説明

透析システム

透析液循環装置は、透析器;第1のハウジング;および、第2のハウジングを含む。第1のハウジングは、その第1のハウジングを介して流れる透析液にナトリウムを放出しうる材料を収容する。第2のハウジングは、その第2のハウジングを介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合しうる材料を収容する。液圧導管部分は、透析器から第1のハウジングへ、第1のハウジングから第2のハウジングへ流れ、かつ、第2のハウジングから透析器へと流れを戻す透析液のための主要な流路のハウジングと透析器とを連結するために、透析器、第1のハウジングおよび第2のハウジング間に伸びるように設計される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年6月9日に出願されたU.S.予備出願シリアルNo.60/578,257についての優先権を主張し、この出願は、参考とすることによってここで組み込む。
分野
哺乳動物血液システムの透析用のシステムおよび方法。
背景
透析システムは、典型的には、血液を循環するための液圧システム、透析液を循環するための液圧システムおよび半透過性の膜を含む。血液システムおよび透析液システムは、膜の反対側に伸びる液体流路を有する。尿素およびその他の血液成分(しかし、血球ではない)は、血液および透析液の両方がを流れるにつれ、血液側から透析液側へと膜を横切って移動する。
【0002】
最も古いタイプの透析システムにて、透析液は、無機質およびその他の必須血液成分が振り出した水であり、源から廃棄容器まで伸びる流路に沿って膜を通過して連続的に流れるように誘導される。このタイプの連続流は、数百リットルの透析液を必要とする。より現代的には、透析システムは、暴露された透析液を廃棄容器に送るというよりもむしろその暴露された透析液をリサイクルさせる。透析液をリサイクルさせる透析システムは、6〜10リットルのオーダの透析液体積を有する。
【0003】
透析液をリサイクルするためには、尿素およびその他の血液廃棄化合物は、その液を、再度、膜によって通過させる前に、取り除く必要がある。尿素の除去を達成するための1つの方法は、例えば、尿素をウレアーゼに暴露させることであり、ウレアーゼは、尿素分子をアンモニウムイオンと炭酸塩に分解する。アンモニウムイオン、これは、毒性であり、かつ、膜に暴露されてはならないが、例えば、ジルコニウムホスフェートによって結合させることができる。この場合、ジルコニウムホスフェートは、イオン交換体として作用し、アンモニウムイオンをナトリウムイオンと交換する。
【0004】
ナトリウムは、尿素除去プロセスにて市販入手可能なシステムによって放出されるので、透析液中のナトリウムイオン濃度は、透析処置の過程の間に上昇する。6〜10リットルのシステムは、ナトリウムイオン濃度が生理学的に許容不能のレベルに到達しないように、上昇ナトリウムレベルを希釈する能力を有する。これら6〜10リットルのシステムは、高体積で透析液を製造するために使用される高純度の水の源を必要とする連続流タイプのシステムと比較して搬送可能な追加の利点を有する。例えば、適切なトレーニングと管理で、6〜10リットルのシステムは、大きい装置の据付または家庭内変更なくして、家庭環境での使用に容易に適合させることができる。
【0005】
透析処置のもう1つの効果は、血液からの過剰の水の除去である。患者の腎機能が低下するので、透析が必要とされることが多いが、このことは、一部、血液から水を除去する患者の能力が、同様に、低下することを意味する。6〜10リットルのシステムにて、合計液圧体積は、膨張可能である。合計容積が膨張可能であるので、透析の間に、水は、患者から透析システムに除くことができる。水の移動は、水が血液側から膜を横切って透析物側にコントロールされて流れるように、血液側と透析物側との圧力差を生ずることによって達成されうる。
【0006】
概要
透析液循環装置は、透析器、第1のハウジングおよび第2のハウジングを含む。第1のハウジングは、その第1のハウジングを介して流れる透析液にナトリウムを放出しうる材料を収容する。第2のハウジングは、その第2のハウジングを介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合しうる材料を収容する。液圧導管部分は、透析器から第1のハウジングへ、第1のハウジングから第2のハウジングへ流れ、かつ、第2のハウジングから透析器へと流れを戻す透析液のための主要な流路の第1および第2のハウジングと透析器とを連結するために、透析器、第1のハウジングおよび第2のハウジング間に伸びるように設計される。
【0007】
好ましくは、液圧導管部分は、さらに、第1のハウジングから透析器へと流れを戻すことによって第2のハウジングを迂回するための透析液のための迂回流路を画定するように設計される。液流調節器は、主および迂回流路に沿って透析液の流れを調節するように作動させる。コントローラは、第1のハウジングから出て来る透析液中のナトリウムイオン濃度を指示するように作動する計量計からのインプットに応じて調節器を作動させる。
【0008】
