説明

透湿性フィルムおよびその用途

【課題】水蒸気透過性、寸法安定性に優れ、透明性、非帯電性能にも優れる透湿性フィルムおよびその用途を提供すること。
【解決手段】透湿性フィルムは、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含み、水蒸気透過度が20g/m2・24h以上、かつ、23〜80℃の平均線膨張率が±50
0ppm/℃以下である。積層フィルムは、前記透湿性フィルムに粘着層を積層してなり、例えば表面保護フィルムとして用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表面保護フィルム等の光学フィルムとして用いられる透湿性に優れたフィルムおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年薄型表示パネル(液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP))に使用される偏光フィルム、位相差フィルム、アンチリフレクション(AR)フィルム等の光学フィルムの表面保護や、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護や製造工程において中間製品の表面を保護する表面保護フィルムの需要が高まっている。
【0003】
光学フィルムのうち偏光フィルムは、表面保護フィルムの接着に通常水系接着剤が使用されるため、表面保護フィルムの水蒸気透過性が低い場合には接着剤に含まれる水が蒸発できず、表面保護フィルムと偏光フィルムとの界面に水ぶくれが生じたり、PVA偏光子の偏光度が低下したり、偏光子に黒点が出たりするなどの欠点が生じるおそれがある。このため、表面保護フィルムの用途によっては、水蒸気透過性に優れた表面保護フィルムが求められる。
【0004】
フィルムを構成する樹脂に透湿性の高い樹脂を用いた従来技術としては、アルカリ金属をイオン源とするエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー100重量部当たり、分子内に水酸基を3個以上持つ分子量400以下の化合物が0.1〜30重量部の割合で配合されてなるアイオノマー組成物を他の樹脂に配合してフィルム状としたもの(特許文献1)、表面保護フィルムの基材として、ポリオレフィンに非帯電性アイオノマー樹脂をブレンド物中、5重量%〜70重量%配合したもの(特許文献2)、ポリオレフィン系樹脂100重量部とカリウムアイオノマー樹脂5〜30重量部からなる基材層に粘着剤層が積層されてなる表面保護フィルム(特許文献3)、金属イオンとしてカリウムを使用したアイオノマー樹脂100重量部に、ポリオレフィン系樹脂3〜50重量部を配合した導電層を有する基材フィルムの一面に粘着剤層が設けられてなる表面保護フィルム(特許文献4)などがある。しかしながら、これらのフィルムは、いずれも帯電性の改良を目的としたものであって、水蒸気透過性については検討されていない。
【特許文献1】特開平8−134295号公報
【特許文献2】特開平11−165368号公報
【特許文献3】特開平10−279896号公報
【特許文献4】特開平9−040924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、水蒸気透過性および寸法安定性に優れたフィルムを提供することを目的とする。本発明の他の目的は、上記特性に加え透明性、非帯電性能にも優れるフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る透湿性フィルムは、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含み、水蒸気透過度が20g/m2・24h以上、かつ、23〜80℃の平均線膨張率が±5
00ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記透湿性樹脂(A)がカリウムイオンを有するアイオノマー樹脂である
ことが好ましい。
透湿性フィルムは、前記透湿性樹脂(A)100重量部に対し、前記プロピレン系樹脂(B)を30重量部以下の割合で含有することが好ましい。また、透湿性フィルムは、波長550nmにおけるヘイズが20%以下であることも好ましく、表面抵抗率が1011Ω/□以下であることも好ましい。
【0008】
本発明に係る積層フィルムは、前記透湿性フィルムに粘着層を積層してなることを特徴としている。前記粘着層としては、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂、およびウレタン樹脂のいずれかを含有する樹脂を用いることが好ましく、前記粘着層として、アクリル系粘着剤を用いることも好ましい。
【0009】
本発明に係る積層体は、前記フィルムを表面保護フィルムとして用いたことを特徴としている。本発明に係る積層体には、前記フィルムを、偏光機能を有するフィルムと貼り合わせたものがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る透湿性フィルムは、水蒸気透過性および寸法安定性に優れる。また、本発明に係る透湿性フィルムは、上記特性に加えて透明性、非帯電性能にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る透湿性フィルムについて詳細に説明する。
