説明

透析用マイクロ流体デバイス

本開示はマイクロ流体移動デバイスに関するものである。本デバイスは、作動流体間の相互汚染のリスクを軽減し、大容量で低コストの製造技術に適している。本デバイスは質量移動、熱移動または双方のために構成することができる。例えば、ある開示された実施形態では半透性膜を組込み、対象の物質をある流体から別の流体へと移動する。さらに本デバイスは熱移動コンポーネントと質量移動コンポーネントのどちらも組込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/220,117号の恩恵を主張するものであり、これを本明細書に援用する。
【0002】
本開示はマイクロ流体デバイスならびにそれらの使用および製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体技術の出現により、熱および質量移動の用途に大きな期待が見込めるようになった。例えば、成分の分離、加熱もしくは除熱またはそれらの組合せを必要とする多くの重要なシステムがある。これらの例には、血液透析、携帯用水の汚染水源からの分離、水の低温殺菌および小型熱交換機がある。
【0004】
血液透析、すなわち体外から体内への血液の浄化は、腎不全の治療に利用される処置である。血液の化学成分は、栄養素や酸素を身体の細胞に運び、そしてそれらの細胞から老廃物を持ち去るというその本質的な機能を行うために管理されなければならない。血液は多くの異なる大きさや種類の粒子を含み、これらには、細胞、タンパク質、溶解イオンおよび有機老廃物がある。ヘモグロビンやアルブミンなどのタンパク質を含む粒子の中には身体が適切に機能するためには不可欠なものがある。尿素、タンパク質の代謝から生じる老廃物および血液透析濾過のみで除去することのできる大型分子老廃物などのその他のものは、血液から取り除かなければならない。そうしなければ、それらは蓄積されて通常の代謝過程を妨げることとなる。さらに血液中に溶解した多くの単純イオンを含む他の粒子は身体が一定の濃度で必要とし、特にこれらの物質の摂取量が変わる場合には厳重に調整されなければならない。膜技術は、種々の塩の濃度が慎重に管理された透析液で血液を透析する場合に典型的に用いられる。より効率的かつコスト効率よく血液の透析および透析濾過を行うためには、透析に関連するメカニズムを向上させる必要がある。さらに、臨床現場以外の透析、例えば日中または夜間の自宅における透析に関しては、長い処理時間にわたってより低い流量(従来の透析システムの最低血流量よりも著しく低い)で血液を透析する必要があり、これらの技術はどちらも患者の身体の外にある血液量の減少を常に補助し、失血の可能性や損傷のリスクを低減し、患者の安全を増やす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示はマイクロ流体移動デバイスの実施形態に関するものである。本デバイスは質量移動用に構成することができる。例えば、ある開示された実施形態では、半透明膜をマイクロ流体移動デバイスに組込み、血液透析手順に沿って対象である物質をある流体から別の流体へと移動する。マイクロ流体移動デバイスは他の使用にも適しているが、本明細書においては、時折マイクロ流体移動デバイスを血液透析手順に使用するものとして記載している。
【0006】
従来のシステムでの膜内の質量移動速度は、バルク流体と膜表面との間の比較的厚い境界層の拡散速度に影響を受ける可能性がある。膜表面の近くの流体速度を例えば撹拌によって上げることは、境界層の厚さ、つまり有効拡散長を低減させる慣用法である。マイクロ流体デバイス内における膜の分離は、マイクロチャネルまたは流れ場などのマイクロ流体構成を使ってこの困難を克服する。マイクロ流体デバイスのチャネル深さの減少は、バルク流体を通る拡散によって生じる質量移動の制限に影響を与えることがある。しかしながらマイクロ流体デバイスの製造には、商業的な生産をより実行不可能にする複雑で遅い工程が含まれている。
【0007】
マイクロ流体デバイスを使った膜分離のもう一つの問題は、処理することのできる容量の固有の限界である。先に開示されたマイクロ流体膜デバイスは、複数のセパレータを平行にスタックすることによって所望の体積流量に到達することにより、この困難を克服した。このようなマイクロ流体膜デバイスは、米国特許出願第11/243,937号、米国特許出願公開第2008/0093298号明細書および同第2008/0108122号に開示されており、これらを参照として本明細書に援用する。加えて、相互汚染は流体分離工程における大きなリスクである。本願は、相互汚染を緩和するマイクロ流体デバイスの実施形態に関するものである。例えば、ある開示された実施形態では、圧縮シールを使って流体の相互汚染を低減またはほぼ削減している。特定の開示された実施形態では、各流体含有領域の周囲に完全な圧縮シールを組込んで相互汚染を防止している。さらに本デバイスは従来の低コスト、高容量技術を用いて製造することができる。
【0008】
マイクロ流体および熱移動技術は、米国特許第6,793,831号明細書、同第6,688,381号、同第6,672,502号、同第5,813,235号、米国特許出願公開第2008/0006040号明細書および同第2004/0157096号に記載されており、これらを参照として本明細書に援用する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示されたデバイスの一実施形態は複数の積層体を備え、少なくとも一つの積層体は前面形状を画定する前面と裏面形状を画定する裏面とを有する。前面形状は少なくとも一つのビアによって裏面形状に流体接続することができる。積層体は少なくとも一つの移動層によって交互に積層される。前面形状は、例えば、入口ヘッダおよび出口ヘッダとすることができる。裏面形状は、一つまたは複数のマイクロチャネルまたは流れ場とすることができる。一実施形態では、入口ヘッダは入口ポートを備え、出口ヘッダは出口ポートを備えることができる。
【0010】
所望される容積に合わせてデバイスを縮小または拡大するために、デバイスは流体浄化などの単位動作を行うことのできる複数のサブユニットのスタックを備えることができる。各サブユニットは、第1積層体、第2積層体および第1積層体の裏面と第2積層体の裏面との間に位置する移動層を有する。このデバイスはサブユニットの間に位置するガスケットをさらに備えることができる。各積層体は第1側面、第2側面および流れ場または少なくとも一つの、典型的には複数のマイクロチャネルを備える。複数のサブユニットは位置決めされてスタックされる。スタックは第1圧縮板と第2圧縮板との間に位置することができる。その後スタックは圧縮され、全ての流体含有領域のかなりのシールに影響を与えることができる。
【0011】
種々の実施形態のガスケットの設計は切り欠きを有することができ、流体が層間および/または流体入口および出口にわたる切り欠きを連通し、ガスケット材料が入口にたるんで流れを閉鎖するのを防止することができる。種々の実施形態において移動層は隣接する層の入口ヘッダと出口ヘッダに対応する領域に切り欠きを備えることができる。ガスケットと同様に、これによって移動層がヘッダに崩れ落ち、流れが閉鎖されるのを防止する。
【0012】
個々の積層体は前面と裏面に形状を持つことができ、これらの形状は一つまたは複数のビアで流体接続される。例えば、積層体は前面に一つの入口および一つの出口を、そして裏面に複数のマイクロチャネルまたは一つもしくは複数の流れ場を備えることができる。入口および出口は流体ヘッダまたはマニホールドと結合され、マイクロチャネルまたは流れ場の反対端に位置する一つまたは複数の第1ビアまたは一つもしくは複数の第2ビアによって、複数のマイクロチャネルまたは流れ場の反対端に流体接続することができる。流体入口および流体出口には支柱を画定して、隣接する積層体が入口および出口にたるんで流れを閉鎖するのを防ぐことができる。
【0013】
前面と裏面とを接続するビアはマイクロチャネルまたは流れ場に対して直角とすることができる。しかしながら、ビアは非直角の角度で積層体と交わることが所望される。非直角の角度とは0°以上90°以下であるが、より典型的には約45°〜約90°である。非直角のビアは流体の滞留またはガスの捕捉領域を最小限にすることなどにより、種々の恩恵を提供することができる。
【0014】
開示されたデバイスは種々の方法で構成することができる。例えば、開示されたデバイスの一実施形態では、サブユニットはほぼ同じ配向のスタック内の個々の積層体とほぼ同一である。例えば、サブユニットは全て第1積層体の前面を同じ圧縮板の方を向かせて配向させることができる。マイクロチャネルまたはサブユニット内の隣接する層の一つまたは複数の流れ場は相互に平行とするか、または直角とすることができる。平行するマイクロチャネルを有するサブユニットは隣接するサブユニットに対して直角とすることができ、圧縮シールをヘッダの周囲に維持する。
【0015】
また隣接するサブユニットは互いの鏡像とすることができ、スタック内に配向され、隣接するサブユニットの第1積層体の前面が互いに向き合い、隣接するユニットの第2積層体の前面が互いに向き合うようにすることができる。本実施形態の一つの利点は、簡素化されたガスケット設計である。本実施形態のもう一つの利点は、同じ流体を有する層の相互隣接による相互汚染の低減である。
【0016】
個々の積層体は2つ以上の個々の流路を有することができる。例えば、一つの積層体は、第1側面に画定される第1流路および同じ積層体の反対側面に画定される第2流路を有することができる。本実施形態では、積層体は両面積層体を意味する。例えば、上述の積層体に加え、サブユニット内の第1積層体および第2積層体の裏面は入口ヘッダおよび出口ヘッダをさらに備えることができ、第1積層体および第2積層体の前面はマイクロチャネルまたは一つもしくは複数の流れ場をさらに備えることができる。前面のマイクロチャネルまたは一つもしくは複数の流れ場は、一つまたは複数のビアによって裏面の入口ヘッダに流体接続し、一つまたは複数のビアによって裏面の出口ヘッダに流体接続することができる。サブユニットの間にはガスケットよりもむしろ移動層が位置する。移動層は質量移動層とすることができる。
【0017】
本実施形態は移動ユニットあたりの必要な積層体の数を低減する。片面の実施形態では、各移動ユニットに2つの積層体が必要とされ、一方で両面の実施形態では、各移動ユニットに(n+1)の積層体が必要とされる。ここでnは所望される移動ユニットの数である。このように、100ケの移動ユニットを有するデバイスの場合、両面の実施形態では101のみの積層体が必要とされ、一方で片面の実施形態では200の積層体が必要とされる。本実施形態における前面の入口および出口に含まれる流体と前面のマイクロチャネルに含まれる流体との間の相互汚染を軽減するために、移動層は入口ヘッダとマイクロチャネルまたは流れ場との間および出口ヘッダとマイクロチャネルまたは流れ場との間の隣接する積層体をほぼシールすることができる。裏面に存在する相互汚染のリスクも同様に緩和することができる。
【0018】
スルーカット(through-cut)マイクロチャネルまたは流れ場を用いる実施形態も、両面の実施形態の効率を実現しながら相互汚染を改善する。スルーカット実施形態において、各積層体の複数のマイクロチャネルまたは流れ場のかなりの部分は積層体の厚さ全体、つまり前面から裏面まで延在してスルーカットマイクロチャネルまたは流れ場を形成する。このように、マイクロチャネルまたは流れ場は2つの分離ユニットと同時に動作する。
【0019】
本実施形態の積層体は前面および裏面を備え、前面は入口および出口を有する。入口は一つまたは複数の入口ビアによって裏面に流体接続される。一つまたは複数の入口ビアは裏面のパーシャルシックネス(partial thickness)マイクロチャネルまたは流れ場によって、スルーカットマイクロチャネルまたは流れ場に流体接続され、出口は一つまたは複数の出口ビアによって裏面に流体接続される。出口ビアは裏面のパーシャルシックネスマイクロチャネルによってスルーカットマイクロチャネルまたは流れ場に流体接続される。スルーカットマイクロチャネルまたは流れ場に安定性を加えるために、パーシャルシックネス直角支持構造体をマイクロチャネルまたは流れ場に沿って一定間隔で配置することができる。スルーカット積層体は、第1積層体、第2積層体および移動層を有するサブユニットに配置することができる。本デバイスは複数のサブユニットを有することができ、第1積層体のマイクロチャネルは第2積層体のマイクロチャネルまたは流れ場とほぼ平行またはほぼ直角とすることができ、隣接するサブユニットのマイクロチャネルまたは流れ場とは直角とすることができる。
