説明

透明電極の製造方法、透明電極および有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】本発明の目的は表面平滑性・導電性・透明性に優れ、かつ生産性の高い透明電極およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】透明支持体上に金属ナノワイヤおよび導電性高分子を含む導電層を有する透明電極の製造方法において、金属ナノワイヤおよびバインダーを含む液を塗布することにより第一導電層を形成する工程、前記バインダーを架橋または硬化する工程、導電性高分子および非導電性高分子を含有する水系分散液を第一導電層の上に塗布し第二導電層を形成する工程および金属ナノワイヤ除去液をパターン印刷し水洗する工程を有することを特徴とする透明電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明電極の製造方法および、前記方法によって製造された電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型TV需要の高まりに伴い液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)・フィールドエミッション等、各種方式ディスプレイの開発がなされている。
【0003】
これら方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極は必須の部材となっている。また、テレビ以外でもタッチパネルや携帯電話・電子ペーパー・各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない部材となっている。
【0004】
透明電極は各種知られているが、特にITO(酸化インジウム錫)は光透過性と導電性とのバランスが良く、酸溶液を用いたウェットエッチングによる微細な電極パターン形成が容易であることから、各種オプトエレクトロニクス用の透明電極として多用されている。
【0005】
しかしながら、上記のITO等に代表される導電性酸化物は、スパッタリング法等の真空プロセスにより基体表面に透明導電膜を形成する。スパッタリング法等の真空プロセスで透明導電膜を形成するには、高価な設備が必要かつ大量生産には不向きであり、高性能かつ安価な透明導電膜を大量に生産する技術はまだ確立されていない。
【0006】
上記の問題を解消するために、導電性酸化物や、導電性高分子を含有する組成物を塗布することで透明導電膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0007】
しかし、これらの方法では十分な導電性を得ることが難しく、特に有機EL素子、太陽電池といった用途へ適用できるほどの性能は実現できていない。
【0008】
他の透明電極としては、プラズマディスプレイの電磁波シールド膜に代表される金属パターンによりメッシュ構造を形成した透明電極が挙げられ(例えば、特許文献3、4)、また金属ナノワイヤを用いた微細メッシュからなる透明電極が開示されている(例えば、特許文献5)。
【0009】
特に銀を用いた金属メッシュでは、銀本来の高い導電率により良好な導電性と透明性を両立することができる。しかし、これらの透明電極は、前述のITOのような電極と比較して、電極表面が粗いという欠点を有している。特に、有機EL素子の場合、電極上に有機化合物の超薄膜を形成するため、透明電極には優れた表面平滑性が要求され、このような表面平滑性の低い電極では、素子の機能低下を招く。
【0010】
透明電極の表面平滑性を向上させるため、平滑性の高い支持体上に、金属ナノワイヤを用いて導電層を形成し、別の支持体に転写する方法が提案されているが(特許文献6)、転写に用いる接着剤や支持体と導電層との接着性、剥離性のバランスの調整が難しく、完全な転写は困難である。さらに、接着剤層の塗布、硬化、支持体同士の貼合、剥離と工程が多く、コスト増の問題がある。また、導電層パターンを印刷法により直接形成する方法については、詳細に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−273964号公報
【特許文献2】特開2008−4501号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0074316号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0143906号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0196707号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/259262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面平滑性・導電性・透明性に優れ、かつ生産性の高い透明電極およびその製造方法の提供、および本発明の製造方法によって製造された透明電極、並びに前記透明電極を用いたEL(エレクトロルミネッセンス)素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0014】
1.透明支持体上に金属ナノワイヤおよび導電性高分子を含む導電層を有する透明電極の製造方法において、金属ナノワイヤおよびバインダーを含む液を塗布することにより第一導電層を形成する工程、前記バインダーを架橋または硬化する工程、導電性高分子および非導電性高分子を含有する水系分散液を第一導電層の上に塗布し第二導電層を形成する工程および金属ナノワイヤ除去液をパターン印刷し水洗する工程を有することを特徴とする透明電極の製造方法。
【0015】
2.前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする前記1に記載の透明電極の製造方法。
【0016】
3.前記バインダーをアルデヒド系、メラミン系、エポキシ系架橋剤の少なくとも一種から選択される架橋剤を用いて架橋することを特徴とする前記1または2に記載の透明電極の製造方法。
【0017】
4.前記バインダーが硬化性樹脂であることを特徴とする前記1または2に記載の透明電極の製造方法。
【0018】
5.前記非導電性高分子が、水溶性高分子または高分子ラテックスであることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【0019】
6.前記金属ナノワイヤ除去液が水溶性高分子を含有することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【0020】
7.前記パターン印刷が、スクリーン印刷、グラビア印刷またはインクジェット印刷であることを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【0021】
8.前記1から7のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする透明電極。
【0022】
9.前記8に記載の透明電極を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、透明支持体上に金属ナノワイヤおよび導電性高分子を含む導電層を有する透明電極の製造方法において、金属ナノワイヤおよびバインダーを含む液を塗布することにより第一導電層を形成する工程、前記バインダーを架橋または硬化する工程、導電性高分子および非導電性高分子を含有する水系分散液を第一導電層の上に塗布し第二導電層を形成する工程、金属ナノワイヤ除去剤含有液をパターン印刷し、水洗する工程によって透明電極を作製することにより、表面平滑性・導電性・透明性の良好な透明電極を、容易かつ安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0025】
〔透明電極〕
本発明に係る導電層は透明支持体上に形成され、金属ナノワイヤおよびバインダーを含有する第一導電層、導電性高分子および非導電性高分子を含有する第二導電層を有している。
