透析用カテーテルアンカリングシステム
【課題】患者の所定位置に透析用カテーテルを折り曲げることなく保持し、長期間所定位置に留置されるカテーテルと共に使用可能であるアンカリングシステムを提供する。
【解決手段】アンカリングシステム10は、アンカーパッド12及びリテイナー20を含む。アンカーパッド12は、患者の皮膚にリテイナー20を固定する。アンカーパッド12は、患者の皮膚に接着する下部粘着面16と、リテイナー20を支持し粗面となった上面14とを有する。リテイナー20は、アンカリングシステム10内に透析用カテーテルの一部分を受け取り保持するように構成される。リテイナー20は、ベース22とカバー24とを含む。カバー24は、ベース22に解放可能に固定され、開放位置と閉鎖位置との間を可動である。
【解決手段】アンカリングシステム10は、アンカーパッド12及びリテイナー20を含む。アンカーパッド12は、患者の皮膚にリテイナー20を固定する。アンカーパッド12は、患者の皮膚に接着する下部粘着面16と、リテイナー20を支持し粗面となった上面14とを有する。リテイナー20は、アンカリングシステム10内に透析用カテーテルの一部分を受け取り保持するように構成される。リテイナー20は、ベース22とカバー24とを含む。カバー24は、ベース22に解放可能に固定され、開放位置と閉鎖位置との間を可動である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に医療用物品を固定するアンカリングシステムに関する。さらに詳細には、本発明は、患者の所定位置に透析用カテーテルを折り曲げることなく保持し、長期間所定位置に留置されるカテーテルと共に使用可能であるアンカリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
透析に必要な血液交換を容易にするために心臓近くにおいて主静脈内へ挿入されるカテーテルを使用することが、腎臓透析処置において一般的である。透析処置は、通常、定期的に行わなければならないので、このようなカテーテルを、透析と透析との間において所定位置に残しておくことは珍しくない。これによって、各透析前にこのようなカテーテルを患者に再導入しなければならなくなる可能性を低減することができる。
【0003】
しかしながら、長期間このようなカテーテルを所定位置に残しておく際に、他の危険が生じる。もしカテーテルが実質的にいずれかの軸方向に動けば、患者にとって非常に危険になり得る。カテーテルが不注意で引き抜かれると、内出血または出血しかねず、カテーテルが軸方向に前進すると、カテーテルの先端が心臓または他の敏感な内部組織に押し込まれる恐れがある。
【0004】
さらには、このようなカテーテルを患者の所定位置に残しておくことによって、従来、挿入部位近くにおいてテープ貼付による固定が必要である。挿入部位にこのような粘着物を用いることは、不潔物または他の汚染粒子を保有する恐れがあり、患者が感染してしまう可能性がある。さらには、テープ貼付による固定を取り外すことによって、望ましくないことだが、患者のカテーテルが動いてしまう場合がある。
【0005】
挿入部位近くにおいてテープ貼付による固定を用いることについてのさらなる欠点は、定期的な交換が必要なことである。頻繁に、しばしば毎日、患者の皮膚から粘着テープを取り外したり再貼付することによって、固定用品周りの領域の皮膚が痛む場合がある。これは、透析患者は、腎臓の状態についてありがちなコラーゲンの欠乏によってより傷つきやすく擦過傷になりやすいので、透析患者について特に問題となる。このようにカテーテル上にテープを繰り返し貼付することによって、カテーテルの外面に粘着物の残留物が蓄積する場合がある。この残留物は、カテーテル自体に接着する汚染物質となり、挿入部位から感染する可能性が高まり得る。また、この残留物によって、カテーテルが、粘着性を増して医療従事者にとって取り扱いにくくなってしまう場合がある。
【0006】
これらの理由のために、長期間所定位置にカテーテルを残しておく場合患者に使用可能な、改良された透析用カテーテルリテイナーに対する要請がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、患者に、透析用カテーテルのような医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーが、リテイナーのチャネルの内面上に配置された粘着スポットを含む。リテイナーは、可撓性のあるヒンジにより連結されたカバー及びベースを有し、その結果、カバーを開けることができる。チャネルは、リテイナーのベース上に配置された溝とリテイナーのカバー上に配置された対応の溝とによって形成される。リテイナーのベース上方においてカバーを閉じると、2つの溝は、リテイナー中においてチャネルを形成する。粘着スポットは、リテイナーのチャネル中において医療用物品の被保持部分の横または長手方向のいかなる動きも摩擦的に妨げる、粘着性のある面を有することが望ましい。さらに、粘着スポットの横断方向の厚さは、カバーが閉鎖位置にある時に粘着スポットが医療用物品の被保持部分に対して圧迫され、医療用物品がリテイナーのチャネルを通り、それにより、医療用物品の被保持部分の横断方向の動きが妨げられるようなものである。
【0008】
本発明の別の態様によれば、医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーが、リテイナーのチャネル内に圧縮性部材を伴って形成される。これによって、リテイナーが、同じリテイナー内において横断方向の高さが異なる医療用物品を収容可能である。リテイナー内において横断方向の厚さがチャネル開口部より厚いリテイナーを閉じると、医療用物品は、圧縮性部材へ押し込まれ圧縮性部材を横断方向に圧迫する。部材がこのように圧縮されることによって、リテイナーのチャネルと医療用物品との間の取り付けがさらに堅固になる。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、保持用部材が、分岐した医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーのチャネル内に備えられる。保持用部材は、リテイナーのカバーが閉鎖位置になると保持用部材がチャネルの一方の端部を2つの別々の通路に分けるようにこのチャネル内に配置される。このように、保持用部材が医療用物品の2つの遠位の分岐部同士の間に位置するので、透析用カテーテルのような分岐した医療用物品の長手方向の動きを妨げることができる。
【0010】
本発明の別の態様によれば、リテイナーとともに用いるラッチ機構が、カバー上に配置されたキーパーと、リテイナーのベース上に配置されたラッチとを含む。キーパーは、ベース上のラッチの少なくとも一部分と相互係合可能な少なくとも1つの部材を含み、ラッチは、カバーが閉鎖位置になるとキーパーの部材の少なくとも一部分を受け入れる少なくとも1つの凹所を含む。キーパーは、さらに医療従事者が指先で下向きに押すことにより作動させてキーパーのバーを内向きに撓ませラッチの凹所から部材を非係合にすることができる操作者用レバーを含む。
【0011】
リテイナーが、種々の形態を取り得るが、必ずしも全ての形態が上記の態様の全てを含む必要はないことが理解される。従って、例えば、当業者は、本発明が、必ずしも全てのこのような態様及び特徴を用いることなく、本発明の述べた態様及び特徴の一群の1つを用いた方法で実施または実行可能であることを理解するだろう。
【0012】
本発明の好適な形態において、患者に医療用物品を固定するリテイナーは、上述のように、チャネルを形成するベース及びカバーを含み、圧縮性粘着スポットが、このチャネルの面上に配置される。このように、リテイナーは、長手、横、及び横断方向における医療用物品の被保持部分の動きを妨げ、これによって、リテイナーは、横断方向の高さの異なる医療用物品を収容できる。閉鎖位置にリテイナーを選択的に固定するように、ラッチ機構の一部分がベース上に、一部分がリテイナーのカバー上に配置される。
【0013】
本発明の別の好適な形態において、医療用物品用のアンカリングシステムが、アンカーパッドを伴って上述のようにリテイナーを用いて作製される。アンカーパッドは、患者の皮膚に接着する粘着下面を提供し、上面は、リテイナーに接着される。リテイナーは、アンカーパッドの上面にリテイナーを接着する安定面を提供する実質的に円板状のベースを有することが好ましい。この構成によって、患者の皮膚に医療用物品をアンカリング可能となり、また患者から医療用物品を取り外すことなくアンカリングシステムの交換を容易にするようにリテイナーから医療用物品を選択的に解放可能となる。
【0014】
本発明のさらなる好適な形態において、カテーテル法システムは、分岐部位を含んだカテーテルと、患者にこのカテーテルを固定する既述のアンカリングシステムとを含む。カテーテルは、分岐部位の一方の側から近位に延びる単一の細長いボディと、分岐部位の他方の側から遠位に延びる少なくとも2つの細長いボディとを含み、これにより、「Y」字状の接合部、すなわち「Y字状部位」を形成するものである。
【0015】
本発明の別の好適な形態において、カテーテルは、カテーテルのY字状部位の近位に配置されたウィング状部分を含む。このウィング上部分の幅は、リテイナーのチャネルの幅よりも広い。ウィング状部分をリテイナーの近位に隣接して配置することによって、その幅によりウィング状部分がチャネル内へ遠位に移動することが妨げられ、カテーテルの固定がさらに堅固になる。
【0016】
本発明の別の好適な態様において、医療用物品は、上述のようにデバイスを使用することにより患者に対して軸方向に固定される。医療用物品は、リテイナーのベースの溝内に配置され、次に、カバーが医療用物品の上方において閉じられる。このように、医療用物品は、アンカリングシステムのリテイナー内に保持される。次に、アンカリングシステムを患者の皮膚の適切な場所に接着して、これにより、患者と医療用物品との間におけるいかなる動きも妨げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る、カバーを開けたアンカリングシステムの斜視図を示す。
【図2】カバーを閉めた図1のアンカリングシステムの斜視図である。
【図3】図1のアンカリングシステムの分解組立斜視図である。
【図4】図1のアンカリングシステムのリテイナーの拡大斜視図である。
【図5】図4のリテイナーの上面図である。
【図6】図4のリテイナーの近位側面図である。
【図7】図4のリテイナーの右側面図である。
【図8】カバーを閉めた、図4のリテイナーの斜視図である。
【図9】カバーを開けた、図8のリテイナーの斜視図である。
【図10】カバーを開けた、図5の10−10線に沿ったリテイナーの断面図である。
【図11】カバーを閉めた、図10のリテイナーの断面図である。
【図12】ラッチを解除しカバーを閉めた、図10のリテイナーの断面図である。
【図13】ラッチを解除しカバーを若干開けた、図10のリテイナーの断面図である。
【図14】リテイナー上の所定位置に典型的な透析用カテーテルを示した、図4のリテイナーの斜視図である。
【図15】カバーを閉じた、図14のリテイナーの斜視図である。
【図16】患者に使用している図1のアンカリングシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のさらなる態様、特徴及び利点が、以下に続く好適な実施形態についての詳細な説明から明らかとなる。
【0019】
次に、本アンカリングシステムの好適な実施形態の図面を参照して、本発明の、上述した他の特徴を説明する。図示したアンカリングシステムの実施形態は、例示を目的とするものであって、本発明を限定するものではない。図面は以下の図を含む。
【0020】
以下の説明及び例が、典型的な透析用カテーテルを伴い使用されるという前提で開示する本アンカリングシステムの好適な実施形態を詳細に示す。しかしながら、本発明の原理は、典型的な透析用カテーテルに限定されない。説明するアンカリングシステムが、それらに限定はされないが他のカテーテル、流体送達チューブ、及び電気ワイヤーを含んだ、他のタイプの医療用物品を伴い使用可能であることが、本開示において当業者に理解されよう。当業者はまた、ここに開示する本装置及びシステムについてさらなる適用を見いだすことができる。従って、透析用カテーテルに関連した、アンカリングシステムの図解及び説明は、アンカリングシステムの1つの可能な適用の単なる例示に過ぎない。
【0021】
アンカリングシステムのこれらの構成要素(図1参照)についての説明の一助となるように、以下の座標用語を使用する。「長手方向軸線」は、アンカリングシステム10により保持されたカテーテル部分に概ね平行である。「横方向軸線」は、長手方向軸線に垂直であり、図1に見られるように、アンカーパッド12の面に概ね平行である。「横断方向軸線」は、長手方向軸線と横方向軸線とに垂直に延びる。さらには、ここで使用されるように、「長手方向」は、長手方向軸線に実質的に平行な方向のことであり、「横方向」は、横方向軸線に実質的に平行な方向のことであり、「横断方向」は、横断方向軸線に実質的に平行な方向のことである。ここで用いられる「軸線の」という用語は、カテーテルの軸線のことであるので、ここで使用される「長手方向の」という用語と実質的に同義である。さらに、「近位」及び「遠位」という用語は、本アンカリングシステムを説明するために使用するが、典型的適用についての説明に合わせて使用される。よって、近位及び遠位は、患者の身体の中心を基準として使用される。「上部」「下部」「頂部」「底部」などの用語は、また、本アンカリングシステムを説明するために使用するが、実施形態の図示した向きを基準として使用される。次に、本アンカリングシステムの好適な実施形態及びそれに伴う使用方法についての詳細な説明を以下に行う。
【0022】
図1に示したように、説明する実施形態は、アンカーパッド12とリテイナー20の、2つの主要な構成要素を有したアンカリングシステム10を含む。上に特に言及したように、アンカリングシステムは、1つまたはそれ以上の医療用物品(例えば、透析用カテーテル)もまた含むカテーテル法システムの一構成要素を形成可能である。
【0023】
リテイナー20は、アンカーパッド12上に装着され、アンカーパッドは、通常パッドの底面に粘着物を配置することにより、患者の皮膚に固定される。リテイナーは、医療用物品を受け入れ所定位置に固定する。リテイナー自体は、ベース、カバー、少なくとも1つの粘着スポット、及び1つまたはそれ以上の保持用部材を含めて、いくつかの部分構成要素を備える。医療用物品の解放可能な係合は、粘着スポットと、ベース及びカバーとの間における協働によって、少なくとも一部分において行われる。カバーは医療用物品が固定された後に開口可能なので、アンカリングシステムを交換するまたは患者の移動を容易にするというような、種々の必要な目的のために医療用物品をアンカリングシステムから取り外すことができる。このようなアンカリングシステムからの医療用物品の取り外しは、必要に応じて、アンカリングシステムを患者から取り外すことなく行うことができる。
【0024】
医療用物品は、リテイナーのチャネル内において医療用物品の固定された部分に沿って横方向及び横断方向の圧力を組み合わせることによって、所定位置に保持される。図示した実施形態において、チャネルは、リテイナーのベース及びカバー上に配置された溝同士の間に形成される。横方向の圧力は、溝の壁と、保持された医療用物品のY字状部位の側面と間において付与され、横断方向の圧力は、チャネルの底部及び上部と、粘着スポットとによって付与される。カバーが閉じられラッチ機構により閉鎖位置に固定されると、これらの力は、チューブの横方向または横断方向のいずれかにおける実質的な動きを妨げる。チューブの長手方向の動きは、粘着スポットのカテーテルに対する摩擦的力によって、かつ、チャネル自体のテーパーのついた形状によって、妨げられる。
【0025】
さらには、説明する実施形態は、アンカリングシステムが、種々の大きさの医療用物品を受け入れ固定するために使用できるような多適用性を有した特徴を提供する。固定力は圧縮性のある粘着スポットにより一部分に与えられるので、横断方向の高さが異なる種々のカテーテルを収容可能である。さらには、粘着スポットの摩擦性によって、チャネルは、チャネル内にカテーテルを保持する剪断力をさらに与えることができる。
【0026】
アンカリングシステムはまた、カテーテルと解放可能に係合することが望ましい。これによって、アンカリングシステムは、種々の既知の目的のいずれかのためにカテーテルを取り外すことなく、カテーテルから非係合となり得る。例えば、医療サービス提供者は、患者からカテーテルを取り外さずにアンカーを交換したり挿入部位を洗浄したりするために、アンカリングシステムを取り外したい場合がある。カテーテルが長期間患者の所定位置にある状況において、最適な位置におけるカテーテルの固定を維持するために周期的にアンカーを交換すると有利である。これらの目的のために、患者からカテーテルを取り外さずに、アンカリングシステムからカテーテルを非係合にできることが望ましい。