【0020】
マイクロ流体デバイスの実施形態は複数の積層体を備え、積層体の内の少なくとも一つは入口ヘッダおよび出口ヘッダを画定する前面と、少なくとも一つの裏面形状を画定する裏面とを有する。入口ヘッダおよび出口ヘッダは一つまたは複数のビアによって少なくとも一つの裏面形状に流体接続することができる。ビアの内の一つまたは複数は非直角とすることができる。本実施形態において、入口ヘッダおよび出口ヘッダに対応して切り欠きを画定する一つまたは複数の移動層は積層体を交互に積層する。
【0021】
本開示はまた複数の積層体を備えるマイクロ流体デバイスに関するものであり、少なくとも一つの積層体は入口ヘッダおよび出口ヘッダを有し、入口ヘッダおよび出口ヘッダに対応する切り欠きを画定する移動層は積層体を交互に積層する。先の実施形態の様に、本実施形態は、第1積層体、第2積層体および移動層を備えるサブユニットに構成することができる。一つまたは複数のサブユニットは圧縮板の間にスタックすることができる。ヘッダは流体入口および出口のための複数の支柱およびポートを画定することができる。積層体はマイクロチャネルあるいは一つまたは複数の流れ場を画定することができ、ヘッダは入口ポートと出口ポートとの間にほぼ同等の流路長さを設けるような形状とすることができる。ヘッダは、例えばほぼ三角形とすることができる。
【0022】
本実施形態は、先に開示された実施形態と同様に、鏡像サブユニットとして構成することができ、この場合、隣接するサブユニットの第1積層体の前面は互いに向き合い、隣接するサブユニットの第2積層体の前面は互いに向き合う。加えて、積層体は両面積層体とすることができる、または前述のスルーカットマイクロチャネルを画定することができる。本実施形態は、平行な、またはヘリングボーンパターンのマイクロチャネルまたは一つもしくは複数の流れ場などの種々の構成をとることができる。隣接する積層体は、サブユニット内またはサブユニット間に相互にほぼ平行な、または相互にほぼ直角なマイクロチャネルまたは流れ場を有することができる。
【0023】
本開示の別の実施形態は、前面および裏面を有する複数の積層体を備えるマイクロ流体デバイスであり、この場合、少なくとも一つの積層体は前面と裏面を流体接続するためのビアを画定し、このビアは前面と裏面に非直角に交わる。本デバイスは積層体を交互に積層する移動層をさらに備える。積層体は、例えば、入口ヘッダ、出口ヘッダおよびマイクロチャネルまたは流れ場などの前面および裏面の形状を有することができ、一つまたは複数のサブユニット内に配置させることができる。これらのサブユニットは圧縮板の間にスタックすることができ、ガスケットはサブユニットの間に配置することができる。
【0024】
種々の実施形態の複数のマイクロチャネルはほぼ平行している。しかしながら用途によってはその他のマイクロチャネルのパターンが所望される。当業者であればマイクロチャネルは入れ子式ヘビ状(nested serpentine)、フラクタル分岐、収束的またはヘリングボーンパターンとすることが可能なことを理解するであろう。加えて、マイクロチャネルの代わりに、流れ場を形成することのできる支持構造体のアレイも設けることができる。流れ場は移動層の活性表面積を増やし、捕捉された気泡またはその他の閉鎖物の周囲を流体が流れるようにして流体流れの分布を向上させるという付加的な利点を有することができる。
【0025】
流れ場は、そこを流体が流れる流体空間を画定する一組の対向する外壁に形成することができる。流れ方向に平行に、または流れ方向に対してある角度をなして、あるいはヘリングボーンパターンに配置されたパーシャルシックネス壁セグメントなどの一つまたは複数の支持構造体が空間に配置される。あるいは、支持構造体は複数の支柱を備えるピンアレイによって形成することができる。ピンアレイはマイクロチャネルに対する質量移動を向上させ、移動物質に露出される移動層の量を増やすこととなる。加えて、ピンアレイにおいては流量の誤分布が向上される、というのも、ピンによって流路間で流れることができるからである。一つの流路が遮断されると、流れは隣接する流路へ進むことができる。支柱は円筒状の円形基部を有するプリズムとすることができる。しかしながら、プリズムの基部は長方形、滴形、三角形、楕円形、多角形またはそのほかの幾何学的形状またはそれらの組合せなどの任意の形状とすることができる。ヘリングボーンパターンなどのアライメント許容設計は製造上の制約を緩和させる。例えば、流れ場は、流れ方向の右側に対してある角度をなして配向された複数の壁セグメントから形成される支持構造体を備えることができ、隣接する層は流れ方向の左側に対してある角度をなして配向された複数の壁セグメントを備えることができる。スルーカットマイクロチャネルはヘリングボーンパターンの壁セグメントを備え、隣接する壁セグメントが積層体の前面と同一平面となったり積層体の裏面と同一平面となったりを交互に繰り返すようにすることができる。
【0026】
流れ場は一様な密度で秩序配列の支持構造体を画定することができる。あるいは、流れ場は密度勾配と様々なサイズを有する支持構造体のアレイを画定することができる。例えば、流れ場の一端は反対端に近づくにつれて小さくなり、密度が増える、より大きく、そしてまばらな支持構造体を有することができる。加えて、流れ場の内のいくつかまたは全てに対しては、流動力学を増強させるために表面処理を行ってもよい。例えば、表面を処理して親水性にし、空気の捕捉を低減することができる。あるいは、支持のまばらな領域を疏水性にし、そして支持の濃密な領域を親水性にするなどして表面を選択的に処理し、捕捉された空気がまばらな領域から濃密な領域に移動して、ウィッキングおよび機械的な力で空気が外に出されるように促すこともできる。設計の制約に従って支持構造体を流れ場の中でランダムに分布させることができる。
【0027】
種々の実施形態の隣接する層は、マイクロチャネルまたは流れ場がそれらのそれぞれの流体を同じ方向(並流)、反対方向(向流)、または直角(交差流)など、相互にある角度をなして流すように配向することができる。流れ場の場合、流れの方向は流れ場を通って流れる流体の卓越方向を含むことができる。設計の考察においては、移動駆動力(温度勾配または濃度勾配)の増強の必要性と構成に固有の構造および動作の困難性とのバランスをとる。このような困難性には位置決めと層間の圧力差がある。当業者であれば、好適な相対流れ方向は用途によるものであることを理解するだろう。
【0028】
開示された実施形態は質量移動を行うように構成することができる。開示されたデバイスは特定の用途に適した任意の膜に対応するものである。質量移動用の典型的な膜は半透明膜である。このような膜としては、ポリマー、共重合体、金属、セラミック、合成物および/または液体膜がある。合成膜の一例として、ポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜があり、これはマイクロチャネル透析デバイスに使用することができ、この場合、代謝老廃物は血液から透析液に移動する。ガス‐液体コンタクター膜も液体とガスとの間で物質を移動させるために使用することができる。このような用途の一つには血液の酸素化があり、この場合二酸化炭素と酸素は膜を移動することができ、酸素は酸素または酸素富化空気から血液に移動し、二酸化炭素は血液からガスへ移動する。流体膜も使用することができる。流体膜は流体を含むスルーカットマイクロチャネルを有する積層体と、マイクロチャネル内に流体を含むように位置する第1および第2膜支持体とを備える。移動層は燃料電池用に構成することもでき、その場合、移動層は、陰極層と陽極層との間に位置するポリマー電解質膜を備える。
【0029】
種々の実施形態に使用される積層体は、マイクロチャネル形状または一つもしくは複数の流れ場を生成することのできる形状でパターン化することのできる任意の材料とすることができる。典型的な積層体材料には、ポリマー、金属、合金、超合金または金属間化合物がある。適切なポリマーとしては、下記のものに限定しないが、ポリカーボネート、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)などのハロゲン化ポリエチレンがある。適切な金属または合金としては、下記のものに限定しないが、ステンレススチール、銅、チタン、ニッケルまたはアルミニウムがある。
【0030】
マイクロチャネル/流れ場の深さは一般にできる限り浅くすることができ、一方でマイクロチャネルを通して流体を流すことも可能である。この深さは拡散または伝導長さに対応するか、またはそれらに合わせて深くしたり浅くしたりしなければならず、よって、マイクロチャネル/流れ場が浅くなればなるほど拡散または伝導経路は短くなり、移動効率は増大する。流れ閉鎖のリスクにより、深さの不規則性、プロセス流体の粘度、プロセス流体の汚染物質、または血液透析もしくは血液酸素化の場合における細胞損傷などの生物学的懸念により、最小深さは抑制される可能性がある。マイクロチャネル現象からの恩恵を実現するためには、マイクロチャネルの寸法は典型的に0以上約1000μm以下である。より典型的には、マイクロチャネルは0以上約400μm以下、さらに典型的には約10μm〜約90μmなどの、0以上約100μm以下である。
【0031】
本開示の実施形態は、熱または物質のある流体から別の流体への移動に有用である。第1積層体および第2積層体を有し、第1および第2積層体の各々は移動層によって分離されたマイクロチャネルまたは一つもしくは複数の流れ場に接続された入口ヘッダおよび出口ヘッダを有し、第1流体を第1積層体の入口ヘッダに供給し、第2流体を第2積層体の入口ヘッダに供給する本開示の実施形態を提供することにより、デバイスの構成に応じて、熱または物質を第1流体から第2流体へ、またはその逆に移動する。例えば、移動層がポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜などの半透明膜であるデバイスを供給することにより、そして血液を一つの積層体に、透析液を別の積層体に供給することにより、血液中の物質は透析液に移動する。
【0032】
同様に、ある開示された実施形態は熱移動システムに有用である。熱伝導性層をそのようなデバイスに組込むことによって、熱を一つの流体から別の流体へ移動することができる。このように、いくつかの実施形態では、移動層は熱移動層とすることができる。
【0033】
本発明の上述の、およびその他の目的、特徴ならびに利点は、添付の図面を参照して説明する下記の詳細な説明によってより明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】貫通ビアを有するマイクロ流体移動デバイスの概略図である。
【図2】マイクロ流体移動デバイスの単一層の一実施形態の斜視図である。
【図3】壁セグメント支持体を有するマイクロ流体流れ場の平面図である。
【図4】角度のついた壁セグメントを有するマイクロ流体流れ場の平面図である。
【図5】角度のついた壁セグメントを有する流れ場を並置した平面図である。
【図6A】円筒状の支持体を有するマイクロ流体流れ場の平面図である。
【図6B】一組の円筒状の支持体の上面図である。
【図6C】一組の円筒状の支持体の側面図である。
【図7】滴形状の支持構造体を有するマイクロ流体流れ場の平面拡大図である。
【図8】密度およびサイズ勾配の支持構造体を有するマイクロ流体流れ場の平面拡大図である。
【図9】ランダムに分布された支持構造体を有するマイクロ流体流れ場の平面拡大図である。
【図10】流体の入口および出口を示す組立てデバイスの部分斜視図である。
【図11】流体ヘッダを取り付けた2つの組合せられた組立てデバイスの斜視図である。
【図12】片面積層体を有するマイクロ流体移動デバイスの一実施形態の組立て図である
