説明

透過照明装置、検査システム、および透過照明方法

【課題】照明装置、検査システム、および照明方法において、光学部材の光散乱系欠陥や光吸収系欠陥等を良好に観察することができるようにする。
【解決手段】検査システム100は、光透過性の被検レンズ1を、被検レンズ1を保持する保持台と、被検レンズ1上の被検査領域上の各点を小さい開口数で透過照明する散乱光放射領域である面光源6aと、保持台に保持された被検レンズ1と面光源6aとの間の相対位置を少なくとも光軸Pに沿う方向に調整する相対移動機構とを備え、面光源6aの中心Oを、被検レンズ1の前側焦点位置に略一致させて、被検レンズ1の被検査領域の全域を透過照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性の光学部材の欠陥を検査するための透過照明装置、検査システム、および透過照明方法に関する。例えば、レンズ、平行平板等の光学部材表面のキズ、汚れ、ウネリ等の表面検査や光学部材内部の泡や脈理等の検査等に好適に用いることができる。
本発明の光透過性は可視光に限ることなく、例えばシリコン製の光学部材に対する近赤外光などを含む。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材、特にレンズの表面検査、いわゆる外観検査はさまざまな照明法、例えば、落射や透過での明視野/暗視野/偏射照明を用いて被検レンズ表面を照明し、観察光学装置を用いて被検レンズ表面のキズや汚れを検査している。
ところが、光学レンズは一般的に無色透明の2つの球面で構成され、その形状は凸面、凹面、平面の組合せによる基本形(両凸、平凹、メニスカス等)の相違に加えて、外径と曲率半径の違いによって多種多様である。
こうしたレンズの表面像を観察光学装置で捉えようとするとき、観察光学装置の対物レンズの開口数が大きいと解像力(像を鮮明に表現するための分解能)はよいが焦点深度が小さくなり、頂点にピントを合わせると周辺がピントボケして見えなくなる。一方、対物レンズの開口数が小さいと焦点深度が大きくなって周辺まで観察できるが、薄肉レンズでは裏面まで見えてしまって欠陥がどちらの面にあるか判断できなくなり、かつ、解像力が落ちる。
また、レンズの表面観察は、上記対物レンズの問題もさることながらどんな照明法を用いるかの方が問題は大きい。例えば、落射明視野照明や偏射照明では、欠陥検出能力(解像力はなくとも欠陥の存在を表現する能力)は高いが対物レンズが捉える表面像全体が一様な明るさにならないとか光源の像が映り込む理由で、検査表面の一部領域でしか欠陥を検出できないことが多い。一方、透過明視野照明では、基本的に欠陥の検出能力が低い上に被検レンズのパワーにより照明光が屈曲してレンズ全面が落射照明同様、一様な明るさの像を作ることが出来ないことが多い。また、落射や透過の暗視野照明はキズなど、光散乱を発生させる欠陥(散乱系の欠陥)には強いが薄い汚れやゴミなど光吸収する欠陥(吸収型の欠陥)の検出能力が劣り、かつ被検レンズの輪郭が鮮明に捉えられないために欠陥が検査領域のどこにあるか判断することが困難である。
以上、従来の光学レンズの検査に用いられている観察方法と照明法について述べたが、現状は作業者の過去の経験によってレンズ毎に照明法を選択してレンズ表面を検査しているのが実状である。よって、被検レンズが固有に持つ焦点距離とか曲率半径とか凸凹などの形状に関連させて照明の最適化を行う必要がある。
こうした観点から従来技術としては、披検光学部材の焦点距離を利用した例えば、特許文献1には、光源部と被検光学部材間の披検光学部材の焦点位置に照明光の中心部を遮光する遮光絞りを配置する透過暗視野照明により光学部材の検査を行う光学部材検査装置(検査システム)において、遮光絞りが半透明性を有することを特徴とした光学部材検査装置が記載されている。
【特許文献1】特開2007−199042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の検査システムには、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では遮光絞りが半透明性を有することで、透過暗視野照明でありながら透過明視野照明の特性も備えるため光吸収系欠陥も観察可能となる。しかし、像の背景が明るくなり、その明るさの程度に応じて、汚れやゴミなどの光吸収系欠陥が見えるが、暗視野照明で明瞭に見えたキズなどの光散乱系欠陥のコントラストが低下してしまう。
