング処理を施し、数μm〜十数μmの高低差を有する凹凸状のテクスチャ構造を形成したものを用いた。また、マスター型からの離型性をあげるため、フッ素系離型剤(たとえば、ダイキン化成製オプツールHD−1100など)をマスター表面にコーティングした。
【0059】
その後、マスター型からゴム層を剥離し、マスター型の凹凸状テクスチャ構造の逆パターンを形成させたゴム層を得た。得られたゴム層のパターンと逆側に、クッション層を貼り合せ成形型とした。クッション層としては、厚み1mmのポーラス状ウレタンを用いた。
【0060】
次に、ガラスからなる基板上に、スピンコート法により、透明導電性前駆体層を形成した。スピンコートの回転数は1000rpmとした。透明導電性前駆体層の形成材料は、イソプロピルアルコール溶媒に対し、酢酸亜鉛を0.3mol/L、モノエタノールアミンを0.3mol/L、アセチルメチルカルビノールを0.15mol/Lの濃度で溶解させた溶液とした。また、抵抗を調節するためのドーパントとして、硝酸アルミニウムを対Zn濃度で1%添加した。
【0061】
その後、透明導電性前駆体材料を塗布した基板に対し、作製した成形型を押し当てた。ここで、成形型の押し当て方としては、成形版をローラに巻きつけたものを、基板上を転がしながら押し当てる方法とした。成形型を基板に押圧する圧力は、200gf/cm2とした。
【0062】
基板を押し当てた状態で、透明導電性前駆体層を300℃に加熱し、300℃で60分間保持したのち成形型を離型して、マスター型の凸凹を反映したテクスチャ構造を有する透明導電性前駆体層を得た。
【0063】
そして、最後に、透明導電性前駆体層をN2雰囲気中で600℃に加熱し、600℃で30分間保持する熱処理を行なった。この結果、透明導電性前駆体層に含まれる透明導電性前駆体材料は、結晶化して透明導電膜へ変質した。同時に、成形型によって先に形成されたテクスチャ構造上に重畳される形で、透明導電膜表面に10〜200nm程度の高低差を有する凸凹が形成された。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に記載の透明導電膜の製造方法は、高変換効率を有する太陽電池セルを形成するための、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 成形型、2 マスター型、3 溶液、4 ゴム層、5 クッション層、6 基板、7 透明導電性前駆体層、9 透明導電膜、21,41,91 表面、22,42,72 山部、23,43,73 谷部、24,44 起伏形状、71 接触面、74 起伏、92 凸部、93 凹部、94 凹凸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜およびその製造方法に関し、特に、太陽電池などに用いられる透明導電膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換装置の低コスト化と高効率化とを両立させるために、資源の観点からも好ましい薄膜太陽電池が注目され、その開発が精力的に行われている。
【0003】
ところで、高効率な薄膜太陽電池を実現する上で重要な技術の1つに、光閉込効果がある。光閉込効果とは、光電変換層に接する透明導電層または金属層の表面を凹凸化して、その界面で光を散乱させることで光路長を延長させ、光電変換層での光吸収量を増大させるものである。
【0004】
光閉込効果により光電変換効率を向上させることで、光電変換層の膜厚を低減する作用がある。これにより、特にアモルファスシリコン太陽電池の場合には光劣化を抑制することができる。また、光吸収特性のためにアモルファスシリコンと比較して数倍から十数倍となる数μmオーダーもの厚さが必要とされる結晶質シリコン太陽電池の場合には、大幅に成膜時間を短縮化することができる。すなわち、光閉込によって、薄膜太陽電池の実用化への大きな課題である高効率化、安定化、低コスト化の全てを向上させることが可能である。
【0005】
例えば、特許文献1には、ガラス基板上に、不連続な複数の山部によるマクロな凹凸(テクスチャ)と、この山部間をうめる複数の平坦部とを有しており、該山部および該平坦部の外表面は、ミクロの多数の凹凸(テクスチャ)を有する構造(いわゆるダブルテクスチャ構造)である透明導電性酸化物膜付き基体が開示されている。上記山部および上記平坦部の外表面を、山部による凹凸(マクロな凹凸)よりも小さな凹凸(ミクロな凹凸)とすることにより、短波長の光を強く散乱することができ、全体として広い領域の光を有効に散乱することが可能になる。
【0006】