【0027】
本アンカリングシステムの詳細を説明する前に、以下の典型的な実施形態を理解しやすくするために、透析用カテーテルについて簡単な説明をする。図14から最もよく理解されるように、カテーテル8は、大静脈のような、胸腔内の太い静脈内に挿入されることになる近位先端を含む。カテーテルの内部は、2つの別個の管腔を有し、それぞれは、近位先端近くに開口部を有する。カテーテルは、2つの管腔が分かれて、その上においてそれぞれがカテーテルの別個の分岐部を有するY字状部位112を含む。これらの分岐部の管腔は、Y字状部位112の近位側において同軸のまたは横並びのいずれかの構成をとって、主要なカテーテルボディ118を形成する。Y字状部位112の遠位側において、ウェブが、Y字状部位112に隣接する場所において2つの分岐部114と116との間を延び得る。Y字状部位112はまた、内部において管腔が分岐する、概ね三角形のプラスチック製ハウジングを含み得る。
【0028】
次に図1から図3を参照すると、アンカリングシステム10は、アンカーパッド12及びリテイナー20を含む。アンカーパッド12は、患者の皮膚にリテイナー20を固定する。アンカーパッド12は、患者の皮膚に接着する下部粘着面16と、リテイナー20を支持し粗面となった上面14とを有する。リテイナー20は、アンカリングシステム10内に透析用カテーテルの一部分を受け取り保持するように構成される。示した実施形態において、リテイナーは、ベース22とカバー24とを含む。カバー24は、ベース22に解放可能に固定され、開放位置と閉鎖位置との間を可動である。
【0029】
アンカーパッド
図1から図3は、望ましくは上部発泡層(例えば独立気泡ポリエチレンフォーム)および下部粘着層を有した積層構造体を含むアンカーパッド12を示す。下部粘着層は、アンカーパッド12の下面16を構成する。下面16は、望ましくは、医療用グレードの粘着物であり、特定の適用により異なるが、発汗性または非発汗性のいずれかとすることができる。粘着層を有したこのようなフォームは、オハイオ州ペインズヴィルのAveryDennisonから市販品を入手可能である。図示していないが、アンカーパッド12が、粘着層に加えて、患者の皮膚にアンカーパッド12をさらに固定する縫合孔を含み得ることを理解されよう。
【0030】
代替実施形態において、親水性の粘着物が、アンカーパッド12を患者の皮膚に装着するためにアンカーパッド12上に使用可能であると有利である。親水性粘着物は、取り外し時に患者の皮膚を傷つけにくい。これは、透析患者によくある、コラーゲンが欠乏した患者のような、皮膚がより過敏であるかまたは傷つきやすい患者にとっては、特に重要となり得る。
【0031】
図3に示したように、上部フォーム層の面は、アンカーパッド12の上面14(図2を参照)を構成する。上面14は、低電荷でフォームをコロナ処理することにより粗面にすることができる。粗面のまたは多孔の上面14は、ベース22とアンカーパッド12との間の(後述する)粘着接合の質を向上させることができる。その代わりに、可撓性のあるアンカーパッド21は、医療用グレード粘着下部層と、内側フォーム層と、上部紙または他の織布または不織布層とを含み得る。
【0032】
取り外し可能な紙またはプラスチック製の剥離ライナー18が、使用前において粘着下部面16を覆っていることが望ましい。ライナー18は、引き裂きに抵抗することが好ましく、患者の皮膚へのパッドの接着を容易にするように複数の片に分割されることが望ましい。示した実施形態において、ライナー18は、一度に粘着下部面16の半分のみを露出するために、可撓性アンカーパッド12の中心ライン19に沿って分割される。
【0033】
横方向に測定したライナー18の長さは、アンカーパッド12の中心ライン19を超えて延び、ライナー18上において折り曲げられるかまたはライナー18上へ折り返される。このように折り曲げた部分は、粘着下部面16からライナー18を取り外すことを容易にするプルタブ17を画定する。医療従事者が、下部面16からライナー18を分離させるように掴み引っ張ることにより、プルタブ17を用いる。プルタブ17は、医療従事者が粘着層からライナー18を分離するためにライナー18の角の縁または他の部分をつまむ種々の要件を克服する。プルタブ17は、当然、種々の形態に設計可能である。例えば、プルタブ17を、アンカーパッド12の中心ライン19に沿って配置する必要はなく、それよりも、患者の皮膚の特定部位においてアンカーパッド12を用いやすいように、プルタブ17を、アンカーパッド12の種々のラインに沿って配置することができる。例えば、関節におけるような不意に曲がる患者の皮膚の領域では、アンカーパッド12の中心ライン19に沿ってというより横方向端部の一方に向かって位置調整する必要があり得る。
【0034】
図3において最もよく分かるように、アンカーパッド12はまた、ベース22の最も近くにおいてアンカーパッド12の中央を狭める、一対の対向した凹部分13、15を含むことが望ましい。その結果、アンカーパッド12の横方向側部の、患者の皮膚に対して安定性と粘着とを高める接触面積が大きくなる。
【0035】
リテイナー
次に図4から図9を参照すると、リテイナー20は、主としてベース22及びカバー24により形成された剛性のある構造体を含む(図4を参照)。図示した実施形態において、ベース22及びカバー24は、一体リテイナー20を含むように一体に形成される。これは、当業者に周知の種々の方法のいずれかで行うことができる。例えば、リテイナー20全体は、製造コストを低減するために射出成形可能である。
【0036】
さらに、以下の説明から明らかとなるように、ラッチ80およびヒンジ40のようなリテイナーのいくつかの特徴は、可撓性であることが望ましい。適切な剛性を有するが可撓性のある材料は、例えば、限定はしないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ナイロン、オレフィン、アクリル、ポリエステルのような、プラスチック、ポリマーまたは複合材料、および成形可能なシリコン、熱可塑性ウレタン、熱可塑性エラストマー、熱硬化性プラスチックなどを含む。図示したリテイナー20は、ポリエチレンまたはポリプロピレン材料を用いて射出成形により形成されることが好ましい。しかしながら、他の材料を使用可能であって、リテイナー20は、一体でないベース22および24を含み得る。
【0037】
図4を参照すると、示した実施形態におけるベース22は、概ね平行六面体の細長いボディを含む。しかしながら、ベース22は、特定の適用に適合させるために、円形、四角形、三角形等の幅広い種類の形状に構成可能である。さらに、ベースの下面は、実質的に円板状であることが望ましい。これによって、アンカーパッドの上面にベースの下面を接着する際に使用するリテイナーの底面が大きくなる。この円板状の下面によって、リテイナーとアンカーパッドとの間の接着が改善されるとともに、患者の皮膚上におけるリテイナーに対する安定性が増す。
【0038】
ベース22の長手方向の寸法がカテーテル8を長さに沿って安定させるのに十分長いと有利である。このようにして、保持されたカテーテル部分の長手方向の長さは、カテーテル8がリテイナー20に対して揺動するのを妨げる程度(すなわち、リテイナー20がカテーテルの支点として機能するのを妨げる程度)十分なものとなる。さらに、ベース22の横方向の寸法は、医療サービス提供者が容易にかつ自然にベース22を握り得るようにすることが望ましく、ヒンジ40とラッチ機構80の一部分を配置する空間も提供する。
【0039】
図4に示すように、ベース22は、第1の側部26と第2の側部28とを含む。第1の側部26は、概ねベース22の一方の横方向端部に位置し、第2の側部28は、ベース22の対向した横方向端部に位置する。
【0040】
溝30が、第1の側部26と第2の側部28との間においてベース22上に形成される。示した実施形態において、溝30の断面は、概ね曲線状である。図5において最もよく分かるように、下方の溝の幅は(すなわち横方向において)、長手方向の長さに沿って変化する。すなわち、示した実施形態において、下方の溝30の側壁は、リテイナー20の一方の長手方向側部からリテイナーの他方の長手方向側部へ概ね直線状に相互に広がっている。
【0041】
リテイナー20のベース22は、アンカーパッド12の上面14に接着される。ベース22は、望ましくは、シアノアクリレートまたは他の結合材料のような溶液型結合接着剤により上面14に固定される。1つのこのような接着剤は、MinnesotaMining andManufacturing Company (3M)からPart No. 4693として市販されている市販品を入手可能である。
【0042】
図4においても分かるように、カバー24は、望ましくはベース22の平面サイズおよび形状と実質的に同一の広がりを有する細長い形状である。しかしながら、カバーは、ベース22と正確に同じサイズおよび形状である必要はない。例えば、カバー24は、ベース22の横方向、横断方向、または長手方向の縁のいずれかを超えて延びる大きさとすることができる。カバーはまた、ベース22の特定の横方向、横断方向、または長手方向の縁へ延びない大きさとしてもよい。カバーはまた、ベース22またはベース22のどこかの部分の上に、かつ/または、ベース22またはベース22のどこかの部分の周りに、スカートまたはフランジ部を含み得る。
【0043】
カバー24は、ベース内において下方溝30を覆うのに(図8を参照)、かつ、後述するように、ベース22とカバー24との間において作動するラッチ機構80の一部分及びヒンジ40を収容するのに十分な大きさであることが望ましい。カバー24はまた、操作しやすい寸法であることが望ましい。例えば、該カバーのサイズは、医療従事者が容易に掴めるものである。
【0044】
カバー24は、図4に示すように、概ねカバー24の一方の横方向端部に位置する第1の側部32を含む。従って、カバーの第1の側部32は、概ねベース22の第1の側部26に対応する。カバー24はまた、第2の側部34を有する。第2の側部34は、第1の端部の反対側にある、概ねカバー24の横方向端部へ向かって位置し、概ねベース22の第2の側部28に対応する。
【0045】
上方溝36が、カバー24の第1の側部32と第2の側部34との間においてカバー24の内側に形成され、概ねベース22内に形成された下方溝30に対応する(図5及び図6を参照)。上方溝36の横方向の幅はまた、長手方向長さに沿って変化する。すなわち、示した実施形態において、図5に示したように、上方溝36の側壁は、カバー24の一方の長手方向端部から他方の長手方向端部へ概ね直線状に相互に広がる。
【0046】
カバー24は、可撓性のあるカップリングまたはヒンジ40によってベース22に可撓性を伴って結合される。カップリング40は、可撓性を有したバンド42を含むことが望ましく、該バンド42は、後述するようにこれらの部分の係合や係合解除を可能にするためにベース22に対するカバー24の回動動作を可能としながら、ベース22にカバー24を機械連結するようにかなり多数の形状をとり得る。示した実施形態において、バンド42は、可撓性材料から、望ましくはベース22及びカバー24が含むものと同じ材料から形成される。有利には、ヒンジは、上に述べたように、一体部材を形成するようにベース22及びカバー24と一体成形される。ヒンジ40は、ベース22及びカバー24の外側縁に配置されるが、ヒンジ40は、ベース22またはカバー24の最も端に横方向に配置する必要はない。
【0047】
図5から最もよく理解されるように、長手方向に測定したヒンジ40の幅は、カバー24をベース22に係合させたり係合を解除したりする際に、いくらかの余裕すなわち遊びが得られるように、ベース22またはカバー24のいずれの幅より小さいことが望ましい。すなわち、この形状によって、ヒンジ40が、いくらかの製造上の公差を補償するようにある程度ねじれ得るが、ヒンジ40の長手方向の寸法は、少なくともベース22及びカバー24と同じにできる。
【0048】
ヒンジ40は、カバー24及びベース22の共通の対応する外面に沿って一体に形成されることが望ましい。示した実施形態において、ヒンジ40は、カバー24を閉めると概ねU字状であり、ベース22およびカバー24から横方向にリテイナー20の側部へ延びる。ヒンジの横断方向の高さに対応するギャップが、ベース22とカバー24との間に存在する。しかしながら、このギャップは、異なるヒンジの設計を用いることによって、いくつかの適用のためのリテイナーから縮小または排除することができる。
【0049】
ヒンジ40によって、カバー24は、開放位置と閉鎖位置との間を動き得る。図4に示した開放位置は、ベース22及びカバー24内において横断方向に溝30、36を露出して、それによりベース22とカバー24とを間隔をあけて配置するという特徴を有する。リテイナー20は、開放位置にある時には、透析用カテーテル8の一部分(例えば、Y字状部位112)を受け入れ可能である。図8に示した閉鎖位置は、カバー24が、下方溝30の上方に上方溝36が配置されるようにベース22と接触してまたは接触しそうな状態で位置するという特徴を有する。リテイナー20は、閉鎖位置にある場合には、カテーテルの受け入れ部分を囲む。
【0050】
ヒンジ40は、図8及び図9により示すように、閉鎖位置と全開位置とを確立するためにベース22に対してカバー24を180°動くようにする必要はない。例えば、ヒンジ40は、リテイナー20内へ横断方向にカテーテルを挿入するのに十分な空間をなお提供しながら、ベース22とカバー24との間をそれより少なめに(例えば90°)動き得る。
【0051】
ベース22及びカバー24内に形成された溝30、36は、リテイナー20を閉じるとチャネル60を画定する。チャネル60は、カテーテルの一部分またはある長さを受け入れ可能であり、概ねカテーテル被作用部分を収容し把持し固定するように形成される。チャネル60は、特定の医療用物品を収容するために、前述のように溝30、36と関連付けて種々の形態にすることができる。示した実施形態において、チャネル60の断面形状は、近位端62において概ね円形であり、(後述するが、示した実施形態では、遠位端64は、一対の協働ポストにより分割されているものの)遠位端64において概ね楕円形である。チャネルは、より小さい近位端62からより大きい遠位端64へ断面サイズにおいて平滑にテーパーがつけられている。その結果、チャネル60は、図5において溝30、36の形状を詳しく見ることにより最もよく理解されるように、概ね先端を切ったV字状である。
【0052】
示した実施形態において、チャネル60の側部は、概ね真っ直ぐであり相互に広がっている。しかしながら、チャネル60の壁(と、従ってカバー及びベースの溝と)は、真っ直ぐにする必要はない。このチャネル形状は、後述するように、チャネル中におけるカテーテルの動きを妨げるようにチャネル60内におけるカテーテルの保持を促進する。
【0053】
チャネル60が適用により異なる(すなわち、リテイナーが使用されるように設計された、医療用物品の被保持部分の形状によって異なる)種々の形状をとり得るが、チャネル60は、上述のように、カテーテル用の支点として機能するというよりは、カテーテルを安定させるのに十分な程度の、長手方向における長さを有する。すなわち、リテイナーは、カテーテルをねじれさせることなく、横方向、長手方向及び横断方向におけるカテーテルの動きを妨げるのに(すなわち、カテーテルの偏揺れ、縦揺れ及び軸方向の動きを妨げるのに)十分な程度のカテーテル長さを受け入れる。さらに、チャネル近位開口部の広口形状(すなわち大楕円形状)によって、カテーテルがねじれる可能性のある縁または面が排除される。
【0054】
カバー24を閉じると、カテーテル8の一部分が、(図15に示すように)リテイナー20内に捕らえられる。従って、リテイナー20は、カテーテル8の被保持部分の横方向及び横断方向の動きを、妨げなくても、少なくとも制限はする。
【0055】
さらに、図9に示すように、粘着スポット200をまた、上方溝内においてカバーの内側に配置可能であると有利である。この粘着スポットは、接着剤ドットの形態をとり得る。このような接着剤ドットは、剪断力に対して高抵抗を示すとともに残留物を残さずにカテーテルのY字状部位から剥がし得る材料からなることが望ましい。このような接着剤は、品番GD−06の「SuperHigh TackGlue Dot」としてウィスコンシン州ニューベルリンのAll−PakInc.から販売されている。複数の接着剤ドットを使用可能であるか、または単一の接着剤ドットをリテイナーのチャネルの一方の側のみに配置可能である。
【0056】
接着剤スポット200は、カバーの溝36とベースの溝30の両面上に点線で示す(図4を参照)接着剤ドットとして全図面に示されている。複数の接着剤ドットを使用する必要はなく、リテイナー20とカテーテルとの間の摩擦的力と横断方向の力とを高めるために、カバー溝またはベース溝のいずれかに配置される単一の接着剤ドットを使用可能であると有利である。