【図13】積層体の一実施形態の平面図である。
【図14】図6に示す組立てデバイスの斜視図である。
【図15】図6のデバイスの内部流体流路の詳細図である。
【図16】交差流を有する隣接層の流体ヘッダおよびマイクロチャネルの並置の略平面図である。
【図17】図3に示す流れ場を有する隣接層の並置の部分略平面図である。
【図18】片面ミラー設計である一実施形態の内部流体流路の詳細図である。
【図19】平行マイクロチャネルを有する片面ミラー設計である一実施形態の流体流路の詳細斜視図である。
【図20】両面積層体を有するマイクロ流体移動デバイスの一実施形態の部分組立て図である。
【図21】両面積層体の平面図である。
【図22】移動層の平面図である。
【図23】両面積層体を有するマイクロ流体移動デバイスの流路の詳細図である。
【図24】並流の両面積層体を有するマイクロ流体移動デバイスの流路の詳細図である。
【図25】スルーカットマイクロチャネルを有する積層体の平面図である。
【図26】横支持体を持つスルーカットマイクロチャネルを有する積層体の詳細平面図である。
【図27】ヘリングボーンパターンを持つスルーカットマイクロチャネルを有する積層体の詳細平面図である。
【図28】ヘリングボーンパターンを持つスルーカットマイクロチャネルを有する積層体の詳細斜視図である。
【図29】スルーカット積層体を有するマイクロ流体移動デバイスの組立て図である。
【図30】スルーカット積層体を有するデバイスの流体流路の詳細図である。
【図31】交互に平行および直角なスルーカットマイクロチャネルを有するデバイスの斜視図である。
【図32】流体膜を組込んだサブユニットの層の並置における平面図である。
【図33】流体膜を有するデバイスの概略図である。
【図34】燃料電池を有するデバイスの概略図である。
【図35】ヘッダ領域のない流れ場透析装置の積層体の一実施形態の平面図である。
【図36】ヘッダ領域のない流れ場透析装置の積層体の別の実施形態の平面図である。
【図37】流れ場を形成するレーザー経路の平面概略図である。
【図38】レーザー形成チャネルが交差する積層体の一部の拡大図である。
【図39】チャネルの間に形成された波状のチャネルとピンを示す積層体表面の拡大図である。
【図40】交互するヘッダのない積層体が交差流的にスタックされた実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
A.定義
透析液とは、適切な濃度で適切な溶質を有する血液透析用の水溶性流体である。
【0036】
マイクロチャネルとは流体を流すことのできるマイクロ流体デバイス内のほぼ束縛された空間であり、この空間は約1000μm以下の少なくとも一つの容量を有する。
【0037】
流れ場とはアスペクト比が約10以上のマイクロ流体経路のことをいう。この場合、アスペクト比はマイクロ流体経路の幅とマイクロ流体経路の深さの比率と定義され、流体はほぼマイクロ流体経路の長さの方向に流れる。
【0038】
スルーカットマイクロチャネルとは、マイクロチャネルが形成される積層体の厚さと同等の深さを持つマイクロチャネルのことをいう。
【0039】
片面積層体とは、移動層上における熱または質量移動が片面のみで生じるマイクロチャネルまたは流れ場形状などの形状を有する積層体のことをいう。
【0040】
両面積層体とは、両面にマイクロチャネルまたは流れ場形状などの形状を有する積層体のことをいう。
【0041】
半透明膜とは、ある物質はそれを通ることができるが他の物質はそれを通ることが制限された膜のことをいう。
【0042】
ビアとは、積層体前面のマイクロチャネルまたは流れ場と積層体裏面とを流体接続するために、積層体を通って流体を流すマイクロチャネルのことをいう。
【0043】
B.マイクロ流体移動デバイスの説明
図1は第1流体および第2流体の向流図100を示す。流路はマイクロチャネルという形で示されているが、流路は流れ場を通して使用することもできる。さらに、本明細書に記載する種々の実施形態はマイクロチャネル構成と共に示されるが、各実施形態はマイクロチャネルよりもむしろ流れ場を使って構成および動作することができる。
【0044】
第1流体はマイクロチャネル入口102に入り、ビア108を通って上部積層体104をマイクロチャネル106へと流れ、ビアで流体は移動層110と接触する。同時に、マイクロチャネル112内の第2流体は、ビア118を通って下部積層体114を出口116へと流れる前に、移動層110と接触する。移動層110は特定の用途のために選ばれた半透明膜とすることができ、一つまたは複数の物質をマイクロチャネル106内の流体からマイクロチャネル112内の流体へ、またはその逆に移動することができる。例えば、特定の用途として血液透析処置がある。
【0045】
マイクロチャネル106および112の幅は、動作パラメータと構造要件を考慮してできる限り広くして、移動層110がマイクロチャネルにたるむのを防止する。実際の幅は、移動層110の剛性および移動層における圧力差などの特定の要因によって変化する。典型的なマイクロチャネルの幅は100μm〜500μmであり、より典型的には約200μm〜約400μmである。
【0046】
質量移動デバイスに関しては、移動層110は移動層を通して対象物質の選択的移動を可能にする任意の材料とすることができる。当業者であれば、膜の選択は他の設計基準によるものであることを理解するであろう。他の設計基準としては、下記に限定されないが、移動する物質、流体内に存在するその他の物質、移動の所望速度、物質を運ぶ流体、物質を受け取る流体、動作温度および作動圧力がある。適切な膜としては、下記に限定されないが、ポリマー、共重合体、金属、セラミック、合成物、ポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜、ガス‐液体コンタクター膜、中空繊維膜および流体膜がある。
【0047】
質量移動デバイスが血液透析デバイスである場合、移動層に適切な膜としては、下記に限定されないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、アセチルセルロース、二酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースがある。
【0048】
積層体104および114は、ビアおよびマイクロチャネルまたは流れ場用の支持構造体などの特定の用途に有用な形状にパターン化することのできる任意の材料とすることができる。積層体の厚さは約200μm〜約1000μmとすることができ、典型的な厚さは約300μm〜約500μmである。適切な積層体材料としては、下記に限定されないが、ポリマーと金属がある。適切なポリマー材料の例としては、ポリカーボネート、テレフタル酸ポリエチレン(PET),ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)およびポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)などのハロゲン化ポリエチレンがある。金属積層体は金属積層体の中に形成された所望の形状を有することのできる任意のものとすることができ、例えば、光化学エッチングまたは加工してブラインド形状を含む所望の形状を有することのできる材料であってもよい。例としては、ステンレススチール、銅、チタン、ニッケルおよびアルミニウムがある。
【0049】
図2は積層体設計の一実施形態の斜視図を示す。図2はマイクロチャネルという形で示されているが、流れ場に流れる流体には同様のヘッダ構成を使用することができる。積層体104のヘッダ側120は、流体を受け取り、その流体をビア108に向ける入口102を備え、ビア108では、流体は板を通って板のマイクロチャネル側122(または流れ場側)へと流れる。その後流体はマイクロチャネル106または流れ場を流れ、そこで流体は図示しない移動層と接触する。入口102は支持構造体124を有し、隣接する積層体が入口102に崩れ落ちるのを防ぐ。図2ではマイクロチャネル106を複数の平行するマイクロチャネルとして開示しているが、本開示はこの構成に制限されない。
【0050】
1.流れ場
上述のように、実施形態の何れもマイクロチャネルではなく一つまたは複数の流れ場を組込むことができる。図3は、図1および図2の実施形態で使用される平行するマイクロチャネルではなく流れ場126を利用した実施形態を示す。流れ場126は流れ場126の外周を画定する一組の対向する壁127によって一般に形成することができる。壁の間には空間があり、流体は空間内を入口から出口に流れる。壁セグメント128のような一つまたは複数の個々の支持構造体は壁の間の空間に位置する。支持構造体は少なくとも部分的に隣接する積層体に支持を提供し、積層体が相互に崩れ落ちるのを防ぐように機能する。支持構造体はまた、膜が流路に崩れ落ち、血液または透析液の流れが遮断されるのも防ぐ。支持構造体は種々の空間配置に相対的に配置することができる。支持構造体は種々の形状またはサイズとすることができ、ピン、壁セグメント、バンプ、突起などの形状とすることができる
【0051】
支持構造体はマイクロチャネルを形成する細長い壁またはデバイダとは異なるため、支持構造体は個々の細長い流路を画定しない。むしろ、複数の支持構造体は流体を特定の方向に明確に向けることなく、対向する壁127の間の全体的な流れ空間に位置する。支持構造体は、マイクロチャネルの精密に誘導された方向性のある流れと比べてより自由な流体の流れ方向を可能にする。
【0052】
加えて、支持構造体の分離された、そして間隔のあいた特質により、隣接的なマイクロチャネルデバイダが使用される場合よりも多くの移動層の表面が露出されることになる。介在する移動層を透析する流体により多く露出することは、例えば、デバイス全体の効率を向上することとなる。当業者であれば、流体に露出される移動層の面積を最大限にする一方で、移動層の十分な支持構造体とのインテグリティを保ち、移動層が流れ場の一部に崩れ落ちないようにすることが所望されることを理解するであろう。さらに、流れ場の実施形態は、流体を気泡の周りに流すことによって、捕捉された気泡によって生じる流れの閉鎖を緩和する。これはより抑制された容量のマイクロチャネルでは容易に起こらない、というのも気泡は特定のチャネル内において流れを著しく遮断する大きさだからである。
【0053】
図3の例では、支持構造体は積層体の表面から上方に延在する長方形またはプリズム形状の本体からなる壁セグメント128の形状である。壁セグメント128は、単一のグループが図3の視点から列を形成するようにグループで配置される。流れ場126全体は一連の列を含む。各列は列内の端から端に、相互に間隔を空けて並べられた複数の壁セグメント128を有する。列の各々は隣接する列と間隔が空いている。壁セグメント間の間隔は、一つの列と隣接する列との間隔が可能であるように、単一の列内で変えることができる。さらに壁セグメント128は他の空間パターンで配置することもでき、列パターンの配置に限定されない。
【0054】
図4は、対向壁127の長軸に対してわずかに角度のついた壁セグメント128を持つ流れ場126の別の例を示す。対向壁127に対する壁セグメントの角度の大きさは変えることができる。壁セグメント128は全て同じ角度で配向させることができる。あるいはこの角度は、一つの壁セグメント128をある角度で配向し、他の壁セグメントを異なる角度で配向するといった具合に、壁セグメントによって変えることができる。
【0055】
壁セグメント128に角度をつけると、デバイスが並流または向流用に組立てられた際にアライメント許容設計となる。隣接する層をスタックする際に、一つの壁セグメントを別のセグメントに少なくとも一部が重なるように設置して、スタック内の層の間に適切な構造的支持を提供することが所望される。この点において、壁セグメント128は相対的なサイズおよび形状を有することができ、層がスタックされる際に、壁セグメントを相互に重ねて位置決めする可能性を最大限にするパターンに配置することもできる。図5は交差流構成130および並流構成132における隣接する層の並置を示し、各々は角度のついた壁セグメント128を有する。壁セグメントの角度のついた特質により、積層体がスタックされる際に、壁セグメントが相互に交差または重ねてスタックされる可能性が高まる。一つの層の他の層に対するxまたはy方向への僅かな動きにより、壁セグメントの交差において膜はさらに支持されるだろう。