【0026】
本発明の透明電極には、アンカーコート層やハードコート層等を付与することもできる。また必要に応じて更に導電性高分子または金属酸化物を含有する導電層を設置してもよい。
【0027】
本発明の透明電極において、導電層の表面粗さは、有機EL素子等の性能に影響するため高平滑であることが望ましく、具体的には、算術平均粗さRaは、Ra≦5nmであることが好ましく、Ra≦3nmであることがより好ましく、Ra≦1nmであることがさらに好ましい。また、最大高さRyは、Ry≦50nmであることが好ましく、Ry≦40nmであることがより好ましく、Ry≦30nmであることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の透明電極において、金属ナノワイヤを含有する導電層の全光線透過率は、60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0029】
本発明の透明電極において、金属ナノワイヤを含有する導電層の電気抵抗値としては、表面比抵抗として10Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが特に好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。表面比抵抗は、金属ナノワイヤ単独の状態で前記表面比抵抗を満たしていれば良く、金属ナノワイヤがバス電極として機能するため、導電性高分子の表面比抵抗が高くても、金属ナノワイヤ含有導電層の導電性を均一化することができる。導電性高分子の表面比抵抗としては、金属ナノワイヤ含有導電層間の電流リークに影響なく、金属ナノワイヤ含有導電層の導電性が均一化可能な、10Ω/□以上10Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは10Ω/□以上10Ω/□以下である。
【0030】
本発明の透明電極は、LCD、エレクトロルミネッセンス素子、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル等の透明電極、電子ペーパーならびに電磁波遮蔽材等に用いることが出来るが、導電性、透明性に優れ、また平滑性も高いため、有機EL素子に用いるのが好ましい。
【0031】
〔透明支持体〕
本発明では透明支持体として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス等を用いることができる。
【0032】
プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0033】
本発明の透明電極の製造方法において、支持体は、表面平滑性に優れているものが好ましい。表面の平滑性は算術平均粗さRaが5nm以下かつ最大高さRzが50nm以下であることが好ましく、Raが2nm以下かつRzが30nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくはRaが1nm以下かつRzが20nm以下である。
【0034】
しかし、本発明では支持体が予め平滑性を有している必要はなく、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の下塗り層を付与、硬化させることで下塗り層を含めた支持体全体として平滑化してもよいし、研磨等の機械加工によって平滑化しても良い。また高分子層の塗布、接着性を向上させるため、コロナ、プラズマによる表面処理や、易接着層を形成してもよい。ここで、表面の平滑性は、原子間力顕微鏡(AFM)等による測定から、表面粗さ規格(JIS B 0601−2001)に従い、求めることができる。
【0035】
また、大気中の酸素、水分を遮断する目的でガスバリア層を設けるのも好ましい。ガスバリア層の形成材料としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物が使用できる。これらの材料は、水蒸気バリア機能のほかに酸素バリア機能も有する。
【0036】
特にバリア性、耐溶剤性、透明性が良好な窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素が好ましい。また、バリア層は必要に応じて多層構成とすることも可能である。ガスバリア層の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
【0037】
前記ガスバリア層を構成する各層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層あたり10nm〜200nmである。
【0038】
ガスバリア層は支持体の少なくとも一方の面に設けられ、両面に設けられるのがより好ましい。
【0039】
〔導電層〕
本発明における導電層は、金属ナノワイヤおよびバインダーを含有する第一導電層、導電性高分子および非導電性高分子を含有する第二導電層から構成され、第二導電層と第一導電層は積層した状態でも、一方が他方の内部に含浸した状態でもよい。
【0040】
これら導電層の形成方法は、それぞれ金属ナノワイヤ、導電性高分子を含む分散液を、塗布、乾燥して膜形成する液相成膜法であれば特に制限はなく、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の塗布法を用いることができる。
【0041】
〔第一導電層〕
本発明に係る第一導電層は、金属ナノワイヤおよびバインダーとして高分子ラテックス、硬化性樹脂または水溶性高分子を含有する分散液を、塗布、乾燥して形成される。さらに、バインダーである高分子ラテックスまたは水溶性高分子は、後述する架橋剤により架橋され、また、硬化性樹脂は、熱・光・電子線・放射線により硬化され、固定化される。
【0042】
これにより、第二導電層の塗布性が飛躍的に向上し、導電層全体の平滑性および導電性が向上する。これは硬化した第一導電層が、第二導電層を形成する際の溶液に影響を受けないためだと考えられる。
【0043】
第一導電層を硬化しない場合は、第二導電層塗設により、第一導電層が膨潤、収縮することにより導電層の平滑性が減少する恐れがあるが、前述の固定化により膨潤が抑制され、高い平滑性と導電性を発現できるものと考えられる。
【0044】
また、添加剤として、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が用いることができる。更に、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0045】
また、第一導電層を形成するための分散液には、導電性高分子を含んでいてもよい。
【0046】
〔水溶性高分子〕
本発明に係る水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)等から広く選択して使用することができる。また、これらの高分子は、官能基の一部が変性されていてもよい。特に、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0047】
〔高分子ラテックス〕
本発明に係る高分子ラテックスとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等から広く選択して使用することができる。
【0048】
〔硬化性樹脂〕
本発明に係る硬化性樹脂は、熱・光・電子線・放射線で硬化する水性硬化性樹脂を用いることができ、例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0049】
〔架橋剤〕
本発明に係る架橋剤は、第一導電層中のバインダーである水溶性高分子または高分子ラテックスの架橋に用いられ、アルデヒド系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系架橋剤等を用いることができる。
【0050】