【0057】
さらには、接着剤スポット200は、単一の接着場所とする必要はない。さらなる好適な設計において、接着剤スポットは、Kraton(登録商標)高分子化合物のような、弾性および圧縮性を有し変形可能な材料からなる領域にすることができる。このような化合物には、GLSCorporationから入手可能な Dynaflex(登録商標)G2706、および他の熱可塑性エラストマー或いは、シリコンまたはウレタンエポキシが含まれる。
この領域はまた、丸くする必要はない。さらなる好適な設計において、チャネルの大きな領域が、Kraton(登録商標)のような適切な材料で覆われ得る。例えば、下方溝30の全面は、有利には、カテーテルとリテイナーとの間に追加の牽引または横断方向のバイアスを提供するように、接着剤の薄い層で覆われてもよい。
【0058】
本発明の種々の好適な実施形態とともに使用するために適切な接着剤スポットを生成する他の手段は、限定はしないが、チャネル表面の摩擦性または圧縮性を調節するためにチャネル表面の一部分を化学的にまたは電気で処理すること、リテイナーの溝の一部分上へ粘着コーティングを噴霧するかまたは塗布すること、チャネル部分に剥離型粘着部材を付着させること、チャネル表面の一部分へ、Kraton(登録商標)のような粘着または圧縮性材料からなる領域を射出成形すること、または当該技術において既知の他のこのような手段が含まれる。
【0059】
カテーテル8をチャネル60内に固定した時にカテーテル8の長手方向の動きを妨げることは、チャネル60と連動する1つまたはそれ以上の保持機構により行われることが望ましい。図5、図6及び図7を参照すると、1つのこのような保持機構は、チャネル60自体の形状を含む。チャネル60の先端を切ったV字状と、カテーテルのY字状部位112の対応の形状との間における相互作用によって、近位の長手方向の動きが妨げられる。
【0060】
図14から最もよく理解されるように、チャネル60の近位端62は、カテーテル8のメインボディ118のみを受け入れる大きさである。チャネル60の遠位端64は、Y字状部位112の遠位側部においてカテーテルの分岐部114及び116を受け入れる大きさである。遠位端64と近位端62との間において、チャネル60は、カテーテルのY字状部位112を受け入れるように形成される。
【0061】
示した実施形態において、チャネル60の各側部は、チャネルが遠位端におけるよりも近位端において狭くなるように角度がつけられる。これは、チャネルの側部66、68に、リテイナーの近位端に向かって広がるように角度をつけることによって達成される。示した実施形態はチャネルの各側部に同じ角度を用いるが、いくつかの適用では、チャネルの第1の側部と第2の側部について異なる角度を有したチャネルを作製することが有利となり得る。
【0062】
チャネル60の側部66、68は、(上述のように凸部を含み得るが)テーパーをつけた形状にまたは直線状に変化することが望ましい。チャネル60の第1の側部66と第2の側部68との間において広がる角度は、望ましくは約10°と約70°との間であり、さらに好ましくは約30°と約45°との間であり、図14に見られるように、概ねカテーテルの2つの分岐部114、116が、交わる角度に匹敵する。
【0063】
カテーテルのY字状部位112はメインボディ118より断面が大きいので、Y字状部位112は、通常、リテイナーチャネル60のより小さい近位端62から近位に引っ張ることはできない。従って、チャネル60の形状は、近位方向におけるカテーテルの長手方向の動きを妨げる。
【0064】
当然だが、上述のようにチャネルの形状を変えることもできる。例えば、チャネル60の第2の側部68は、第1の側部66とは異なる曲線状にすることができ、かつ/または、受け入れられたカテーテル部分に相当する部分と協働するかまたはその上に突き当たるように穴、突起または同様の幾何学的変形部を含み得る。さらに、チャネルの側部を相互に対称的にする必要はない。第1の側部66または第2の側部68のいずれか、または両方の側部は、カテーテル8の被保持部分の長手方向の動きを妨げるように、受け入れられたカテーテル部分の軸線に対する間隔を変化させることができる。しかしながら、チャネルは、リテイナーが保持機構について少なくとも別の形態を含む場合には、直線状または均一の断面形状を有し得る。
【0065】
リテイナーのチャネル60の表面とカテーテルのY字状部位112との間の相互作用はまた、チャネル60中における長手方向の動きを妨げる摩擦的力を生じる。しかしながら、カテーテル8とリテイナー20との間の干渉の程度は、カテーテル8を著しく閉塞させるほど大きくしてはならない。
【0066】
粘着スポット200は、追加の保持機構を形成する。カバーを閉鎖位置に動かすと、接着剤ドットまたは他の粘着スポットが、カバーの内面と、透析用カテーテルまたは他の医療用物品のY字状部位の上面との間で捕捉される。粘着スポットは、一度カバーとカテーテルとの間において押し付けられると、接触する2つの面同士の間におけるいかなる剪断力による動きをも妨げやすくなる。このようにして、粘着物は、リテイナー内におけるカテーテルの長手方向及び横方向の動きに抵抗する。
【0067】
図9に示すように、チャネル60内へ突出する保持用構造体73を、カテーテルの軸方向の動きを妨げるために使用することもできる。保持用構造体73は、アンカーパッド12に対して横断方向に配置される直立部材を形成する。保持用構造体73は、遠位方向におけるカテーテル60の軸方向の動きを妨げるために、リテイナー20により保持されたカテーテルのY字状部位112の分岐部同士の間に位置するように形成される。従って、示した実施形態において、テーパーをつけたチャネル形状と保持用構造体73とを組み合わせることによって、近位及び遠位の両方向におけるカテーテル8の被保持部分の軸方向の動きが妨げられる。
【0068】
保持用構造体73は、遠位方向におけるカテーテル8の軸方向の動きを妨げるのに十分な程度の高さを有することが望ましい。この目的のために、保持用構造体73は、横断方向に、該構造体が配置される場所におけるチャネル60の高さの少なくとも約25%の高さを有する。本適用において、保持用構造体は、チャネル60の下端から上端まで延びることが望ましい。
【0069】
示した実施形態において、保持用構造体73は、ベースポスト74とカバーポスト78とによって形成される。ベースポスト74は、ベース22と一体形成されることが望ましく、チャネル60の遠位端64へ向かってチャネル60内に配置される。カバーポスト78は、チャネル60の遠位端64においてカバー24と一体形成される。示した実施形態では、ベースポスト74とカバーポスト78とがチャネル60内に位置するが、ポスト74、78は、チャネル60の遠位端64の外側に配置可能である。
【0070】
1つの形態において、ベースポスト74は、Y字状部位の分岐部114と分岐部116との間を延びるカテーテル8のウェブ(図14を参照)の近くに位置するかまたはそれに接する位置へ上端が延びる大きさである。示した実施形態において、ポスト74の上端は、図6において最もよく分かるように、概ねベース20の第1の側部26、第2の側部28の上面と同一平面に配置する。カバーポスト78は、ベース22に隣接して位置するカバーの第1の側部32と第2の側部34との内面により画定される平面と概ね同一平面である場所へ同様に延びる。
【0071】
図6において最もよく分かるように、チャネル60内におけるポスト74の横方向の位置は、透析用カテーテル8の膨張内腔分岐部114と排出内腔分岐部116との間の合流点と一致する。ポスト74は、チャネルの遠位端64においてチャネル60を分割する。
【0072】
カバーポスト78は、ベース22上のポスト74について上述した方法と同様の方法でカバー24上において形成され配置される。従って、示した実施形態において、ポスト78は、概ねベースポスト74に対向する。この特別の設計によって、図5から理解されるように、ポスト74、78と、チャネル60とを組み合わせることによって、チャネルの近位端62と遠位端64との間に概ねY字状の凹所が画定される。
【0073】
示した実施形態において、カバーポスト78の横断方向の高さは、ベースポスト74よりも低い。しかしながら、ポスト74、78を同じ高さにするか或いは、カバーポスト78をベースポスト74より長くすることができる。図11において最もよく分かるように、ポスト74、78は、境界面に形成される狭いギャップを除いて、横断方向にチャネル60を跨ぐことが望ましい。このギャップは、後述する理由のために、Y字状部位の分岐部114、116間においてカテーテルウェブの厚さより若干薄くすることができるとともに、カバー24を閉じるとヒンジ40により与えられるギャップに相当する。
【0074】
従って、ポスト74、78は、カテーテルY字状部位112がチャネル60内に配置されると、カテーテル8のこれらの2つの分岐部114、116の間を延びる。ポスト74、78はともに、遠位方向にカテーテル8の長手方向の動きに対する止め部として機能し得る。すなわち、遠位方向における長手方向の動きによって、カテーテルのY字状部位112がポスト74、78と接触する。剛性を有した構造のポスト74、78が、さらなる長手方向の動きを妨げる。
【0075】
ポスト74、78は種々の断面形状にすることができるが、ポスト74、78は、望ましくは本適用において、Y字状部位112における2つのカテーテル分岐部114、116間の空間に相当する概ね三角形の断面形状を有する。しかしながら、ポストの近位縁は、丸くして、この場所でカテーテル8とリテイナー20との間において角張った部分との接触をしないようにすると有利である。
【0076】
ポスト74、78はまた、横断方向にポスト74、78を相互ロックするとともにカテーテル8が端部間においてギャップから引き抜かれないようにする相互係合エレメントを含み得る。示した実施形態において、ピンまたは突起部81と対応の受容部79とが、ポスト74、78の相互に対向した端部同士の間に配置される。図9において最もよく分かるように、受容部79は、カバーポスト78の横断方向端部に形成され、ポスト78の境界面から横断方向にポスト78内へ延びる。突起部81は、ベースポスト74の横断方向軸線に平行方向にベースポスト74の端部から延びる。突起部81は、受容部79内に嵌合するように形成される。カバー24を閉じると、ピン81は、受容部79内に延びて、ポスト74、78を相互ロックする。
【0077】
カテーテル8のリテイナー20に対する軸方向の動きを妨げるために用いる可能性のある別の保持機構には、カバー24を閉じると相互に協働するように配置される突出部が含まれる。例えば、1つの形態において、協働するポスト74、78は、カテーテル8の内腔を実質的に閉塞させることなくそれらの間においてカテーテルの構造上の一部分(例えばウェブ)を捕捉するように配置可能である。別の形態において、突起部81は、リテイナー20の面に対してカテーテルの一部分(例えばウェブ)を単に押さえつけるように、受容部79なしに使用可能である。例えば、突起部81は、ベース22またはカバー24のいずれかの一部分から延びるとともに、カバーを閉じると突起部81に対向する(ポスト、プラットフォーム、チャネル面である)対応の面と協働し得る。突起部81は、カテーテル部分内へ突出しそれを対応の面に対して押しつける。
【0078】
その代わりに、突起部81は、カテーテルの一部分を捕捉するように受容部79とともに使用可能である。カバー24を閉じると、突起部81は、カテーテルボディ8の一部分を受容部79内へ押し込んで、カテーテルの内腔を閉塞させることなくこれらの構成要素間においてカテーテル8の構造上の一部分を捕捉する。リテイナー20とカテーテルボディ8とがこのように係合することによって、リテイナー20に対するカテーテルの軸方向の動きが妨げられることになる。
【0079】
ラッチ
チャネル内において被作用カテーテル部分を堅固に保持するために、ベース22とカバー24とは、閉鎖位置にそれらを結合する相互係合構造体を含む。示した実施形態において、図10から図13において最もよく分かるように、ラッチ機構80が、カバー22をベース24に固定するために用いられる。ラッチ機構80は、少なくとも1つの可動キーパー88と少なくとも1つのラッチ90とを含む。キーパー88は、カバー24上に配置され、またラッチ90はベース22上に配置される。しかしながら、これらの構成要素は、ベース及びカバー上に逆に配置することができる。
図10において最もよく分かるように、各キーパー88は、カバー24の第2の側部34からベース22へ延びるバー92を含む。2つのタング94が、バー92の下方端部96に形成される。望ましくは、タング94の下方端部96は、医療サービス提供者の手袋または皮膚に刺ささったりまたは他の材料上において引っかかったりしないように比較的尖っておらず滑らかである。操作者用レバー98が、バー92の側部へ延び、外側端部に大きくなったプラットフォームまたはイヤー部100を含む。操作者用レバーは、カバーが閉鎖位置にある時にバーから上方に向けて角度がつく。このように、操作者用レバー上における下向きの力は、バーを内側に撓ませて、端部をラッチから非係合にできる分力を生じる。キーパー88全体は、一体部品を形成するようにカバー24を伴って形成されることが望ましい。
【0080】
ラッチ90は、バー92及びタング94を受け入れる受容部104を含む。ラッチ用受容部104は、カバー24が閉鎖状態になる時に端部94がパチンと嵌まる内側ノッチ106を含む。しかしながら、同じ効果を達成するように、タングを受容部内に配置し、ノッチをバー上に配置することができる。ラッチ90は、一体部品としてベース22を伴い形成されることが望ましい。
【0081】
示した実施形態において、リテイナー上に前方から後方へ対称的に配置された2つのタング94と2つのノッチ106とが存在する。各ノッチ106は、カバー24を閉じるとキーパータング94の1つを受け入れるように配置される。
【0082】
受容部104の入口は、チャンバー縁を含む。チャンバー縁は、キーパー88をラッチ受容部104内へはめ込む時にキーパーバー92が内側へ曲がるように、受容部104の中央へ内側に傾斜している。
【0083】
図9及び図10から最もよく理解されるように、ベース22の第2の側部28はまた、対応のタング94が受容部104内にはめ込まれる時に操作者用レバー98の一部分と、キーパー88のバー92とを受け入れるスロット108を含む。
【0084】
操作において、カバー24は、閉鎖位置に向かって回転可能である。カップリング形成材料を比較的薄いストリップにすることによって、ヒンジ40は、カバー24に指で圧力をかけて閉じる時に撓み得る。タング94の下方端部は、カバー24が閉鎖位置近くになると、ラッチ受容部104の面取り縁107と接する。引き続きチャネルの方へ内側にバー92に圧力をかけることによって、タング94が受容部を通過し得る。受容部104のスロット108は、タング94がさらに受容部104内に押し込まれると操作者用レバー98を受け入れる。カバー24がベース22の頂上に着座する時に撓むバー92により与えられるスプリング力のもとで、タング94は、ノッチ106内にパチンと嵌る。タング94と、ノッチ106の対応の面との間における相互作用によって、カバー24がこの位置に保持される。図11において最もよく分かるように、操作者用レバー98は、カバー24がラッチ止めされるとベース22の横方向側部へ延びる。
【0085】
医療従事者が、操作者用レバーを下向きに押してラッチ機構80を開く。角度のついた外面にかけられた下向きの力によって、内側にバー92を撓ませノッチ206からタング94を解放する内向きの力の成分が作用する。撓んだヒンジ内に蓄積された内在するスプリング力は、受容部104からキーパー88を外へ移動させる横断方向の力の供給を支援する。次に、医療従事者は、カバー24を開けて、ベース22の内側溝30と、カバー24の内側溝36とを露出させることができる。
【0086】
カバー24とベース22との間における解放可能な係合によって、開閉を複数回繰り返す場合においても同じリテイナー20を使用可能である。これによって、アンカリングシステム10にカテーテルを繰り返し取り付け、取り外すことができる。さらに、ベース22にカバー24を連結するヒンジ付き連結部は、カバー24が、アンカリングシステム10からカテーテルを取り外す時に紛失したり置き間違えたりしないことを保証する。医療従事者は、カバーを探したり、ラッチ前にカバーを方向付けたりする時間を浪費しなくて済む。
【0087】
変形
上述の技術に対してさらに進んだ技術を用いて医療用物品の固定をさらに堅固にすることができる。これらは、以下に述べるようにリテイナーのチャネル内における摩擦的隆起部及び固定用バーブの使用を含み得る。
【0088】
摩擦的隆起部は、カテーテルの軸方向の動きを妨げるようにさらなる保持機構としてチャネル面上に配置可能である。これらの隆起部は、ベース及びカバーと一体形成され、チャネル内へ突出する。このような隆起部は、後述の固定用バーブ付きでまたはなしで、上述の保持機構に加えて使用可能である。