【0056】
図6Aは流れ場136を有する積層体134を開示しており、この場合、支持構造体は複数の円筒状の支柱138を備える。壁セグメント128(図3)と同様に、複数の支柱138は移動のために露出される移動層(図示せず)の表面積を増やす。加えて、マイクロチャネル106(図2)のように、流体は狭いチャネルに閉じ込められないので、流体は気泡または汚染物質などの流れ閉鎖の周りを横断することができる。図6Bは円筒状の支柱138よりなる一組の支持構造体の上面図を示す。図6Cは一組の円筒状の支柱138の略側面図を示す。円筒状の支柱138の大きさは隣接する円筒状の支柱138との間の相対的な空間に合わせて変化させ、流れ場に所望の流れ特性を与えることができる。例えば、各支柱138の半径Rは、隣接する支柱138の間の距離Sのように、予め定めることができる。各支柱の高さHも変えることができる。支柱138は円筒のような円形基部を有するプリズムであってもよい。しかしながらプリズムの基部は、長方形、滴形、三角形、楕円形、多角形またはそのほかの幾何学的図形などの任意の形状とすることができる。例えば、図7は滴形状の支柱138に形成された支持構造体を有する流れ場136を開示している。本実施形態は流れ場136を通る流線形の流体流れ用に構成される。
【0057】
ある実施形態では、支柱の大きさは、円筒状の柱に関しては直径、長方形の柱に関しては幅において最小限とすることができ、または不規則な形状に関しては幾何学的中心までの平均距離の2倍とすることができ、移動層を穿刺せずに隣接する層の支柱の位置決めが可能なくらい十分に大きくすることができる。支持構造体は典型的には0μm以上1000μm以下である。より典型的には、支持構造体は約100μm以上約400μm以下のように、0μm以上500μm以下である。当業者であれば、支持構造体の所望される形状および大きさは、移動層の材料と厚さ、関与する流体、製造アライメント許容、および移動層の効率などの種々の要因によるものであることを理解するだろう。
【0058】
流れ場136は図8に示すように、密度勾配および様々なサイズを有する支持構造体138のアレイを画定することができる。例えば、流れ場136の一端は、より大きく、そしてまばらな支持構造体138を有し、これは反対端に近づくにつれてサイズが徐々に小さくなり、密度が徐々に増える。加えて、流れ場のいくつかまたは全てには、流動力学を増強させるために表面処理を行ってもよい。例えば、表面を処理して親水性にし、空気の捕捉を低減させるようにしてもよい。あるいは、支持密度の低い領域を疎水性にし、支持密度の濃い領域を親水性にするなどして表面を選択的に処理して、捕捉された空気がまばらな領域から濃い領域に移動するようにし、そこでウィッキングおよび機械的な力で空気を外に出すようにすることもできる。また、図9に示す設計の制約に従い、支持構造体138は流れ場全体にランダムに分布させることもできる。
【0059】
支持構造体138間の距離Sは動作パラメータと構造要件とを考慮してできる限り広くし、移動層110(図1)が流れ場136にたるまないようにすることができる。実際の幅は移動層110(図1)の剛性および移動層の圧力差などの特定の要因によって変えることができる。典型的な幅は100μm〜500μmであり、より典型的には約200μm〜400μmである。
【0060】
マイクロチャネルまたは流れ場の深さは移動効率の利点を生み出す。ミクロンスケールの寸法は、バルク流体中の拡散長または伝導長を減少することによって質量移動の制限を低減し、これによって移動層110(図1)の単位面積あたりの質量率を増やし、結果として効率を増やし、デバイスのサイズを低減させることができる。マイクロチャネルまたは流れ場の深さは典型的には0以上1000μm以下である。より典型的には、深さは0以上約400μm以下である。さらに典型的には、約10μm〜90μmなどのような、0以上約100μm以下である。
【0061】
2.質量移動デバイス
図10および図11を参照すると、組立てられた質量移動デバイス200は、積層体202、積層体204および移動層206より構成される。圧縮板208は、層状の板202および204ならびに移動層206に圧力をかけ、ほぼシールされた流体マイクロチャネルまたは流れ場を提供するために設けられる。圧縮板208は、例えば、圧縮板を連結する留め金具を使って、またはデバイス200を加締め機に設置して圧力をかける。当業者であれば、圧縮板に力を与える種々のさらなる方法が当技術分野に存在することを理解するであろう。流体ヘッダ210は質量移動デバイス200に動作可能に接続され、内部マイクロチャネル106および112(図1)に流体を供給するために、マイクロチャネル入口212およびマイクロチャネル出口214に流体接続される。図11は平行に配置された2つのマイクロ流体移動デバイスを示す。しかしながら当業者であれば任意の数のデバイスを平行、直列またはこれらの両方で構成することができることを理解するであろう。
【0062】
圧縮板208は、積層体202および204ならびに移動層206を均一に圧縮するのに十分な剛性を有する材料で作製することができる。適切な材料としては、下記に限定されないが、ポリマー、金属、セラミックまたは合成物がある。模範的な材料としては、例えばアクリルがある。しかしながら当業者であれば圧縮板の材料およびその厚さは、種々の要因、例えばスタック内の層の数、シールに影響を与えるために必要とされる形状、および動作温度などによるものであることを理解するだろう。圧縮板208は平らであってもよく、または、圧力をデバイス200に好適に均一に分布するのに適切な湾曲を有する凸面のような曲がり面を有することもできる。
【0063】
図12はマイクロ流体移動デバイス300の一実施形態の組立て図を示す。質量移動デバイス300は圧縮板302の間に保持された、積層体の連続するスタックを備える。連続するスタックはヘッドガスケット304およびガスケット306によって分離された反復サブユニットを備える。反復サブユニットは順に第1積層体308、移動層310および第2積層体312を備える。サブユニットの数は用途ならびに必要とされる容量処理能力および移動能力による。加えて、デバイスは図11に示すように平行に接続することができる。積層体308および312はほぼ同じ設計である。図13を参照すると、積層体308および312は流体ヘッダ314、流体入口316、支持構造体318、ビア322、反対側に位置するマイクロチャネル324(または流れ場)および出口326を有する。これは下記の図16の考察においてより詳しく見ることができる。再び図12を参照すると、ガスケット304および306は切り欠き325を有し、ガスケットが流体ヘッダ314を覆わず、ガスケット材料がヘッダ内に崩れ落ちて流体の流れを妨げないようにする。支持構造体318はスタックを通して圧縮力を伝達し、スタック内の圧縮シールを容易にして隣接する積層体がヘッダ内に崩れ落ちるのを防ぐ。支持構造体は移動膜がヘッダ内で流体の流れを遮断するのを防ぐ。圧縮板302に動作可能に接続されるのは、流体コネクタ328、330、332および334である。
【0064】
図14は組立てられたマイクロ流体移動デバイス300の斜視図を示す。圧縮板302は留め金具を受け、圧縮板を連結させてスタック338を圧縮するための開口336を有する。第1流体は流体コネクタ328を通ってデバイス300に入り、流体コネクタ330を通ってデバイスから出る。第2流体は流体コネクタ332を通ってデバイス300に入り、流体コネクタ334を通ってデバイスから出る。
【0065】
図15はスタック400の2つのサブユニットの内部流路の詳細図である。流体流路402は流体入口404から入る第1流体を示す。流体入口404は貫通孔であり、貫通孔は第1流体をスタック内のサブユニットに流体接続する。流体はヘッダ405に入り、支持構造体406の周囲を流れてビア408を通ってマイクロチャネル410または流れ場に流れ、ここで流体は移動層412と接触する。移動層412は第1流体を含むマイクロチャネル410または流れ場および第2流体を含むマイクロチャネル414または流れ場を動作可能に接続し、熱の移動または流体内の物質の選択を可能にする。例えば、質量移動層、例えば膜は、第1および第2流体の膜透過性コンポーネントをある流体から別の流体へと膜を介して移動できるようにする。
【0066】
図16は並置された双方の流体の流体流れのパターンの概略図である。流体入口404は第1流体を入口ヘッダ422に提供し、ここで第1流体は支持構造体406の周囲をマイクロチャネル324の方へ流れ、出口ヘッダ424内のマイクロチャネルの反対端で回収され、流体出口418から出る。図16の実施形態がマイクロチャネル423ではなく流れ場を含んでいるのであれば、流体は入口ヘッダ422から流れ場を通って出口ヘッダ424へと流れる。流体が流れ場を通って流れる際に、流体は流れ場内に設置された種々の支持構造体の周囲を流れる。
【0067】
第2流体は流体入口416から入口ヘッダ426へ入り、ここで第2流体はマイクロチャネル427または流れ場に向けられ、出口ヘッダ428で回収され、出口420から出る。図16は相互に直交して流れる第1および第2流体を有するデバイスを開示する。しかしながら当業者であれば、本デバイスを並流、向流または交差流のために構成することができることを理解するだろう。
【0068】
図17は、複数の平行するマイクロチャネルではなく、流れ場430および432を使った別の実施形態の隣接する層の並置を開示する。
【0069】
ある実施形態では、質量移動デバイスは第1流体が血液で第2流体が透析液の透析装置である。血液は流体入口404に入り、入口ヘッダ422に流れる。それから血液は流れ場またはマイクロチャネルを出口ヘッダ424に向かって流れ、流体出口418から出る。透析液は流体入口416を通って透析装置に入り、入口ヘッダ426に流れ、そこで透析液はマイクロチャネル427または流れ場に向けられ、出口ヘッダ428で回収されて出口420から出る。血液および透析液がそれぞれの流れ場を流れる際に、溶質は質量移動層を通って拡散される。個々の流れ場の間で圧力勾配が形成され、血液の透析濾過が実現される。この場合、流体は透析液から血液へ、および/または血液から透析液へと周期的に通過し、そうすることによって対流的な溶質移動により、分子を移動させる。拡散のみでは膜バリアの横断が遅くなる。限外濾過は透析における工程であり、この場合、患者の血流から余分な流体を除去する目的のために、流体は血液から透析液への拡散によって透析装置膜を通って移動する。水と共にいくつかの溶質もまた拡散よりはむしろ対流によって膜を通って取り出される。限外濾過は血液区分と透析液区分との間の圧力差によるものであり、この場合、流体はより高い圧力からより低い圧力の方へと移動する。
【0070】
図18は交互する鏡像サブユニット502および504を有するデバイス500の実施形態を開示する。本実施形態では組合せた流体ヘッダ506を作製し、流体ヘッダはビア510を通ってマイクロチャネル508(または流れ場)へと流体を向ける。サブユニット502および504はヘッダ506用の切り欠きを持つガスケット512によって分離される。この配置は相互に向き合う異なる流体を持つヘッダを有する実施形態と比較すると、流体の相互汚染を低減する。さらに、サブユニット502および506をこのように配置することにより、図12に304および306として示す2つのガスケット設計に対して、単一の簡素なガスケット設計を可能にする。本実施形態は図18に示すような交差流または図19に示すような並流または向流用に構成することができる。
【0071】
図19を参照すると、デバイス520は組合せられたヘッダ524および526を有するサブユニット522を備える。積層体528および530は移動層537によって分離された平行なマイクロチャネル532および534(または流れ場)を備える。平行なマイクロチャネル532および534によって並流する流路538および540が可能になる。あるいは、流路538または540の何れかの方向を反対にすることによって向流が実現される。
【0072】
