説明

透明性基材用装飾材、装飾方法及び装飾品

【課題】
ユニークな意匠を発現する手法としてガラスやプラスチックなど透明性基材に適度な光輝感を与えつつしかも基材の特徴である素材の透明性を活かした意匠に装飾するのに有用な装飾材、装飾法及び装飾品を提案する。
【解決手段】
透明性基材用の装飾材であって、該装飾材が、塗料組成物を粒状化してなる塗料粒子成分が分散媒体中に分散されてなるものであり、該塗料粒子成分がその成分の一部として光輝性顔料及び樹脂を含む光輝性塗料組成物を粒状化してなる光輝性塗料粒子成分を含むものであって、該光輝性塗料粒子成分に含まれる光輝性顔料が、大きさが3〜400μmの範囲内であり、該光輝性塗料粒子成分中における光輝性顔料の含有量が、該光輝性塗料粒子成分に含まれる樹脂100質量部を基準として1〜50質量部の範囲内にあることを特徴とする透明性基材用装飾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやプラスチックなどの透明性基材に適度な光輝感を与えつつしかも基材の特徴である素材の透明性を活かしたユニークな意匠に装飾するのに有用な装飾材、装飾法及び装飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
多彩模様塗料とは1回の塗装で、2色以上の多彩な模様が得られる塗料であって、例えば建築物等の塗装に使用されている。その塗料の態様としては2色以上の塗料粒子成分が分散媒体中に分散されてなるものである。
【0003】
一般に多彩模様塗料を建築物に適用した場合、市場では建築物内壁面に塗装されていることが多い。従って塗料設計者は通常、多彩模様塗料によって形成される模様によって建築物内壁面の意匠性をより効果的に高めるべく、多彩模様塗料中に含まれる塗料粒子の隠ぺい性が高くなるように設計する。
【0004】
しかしながら建築物内壁面に適用するように設計された多彩模様塗料をガラスなどの透明性基材に塗装した場合、塗料粒子の隠ぺい性が高いために、基材の透明性などの素材感を活かす意匠を発現させることは難しかった。
【0005】
ところで多彩模様塗料の塗料粒子中に、メタリック顔料や真珠光沢調顔料などの光輝材を含ませた光輝性を有する塗料粒子を使用することで、多彩模様塗膜にキラキラとした光輝感を発現させることが知られている。
【0006】
例えば特許文献1には、着色塗料粒子の少なくとも1つがメタリック顔料もしくは真珠光沢顔料によって着色してなる着色塗料粒子であることを特徴とする多彩模様塗料が開示されている。この多彩模様塗料により形成される塗膜によれば、それぞれの着色塗料粒子の重なり合いによって形成される塗膜の全面もしくは部分的に光輝感のある着色塗料粒子の重なりあいが生じるので、光輝感に加えて立体感に富んだ塗膜を形成することができる。
【0007】
また、特許文献2には、水性多彩模様塗料に適用可能な粒状ゲルと塗膜形成成分を含んでなる水性塗料組成物が開示されており、該粒状ゲルには光輝材としてメタリック顔料及び/又は真珠光沢調顔料を含有することができる記載がある。かかるメタリック顔料及び/又は真珠光沢調顔料を粒状ゲルに含ませた水性多彩模様塗料によれば多彩模様塗膜に高級感を付与することができるものである。
【0008】
このように、特許文献1及び2に記載されているような光輝性を有する塗料粒子を含む水性多彩模様塗料を建築物などの壁面に塗装することによって、光輝感、立体感、高級感を発現させることは可能であるものの、このような意匠を視認しやすくするには多彩模様塗膜が設けられた壁面に適度な照明をあてたり、照明の方向を変化させたりすることが必要である。
【0009】
ところで、多彩模様塗料によってキラキラとした光輝感を有する意匠を発現させるための1手法として、光輝性を有する塗料粒子を含む水性多彩模様塗料を光を透過することが可能な透明性基材に塗装した場合、基材の特徴である素材の透明感を損なってしまうことがあり、基材の透明性、素材感と塗膜による光輝感を共に活かす意匠を発現させることが難しいという現状がある。一方で例えば特許文献3のように、透明性基材の上に光輝性クリヤー塗膜層を形成後、カラーベース塗膜層を形成する光輝性塗膜形成方法などが知られているが、得られる塗装物は光の照射によって変化があるものの平坦で単一的な外観であるという点は否めない。
【0010】
【特許文献1】特開2000−7954号公報
【特許文献2】特開2007−238920号公報
【特許文献3】特開2001−058154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ユニークな意匠を発現する手法としてガラスやプラスチックなど透明性基材に適度な光輝感を与えつつしかも基材の特徴である素材の透明性を活かした意匠に装飾するのに有用な装飾材、装飾法及び装飾品を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記した課題を解決すべく鋭意検討した結果、透明性基材用の装飾材中に、大きさが特定範囲の光輝性顔料を特定量含む光輝性塗料粒子を含ませることによって、適度な光輝感と基材の透明感を共に活かす独特な意匠を発現することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は
1. 透明性基材用の装飾材であって、該装飾材が、塗料組成物を粒状化してなる塗料粒子成分が分散媒体中に分散されてなるものであり、該塗料粒子成分がその成分の一部として光輝性顔料及び樹脂を含む光輝性塗料組成物を粒状化してなる光輝性塗料粒子成分を含むものであって、該光輝性塗料粒子成分に含まれる光輝性顔料が、大きさが3〜400μmの範囲内であり、該光輝性塗料粒子成分中における光輝性顔料の含有量が、該光輝性塗料粒子成分に含まれる樹脂100質量部を基準として1〜50質量部の範囲内にあることを特徴とする透明性基材用装飾材、