【0089】
隆起部は、望ましくは平滑で中実の構造だが、中空の構造とすることができる。示した実施形態における隆起部は、概ね断面が三角形であり、チャネルの一方の端(例えば遠位端)に向かって角度が付けられている。しかしながら、隆起部の断面は、チャネル中におけるカテーテルの軸方向の動きを妨げることになる他の形状にすることもできる。
【0090】
各隆起部は、望ましくは前方壁または前縁を有し、該前方壁または前縁は、前方壁とチャネル面との間において測定した角度より小さい角度を形成する。隆起部は、チャネル内へ若干、望ましくは所定の適用では0.1mmと10mmとの間の横断方向の距離を突出する。隆起部はまた、チャネル中において長手方向軸線に概ね垂直に配置される。
【0091】
摩擦的隆起部がそのように配置される場合、摩擦的隆起部は、カテーテルのY字状部位の外面内へ無理な力はかからないものの堅固に食い込むかまたは押し込まれる。カテーテルボディ材料の可撓性によって、かつ、隆起部がカテーテルボディ内へ食い込む程度によって、このような接触は、カテーテル内腔内の流体の流れを妨げないかそれとも著しく損なわない。しかしながら、隆起部の角度付けの方向と関連付けられるこの接触度は、特に隆起部の角度付けの方向と反対方向へのカテーテルの動きを妨げる。
【0092】
1つまたはそれ以上の固定用バーブはまた、長手方向にカテーテルを保持するために使用可能である。各バーブは、鈍い先端を有し概ね円錐形である。本適用におけるバーブは、約0.1mmと約3mmとの間の範囲の量をチャネル内へ延びることが望ましい。
【0093】
リテイナーは、有利には、ひとまとめに参照番号で示す、固定用バーブの少なくとも1つのセットを含み得、バーブは、相互に協働するようにチャネル内に配置される。バーブは、有利には、概ね横方向の同じ平面(すなわち横方向軸線と横断方向軸線とにより画定される平面)内に配置可能であり、相互に間隔をあけて配置される。さらに、バーブは、互い違いに配列してチャネルの概ね対向した面上に間隔をあけて配置することが望ましい。すなわち、バーブの配置は、横方向にカバー面とベース面との間において互い違いにされる。結果として得られる部分的に重なるバーブのパターンによって、長手方向に引っ張られてもカテーテルにトルクを付与することなくカテーテルが堅固に保持される。示した実施形態において、1つのバーブは、カバー面上に配置され、チャネルの隣接した側部とポストの隣接した側部とから横方向に概ね等間隔に配置される。一対のバーブが、ベース面上に配置される。これらのバーブは、相互に間隔をあけて配置され、その対は、横断方向軸線に対して対称的に配置されるとともにカバー面上のバーブを通り延びる。
【0094】
別の好適な実施形態において、リテイナーはまた、バーブの第2のセットをさらに含み得る。これらは、概ね上の説明に従って配置されるが、バーブの数を少なくし、セットの数を少なくして使用することもできる。1つの特定の実施形態において、バーブの1つのセットは、ポスト74、78と、ベース22の第1の側部26及びカバー24の第1の側部32との間に配置され、バーブの他方のセットは、ポスト74、78と、ベース22の第2の側部28及びカバー24の第2の側部34との間に配置される。第1のセットのバーブは、望ましくは、チャネル60の遠位端64へ向かって角度付けされて、カテーテル8が近位に引っ張られた時に、かつ、カテーテル8の排出用分岐部116が遠位に引っ張られた時に、近位方向におけるカテーテルの膨張内腔分岐部114の動きを妨げる。しかしながら、第2のセットのバーブは、カテーテル8が遠位に引っ張られた時にカテーテル8の動きを妨げるように、チャネル60の近位端62へ向かって角度付けされることが望ましい。
【0095】
ここに説明のアンカリングシステムは、滑りやすいコーティングを有したカテーテルの軸方向の動きを止めるために、かつ、患者に対してカテーテルを保持するために、特に適合される。この目的のために、本アンカリングシステムは、1つまたはそれ以上の保持機構を用いる。本アンカリングシステムは、面倒な事態が発生しない程度にカテーテル中の流体の流れをそれほど損なわずに(すなわち実質的に妨げずに)これを達成する。説明したように、このような保持機構には、特に、カテーテルの一部分を保持するチャネルの形状、チャネルと同心に配置されるかまたはチャネル内に配置される保持構造体、1つまたはそれ以上の固定用バーブまたは、実質的にカテーテル排出内腔を閉塞させることなくカテーテルボディ内に食い込む摩擦的隆起部、及び共に、カテーテルの一部分に締め付けられるかまたはそれを押さえつける協働部材(例えば透析カテーテルのY字状部位における分岐部同士の間に形成されるウェブ)が、含まれる。
【0096】
操作
図14から図16に示すように、医療従事者は、上述のアンカリングシステム(または容易に明らかとなる変形物)を用いて透析用カテーテル(または他の医療用物品)を患者に固定可能である。医療従事者は、まずリテイナー20を開けて、ベース22上の溝30を露出する。一度開けると、カテーテル8を、溝30上方において横断方向に整列させることができる。次に、カテーテル8をチャネル60内へ配置することができる。Y字状部位とともに使用するためのポスト74(または別の突出部)を伴ってチャネル60が形成される場合には、第1の分岐部114と第2の分岐部116とをポスト74の周りに整列させ、カテーテルのY字状部位112の位置を残りの溝の領域内に堅固に嵌合するように調節する。一度カテーテル8をそのように整列させ溝30内に配置したら、上述のように、カバー24を閉じてラッチを掛ける。溝30、36の形状は、チャネルが、カテーテルのY字状部位の保持された全長に沿って少なくとも正反対の側においてカテーテルのY字状部位112を支持するとともに、カテーテルのY字状部位の一部分を粘着スポット200と接して配置することを保証する。これは、リテイナー20とカテーテル8との間の摩擦的接触を促進するばかりでなく、カテーテル8がリテイナー20でよじれたり折れ曲がったりしてこれによりカテーテルの内腔の1つまたはそれ以上を閉塞させることを妨げる。
【0097】
示した実施形態において、ポスト74、78は、共に、カバーが閉じられると受容部79内へ突起部81を挿入して結合する。従って、ポスト74、78は、この位置に相互ロックされて、Y字状部位112の遠位側において、チャネルの横断方向の長さ全体を跨ぐ止め部を形成する。(存在する場合は)種々の固定用バーブも、それらが角度付けされた方向と逆方向におけるカテーテル分岐部114、116の動きに抵抗するように、カテーテルのY字状部位112のボディ内へ食い込ませる。
【0098】
たいていの透析用カテーテルがほぼ同じ横断方向の高さであるので、たいていのカテーテルを固定する、単一の大きさのチャネルを有した単一の大きさのリテイナーを使用可能である。リテイナーの材料は、若干可撓性があり、これによって、リテイナーが、Y字状部位に配置されたより厚いプラスチックハブを含み得るカテーテルを収容することに役立つ。さらに、チャネル上に配置された粘着スポット200は、望ましくは、さらに実質的にリテイナーの操作を変更することなく、より太いカテーテルが粘着スポットを単に圧縮するように、横断方向に圧縮性がある。
【0099】
カテーテル8が近位方向に引っ張られる場合、チャネル60のテーパーのついた形状によって、Y字状部位112のより大きい遠位端がリテイナーから引き抜かれることが防止される。また、リテイナーが、チャネルにカテーテルウェブを締め付けるかまたはその内部に押さえつけるポストまたは突起部を用いる場合、リテイナーとカテーテルとの間のこの係合によってさらに、カテーテルが所定位置に固定される。カテーテルが遠位方向に引っ張られた場合、相互ロックされた74、78と粘着スポットの作用とによって、この動きが妨げられる。
【0100】
従って、リテイナー20は、滑らかなカテーテルを伴って使用された場合でも、リテイナーに対するカテーテル8の長手方向の動きを妨げる。しかしながら、各保持機構により得られる保持効果は、カテーテルの内腔を実質的に閉塞させない。突出部(すなわち、ポスト及び/または突起部)の相互作用は、カテーテルウェブ(または同様の構造体)にのみ影響しカテーテルボディを圧迫しない。同様に、チャネルの形状とポストとは、両方の軸方向におけるカテーテルの動きを制限するが、チャネル内にかつポストの周りに挿入された時にカテーテルボディを折り曲げたりねじったりしない。また、固定用バーブはカテーテルボディを圧迫するが、食い込みを制限することによって、対応のカテーテル内腔は全く閉塞せず突き刺されたりしない。
【0101】
同様に、全ての場合において粘着スポット200の作用は、カテーテルのY字状部位の面に沿って発揮されて、カテーテルとリテイナーとの間の長手方向及び横方向の動きを妨げる。この力がY字状部位に掛けられるので、まずカテーテルの面に平行な方向において、粘着スポットにより得られる保持力によって、カテーテルの内腔は閉塞しにくい。
【0102】
さらに、多くの透析用カテーテルは、他のタイプのアンカリングデバイスに取り付けるために従来使用されている、ウィング部分を含む。カテーテルの固定は、ウィング状部分がリテイナーの近位に位置するがそれと同一平面にならないように本発明のリテイナーのチャネル内へカテーテルを配置することによって、さらに堅固にすることができる。このように、リテイナーのカバーを閉じて固定する時に、カテーテルのウィング状部分の幅によって、カテーテルがリテイナーのチャネル内へ引っ張り込まれることが妨げられる。これによって、患者におけるカテーテルの移動をさらに妨げることができる。
【0103】
よって、本発明に係る上述のアンカリングシステムの種々の実施形態は、患者に透析用カテーテルまたは他の医療用物品を解放可能に固定する手段を提供する。カテーテルは、カテーテルを移動させずに、交換する固定用品及びアンカーから解放可能である。アンカリングシステムは、一度リテイナー内に配置されると、患者におけるカテーテルの長手方向、横方向、及び横断方向の動きを妨げる。
【0104】
当然だが、本発明の種々の特定の実施形態に係る全ての目的または利点を必ずしも達成しなくてもよいことが、理解されよう。従って、例えば、当業者は、ここに教示または示唆可能な他の目的または利点を必ずしも達成せずに、ここに教示された1つの利点または利点群を達成するかまたは最適化するように、本発明を実施及び実行可能であることを、理解するだろう。
【0105】
さらに、当業者は、異なる実施形態から種々の特徴を相互に入れ替え可能であることを理解するだろう。例えば、溝の形状は、示した実施形態のラッチ及びキーパーの設計を維持しながら、テーパー付きでないチャネルを使用することにより、大きなY字状部位を有したカテーテルを収容するように設計可能である。或いは、粘着スポットは、カテーテルのY字状部位の一部分を所定の位置に押さえつける保持ポストをなお用いながら特定の設計から取り除くことができる。ここに述べた変形に加えて、当業者は、各特徴についての他の既知の均等物を、本発明の原理に従ってアンカリングシステム及びリテイナーを構成するように、組み合わせて適合させることができる。
【0106】
ある好適な実施形態及び例に関して本発明を開示してきたが、本発明が、特に開示された実施形態を超えて他の代替実施形態及び/または、本発明の使用方法及び、明白な変更及び均等物に及ぶことが、当業者に理解されよう。従って、ここに開示した本発明の範囲は、上述し開示した特定の実施形態に限定すべきではないが、以下に続く特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ限定されるべきものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に医療用物品を固定するアンカリングシステムに関する。さらに詳細には、本発明は、患者の所定位置に透析用カテーテルを折り曲げることなく保持し、長期間所定位置に留置されるカテーテルと共に使用可能であるアンカリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
透析に必要な血液交換を容易にするために心臓近くにおいて主静脈内へ挿入されるカテーテルを使用することが、腎臓透析処置において一般的である。透析処置は、通常、定期的に行わなければならないので、このようなカテーテルを、透析と透析との間において所定位置に残しておくことは珍しくない。これによって、各透析前にこのようなカテーテルを患者に再導入しなければならなくなる可能性を低減することができる。
【0003】
しかしながら、長期間このようなカテーテルを所定位置に残しておく際に、他の危険が生じる。もしカテーテルが実質的にいずれかの軸方向に動けば、患者にとって非常に危険になり得る。カテーテルが不注意で引き抜かれると、内出血または出血しかねず、カテーテルが軸方向に前進すると、カテーテルの先端が心臓または他の敏感な内部組織に押し込まれる恐れがある。
【0004】
さらには、このようなカテーテルを患者の所定位置に残しておくことによって、従来、挿入部位近くにおいてテープ貼付による固定が必要である。挿入部位にこのような粘着物を用いることは、不潔物または他の汚染粒子を保有する恐れがあり、患者が感染してしまう可能性がある。さらには、テープ貼付による固定を取り外すことによって、望ましくないことだが、患者のカテーテルが動いてしまう場合がある。
【0005】
挿入部位近くにおいてテープ貼付による固定を用いることについてのさらなる欠点は、定期的な交換が必要なことである。頻繁に、しばしば毎日、患者の皮膚から粘着テープを取り外したり再貼付することによって、固定用品周りの領域の皮膚が痛む場合がある。これは、透析患者は、腎臓の状態についてありがちなコラーゲンの欠乏によってより傷つきやすく擦過傷になりやすいので、透析患者について特に問題となる。このようにカテーテル上にテープを繰り返し貼付することによって、カテーテルの外面に粘着物の残留物が蓄積する場合がある。この残留物は、カテーテル自体に接着する汚染物質となり、挿入部位から感染する可能性が高まり得る。また、この残留物によって、カテーテルが、粘着性を増して医療従事者にとって取り扱いにくくなってしまう場合がある。
【0006】
これらの理由のために、長期間所定位置にカテーテルを残しておく場合患者に使用可能な、改良された透析用カテーテルリテイナーに対する要請がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、患者に、透析用カテーテルのような医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーが、リテイナーのチャネルの内面上に配置された粘着スポットを含む。リテイナーは、可撓性のあるヒンジにより連結されたカバー及びベースを有し、その結果、カバーを開けることができる。チャネルは、リテイナーのベース上に配置された溝とリテイナーのカバー上に配置された対応の溝とによって形成される。リテイナーのベース上方においてカバーを閉じると、2つの溝は、リテイナー中においてチャネルを形成する。粘着スポットは、リテイナーのチャネル中において医療用物品の被保持部分の横または長手方向のいかなる動きも摩擦的に妨げる、粘着性のある面を有することが望ましい。さらに、粘着スポットの横断方向の厚さは、カバーが閉鎖位置にある時に粘着スポットが医療用物品の被保持部分に対して圧迫され、医療用物品がリテイナーのチャネルを通り、それにより、医療用物品の被保持部分の横断方向の動きが妨げられるようなものである。
【0008】
本発明の別の態様によれば、医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーが、リテイナーのチャネル内に圧縮性部材を伴って形成される。これによって、リテイナーが、同じリテイナー内において横断方向の高さが異なる医療用物品を収容可能である。リテイナー内において横断方向の厚さがチャネル開口部より厚いリテイナーを閉じると、医療用物品は、圧縮性部材へ押し込まれ圧縮性部材を横断方向に圧迫する。部材がこのように圧縮されることによって、リテイナーのチャネルと医療用物品との間の取り付けがさらに堅固になる。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、保持用部材が、分岐した医療用物品の一部分を解放可能に固定するリテイナーのチャネル内に備えられる。保持用部材は、リテイナーのカバーが閉鎖位置になると保持用部材がチャネルの一方の端部を2つの別々の通路に分けるようにこのチャネル内に配置される。このように、保持用部材が医療用物品の2つの遠位の分岐部同士の間に位置するので、透析用カテーテルのような分岐した医療用物品の長手方向の動きを妨げることができる。
【0010】