本発明に係る透湿性フィルムは、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含んでいる。まず、透湿性樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)について説明する。
【0012】
[透湿性樹脂(A)]
本発明で用いられる透湿性樹脂とは、水蒸気透過率が1000g/m2・日/0.1m
m以上、好ましくは2000g/m2・日/0.1mm以上の透湿性を有するポリマーで
ある。上記条件を満たす限り、透湿性樹脂の種類には特に制限はなく、各種の透湿性樹脂を適宜使用することができるが、金属イオン含有透湿性樹脂を使用することが特に好ましい。
【0013】
透湿性樹脂として特に好ましい金属イオン含有透湿性樹脂としては、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Ce)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、などのアルカリ金属から選ばれた金属イオン基を有するアイオノマー樹脂を用いることが好ましい。特にカリウム(K)イオンを含有した樹脂を用いることが、フィルムの透湿性、相溶性、透明性の点で好ましい。金属イオン基を有するアイオノマー樹脂の代表例としては、ポリスチレンスルホン酸塩(PSS)アイオノマー、エチレン系スルホン酸塩アイオノマー等のスルホン酸塩アイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーなどを挙げることができる。
【0014】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとは、エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体のカルボキシル基の一部もしくは全部がアルカリ金属などで中和された構造のものである。
【0015】
ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを挙げることができ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の単量体としては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などを例示することができる。
【0016】
上記エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体としてはエチレン成分が60〜90重量%、特に70〜88重量%、不飽和カルボン酸成分が10〜40重量%、特に12〜30重量%、その他不飽和単量体成分が0〜30重量%、特に0〜20重量%の割合で共重合されているものが好ましい。かかる共重合体は、例えば高温高圧下で各重合成分をランダム共重合することによって得ることができる。また、総和が上記要件を満たす限り、不飽和カルボン酸成分単位の異なるものを2種以上用いてもよい。なお、アイオノマーのイオン源としては、アルカリ金属、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムが好ましく用いられるが、特にカリウムが好適である。また、アイオノマーの中の不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸などを例示することができる。アイオノマー中のアルカリ金属カチオン含有量は、アイオノマー1kg当たり0.4〜4モル、好ましくは0.6〜2モルの範囲にあることが望ましい。
【0017】
本発明で好ましく用いられるアイオノマーとしては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜1000g/10分、特に0.1〜100g/10分のものを使用するのが好ましく、具体的には、三井・デュポンポリケミカル株式会社製のエンティラ(商標)SD100、MK400、MK153などが特に好ましい例として挙げられる。
【0018】
金属イオンを含有する樹脂によって、大きな透湿性、透明性を特に容易に満足できる理由は明確ではないが、おそらくは、これら金属イオン基が疎水性の高分子内にイオンクラスターを形成しているか、あるいは疎水性の触媒残渣などのイオン基に会合して自己組織化して疎水性ポリマーに微分散しているためではないかと思われる。さらに、透湿性ポリマーはできる限り厚さ方向に配列・連結している方が大きな透湿性を有することが可能となる。
【0019】
本発明では透湿性ポリマーとして、透湿性の比較的大きな樹脂である水酸基(OH)を有するセルローストリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、さらには、エーテル基を有するポリエステルエーテルエラストマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどをマトリックスポリマーに添加することもできるが、大きな透湿性と湿度に対する寸法安定性とを両立したフィルムやシートを得る観点からは、上記の金属イオン含有透湿性樹脂を使用することが好ましい。したがって透湿性樹脂は、金属イオンを含有する樹脂が本発明の組成としては非常に好ましいが、必ずしもこれには限定されることはなく、例えばポリエチレングリコールのようなエーテル化合物なども有効である。
【0020】
[プロピレン系樹脂(B)]