2. 光輝性塗料粒子成分が、大きさが20〜20,000μmの範囲内である1項に記載の透明性基材用装飾材、
3. 塗料粒子成分が、その成分の一部として着色材及び樹脂を含む着色塗料組成物を粒状化してなる着色塗料粒子成分をさらに含む1項または2項に記載の透明性基材用装飾材、
4. 光輝性塗料粒子成分と着色塗料粒子成分の含有割合が光輝性塗料粒子成分/着色塗料粒子成分固形分質量比で99/1〜1/99の範囲内にある3項に記載の透明性基材用装飾材、
5. さらに塗膜形成成分を含む1項ないし4項のいずれか1項に記載の透明性基材用装飾材、
6. 塗料粒子成分及び塗膜形成成分の配合割合が、塗料粒子成分/塗膜形成成分固形分質量比で、1/99〜70/30の範囲内にある1項ないし5項のいずれか1項に記載の透明性基材用装飾材、
7. 透明性基材に、下塗り材層を介してまたは介さずに1項ないし6項のいずれか1項の記載の装飾材による装飾層を設けることを特徴とする透明性基材の装飾方法、
8. 下塗り材層を設けるための下塗り材がヒドラジン誘導体を含む組成物である7項に記載の装飾方法、
9. 7項または8項に記載の装飾方法により得られる装飾品、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の装飾材によれば、ガラスやプラスチックなどの透明性基材の特徴である透明性や素材感を活かしながら、キラキラとした光輝感を有する意匠を発現することができる。また、本発明の装飾材は、分散媒体中に光輝性塗料粒子成分が分散されてなる形態であるので、得られる装飾品は平坦で単一的なものではなく、光輝性塗料粒子成分の散らばり具合によって透過光の疎密を有しており、よりユニークで印象的な意匠を発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の透明性基材用装飾材は、塗料粒子成分が分散媒体中に分散されてなるものである。分散媒体としては水性媒体であっても有機溶剤系の媒体であってもよいが、環境に対する負荷を低減させる点から水性媒体であることが望ましい。かかる水性媒体としては、水または水を主体としてこれに水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。
【0015】
上記分散媒体に分散される塗料粒子成分は、色材及び樹脂を含む塗料組成物を粒状化してなるものであり、従来公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、色材及び樹脂を含む塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に内包してなるものを挙げることができる。
【0016】
本発明においては上記塗料粒子成分がその成分の一部として光輝性顔料及び樹脂を含む光輝性塗料組成物を粒状化してなる光輝性塗料粒子成分を含むものである。
【0017】
かかる光輝性顔料としては、塗膜にキラキラとした光輝感又は光干渉性を付与する顔料であって、具体的には例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;マイカ、金属酸化物コーティング雲母粉、金属酸化鉄コーティングアルミナフレーク、金属酸化物コーティングシリカフレーク、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明においては上記光輝性顔料が、大きさが3〜400μmの範囲内であることを特徴とするものであり、5〜300μm、さらに好ましくは8〜250μmの範囲内であるとさらによい。光輝性顔料の大きさが3〜400μmより小さい側にシフトすると、本発明の装飾材を透明性基材に適用して得られる装飾品が基材特有の透明感が損なわれるとともにキラキラとした光輝感を十分に発揮できない上、白っぽい仕上がりとなってしまう傾向があり好ましくない。一方、光輝性顔料の大きさが3〜400μmより大きい側にシフトすると、本発明の装飾材を透明性基材に適用して得られる装飾品の透明感は適度に有るものの、キラキラとした光輝感に欠けてしまう傾向があり、好ましくない。
【0019】
本明細書において、光輝性顔料の大きさは、光輝性顔料をふるいにかけた時に通過することができるふるいの最小の呼び寸法(孔眼寸法;網の目の1辺の長さ)を以って近似するものとする。
【0020】
また、本発明において上記光輝性塗料粒子成分は、光輝性顔料を該光輝性塗料粒子成分に含まれる樹脂100質量部を基準として1〜50質量部含むことを特徴とするものであり、特に5〜20質量部含むことが適している。樹脂100質量部に対する光輝性顔料の含有量が1質量部未満では、本発明の装飾材を透明性基材に適用して得られる装飾品の透明性は高いものの、キラキラとした光輝感に欠けてしまい、一方50質量部を越えると、本発明の装飾材を透明性基材に適用して得られる装飾品の透明性が低くなり基材特有の素材感が損なわれるので好ましくない。
【0021】
上記光輝性塗料粒子成分に含まれる樹脂としては、従来公知のものを制限なく使用することができるが、特に水に溶解又は分散可能な水性樹脂が適している。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0022】
上記水性樹脂は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂は、光輝性塗料粒子成分の製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