本発明の別の態様によれば、リテイナーとともに用いるラッチ機構が、カバー上に配置されたキーパーと、リテイナーのベース上に配置されたラッチとを含む。キーパーは、ベース上のラッチの少なくとも一部分と相互係合可能な少なくとも1つの部材を含み、ラッチは、カバーが閉鎖位置になるとキーパーの部材の少なくとも一部分を受け入れる少なくとも1つの凹所を含む。キーパーは、さらに医療従事者が指先で下向きに押すことにより作動させてキーパーのバーを内向きに撓ませラッチの凹所から部材を非係合にすることができる操作者用レバーを含む。
【0011】
リテイナーが、種々の形態を取り得るが、必ずしも全ての形態が上記の態様の全てを含む必要はないことが理解される。従って、例えば、当業者は、本発明が、必ずしも全てのこのような態様及び特徴を用いることなく、本発明の述べた態様及び特徴の一群の1つを用いた方法で実施または実行可能であることを理解するだろう。
【0012】
本発明の好適な形態において、患者に医療用物品を固定するリテイナーは、上述のように、チャネルを形成するベース及びカバーを含み、圧縮性粘着スポットが、このチャネルの面上に配置される。このように、リテイナーは、長手、横、及び横断方向における医療用物品の被保持部分の動きを妨げ、これによって、リテイナーは、横断方向の高さの異なる医療用物品を収容できる。閉鎖位置にリテイナーを選択的に固定するように、ラッチ機構の一部分がベース上に、一部分がリテイナーのカバー上に配置される。
【0013】
本発明の別の好適な形態において、医療用物品用のアンカリングシステムが、アンカーパッドを伴って上述のようにリテイナーを用いて作製される。アンカーパッドは、患者の皮膚に接着する粘着下面を提供し、上面は、リテイナーに接着される。リテイナーは、アンカーパッドの上面にリテイナーを接着する安定面を提供する実質的に円板状のベースを有することが好ましい。この構成によって、患者の皮膚に医療用物品をアンカリング可能となり、また患者から医療用物品を取り外すことなくアンカリングシステムの交換を容易にするようにリテイナーから医療用物品を選択的に解放可能となる。
【0014】
本発明のさらなる好適な形態において、カテーテル法システムは、分岐部位を含んだカテーテルと、患者にこのカテーテルを固定する既述のアンカリングシステムとを含む。カテーテルは、分岐部位の一方の側から近位に延びる単一の細長いボディと、分岐部位の他方の側から遠位に延びる少なくとも2つの細長いボディとを含み、これにより、「Y」字状の接合部、すなわち「Y字状部位」を形成するものである。
【0015】
本発明の別の好適な形態において、カテーテルは、カテーテルのY字状部位の近位に配置されたウィング状部分を含む。このウィング上部分の幅は、リテイナーのチャネルの幅よりも広い。ウィング状部分をリテイナーの近位に隣接して配置することによって、その幅によりウィング状部分がチャネル内へ遠位に移動することが妨げられ、カテーテルの固定がさらに堅固になる。
【0016】
本発明の別の好適な態様において、医療用物品は、上述のようにデバイスを使用することにより患者に対して軸方向に固定される。医療用物品は、リテイナーのベースの溝内に配置され、次に、カバーが医療用物品の上方において閉じられる。このように、医療用物品は、アンカリングシステムのリテイナー内に保持される。次に、アンカリングシステムを患者の皮膚の適切な場所に接着して、これにより、患者と医療用物品との間におけるいかなる動きも妨げられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る、カバーを開けたアンカリングシステムの斜視図を示す。
【図2】カバーを閉めた図1のアンカリングシステムの斜視図である。
【図3】図1のアンカリングシステムの分解組立斜視図である。
【図4】図1のアンカリングシステムのリテイナーの拡大斜視図である。
【図5】図4のリテイナーの上面図である。
【図6】図4のリテイナーの近位側面図である。
【図7】図4のリテイナーの右側面図である。
【図8】カバーを閉めた、図4のリテイナーの斜視図である。
【図9】カバーを開けた、図8のリテイナーの斜視図である。
【図10】カバーを開けた、図5の10−10線に沿ったリテイナーの断面図である。
【図11】カバーを閉めた、図10のリテイナーの断面図である。
【図12】ラッチを解除しカバーを閉めた、図10のリテイナーの断面図である。
【図13】ラッチを解除しカバーを若干開けた、図10のリテイナーの断面図である。
【図14】リテイナー上の所定位置に典型的な透析用カテーテルを示した、図4のリテイナーの斜視図である。
【図15】カバーを閉じた、図14のリテイナーの斜視図である。
【図16】患者に使用している図1のアンカリングシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のさらなる態様、特徴及び利点が、以下に続く好適な実施形態についての詳細な説明から明らかとなる。
【0019】
次に、本アンカリングシステムの好適な実施形態の図面を参照して、本発明の、上述した他の特徴を説明する。図示したアンカリングシステムの実施形態は、例示を目的とするものであって、本発明を限定するものではない。図面は以下の図を含む。
【0020】
以下の説明及び例が、典型的な透析用カテーテルを伴い使用されるという前提で開示する本アンカリングシステムの好適な実施形態を詳細に示す。しかしながら、本発明の原理は、典型的な透析用カテーテルに限定されない。説明するアンカリングシステムが、それらに限定はされないが他のカテーテル、流体送達チューブ、及び電気ワイヤーを含んだ、他のタイプの医療用物品を伴い使用可能であることが、本開示において当業者に理解されよう。当業者はまた、ここに開示する本装置及びシステムについてさらなる適用を見いだすことができる。従って、透析用カテーテルに関連した、アンカリングシステムの図解及び説明は、アンカリングシステムの1つの可能な適用の単なる例示に過ぎない。
【0021】
アンカリングシステムのこれらの構成要素(図1参照)についての説明の一助となるように、以下の座標用語を使用する。「長手方向軸線」は、アンカリングシステム10により保持されたカテーテル部分に概ね平行である。「横方向軸線」は、長手方向軸線に垂直であり、図1に見られるように、アンカーパッド12の面に概ね平行である。「横断方向軸線」は、長手方向軸線と横方向軸線とに垂直に延びる。さらには、ここで使用されるように、「長手方向」は、長手方向軸線に実質的に平行な方向のことであり、「横方向」は、横方向軸線に実質的に平行な方向のことであり、「横断方向」は、横断方向軸線に実質的に平行な方向のことである。ここで用いられる「軸線の」という用語は、カテーテルの軸線のことであるので、ここで使用される「長手方向の」という用語と実質的に同義である。さらに、「近位」及び「遠位」という用語は、本アンカリングシステムを説明するために使用するが、典型的適用についての説明に合わせて使用される。よって、近位及び遠位は、患者の身体の中心を基準として使用される。「上部」「下部」「頂部」「底部」などの用語は、また、本アンカリングシステムを説明するために使用するが、実施形態の図示した向きを基準として使用される。次に、本アンカリングシステムの好適な実施形態及びそれに伴う使用方法についての詳細な説明を以下に行う。
【0022】
図1に示したように、説明する実施形態は、アンカーパッド12とリテイナー20の、2つの主要な構成要素を有したアンカリングシステム10を含む。上に特に言及したように、アンカリングシステムは、1つまたはそれ以上の医療用物品(例えば、透析用カテーテル)もまた含むカテーテル法システムの一構成要素を形成可能である。
【0023】
リテイナー20は、アンカーパッド12上に装着され、アンカーパッドは、通常パッドの底面に粘着物を配置することにより、患者の皮膚に固定される。リテイナーは、医療用物品を受け入れ所定位置に固定する。リテイナー自体は、ベース、カバー、少なくとも1つの粘着スポット、及び1つまたはそれ以上の保持用部材を含めて、いくつかの部分構成要素を備える。医療用物品の解放可能な係合は、粘着スポットと、ベース及びカバーとの間における協働によって、少なくとも一部分において行われる。カバーは医療用物品が固定された後に開口可能なので、アンカリングシステムを交換するまたは患者の移動を容易にするというような、種々の必要な目的のために医療用物品をアンカリングシステムから取り外すことができる。このようなアンカリングシステムからの医療用物品の取り外しは、必要に応じて、アンカリングシステムを患者から取り外すことなく行うことができる。
【0024】
医療用物品は、リテイナーのチャネル内において医療用物品の固定された部分に沿って横方向及び横断方向の圧力を組み合わせることによって、所定位置に保持される。図示した実施形態において、チャネルは、リテイナーのベース及びカバー上に配置された溝同士の間に形成される。横方向の圧力は、溝の壁と、保持された医療用物品のY字状部位の側面と間において付与され、横断方向の圧力は、チャネルの底部及び上部と、粘着スポットとによって付与される。カバーが閉じられラッチ機構により閉鎖位置に固定されると、これらの力は、チューブの横方向または横断方向のいずれかにおける実質的な動きを妨げる。チューブの長手方向の動きは、粘着スポットのカテーテルに対する摩擦的力によって、かつ、チャネル自体のテーパーのついた形状によって、妨げられる。
【0025】
さらには、説明する実施形態は、アンカリングシステムが、種々の大きさの医療用物品を受け入れ固定するために使用できるような多適用性を有した特徴を提供する。固定力は圧縮性のある粘着スポットにより一部分に与えられるので、横断方向の高さが異なる種々のカテーテルを収容可能である。さらには、粘着スポットの摩擦性によって、チャネルは、チャネル内にカテーテルを保持する剪断力をさらに与えることができる。
【0026】
アンカリングシステムはまた、カテーテルと解放可能に係合することが望ましい。これによって、アンカリングシステムは、種々の既知の目的のいずれかのためにカテーテルを取り外すことなく、カテーテルから非係合となり得る。例えば、医療サービス提供者は、患者からカテーテルを取り外さずにアンカーを交換したり挿入部位を洗浄したりするために、アンカリングシステムを取り外したい場合がある。カテーテルが長期間患者の所定位置にある状況において、最適な位置におけるカテーテルの固定を維持するために周期的にアンカーを交換すると有利である。これらの目的のために、患者からカテーテルを取り外さずに、アンカリングシステムからカテーテルを非係合にできることが望ましい。
【0027】
本アンカリングシステムの詳細を説明する前に、以下の典型的な実施形態を理解しやすくするために、透析用カテーテルについて簡単な説明をする。図14から最もよく理解されるように、カテーテル8は、大静脈のような、胸腔内の太い静脈内に挿入されることになる近位先端を含む。カテーテルの内部は、2つの別個の管腔を有し、それぞれは、近位先端近くに開口部を有する。カテーテルは、2つの管腔が分かれて、その上においてそれぞれがカテーテルの別個の分岐部を有するY字状部位112を含む。これらの分岐部の管腔は、Y字状部位112の近位側において同軸のまたは横並びのいずれかの構成をとって、主要なカテーテルボディ118を形成する。Y字状部位112の遠位側において、ウェブが、Y字状部位112に隣接する場所において2つの分岐部114と116との間を延び得る。Y字状部位112はまた、内部において管腔が分岐する、概ね三角形のプラスチック製ハウジングを含み得る。
【0028】
次に図1から図3を参照すると、アンカリングシステム10は、アンカーパッド12及びリテイナー20を含む。アンカーパッド12は、患者の皮膚にリテイナー20を固定する。アンカーパッド12は、患者の皮膚に接着する下部粘着面16と、リテイナー20を支持し粗面となった上面14とを有する。リテイナー20は、アンカリングシステム10内に透析用カテーテルの一部分を受け取り保持するように構成される。示した実施形態において、リテイナーは、ベース22とカバー24とを含む。カバー24は、ベース22に解放可能に固定され、開放位置と閉鎖位置との間を可動である。
【0029】
アンカーパッド
図1から図3は、望ましくは上部発泡層(例えば独立気泡ポリエチレンフォーム)および下部粘着層を有した積層構造体を含むアンカーパッド12を示す。下部粘着層は、アンカーパッド12の下面16を構成する。下面16は、望ましくは、医療用グレードの粘着物であり、特定の適用により異なるが、発汗性または非発汗性のいずれかとすることができる。粘着層を有したこのようなフォームは、オハイオ州ペインズヴィルのAveryDennisonから市販品を入手可能である。図示していないが、アンカーパッド12が、粘着層に加えて、患者の皮膚にアンカーパッド12をさらに固定する縫合孔を含み得ることを理解されよう。
【0030】
代替実施形態において、親水性の粘着物が、アンカーパッド12を患者の皮膚に装着するためにアンカーパッド12上に使用可能であると有利である。親水性粘着物は、取り外し時に患者の皮膚を傷つけにくい。これは、透析患者によくある、コラーゲンが欠乏した患者のような、皮膚がより過敏であるかまたは傷つきやすい患者にとっては、特に重要となり得る。
【0031】
図3に示したように、上部フォーム層の面は、アンカーパッド12の上面14(図2を参照)を構成する。上面14は、低電荷でフォームをコロナ処理することにより粗面にすることができる。粗面のまたは多孔の上面14は、ベース22とアンカーパッド12との間の(後述する)粘着接合の質を向上させることができる。その代わりに、可撓性のあるアンカーパッド21は、医療用グレード粘着下部層と、内側フォーム層と、上部紙または他の織布または不織布層とを含み得る。
【0032】
取り外し可能な紙またはプラスチック製の剥離ライナー18が、使用前において粘着下部面16を覆っていることが望ましい。ライナー18は、引き裂きに抵抗することが好ましく、患者の皮膚へのパッドの接着を容易にするように複数の片に分割されることが望ましい。示した実施形態において、ライナー18は、一度に粘着下部面16の半分のみを露出するために、可撓性アンカーパッド12の中心ライン19に沿って分割される。
【0033】
横方向に測定したライナー18の長さは、アンカーパッド12の中心ライン19を超えて延び、ライナー18上において折り曲げられるかまたはライナー18上へ折り返される。このように折り曲げた部分は、粘着下部面16からライナー18を取り外すことを容易にするプルタブ17を画定する。医療従事者が、下部面16からライナー18を分離させるように掴み引っ張ることにより、プルタブ17を用いる。プルタブ17は、医療従事者が粘着層からライナー18を分離するためにライナー18の角の縁または他の部分をつまむ種々の要件を克服する。プルタブ17は、当然、種々の形態に設計可能である。例えば、プルタブ17を、アンカーパッド12の中心ライン19に沿って配置する必要はなく、それよりも、患者の皮膚の特定部位においてアンカーパッド12を用いやすいように、プルタブ17を、アンカーパッド12の種々のラインに沿って配置することができる。例えば、関節におけるような不意に曲がる患者の皮膚の領域では、アンカーパッド12の中心ライン19に沿ってというより横方向端部の一方に向かって位置調整する必要があり得る。
【0034】
図3において最もよく分かるように、アンカーパッド12はまた、ベース22の最も近くにおいてアンカーパッド12の中央を狭める、一対の対向した凹部分13、15を含むことが望ましい。その結果、アンカーパッド12の横方向側部の、患者の皮膚に対して安定性と粘着とを高める接触面積が大きくなる。
【0035】
リテイナー
次に図4から図9を参照すると、リテイナー20は、主としてベース22及びカバー24により形成された剛性のある構造体を含む(図4を参照)。図示した実施形態において、ベース22及びカバー24は、一体リテイナー20を含むように一体に形成される。これは、当業者に周知の種々の方法のいずれかで行うことができる。例えば、リテイナー20全体は、製造コストを低減するために射出成形可能である。
【0036】
さらに、以下の説明から明らかとなるように、ラッチ80およびヒンジ40のようなリテイナーのいくつかの特徴は、可撓性であることが望ましい。適切な剛性を有するが可撓性のある材料は、例えば、限定はしないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ナイロン、オレフィン、アクリル、ポリエステルのような、プラスチック、ポリマーまたは複合材料、および成形可能なシリコン、熱可塑性ウレタン、熱可塑性エラストマー、熱硬化性プラスチックなどを含む。図示したリテイナー20は、ポリエチレンまたはポリプロピレン材料を用いて射出成形により形成されることが好ましい。しかしながら、他の材料を使用可能であって、リテイナー20は、一体でないベース22および24を含み得る。
【0037】
図4を参照すると、示した実施形態におけるベース22は、概ね平行六面体の細長いボディを含む。しかしながら、ベース22は、特定の適用に適合させるために、円形、四角形、三角形等の幅広い種類の形状に構成可能である。さらに、ベースの下面は、実質的に円板状であることが望ましい。これによって、アンカーパッドの上面にベースの下面を接着する際に使用するリテイナーの底面が大きくなる。この円板状の下面によって、リテイナーとアンカーパッドとの間の接着が改善されるとともに、患者の皮膚上におけるリテイナーに対する安定性が増す。