すなわち、大きな凹凸である山部により長波長の光を散乱し、小さな凹凸表面により短波長の光を散乱することができるため、全体として高い光散乱性を達成することができる。このような透明導電性酸化膜付き基体を薄膜太陽電池に用いた場合、光電変換効率の高い太陽電池を製造することができる。また、上記凹凸は、いずれも常圧CVD法により形成することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、金属有機化合物または有機金属錯体および必要により有機化合物を添加した透明導電性溶液の膜を基板上に形成し、上記膜上に、任意の形状を有するスタンパーを押し付けて、凹凸形状からなる複数の突出部を成型し、上記膜を熱処理することで、複数の突出部を備えた透明電極を製造する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−347490号公報
【特許文献2】特開2005−310387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のガラス基板状に形成される凹凸は、小さすぎると光の散乱効果が見込めず、大きすぎると入射光の反射成分が多くなり、光電変換層への入射光が減少する。したがって、光閉じ込め効果を最大限に生かすためには、凹凸の大きさ、形状、および透明導電膜の膜厚などを、精密に制御する必要がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、凹凸の大きさが透明導電膜の膜厚に応じて変化するため、膜厚と凹凸形状との組合せに制限があった。また、マクロな凹凸とミクロな凹凸との2層を成膜する必要があり、これらの界面での膜剥離の問題があった。このように、特許文献1に記載の方法では、膜剥離、成膜条件などの観点から、実現できる凹凸形状、膜厚などには制限があり、形状の制御性、再現性に問題があった。
【0011】
また、特許文献2では、予め凹凸パターンを形成させた膜表面に有機化合物を添加した金属有機化合物または有機金属錯体の膜をコートして、nmオーダーの凹凸をつけた構造を形成できると言及されているが、具体的な方法について何ら記載がない。また、凹凸を形成する手段としてスタンパーを用いることが記載されているが、その材質、押圧方法について何ら記載がない。したがって、特許文献2に記載の方法では、ダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜の形成は困難であった。
【0012】
すなわち、従来の方法では、所望の形状を有するダブルテクスチャ構造の透明導電膜を、制御性よく製造することは困難であった。
【0013】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜を簡便な方法で製造可能とする、透明導電膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る透明導電膜の製造方法は、表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程と、基板を準備する工程と、基板上に、導電性を有する透明な前駆体材料と揮発性材料とを含む前駆体層を形成する工程と、成形型の起伏形状を前駆体層に押圧する工程と、揮発性材料を揮発させる工程と、前駆体層から成形型を離型させる工程と、前駆体層を熱処理する工程とを備える。
【0015】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、成形型は、起伏形状を有する第一部材と、第一部材よりもヤング率が小さい第二部材とを含み、第一部材と第二部材とが積層されて形成されている。
【0016】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、第一部材は、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含む。
【0017】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、揮発させる工程において、前駆体層は、揮発性材料が揮発する下限温度をTsとし、前駆体材料が結晶化する下限温度をTcとして、数式Ts<T<Tcで表される温度Tに加熱される。
【0018】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、押圧する工程において、前駆体層の成形型と接触する接触面には、成形型の起伏形状を反映した起伏が形成される。熱処理する工程において、接触面には、起伏に重畳して、起伏よりも高低差の小さい凹凸が形成される。
【0019】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、起伏の高低差が100nm以上15μm以下であり、凹凸の高低差が10nm以上200nm以下である。
【0020】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む。
【0021】
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、前駆体材料は、UV硬化材料を含む。
上記透明導電膜の製造方法について好ましくは、押圧する工程と揮発させる工程との間に、成形型を前駆体層に再押圧する工程を備える。
【0022】