水性樹脂は、光輝性塗料粒子成分の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であること好ましい。
【0024】
かかるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0026】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の界面活性剤を使用することができ、適用可能な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0027】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0030】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0031】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0032】
上記光輝性塗料粒子成分を製造するための光輝性塗料組成物は、さらに、必要に応じて、後述される着色材、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0033】
本発明において上記光輝性塗料組成物の粒状化手法としては特に制限されるものではないが、例えば、光輝性顔料、樹脂及び水溶性多糖類を含む光輝性塗料組成物を、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることによって製造することができ、それによって、該光輝性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に内包させることができる。
【0034】
かかる水溶性多糖類は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約10g/L(25℃)以上の水溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
水溶性多糖類は、光輝性塗料粒子成分の水中での安定性、光輝性塗料粒子成分を作製する際の取扱性などの点から、水性樹脂固形分を基準として、通常0.1〜7質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0036】
上記光輝性塗料組成物を粒状ゲル化せしめる際に用いられる金属イオンの供給源となる金属化合物としては、25℃の水100gに0.005mg以上、特に0.08mg以上溶解するものであることが望ましく、例えば、カリウム、ナトリウム等の一価金属や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム等の多価金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、塩化物、硫化物等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明においては光輝性塗料粒子成分の貯蔵安定性の点から上記金属化合物が多価金属であることが好ましく、また、形成塗膜の耐水性などの点から、上記金属化合物が水酸化物、酸化物、炭酸塩であることができ、また、カルシウム塩であると特に望ましい。
【0038】
また、上記金属化合物はその成分の一部として有機酸金属塩を含むことが望ましい。これによって貯蔵安定性に優れた光輝性塗料粒子成分を容易に形成でき、また、本発明の装飾材から形成される装飾層の耐水性などの物性を良好とすることができ、しかも光輝性塗料粒子成分の製造において生成する廃液や光輝性塗料粒子成分懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることが可能である。
【0039】
かかる有機酸金属塩における金属種としては上述した通りであり、具体的には多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0040】
一方上記有機酸金属塩における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。
【0041】
本発明においては、有機酸金属塩として上記した中でも酢酸カルシウムが光輝性塗料粒子成分の製造安定性の点から適している。
【0042】
また、本発明において金属化合物としては、金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物と有機酸金属塩を併用すると光輝性塗料粒子成分の貯蔵安定性、製造安定性に加えて本発明の装飾材により形成される装飾層の凹凸感を少なくさせるともに、鮮映性を良好なものとすることができ、適している。
【0043】
本発明において光輝性塗料組成物の粒状化するにおいては、上記金属化合物を水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。金属化合物を含有する水性媒体における金属化合物の含有量は、通常0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内にあることが望ましい。
【0044】
本発明において上記光輝性塗料組成物は、上記金属化合物由来の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより光輝性塗料粒子成分を粒状に形成せしめることができるものであり、この接触は、例えば、注射器の先端から光輝性塗料組成物を水性媒体中に滴下する方法;光輝性塗料組成物を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から光輝性塗料組成物を霧化させ、水性媒体中に滴下する方法;光輝性塗料組成物を水性媒体中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行なうことができる。