異なるように要約すれば、装置は、システムに流れる透析液にナトリウムを放出しうる材料を含む透析液システムで使用するように設計される。装置は、ハウジングを介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合しうる材料を収容するハウジングを含む。
【0009】
方法は、透析器を介して透析液を通過させ;ナトリウムを透析液へと放出する材料を収容する第1のハウジングまで透析器から透析液を搬送し;第1のハウジング内の材料を介して透析液を通過させる各工程を含む。この方法は、さらに、透析液からナトリウムイオンを結合する材料を収容する第2のハウジングまで第1のハウジングから透析液を搬送させ;第2のハウジング内の材料を介して透析液を通過させ;第2のハウジングから透析液を透析器に搬送させ戻す各工程を含む。
【0010】
好ましくは、本方法は、第1のハウジングから出て来る透析液中のナトリウムイオン濃度を測定し、測定されるナトリウムイオン濃度が予め決められたレベルより大きくない場合に、第2のハウジングを迂回するように、透析液の一部を誘導する追加の各工程を含む。
【0011】
詳細な説明
図面に概略的に示す透析システムは、装置クレームに挙げた要素の例である部分を有し、方法のクレームに挙げた要素の例である工程にて作動させることができる。かくして、示したシステムは、当業者が特許請求したクレームを使って製造および使用することのできる例を含む。これらは、ここで、請求項に列挙されていない制限を課することなく、特許達成の手段および最良のモード要件に合致するように記載する。
【0012】
図1に示すように、透析システム10の1つの例は、一対のはっきり識別しうる液圧システム12および14を含む。第1の液圧システム12は、透析液を収容する。第2の液圧システム14は、一部示したが、患者の血液を収容する。第1のポンプ16は、透析液システム12を介して透析液を駆動する。第2のポンプ18は、血液システム14を介して血液を駆動する。透析液システム12および血液システム14は、透析器20でオーバーラップするが、さもなければ、相互に分離される。例えば、尿素を含め、不純物は、血液および透析液がともに透析器20を介して流れるにつれ、血液から透析液に抜き取られる。
【0013】
透析液システム12は、さらに、第1のハウジング30と第2のハウジング32とを含む。以降にてさらに十分に説明するように、第1のハウジング30は、第1のハウジング30を介して流れる透析液から尿素を分解する材料34を収容する。尿素の分解は、望ましくない量のナトリウムを生ずるかもしれない。第2のハウジング32は、第2のハウジング32を介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合する材料を収容する。
【0014】
第1の導管40は、透析器20から第1のハウジング30へと伸びる。第2の導管42は、第1のハウジング30から第2のハウジング32へと伸びる。第3の導管44は、第2のハウジング32から透析器20に戻るように伸びる。この配列にて、第1、第2および第3の導管40、42および44は、ポンプ16の影響下にて、図1に示すように、時計方向にシステム12を介して、透析液が循環しうる主要な流路を一周する。詳しくは、主要な流路は、透析器20、第1の導管40、第1のハウジング30、第2の導管42、第2のハウジング32および第3の導管44を含む。
【0015】
図1にてさらに概略的に示すように、第4の導管46は、第2のハウジング32を迂回する。これは、第2のハウジング32を省略することにより、主要な流路とは異なる迂回流路を提供する。かくして、迂回流路は、透析器20、第1の導管40、第1のハウジング30、第2の導管42の一部、第4の導管46、および、第3の導管44の一部を含む。
【0016】
迂回流調節器50は、第4の導管46を介する透析液の流れをコントロールする。調節器50は、簡単なクランプまたはオン/オフバルブであってもよいが、好ましくは、閉鎖条件および開放条件の範囲の間でシフト可能なバルブである。
【0017】
透析液システム12のその他の構成部分は、バブルリムーバ54および振り出し溜56を含む。バブルリムーバ54は、透析液からガスバブルを除去するように作動する。振り出し溜56は、煎じ物をシステム12に供給するためのポンプ58を有する。煎じ物は、透析液に追加されるかまたは補給される必要のある無機質およびその他の血液成分を含有する溶液である。
【0018】
透析器20は、半透過性の膜62を収容するハウジング60を含む公知の装置である。膜62は、血液が膜62の血液側64に沿ってハウジング60を介して1つの方向に流れ、透析液が膜62の透析物側66のハウジング60を介して反対方向に流れるように、血液システム14と透析液システム12との間に配置される。尿素およびその他の血液不純物は、血液側64から透析物側66へと膜62を通過するのに十分なほど小さいが、血球およびその他の血液成分は、膜62を通過するには大きすぎ、血液中に保持される。
【0019】
血液側64から膜62の透析物側66への血液不純物の拡散には、幾つかの因子が影響を及ぼす。1つの因子は、血液側64と透析物側66との間の各不純物についての濃度勾配である。血液側64の不純物の濃度が透析物側66の不純物の濃度より高い場合には、不純物は、その濃度を等しくするために、膜62を横切って拡散するであろう。