本発明に係る透明導電膜は、上記のいずれかの局面の製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透明導電膜の製造方法によると、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜を、簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態の透明導電膜の製造方法を示す流れ図である。
【図2】本実施の形態の透明導電膜の製造に用いる成形型の製造方法を示す流れ図である。
【図3】マスター型の構成を示す断面模式図である。
【図4】マスター型にゴム原料の溶液を塗布した状態を示す断面模式図である。
【図5】マスター型からゴム層が剥離された状態を示す断面模式図である。
【図6】成形型の構成を示す断面模式図である。
【図7】基板上に透明導電性前駆体層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図8】透明導電性前駆体層に成形型を押圧した状態を示す断面模式図である。
【図9】成形型を透明導電性前駆体層から離型させた状態を示す断面模式図である。
【図10】熱処理により形成された透明導電膜を示す断面模式図である。
【図11】図10中に示す領域XI付近を拡大して示す断面模式図である。
【図12】図11中に示す領域XII付近を拡大して示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0026】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0027】
図1は、本実施の形態の透明導電膜の製造方法を示す流れ図である。図1を参照して、本実施の形態の透明導電膜の製造方法について説明する。図1に示すように、まず工程(S10)において、成形型を作製する。
【0028】
図2は、本実施の形態の透明導電膜の製造に用いる成形型の製造方法を示す流れ図である。図2を参照して、成形型を作製する工程(S10)の詳細について説明する。図2に示すように、工程(S11)において、マスター型2を準備する。図3は、マスター型2の構成を示す断面模式図である。図3に示すように、マスター型2の表面21には、起伏形状24が形成されている。起伏形状24は、表面21が突起した山部22と、表面21が窪んだ谷部23とを有する。表面21には、多数の山部22と谷部23とが交互に形成されている。
【0029】
マスター型2としては、たとえば、単結晶の結晶異方性エッチングや熱化学気相吸着(熱CVD)法などにより、予め凸凹が形成された基板を用いてもよい。また、基板を準備し、その基板に、フォトリソグラフィによるエッチング法、電鋳法などにより、凸凹を形成してもよい。
【0030】
続いて工程(S12)において、マスター型2の表面21に、適切な離型剤を塗布する。離型剤を塗布することにより、後述する表面21上に形成するゴム層4の、マスター型2からの離型性が高められ、ゴム層4をマスター型2から容易に剥離できる。
【0031】
続いて工程(S13)において、マスター型2の表面21上に、ゴム原料を溶解させた溶液3を塗布する。図4は、マスター型2にゴム原料の溶液3を塗布した状態を示す断面模式図である。図4に示すように、ゴム原料の溶液3は、起伏形状24に沿ってマスター型2の表面21全体に亘るように塗布されている。起伏形状24の全ての谷部23内にゴム原料が充填されるように、ゴム原料の溶液3が塗布されている。
【0032】
続いて工程(S14)において、ゴム原料の溶液3を乾燥し固化させ、ゴム層4を形成する。ゴム原料を固化させゴム層4を得る際には、ゴム層4の形状を安定に保持させるために、加熱、光照射、加圧の工程を含めてもよい。またゴム層4は、離型性を向上させる観点から、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含むことが好ましい。
【0033】
続いて工程(S15)において、マスター型2からゴム層4を剥離する。図5は、マスター型2からゴム層4が剥離された状態を示す断面模式図である。ゴム層4の表面41には、マスター型2の表面21の凹凸状テクスチャ構造の逆パターンである起伏形状44が形成されている。つまり、マスター型2の表面21の起伏形状24において、山部22が形成されている位置に対応して、ゴム層4の表面41の起伏形状44の谷部43が形成される。また、マスター型2の表面21に谷部23が形成されている位置に対応して、ゴム層4の表面41に山部42が形成される。
【0034】
続いて工程(S16)において、ゴム層4の表面41と反対側の裏面にクッション層5を貼り合わせ、成形型1とする。図6は、成形型1の構成を示す断面模式図である。クッション層5の形成材料は、プレス時のゴム層4と基板との接触不良を改善する観点から、発泡ゴム、綿布、織布、不織布などが好ましい。このようにして、表面41に起伏形状44を有する成形型1が作製される。成形型1は、起伏形状44を有する第一部材の一例としてのゴム層4と、第二部材の一例としてのクッション層5を含み、ゴム層4とクッション層5とが積層されて形成されている。クッション層5は、ゴム層4よりもヤング率が小さく形成されている。