架橋剤の適用方法は、架橋剤の塗布液をアンダーコート層として予め透明基材上に塗布、乾燥した後に第一導電層を塗設してもよいし、第一導電層を塗布、乾燥した後にオーバーコート層として架橋剤を塗設してもよいし、金属ナノワイヤ分散液と架橋剤を同時2層塗布してもよいし、それらの混合液を塗布、乾燥してもよい。好ましくはアンダーコート層または混合液にして架橋剤含有層を設けることである。
【0051】
また、架橋剤液は、pH調整剤として酸、アルカリ、塩を含有してもよく、加熱により容易に除去できることからアンモニア、アンモニウム塩が好ましい。さらに、架橋反応を促進するため、100〜150℃で加熱することが好ましい。
【0052】
〔第二導電層〕
第二導電層は、導電性高分子および非導電性高分子を含有する分散液を塗布、乾燥して形成される。また、第二導電層は、第一導電層を形成する分散液を塗布し、次いで第一導電層を形成する分散液中のバインダーを架橋、あるいは硬化後、第二導電層を形成する分散液を、塗布、乾燥して形成される。
【0053】
第二導電層に用いられる導電性高分子としては、単一の導電性高分子を用いてもよいし、複数種の導電性高分子を混合して用いてもよい。
【0054】
非導電性高分子としては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができる。例えば、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、前述の水溶性高分子、高分子ラテックス、硬化性樹脂を用いることができる。
【0055】
また、添加剤として、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。更に、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0056】
本発明において第二導電層を第一導電層上に塗設、積層することにより、第一導電層中の金属ナノワイヤ間に導電性高分子が入り込む。それにより、導電性高分子を介したナノワイヤ同士の接触面積の向上や、物理的な間隙のあるナノワイヤ同士が導電性高分子を介して接触することができ、面内均一な導電性が得られると考えられる。さらに、第二導電層が造膜することにより、表面平滑性を向上することができると考えられる。
【0057】
〔金属ナノワイヤ〕
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明においては、金属ナノワイヤとして、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の線状構造体がメッシュ状に形成されたものが好ましく用いられる。
【0058】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長径が3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長径の相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば金・白金・銀・パラジウム・ロジウム・イリジウム・ルテニウム・オスミウム等)および鉄・コバルト・銅・錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
【0060】
また、本発明に係る金属ナノワイヤに用いられる金属は単一で用いても良いが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、およびマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0061】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.およびChem.Mater.で報告された銀ナノワイヤの製造方法は、水系で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0062】
〔導電性高分子〕
導電性高分子としては、特に限定されず、ポリピロール、ポリインドール、ポリカルバゾール、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)系、ポリアニリン系、ポリアセチレン系、ポリフラン系、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリアズレン系、ポリパラフェニレン系、ポリパラフェニレンサルファイド系、ポリイソチアナフテン系、ポリチアジル等の鎖状導電性高分子や、ポリアセン系導電性高分子も利用することができる。中でも、導電性、透明性等の観点からポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やポリアニリン系が好ましい。
【0063】
また、本発明においては、上記導電性高分子の導電性をより高めるために、ドーピング処理を施すことが好ましい。導電性高分子に対するドーパントとしては、例えば、炭素数が6〜30の炭化水素基を有するスルホン酸(以下「長鎖スルホン酸」ともいう。)あるいはその重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、ハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属化合物、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、MClO(M=Li、Na)、Rをもつ塩(R=CH、C、C)、またはRをもつ塩(R=CH、C、C)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでも、上記長鎖スルホン酸が好ましい。
【0064】
長鎖スルホン酸としては、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。ハロゲンとしては、Cl、Br、I、ICl、IBr、IF等が挙げられる。ルイス酸としては、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO、GaCl等が挙げられる。プロトン酸としては、HF、HCl、HNO、HSO、HBF、HClO、FSOH、ClSOH、CFSOH等が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物としては、NbF、TaF、MoF、WF、RuF、BiF、TiCl、ZrCl、MoCl、MoCl、WCl、FeCl、TeCl、SnCl、SeCl、FeBr、SnI等が挙げられる。遷移金属化合物としては、AgClO、AgBF、La(NO、Sm(NO等が挙げられる。アルカリ金属の塩としては、Li、Na、K、Rb、Cs等を含む塩が挙げられる。アルカリ土類金属の塩としては、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sc2+、Ba2+等を含む塩が挙げられる。
【0065】
また、導電性高分子に対するドーパントは、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等のフラーレン類に導入されていてもよい。
【0066】
上記ドーパントは、導電性高分子100質量部に対して、0.001質量部以上含まれていることが好ましい。さらには、0.5質量部以上含まれていることがより好ましい。
【0067】
尚、導電層は、長鎖スルホン酸、長鎖スルホン酸の重合体(例えば、ポリスチレンスルホン酸)、ハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、MClO、Rをもつ塩、およびRをもつ塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のドーパントと、フラーレン類との双方を含んでいてもよい。
【0068】
導電性高分子は、上記のドーパント以外にも第二のドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。
【0069】
前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0070】