【0020】
膜62を横切る血液不純物の拡散に及ぼすもう1つの因子は、膜62を横切る圧力差である。液圧が膜62の1つの側で高い場合、液体は、膜62を横切る圧力を等しくするために、より高い圧力側からより低い圧力側へと膜を横切って流れるだろう。圧力差により膜62を横切って流れる液流は、膜を横切って流れる成分に関して選択的ではない。したがって、水分子、無機質およびその他のより小さい血液成分は、十分な圧力勾配の影響下、膜62を横切って流れるであろう。血液側から透析物側へと膜を横切る圧力駆動流は、限外濾過として公知である。
【0021】
透析器20の下流の第1のハウジング30は、好ましくは、尿素を分解し、かつ、ナトリウムを放出する材料34を収容する吸着剤タイプのカートリッジである。吸着剤カートリッジは、周知である。典型的な吸着剤カートリッジは、例えば、活性炭、ウレアーゼ、ジルコニウムホスフェートおよび/またはジルコニウムオキシドの1つ以上の層を含む数層の材料を収容する。このようなカートリッジにて、ウレアーゼは、尿素をアンモニウムと炭酸塩とに分解する。ジルコニウムホスフェート層または類似の材料は、ナトリウムイオンとの交換にてアンモニウムを結合する。吸着剤カートリッジの種々の層は、当然のことながら、その他の化合物、無機質およびイオンもまた結合する。これらその他の化合物、無機質およびイオンの幾つかは、また、ナトリウムを放出させることができる。これらの材料の組み合わせは、透析液として使用されるシステムに装填される水を飲料に適するようにする。
【0022】
透析器20の下流の第2のハウジング32は、ナトリウムイオンを結合するであろう材料36を収容する。適合した材料の1つのタイプは、ナトリウムイオンが吸着されるにつれて、ナトリウムイオンと交換するプロトンまたは幾つかのその他の生理学的に無害か有害性の低い対イオンを放出するのがよい。このような材料は、典型的には、ナトリウムイオン以外にその他のイオンを結合するであろう。適合した材料の1つの例は、混合床イオン交換樹脂である。この場合の混合床イオン交換樹脂は、緊密に混合され、かつ、同一のハウジングに収容されるカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を含む。カチオンおよびアニオン交換樹脂の緊密な混合は、相補的なカチオンおよびアニオン種との交換にて樹脂表面に吸着する溶液からのイオン種の物質移動を推進する一定な大きい濃度勾配を提供する。有益な濃度勾配は、交換樹脂がイオン結合容量を有する限り持続的に利用可能である。カチオン交換樹脂対アニオン交換樹脂の比は、可能な限り最も有効なナトリウム結合を達成するように変化させることができる。
【0023】
多くの樹脂特性、例えば、容量、架橋度、ポリマーマトリックスの物理的および化学的性質および樹脂中のイオンの数は、第2のハウジング32に使用される樹脂の選択にて考慮に入れるのがよい。カチオン交換樹脂の1つの例は、プロトン負荷スルホン化された球形のスチレンジビニルベンゼンコポリマーである。アニオン交換樹脂の1つの例は、ヒドロキシド負荷された球形の第4級アミンスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである。使用することのできるイオン交換材料の追加の例としては、プロトン負荷されたジルコニウムホスフェート(カチオン交換材料)およびヒドロキシド負荷されたジルコニウムオキシド(アニオン交換材料)が挙げられるが、これらに限定する意図はない。
【0024】
イオン交換材料は、個々のイオンまたは分子についてのそれらの理論的な容量に基づき見積もられることが多い。例えば、材料の特定の体積は、488グレンのNaCl(541mEqのNaCl)の理論的容量を有するのがよい。第2のハウジング32に使用される材料36の所望されるナトリウムイオン結合容量は、透析の間に第1のハウジング30内の材料34によって放出されると予想されるナトリウムの量を評価することによって確定することができる。例えば、第2のハウジング32に使用される材料36のナトリウムイオン結合容量は、第1のハウジング30内の材料34から放出されると予想されるナトリウムに依存し、約800mEq以下、約600mEq以下、または、約500mEq以下であるのがよい。
【0025】
混合床イオン交換樹脂とは別に、カチオンおよびアニオン交換樹脂は、第2のハウジング32内に別個に保つこともできる。カチオン交換樹脂は、第2のハウジング32の第1の半分を占め、アニオン交換樹脂は、第2のハウジング32の第2の半分を占めるのがよい。カチオン樹脂対アニオン樹脂の比は、この樹脂の構成にて変化させることができる。
【0026】