【0035】
図1に戻って、次に工程(S20)において、主表面を有する基板6を準備する。続いて工程(S30)において、基板6の主表面上に、前駆体層の一例としての、透明導電性前駆体層7を形成する。図7は、基板6上に透明導電性前駆体層7を形成した状態を示す断面模式図である。透明導電性前駆体層7は、透明導電性前駆体層7を形成する形成材料を基板6の主表面に塗布することにより形成される。この形成材料は、透明であって導電性を有する前駆体材料の一例としての透明導電性前駆体材料と、揮発性材料とを含む。透明導電性前駆体材料は、加熱により結晶化して透明導電膜を形成する。揮発性材料は、加熱時に揮発する。
【0036】
透明導電性前駆体層7を形成する形成材料を塗布する塗布方法は、たとえばディップ法、スピンコート法、スクリーン印刷などの、公知の方法から適宜選択することができる。膜状に塗布された形成材料の形状保持のため、必要に応じて、熱処理、熱風吹き付けなどの乾燥工程を備えてもよい。
【0037】
透明導電性前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む。透明導電性前駆体材料は、上記元素群の酸化物から一つ、または複数組み合わせて選ばれてなる導電性材料を含む。特に、優れた導電性を有するZnO、SnO2、ITO(Indium Tin Oxide)などを含むのが望ましい。透明導電性前駆体材料は、紫外線の照射を受けて硬化するUV(ultraviolet)硬化材料を含んでもよい。この場合、後の揮発性材料を揮発させる工程において、UV光を照射しながら透明導電性前駆体層7を硬化させることができるので、処理時間の短縮が可能である。
【0038】
次に工程(S40)において、透明導電性前駆体層7に対し、工程(S10)で作製した成形型1を押し当てる。図8は、透明導電性前駆体層7に成形型1を押圧した状態を示す断面模式図である。成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧するときの、成形型1から透明導電性前駆体層7へ加えられる圧力を調整することで、透明導電性前駆体層7の厚みを調整できる。
【0039】
図8に示すように、成形型1が透明導電性前駆体層7に押圧されることで、成形型1と接触する透明導電性前駆体層7の接触面71には、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74が形成される。つまり、成形型1のゴム層4の表面41の起伏形状44において、山部42が形成されている位置に対応して、接触面71の起伏74の谷部73が形成される。また、ゴム層4の表面41に谷部43が形成されている位置に対応して、接触面71に山部72が形成される。
【0040】
成形型1の押し当て方としては、成形型1を金属薄板に貼り付けたものを、基板6端部から順番に押し当てる方法や、成形型1をローラに巻きつけたものを、基板6上を転がしながら押し当てる方法などが挙げられる。
【0041】
上述したように、成形型1は、ゴム層4と、ゴム層4よりもヤング率が小さいクッション層5と、の積層体として形成されている。剛性の高い透明導電性前駆体層7に対し、剛性の高いゴム層4を押圧する場合、印圧ムラが生じ、起伏74のテクスチャ形状または透明導電膜の膜厚に、面内分布が生じてしまう。特に大面積のプレスを行なう場合、この影響が顕著になる。そこで、ゴム層4の背面側に、印圧方向の硬さの指標であるヤング率がゴム層4の材質よりも小さい材質により形成されたクッション層5を設けることにより、成形型1(ゴム層4)の片当たりを防ぎ、上記印圧ムラを抑制することができる。
【0042】
ここで、起伏74を形成した後に、一旦成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させ、その後、透明導電性前駆体層7に対する成形型1の相対位置をずらして、透明導電性前駆体層7に成形型1を再押圧してもよい。成形型1を押圧する位置をずらして再度押圧することにより、成形型1の起伏形状44に対応する起伏74が重畳され、再押圧する前と後とで異なる形状の起伏が得られる。このように位置を変えながら複数回プレスすることで、単一の成形型1を用いて、様々な形状の起伏を形成することができる。したがって、成形型1の製造コストを増加させることなく、所望の形状を有する起伏を得ることができる。すなわち、様々な仕様の太陽電池セルに対応する、所望の光散乱効果を有する透明導電膜9を得る事ができる。
【0043】
次に工程(S50)において、成形型1を透明導電性前駆体層7に押し当てた状態で一定時間保持し、透明導電性前駆体層7に含まれる揮発性材料の一部または全部を揮発させる。
【0044】