【0045】
上記の如くして形成される光輝性塗料粒子成分の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、適宜変えることができ、例えば、光輝性塗料組成物の組成、水性媒体中の金属イオンの濃度、光輝性塗料組成物の水性媒体への滴下の仕方等により調整することができるが、一般に20〜20,000μm、好ましくは30〜18,000μm、さらに好ましくは50〜15,000μmの範囲内を有するものであることができる。
【0046】
本明細書において、光輝性塗料粒子成分の大きさは、光輝性塗料粒子成分をふるいにかけた時の通過することができるふるいの最小の呼び寸法(孔眼寸法;網の目の1辺の長さ)を以って近似するものとする。呼び寸法(孔眼寸法)が2,000μmのふるいを通過することができない光輝性塗料粒子成分の大きさは、光輝性塗料粒子成分の中心を通る線分を定規で測定したときの最大の寸法とする。
【0047】
また、本発明の装飾材における塗料粒子成分としてはその成分の一部として、上記光輝性塗料粒子成分に加えて着色塗料粒子成分をさらに含んでいてもよい。これによって本発明の装飾材により形成される装飾材層をいわゆる多彩模様とすることができ、光輝性塗料粒子成分や透明性基材の素材感と相伴って独特な意匠を発揮させることができる。
【0048】
上記着色塗料粒子成分としては、着色剤及び樹脂を含む着色塗料組成物を粒状化してなるものであり、材料、製法、大きさ等特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
【0049】
上記着色剤としては、上記光輝性顔料以外の色材であって、着色顔料、染料及び蛍光材等を例示することができる。着色顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;などを挙げることができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0050】
染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
蛍光材としては蛍光性または蓄光性の顔料および染料を挙げることができ、例えば、ジフェニルエチレン系、オキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、トリアゾール系、ピラゾール系、フラン系、チオフェン系、ペリジカルボン酸アミド系、クマリン系の有機系化合物;硫化亜鉛、ストロンチウムアルミネート、カルシウムアルミネートなどの金属化合物に、銅、銀、マンガン、ユーロピウム等の金属を添加させた無機系化合物等を挙げることができる。
【0052】
これら着色剤は、目的とする色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
また、上記着色塗料粒子成分においては、着色剤と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0054】
上記着色塗料組成物に含まれる樹脂としては、従来公知のものを制限なく使用することができるが、水に溶解又は分散可能な水性樹脂が好適に使用される。その樹脂種には特に限定はなく、上記光輝性塗料粒子成分における水性樹脂の説明で列記したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0055】
上記着色塗料粒子成分において、着色剤の配合量は、着色塗料粒子成分による着色性、本発明の装飾材により得られる装飾品の素材感などの観点から、水性樹脂100質量部を基準にして、通常0.01〜500、好ましくは0.05〜400質量部の範囲内にあることが好適である。
【0056】
上記着色塗料粒子成分を製造するための着色塗料組成物は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0057】
上記着色塗料組成物の粒状化は、特に制限されるものではなく多彩模様塗料の分野で通常使用される手法を使用できるが、例えば上記光輝性塗料組成物の粒状化と同様の手法を選択することができる。また、着色塗料粒子成分の大きさとしては、一般に20〜20,000μm、好ましくは30〜18,000μm、さらに好ましくは50〜15,000μmの範囲内にあることが本発明の装飾材により得られる装飾品の意匠性、基材の素材感の点から適している。
【0058】
本発明の装飾材が着色塗料粒子成分を含む場合において、上記光輝性塗料粒子成分と着色塗料粒子成分との含有割合としては光輝性塗料粒子成分/着色塗料粒子成分固形分質量比で1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5の範囲内にあることが本発明の装飾材により得られる装飾品の意匠性、素材感の点から適している。
【0059】
本発明において上記装飾材は、塗装作業性を向上させ、形成される装飾層の耐水性などの物性を確保し、また光輝性塗料粒子成分による模様が散らばり感があるように見えるために光輝性塗料粒子成分に加えて塗膜形成成分を含有することが望ましい。塗膜形成成分は、それ自体成膜性を有するものであり、非架橋型及び架橋型のいずれであってもよい。
【0060】
本発明において、塗膜形成成分は、光輝性塗料粒子成分との親和性や装飾材としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0061】
