説明

透析排水の処理方法

【課題】 透析排水を再利用するための透析排水の回収再利用法の提供。
【解決手段】 人工透析後の透析排水を必要に応じてUF膜処理する工程と、UF膜処理した濾過液をNF膜により1段処理又は多段処理する工程を有しており、NF膜処理した濾過液を再利用し、濃縮液を排水する。NF膜による1段処理又は多段処理において、UF膜処理した濾過液に含まれるブドウ糖濃度が5〜100倍になるように処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院にて透析液を用いた人工透析後の透析排水を処理し、処理水を下水に排水できるようにする、透析排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析で使用する透析液には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等と共にブドウ糖が含有されている。そして、患者に人工透析した後の透析排水は、一般排水として排水処理されている。
【特許文献1】特開平5−38495号公報
【特許文献2】特公平8−24912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、透析排水を下水に排水できるようにするための処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、課題の解決手段として、人工透析後の透析排水を、1段又は多段のNF膜処理により濃縮液と濾過液に分離し、濾過液を排水する、透析排水の処理方法を提供する。
【0005】
なお、NF膜は、「2nmより小さい程度の粒子や高分子が阻止される圧力駆動の膜分離プロセス」(IUPAC)と定義されているものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の透析排水の処理方法によれば、透析排水を処理した処理水は、そのまま下水に排水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1)前処理工程(pH調整工程)
本発明では、必要に応じて、NF膜処理する工程の前(NF膜処理の前にUF膜処理をするときは、UF膜処理する工程の前)に透析排水のpHを調整する工程を設けることができる。
【0008】
透析排水には、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン等が含まれているため、そのまま濃縮すると、スケールが発生する原因になる。このため、塩酸、硫酸等の酸を用いて、pHが酸性領域(好ましくはpH2〜6、より好ましくはpH3〜5)になるように調整する。
【0009】
(2)UF膜処理する工程
本発明では、NF膜処理の前に、必要に応じてUF膜処理する工程を設けることができる。UF膜処理により、除菌、徐濁、徐タンパク質等の処理がなされる。使用するUF膜は、分画分子量1万〜50万のものが好ましく、より好ましくは3万〜15万のものである。
【0010】
UF膜処理した濾過液は、更に用途に応じた適切な処理を付加することで、植物栽培用の栄養液、ペットの飲料用等に使用することができる。
【0011】
(3)NF膜処理工程
NF膜処理工程は、透析排水(UF膜処理工程を設けた場合には、UF膜処理された濾過液)を濾過処理する工程であり、1段処理又は多段処理(好ましくは2〜4段処理)する。
【0012】
NF膜処理工程では、UF膜処理した濾過液に含まれるブドウ糖濃度が5〜100倍になるように処理することが好ましく、より好ましくは前記ブドウ糖濃度が5〜20倍になるように処理する。
【0013】
NF膜処理した濾過液は、更に用途に応じた適切な処理を付加することで、バイオアルコール、バイオ燃料の原料(ブドウ糖)、植物栽培用の栄養液等に使用することができる。
【0014】
NF膜処理した濃縮液は、pHが酸性側であるが、中和する必要がある場合は、アルカリにより中和する。中和によりカルシウム分等が析出した場合には、MF膜又はUF膜で濾過することで、固形分を除去することができる。
【実施例】
【0015】
実施例1
(1)pH調整工程
下記組成の透析液を人工透析した後の排水をモデル排水として、硫酸を用いてpH4に調整した。
【0016】
(モデル透析液)
RO膜(DRA9810,ダイセル・メンブレン・システムズ社製)で水道水を濾過した濾過水10Lに対し、塩化ナトリウム61.4g、塩化カリウム1.5g、塩化カルシウム1.8g、塩化マグネシウム1.0g、酢酸ナトリウム8.2g、炭酸水素ナトリウム21.0g、ブドウ糖10.0gを加えて、完全に溶解させたものをモデル透析液とした。モデル透析液のBOD濃度(ブドウ糖と酢酸の濃度)は974mg/Lであった。電気伝導度は、pH4に調整後で14.52mS/cmであった。
【0017】
(2)NF膜処理工程
pH調整したモデル透析液に対して、NF膜(DRA4510,ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)により、下記運転条件にて濾過処理した。
【0018】
(運転条件)
平膜試験機(ダイセル・メンブレン・システムズ社製)にて、膜面積0.002641mで、人工透析液約450gを濃縮した。運転圧力は2MPa、液温は25℃であった。7.15倍濃縮時で52L/m・Hの濾過流量であった。濾過実験前の純水濾過流量は115.4L/m・Hであり、濾過後の純水濾過流量は110.4L/m・Hで、濾過性能の変化は殆どなかった。
【0019】
(NF膜処理後の濾過液の組成)
NF膜処理後の濾過液と濃縮液の組成は、下記のとおりであった。濃縮液は一般排水として処理した。
【0020】
濾過液のBODは19mg/Lで、濃縮液は6850mg/Lであった。電気伝導度は、濾過液が8.59mS/cm、濃縮液が31.5mS/cmであった。pHは、濾過液、濃縮液ともに4.8であった。
【0021】
濾過液を水酸化ナトリウムで中和してpH7にしたが、透明のままであった。一方、濃縮液を同様に中和してpH7にしたところ、白濁した。この液を中空糸膜(FUS1582,15万分画,ポリエーテルサルホン製,内径0.8mm、外径1.3mm)で濾過したところ、濾過液は透明になった。
【0022】
比較例1
pH8に調整する以外は実施例1と全く同様にして、モデル透析液(BOD977mg/L,pH4の電気伝導度13.99mS/cm)を調製した。このモデル透析液を実施例1と同様にして、NF膜により7倍濃縮したところ、濃縮倍率が5倍を超えると急激に膜性能が低下した。7倍濃縮時には純水濾過流量が32L/m・Hになった。
【0023】
濾過実験前の純水濾過流量は106.1L/m・Hであり、濾過後の純水濾過流量は56.8L/m・Hで、濾過性能が大きく低下した。濾過液のBODは19mg/Lで、濃縮液は6730mg/Lであった。電気伝導度は、濾過液が10.01mS/cm、濃縮液が23.6mS/cmであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工透析後の透析排水を、1段又は多段のNF膜処理により濃縮液と濾過液に分離し、濾過液を排水する、透析排水の処理方法。
【請求項2】
NF膜処理をする前に、透析排水を酸性にする工程を含む、請求項1記載の透析排水の処理方法。
【請求項3】
1段又は多段のNF膜処理により、透析排水に含まれるブドウ糖濃度が5〜100倍になるように処理する、請求項1又は2記載の透析排水の処理方法。
【請求項4】
NF膜の濃縮液のpHを中和した後、MF膜又はUF膜で濾過する請求項2又は3記載の透析排水の処理方法。





【公開番号】特開2008−155116(P2008−155116A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346071(P2006−346071)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】