さらに、第2のハウジング32は、ハウジングの1つがカチオン交換樹脂を収容し、他のハウジングがアニオン交換樹脂を収容する並列または直列に連結された2つの別個の区画を含んでもよい。異なるハウジング区画内のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを分離すると、また、アニオン交換材料とカチオン交換材料との質量を独立に変化させることを可能とし、それによって、アニオン交換材料とカチオン交換材料との比を変化させることができる。並列または直列に連結されたハウジング区画内に分離されたカチオンおよびアニオン交換樹脂の全体のイオン結合容量は、単一のハウジング区画内での混合床の使用ほど大きくないかもしれない。かくして、透析システムのデザインが可能な限り小さいフットプリント(footprint)を有するようにナトリウムイオンを結合する第2の区画を想起させる場合には、混合床イオン交換システムは、最も適当な選択であるかもしれない。しかし、サイズが制限されず、かつ、アニオン交換樹脂対カチオン交換樹脂の比を変える能力が所望される場合、並列または直列の配置を使用するのがよい。
【0027】
透析液システム12は、さらに、第1のハウジング30から出て来る透析液中のナトリウムイオン濃度を指示しうる計量計70を含む。計量計70は、例えば、ナトリウムイオン選択性の電極であり、このナトリウムイオン選択性電極は、直接、ナトリウムイオン濃度を測定することができるであろう。しかし、計量計70は、直接、ナトリウムイオン濃度を測定しうる必要はない。例えば、計量計70は、導電率計量計またはpH計量計であってもよい。導電率計量計またはpH計量計の場合、溶液中の合計イオン濃度が測定される。このような測定値は、経時的に測定すると、ナトリウムイオン濃度の変化の指示を提供することができる。誘導、すなわち、非接触導電率の測定もまた可能である。
【0028】
図2にて概略的に示すように、透析システム10は、さらに、ポンプ16および18に関連して作動するコントローラ80、迂回導管46における調節器50、および、ナトリウム計量計70を含む。コントローラ80は、これらの構成部分16、18、50および70を作動するように設計されたハードウエアおよび/またはソフトウエアを有し、いずれかの適当なプログラム可能なロジックコントローラ、または、クレームに挙げたように実行するようにプログラムされるかまたはさもなければ設計されたその他のコントロール装置またはコントロール装置の組み合わせを含むのがよい。
【0029】
透析液システム12は、また、例えば、液流を始動および停止させるための種々のバルブ、液体ポンプまたはその他の液流発生装置、流れを検知し流速を測定するための流速計、透析物の温度をコントロールするための透析液ヒータ、透析液中のアンモニア分子および/またはアンモニウムイオンを検知するためのアンモニアおよび/またはアンモニウムイオンモニター装置、および、患者の透析処置の性能に関与するその他の公知の装置を含んでもよい。このようなその他の装置は、当業者周知であり、比較を明確にするために、図面から省略する。
【0030】
動作にて、コントローラ80は、ポンプ16および18を始動させて、それぞれの液圧システム12および14を介する透析液および血液の循環流を開始することによって透析処置を開始する。透析器60は、ついで、尿素およびその他の不純物を血液システム14から透析液システム12に移動させる。透析液がそのシステム12を横切るにつれて、それは、透析器60から第1の導管40を介して第1のハウジング30へと流れる。透析液は、ついで、それが第1のハウジング30を介して流れるにつれて、材料36と出くわし、その際に、透析液からの尿素の分解は、ナトリウムをその液に加えさせる。第1のハウジング30から出て来る液のナトリウムの濃度は、計量計70によって検知され、コントローラ80にインプットさせる。
【0031】
コントローラ80は、計量計70によって指示されるナトリウム濃度に従い異なるモードで作動可能である。例えば、計量計70によって指示されるナトリウム濃度が予め決められた閾値レベル以下である場合、コントローラ80は、調節器50が十分な開放条件に保たれる迂回モードで作動する。これは、迂回導管46を介して流れることによって透析液の有意な部分を第2のハウジングから迂回させることができ、それによって、透析液の一部に作用するだろうナトリウム結合材料36を迂回させる。ナトリウム濃度の閾値レベルは、例えば、約145mEq/Lであるか、または、ナトリウムの生理学的に許容可能な濃度を画定すると考えられるいずれかのその他のレベル、例えば、約150、155または160mEq/Lであるのがよい。
【0032】
計量計70によって指示されるナトリウム濃度が閾値レベルまたはそれ以上である場合、コントローラ80は、調節器50を十分な開放条件からより少ない開放条件までシフトさせることによって動作の一部迂回モードにシフトする。これは、迂回導管46を介して流れるように透析液のより少ない量比を許容し、対応して、ナトリウムを除去するための第2のハウジング32を介して流れる透析液の量比を多くする。
【0033】
好ましくは、コントローラ80は、閾値レベルより高いナトリウムレベルの予め決められた処理しやすい範囲を参照して、一部迂回モードで作動させる。ナトリウム濃度レベルの処理しやすい範囲は、例えば、約90mEq/L〜約160mEq/Lであるのがよい。コントローラ80は、処理しやすい範囲のナトリウムレベルに相当する開放条件の範囲を通して調節器50をシフトさせることができる。したがって、第2のハウジング32へと誘導される透析液の量比は、そのレベルが処理しやすい範囲を通して増減するにつれて、ナトリウムの検知レベルに正比例して増減する。ナトリウム濃度の検知レベルが処理しやすい最高レベルを上回る場合、コントローラ80は、透析液が第1のハウジング30から透析器60に戻るように流れるにつれて、透析液のいずれもが第2のハウジング32を迂回不能となるようなモードでの動作のための閉鎖条件に調節器50をシフトさせる。