このため、光散乱系、光吸収系の欠陥双方に対応できるものの、それぞれの欠陥の検出能力は低下してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、レンズの焦点の働きを利用した照明法で光学部材の表面の光散乱系欠陥や光吸収系欠陥等を良好に観察することができる透過照明装置、検査システム、および透過照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、光透過性の光学部材を被検体として欠陥を検査する検査システムに用いる透過照明装置であって、前記被検体を保持する保持台と、前記被検体の被検査領域上の各点を小さい開口数で透過照明する散乱光放射領域である面光源と、前記保持台に保持された前記被検体と前記面光源との間の相対位置を少なくとも光軸に沿う方向に調整する相対移動機構とを備え、前記面光源の中心を、前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致させて、前記被検体の前記被検査領域の全域を透過照明することを特徴とする。
この発明によれば、被検体の被検査領域全域の各点を小さい開口数で透過照明する散乱光放射領域である面光源を備え、該面光源の中心を被検体の前側焦点位置に略一致させて、前記被検体の検査領域を透過照明する。
このとき、被検体表裏各面上の点は照明光の被検体射出側から見てテレセントリックに小さい開口数で照明される。
よって、少なくても物体側にテレセントリックな光学系をもつ結像光学系で被検体表裏各面を観察すると被写界深度の深い像を得ることができるし、物体側と像側にテレセントリックな結像光学系を用いれば、さらにピントが欠陥からずれても欠陥像が流れるように動かなくなり、焦点深度もあげることができる。
このため、レンズなど曲率半径を持つレンズ面中心と周辺とで高さの異なる被検体であっても被検体表裏各面の被検査領域に欠陥があれば従来の検査法より良好に観察できる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の透過照明装置において、前記面光源は、
その中心に対して略対称な形状を有し、前記中心を前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致させて前記被検査領域全域を透過照明する際の前記開口数が、0.005から0.05の範囲にあることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の透過照明装置において、光を散乱させる散乱部材と、該散乱部材に光を照射する光源と、前記散乱部材に近接して配置され、略円孔状の開口を有する開口板とを備え、前記面光源は、前記光源から照射された光が、前記散乱部材で散乱されて、前記開口板の開口から放射されることによって形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載の透過照明装置において、前記面光源は、光を散乱させる散乱部材と、該散乱部材に光を照射する光源と、前記散乱部材に近接して配置され、略円孔状の開口を有する開口板とからなる投影用面光源と、該投影用面光源を投影する投影光学系とを備える装置を用いて、前記投影用面光源を前記投影光学系で結像させた投影像から形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の透過照明装置において、前記投影光学系は、前記保持台に保持された前記被検体と前記投影用面光源との間で、光軸に沿う方向に移動可能に設けられたなスライダーと、該スライダーに交換可能に着脱できる焦点距離の異なるレンズ群とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項4に記載の透過照明装置において、前記投影光学系は、前記投影用面光源の開口板の中心に焦点位置が一致して配置された正レンズと、前記投影用面光源から放射され、前記正レンズによってアフォーカル光束とされた光束の光軸上に、選択的に切り換えて配置可能な焦点距離の異なる複数のレンズ群とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明では、請求項5または6に記載の透過照明装置において、前記投影光学系は、前記投影用面光源と前記被検体との間の光路上で光束径を規制し、前記被検体の照野を決定する照野絞りを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の透過照明装置において、前記照野絞りは、略円形に開口を規制する羽根絞りであることを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明では、請求項4に記載の透過照明装置において、前記投影光学系は、前記投影用面光源を光源としたケーラー照明光学系であることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の透過照明装置において、前記ケーラー照明光学系は、ケーラー照明を構成する明るさ絞りおよび視野絞りを有しており、前記明るさ絞りは、前記被検体を照明する照野を決定する照野絞りとして用い、前記視野絞りは、前記投影用面光源の大きさを規制し、前記被検体を照明する前記開口数を決定する開口絞りとして用いることを特徴とする。
【0015】
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の透過照明装置において、前記照野絞りおよび前記絞りは、略円形に開口を規制する羽根絞りであることを特徴とする。
【0016】
請求項12に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の透過照明装置において、前記面光源の中心に配置可能に設けられた遮光部と、該遮光部の外周に沿う輪帯状に、略均一な散乱光を出射する輪帯状光放射領域とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項13に記載の発明では、被検体を透過照明して検査を行う検査システムであって、前記被検体を保持して、前記被検体を透過照明する請求項1〜12のいずれかに記載の透過照明装置と、前記被検体を挟んで前記透過照明装置の反対側に配置され、前記透過照明装置の前記保持台に保持され、前記透過照明装置の前記面光源によって透過照明された前記被検体の像を結像する結像光学系と、該結像光学系による前記被検体の像を観察する観察手段とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、請求項1〜12のいずれかに記載の透過照明装置によって、被検体を照明し、被検体の像を結像光学系で結像し、この被検体の像を観察手段によって観察することができる。
この検査システムは、請求項1〜12のいずれかに記載の透過照明装置によって被検体を透過照明する検査システムになっている。このため、請求項1〜12のいずれかに記載の照明装置と同様な作用を備える。
【0018】
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載の検査システムにおいて、前記結像光学系は、少なくとも物体側にテレセントリックであることを特徴とする。
この発明によれば、結像光学系が、少なくとも物体側にテレセントリックであるので、被写界深度を深くできる。また、前記結像光学系が物体側と結像側双方にテレセントリックであれば、被写界深度と焦点深度を深くでき、かつ前記結像光学系のピント面から離れた欠陥を観察視野内で像位置の移動なく結像させることから、被検体の表面および内部における欠陥の光軸に直交する面内での位置測定が確実なものとなる。
【0019】
請求項15に記載の発明では、請求項13または14に記載の検査システムにおいて、前記結像光学系は、ズームレンズを備えることを特徴とする。
この発明によれば、結像光学系にズームレンズを備えるので、結像光学系の総合倍率を容易に連続的に変えることができる。このため、総合倍率を変える場合に焦点距離の異なる対物レンズと結像レンズとを組み合わせる場合に比べて、操作性を向上することができる。
【0020】
請求項16に記載の発明では、請求項13〜15のいずれかに記載の検査システムにおいて、前記結像光学系は、該結像光学系の瞳位置付近に開口の大きさが可変できる対物レンズ明るさ絞りを備えることを特徴とする。