さらに別の実施形態では、サブユニット間へのガスケットの必要性は完全になくなる。図20は質量移動デバイス600の部分組立て図を開示し、ここで、積層体604は両面にマイクロチャネル(または流れ場)およびヘッダを有する。この構成により、デバイス600を同一の移動層602および積層体604の交互の層として組立てることが可能になる。図21は積層体604の前面606および裏面608の平面図である。積層体前面606は第1流体入口ヘッダ612に流体接続された第1流体入口610を有する。第1流体入口ヘッダ612はビア614を介して積層体裏面608の第1流体マイクロチャネル616(または流れ場)へと流体を向ける。マイクロチャネル616は流体をビア618に向け、ビアはマイクロチャネルを積層体前面606の第1流体出口ヘッダ620に流体接続し、そこで第1流体は第1流体出口622から出る。同様に、積層体裏面608は第2流体入口624を有し、これは第2流体入口ヘッダ626に流体接続される。第2流体入口ヘッダ626はビア628に流体接続され、ビア628は第2流体入口ヘッダを積層体前面606の第2流体マイクロチャネル630(または流れ場)に流体接続する。第2流体マイクロチャネル630は流体をビア632に向け、ビア632は第2流体マイクロチャネルと第2流体出口ヘッダ634とを流体接続し、出口ヘッダは第2流体出口636に流体接続される。
【0073】
図22はマイクロ流体移動デバイス600(図20)に使用される移動層602を開示する。移動層602は、板604(図21)上の流体ヘッダ612、620、626および634の位置と関係する4つの切り欠き638を有する。両面積層体604は、先に開示された実施形態と比較してほぼ半分の数の積層体を有するデバイスを可能にするが、圧縮のみでは積層体の同じ側に位置するヘッダとマイクロチャネルの間の移動層を適切にシールすることができない。
【0074】
図23は両面積層体604を用いたマイクロ流体移動デバイス700の詳細図である。第1流体はヘッダ706から積層体604を介してマイクロチャネル702(または流れ場)に流れる。同様に、第2流体は積層体604の図示しないヘッダからヘッダ706としてのプレートの同じ側に位置するマイクロチャネル704(または流れ場)に流れる。移動層602は固体の表面ではなくマイクロチャネルデバイダ708によって隣接する層に対して圧縮されるので、流体は移動層の下で漏れ、ヘッダ706からの流体はマイクロチャネル704に入ることができる。移動層接着710はこれを防ぐ。接着またはレーザー溶接は移動層接着710を生成するが、しかしながら、当業者であれば他の方法を用いて接着を生成することができることを理解することだろう。このような方法としては、下記のものに限定されないが、RF溶接、超音波溶接および熱溶接がある。
【0075】
図23は交差流の両面デバイスを開示しているが、両面デバイスを並流または向流で構成することも可能である。例えば、図24は組合せヘッダ726および728を提供するように配置された両面積層体722および724を有するデバイス720を示す。マイクロチャネル730および732は平行で、移動層734によって分離されており、並流の流路736および738を可能にする。同様に、マイクロチャネル740および720は相互に平行しており、移動層744によって分離され、図示しない並流の流路を可能とする。当業者であれば本実施形態は向流も可能であることを理解するだろう。
【0076】
マイクロ流体移動デバイスの一実施形態では、積層体全体の厚さを通り抜けるマイクロチャネルを使用する。図25はスルーカット積層体800の平面図である。積層体800は入口ヘッダ804に流体接続された流体入口802を有する。入口ヘッダ804はビア808に流体接続される。スルーカットマイクロチャネル810はマイクロチャネル812によってビア808に流体接続される。マイクロチャネル814はスルーカットマイクロチャネル810を出口ヘッダ816と流体接続し、出口ヘッダは流体流れを出口818へと向ける。マイクロチャネルは積層体の厚さ全体を通り抜けるので、マイクロチャネルデバイダは構造的な支持を必要とする。図26はパーシャルシックネスデバイダ812によって支持されたスルーカットマイクロチャネル810を有する積層体800を示す。頑丈な圧縮シールを可能にするために、積層体800は移動層を隣接する層に対して圧縮するための圧縮シール面820を有する。スルーカットマイクロチャネル積層体の別の実施形態を図27に示す。
【0077】
図27はヘリングボーンパターンを形成するマイクロチャネルデバイダを有する積層体800の平面図を示す。図28を参照すると、マイクロチャネルデバイダ814は、ヘリングボーンパターンに配置された複数のパーシャルシックネス壁セグメント816を備える。パーシャルシックネス壁セグメント816は、隣接する壁セグメントが積層体800の反対側と同一平面になるようにヘリングボーンパターンに交互に配置される。この設計は、移動層(図示せず)のより大きな表面積を露出することによってデバイスの効率を上げる。パーシャルシックネス壁セグメント816は本質的にマイクロチャネルではなく流れ場を形成する、というのも、パーシャルシックネス壁セグメント816は単一チャネルに流れ込む流体を必ずしも拘束しないからである。
【0078】
図29はスルーカット積層体906を使用したマイクロ流体移動デバイス900の組立て図である。ガスケット904に動作可能に接続された圧縮板902は、順に第1流体積層体906、移動層908および第2流体積層体910を備える反復サブユニットを保持し、圧縮する。サブユニットは移動層912によって分離される。本実施形態の一つの利点はマイクロチャネルあたりの増大された移動層の露出である。スルーカットマイクロチャネルはこれらを隣接する板に動作可能に接続する移動層908および912によって2つの側面に連結されるので、積層体あたりの移動層の表面積はほぼ2倍になる。このことにより、より少ない数の層が可能となり、また、コストの削減とデバイスの小型化が可能となる。
【0079】
図30は流体流路1000の詳細図である。流体は入口ヘッダ1002に入り、入口ヘッダは流体をビア1004に向ける。流体はビア1004を通ってマイクロチャネル1006に移動し、それからスルーカットマイクロチャネル1008へと移動する。スルーカットマイクロチャネル1008はスルーカットマイクロチャネル1010に対して直角に配向される。スルーカットマイクロチャネル1008および1010は構造的な支持のためのパーシャルシックネスデバイダ1012を有する。加えて、デバイダ1012は流体流れをほぼ妨げることなく混合を提供する。移動層1014はマイクロチャネル1008および1010を分離し、そしてそれらを動作可能に接続し、熱または質量が一つの流体から別の流体に移動できるようにする。
【0080】
図31は並流および交差流れの両方を有するスルーカットデバイス1100の詳細図を開示する。デバイス1100は複数のサブユニット1102を備える。サブユニット1102は第1積層体1106と第2積層体1108との間に移動層1104を備える。積層体1106および1108はそれぞれスルーカットマイクロチャネル1110および1112を備える。マイクロチャネル1110および1112は互いに平行しており、隣接するサブユニット1102のマイクロチャネルに対して直角である。サブユニット1102は移動層1114によって分離される。従ってサブユニット1102はサブユニット1102内で積層体1106と1108との間に並流または向流を有し、サブユニット間では交差流を有する。
【0081】
開示されたデバイスは流体膜を利用することができる。図32はプロセス流体流路1202および1204ならびに流体膜チャネル1206の並置における平面図を開示する。流体流路1202および1204は互いにほぼ平行で、流体膜チャネルに対してほぼ直角である。ここで図33を参照すると、流体膜デバイス1300は流体膜1304によって分離されたスルーカット積層体を有する。流体膜1304は流体1308を含むスルーカット積層体1306および膜支持体1310を備える。スルーカット積層体1308はスルーカット積層体1302のマイクロチャネル1314に対してほぼ直角なマイクロチャネル1312を有する。当業者であれば膜支持体は液体膜用途に適切な任意の材料とすることができることを理解するだろう。例えば、そして限定されるものではないが、微孔性ポリエチレンフィルムを膜支持体として使用することができる。当業者であれば、膜支持体の組成および位置は、例えば、流体膜で使用される流体、プロセス流体ならびに動作温度および作動圧力によるものであることを理解するだろう。
【0082】
開示されたデバイスは燃料電池としても構成することができる。図34は、陰極1406および陽極1408より成る移動層1404によって分離された複数のスルーカット積層体1402およびスルーカット積層体の間の高分子電極膜1412を備える燃料電池デバイス1400を開示する。図34のデバイスは、例えば、マイクロチャネル1414内に水素を、そしてマイクロチャネル1416内に酸素を含むことができる。移動層1404は陽極1408がマイクロチャネル1414に隣接し、陰極がマイクロチャネル1416に隣接するように配向される。当業者であれば本デバイスは任意の燃料電池で使用することができ、移動層の構成は、例えば、使用する燃料ならびに動作温度および使用圧力によるものであることを理解するだろう。当業者であれば、本デバイスは並流または向流用に構成することができることを理解するだろう。
【0083】
図35はヘッダ領域のない流れ場透析装置の積層体の実施形態の平面図を示す。本実施形態では、流れ場は流れ場の上部に位置する入口1505および流れ場の下部に位置する出口1510を有する多角形状である。ピンなどの複数の支持構造体が流れ場内に位置する。説明を明確にするために、支持構造体は図35の流れ場に示していない。流れ場内の支持構造体の構成は、図3〜図9を参照して上述のように変更することができる。
【0084】
流れ場は流体流れのための空間をその間に持つ対向する壁1517によって画定される。壁1517は入口1505から分岐し、流れ場が入口1505の領域では比較的小さな横方向の大きさを持ち、中央部1520では広い横方向の大きさを持つようになっている。中央部1520は図35においてはほぼ楕円形に表示されているが、中央部の形状は変えることができる。中央部1520から、壁1517は出口1510に向かって収束し、流れ場は、出口1510では中央部1510と比べてより小さなサイズとなっている。入口1505は流れ場に入る前に比較的均一な分布を実現するために、流体のための特定の流体領域を持たずに流体を流れ場に供給する。
【0085】
中央部1520に対する入口1505の比較的収束された大きさは、中央部1520を流れる流体と入口を流れる流体の間に圧力差を生じることとなる。つまり、流体が幅の広い中央部を流れる際、圧力は降下する。その後圧力は流体が出口1510のより小さな領域に向かって流れるにつれて上昇する。このことにより、流体が入口1505から中央部1520に向かって流れる際の流体速度の増加と、流体が中央部1520から出口1510に向かって流れる際の流体速度の減少が生じる。流れ場の形状は変えることができ、入口/出口領域および中央部との間でサイズの違いを実現させる種々の任意の形状をとることができる。例えば、図36は入口/出口領域および中央部との間のサイズの違いを実現させる円形の流れ場を示す。楕円形、ダイアモンド形などのその他の形状も可能である。
【0086】
そのような実施形態では、流れ場自体がそれ自身のヘッダ領域として作用する結果として、ヘッダを必要とせず、流体が衝突してその周りを流れ、均一な流れの分布を生じさせるピンなどの種々の支持体と組合せて、入口1505に直接隣接する流入流体の流れに関連する高速の流体領域の比較的高い圧力と流れ場の中央部1520に向かう低速の領域1520の比較的低い圧力との間の圧力降下の効果によってのみ、比較的均一した流量分布を実現する。入口1505を通って流れ場により多くの流体が入るので、すでに流れ場にある流体は出口1510の方に押されて外に出される。さらに、流体が中央部1520に流れる際の流体速度の減少は、流れ場における流体の滞留時間を増やすこととなる。滞留時間が増えると透析装置膜を通る拡散量が増加して透析装置の効率が上がる。