【0034】
透析液システム12の前述の例は、透析液が装填されるように設計されており、透析処置を通してシステム12に収容される液体の体積を有意に増加させることなく作動させることができる。透析液システム12は、かくして、非膨張性の体積を有する。さらに詳しくは、図面に示された、透析器20、ハウジング30および32、導管40〜46およびその他の液圧システム構成部分;および、上記したように含まれうるいずれかの追加の液圧装置は、各々、透析液を収容するかまたは搬送する単一のみの容積測定容量を有するように構成される。これは、水の有意な体積が透析器膜62の血液側64から透析物側66へと通過するのを防止するように、システム12の体積を制限する。好ましくは、システム12の非膨張性体積は、約3リットル以下である。非膨張性の体積は、あるいは、約2リットル以下、約1.5リットル以下、または、約1リットル以下であってもよい。これらは、全体として比較的小さい、好ましくは、携帯用のハウジング、例えば、バックパック等に収容するのに十分なほど小さい透析システム10を可能とするほど比較的小さい。
【0035】
透析システムのもう1つの例100は、図3および4に概略的に示す部分を有する。図1および2の透析システム10と同様に、図3および4の透析システム100は、透析液および血液用の、それぞれ、別個の液圧システム102および104を含む。これらの2つのシステム102および104は、透析システム10内にそれらの相当品12および14の対応する構成部分と実質的に同一の構成部分を有する。このような部分は、図1〜2と図3〜4に同一の参照符号の使用によって示される。しかし、上記した透析液システム12と違って、この透析液システム102は、血液側64から透析器の膜62を通過して透析物側66に到る水の有意な体積を制限する非膨張性の体積を有しない。その代わりに、透析液システム102は、容積測定用の限外濾過システム110を含む。
【0036】
容積測定用の限外濾過システム110は、示した例にて、液流調節器116を有する第5の導管114によって第3の導管44に連結される限外濾過溜112を含む。コントローラ118(図4)は、2つの透析システム100および10に共通な他のコントロール装置と相互関連して作動される以外に、容量測定用の限外濾過システム110内の調節器116と相互関連して作動される。ユーザーインプット装置120(図4)は、また、容量測定用の限外濾過システム110に含まれる。好ましくは、コントローラ118は、クレームに記載したように、インプット装置120に応答して、調節器116をコントロールするのに必要とされるようにさらにプログラムされるかさもなければ設計されることによってのみコントローラ80とは異なる。
【0037】
動作にて、コントローラ118は、システム12内の液を透析器20に戻すというよりもむしろ限外濾過溜112に流すように調節器116を駆動することによってインプット装置120に応答する。これは、膜62の透析物側66で液圧降下を生じさせる。血液側64から透析物側66へ膜62を横切って作用する生ずる圧力差は、血液側64から透析物側66へと移動するために、膜62を介して移動するのに十分なほど小さく水またはその他の血液分子を強要する。
【0038】
実施例
溶液のイオン組成をコントロールするための混合床イオン交換カラムの能力を確定するために、4つの実施例を試験した。使用した混合床イオン交換カラムは、The Purolite Company(Bala Cynwyd,PA)によって製造されたPurolite PCL 2011 MBIEカラムであった。このカラムは、以下の特性を有した:
【0039】
【表1】

【0040】
各実施例について、溶液を調製し、十分に充填したカラムを通して流した。使用した溶液は、種々のイオン種を含んでいた。各実施例にて、カラムを出る溶液、すなわち、溶離液の導電率をモニターした。調製した実施例の溶液は、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを含有していた。溶液の流速もまた変化させた。実施例で使用した溶液の特性および実験流速を表1に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
全ての試験の間、温度がカラム内のイオン交換速度に影響を与えるので、分析する溶液の温度は、透析システムでの使用をシミュレートするために生理学的温度(37℃)に保った。各試験の間に使用する溶液は、均質な濃度レベルを維持するために、十分に混合したままであった。カラムの溶離液の導電率は、YSI Incorporated(Yellow Springs,OH)によって製造されているYSI 3200導電率計量計を使用し、測定した。YSI 3200導電率計量計は、また、透析物溶離液の温度をモニターするためにも使用した。YSI 3200導電率計量計からのデータは、Visual Basic 6内に書き込まれ、RS-232シリアルポートを介してYSI 3200に連結されているコンピュータ試験ソフトウエアを使用し、記録した。