この発明によれば、結像光学系の瞳位置付近に開口の大きさが可変な前記対物レンズ明るさ絞りを備える。該対物レンズ明るさ絞りは面光源の開口径を制限する(可変する)機能を持ち、前記対物絞りの開口を絞っていくと、光源部の面光源径を小さくすることと同様の効果がある。すなわち、光源部の面光源径を大きく設定しておいて前記対物レンズ明るさ絞りを絞ることで、簡単に面光源大きさを変えることできる。
【0021】
請求項17に記載の発明では、請求項13〜16のいずれかに記載の検査システムにおいて、前記結像光学系は、
該結像光学系の瞳位置に前記被検体を透過してきた前記面光源からの照明光を遮光する中心遮蔽光束制御板を備えることを特徴とする。
この発明によれば、中心遮蔽光束制御板を備えることで、照明光を遮光することができ、被検体の光散乱系欠陥等によって回折された光や散乱された光のみによる被検体の像が、前記結像光学系により結像される。そして、前記観察手段によって暗視野観察を行うことができる。
【0022】
請求項18に記載の発明では、請求項13〜17に記載の検査システムにおいて、前記検査システムは、透過ケーラー照明装置をもつ顕微鏡本体と、該顕微鏡に取り付けた顕微鏡用コンデンサーレンズおよび標本載置ステージとを備え、前記結像光学系は、前記顕微鏡本体に立設した支柱に嵌合して摺動し被検レンズにピントが合う位置で固定された前記顕微鏡本体のケーラー照明光軸上に延出したアームに前記結像光学系の光軸を前記顕微鏡本体のケーラー照明光軸に一致させて取り付け固定したことを特徴とする。
【0023】
請求項19に記載の発明では、請求項13〜18のいずれかに記載の検査システムにおいて、前記観察手段は、前記結像光学系による像を撮像する撮像装置を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項20に記載の発明では、請求項19に記載の検査システムにおいて、前記撮像装置で撮像された画像を画像処理して、前記被検体の検査を行う画像処理装置を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項21に記載の発明では、請求項13〜20のいずれかに記載の検査システムにおいて、前記保持台は、コンピューターで制御される電動ステージであることを特徴とする。
【0026】
請求項22に記載の発明では、光透過性の光学部材を被検体として欠陥を検査する検査システムに用いる透過照明方法であって、
前記被検体を保持し、
前記被検体の被検査領域上の各点を小さい開口数で照明する散乱光放射領域である面光源を、その中心が、前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致するように配置し、この状態で、前記面光源からの光により前記被検体の前記被検査領域全域を透過照明することを特徴とする。
この発明によれば、請求項1に記載の照透過明装置を用いた照明方法となっているので、請求項1に記載の発明と同様の作用を備える。
【0027】
請求項23に記載の発明では、請求項22に記載の透過照明方法において、前記面光源は、投影用光源の像を投影光学系によって投影して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の透過照明装置、検査システム、および透過照明方法によれば、被検査領域全域の点を、照明光の被検体射出側から見て小さな開口数でテレセントリックに透過照明できるので、光散乱系欠陥や光吸収系欠陥等の光学部材表面欠陥をコントラスト(欠陥像の明暗)よく、かつ焦点深度深く観察することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0030】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の概略構成を示す模式的な部分断面図である。図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の面光源(散乱光放射領域)から放射される散乱光の放射角度光量分布を示す模式図である。
【0031】
本実施形態の透過照明装置である照明装置90は、光透過性の光学部材である正レンズを被検体として透過照明するためのもので、図1(a)に示すように、光学部材を保持する保持台2と、基台7上に設けられた光源装置6と、基台7上で保持台2を光源装置6の面光源6aの中心Oを通る中心軸Pに沿って移動可能に支持する保持台移動機構8(相対移動機構)とを備える。