【0038】
ベース22の長手方向の寸法がカテーテル8を長さに沿って安定させるのに十分長いと有利である。このようにして、保持されたカテーテル部分の長手方向の長さは、カテーテル8がリテイナー20に対して揺動するのを妨げる程度(すなわち、リテイナー20がカテーテルの支点として機能するのを妨げる程度)十分なものとなる。さらに、ベース22の横方向の寸法は、医療サービス提供者が容易にかつ自然にベース22を握り得るようにすることが望ましく、ヒンジ40とラッチ機構80の一部分を配置する空間も提供する。
【0039】
図4に示すように、ベース22は、第1の側部26と第2の側部28とを含む。第1の側部26は、概ねベース22の一方の横方向端部に位置し、第2の側部28は、ベース22の対向した横方向端部に位置する。
【0040】
溝30が、第1の側部26と第2の側部28との間においてベース22上に形成される。示した実施形態において、溝30の断面は、概ね曲線状である。図5において最もよく分かるように、下方の溝の幅は(すなわち横方向において)、長手方向の長さに沿って変化する。すなわち、示した実施形態において、下方の溝30の側壁は、リテイナー20の一方の長手方向側部からリテイナーの他方の長手方向側部へ概ね直線状に相互に広がっている。
【0041】
リテイナー20のベース22は、アンカーパッド12の上面14に接着される。ベース22は、望ましくは、シアノアクリレートまたは他の結合材料のような溶液型結合接着剤により上面14に固定される。1つのこのような接着剤は、MinnesotaMining andManufacturing Company (3M)からPart No. 4693として市販されている市販品を入手可能である。
【0042】
図4においても分かるように、カバー24は、望ましくはベース22の平面サイズおよび形状と実質的に同一の広がりを有する細長い形状である。しかしながら、カバーは、ベース22と正確に同じサイズおよび形状である必要はない。例えば、カバー24は、ベース22の横方向、横断方向、または長手方向の縁のいずれかを超えて延びる大きさとすることができる。カバーはまた、ベース22の特定の横方向、横断方向、または長手方向の縁へ延びない大きさとしてもよい。カバーはまた、ベース22またはベース22のどこかの部分の上に、かつ/または、ベース22またはベース22のどこかの部分の周りに、スカートまたはフランジ部を含み得る。
【0043】
カバー24は、ベース内において下方溝30を覆うのに(図8を参照)、かつ、後述するように、ベース22とカバー24との間において作動するラッチ機構80の一部分及びヒンジ40を収容するのに十分な大きさであることが望ましい。カバー24はまた、操作しやすい寸法であることが望ましい。例えば、該カバーのサイズは、医療従事者が容易に掴めるものである。
【0044】
カバー24は、図4に示すように、概ねカバー24の一方の横方向端部に位置する第1の側部32を含む。従って、カバーの第1の側部32は、概ねベース22の第1の側部26に対応する。カバー24はまた、第2の側部34を有する。第2の側部34は、第1の端部の反対側にある、概ねカバー24の横方向端部へ向かって位置し、概ねベース22の第2の側部28に対応する。
【0045】
上方溝36が、カバー24の第1の側部32と第2の側部34との間においてカバー24の内側に形成され、概ねベース22内に形成された下方溝30に対応する(図5及び図6を参照)。上方溝36の横方向の幅はまた、長手方向長さに沿って変化する。すなわち、示した実施形態において、図5に示したように、上方溝36の側壁は、カバー24の一方の長手方向端部から他方の長手方向端部へ概ね直線状に相互に広がる。
【0046】
カバー24は、可撓性のあるカップリングまたはヒンジ40によってベース22に可撓性を伴って結合される。カップリング40は、可撓性を有したバンド42を含むことが望ましく、該バンド42は、後述するようにこれらの部分の係合や係合解除を可能にするためにベース22に対するカバー24の回動動作を可能としながら、ベース22にカバー24を機械連結するようにかなり多数の形状をとり得る。示した実施形態において、バンド42は、可撓性材料から、望ましくはベース22及びカバー24が含むものと同じ材料から形成される。有利には、ヒンジは、上に述べたように、一体部材を形成するようにベース22及びカバー24と一体成形される。ヒンジ40は、ベース22及びカバー24の外側縁に配置されるが、ヒンジ40は、ベース22またはカバー24の最も端に横方向に配置する必要はない。
【0047】
図5から最もよく理解されるように、長手方向に測定したヒンジ40の幅は、カバー24をベース22に係合させたり係合を解除したりする際に、いくらかの余裕すなわち遊びが得られるように、ベース22またはカバー24のいずれの幅より小さいことが望ましい。すなわち、この形状によって、ヒンジ40が、いくらかの製造上の公差を補償するようにある程度ねじれ得るが、ヒンジ40の長手方向の寸法は、少なくともベース22及びカバー24と同じにできる。
【0048】
ヒンジ40は、カバー24及びベース22の共通の対応する外面に沿って一体に形成されることが望ましい。示した実施形態において、ヒンジ40は、カバー24を閉めると概ねU字状であり、ベース22およびカバー24から横方向にリテイナー20の側部へ延びる。ヒンジの横断方向の高さに対応するギャップが、ベース22とカバー24との間に存在する。しかしながら、このギャップは、異なるヒンジの設計を用いることによって、いくつかの適用のためのリテイナーから縮小または排除することができる。
【0049】
ヒンジ40によって、カバー24は、開放位置と閉鎖位置との間を動き得る。図4に示した開放位置は、ベース22及びカバー24内において横断方向に溝30、36を露出して、それによりベース22とカバー24とを間隔をあけて配置するという特徴を有する。リテイナー20は、開放位置にある時には、透析用カテーテル8の一部分(例えば、Y字状部位112)を受け入れ可能である。図8に示した閉鎖位置は、カバー24が、下方溝30の上方に上方溝36が配置されるようにベース22と接触してまたは接触しそうな状態で位置するという特徴を有する。リテイナー20は、閉鎖位置にある場合には、カテーテルの受け入れ部分を囲む。
【0050】
ヒンジ40は、図8及び図9により示すように、閉鎖位置と全開位置とを確立するためにベース22に対してカバー24を180°動くようにする必要はない。例えば、ヒンジ40は、リテイナー20内へ横断方向にカテーテルを挿入するのに十分な空間をなお提供しながら、ベース22とカバー24との間をそれより少なめに(例えば90°)動き得る。
【0051】
ベース22及びカバー24内に形成された溝30、36は、リテイナー20を閉じるとチャネル60を画定する。チャネル60は、カテーテルの一部分またはある長さを受け入れ可能であり、概ねカテーテル被作用部分を収容し把持し固定するように形成される。チャネル60は、特定の医療用物品を収容するために、前述のように溝30、36と関連付けて種々の形態にすることができる。示した実施形態において、チャネル60の断面形状は、近位端62において概ね円形であり、(後述するが、示した実施形態では、遠位端64は、一対の協働ポストにより分割されているものの)遠位端64において概ね楕円形である。チャネルは、より小さい近位端62からより大きい遠位端64へ断面サイズにおいて平滑にテーパーがつけられている。その結果、チャネル60は、図5において溝30、36の形状を詳しく見ることにより最もよく理解されるように、概ね先端を切ったV字状である。
【0052】
示した実施形態において、チャネル60の側部は、概ね真っ直ぐであり相互に広がっている。しかしながら、チャネル60の壁(と、従ってカバー及びベースの溝と)は、真っ直ぐにする必要はない。このチャネル形状は、後述するように、チャネル中におけるカテーテルの動きを妨げるようにチャネル60内におけるカテーテルの保持を促進する。
【0053】
チャネル60が適用により異なる(すなわち、リテイナーが使用されるように設計された、医療用物品の被保持部分の形状によって異なる)種々の形状をとり得るが、チャネル60は、上述のように、カテーテル用の支点として機能するというよりは、カテーテルを安定させるのに十分な程度の、長手方向における長さを有する。すなわち、リテイナーは、カテーテルをねじれさせることなく、横方向、長手方向及び横断方向におけるカテーテルの動きを妨げるのに(すなわち、カテーテルの偏揺れ、縦揺れ及び軸方向の動きを妨げるのに)十分な程度のカテーテル長さを受け入れる。さらに、チャネル近位開口部の広口形状(すなわち大楕円形状)によって、カテーテルがねじれる可能性のある縁または面が排除される。
【0054】
カバー24を閉じると、カテーテル8の一部分が、(図15に示すように)リテイナー20内に捕らえられる。従って、リテイナー20は、カテーテル8の被保持部分の横方向及び横断方向の動きを、妨げなくても、少なくとも制限はする。
【0055】
さらに、図9に示すように、粘着スポット200をまた、上方溝内においてカバーの内側に配置可能であると有利である。この粘着スポットは、接着剤ドットの形態をとり得る。このような接着剤ドットは、剪断力に対して高抵抗を示すとともに残留物を残さずにカテーテルのY字状部位から剥がし得る材料からなることが望ましい。このような接着剤は、品番GD−06の「SuperHigh TackGlue Dot」としてウィスコンシン州ニューベルリンのAll−PakInc.から販売されている。複数の接着剤ドットを使用可能であるか、または単一の接着剤ドットをリテイナーのチャネルの一方の側のみに配置可能である。
【0056】
接着剤スポット200は、カバーの溝36とベースの溝30の両面上に点線で示す(図4を参照)接着剤ドットとして全図面に示されている。複数の接着剤ドットを使用する必要はなく、リテイナー20とカテーテルとの間の摩擦的力と横断方向の力とを高めるために、カバー溝またはベース溝のいずれかに配置される単一の接着剤ドットを使用可能であると有利である。
【0057】
さらには、接着剤スポット200は、単一の接着場所とする必要はない。さらなる好適な設計において、接着剤スポットは、Kraton(登録商標)高分子化合物のような、弾性および圧縮性を有し変形可能な材料からなる領域にすることができる。このような化合物には、GLSCorporationから入手可能な Dynaflex(登録商標)G2706、および他の熱可塑性エラストマー或いは、シリコンまたはウレタンエポキシが含まれる。
この領域はまた、丸くする必要はない。さらなる好適な設計において、チャネルの大きな領域が、Kraton(登録商標)のような適切な材料で覆われ得る。例えば、下方溝30の全面は、有利には、カテーテルとリテイナーとの間に追加の牽引または横断方向のバイアスを提供するように、接着剤の薄い層で覆われてもよい。
【0058】
本発明の種々の好適な実施形態とともに使用するために適切な接着剤スポットを生成する他の手段は、限定はしないが、チャネル表面の摩擦性または圧縮性を調節するためにチャネル表面の一部分を化学的にまたは電気で処理すること、リテイナーの溝の一部分上へ粘着コーティングを噴霧するかまたは塗布すること、チャネル部分に剥離型粘着部材を付着させること、チャネル表面の一部分へ、Kraton(登録商標)のような粘着または圧縮性材料からなる領域を射出成形すること、または当該技術において既知の他のこのような手段が含まれる。
【0059】
カテーテル8をチャネル60内に固定した時にカテーテル8の長手方向の動きを妨げることは、チャネル60と連動する1つまたはそれ以上の保持機構により行われることが望ましい。図5、図6及び図7を参照すると、1つのこのような保持機構は、チャネル60自体の形状を含む。チャネル60の先端を切ったV字状と、カテーテルのY字状部位112の対応の形状との間における相互作用によって、近位の長手方向の動きが妨げられる。
【0060】
図14から最もよく理解されるように、チャネル60の近位端62は、カテーテル8のメインボディ118のみを受け入れる大きさである。チャネル60の遠位端64は、Y字状部位112の遠位側部においてカテーテルの分岐部114及び116を受け入れる大きさである。遠位端64と近位端62との間において、チャネル60は、カテーテルのY字状部位112を受け入れるように形成される。
【0061】
示した実施形態において、チャネル60の各側部は、チャネルが遠位端におけるよりも近位端において狭くなるように角度がつけられる。これは、チャネルの側部66、68に、リテイナーの近位端に向かって広がるように角度をつけることによって達成される。示した実施形態はチャネルの各側部に同じ角度を用いるが、いくつかの適用では、チャネルの第1の側部と第2の側部について異なる角度を有したチャネルを作製することが有利となり得る。
【0062】
チャネル60の側部66、68は、(上述のように凸部を含み得るが)テーパーをつけた形状にまたは直線状に変化することが望ましい。チャネル60の第1の側部66と第2の側部68との間において広がる角度は、望ましくは約10°と約70°との間であり、さらに好ましくは約30°と約45°との間であり、図14に見られるように、概ねカテーテルの2つの分岐部114、116が、交わる角度に匹敵する。
【0063】
カテーテルのY字状部位112はメインボディ118より断面が大きいので、Y字状部位112は、通常、リテイナーチャネル60のより小さい近位端62から近位に引っ張ることはできない。従って、チャネル60の形状は、近位方向におけるカテーテルの長手方向の動きを妨げる。
【0064】
当然だが、上述のようにチャネルの形状を変えることもできる。例えば、チャネル60の第2の側部68は、第1の側部66とは異なる曲線状にすることができ、かつ/または、受け入れられたカテーテル部分に相当する部分と協働するかまたはその上に突き当たるように穴、突起または同様の幾何学的変形部を含み得る。さらに、チャネルの側部を相互に対称的にする必要はない。第1の側部66または第2の側部68のいずれか、または両方の側部は、カテーテル8の被保持部分の長手方向の動きを妨げるように、受け入れられたカテーテル部分の軸線に対する間隔を変化させることができる。しかしながら、チャネルは、リテイナーが保持機構について少なくとも別の形態を含む場合には、直線状または均一の断面形状を有し得る。
【0065】
リテイナーのチャネル60の表面とカテーテルのY字状部位112との間の相互作用はまた、チャネル60中における長手方向の動きを妨げる摩擦的力を生じる。しかしながら、カテーテル8とリテイナー20との間の干渉の程度は、カテーテル8を著しく閉塞させるほど大きくしてはならない。
【0066】
粘着スポット200は、追加の保持機構を形成する。カバーを閉鎖位置に動かすと、接着剤ドットまたは他の粘着スポットが、カバーの内面と、透析用カテーテルまたは他の医療用物品のY字状部位の上面との間で捕捉される。粘着スポットは、一度カバーとカテーテルとの間において押し付けられると、接触する2つの面同士の間におけるいかなる剪断力による動きをも妨げやすくなる。このようにして、粘着物は、リテイナー内におけるカテーテルの長手方向及び横方向の動きに抵抗する。
【0067】
図9に示すように、チャネル60内へ突出する保持用構造体73を、カテーテルの軸方向の動きを妨げるために使用することもできる。保持用構造体73は、アンカーパッド12に対して横断方向に配置される直立部材を形成する。保持用構造体73は、遠位方向におけるカテーテル60の軸方向の動きを妨げるために、リテイナー20により保持されたカテーテルのY字状部位112の分岐部同士の間に位置するように形成される。従って、示した実施形態において、テーパーをつけたチャネル形状と保持用構造体73とを組み合わせることによって、近位及び遠位の両方向におけるカテーテル8の被保持部分の軸方向の動きが妨げられる。
【0068】
保持用構造体73は、遠位方向におけるカテーテル8の軸方向の動きを妨げるのに十分な程度の高さを有することが望ましい。この目的のために、保持用構造体73は、横断方向に、該構造体が配置される場所におけるチャネル60の高さの少なくとも約25%の高さを有する。本適用において、保持用構造体は、チャネル60の下端から上端まで延びることが望ましい。
【0069】
示した実施形態において、保持用構造体73は、ベースポスト74とカバーポスト78とによって形成される。ベースポスト74は、ベース22と一体形成されることが望ましく、チャネル60の遠位端64へ向かってチャネル60内に配置される。カバーポスト78は、チャネル60の遠位端64においてカバー24と一体形成される。示した実施形態では、ベースポスト74とカバーポスト78とがチャネル60内に位置するが、ポスト74、78は、チャネル60の遠位端64の外側に配置可能である。
【0070】