このとき、透明導電性前駆体層7を加熱してもよい。すなわち、透明導電性前駆体層7に含まれる揮発性材料の一部が揮発し始める下限温度をTs、透明導電性前駆体層7に含まれる透明導電性前駆体材料が結晶化し始める下限温度をTcとしたとき、Ts<T<Tcで表される温度Tで、透明導電性前駆体層7を加熱する。このようにすれば、揮発性材料の揮発を加速することができるので、処理時間の短縮が可能である。
【0045】
Ts以下では、成形型1を離型させた際に、透明導電性前駆体層7の硬度が小さすぎて、成形型1の起伏形状44により押圧され変形した部分の形状が保持されない。Tc以上では、成形型1の透明導電性前駆体層7へのプレス中に、透明導電性前駆体材料が結晶化を開始し、成形型1の起伏形状44を反映したシングルテクスチャとなり、ダブルテクスチャは得られない。
【0046】
次に工程(S60)において、成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させる。図9は、成形型1を透明導電性前駆体層7から離型させた状態を示す断面模式図である。揮発性材料の少なくとも一部を揮発させ透明導電性前駆体層7を乾燥させた後、成形型1を離型することで、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74が接触面71に形成され、凹凸(テクスチャ)構造を付与された透明導電性前駆体層7が得られる。
【0047】
次に工程(S70)において、透明導電性前駆体層7を熱処理する。熱処理温度は、透明導電性前駆体材料が結晶化する下限温度Tc以上とする。この熱処理により、残存する揮発性材料が揮発し、また透明導電性前駆体材料が結晶化して変質し、優れた導電性を発現する透明導電膜9が得られる。図10は、熱処理により形成された透明導電膜9を示す断面模式図である。図11は、図10中に示す領域XI付近を拡大して示す断面模式図である。図12は、図11中に示す領域XII付近を拡大して示す断面模式図である。
【0048】
図10〜図12に示すように、熱処理の結果、透明導電膜9の表面91には、成形型1の押圧により形成されたテクスチャ(起伏74)に加え、起伏74の表面に、起伏74より微細な形状のテクスチャである凹凸94が形成される。このようにして、テクスチャ(起伏74)上に微細テクスチャ(凹凸94)が重畳された、いわゆるダブルテクスチャが形成される。
【0049】
透明導電性前駆体材料を熱処理することにより、微小な結晶粒が成長し、結果として微細テクスチャ(凹凸94)が形成される。成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧するプレスを施すことによりテクスチャ(起伏74)を形成した後、この熱処理を行なうことで、起伏74の斜面から核生成および成長が起こり、起伏74に凹凸94が重畳されたダブルテクスチャ形状を得ることができる。
【0050】
成形型1を透明導電性前駆体層7に押圧したまま熱処理すると、起伏74の斜面での結晶粒の成長は起こらず、成形型1の起伏形状44を反映した起伏74のみしか得られない。上記のように、起伏74の斜面に成形型1が押し当てられておらずフリーな状態で熱処理することにより、初めて、起伏74上に凹凸94が形成される。
【0051】
図11に示す起伏74の山部72と谷部73との高低差H1は、図12に示す凹凸94の凸部92と凹部93との高低差H2よりも、大きくなっている。透明導電膜9の表面91には、成形型1の押圧により形成された起伏74に重畳して、起伏74よりも高低差の小さい凹凸94が形成されている。たとえば、起伏74の高低差H1を100nm以上15μm以下とし、凹凸94の高低差H2を10nm以上200nm以下とするように、起伏74および凹凸94を形成することができる。
【0052】
大テクスチャである起伏74により、特に長波長の光の散乱が向上する。起伏74は、長波長の散乱アップをもたらす。起伏74の高低差H1が小さすぎると長波長の光の散乱向上効果が得られず、また高低差H1が大きすぎると入射光の反射成分の増加、膜厚増加に伴う透明導電膜での吸収損失増加や、透明導電膜の上層のカバレッジ不足などをもたらす。一方、小テクスチャである凹凸94により、特に短波長の光の散乱が向上する。凹凸94は、短波長の散乱アップをもたらす。凹凸94の高低差H2が小さすぎると短波長の光の散乱向上効果が得られず、また高低差H2が大きすぎると起伏74との差が縮小するためやはり短波長の散乱向上効果が得られないなどの問題がある。そこで、高低差H1,H2を上記の範囲に収めることによって、広範囲の波長において、光散乱を向上させることができる。
【0053】
以上説明した本実施の形態の製造方法によって、起伏74に凹凸94が重畳された、ダブルテキスチャを有する透明導電膜9を作製することができる。本実施の形態の方法により製造された透明導電膜9は、長波長から短波長まで幅広い波長域で、高い光散乱効果を発揮することができ、その結果、広い波長域で透明導電膜9の分光感度がアップ(すなわち光電流アップ)する。
【0054】