以下では、光学部材の一例として、光源装置6側から、凸面である第1面1b、同じく凸面である第2面1aを備える両凸レンズからなる被検レンズ1の例で説明する。被検レンズ1の焦点距離はfであり焦点位置をFとする。
【0032】
保持台2は、被検レンズ1を載置し、被検レンズ1の外周部および第1面1bを位置決めして保持するもので、被検レンズ1の外径より小さく第1面1bのレンズ有効径(レンズ球面内の光学性能を維持するために必要な径)よりも大きい内径を有する軸方向位置決め部2aと、被検レンズ1の外周部を径方向に位置決めする径方向位置決め部2bとを備える。
径方向位置決め部2bは、例えば被検レンズ1の外周部を径方向にチャックして、保持する機構であってもよい。
また、保持台2の中心軸は、光源装置6の面光源6aの中心軸Pに同軸となるように、保持台移動機構8に取り付けられている。
このため、保持台2に保持された被検レンズ1の光軸は、面光源6aの中心軸Pと同軸に保持される。以下では、このように保持された被検レンズ1の光軸を光軸Pと称する場合がある。
【0033】
光源装置6は、例えばハロゲンランプ等からなる光源5と、光源5からの光を散乱させる散乱部材である散乱板4と、散乱板4から保持台2側に向かう散乱光放射領域である面光源6aを直径φdの略円形状に規制する開口3aを備える開口板3とからなる装置である。
本実施形態の開口板3は、金属薄板に直径φdの開口3aが加工されたもので、散乱板4上に接着等によって貼り付けられている。このため、開口3aの内側には、直径がφdの面光源6aが形成されている。
このような光源装置6は、保持台2に保持された被検レンズ1の前側焦点位置Fに面光源6aの中心Oが略一致されたときに、被検レンズ1の第1面1bを面光源6aから放射された散乱光が照明する。
この時、中心Oを通る面光源6aの法線から測った放射開口数をNAとすると、被検レンズ1の被検査領域開口数(以下、被検面開口数)NAtはNAoより小さくなるように設定される。
【0034】
散乱板4は、例えばガラス板を砂目加工したものやオパール状の光散乱板を採用することにより散乱光放射角(片側)が30度程度(放射開口数NAo=0.5)のものは容易に得られる。
また、この時、被検レンズの第1面1b上の任意の点b、および第2面1a上の任意の点aは面光源6a全体から放射される散乱放射光によって、各点を頂点とし面光源6aを底辺とする円錐状の光線束で照明開口数NAb、NAaで照明される。
よって、面光源6aからの散乱光の放射開口数NAo内で放射角度−光量分布(以下、放射角光量分布特性)が一定であれば、被検レンズの各面はほぼ均一な明るさで照明される。
なお、散乱板を用いて作った面光源は散乱光の放射開口数が小さいとか、放射角光量分布特性が一様になりにくいとか欠点があるものの、被検光学部材との間に投影レンズを配置しないため、後述するケーラー照明光学系を用いて作る投影面光源よりも、投影レンズに付着したゴミなどによるノイズ(フレアやゴースト)がレンズ表面像に発生しにくい利点がある。
【0035】
保持台移動機構8は、保持台2を光源装置6に対して、面光源6aの光放射の中心軸Pに沿う方向に移動できる手動または自動の適宜の1軸ステージ機構等を採用することができる。また、保持台2が固定され、光源装置6が移動される構成としても良い。
【0036】
照明装置90を用いた透過照明方法の作用について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の作用を説明するための模式的な光路図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の作用を説明するための光路の部分拡大図である。図3(b)は、本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置によって、組み上がりレンズを照明する場合の光路の部分拡大図である。図4は、被検レンズにウネリがある場合の光路の部分拡大図である。
【0037】
まず、被検レンズ1を保持台2に載置する。そして、保持台移動機構8を用いて、被検レンズ1の前側焦点位置Fが、面光源6aの中心Oに一致するように、保持台2を移動させる。