【0087】
ある実施形態では、ピン1512は一列に配置され、ピンが実質的に流れ場を通ってチャネルを形成する。既知の技術を使い、ピンの列の間の一定深さのチャネルを下記のように実現することができる。先ず、例えば、アルミニウムなどの適切な材料を所望する大きさに加工することにより、またはポリイミドシートなどの適切な材料のシートをレーザーエッチングすることによって主積層体を作製する。ある実施形態では、約10cm×約10cmの長方形の流れ場を形成するために、十分な量の積層体が使用される、しかし、変形も可能である。先に作製した主積層体でポリエーテルイミドシートをエンボス加工するか、またはレーザーエッチングと先に作製した主積層体でのエンボス加工とを組合せて行うことにより、主積層体からエンボス加工主積層体を作製する。最後に、各積層体をエンボス加工主積層体から作製する。当然のことながら製造方法の変形は可能である。
【0088】
レーザーエッチングを使って主積層体を作製するにあたり、レーザー光線は基板内に比較的均一した深さの経路を切断する。これは図37に模式的に示されており、この場合、直線1610はチャネルを形成するレーザー光線の連続する経路を表す。積層体内の比較的均一な深さのチャネルは各レーザー経路の長さに沿って形成される。しかしながら、交差点1615などのレーザー経路が交差するところでは、積層体はレーザー経路が交差しない場所の2倍の深さに切断される。交差点1615において深さが増すのは、2つのレーザーが交差するところではレーザーエネルギーが増えることに少なくとも一部はよるものである。これによって各チャネルは波状経路となり、この場合、各チャネルはその長さ部分に沿っては比較的均一した深さであり、交差点1615ではより深くなる。
【0089】
図38はレーザーで形成されたチャネルが交差し、レーザーエッチング切断から生じる波状の床チャネルを有する積層体の一部分の拡大図を示す。図39は波状のチャネルおよびチャネル間に形成されたピンを示す積層体表面の拡大図を示す。図39に示す実施形態は、側面と上面が全体的に平らな隆起表面を有する。別の実施形態では、隆起表面が側面と上面で丸みをおびている。波状のチャネル経路床は、例えばアルミニウムを加工する際に典型的に作製されるもののような、比較的同等の深さの全てのピンの間の経路床で実現されるものよりも、流れのより混合された条件となる。つまり波状のチャネル経路床は、より深い各領域における流れ速度と流れ方向に局所的なばらつきを生じさせることとなる。これにより、流体がより深い領域を流れる際に、流体の局所的な混合が生じることとなる。移動膜の表面近くに新鮮な透析液を繰り返し運ぶことによって、混合はデバイスの効率を上げる傾向にある。
【0090】
図40は、例えば、透析液を処理する交互に積層された積層体の入口1505bおよび出口1510bから透析される流体を処理する積層体の入口1505aおよび出口1510aを分離するために、交互の左右対称な積層体が交差流的にスタックされた実施形態を示す。このような実施形態では、各積層体は均一なスタッキングが実現できるように、四角形または円形の中心軸に対してほぼ対称とすることができる。ヘッダのない流れ場を持つほとんどあらゆる程度の向流、交差流または並流および適切に設置された入口および出口を構成することができ、これは本発明の範囲に含まれるだろう。
【0091】
血液透析用の開示されたデバイスを使用する実行可能性を決定するために、1層、3層、および5層のマイクロチャネルベースのデバイスおよび単一層の流れ場デバイスを作製した。マイクロチャネルベースのデバイスは、深さ100μm、幅400μm、幅200μmのマイクロチャネルを含む。アレイには51のチャネルがあり、層(または移動ユニット)毎に比較的小さな膜移動面積4.2cmを与えた。流れ場の設計は膜移動面積が6.3cmで、流れ場の深さが60μmだった。積層体はホットエンボス加工によって作製およびパターン形成した。全てのデバイスは交差流用に構成し、圧縮によってシールした。移動層はGambo Medial社から入手したAN69フラットシート膜だった。
【0092】
開示された種々のマイクロ流体実施形態の流体の流量は、個々の積層体を通る流量とスタック内の積層体の数による。透析システム内で透析に使用されるマイクロ流体デバイスでは、マイクロ流体透析装置の流量は、透析装置の上流で生成される透析液の流量とほぼ一致し、これは、James R Curtis氏、Ladislaus F Nonn氏およびJulie Wrazel氏による、2010年6月7日に出願された「超純化制御(ultrapurification control)による透析システム」と題される米国特許出願に開示されており、その全体を本明細書に参照として援用する。このようにして、最大1000ml/minの流量を実現することができるが、自宅または夜間透析などの臨床現場以外の透析用途には、膜の何れかの側面が10ml/minなどの低い流量が好適である。Richard B、Peterson氏、James R Curtis氏、Hailei Wang氏、Robbie Ingram−Gobel氏、Luke W氏、Fisher氏およびAnna E.Garrison氏による、2010年6月7日に出願された「流体浄化システム」と題される米国特許出願およびJulie Wrazel氏、James R.Curtis氏、Ladislaus F.Nonn氏、Richard B.Peterson氏、Hailei Wang氏、Robbie Ingram−Govel氏、Luke W氏、Fisher氏、Anna B.Garrision氏、M.Kevin Drost氏、Goran Jovanovic氏、Todd Miller氏、Bruce Johnson氏およびAlana Warner−Tuhy氏による、2010年6月7日に出願された「透析システム」と題される米国特許出願も、それらの全体を本明細書に参照として援用する。
【0093】
C.マイクロ流体移動デバイスの作製
本明細書に開示するデバイスは、マイクロ積層として知られる製作手法に関係する多くの技術によって作製することができる。マイクロ積層法は、オレゴン州立大学に譲渡されたいくつかの特許または係属中の出願に記載されている。これらには、米国特許第6,793,831号明細書、同第6,672,502号、「Mecsデバイスの高容量マイクロ積層製作」と題される米国特許出願公開第2007/0029365号、および「マイクロケミカル・ナノ・ファクトリー」と題される米国特許出願公開第2008/0108122号があり、それらの全体を本明細書に参照として援用する。
【0094】
マイクロ積層法は、埋込み形状を有するモノリシックデバイスを生成するための積層体と呼ばれる材料の薄層のパターン形成および接着を含む。マイクロ積層法は生産技術の少なくとも3つのレベル、すなわち、1)積層体のパターン形成、2)積層体の位置合わせおよび3)積層体の接着を含む。よって、デバイスを作製する本発明の方法には、複数の積層体の提供、積層体の位置合わせおよび積層体の接着が含まれる。積層体の接着は開示された実施形態全てに必要なわけではない、というのも位置合わせされた積層体は圧縮板の間で保持されて圧縮シールを提供するからである。さらに別の代替方法として、ある実施形態は、圧縮と組合せて接着された少なくともいくつかの積層体を有することができる。この方法はデバイスを作製するためのコンポーネントの解離(すなわち、構造からサブ構造へ)も含むことができる。コンポーネントの解離は、積層体の接着の前、後または同時に行うことができる。
【0095】
本発明の一態様では、積層体は種々の材料、特に金属;金属間金属および超合金を含む合金;単なる例として、下記に限定されないが、ポリカーボネート、テレフタル酸ポリエチレン(PET),ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)およびポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)などのハロゲン化ポリエチレンを含むポリマー材料、セラミックおよびこれらの材料の組合せから形成される。特定の用途用の材料の適切な選択は、金属または合金の物理的特性および費用などの種々の要因によって決定される。金属のマイクロ積層法に特に有用な金属または合金の例としては、下記のものに限定しないが、ステンレススチール、銅、チタン、ニッケル、アルミニウムがある。本発明のマイクロ積層法に有用な積層体は、種々の大きさとすることができる。一般に積層体の厚さは約25μm〜約1000μm、好適には約25μm〜約500μm、さらに好適には約25μm〜約250μmである。スタック内の個々の積層体は異なる厚さとすることができる。
【0096】
1.積層体のパターン
積層体のパターン形成には、積層体におけるパターンの加工またはエッチングが含まれる。積層体のパターン形成はまた、エンボス加工、ロールエンボス加工および/または打抜き加工を含む。生成されるパターンは作製されるデバイスによる。下記に限定されないが、加工、エッチングの技術としては、レーザー光線、電子ビーム、イオンビーム、電気化学、放電加工、化学材料および機械材料の蒸着または除去がある。積層体はリソグラフィー工程および非リソグラフィー工程などの技術の組合せによってパターン形成することができる。リソグラフィー工程としては、微小成形およびLIGAなどの電気めっき法ならびにその他の正味形状製作技術がある。リソグラフィー技術のいくつかの追加例としては、化学マイクロマシニング(すなわちウェットエッチング)、光化学加工(EMM)、プラズマエッチングならびに化学蒸着、スパッタリング、蒸着および電気めっきなどの蒸着技術がある。非リソグラフィー工程としては、放電加工(EDM)、機械微細加工およびレーザー微細加工(すなわちレーザー光剥離)がある。大量生産されるデバイスには光化学的および電気化学的な微細加工が好適であるようだ。
【0097】
開示されたデバイス実施形態の積層体のパターン形成のための一つの方法として、微細エンボス加工がある。例えば、本開示のある実施形態は下記の技術を使って作製した。Obducat ナノインプリントリソグラフィーシステム(Obducat Nano Imprint Lithography system)を、マスターからポリマー部分へ微小パターンを転写するために使用した。マスターの製作は、アルミニウムなどの金属内でマスターを微小フライス加工することによって行った。中間体としてポリエーテルイミド(PEI)などの別の材料を使う二重転写工程も使用した。パターン形成されたフォトレジストを開始マスターとして使用する三重転写工程も使用した。パターンは典型的にはSU−8であるフォトレジストからポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写され、それから熱硬化性エポキシ(例えばConapoxyFR−1080)に転写され、それはObducatツールにおいてエンボスマスターとして使用され、パターンをテレフタル酸ポリエチレン(PET)などのより低い融解温度のポリマーへと転写した。SU−8は複数の層に蒸着およびパターン形成することができ、精密な多面マスターの生成が可能となる。これらの面は、圧縮シールを有する面の上であっても下であってもよく、例えば、シールボスや複数の深さを有するチャネルなどの隆起形状の形成が可能となる。積層体も2つのマスターを使って両面に同時にエンボス加工することができる。マークやピンなどの位置決め技術をプロトタイピング中に使用した。大量生産は視覚システムを使った自動位置決めを含む変換工程としても知られるロールエンボス加工および積層技術を使って実現することが予想される。
【0098】
開示された実施形態を作製する別の方法として、金属積層体、例えば316/316Lステンレススチールの光化学エッチングがある。パターン化されたフォトレジストは、積層体の前面および裏面をそれぞれ異なるマスキングでマスクするために使用された。各側面からの部分エッチングによって、片面からもう片面へのビア、および両面に開いたチャネルを含む入り組んだ流路を生成した。チャネルデバイダを安定させる小さな支持構造体も生成した。このような構造はセグメント化されたチャネルデバイダ構造を生成するために使用することができ、そうすることによって移動層の活性表面積を増やすことができる。