本発明で用いられるプロピレン系樹脂(B)としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられるが、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0021】
これらのプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位は、プロピレン系樹脂中に通常35モル%以下、好ましくは30モル%以下の割合で含んでいてもよい。
【0022】
プロピレン系樹脂(B)は、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0023】
また、プロピレン系樹脂(B)はアイソタクティック構造、シンジオタクティック構造のどちらも用いることができる。
このようなプロピレン系樹脂(B)は、例えばマグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いメタロセン触媒系でプロピレンを重合あるいはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0024】
[透湿性フィルム]
本発明に係る透湿性フィルムは、前記透湿性樹脂(A)100重量部に対し、前記プロピレン系樹脂(B)を30重量部以下、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは5〜15重量部の割合で含有することが望ましい。
【0025】
また、本発明の透湿性フィルム中には公知の任意の添加剤、例えば着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、結晶核剤、接着向上剤、すべり剤、ブロッキング防止剤、耐侯剤、消泡剤、透明化剤、粘度調整剤などを含有させても良い。
【0026】
本発明に係る透湿性フィルムは、水蒸気透過率が20g/m2・24時間以上、好まし
くは200g/m2・24時間以上であることが望ましい。水蒸気透過率が20g/m2・24時間未満であると、本発明の透湿性フィルムを光学フィルムの保護フィルムとして使用し、光学フィルムとPVA偏光子との接着に水系接着材を用いた場合の貼り合わせ時に、水がフィルム断面から乾燥できず、保護フィルムと光学フィルムとの界面に水ぶくれが生じたり、PVA偏光子の偏光度が低下したり、偏光子に黒点が出たりするなどの欠点が生じるおそれがある。透湿性フィルムにおいて、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の配合量を上記範囲内とすることにより、水蒸気透過率を上記範囲内とすることができる。
【0027】
本発明に係る透湿性フィルムは、23〜80℃の平均線膨張率が±500ppm/℃以下、好ましくは±200ppm/℃以下、より好ましくは±100ppm/℃以下であることが望ましい。寸法安定性の観点から、線膨張率は小さければ小さいほど好ましい。23〜80℃の平均線膨張率が±500ppm/℃より大きいと、本発明の透湿性フィルムを光学フィルムの保護フィルムとして使用し、貼り合わせた後に、例えば80℃の雰囲気下で乾燥させた場合、カールが発生し、寸法安定性が悪くなったり、光学フィルムから保護フィルムが剥離する不具合が生じるおそれがある。透湿性フィルムにおいて、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の配合量を上記範囲内とすることにより、平均線膨張率を上記範囲内とすることができる。
【0028】
本発明に係る透湿性フィルムは、波長550nmにおけるヘイズが20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であることが望ましい。波長550nmにおけるヘイズが20%より大きいと、本発明の透湿性フィルムを、光学性能が劣るため光学フィルムとして扱えないばかりか、欠点検査機で正確に欠点を検出できないおそれがある。透湿性フィルムにおいて、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の配合量を上記範囲内とすることにより、波長550nmにおけるヘイズを上記範囲内とすることができる。
【0029】
本発明に係る透湿性フィルムは、表面抵抗率が1011Ω/□以下、好ましくは1010Ω/□以下、さらに好ましくは109Ω/□以下であることが望ましい。表面抵抗率が上記
範囲内にあると、光学フィルムを搬送、剥離などの工程での剥離帯電を避けたり、ゴミやほこりの吸着を防止したりするのに有効である。透湿性フィルムにおいて、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の配合量を上記範囲内とすることにより、表面抵抗率を上記範囲内とすることができる。
【0030】
[透湿性フィルムの製造方法]
本発明の透湿性フィルムは、上述の透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)と、必要に応じて用いられる各種添加剤を用い、押出成形法などの溶融成形法、溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0031】
押出成形法としては、押出機により樹脂を溶融し、ギアポンプにより定量供給し、これを金属フィルターで濾過により不純物を除去して、ダイにてフィルム形状に賦型し、引き取り機を用いてフィルムを冷却し、巻き取り機を用いて巻き取る方法が一般的である。
【0032】