上記水性樹脂としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを使用することができ、例えば、光輝性塗料粒子成分における水性樹脂として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0062】
本発明の装飾材において光輝性塗料粒子成分及び着色塗料粒子成分等の塗料粒子成分と塗膜形成成分の好ましい組み合わせの一例として、塗料粒子成分及び塗膜形成成分が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、塗料粒子成分及び/又は塗膜形成成分が、ヒドラジン誘導体を含有すると、得られる塗膜の耐水性、耐候性、貯蔵安定性などを両立させることができ、望ましい。
【0063】
塗料粒子成分又は塗膜形成成分に含まれ得るカルボニル基と反応するためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
本発明において、上記塗料粒子成分及び塗膜形成成分の配合割合としては一般に、塗料粒子成分/塗膜形成成分固形分質量比で、1/99〜70/30、好ましくは1/99〜50/50の範囲内にあると本発明の装飾材により得られる装飾材層の耐水性などの物性が良好であり、塗料粒子成分による模様が重なりすぎることがなく、透明性基材特有の素材感を損なうことなく、適度に装飾することによって印象的な意匠を発現することができ、好適である。
【0065】
上記本発明の装飾材は、必要に応じて塗料用添加剤を含むことができる。
【0066】
該塗料用添加剤としては、中和剤、粘性調整剤、バルーン粒子、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0067】
上記の通り得られる本発明の装飾材による装飾材層を設けるための透明性基材としては、透明性を有するものであればあればよく、或いは透明性を有する範囲で着色されたものであってもよい。このような透明性基材の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなるプラスチック板やプラスチックシート、あるいはガラス板等からなり、目的とする装飾品としての用途に沿えば、剛性や大きさの程度、形状は特に限定されない。
【0068】
上記装飾材による透明性基材の装飾は、それ自体既知の手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの器具を用いて塗装することで行うことができる。また、上記装飾材を公知手法にてシート状にし、該シートを基材に貼り付けてもよい。
【0069】
形成された装飾層の乾燥は、使用した装飾材の組成などに応じて、例えば加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0070】
装飾材層の厚さは、使用する装飾材の組成や基材面の種類などに応じて変えることができるが、乾燥膜厚で30〜2000μm、特に50〜1000μmの範囲内にあることが、意匠性と基材の素材感のバランスの点から適している。
【0071】
また、本発明の装飾方法においては、透明性基材を上記装飾材によって装飾層を設ける前に下塗り材による下塗り材層を設けてもよい。
【0072】
ここで用いられる下塗り材としては、膜を設けることによって基材の透明感や本発明の装飾材を基材に適用して得られる装飾品の意匠性を大きく損なうものでなければ、従来公知のものを制限なく使用することができる。特に下塗り材がヒドラジン誘導体を含む組成物であると、特に本発明の装飾材がカルボニル基を含む場合において装飾層と下塗り材層との付着性を向上させることができ、適している。
【0073】
上記下塗り材層は上記下塗り材を例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの器具を用いて塗装をすることで行うことができる。また、上記下塗り材を公知手法にてシート状にし、該シートを基材に貼り付けることも可能である。
【0074】
形成される下塗り材層の乾燥は、用いた下塗り材の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0075】
上記装飾方法により得られる装飾品としては、特に制限されるものではないが具体的には、窓、建築物天井、建築物壁、パーテーション、エレベーターの天井や壁、エスカレーターや階段の手摺下の透明基材部、ショーケースの一部、家具、調度品、家電品、容器、自動車・二輪車等部品等を挙げることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0077】
エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記の組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は170nm、pHは8.3であった。
(注1) 「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0078】
光輝性顔料ペーストの製造
製造例2
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ MM−100R」(注5) 200部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤、
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤、
(注5)「パールグレイズ MM−100R」:商品名、日本光研工業製、天然マイカ系パール顔料、大きさ1〜15μm。
【0079】
製造例3