【0099】
レーザー加工も積層体およびエンボス加工マスターのビア、入口および出口ポートならびに位置決めピンホールの切断に使用した。355nm波長のESI5330をレーザー加工に使用した。大量生産において、レーザーはビアやその他の貫通物の切断に使用することができる。ビアの生成に際して、非直角のビアを生成するには、レーザーの角度は好適には非直角である。こうすることによって流路内のデッドボリュームを削減することができる。あるいは、ビアおよびその他の貫通物を打ち抜き加工によって生成することができる。打ち抜き加工は、適切なエンボス/打ち抜きマスターの設計全体にわたるエンボス加工の一部として行うことができる。特に非直角ビアも適切なエンボス/打ち抜きマスターを設計することによって生成される。
【0100】
レーザー微小加工はパルス状または連続するレーザー作用によって行われてきた。Nd:YAGおよびエキシマレーザーに基づく加工システムは典型的にパルス状であり、COレーザーシステムは連続的なものである。Electro Scientific Industries社のモデル4420は、Nd:YAG用の典型的なシステムである。この微小加工システムはデジタル制御のXY動作で集束レーザー光束を部品上で動かすことによる2つの自由度を使用する。切断作用は加工される材料や使用される波長によって、熱的かまたは化学的に切除される。Nd:YAGレーザーの駆動機構は、およそ2μmの分解能を提供するデジタル制御のサーボアクチュエータとすることができる。しかしながらスルーカットの幅は集束ビームの直径による。
【0101】
積層体もCOレーザーシステムで加工されてきた。市販のCOレーザーのほとんどは、切断される材料を半切除または液化する。高速ガスジェットは破片の除去を補助するためにしばしば使用される。Nd:YAGシステムと同様に、レーザー(またはワークピース)は材料に所望のパターンを得るために、X−Y方向に移動される。
【0102】
Nd:YAGパルスレーザーは、例えば厚さ90μmのスチールシムの切断に使用されてきた。これらの切断の線幅はおよそ35μmであるが、スチールではいくらか先細になっていた。前面の切断端にいくらか破片や隆起が発生することがある。この材料は積層体の準備中に表面研磨などによって表面から簡単に除去することができる。
【0103】
積層体もCOレーザーを使ってパターン形成することができる。COスルーカットはおよそ200μm幅で僅かなテーパを呈した。COレーザー切断の幅は使用されたシステムを使って実現することのできる最小のものだった。その部分は破片を除去する表面研磨によって積層体準備ステップにおいて処理することができる。
【0104】
パルスNd:YAGレーザーもポリイミドから生成される積層体などの、ポリマー材料から作製された積層体の微細加工を行うことができる。パルスNd:YAGレーザーはこれらの材料を高分解能で、破片のリキャストを生じさせずに微細加工することができる。化学的アブレーションが明らかに材料の除去に含まれるメカニズムである場合には、この種の作業には紫外線波長が最適だと思われる。直径範囲25〜50μmの汚れのない鋭い穴が生成される。
【0105】
2.積層体の準備
使用される積層体およびパターン形成技術に応じて、積層体パターン形成に積層体の準備を含むことができる。積層体は種々の技術によって準備することができる。例えば、パターン形成後の積層体の表面研磨は有益である。さらに、金属または合金の積層体から酸化物を除去するために酸エッチングを使用することができる。積層体の準備は、積層体の一部または全体に酸化物を含まないコーティング処理を含むことができる。この例として、積層体に金の電気めっきを施すことによる周囲条件における酸化防止がある。
【0106】
3.位置合わせ
積層体の位置合わせには、(1)デバイスを作製するために使用されるスタック内の複数の積層体の各々がスタック内の適切な位置にくるような積層体のスタッキングおよび(2)隣接する積層体を、それらがデバイスの設計によって定められたように適切に位置決めされるような設置が含まれる。積層体を正しく位置決めするには、手作業または視覚的な積層体の位置合わせを含む種々の方法があることを理解されたい。
【0107】
積層体を相互に位置決めすることのできる精密さによって、最終的なデバイスが機能するかどうかが決まる。複雑性は、ある程度のミスアラインメントに寛容なマイクロチャネルアレイなどのような構造から、高精度な位置決めを必要とするより洗練されたデバイスまでおよぶ。当業者であれば、相互に平行な隣接する積層体のマイクロチャネルは交差流れを持つ実施形態よりもより大きな位置決め精度を必要とすることを理解するだろう。所望の精度を実現するためにいくつかの位置決め法を使用することができる。位置合わせは、例えば、積層体のスタックを受け入れて各々の積層体をいくつかの埋込み形状、例えば隅および端部を使って位置決めする位置決めジグを使って実現することができ、これは、そのような形状が全ての積層体に共通する場合に最もよく機能する。別の手法として、他の形状が加工されるのと同時に各積層体に穴などの位置決め形状を組込むものがある。位置決めジグは位置決め穴を貫通するピンを組込むために使用される。積層体の端部がこの精度に正確であるならば、端部位置決め手法によって積層体を10μ以内の精度で位置合わせすることができる。位置決めピンと高精度な積層体加工技術を使ってマイクロレベルの位置決めが実行可能となる
【0108】
視覚システムと熱アシスト積層体の位置合わせも所望であれば使用することができる。熱アシスト積層体の位置合わせに関する追加の詳細は、米国特許出願公開第2007/0029365号に記載されており、これを本明細書に参照として援用する。当業者であれば位置合わせ工程は自動化することができることも理解するであろう
【0109】
4.デバイスの製造
積層体の接着には、複数の積層体のうちの少なくともいくつかを相互に接着してモノリシックデバイス(積層物とも呼ぶ)を生成することも含まれる。積層体の接着は、下記に限定されないが、拡散はんだ付け/接着、熱ろう付け、接着結合、熱接着結合、硬化接着結合、静電接着、抵抗溶接、マイクロ突起溶接およびこれらの組合せを含む多くの方法によって行うことができる。位置合せされた積層体の接着に加えて、またはその代わりとして、開示されたデバイスを圧縮板の間に組付けることができる。しかしながらいくつかの用途では、移動層への積層体の接着が好適である。加えて、接着またはレーザータック溶接などの溶接を製造中の組付けを容易にするために使用することができる。
【0110】
デバイス製作の好適な方法には、高スループット、低コストの製作技術が含まれる。積層体パターン形成はとりわけ、エンボス加工、打ち抜き加工、光化学エッチングを含むいくつかの技術を使って実現される。一つの好適な実施形態では、組立てはウェブ加工または変換産業で使用されるもののようなロール技術によって実現される。ポリマーフィルムはロールエンボス加工およびロール打ち抜き加工され、積層されてサブ組立て体が形成される。金属の積層体は光化学エッチングを使ってパターン形成される。現在開発中のアブレシブウォータージェット技術も金属積層体のパターン形成のために将来使用することができるだろう。サブ組立て体は圧縮フレーム内で分離され、スタックされ、そして組立てられる。主要なシール方法は外部フレームからの圧縮によるものであるが、レーザー溶接や接着などの技術はいくつかの実施形態の一部に使用することができる。シーラントまたはシール方法を端部に適用して、膜から外部への漏出を防ぐことができる。
【0111】
5.熱移動動作
その他の実施形態において、本明細書で開示されたマイクロ流体移動デバイスを種々の熱移動動作で使用することができる。本明細書で開示された質量移動デバイスのように、熱移動デバイスは複数のサブユニットのスタックを備え、所望の容積に合わせてデバイスを縮小または拡大することができる。熱伝導層はそのようなデバイス(例えばサブユニットの間に位置する)に組込んで、ある流体から別の流体に熱を移動するようにすることができる。
【0112】
例えば、図1を参照すると、熱移動実施形態において、移動層110は熱をマイクロチャネル106内の流体からマイクロチャネル112内の流体に、またはその逆に移動するための熱移動層とすることができる。本実施形態では、移動層110は所望される用途に対する十分な速度で熱を一つの流体から別の流体に移動することのできる任意の材料とすることができる。関連する要因としては、下記に限定されないが、熱移動層110の熱伝導率、熱移動層の厚さおよび所望される熱伝導率がある。適切な材料としては、下記に限定されないが、金属、金属合金、セラミック、ポリマーまたはそれらの合成物がある。適切な金属としては、下記に限定されないが、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、金、銀またはスズがある。銅はおそらく特に所望される材料であろう。
【0113】
本明細書に記載する質量移動デバイスと同様に、マイクロ流体熱移動デバイスのミクロン規模の寸法は、バルク流体内の拡散または導電長さを減少することによって熱移動の制限を低減し、そうすることによって移動層110(図1)の単位面積当たりの熱伝導率を増やし、結果的に効率を上げてデバイスのサイズを減少する。
【0114】
開示された実施形態は、熱移動コンポーネントおよび質量移動コンポーネントの双方を組込むことができる。当業者であれば、多くの構成が可能であり、所望の用途によって最適な構成が決定されることを理解するだろう。
【0115】
開示された本デバイスの原理が適用される多くの可能な実施形態に照らして、説明された実施形態は単なる好適な例であり、当業者によって理解されるものよりも狭い範囲に請求項を制限するものと解釈してはならないことが理解されるだろう。むしろ範囲は下記の請求項によって定義される。さらに当業者であれば複数の従属項は各独立項にほぼ同等に適用可能であることを理解するだろう。従って私達はそれらが全てこれらの請求項の範囲および趣旨内であることを主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析を行うためのマイクロ流体デバイスであって、
動作中にその周りを血液が流れる支持構造体の第1セットを含む第1流れ場と、
動作中にその周りを透析液が流れる支持構造体の第2セットを含む第2流れ場と、
前記第1および第2流れ場の間に挟まれた少なくとも一つの質量移動層であって、その層を通って動作中に血液の透析が生じる質量移動層と
を備えるマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1流れ場は第1入口ヘッダをさらに含み、前記第2流れ場は第2入口ヘッダをさらに含むデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1または第2流れ場のどちらもヘッダを含まないデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスにおいて、第1積層体は前記第1流れ場を含み、第2積層体は前記第2流れ場を含み、さらに前記第1および第2積層体は前記挟まれた質量移動層と共にサブユニットを形成するデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、複数のサブユニットを有するデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスにおいて、前記複数のサブユニットは第1および第2圧縮板の間に位置するデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスにおいて、第1積層体および第2積層体は前面および裏面を有し、前記移動層は前記第1積層体の裏面と前記第2積層体の前面との間に位置するデバイス