1つの形態において、ベースポスト74は、Y字状部位の分岐部114と分岐部116との間を延びるカテーテル8のウェブ(図14を参照)の近くに位置するかまたはそれに接する位置へ上端が延びる大きさである。示した実施形態において、ポスト74の上端は、図6において最もよく分かるように、概ねベース20の第1の側部26、第2の側部28の上面と同一平面に配置する。カバーポスト78は、ベース22に隣接して位置するカバーの第1の側部32と第2の側部34との内面により画定される平面と概ね同一平面である場所へ同様に延びる。
【0071】
図6において最もよく分かるように、チャネル60内におけるポスト74の横方向の位置は、透析用カテーテル8の膨張内腔分岐部114と排出内腔分岐部116との間の合流点と一致する。ポスト74は、チャネルの遠位端64においてチャネル60を分割する。
【0072】
カバーポスト78は、ベース22上のポスト74について上述した方法と同様の方法でカバー24上において形成され配置される。従って、示した実施形態において、ポスト78は、概ねベースポスト74に対向する。この特別の設計によって、図5から理解されるように、ポスト74、78と、チャネル60とを組み合わせることによって、チャネルの近位端62と遠位端64との間に概ねY字状の凹所が画定される。
【0073】
示した実施形態において、カバーポスト78の横断方向の高さは、ベースポスト74よりも低い。しかしながら、ポスト74、78を同じ高さにするか或いは、カバーポスト78をベースポスト74より長くすることができる。図11において最もよく分かるように、ポスト74、78は、境界面に形成される狭いギャップを除いて、横断方向にチャネル60を跨ぐことが望ましい。このギャップは、後述する理由のために、Y字状部位の分岐部114、116間においてカテーテルウェブの厚さより若干薄くすることができるとともに、カバー24を閉じるとヒンジ40により与えられるギャップに相当する。
【0074】
従って、ポスト74、78は、カテーテルY字状部位112がチャネル60内に配置されると、カテーテル8のこれらの2つの分岐部114、116の間を延びる。ポスト74、78はともに、遠位方向にカテーテル8の長手方向の動きに対する止め部として機能し得る。すなわち、遠位方向における長手方向の動きによって、カテーテルのY字状部位112がポスト74、78と接触する。剛性を有した構造のポスト74、78が、さらなる長手方向の動きを妨げる。
【0075】
ポスト74、78は種々の断面形状にすることができるが、ポスト74、78は、望ましくは本適用において、Y字状部位112における2つのカテーテル分岐部114、116間の空間に相当する概ね三角形の断面形状を有する。しかしながら、ポストの近位縁は、丸くして、この場所でカテーテル8とリテイナー20との間において角張った部分との接触をしないようにすると有利である。
【0076】
ポスト74、78はまた、横断方向にポスト74、78を相互ロックするとともにカテーテル8が端部間においてギャップから引き抜かれないようにする相互係合エレメントを含み得る。示した実施形態において、ピンまたは突起部81と対応の受容部79とが、ポスト74、78の相互に対向した端部同士の間に配置される。図9において最もよく分かるように、受容部79は、カバーポスト78の横断方向端部に形成され、ポスト78の境界面から横断方向にポスト78内へ延びる。突起部81は、ベースポスト74の横断方向軸線に平行方向にベースポスト74の端部から延びる。突起部81は、受容部79内に嵌合するように形成される。カバー24を閉じると、ピン81は、受容部79内に延びて、ポスト74、78を相互ロックする。
【0077】
カテーテル8のリテイナー20に対する軸方向の動きを妨げるために用いる可能性のある別の保持機構には、カバー24を閉じると相互に協働するように配置される突出部が含まれる。例えば、1つの形態において、協働するポスト74、78は、カテーテル8の内腔を実質的に閉塞させることなくそれらの間においてカテーテルの構造上の一部分(例えばウェブ)を捕捉するように配置可能である。別の形態において、突起部81は、リテイナー20の面に対してカテーテルの一部分(例えばウェブ)を単に押さえつけるように、受容部79なしに使用可能である。例えば、突起部81は、ベース22またはカバー24のいずれかの一部分から延びるとともに、カバーを閉じると突起部81に対向する(ポスト、プラットフォーム、チャネル面である)対応の面と協働し得る。突起部81は、カテーテル部分内へ突出しそれを対応の面に対して押しつける。
【0078】
その代わりに、突起部81は、カテーテルの一部分を捕捉するように受容部79とともに使用可能である。カバー24を閉じると、突起部81は、カテーテルボディ8の一部分を受容部79内へ押し込んで、カテーテルの内腔を閉塞させることなくこれらの構成要素間においてカテーテル8の構造上の一部分を捕捉する。リテイナー20とカテーテルボディ8とがこのように係合することによって、リテイナー20に対するカテーテルの軸方向の動きが妨げられることになる。
【0079】
ラッチ
チャネル内において被作用カテーテル部分を堅固に保持するために、ベース22とカバー24とは、閉鎖位置にそれらを結合する相互係合構造体を含む。示した実施形態において、図10から図13において最もよく分かるように、ラッチ機構80が、カバー22をベース24に固定するために用いられる。ラッチ機構80は、少なくとも1つの可動キーパー88と少なくとも1つのラッチ90とを含む。キーパー88は、カバー24上に配置され、またラッチ90はベース22上に配置される。しかしながら、これらの構成要素は、ベース及びカバー上に逆に配置することができる。
図10において最もよく分かるように、各キーパー88は、カバー24の第2の側部34からベース22へ延びるバー92を含む。2つのタング94が、バー92の下方端部96に形成される。望ましくは、タング94の下方端部96は、医療サービス提供者の手袋または皮膚に刺ささったりまたは他の材料上において引っかかったりしないように比較的尖っておらず滑らかである。操作者用レバー98が、バー92の側部へ延び、外側端部に大きくなったプラットフォームまたはイヤー部100を含む。操作者用レバーは、カバーが閉鎖位置にある時にバーから上方に向けて角度がつく。このように、操作者用レバー上における下向きの力は、バーを内側に撓ませて、端部をラッチから非係合にできる分力を生じる。キーパー88全体は、一体部品を形成するようにカバー24を伴って形成されることが望ましい。
【0080】
ラッチ90は、バー92及びタング94を受け入れる受容部104を含む。ラッチ用受容部104は、カバー24が閉鎖状態になる時に端部94がパチンと嵌まる内側ノッチ106を含む。しかしながら、同じ効果を達成するように、タングを受容部内に配置し、ノッチをバー上に配置することができる。ラッチ90は、一体部品としてベース22を伴い形成されることが望ましい。
【0081】
示した実施形態において、リテイナー上に前方から後方へ対称的に配置された2つのタング94と2つのノッチ106とが存在する。各ノッチ106は、カバー24を閉じるとキーパータング94の1つを受け入れるように配置される。
【0082】
受容部104の入口は、チャンバー縁を含む。チャンバー縁は、キーパー88をラッチ受容部104内へはめ込む時にキーパーバー92が内側へ曲がるように、受容部104の中央へ内側に傾斜している。
【0083】
図9及び図10から最もよく理解されるように、ベース22の第2の側部28はまた、対応のタング94が受容部104内にはめ込まれる時に操作者用レバー98の一部分と、キーパー88のバー92とを受け入れるスロット108を含む。
【0084】
操作において、カバー24は、閉鎖位置に向かって回転可能である。カップリング形成材料を比較的薄いストリップにすることによって、ヒンジ40は、カバー24に指で圧力をかけて閉じる時に撓み得る。タング94の下方端部は、カバー24が閉鎖位置近くになると、ラッチ受容部104の面取り縁107と接する。引き続きチャネルの方へ内側にバー92に圧力をかけることによって、タング94が受容部を通過し得る。受容部104のスロット108は、タング94がさらに受容部104内に押し込まれると操作者用レバー98を受け入れる。カバー24がベース22の頂上に着座する時に撓むバー92により与えられるスプリング力のもとで、タング94は、ノッチ106内にパチンと嵌る。タング94と、ノッチ106の対応の面との間における相互作用によって、カバー24がこの位置に保持される。図11において最もよく分かるように、操作者用レバー98は、カバー24がラッチ止めされるとベース22の横方向側部へ延びる。
【0085】
医療従事者が、操作者用レバーを下向きに押してラッチ機構80を開く。角度のついた外面にかけられた下向きの力によって、内側にバー92を撓ませノッチ206からタング94を解放する内向きの力の成分が作用する。撓んだヒンジ内に蓄積された内在するスプリング力は、受容部104からキーパー88を外へ移動させる横断方向の力の供給を支援する。次に、医療従事者は、カバー24を開けて、ベース22の内側溝30と、カバー24の内側溝36とを露出させることができる。
【0086】
カバー24とベース22との間における解放可能な係合によって、開閉を複数回繰り返す場合においても同じリテイナー20を使用可能である。これによって、アンカリングシステム10にカテーテルを繰り返し取り付け、取り外すことができる。さらに、ベース22にカバー24を連結するヒンジ付き連結部は、カバー24が、アンカリングシステム10からカテーテルを取り外す時に紛失したり置き間違えたりしないことを保証する。医療従事者は、カバーを探したり、ラッチ前にカバーを方向付けたりする時間を浪費しなくて済む。
【0087】
変形
上述の技術に対してさらに進んだ技術を用いて医療用物品の固定をさらに堅固にすることができる。これらは、以下に述べるようにリテイナーのチャネル内における摩擦的隆起部及び固定用バーブの使用を含み得る。
【0088】
摩擦的隆起部は、カテーテルの軸方向の動きを妨げるようにさらなる保持機構としてチャネル面上に配置可能である。これらの隆起部は、ベース及びカバーと一体形成され、チャネル内へ突出する。このような隆起部は、後述の固定用バーブ付きでまたはなしで、上述の保持機構に加えて使用可能である。
【0089】
隆起部は、望ましくは平滑で中実の構造だが、中空の構造とすることができる。示した実施形態における隆起部は、概ね断面が三角形であり、チャネルの一方の端(例えば遠位端)に向かって角度が付けられている。しかしながら、隆起部の断面は、チャネル中におけるカテーテルの軸方向の動きを妨げることになる他の形状にすることもできる。
【0090】
各隆起部は、望ましくは前方壁または前縁を有し、該前方壁または前縁は、前方壁とチャネル面との間において測定した角度より小さい角度を形成する。隆起部は、チャネル内へ若干、望ましくは所定の適用では0.1mmと10mmとの間の横断方向の距離を突出する。隆起部はまた、チャネル中において長手方向軸線に概ね垂直に配置される。
【0091】
摩擦的隆起部がそのように配置される場合、摩擦的隆起部は、カテーテルのY字状部位の外面内へ無理な力はかからないものの堅固に食い込むかまたは押し込まれる。カテーテルボディ材料の可撓性によって、かつ、隆起部がカテーテルボディ内へ食い込む程度によって、このような接触は、カテーテル内腔内の流体の流れを妨げないかそれとも著しく損なわない。しかしながら、隆起部の角度付けの方向と関連付けられるこの接触度は、特に隆起部の角度付けの方向と反対方向へのカテーテルの動きを妨げる。
【0092】
1つまたはそれ以上の固定用バーブはまた、長手方向にカテーテルを保持するために使用可能である。各バーブは、鈍い先端を有し概ね円錐形である。本適用におけるバーブは、約0.1mmと約3mmとの間の範囲の量をチャネル内へ延びることが望ましい。
【0093】
リテイナーは、有利には、ひとまとめに参照番号で示す、固定用バーブの少なくとも1つのセットを含み得、バーブは、相互に協働するようにチャネル内に配置される。バーブは、有利には、概ね横方向の同じ平面(すなわち横方向軸線と横断方向軸線とにより画定される平面)内に配置可能であり、相互に間隔をあけて配置される。さらに、バーブは、互い違いに配列してチャネルの概ね対向した面上に間隔をあけて配置することが望ましい。すなわち、バーブの配置は、横方向にカバー面とベース面との間において互い違いにされる。結果として得られる部分的に重なるバーブのパターンによって、長手方向に引っ張られてもカテーテルにトルクを付与することなくカテーテルが堅固に保持される。示した実施形態において、1つのバーブは、カバー面上に配置され、チャネルの隣接した側部とポストの隣接した側部とから横方向に概ね等間隔に配置される。一対のバーブが、ベース面上に配置される。これらのバーブは、相互に間隔をあけて配置され、その対は、横断方向軸線に対して対称的に配置されるとともにカバー面上のバーブを通り延びる。
【0094】
別の好適な実施形態において、リテイナーはまた、バーブの第2のセットをさらに含み得る。これらは、概ね上の説明に従って配置されるが、バーブの数を少なくし、セットの数を少なくして使用することもできる。1つの特定の実施形態において、バーブの1つのセットは、ポスト74、78と、ベース22の第1の側部26及びカバー24の第1の側部32との間に配置され、バーブの他方のセットは、ポスト74、78と、ベース22の第2の側部28及びカバー24の第2の側部34との間に配置される。第1のセットのバーブは、望ましくは、チャネル60の遠位端64へ向かって角度付けされて、カテーテル8が近位に引っ張られた時に、かつ、カテーテル8の排出用分岐部116が遠位に引っ張られた時に、近位方向におけるカテーテルの膨張内腔分岐部114の動きを妨げる。しかしながら、第2のセットのバーブは、カテーテル8が遠位に引っ張られた時にカテーテル8の動きを妨げるように、チャネル60の近位端62へ向かって角度付けされることが望ましい。
【0095】
ここに説明のアンカリングシステムは、滑りやすいコーティングを有したカテーテルの軸方向の動きを止めるために、かつ、患者に対してカテーテルを保持するために、特に適合される。この目的のために、本アンカリングシステムは、1つまたはそれ以上の保持機構を用いる。本アンカリングシステムは、面倒な事態が発生しない程度にカテーテル中の流体の流れをそれほど損なわずに(すなわち実質的に妨げずに)これを達成する。説明したように、このような保持機構には、特に、カテーテルの一部分を保持するチャネルの形状、チャネルと同心に配置されるかまたはチャネル内に配置される保持構造体、1つまたはそれ以上の固定用バーブまたは、実質的にカテーテル排出内腔を閉塞させることなくカテーテルボディ内に食い込む摩擦的隆起部、及び共に、カテーテルの一部分に締め付けられるかまたはそれを押さえつける協働部材(例えば透析カテーテルのY字状部位における分岐部同士の間に形成されるウェブ)が、含まれる。
【0096】
操作
図14から図16に示すように、医療従事者は、上述のアンカリングシステム(または容易に明らかとなる変形物)を用いて透析用カテーテル(または他の医療用物品)を患者に固定可能である。医療従事者は、まずリテイナー20を開けて、ベース22上の溝30を露出する。一度開けると、カテーテル8を、溝30上方において横断方向に整列させることができる。次に、カテーテル8をチャネル60内へ配置することができる。Y字状部位とともに使用するためのポスト74(または別の突出部)を伴ってチャネル60が形成される場合には、第1の分岐部114と第2の分岐部116とをポスト74の周りに整列させ、カテーテルのY字状部位112の位置を残りの溝の領域内に堅固に嵌合するように調節する。一度カテーテル8をそのように整列させ溝30内に配置したら、上述のように、カバー24を閉じてラッチを掛ける。溝30、36の形状は、チャネルが、カテーテルのY字状部位の保持された全長に沿って少なくとも正反対の側においてカテーテルのY字状部位112を支持するとともに、カテーテルのY字状部位の一部分を粘着スポット200と接して配置することを保証する。これは、リテイナー20とカテーテル8との間の摩擦的接触を促進するばかりでなく、カテーテル8がリテイナー20でよじれたり折れ曲がったりしてこれによりカテーテルの内腔の1つまたはそれ以上を閉塞させることを妨げる。
【0097】
示した実施形態において、ポスト74、78は、共に、カバーが閉じられると受容部79内へ突起部81を挿入して結合する。従って、ポスト74、78は、この位置に相互ロックされて、Y字状部位112の遠位側において、チャネルの横断方向の長さ全体を跨ぐ止め部を形成する。(存在する場合は)種々の固定用バーブも、それらが角度付けされた方向と逆方向におけるカテーテル分岐部114、116の動きに抵抗するように、カテーテルのY字状部位112のボディ内へ食い込ませる。
【0098】