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b2)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ ME−100R」(注6) 200部
(注6)「パールグレイズ ME−100R」:商品名、日本光研工業製、天然マイカ系パール顔料、大きさ10〜60μm。
【0080】
製造例4
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b3)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ MS−100R」(注7) 200部
(注7)「パールグレイズ MS−100R」:商品名、日本光研工業製、天然マイカ系パール顔料、大きさ20〜100μm。
【0081】
製造例5
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b4)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ ML−100R」(注8) 200部
(注8)「パールグレイズ ML−100R」:商品名、日本光研工業製、天然マイカ系パール顔料、大きさ20〜200μm。
【0082】
製造例6
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b5)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ MXL−100R」(注9) 200部
(注9)「パールグレイズ MXL−100R」:商品名、日本光研工業製、天然マイカ系パール顔料、大きさ45〜500μm。
【0083】
製造例7
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、光輝性顔料ペースト(b6)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「パールグレイズ ME−100R」(注6) 100部
フタロシアニンブルー 90部。
【0084】
着色顔料ペーストの製造
製造例8
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、緑顔料ペースト(b7)を得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
フタロシアニングリーン 90部。
【0085】
着色顔料ペーストの製造
製造例9
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、青顔料ペースト(b8)を得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
フタロシアニンブルー 90部。
【0086】
塗料粒子用の水性塗料組成物の製造
製造例10
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、塗料粒子用水性塗料組成物(A−1)を得た。
55%エマルション(a1) 250部
光輝性顔料ペースト(b1) 60部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 4部
「TEXANOL」(注10) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注11) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部
(注10)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注11)「アデカノールUH−438」:商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタン変性物、粘性調整剤。
【0087】
製造例11〜19
上記製造例10において、配合組成を下記表1に示す配合組成に変える以外は、製造例10と同様にして塗料粒子用水性塗料組成物(A−2)〜(A−10)を製造した。
【0088】
【表1】

【0089】
塗料粒子の製造
製造例20
4リットルステンレス容器に、水酸化カルシウム、酢酸カルシウムをそれぞれ0.10%、0.25%になるように調整した水溶液を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数2,500rpmで攪拌しながら、上記製造例10で得られた水性塗料組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、100メッシュの金網を用いて濾別し、塗料粒子(B−1)を得た。得られた塗料粒子は、固形分が20%であり、大きさは100〜10,000μmであった。
【0090】
製造例21〜29
上記製造例20において、配合組成を下記表2とする以外は製造例20と同様にして塗料粒子(B−2)〜(B−10)を製造した。
【0091】
【表2】

【0092】
塗膜形成成分用水性クリヤー塗料用エマルションの製造
製造例30
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水568部及び「ニューコール707SF」(注1)23部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に、下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと残りの開始剤水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 44部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、エマルション(a2)を得た。該エマルションは固形分が48%であり、平均粒子径は90nmであった。