本発明の導電性高分子において、導電性高分子100質量部に対する上記第二のドーパントの含有量は0.001質量部以上が好ましく、0.01〜50質量がより好ましく、0.01〜10質量部が特に好ましい。
【0071】
〔金属ナノワイヤ除去液〕
本発明に用いられる金属ナノワイヤ除去液の組成としては、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理に使用する漂白定着液を好ましく用いることができる。溶液は水溶液であることが好ましいが、下記に記載される漂白剤・定着剤などを溶解することができれば、エタノールなどの有機溶媒でも良い。
【0072】
漂白定着液において用いられる漂白剤としては、公知の漂白剤も用いることができ、特に鉄(III)の有機錯塩(例えばアミノポリカルボン酸類の錯塩)またはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素などが好ましい。
【0073】
これらのうち、鉄(III)の有機錯塩は迅速処理と環境汚染防止の観点から特に好ましい。鉄(III)の有機錯塩を形成するために有用なアミノポリカルボン酸、またはそれらの塩を列挙すると、生分解性のあるエチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、メチルイミノジ酢酸をはじめ、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸などのほか、欧州特許0789275号公報の一般式(I)または(II)で表される化合物を挙げることができる。
【0074】
これらの化合物はナトリウム、カリウム、チリウムまたはアンモニウム塩のいずれでもよい。これらの化合物の中で、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸はその鉄(III)錯塩が好ましい。これらの第2鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用しても良いし、第2鉄塩、例えば硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄などとアミノポリカルボン酸などのキレート剤とを用いて溶液中で第2鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤は第2鉄イオン錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄錯体のなかでもアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましく、その添加量は0.01〜1.0モル/リットル、好ましくは0.05〜0.50モル/リットル、更に好ましくは0.10〜0.50モル/リットル、更に好ましくは0.15〜0.40モル/リットルである。
【0075】
漂白定着液に使用される定着剤は、公知の定着剤、即ちチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどのチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールなどのチオエーテル化合物およびチオ尿素類などの水溶性のハロゲン化銀溶解剤であり、これらを1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウムの如きハロゲン化物などの組み合わせからなる特殊な漂白定着剤等も用いることができる。本発明においては、チオ硫酸塩特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。1リットルあたりの定着剤の量は、0.3〜2モルが好ましく、更に好ましくは0.5〜1.0モルの範囲である。
【0076】
本発明に使用される漂白定着液のpH領域は、3〜8が好ましく、更には4〜7が特に好ましい。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。
【0077】
また、漂白定着液には、水溶性バインダーの他にも各種の消泡剤或いは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。漂白定着液は、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、など)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、など)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム、など)等の亜硫酸イオン放出化合物や、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸などのアリールスルフィン酸などを含有するのが好ましい。これらの化合物は亜硫酸イオンやスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/リットル含有させることが好ましい。
【0078】
保恒剤としては、上記のほか、アスコルビン酸やカルボニル重亜硫酸付加物、あるいはカルボニル化合物等を添加しても良い。更には緩衝剤、キレート剤、消泡剤、防カビ剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0079】
〔水溶性バインダー〕
金属ナノワイヤ除去液に用いられる水溶性バインダーは、具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムや、炭水化物およびその誘導体が好ましく用いられる。炭水化物およびその誘導体としては、水溶性セルロース誘導体と水溶性天然高分子が挙げられる。水溶性セルロース誘導体とは、メチル、ヒドロキシエチル、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMCともいう)、カルボキシメチル等のセルロース誘導体をいう。また、水溶性天然高分子とは、でんぷん、でんぷん糊料、可溶性でんぷん、デキストリン等をいう。これらのうち、CMCが水に溶解しやすいことから好ましい。金属ナノワイヤ除去液に用いられる水溶性バインダーの分子量は必要粘度に応じ任意に選択することができる。
【0080】
〔パターン印刷〕
本発明における金属ナノワイヤ除去液をパターン印刷する方法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法を用いることができるが、特にグラビア印刷法、スクリーン印刷法で行うのが好ましい。
【0081】
本発明では、透明支持体上に金属ナノワイヤからなる第一導電層を形成した後、あるいは導電性高分子からなる第二導電層を形成した後、金属ナノワイヤ除去剤を含有する液を、パターン電極を形成する上で不要となる部分にパターン印刷する。次いで水洗処理を行うことで、パターン電極を形成する上で不要となる部分の金属ナノワイヤを除去し、パターン電極を形成することができる。
【0082】
上記パターニング方法により、第一導電層中の金属ナノワイヤを除去した部分には第二導電層も存在していないことが好ましい。しかしながら、金属ナノワイヤと導電性高分子の電気伝導性には大きな差があり、形成したパターン電極間の距離が十分に離れていて、電極間のリークが起きない場合には、必ずしも第二導電層が完全に除去されている必要はない。好ましくは、金属ナノワイヤからなる第一導電層を形成した後パターニングをし、その後第二導電層を形成することである。
【0083】
〔有機EL素子〕
本発明における有機EL素子は、本発明の透明電極を有することを特徴とする。本発明における有機EL素子は、本発明の透明電極を陽極として用い、有機発光層、陰極については有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。有機EL素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることができる。