このとき、面光源6aの中心Oは、被検レンズ1の光軸P上に配置されている。
【0038】
光源5で発生した光は、散乱板4に到達して、散乱板4で散乱され、開口3aからの散乱光が、被検レンズ1側に向かって放射開口数NAoで放射される。被検レンズ1の被検面開口数NAtは放射開口数NAo内とされる。
このとき、図1(a)に示すように、面光源6aの中心Oは被検レンズ1の前側焦点位置Fに一致されているため、面光源6aの中心Oから放射される散乱光(照明光)は、被検レンズ1による屈折作用を受けて被検レンズ1から射出された後、光軸Pに平行な光線gとして進む。図1(a)では、わかり易くするために第1面1b上の任意の点bを通過して第2面1a上の点aを通る一本の光線gを光軸Pに対称にg、gと記述して、1つの光線gが第1面1b、第2面1a上の各点をどのように照明するか説明する。
【0039】
第1面1b、第2面1a上の各点における照明光の照明開口数NAa、NAbは、各点から面光源6aを見込む円錐の頂角の半分に相当するので、第1面1b上の点bにおける照明開口数NAbは、面光源6aの半径d/2、面光源6aから点bまでの光軸Pに沿う距離をLbとして、近似的にNAb=(d/2)/Lbと表される。また、同様に、第2面1a上の点aにおける照明開口数NAaは、面光源6aの半径d/2、開口3aから点aまでの光軸Pに沿う距離をLaとして、近似的にNAa=(d/2)/Laと表される。また、被検レンズが薄肉のレンズであれば、Lb=La=ft(被検レンズの焦点距離)であるのでNAb=NAaとも書ける。
【0040】
被検面上の点を照明する照明開口数(NAaやNAb)は被検面の欠陥検出能力と密接につながっており、一般に大きいほうが欠陥の解像力は高いが焦点深度が浅くなると共に像にコントラストがなくなり、欠陥検出能力、つまり欠陥形状は鮮明さを欠いても欠陥が在るか否かの観点からの欠陥検出能力はなくなる。
よって、一般のレンズ欠陥検査では照明開口数は、あまり大きなものは使用されないが、小さくしすぎると、焦点深度が極度に深くなったり、解像力が極端に低下して欠陥の形状がボケてしまい、コントラストも低下する。結果、欠陥検出能力が低下してしまう。よって、レンズのように中心と周辺で高さに差があるような被検体では、検査対象のレンズ形状や欠陥ごとに、照明開口数は都度、欠陥検出能力と焦点深度を考慮して、好適な値に調整される。なお、レンズ表面の欠陥(外観)検査では、欠陥形状の表現力(解像力)より、欠陥があるか否かを検出する能力(欠陥検出能力)が重要であり、以下検査装置の性能を欠陥検出能力を尺度として説明する。
上記観点から、面光源6aの開口3aの直径φdは、実験的ではあるが、面光源6aの中心Oを被検レンズ1の前側焦点位置Fに配置したときの開口数である照明開口数NAb、NAaが0.005〜0.05の範囲となるように選ぶのが良い。
なお、照明開口数と面光源の大きさは、以下の計算で求められる。
面光源の直径=2×照明開口数×面光源と被検面間距離(又は被検レンズ焦点距離)
【0041】
以上、本発明の照明装置及び被検レンズ照明装置内の照明光線の振舞いについて述べてきたが、前述した光線gとgは同一の光線(g)であることに留意して、纏めると、以下の(1)〜(3)のことが言える。
(1) 面光源6aの中心Oから出た光線gは第1面1b上の任意の点bを通過した後、被検レンズ1のパワーによって決定される第2面1a上の点aを通過し、その後光軸Pに平行に被検レンズから射出される。そして、面光源6a全面から第1面の点bに集光して点bを照明する照明開口数NAbの光線束は被検レンズのパワーによって射出開口数NAb’の光線束となり点bから、第2面の点aを照明する照明開口数NAaの光線束もまた射出開口数NAa’の光線束となって点aから光線gを中心として被検レンズ1を通過してゆく。
このことは、被検レンズ1の表裏両面の被検面全域を同時に照明開口数NAa、NAbで照明光の被検体射出側から見てテレセントリックに照明しているといえる。
以下で「テレセントリックに被検レンズ被検面を照明する」とは、このような照明光の被検体射出側から見ての意味である。以下、テレセントリックとのみ表現する。