【0093】
塗膜形成成分用水性クリヤー塗料の製造
製造例31
2リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(C−1)を得た。
48%エマルション(a2) 860部
「TEXANOL」(注10) 50部
水 279部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注11) 6部
下塗り用水性クリヤー塗料の製造
製造例32
2リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(D−1)を得た。
「ポリデュレックス G624」(注12) 860部
「TEXANOL」(注10) 50部
水 279部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注11) 6部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 25部
(注12)「ポリデュレックス G624」:商品名、旭化成ケミカルズ製,シリコーン変性アクリルエマルション,不揮発成分46%
装飾材の製造及び試験塗板の作成
実施例1〜5及び比較例1〜4
500ミリリットルのステンレス容器に、下記表3に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、装飾材(E−1)〜(E−9)を製造した。次いで、フロートガラス板(300×300×2mm)上に、下塗り用水性クリヤー塗料(D−1)を乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、気温23℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とした。この上に各装飾材を乾燥膜厚が150μmになるようにスプレーで塗装し、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥させて、各試験塗板を得た。
【0094】
【表3】

【0095】
評価試験
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各試験塗板を下記基準にて評価試験に供した。結果を表3に併せて示す。
(*1)意匠性
各試験塗板の外観を明所(D65標準光源下)において目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:光輝感、透明感が十分にある、
○:光輝感、透明感がある、
×A:透明感はあるが、光輝感にかける、
×B:光輝感はややあるが、透明感にかける。
(*2)耐水性
各試験塗板を23℃の上水に7日間浸漬し、引き上げた後、目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:良好、
△:艶引け、白化、フクレのいずれか1つが認められる、
×:著しいフクレが認められる、又は塗膜が軟化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性基材用の装飾材であって、該装飾材が、塗料組成物を粒状化してなる塗料粒子成分が分散媒体中に分散されてなるものであり、該塗料粒子成分がその成分の一部として光輝性顔料及び樹脂を含む光輝性塗料組成物を粒状化してなる光輝性塗料粒子成分を含むものであって、該光輝性塗料粒子成分に含まれる光輝性顔料が、大きさが3〜400μmの範囲内であり、該光輝性塗料粒子成分中における光輝性顔料の含有量が、該光輝性塗料粒子成分に含まれる樹脂100質量部を基準として1〜50質量部の範囲内にあることを特徴とする透明性基材用装飾材。
【請求項2】
光輝性塗料粒子成分が、大きさが20〜20,000μmの範囲内である請求項1に記載の透明性基材用装飾材。
【請求項3】
塗料粒子成分が、その成分の一部として着色材及び樹脂を含む着色塗料組成物を粒状化してなる着色塗料粒子成分をさらに含む請求項1または2に記載の透明性基材用装飾材。
【請求項4】
光輝性塗料粒子成分と着色塗料粒子成分の含有割合が光輝性塗料粒子成分/着色塗料粒子成分固形分質量比で99/1〜1/99の範囲内にある請求項3に記載の透明性基材用装飾材。
【請求項5】
さらに塗膜形成成分を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透明性基材用装飾材。
【請求項6】
塗料粒子成分及び塗膜形成成分の配合割合が、塗料粒子成分/塗膜形成成分固形分質量比で、1/99〜70/30の範囲内にある請求項1ないし5のいずれか1項に記載の透明性基材用装飾材。
【請求項7】
透明性基材に、下塗り材層を介してまたは介さずに請求項1ないし6のいずれか1項の記載の装飾材による装飾層を設けることを特徴とする透明性基材の装飾方法。
【請求項8】
下塗り材層を設けるための下塗り材がヒドラジン誘導体を含む組成物である請求項7に記載の装飾方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の装飾方法により得られる装飾品。

【公開番号】特開2009−149790(P2009−149790A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329689(P2007−329689)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】