【0084】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、および各種蛍光色素および希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写等の方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
【0085】
本発明における有機EL素子は、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることが出来る。本発明の有機EL素子は、均一にムラなく発光させることが出来るため、照明用途で用いることが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0087】
《透明電極の作製》
[銀ナノワイヤ分散液の作製]
Adv.Mater.2002,14,p.833〜837に記載の方法に基づき、下記の方法で銀ナノワイヤ分散液を作製した。
【0088】
(核形成工程)
反応容器内で170℃に保持したエチレングリコール液(EG液)1000mlを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.5×10−4モル/L)100mlを一定の流量で10秒間かけて添加した。その後、170℃で10分間熟成を施し、銀の核粒子を形成した。熟成終了後の反応液は、銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収に由来した黄色を呈しており、銀イオンが還元されて、銀ナノ粒子が形成されたことが確認された。
【0089】
(粒子成長工程)
上記の熟成を終了した核粒子を含む反応液を攪拌しながら170℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)1000mlと、PVPのEG溶液(VP濃度換算:5.0×10−1モル/L)1000mlを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で100分間かけて添加した。粒子成長工程において20分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された銀ナノ粒子が時間経過に伴って、主にナノワイヤの長軸方向に成長しており、粒子成長工程における新たな核粒子の生成は認められなかった。
【0090】
粒子成長工程終了後、反応液を室温まで冷却した後、フィルターを用いて濾過し、濾別された銀ナノワイヤをエタノール中に再分散した。フィルターによる銀ナノワイヤの濾過とエタノール中への再分散を5回繰り返し、最終的に銀ナノワイヤの水分散液を調製して、銀ナノワイヤ分散液を作製した。
【0091】
得られた分散液を微量採取し、電子顕微鏡で確認したところ、平均直径85nm、平均長さ7.4μmの銀ナノワイヤが形成されたことが確認できた。
【0092】
[金属ナノワイヤ除去液BF−1の作製]
エチレンジアミン4酢酸第2鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5g
純水で1Lに仕上げ、硫酸またはアンモニア水でpHを5.5に調整し金属ナノワイヤ除去液BF−1を作製した。
【0093】
《パターン電極の作製》
〔透明電極101の作製;比較例〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PET)を支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液にバインダーとしてカルボキシメチルセルロース(以下CMC)を銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥し、第一導電層を作製した。
【0094】
次に、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュ(ミタニマイクロニクス株式会社製;255T)を用いて、作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで10Pa・s(10000cP)に調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0095】
最後に、第二導電層の導電性高分子として、PEDOT:PSS(ポリスチレンスルホン酸)=1:2.5の分散液であるBaytron PH510(H.C.Starck社製)に、非導電性高分子PVA245((株)クラレ製)および下に記載の界面活性剤(UL−1)を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布し、乾燥し第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極101を作製した。
【0096】
【化1】

【0097】
〔透明電極102の作製;比較例〕
第一導電層を形成するのに用いたバインダーと、第二導電層を形成するのに用いた非導電性高分子をそれぞれPVA203((株)クラレ製)に変更した以外は、透明電極101を作製したのと同一の条件で透明電極102を作製した。
【0098】
〔透明電極103の作製;比較例〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETの支持体として用い、銀ナノワイヤ分散液にPVA203を銀質量あたり25%加えた溶液を、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥し、第一導電層を作製した。
【0099】
次に、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)60SH−06(信越化学工業(株))および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し第二導電層を形成した。
【0100】
最後に、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファー(松尾産業株式会社製)に、10mmのストライプ状パターンを形成した版を取り付け、CMCで粘度を1000cPに調整した金属ナノワイヤ除去液BF−1を、第二導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようグラビア印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行い、これを50mm×50mm角に裁断して透明電極103を作製した。
【0101】
〔透明電極104の作製;比較例〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体に、架橋剤としてメラミン系架橋剤ベッカミンM3(DIC(株)製)、およびCatalyst ACX(DIC(株)製)の塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるようにアンダーコートし、乾燥させた。
【0102】
次に、銀ナノワイヤ分散液にCMCを銀質量あたり25%加えた溶液を、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥の後、加熱処理により架橋し、第一導電層を作製した。
【0103】
その後、銀ナノワイヤの塗布層にカレンダー処理を施した後、公知のフォトリソグラフィー法により電極パターン幅10mmのストライプ状パターンを形成した。
【0104】
最後に第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子メチルセルロースSM100(信越化学工業(株))および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布し、乾燥し第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極104を作製した。
【0105】
