説明

透湿性樹脂組成物、透湿フィルムおよび透湿材

【課題】 透湿性に優れる透湿性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 水溶性樹脂または水分散性樹脂と分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂を主成分とする樹脂組成物。該樹脂組成物を用いて成形された透湿フィルム、および該樹脂組成物を透湿性を有する基材に塗布/含浸させた透湿材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性を有する樹脂組成物に関する。詳しくは、水溶性樹脂または水分散性樹脂に高分子量のポリエチレンオキサイド系樹脂を添加することにより透湿性を向上させた樹脂組成物に関する。また、該透湿性を有する樹脂組成物を用いて成形された透湿フィルムおよび透湿材に関する。

【背景技術】
【0002】
従来の透湿材は、樹脂を布帛などに積層して得ていたが、防水性及び透湿性が不十分であり、さらに優れる透湿材が望まれていた。
例えば、繊維布帛に数平均分子量500以上3000以下のポリアルキレングリコールが該水系樹脂中に40wt%以上、80wt%以下含まれる水系樹脂を直接コーティングして樹脂層を積層した防水透湿加工布帛を製造するに際し、前記水系樹脂のコーティング前あるいはコーティング後の少なくともいずれか一方で、該繊維布帛の緯方向に拡幅処理を施すことを特徴とする防水透湿加工布帛の製造方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、もっと簡便な方法で、さらに透湿性の向上が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開2007−332493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透湿性に優れる透湿性樹脂組成物、および透湿性に優れた、簡便に得ることのできる透湿材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、水溶性樹脂または水分散性樹脂に分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂を主成分とする樹脂組成物を添加することにより、透湿性が向上した透湿性樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、
1. 水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)および分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を主成分とする、透湿性樹脂組成物、
2. 水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)がポリウレタン系樹脂である、1記載の透湿性樹脂組成物、
3. ポリエチレンオキサイド系樹脂(B)が、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体で且つエチレンオキサイドの混合比が70%以上である、1記載の透湿性樹脂組成物、
4. 1〜3記載の透湿性樹脂組成物をフィルム状に成形した、透湿フィルム、
5. 1〜3記載の透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材上に積層した、透湿材
6. 1〜3記載の透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材に含浸した、透湿材
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透湿性樹脂組成物は、水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)および分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を主成分とするので、透湿性能に優れる樹脂組成物を得ることができる。
さらに、本発明の透湿性樹脂組成物を用いることによって、透湿性に優れた透湿フィルムや透湿材を得ることができる。
【0008】
本発明の透湿性樹脂組成物、透湿フィルムおよび透湿材は、透湿性を要する用途、特に優れた透湿性とともに防水性を要する用途に好適に用いることができ、例えば衣料用途に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る透湿性樹脂組成物は、水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)と分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を主成分とするものである。
本願発明における水溶性および水分散性とは、水または水を主体とし有機溶媒を混合した水系溶媒に対して溶解または分散可能な状態をいう。分散の状態としては、分散している樹脂の平均粒子径がこのましくは1nm以上、3μm以下、さらに好ましくは平均粒子径40nm以上、1μm以下である。また水溶性とは、樹脂が粒子径を有さず溶解状態であることをいう。
平均粒子径の測定は、具体的には、マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)などの粒度分布計により測定することができ、数平均粒子径とする。
【0010】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)の樹脂としては、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また水溶性樹脂または水分散性樹脂の状態としては、例えば水溶性を有するポリマーを溶解させた水溶性樹脂や、乳化性、水溶性を有しないポリマーを、界面活性剤などを用いて強制乳化させた強制乳化樹脂、自己乳化性を有するポリマーを乳化・分散させた自己乳化性樹脂など特に限定されない。さらに、水分散性樹脂のイオン性は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の何れでもよく特に限定されない。
【0011】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)としては、具体的にはLublizol社製のPERMAX 200、PERMAX 220、PERMAX 230、PERMAX 300や、第一工業製薬(株)社製のスーパーフレックスE-2000などを例として挙げることができる。
【0012】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)は、分子中の側鎖に
−(CH−CH−O)− ・・・(a)
の構造が4個以上、特に6個以上繰り返したポリエチレンオキサイドが含まれるものであることが樹脂の透湿性を向上させることができるので好ましい。
【0013】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)の軟化温度は、好ましくは100℃〜230℃、さらに好ましくは130〜180℃である。軟化温度が100℃より低いと透湿性樹脂組成物にタックが生じやすくなる。また軟化温度が230℃よりより高いと透湿性樹脂組成物の成形性が低下する。
【0014】
本発明の水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)としては、透湿性や強度、柔軟性などの点からポリウレタン系樹脂が好ましい。
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)とポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を組み合わせることにより、水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)の透湿性が向上した透湿性樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)は、分子量が20000以上のものを用いる。
分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂を用いることにより、水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)の透湿性を容易に向上させるとともに、分子量が20000以上であるので、ブリードアウトを防ぐことができる。また、分子量の上限は10000000程度を例示することができる。