【0043】
実施例1〜4についての実験結果を示すプロットを図5〜8に示す。図5〜8は、カラム溶離液の導電率(曲線300、500および600)または濃度(曲線400)を経時的にプロットする。カラム(302、402、502および602)に供給される溶液の導電率/濃度は、各プロットにて示すように、カラムに供給される溶液の濃度が一定であるので、実験の過程にわたって一定である。図5〜8に示す各実施例にて、幾つかの点で、カラム溶離液の導電率/濃度は、実施例溶液の導電率/濃度より高く上昇する。点304、404、504および604参照。この上昇の正確な原因は、不確かである。この上昇は、恐らく、カートリッジにおける不均一なカチオンおよびアニオン負荷によるらしいと仮定される。1つの実施例の間、pHをモニターすると、そのpHは、実施例溶液の導電率より高い上昇の間に降下した。このpH降下およびカラム製造者によって提供されたその他の情報により、アニオン樹脂が制限樹脂であると考えられる。
【0044】
実施例1は、図5にて示すように、その他の実験の全面にわたる追加の実験パラメータを有する。実施例1にて、溶離液導電率がピークとなるおおよその時間で、インプット溶液を36.4mEg/LのNaCl溶液から蒸留水に切り換えた。垂直線306は、蒸留水の流れが開始され、NaCl溶液の流れが停止される時点を示す。蒸留水の導電率がほぼゼロであると予想されるので、溶離液の電導度は、蒸留水流が開始された少し後におおよそゼロに降下した。溶離液電導度が降下する前の少しの遅れは、蒸留水がカラムを通過し、溶離液として出て来るのにかかる短い時間長さによる。蒸留水の流れが開始される時に溶離液の電導度がゼロに降下するという事実は、使用する混合床イオン交換カラムの特徴を示す。詳細には、結合されたナトリウムのカラムからの漏れが存在せず、このことにより、カラムの容量が使い尽くされた場合でさえ、透析システムにおけるこのようなカラムの使用を安全とする。
【0045】
残る3つの実施例にて、蒸留水の流れは、開始されなかった。実施例2にて、図6で示すように、約18分で、カラム容量に到達し、溶離液濃度が上昇した。約27分での垂直線406は、NaCl溶液の初期供給が使い果たされ、同濃度の新たな溶液が置換される時間を示す。理解されうるように、溶離液の濃度は、インプット溶液のおおよその濃度まで上昇した。実施例3は、図7にて示すように、NaCl溶液のみを使用した以外は、実施例2の濃度曲線と同様の電導度曲線を示す。
【0046】
実施例4は、図8にて示すように、実施例1〜3とは幾分異なる溶離液電導度曲線600を示す。実施例4にて、溶離液電導度600は、インプット溶液602についての電導度値を通り越してむやみに上昇しない。これは、恐らく、インプット溶液の炭酸水素ナトリウムの存在によると考えられる。炭酸水素ナトリウムでは、あるパーセンテージのナトリウムは、プロトンと交換されてから、その炭酸水素塩は、ヒドロキシドと交換され、それによって、炭酸を生ずると考えられる。炭酸は、ついで、水および二酸化炭素に解離されうる。
【0047】
交換されるナトリウムの量および各実施例についての樹脂の初期質量当りの容量は、表2にて示す。各実施例にて、選択したカラムの容量は、カラムの理論容量未満である。交換容量のこのレベルは、Renal Solutions,Inc.(Warrendale,PA)によって製造されている市販入手可能なSORB+カートリッジに匹敵しうる。透析患者の80%がSORB+TMカラムを使用する透析の間に最高約500mEqのナトリウムイオンを生成するであろうことがRenal Solutionsによって確立されている。この数値は、ここで、その技術の有効性のインジケータとしてのみ使用し、個々の透析システムによって要求される500mEq未満またはより高い容量を有するカラムが提供されうる。これらの結果は、混合床イオン交換カラム、例えば、実施例によって使用した混合床イオン交換カラムが、上記したように、透析システムにて使用しうる溶液からナトリウム種を除去するために使用しうることを立証する。実施例1〜4にて使用した異なるインプット流速は、少なくともこれらの流量レベルでナトリウムを吸収するための混合床イオン交換カラムの能力に及ぼすいずれかのインパクトが存在する場合、流速が小さいことを立証する。
【0048】
【表3】

【0049】
上記した説明は、本発明の最良の形態を記載し、クレームに挙げた要素の例を示すことによって、当業者であれば、本発明をなしかつ使用しうるように本発明を記載した。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲の請求項によって定義され、当業者であれば、気がつくその他の例をも包含する。このようなその他の例は、本出願日の前または後のいずれかにて求めに応ずることができ、それらが請求項の文字通りの言葉と異ならない構造要素を有する場合か、または、それらが請求項の文字通りの言葉とわずかな差を有する等価な要素を含む場合には、請求項の範囲内であることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、透析システムの部分を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のシステムの部分を示す概略図である。