〔透明電極105の作製;比較例〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液CMCを銀質量あたり25%加えた溶液に、架橋剤としてグリオキサールをバインダー質量の10%となるように混合し、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュを用いて、スクリーン印刷、乾燥した後に加熱処理により架橋して第一導電層を作製した。
【0106】
次に、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子SM100および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布し、乾燥した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極105を作製し第二導電層を形成した。
【0107】
〔透明電極106の作製;比較例〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液にバインダーとしてHPMCを銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布、乾燥して第一導電層を作製した。
【0108】
次に、架橋剤としてベッカミンM3およびCatalyst ACXの塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるようにオーバーコートした後、加熱処理により第一導電層を架橋した。
【0109】
その後、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510および界面活性剤UL−1を添加した溶液を乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。
【0110】
最後に、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファーに10mmのストライプ状パターンを形成した版を取り付け、金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで1000cPに調整し、第二導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようグラビア印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。これを50mm×50mm角に裁断し、透明電極106を作製した。
【0111】
〔透明電極107の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、エポキシ系架橋剤EX512(ナガセケムテックス(株)製)の塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるようにアンダーコートした。
【0112】
次に、作製した銀ナノワイヤ分散液にバインダーとしてPVA203を銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥した後に加熱処理により架橋して、第一導電層を作製した。
【0113】
その後、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子PVA245および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。
【0114】
最後に、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュを用いて、作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで10000cPに調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。これを、50mm×50mm角に裁断した。透明電極107を作製した。
【0115】
〔透明電極108の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液バインダーとしてPVA203を銀質量あたり25%加えた溶液に、架橋剤としてグリオキサールをバインダー質量の10%となるように混合し、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布、乾燥した後に加熱処理により架橋して、第一導電層を作製した。
【0116】
次に、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子PVA203および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し第二導電層を形成した。
【0117】
最後に、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファーに、10mmのストライプ状パターンを形成した版を取り付け、金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで1000cPに調整し、第二導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようグラビア印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極108を作製した。
【0118】
〔透明電極109の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液にCMCを銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥し、第一導電層を作製した。
【0119】
次に、架橋剤としてグリオキサールの塗設量が、塗膜中のバインダー質量の10%となるようにオーバーコートした後、加熱処理により第一導電層を架橋した。
【0120】
その後、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子HPMCおよび界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。
【0121】
最後に、インクジェットプリンター用いて、10mmのストライプ状パターンを作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで30cPに調整し、第二導電層の上に塗布膜厚30μmとなるよう印刷回数を調整してインクジェット印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極109を作製した。
【0122】
〔透明電極110の作製;本発明〕
透明電極107の作製において、第二導電層を作製するのに用いた非導電性高分子をボンコートAN155(DIC(株)製)に変更した以外は透明電極107を作製したのと同一の条件で、透明電極110を作製した。
【0123】
〔透明電極111の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液兼架橋剤HC−W004(信越ポリマー(株)製)を銀質量あたり25%加えた溶液スピンコートによる塗布、乾燥した後にUV照射により架橋して、第一導電層を作製した。
【0124】
次に、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子PVA203および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布・乾燥した。
【0125】
最後に、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュを用いて、作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで10000cPに調整し、第二導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。これを50mm×50mm角に裁断し、透明電極111を作製した。