【0016】
本発明のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)とは、分子中に繰り返し単位として
−(CH−CH−O)− ・・・(a)
を含む化合物である。
ポリエチレンオキサイド系樹脂(B)の具体例としては、ポリエチレンオキサイド、
−(CH−CH−O)− ・・・(b)
ポリエチレングリコール、
HO−(CH−CH−O)−H ・・・(c)
またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体を挙げることができる。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体の場合は、エチレンオキサイドの混合比が70%以上であるものが好ましい。
【0017】
また、本発明の透湿性樹脂組成物は、樹脂組成物の強度等の物性向上の目的で、少なくとも1種類以上の架橋構造を含むことが好ましい。架橋剤としては、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤およびオキサゾリン系架橋剤等を例示することができる。
【0018】
本発明の透湿性樹脂組成物は、本願発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含むことができる。使用できる添加剤の例としては、染料、顔料、濡れ性向上剤、消泡剤、成膜助剤などの添加剤や酸化防止剤、紫外線防止剤などの劣化防止剤などが挙げられる。
【0019】
本発明の透湿性樹脂組成物は、水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)および分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)、さらに必要に応じて架橋剤やその他添加剤を混合することによって得ることができる。
混合の方法は水を溶媒として各原料を適宜公知の方法で混合することができる。例えば、水にポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を溶解し、その後水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)を混合・撹拌し、さらにその他添加剤を加えることにより、透湿性樹脂組成物水溶液/水分散液を作る方法を例示することができる。
【0020】
透湿性樹脂組成物における水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)の割合は、樹脂の強度や透湿能力の関係から50〜99%が好ましい。
【0021】
本発明の透湿フィルムは、本発明の透湿性樹脂組成物をフィルム化することによって得ることができる。フィルム化は従来公知の方法で適宜作成することができる。例えば、離型シート上に本発明の透湿性樹脂組成物を塗工し、水分を除去あるいは架橋等により硬化させたのちに基材から剥離することにより得ることができる。
【0022】
また、本発明の透湿材は、通気性を有する基材と本発明の透湿性樹脂組成物を含むもので、例えば透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材に積層するか含浸して得ることができる。
通気性を有する基材とは従来公知のものを用いることができ特に限定されないが、例えば天然繊維や合成繊維からなる織布、不織布、紙や多孔質性のフィルムなどを例示することができる。
【0023】
透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材に積層する方法は従来公知の方法で行うことができ特に限定されないが、例えば、通気性を有する基材上の片面または両面に本発明の透湿性樹脂組成物を塗工し、その後水分を除去したり樹脂組成物を架橋等により硬化させたり、あるいは通気性を有する基材上の片面または両面に本発明の透湿性樹脂組成物を用いて作成した透湿フィルムを重ね熱プレスし貼り合わせることにより得ることができる。
透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材に含浸させる方法は従来公知の方法で行うことができ特に限定されないが、通気性を有する基材上に本発明の透湿性樹脂組成物を塗工した後圧力をかけて含浸させたり、透湿性樹脂組成物の入った槽に透湿性を有する基材を投入して含浸させ、その後水分を除去したり樹脂組成物を架橋により硬化させて得ることができる。
【0024】
水分除去や硬化処理は、通常、加熱処理して塗膜の架橋反応を促進させる方法が用いられる。加熱処理方法に特に制限はなく、例えば電気加熱炉、蒸気加熱炉、熱風加熱炉、赤外線加熱炉、高周波加熱炉などを用いる方法を採用することができる。
【0025】
得られた透湿フィルムや透湿材における樹脂は微多孔質または無孔質であることが好ましく、無孔質であることが防水性や防風性の点からさらに好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
撹拌機と還流装置のついた容器に、水396gにポリエチレンオキサイド樹脂(アルコックスE-240(分子量4,500,000〜5,000,000)明成化学工業株式会社製)4gを加え撹拌しポリエチレンオキサイド樹脂を水に溶解した。その後水分散性ウレタン樹脂(PERMAX 230 Lublizol社製 固形分濃度33% 軟化温度(Softening Point)159℃ 数平均粒子径33nm)133g、イソプロピルアルコール80gを添加してよく撹拌し透湿性樹脂組成物水分散液を得た。なお、水溶性ウレタン樹脂の数平均粒子径はマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)で測定した。
得られた透湿性樹脂組成物水分散液を、離型シート上に塗工・乾燥し、平均厚みが3μmの透湿フィルムを作成した。
得られた透湿フィルムを不織布(BEMCOT クリーンワイプP 旭化成せんい(株)製)上に重ね、160℃の温度で1分間プレスを行い透湿フィルムと不織布を貼り合わせ、透湿材を得た。
【0028】
[実施例2]
実施例1のポリエチレンオキサイド樹脂をポリエチレングリコール(分子量300,000〜500,000 和光純薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを形成した。
【0029】
[比較例1]
実施例1のポリエチレンオキサイド樹脂を含まない以外は、実施例1と同様にしてフィルムを形成した。
【0030】
上記実施例および比較例で作製したフィルムについて、下記の方法で透湿度の評価を行った。結果を表1に示す。
[透湿度]
JIS L 1099に記載のA−1法により、温度30℃、相対湿度100%RHに循環させた環境に設定し透湿度(kg/m・24hr)を測定した。

【0031】
【表1】

【0032】
表1に示されるように、実施例1、2は比較例1に比べ優れた成膜製および透湿性を有することが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)および分子量が20000以上のポリエチレンオキサイド系樹脂(B)を主成分とする、透湿性樹脂組成物。
【請求項2】
水溶性樹脂または水分散性樹脂(A)がポリウレタン系樹脂である、請求項1記載の透湿性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレンオキサイド系樹脂(B)が、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体で且つエチレンオキサイドの混合比が70%以上である、請求項1記載の透湿性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の透湿性樹脂組成物をフィルム状に成形した、透湿フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3記載の透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材上に積層した、透湿材。
【請求項6】
請求項1〜3記載の透湿性樹脂組成物を通気性を有する基材に含浸した、透湿材。


【公開番号】特開2010−6882(P2010−6882A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165199(P2008−165199)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】