押出成形に使用される押出機としては、単軸、二軸、遊星式、コニーダー、バンバリーミキサータイプなど、いずれを用いても良いが、好ましくは単軸押出機である。溶融された熱可塑性オレフィン系樹脂は、ダイから吐出され、冷却ドラムに密着固化されて目的とするフィルムに成形される。ダイから押し出されたフィルムを密着固化させる方法としては、ニップロール方式、静電印加方式、エアーナイフ方式、バキュームチャンバー方式、カレンダー方式などが挙げられる。フィルムを製造する際の樹脂温度(押出機シリンダー温度)は、通常200〜350℃、好ましくは220〜320℃である。樹脂温度が200℃未満では、樹脂組成物を均一に溶融させることができないことがあり、350℃を超えると、溶融時に樹脂組成物が熱劣化して表面性に優れた高品質なフィルムの製造が困難になることがある。
【0033】
フィルムの厚みは、通常10〜800μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは40〜500μmである。フィルムの厚みが10μm未満の場合は、機械的強度不足などにより後加工する場合に問題が発生することがあり、800μmを超える場合は、厚みや表面状態などが均一なフィルムを製造することが難しく、得られたフィルムを巻き取ることが困難になることがある。
【0034】
[積層体]
本発明に係る積層体は、例えば上記透湿性フィルムに粘着層を積層したものである。
粘着層は、公知の各種の方法により形成される。例えば、塗工機で透湿性フィルム上に粘着剤をコーティングする方法、透湿性フィルムと粘着剤をTダイやサーキュラーダイから多層フィルム状に製膜する共押出法、前記樹脂をフィルム状に成形後透湿性フィルムと貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0035】
(粘着層)
透湿性フィルムの表面に形成される粘着層を構成する粘着剤としては、通常用いられる再剥離用粘着剤(アクリル系、ゴム系、合成ゴム系等)を特に制限なく使用できる。なかでもエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂およびこれらの樹脂のうちの少なくとも1種を含む樹脂組成物が好ましい。
【0036】
粘着層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは3〜100μm程度、より好ましくは5〜50μm程度である。
[表面保護フィルム]
上記のような積層体は、例えば薄型表示パネルに使用される偏光フィルム、位相差フィルム、ARフィルム等の光学フィルムの表面保護、プリント配線基板等の電子部品材料の表面保護や製造工程における中間製品の表面保護フィルムとして用いられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお以下の実施例、比較例においては、フィルムの各種物性は、下記測定方法に従って評価した。
【0038】
(1)透湿度
サンプルをJIS Z0208 B法に準拠し、40℃90%RHの条件下でサンプル面積28.
3cm2を透過する水蒸気の質量(g)を測定し、算出した。
【0039】
(2)平均線膨張率
23℃の環境下に24時間放置したフィルムから、100mm×100mmの大きさの試験片を採取し、その試験片の寸法を測定し、23℃寸法L23とした。そして、その試験片を80℃恒温槽中に24時間放置した後、恒温槽から試験片を取り出し、23℃の環境下に1時間放置した後、寸法を測定し、80℃寸法L80とした。これらの寸法を用い、線膨張率を下記の式より算出した。
23〜80℃の平均線膨張率(/℃)=(L80−L23)/(57・L23
(3)ヘイズ
JIS K7105に準拠し、ヘーズメーター(TC-H3DPK、(有)東京電色技術センター製)を
用いて、サンプルを測定した。
【0040】
(4)表面抵抗率
JIS K6911に準拠し、温度23±2℃、湿度50±5%RHの環境下で、デジタル抵抗
計(デジタル超高抵抗/微小電流計、(株)アドバンテスト製)を用いて、サンプルを測定した。
【0041】
[実施例1]
透湿性樹脂(A)として、エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(エンティラMK400(商品名):三井・デュポンポリケミカル社製)を用い、プロピレン系樹脂(B)
として、ランダムポリプロピレン(F327(商品名):プライムポリマー社製)を用いた。透湿性樹脂(A)90重量%、プロピレン系樹脂(B)10重量%の組成である均一混合体を押出機ホッパーに供給し、押出機内で270℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
実施例1において、透湿性樹脂(A)を80重量%、プロピレン系樹脂(B)を20重量%に変更した組成の均一混合体を押出機ホッパーに供給し、押出機内で270℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
実施例1において、プロピレン系樹脂(B)を、シンジオタクティックポリプロピレン(Finaplas1471(商品名):Total社製)に変更して用いた。透湿性樹脂(A)90重量%、このプロピレン系樹脂(B)10重量%の組成である均一混合体を押出機ホッパーに供給し、押出機内で270℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ド
ラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
実施例3において、透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の組成の均一混合体を押出機ホッパーに供給し、押出機内の溶融温度を240℃に変更し、溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表1に示す。
【0045】
[実施例5]
実施例1で得られた透湿性フィルムと、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EV150(
商品名):三井・デュポンポリケミカル社製)から得られた厚み23μmのフィルムを、ラミネーターで貼り合わせ、積層フィルムを得た。かくして得られた積層フィルムの物性を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
実施例1で得られた透湿性フィルムと、ポリオレフィン系エラストマー樹脂(ノティオPN-2070(商品名):三井化学社製)から得られた厚み15μmのフィルムを、ラミネー
ターで貼り合わせ、積層フィルムを得た。かくして得られた積層フィルムの物性を表1に示す。
【0047】
[実施例7]
実施例1で得られた透湿性フィルムと、ウレタン樹脂から得られた厚み46μmのフィルムを、ラミネーターで貼り合わせ、積層フィルムを得た。かくして得られた積層フィルムの物性を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(エンティラMK400(商品名):三井・
デュポンポリケミカル社製)を押出機ホッパーに供給し、押出機内で190℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表2に示す。
【0049】
[比較例2]
ランダムポリプロピレン(F327(商品名):プライムポリマー社製)を押出機ホッパーに供給し、押出機内で270℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表2に示す。
【0050】
[比較例3]
透湿性樹脂(A)として、エチレンアクリル酸系のカリウムアイオノマー(エンティラMK400(商品名):三井デュポンポリケミカル社製)を80重量%、低密度ポリエチレン
樹脂(ミラソン11P(商品名):三井化学社製)を20重量%の組成の均一混合体を押出
機ホッパーに供給し、押出機内で190℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルムを得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表2に示す。
【0051】
[比較例4]
比較例3において、透湿性樹脂(A)を50重量%、低密度ポリエチレン樹脂を50重量%に変更した組成の均一混合体を押出機ホッパーに供給し、押出機内で190℃で溶融させ、異物を濾過後、口金より吐出させ、冷却ドラムに密着固化させて、透湿性フィルム
を得た。かくして得られた透湿性フィルムの物性を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含み、水蒸気透過度が20g/m2
24h以上、かつ、23〜80℃の平均線膨張率が±500ppm/℃以下であることを特徴とする透湿性フィルム。
【請求項2】
前記透湿性樹脂(A)がカリウムイオンを有するアイオノマー樹脂である請求項1記載の透湿性フィルム。
【請求項3】
前記透湿性樹脂(A)100重量部に対し、前記プロピレン系樹脂(B)を30重量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載の透湿性フィルム。
【請求項4】
波長550nmにおけるヘイズが20%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の透湿性フィルム。
【請求項5】
表面抵抗率が1011Ω/□以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透湿性フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の透湿性フィルムに粘着層を積層した積層フィルム。
【請求項7】
前記粘着層として、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン系エラストマー樹脂、およびウレタン樹脂のいずれかを含有する樹脂を用いた請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記粘着層として、アクリル系粘着剤を用いた請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルムを、表面保護フィルムとして用いた積層体。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルムを、偏光機能を有するフィルムと貼り合わせた積層体。

【公開番号】特開2010−37350(P2010−37350A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197852(P2008−197852)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】