【0126】
〔透明電極112の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPET支持体に、ベッカミンM3およびCatalyst ACXの塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるようにアンダーコートし、乾燥した。
【0127】
次に、作製した銀ナノワイヤ分散液にバインダーとしてPVA203を銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布、乾燥した後に加熱処理により架橋して、第一導電層を作製した。
【0128】
その後、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュを用いて、作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで10000cPに調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0129】
最後に、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子PVA245および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極112を作製した。
【0130】
〔透明電極113の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液CMCを銀質量あたり25%加えた溶液に、架橋剤としてグリオキサールをバインダー質量の10%となるように混合し、スピンコートによる塗布、乾燥した後に加熱処理により架橋して、第一導電層を作製した。
【0131】
次に、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファーに、10mmのストライプ状パターンを形成した版を取り付け、金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで1000cPに調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようグラビア印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0132】
最後に、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子HPMCおよび界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極113を作製した。
【0133】
〔透明電極114の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液にHPMCを銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布、乾燥し、第一導電層を作製した。
【0134】
次に、EX512の塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるように、飽和溶液を用いてオーバーコートした後に加熱処理により架橋した。
【0135】
その後、CMCで30cPに調整した金属ナノワイヤ除去液BF−1を、インクジェットプリンターの印刷回数を調整して、第一導電層上に塗布膜厚30μmとなるよう10mmのストライプ状パターンにインクジェット印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0136】
最後に、第二導電層として、導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子SM100および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極114を作製した。
【0137】
〔透明電極115の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、架橋剤としてグリオキサールの塗設量が塗膜中のバインダー質量の10%となるようにアンダーコートし、乾燥した。
【0138】
次に、作製した銀ナノワイヤ分散液にCMCを銀質量あたり25%加え、銀ナノワイヤ付量が0.05g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布・乾燥した後に加熱処理により架橋し、第一導電層を作製した。
【0139】
その後、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュを用いて、作製した金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで10000cPに調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0140】
最後に、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に非導電性高分子ボンコートAN402(DIC(株)製)および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。これを、50mm×50mm角に裁断し、透明電極115を作製した。
【0141】
〔透明電極116の作製;本発明〕
コロナ放電処理を施した厚さ100μmのPETを支持体として用い、作製した銀ナノワイヤ分散液兼架橋剤HC−W004を銀質量あたり25%加えた溶液をスピンコートによる塗布、乾燥後にUV照射により架橋して、第一導電層を作製した。
【0142】
次に、グラビア塗布機Kプリンティングプルーファーに、10mmのストライプ状パターンを形成した版を取り付け、金属ナノワイヤ除去液BF−1の粘度をCMCで1000cPに調整し、第一導電層の上に塗布膜厚30μmとなるようグラビア印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで流水による水洗処理を行った。
【0143】
最後に、第二導電層として導電性高分子Baytron PH510に、非導電性高分子PVA245および界面活性剤UL−1を添加し、乾燥膜厚が300nmとなるようにスピンコーターにて塗布、乾燥し、第二導電層を形成した。これを50mm×50mm角に裁断し、透明電極116を作製した。
【0144】
[測定]
下記方法で、透明電極101〜116の平滑性Ra、Ryについて評価した。
【0145】
(表面粗さ)
本発明において、導電層表面の平滑性を表すRaとRyは、Ra=算術平均粗さと、Ry=最大高さ(表面の山頂部と谷底部との高低差)を意味し、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる値である。本発明においてRaやRyの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いることができ、以下の方法で測定した。
【0146】
AFMとして、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用した。約1cm角の大きさに切り取った試料をピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位を測定した。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用した。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定領域80×80μmを、走査周波数1Hzで測定した。
【0147】
測定および評価の結果を実施例に記載した製造方法とあわせて表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
尚、第一導電層にあるバインダーは