たいていの透析用カテーテルがほぼ同じ横断方向の高さであるので、たいていのカテーテルを固定する、単一の大きさのチャネルを有した単一の大きさのリテイナーを使用可能である。リテイナーの材料は、若干可撓性があり、これによって、リテイナーが、Y字状部位に配置されたより厚いプラスチックハブを含み得るカテーテルを収容することに役立つ。さらに、チャネル上に配置された粘着スポット200は、望ましくは、さらに実質的にリテイナーの操作を変更することなく、より太いカテーテルが粘着スポットを単に圧縮するように、横断方向に圧縮性がある。
【0099】
カテーテル8が近位方向に引っ張られる場合、チャネル60のテーパーのついた形状によって、Y字状部位112のより大きい遠位端がリテイナーから引き抜かれることが防止される。また、リテイナーが、チャネルにカテーテルウェブを締め付けるかまたはその内部に押さえつけるポストまたは突起部を用いる場合、リテイナーとカテーテルとの間のこの係合によってさらに、カテーテルが所定位置に固定される。カテーテルが遠位方向に引っ張られた場合、相互ロックされた74、78と粘着スポットの作用とによって、この動きが妨げられる。
【0100】
従って、リテイナー20は、滑らかなカテーテルを伴って使用された場合でも、リテイナーに対するカテーテル8の長手方向の動きを妨げる。しかしながら、各保持機構により得られる保持効果は、カテーテルの内腔を実質的に閉塞させない。突出部(すなわち、ポスト及び/または突起部)の相互作用は、カテーテルウェブ(または同様の構造体)にのみ影響しカテーテルボディを圧迫しない。同様に、チャネルの形状とポストとは、両方の軸方向におけるカテーテルの動きを制限するが、チャネル内にかつポストの周りに挿入された時にカテーテルボディを折り曲げたりねじったりしない。また、固定用バーブはカテーテルボディを圧迫するが、食い込みを制限することによって、対応のカテーテル内腔は全く閉塞せず突き刺されたりしない。
【0101】
同様に、全ての場合において粘着スポット200の作用は、カテーテルのY字状部位の面に沿って発揮されて、カテーテルとリテイナーとの間の長手方向及び横方向の動きを妨げる。この力がY字状部位に掛けられるので、まずカテーテルの面に平行な方向において、粘着スポットにより得られる保持力によって、カテーテルの内腔は閉塞しにくい。
【0102】
さらに、多くの透析用カテーテルは、他のタイプのアンカリングデバイスに取り付けるために従来使用されている、ウィング部分を含む。カテーテルの固定は、ウィング状部分がリテイナーの近位に位置するがそれと同一平面にならないように本発明のリテイナーのチャネル内へカテーテルを配置することによって、さらに堅固にすることができる。このように、リテイナーのカバーを閉じて固定する時に、カテーテルのウィング状部分の幅によって、カテーテルがリテイナーのチャネル内へ引っ張り込まれることが妨げられる。これによって、患者におけるカテーテルの移動をさらに妨げることができる。
【0103】
よって、本発明に係る上述のアンカリングシステムの種々の実施形態は、患者に透析用カテーテルまたは他の医療用物品を解放可能に固定する手段を提供する。カテーテルは、カテーテルを移動させずに、交換する固定用品及びアンカーから解放可能である。アンカリングシステムは、一度リテイナー内に配置されると、患者におけるカテーテルの長手方向、横方向、及び横断方向の動きを妨げる。
【0104】
当然だが、本発明の種々の特定の実施形態に係る全ての目的または利点を必ずしも達成しなくてもよいことが、理解されよう。従って、例えば、当業者は、ここに教示または示唆可能な他の目的または利点を必ずしも達成せずに、ここに教示された1つの利点または利点群を達成するかまたは最適化するように、本発明を実施及び実行可能であることを、理解するだろう。
【0105】
さらに、当業者は、異なる実施形態から種々の特徴を相互に入れ替え可能であることを理解するだろう。例えば、溝の形状は、示した実施形態のラッチ及びキーパーの設計を維持しながら、テーパー付きでないチャネルを使用することにより、大きなY字状部位を有したカテーテルを収容するように設計可能である。或いは、粘着スポットは、カテーテルのY字状部位の一部分を所定の位置に押さえつける保持ポストをなお用いながら特定の設計から取り除くことができる。ここに述べた変形に加えて、当業者は、各特徴についての他の既知の均等物を、本発明の原理に従ってアンカリングシステム及びリテイナーを構成するように、組み合わせて適合させることができる。
【0106】
ある好適な実施形態及び例に関して本発明を開示してきたが、本発明が、特に開示された実施形態を超えて他の代替実施形態及び/または、本発明の使用方法及び、明白な変更及び均等物に及ぶことが、当業者に理解されよう。従って、ここに開示した本発明の範囲は、上述し開示した特定の実施形態に限定すべきではないが、以下に続く特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ限定されるべきものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
該ベースに回動可能に連結されるとともに開放位置と閉鎖位置との間を可動なカバーと、
前記カバーが閉鎖位置になると選択的に前記ベースに前記カバーを固定するために前記ベースとカバーとの間において操作可能なラッチ機構と、
を備え、
前記ラッチ機構は、キーパーとラッチとを含み、
前記キーパーは、前記ベースの少なくとも一部分と相互係合可能な少なくとも1つの部材を有し、
前記ラッチは、前記カバーが閉鎖位置になると部材の少なくとも一部分を受け入れる凹所を有し、
前記キーパーはまた、閉鎖位置から開放位置に前記カバーを動かすために、前記キーパーの部材を内側に撓ませて該部材を前記ラッチの凹所から非係合とするように、医療従事者が指先で作動可能な操作者用レバーを含み、
前記ラッチはまた、前記ラッチが閉鎖位置にある時には前記操作者用レバーが内部に位置するとともに前記カバーが開放位置から閉鎖位置へ動く時にはバーが内側へ撓み得るレリーフ部を含んだ、患者の皮膚上に配置されたアンカーパッドに細長い医療用物品を固定するリテイナー。
【請求項2】
前記操作者用レバーは、前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記ベースに対して角度を有する、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項3】
前記操作者用レバーは、下向きの力が前記操作者用レバーに作用したとき、前記バーを内側に撓ませるよう構成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項4】
前記キーパー及びカバーは、一体部品として形成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項5】
前記ラッチ及びベースは、一体部品として形成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項6】
複数のタングと複数のノッチとをさらに備え、
前記複数のタングは、前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記複数のノッチ内に配置されるよう構成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項7】
前記ラッチは、少なくとも1つの面取り面を有する、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項8】
前記少なくとも1つの面取り面は、前記カバーが開放位置から閉鎖位置へ移動したとき、前記バーを内側に撓ませるよう構成されている、請求項7に記載のリテイナー。
【請求項9】
前記カバー及びベースは、前記カバーが閉鎖位置になるとチャネルを画定するように協働するとともに、前記細長い医療用物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成され、当該リテイナーは、
少なくとも前記カバーが閉鎖位置になると、前記チャネル上に配置される粘着スポットであって、前記リテイナーと前記医療用物品の少なくとも一部分との両方に接する粘着スポットと、
前記チャネル内へ突出するとともに、前記医療用物品の少なくとも一部分と係合するように配置された少なくとも1つのリテイナー部材と、
をさらに備えた、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項10】
前記粘着スポットは、少なくとも前記医療用物品が前記チャネル内に配置されたとき、前記医療用物品の動きを妨げる、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリテイナー部材は、少なくとも1つの方向において前記チャネル中における医療用物品の軸方向の動きを妨げるように構成された、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項12】
前記粘着スポットは、少なくとも前記医療用物品の受け入れ部分が前記チャネル内に配置されて前記カバーが閉鎖位置にあるとき、横断方向に圧縮されている、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項13】
前記チャネルは、種々の高さの医療用物品に適応する寸法及び形状である、請求項12に記載のリテイナー。
【請求項14】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記医療用物品の表面と前記チャネルの表面との間に摩擦的力をかける、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項15】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記チャネルの表面と前記医療用物品の表面との間に横断方向力をかける、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項16】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記チャネルに対して前記医療用物品の受け入れ部分にバイアスを提供する、請求項15に記載のリテイナー。
【請求項17】
前記医療用物品は、前記医療用物品の細長いボディが2つの細長いボディに分かれる箇所に分岐部位を含むとともに、前記分岐部位の近位に配置されたウィング部を含む、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項1】
ベースと、
該ベースに回動可能に連結されるとともに開放位置と閉鎖位置との間を可動なカバーと、
前記カバーが閉鎖位置になると選択的に前記ベースに前記カバーを固定するために前記ベースとカバーとの間において操作可能なラッチ機構と、
を備え、
前記ラッチ機構は、キーパーとラッチとを含み、
前記キーパーは、前記ベースの少なくとも一部分と相互係合可能な少なくとも1つの部材を有し、
前記ラッチは、前記カバーが閉鎖位置になると部材の少なくとも一部分を受け入れる凹所を有し、
前記キーパーはまた、閉鎖位置から開放位置に前記カバーを動かすために、前記キーパーの部材を内側に撓ませて該部材を前記ラッチの凹所から非係合とするように、医療従事者が指先で作動可能な操作者用レバーを含み、
前記ラッチはまた、前記ラッチが閉鎖位置にある時には前記操作者用レバーが内部に位置するとともに前記カバーが開放位置から閉鎖位置へ動く時にはバーが内側へ撓み得るレリーフ部を含んだ、患者の皮膚上に配置されたアンカーパッドに細長い医療用物品を固定するリテイナー。
【請求項2】
前記操作者用レバーは、前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記ベースに対して角度を有する、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項3】
前記操作者用レバーは、下向きの力が前記操作者用レバーに作用したとき、前記バーを内側に撓ませるよう構成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項4】
前記キーパー及びカバーは、一体部品として形成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項5】
前記ラッチ及びベースは、一体部品として形成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項6】
複数のタングと複数のノッチとをさらに備え、
前記複数のタングは、前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記複数のノッチ内に配置されるよう構成されている、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項7】
前記ラッチは、少なくとも1つの面取り面を有する、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項8】
前記少なくとも1つの面取り面は、前記カバーが開放位置から閉鎖位置へ移動したとき、前記バーを内側に撓ませるよう構成されている、請求項7に記載のリテイナー。
【請求項9】
前記カバー及びベースは、前記カバーが閉鎖位置になるとチャネルを画定するように協働するとともに、前記細長い医療用物品の少なくとも一部分を受け入れるように構成され、当該リテイナーは、
少なくとも前記カバーが閉鎖位置になると、前記チャネル上に配置される粘着スポットであって、前記リテイナーと前記医療用物品の少なくとも一部分との両方に接する粘着スポットと、
前記チャネル内へ突出するとともに、前記医療用物品の少なくとも一部分と係合するように配置された少なくとも1つのリテイナー部材と、
をさらに備えた、請求項1に記載のリテイナー。
【請求項10】
前記粘着スポットは、少なくとも前記医療用物品が前記チャネル内に配置されたとき、前記医療用物品の動きを妨げる、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項11】
前記少なくとも1つのリテイナー部材は、少なくとも1つの方向において前記チャネル中における医療用物品の軸方向の動きを妨げるように構成された、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項12】
前記粘着スポットは、少なくとも前記医療用物品の受け入れ部分が前記チャネル内に配置されて前記カバーが閉鎖位置にあるとき、横断方向に圧縮されている、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項13】
前記チャネルは、種々の高さの医療用物品に適応する寸法及び形状である、請求項12に記載のリテイナー。
【請求項14】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記医療用物品の表面と前記チャネルの表面との間に摩擦的力をかける、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項15】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記チャネルの表面と前記医療用物品の表面との間に横断方向力をかける、請求項9に記載のリテイナー。
【請求項16】
前記粘着スポットは、少なくとも前記カバーが閉鎖位置にあるとき、前記チャネルに対して前記医療用物品の受け入れ部分にバイアスを提供する、請求項15に記載のリテイナー。
【請求項17】
前記医療用物品は、前記医療用物品の細長いボディが2つの細長いボディに分かれる箇所に分岐部位を含むとともに、前記分岐部位の近位に配置されたウィング部を含む、請求項1に記載のリテイナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−183728(P2009−183728A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89700(P2009−89700)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【分割の表示】特願2002−517118(P2002−517118)の分割
【原出願日】平成13年8月1日(2001.8.1)
【出願人】(508046395)ヴェネテック インターナショナル,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【分割の表示】特願2002−517118(P2002−517118)の分割
【原出願日】平成13年8月1日(2001.8.1)
【出願人】(508046395)ヴェネテック インターナショナル,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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