【図3】図3は、もう1つの透析システムの部分を示す概略図である。
【図4】図4は、図3のシステムの部分を示す概略図である。
【図5】図5は、実施例1についてのカラム溶離液の経時的な導電率のプロットである。
【図6】図6は、実施例2についてのカラム溶離液の経時的な導電率のプロットである。
【図7】図7は、実施例3についてのカラム溶離液の経時的な導電率のプロットである。
【図8】図8は、実施例4についてのカラム溶離液の経時的な導電率のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液循環装置であって、
(a) 透析器;
(b) その第1のハウジングを介して流れる透析液にナトリウムイオンを放出しうる材料を収容する第1のハウジング;
(c) その第2のハウジングを介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合しうる材料を収容しうる第2のハウジング;および、
(d) 透析器から第1のハウジングへ、第1のハウジングから第2のハウジングへ流れ、かつ、第2のハウジングから透析器へと流れを戻す透析液のための主要な流路の第1および第2のハウジングと透析器とを連結するために、透析器、第1のハウジングおよび第2のハウジング間に伸びるように設計された液圧導管部分;
を含む装置。
【請求項2】
液圧導管部分が、さらに、第1のハウジングから透析器へと流れを戻すことによって第2のハウジングを迂回するための透析液のための迂回流路を画定するように設計された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
さらに、主および迂回流路に沿って透析液の流れをコントロールするように作動する液流調節器を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
さらに、第1のハウジングから出て来る透析液中のナトリウムイオン濃度を指示するように作動する計量計を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
さらに、計量計によって指示されるナトリウムイオン濃度に応答して調節器を作動させる調節器および計量計と相互に関連して作動するコントローラを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
さらに、液圧導管;液流調節器;および、透析器と液流連通した流体容器を含む容積測定用の限外濾過装置を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
透析器、第1のハウジング、第2のハウジングおよび液圧導管部分が、非膨張性の容積を有する透析液循環システムの相互連結部分である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
非膨張性の容積が、約3リットル以下である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
非膨張性の容積が、約2リットル以下である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
非膨張性の容積が、約1.5リットル以下である、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
非膨張性の容積が、約1リットルである、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
第2のハウジングに収容される材料が、混合床イオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
混合床イオン交換樹脂が、約800mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
混合床イオン交換樹脂が、約600mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
混合床イオン交換樹脂が、約500mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
混合床イオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
カチオン交換樹脂が、スルホン化された球形スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
アニオン交換樹脂が、球形第4級アミンスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
システムにて流れる透析液にナトリウムを放出しうる材料を含む透析液システムで使用する装置であって、