また、本実施の形態の製造方法において、成形型1を基板6に押圧するプレス条件、成形型1をを作製する際のマスター型2の仕様(プレスマスター仕様)、および熱処理条件などを適切に調整することにより、CVD法などの他の透明導電膜の製造方法によってダブルテクスチャを有する透明導電膜を形成する場合に比べて、テクスチャ形状の制御性を拡大できる。したがって、種々のテキスチャ形状を有する透明導電膜9を実現することが可能となる。
【0055】
このようにして得られたテクスチャ付き透明導電膜9の上に、pinからなる発電層を形成し、その上に、取り出し電極を形成することで、太陽電池セルが完成する。このようにして得られた太陽電池は、透明導電膜9のダブルテクスチャにより、光閉じ込め効果が向上するため、高い変換効率が実現できる。
【0056】
なお、これまでの説明においては、基板6上に透明導電膜9を形成する方法について説明したが、これに限定されず、表面形状の制御性が必要とされる透明導電膜であれば、本発明の透明導電膜9の製造方法を適用できる。例えば、発電層と裏面電極との間に形成する裏面導電層や、複数の発電層を直鉄接合させる際に、異なる発電層間に形成する中間層などの表面形状にも、本発明の透明導電膜9の製造方法の適用が可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の透明導電膜の製造方法の実施例について詳細に説明する。事前に、成形型を作製した。成形型は、マスターとなる型にシリコーンゴムを塗布、乾燥し固化してゴム層を形成することにより作製した。
【0058】
ここで、マスター型として、Siウエハに対して、KOH等のアルカリ溶液を用いて、エッチング処理を施し、数μm〜十数μmの高低差を有する凹凸状のテクスチャ構造を形成したものを用いた。また、マスター型からの離型性をあげるため、フッ素系離型剤(たとえば、ダイキン化成製オプツールHD−1100など)をマスター表面にコーティングした。
【0059】
その後、マスター型からゴム層を剥離し、マスター型の凹凸状テクスチャ構造の逆パターンを形成させたゴム層を得た。得られたゴム層のパターンと逆側に、クッション層を貼り合せ成形型とした。クッション層としては、厚み1mmのポーラス状ウレタンを用いた。
【0060】
次に、ガラスからなる基板上に、スピンコート法により、透明導電性前駆体層を形成した。スピンコートの回転数は1000rpmとした。透明導電性前駆体層の形成材料は、イソプロピルアルコール溶媒に対し、酢酸亜鉛を0.3mol/L、モノエタノールアミンを0.3mol/L、アセチルメチルカルビノールを0.15mol/Lの濃度で溶解させた溶液とした。また、抵抗を調節するためのドーパントとして、硝酸アルミニウムを対Zn濃度で1%添加した。
【0061】
その後、透明導電性前駆体材料を塗布した基板に対し、作製した成形型を押し当てた。ここで、成形型の押し当て方としては、成形版をローラに巻きつけたものを、基板上を転がしながら押し当てる方法とした。成形型を基板に押圧する圧力は、200gf/cm2とした。
【0062】
基板を押し当てた状態で、透明導電性前駆体層を300℃に加熱し、300℃で60分間保持したのち成形型を離型して、マスター型の凸凹を反映したテクスチャ構造を有する透明導電性前駆体層を得た。
【0063】
そして、最後に、透明導電性前駆体層をN2雰囲気中で600℃に加熱し、600℃で30分間保持する熱処理を行なった。この結果、透明導電性前駆体層に含まれる透明導電性前駆体材料は、結晶化して透明導電膜へ変質した。同時に、成形型によって先に形成されたテクスチャ構造上に重畳される形で、透明導電膜表面に10〜200nm程度の高低差を有する凸凹が形成された。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に記載の透明導電膜の製造方法は、高変換効率を有する太陽電池セルを形成するための、所望の形状のダブルテクスチャ構造を有する透明導電膜の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 成形型、2 マスター型、3 溶液、4 ゴム層、5 クッション層、6 基板、7 透明導電性前駆体層、9 透明導電膜、21,41,91 表面、22,42,72 山部、23,43,73 谷部、24,44 起伏形状、71 接触面、74 起伏、92 凸部、93 凹部、94 凹凸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程と、
基板を準備する工程と、
前記基板上に、導電性を有する透明な前駆体材料と、揮発性材料と、を含む前駆体層を形成する工程と、
前記成形型の前記起伏形状を前記前駆体層に押圧する工程と、
前記揮発性材料を揮発させる工程と、
前記前駆体層から前記成形型を離型させる工程と、