CMC:カルボキシメチルセルロースC5013(SIGMA−ALDRICH製)
PVA203:クラレポバールPVA203((株)クラレ製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06(信越化学工業(株))
HC−W004:HC−W004(信越ポリマー(株)製)
を表す。
【0150】
架橋剤は
I :メラミン系架橋剤ベッカミンM3(DIC(株)製)およびCatalyst ACX(DIC(株)製)
II :グリオキサール
III:エポキシ系架橋剤EX512(ナガセケムテックス(株)製)
を表す。
【0151】
架橋方法は架橋剤含有層の成膜方法を表し、
UC:支持体上に架橋剤を含むアンダーコート層を形成し、その上に第一導電層を形成後に架橋
OC:形成した第一導電層上に架橋剤を含むオーバーコート層を形成して架橋
Mix:第一導電層の材料に架橋剤を混合した第一導電層を形成した後に架橋
を表す。
【0152】
パターニング方法は金属ナノワイヤ除去剤の塗布方法と順序を表し、
S1:10mmのストライプ状パターンのスクリーン印刷用ポリエステルメッシュ(ミタニマイクロニクス株式会社製;255T)を用いて第二導電層形成前にスクリーン印刷
S2:255Tを用いて第二導電層形成後にスクリーン印刷
S3:255Tを用いて第一導電層を直接スクリーン印刷(金属ナノワイヤ除去剤は用いない)
G1:10mmのストライプ状パターンの版を取り付けたグラビア塗布機Kプリンティングプルーファー(松尾産業株式会社製)を用いて第二導電層形成前にグラビア印刷
G2:10mmのストライプ状パターンの版を取り付けたグラビア塗布機Kプリンティングプルーファーを用いて第二導電層形成後にグラビア印刷
I1:第二導電層形成前に、インクジェットプリンター用いて10mm幅のストライプをパターン印刷
I2:第二導電層形成後に、インクジェットプリンター用いて10mm幅のストライプをパターン印刷
P1:第二導電層形成前に、フォトリソグラフィーを用いて10mm幅のストライプを形成
を表す。
【0153】
非導電性高分子は第二導電層に含有させる非導電性高分子を表し、
MC:メチルセルロースSM100(信越化学工業(株))
CMC:カルボキシメチルセルロースC5013(SIGMA−ALDRICH製)
PVA203:クラレポバールPVA203((株)クラレ製)
PVA245:クラレポバールPVA245((株)クラレ製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06(信越化学工業(株))
AN155:ボンコートAN155(DIC(株)製)
AN402:ボンコートAN402(DIC(株)製)
を表す。
【0154】
また、全ての本発明および比較例において、隣り合った導電パターン間の電流(リーク電流)は観測されなかった。
【0155】
《有機EL素子の作製》
作製した透明電極101〜116を第一電極に用いて、以下の手順でそれぞれ有機EL素子201〜216を作製した。
【0156】
〈正孔輸送層の形成〉
1電極上に、1,2−ジクロロエタン中に1質量%となるように正孔輸送材料の4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)を溶解させた正孔輸送層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、80℃、60分間乾燥して、厚さ40nmの正孔輸送層を形成した。
【0157】
〈発光層の形成〉
正孔輸送層が形成された各フィルム上に、ホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)に対して、赤ドーパント材BtpIr(acac)が1質量%、緑ドーパント材Ir(ppy)が2質量%、青ドーパント材FIr(pic)が3質量%にそれぞれなるように混合し、PVKと3種ドーパントの全固形分濃度が1質量%となるように1,2−ジクロロエタン中に溶解させた発光層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、100℃、10分間乾燥して、厚さ60nmの発光層を形成した。
【0158】
〈電子輸送層の形成〉
形成した発光層上に、電子輸送層形成用材料としてLiFを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ0.5nmの電子輸送層を形成した。
【0159】
〈第2電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、第2電極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ100nmの第2電極を形成した。
【0160】
〈封止膜の形成〉
形成した電子輸送層の上に、ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を使用した。第1電極および第2電極の外部取り出し端子が形成出来る様に端部を除き第2電極の周囲に接着剤を塗り、可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させた。
【0161】
[発光輝度ムラ]
KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を作製した有機EL素子201〜216に印加し発光させた。200cd/mで発光させた各有機EL素子について、点灯時の発光面全体の発光ムラを、目視観察により下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0162】
◎:90%以上が均一に発光している
○:80%以上が均一に発光している
△:70%以上が均一に発光している
×:70%未満しか発光していない
××:全く発光せず
表1から明らかなように、本発明の透明電極は、平滑性、導電性、透明性に優れ、さらに有機EL素子の電極として使用した場合に、発光輝度ムラが少ないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に金属ナノワイヤおよび導電性高分子を含む導電層を有する透明電極の製造方法において、金属ナノワイヤおよびバインダーを含む液を塗布することにより第一導電層を形成する工程、前記バインダーを架橋または硬化する工程、導電性高分子および非導電性高分子を含有する水系分散液を第一導電層の上に塗布し第二導電層を形成する工程および金属ナノワイヤ除去液をパターン印刷し水洗する工程を有することを特徴とする透明電極の製造方法。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項3】
前記バインダーをアルデヒド系、メラミン系、エポキシ系架橋剤の少なくとも一種から選択される架橋剤を用いて架橋することを特徴とする請求項1または2に記載の透明電極の製造方法。
【請求項4】
前記バインダーが硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明電極の製造方法。
【請求項5】
前記非導電性高分子が、水溶性高分子または高分子ラテックスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤ除去液が水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項7】
前記パターン印刷が、スクリーン印刷、グラビア印刷またはインクジェット印刷であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする透明電極。
【請求項9】
請求項8に記載の透明電極を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2010−205532(P2010−205532A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49068(P2009−49068)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】