そのハウジングを介して流れる透析液からナトリウムイオンを結合しうる材料を収容しうるハウジングを含む装置。
【請求項20】
ハウジングに収容される材料が、混合床イオン交換樹脂である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
混合床イオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
カチオン交換樹脂が、スルホン化された球形スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
アニオン交換樹脂が、球形第4級アミンスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
混合床イオン交換樹脂が、約800mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項20に記載の装置。
【請求項25】
混合床イオン交換樹脂が、約600mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項20に記載の装置。
【請求項26】
混合床イオン交換樹脂が、約500mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項20に記載の装置。
【請求項27】
a) 透析器を介して透析液を通過させ;
b) ナトリウムを透析液へと放出する材料を収容する第1のハウジングまで透析器から透析液を搬送し;
c) 第1のハウジング内の材料を介して透析液を通過させ;
d) 透析液からナトリウムイオンを結合する材料を収容する第2のハウジングまで第1のハウジングから透析液を搬送させ;
d) 第2のハウジング内の材料を介して透析液を通過させ;
e) 第2のハウジングから透析液を透析器に搬送させ戻す;
各工程を含む方法。
【請求項28】
さらに、第1のハウジングから出て来る透析液中のナトリウムイオン濃度を測定し、測定されるナトリウムイオン濃度が予め決められたレベルより大きくない場合に、第2のハウジングを迂回するように、透析液の一部を誘導する各工程を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
予め決められたレベルが、約160mEq/Lである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
予め決められたレベルが、約155mEq/Lである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
予め決められたレベルが、約150mEq/Lである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
予め決められたレベルが、約145mEq/Lである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
第2のハウジングが、混合床イオン交換樹脂を収容する、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
混合床イオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
カチオン交換樹脂が、スルホン化された球形スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
アニオン交換樹脂が、球形第4級アミンスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
混合床イオン交換樹脂が、約800mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
混合床イオン交換樹脂が、約600mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
混合床イオン交換樹脂が、約500mEq以下のナトリウムイオン結合容量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
さらに、透析液を液体容器にそらすことによって容積測定用の限外濾過を行う工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
透析液が、飲用に適した水を含む、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−502449(P2008−502449A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527721(P2007−527721)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/020275
【国際公開番号】WO2005/123230
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(503138237)リナル・ソリューションズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】