前記前駆体層を熱処理する工程とを備える、透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記成形型は、前記起伏形状を有する第一部材と、前記第一部材よりもヤング率が小さい第二部材とを含み、前記第一部材と前記第二部材とが積層されて形成されている、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記第一部材は、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含む、請求項2に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記揮発させる工程において、前記前駆体層は、前記揮発性材料が揮発する下限温度をTsとし、前記前駆体材料が結晶化する下限温度をTcとして、下記の数式
Ts<T<Tc
で表される温度Tに加熱される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記押圧する工程において、前記前駆体層の前記成形型と接触する接触面には、前記成形型の前記起伏形状を反映した起伏が形成され、
前記熱処理する工程において、前記接触面には、前記起伏に重畳して、前記起伏よりも高低差の小さい凹凸が形成される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記起伏の高低差が100nm以上15μm以下であり、前記凹凸の高低差が10nm以上200nm以下である、請求項5に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
前記前駆体材料は、UV硬化材料を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記押圧する工程と前記揮発させる工程との間に、前記成形型を前記前駆体層に再押圧する工程を備える、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法により製造される、透明導電膜。
【請求項1】
表面に起伏形状を有する成形型を作製する工程と、
基板を準備する工程と、
前記基板上に、導電性を有する透明な前駆体材料と、揮発性材料と、を含む前駆体層を形成する工程と、
前記成形型の前記起伏形状を前記前駆体層に押圧する工程と、
前記揮発性材料を揮発させる工程と、
前記前駆体層から前記成形型を離型させる工程と、
前記前駆体層を熱処理する工程とを備える、透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記成形型は、前記起伏形状を有する第一部材と、前記第一部材よりもヤング率が小さい第二部材とを含み、前記第一部材と前記第二部材とが積層されて形成されている、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記第一部材は、シリコーン樹脂材料またはフッ素化合物樹脂材料を含む、請求項2に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記揮発させる工程において、前記前駆体層は、前記揮発性材料が揮発する下限温度をTsとし、前記前駆体材料が結晶化する下限温度をTcとして、下記の数式
Ts<T<Tc
で表される温度Tに加熱される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記押圧する工程において、前記前駆体層の前記成形型と接触する接触面には、前記成形型の前記起伏形状を反映した起伏が形成され、
前記熱処理する工程において、前記接触面には、前記起伏に重畳して、前記起伏よりも高低差の小さい凹凸が形成される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記起伏の高低差が100nm以上15μm以下であり、前記凹凸の高低差が10nm以上200nm以下である、請求項5に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体材料は、Zn、Sn、Pb、Sb、Cd、Mg、In、Ga、Te、Ag、Cu、Al、Srからなる群より選択される元素の酸化物を少なくとも一つ含む、請求項1から請求項6のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
前記前駆体材料は、UV硬化材料を含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記押圧する工程と前記揮発させる工程との間に、前記成形型を前記前駆体層に再押圧する工程を備える、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法により製造される、透明導電膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−3399(P2011−3399A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145514(P2009−145514)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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