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記質量移動層は膜または半透明膜であるデバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のデバイスにおいて、前記膜または半透明膜はポリマー、共重合体、セラミック、合成物または流体膜材料から成るデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスにおいて、前記半透明膜はポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜であるデバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記第1および第2流れ場の各々は流れの卓越方向を有するデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、血液の流れの卓越方向は前記透析液の流れの卓越方向に対して向流であるデバイス。
【請求項13】
請求項11に記載のデバイスにおいて、血液の流れの卓越方向は前記透析液の流れの卓越方向に対して交差流であるデバイス。
【請求項14】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体はほぼ同一の幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は複数の異なる幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項16】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記流れ場の各々の支持構造体は各々の流れ場に亘って均一に分布されるデバイス。
【請求項17】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記流れ場の各々の支持構造体は各々の流れ場に亘ってランダムに分布されるデバイス。
【請求項18】
請求項5に記載のデバイスにおいて、第1サブユニットの前記血液の流れ場は、第2サブユニットの前記血液の流れ場にほぼ平行であるデバイス。
【請求項19】
請求項1に記載の透析デバイスであって、
少なくとも第1および第2積層体であって、各積層体は流体流れ場を画定する支柱を有し、前記第1積層体の流体流れ場は血液を受けるためのものであり、前記第2積層体の流体流れ場は透析液を受けるためのものである、第1および第2積層体と、
隣接する積層体を交互に積層する半透明膜と
を備える透析デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスにおいて、前記半透明膜はポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜であるデバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のデバイスにおいて、第1積層体、第2積層体および移動層はサブユニットを形成するデバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスにおいて、複数のサブユニットを有するデバイス。
【請求項23】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
流体の卓越方向を有する流体流れ場をまとめて画定する複数の支持構造体を画定する複数の積層体と、
積層体を交互に積層する少なくとも一つの移動層と
を備えるデバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記流れ場は液体の流れ場であるデバイス。
【請求項25】
請求項23に記載のデバイスにおいて、入口ヘッダおよび出口ヘッダをさらに備えるデバイス。
【請求項26】
請求項23に記載のデバイスにおいて、第1積層体、第2積層体および移動層はサブユニットを形成するデバイス。
【請求項27】
請求項26に記載のデバイスにおいて、複数のサブユニットを有するデバイス。
【請求項28】
請求項27に記載のデバイスにおいて、前記複数のサブユニットは第1および第2圧縮板の間に位置するデバイス。
【請求項29】
請求項23に記載のデバイスにおいて、第1積層体および第2積層体は前面および裏面を有し、前記移動層は該第1積層体の裏面と該第2積層体の前面との間に位置するデバイス。
【請求項30】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一つの移動層は質量移動層であるデバイス。
【請求項31】
請求項30に記載のデバイスにおいて、前記質量移動層は膜または半透明膜であるデバイス。
【請求項32】
請求項31に記載のデバイスにおいて、前記膜または半透明膜は、ポリマー、共重合体、金属、セラミック、合成物または流体膜材料から成るデバイス。
【請求項33】
請求項32に記載のデバイスにおいて、前記半透明膜はポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜であるデバイス。
【請求項34】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一つの移動層は熱移動層であるデバイス。
【請求項35】
請求項23に記載のデバイスにおいて、熱移動および質量移動の双方のために構成されたデバイス。
【請求項36】
請求項23に記載のデバイスにおいて、流れ場を画定する形状は流体流れの卓越方向を有するデバイス。
【請求項37】
請求項35に記載のデバイスにおいて、複数の支持構造体は流体流れの卓越方向とずれて回転するデバイス。
【請求項38】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体はほぼ同じ幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項39】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は複数の異なる幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項40】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は前記流れ場内でほぼランダムに分布されるデバイス。
【請求項41】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は前記流れ場内にサイズおよび/または密度勾配を有するデバイス。
【請求項42】
請求項41に記載のデバイスにおいて、流体流れの卓越方向に前記サイズは減少し前記密度は増加するデバイス。
【請求項43】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前面形状を画定する前面および裏面形状を画定する裏面を有する少なくとも一つの積層体を有し、該前面形状は少なくとも一つのビアによって該裏面形状に流体接続されるデバイス。
【請求項44】
請求項43に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一つのビアは前記前面および前記裏面に非直角であるデバイス。
【請求項45】
請求項23に記載のデバイスにおいて、少なくとも一つのマイクロチャネルをさらに備えるデバイス。
【請求項46】
請求項45に記載のデバイスにおいて、マイクロチャネルを画定する複数の積層体を備え、各積層体のマイクロチャネルは少なくとも一つの隣接する積層体のマイクロチャネルにほぼ平行またはほぼ直角であるデバイス。
【請求項47】
請求項46に記載のデバイスにおいて、前記マイクロチャネルのかなりの部分は前記前面から前記裏面に延在してスルーカットマイクロチャネルを形成し、該スルーカットマイクロチャネルは第1パーシャルシックネスマイクロチャネルによって一つまたは複数の入口ビアに流体接続され、該スルーカットマイクロチャネルは第2パーシャルシックネスマイクロチャネルによって一つまたは複数の出口ビアに流体接続されるデバイス。
【請求項48】
請求項23に記載のデバイスにおいて、第1積層体、第2積層体および移動層はサブユニットを形成し、該デバイスは複数のサブユニットを備え、第1サブユニットの流れ場は第2サブユニットの流れ場に対してほぼ平行またはほぼ直角であるデバイス。
【請求項49】
請求項23に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一つの移動層は入口ヘッダおよび出口ヘッダに対応する切り欠きを画定するデバイス。
【請求項50】
請求項1に記載のデバイスにおいて、透析用に構成されるデバイス。
【請求項51】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2流体流れ場を画定する支持構造体を画定する複数の積層体であって、該第1流体流れ場は血液を受けるためのものであり、該第2流体流れ場は透析液を受けるためのものである積層体と、
隣接する積層体を交互に積層し、入口ヘッダおよび出口ヘッダに対応する切り欠きを画定する半透明膜と
を備えるデバイス。
【請求項52】
請求項51に記載のデバイスにおいて、前記半透明膜はポリスルホン‐ナノ結晶セルロース合成膜であるデバイス。
【請求項53】
請求項51に記載のデバイスにおいて、第1積層体、第2積層体および移動層はサブユニットを形成するデバイス。
【請求項54】
請求項53に記載のデバイスにおいて、複数のサブユニットを有するデバイス。
【請求項55】
請求項54に記載のデバイスにおいて、前記複数のサブユニットは第1および第2圧縮板の間に位置するデバイス。
【請求項56】
請求項51に記載のデバイスにおいて、流れ場を画定する支持形状は流体流れの卓越方向を有するデバイス。
【請求項57】
請求項51に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体はほぼ同じ幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項58】
請求項51に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は複数の異なる幾何学的形状を画定するデバイス。
【請求項59】
請求項51に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は前記流れ場内にほぼランダムに分布されるデバイス。
【請求項60】
請求項51に記載のデバイスにおいて、前記支持構造体は前記流れ場内にサイズおよび/または密度勾配を有するデバイス。
【請求項61】
請求項60に記載のデバイスにおいて、流体流れの卓越方向にサイズは減少し密度は増加するデバイス。
【請求項62】
透析を行う方法であって、
動作中にその周りを血液が流れる支持構造体の第1セットを含む第1流れ場と、動作中にその周りを透析液が流れる支持構造体の第2セットを含む第2流れ場と、該第1および第2流れ場の間に挟まれた少なくとも一つの質量移動層であって、動作中にその層を通って血液透析が生じる質量移動層とを含むデバイスを提供するステップと、
透析を行うために前記デバイスを使用するステップと
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate


【公表番号】特表2012−531256(P2012−531256A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517554(P2012−517554)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037621
【国際公開番号】WO2010/151419
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506253388)ステイト オブ オレゴン アクティング バイ アンド スルー ザ ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケーション オン ビハーフ オブ オレゴン ステイト ユニバーシティー (9)
【出願人】(511312791)ホーム ダイアリシス プラス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】