(2) また、点bと点aを照明する照明開口数NAb、NAaはほぼ等しいので点bと点aの明るさはほぼ同じであり、面光源6aの放射角光量分布特性が均一であれば、第1面1bと第2面1a各々は全面で一様な明るさであり、かつ2つの面の明るさは同じとなる。
(3) また、第1面1bと第2面1aの任意の点は面光源6aの開口3aの径を変更することによって、照明開口数を制御することができ、様々な照明開口数で被検体被検面を照明することができる。
【0042】
図2に示すように、照明装置90と、光軸Pに沿う方向にピント合わせ移動可能に保持された物体側にのみテレセントリックな結像光学系10との組合せによって、被検レンズ1の第1面1b、第2面1aを観察する場合、被検レンズ1に対して照明装置90を上下させ被検レンズ1の焦点Fに面光源6aの中心Oを合致させた後、結像光学系10によって、第1面1b、第2面1aの像を観察手段であるCCD11上に結像し、不図示のモニター上に、画像を表示させて、観察することができる。照明装置90、結像光学系10、およびCCD11は、本実施形態の検査システム100を構成する。
【0043】
例えば、第2面1a上の点aの像を得るための照明光束は、図2に示すように、面光源6aの中心Oから放射された光線gを光学設計時に用いられる主光線に相当する光線(以下主光線とする)として、面光源6aの端部の点c、点eから放射されて点aに到達する破線で示す光線を光学設計時に用いられるマージナル光線に相当する光線(以下マージナル光線とする)とする照明開口数NAaの光束であり、第1面1bで屈折され、第2面1a上の点aに集光される光である。
点aに何らの欠陥もない場合、主光線gは被検レンズを通過後、光軸Pに平行に進み、マージナル光線は被検レンズ1のパワー(屈折力)に応じた射出開口数NAa’を有する光束として点aから出射される。
そして、結像光学系10はこのように点aから出射された光束をCCD11上に、結像光学系10の倍率に応じた像高位置に明るい点として結像させる。同様に、CCD11上には、第2面1a上の全ての点が像が結像されることによって、第2面1aの像ができる。
【0044】
また、第2面1aは面光源6aからの放射開口数NAoの放射角光量分布特性に応じた明るさで照明される。該放射角光量分布特性が均一であれば、第2面1aに照度の均一性が高い照明を行うことができ、結果として面全体が均一な明るさの像を得ることができる。
【0045】
同様に、第1面1b上の点bの像を得るための照明光は、図1(a)に示すように、面光源6aの中心Oから放射された光線gを主光線として、面光源6aの端部の点c、点eから放射されて点bに到達する破線で示す光線をマージナル光線とする照明開口数NAbの光束であり、第1面1b上の点bに集光され、光軸Pに平行な光線gを中心として、被検レンズ1のパワーに応じた射出開口数NAb’を有する光束として出射される。
そして、点bを通って出射された光束も又結像光学系10のピントを点bに合わせることにより、CCD11上で結像光学系10の倍率に応じた像高位置に結像される。また、同様にCCD11上には、面全体が均一な明るさ分布の像を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、面光源と被検面との距離LaとLbが大きくは変わらないので、照明開口数NAa、NAbも大きくは変らない。そのため、点aおよび点bの像の明るさはほぼ等しくなる。つまり、互いに表裏面の関係にある第2面1a、第1面1bにおける明るさの相違は少なく、かつ、放射角光量分布特性が均一な散乱板4を使用することによって、第2面1aと第1面1bをほぼ同じ明るさでかつ各面が均一な明るさの像で得ることができる。
【0047】
また、結像光学系10が物体側テレセントリックな光学系の場合の特徴として、図3(a)に示すように、第1面1bにおける点bの虚像は、射出後の光線gの延長線上の点b’に形成される。つまり、物体側にテレセントリックな結像光学系10からすると光線g上の点aと虚像点b’の像高(光軸Pからの距離)は等しくなり、点aに結像光学系10のピントを合わせたときと、点b’に結像光学系10のピントを合わせたときの像の大きさは等しくなる。
すなわち、点aと点bはそれぞれにピントを合わせたとき、CCD11の撮像面上の同一の位置に表示されることになり、被検レンズ1の表裏面はほぼ同じ大きさの像として撮像される。
この結果、第2面1a、第1面1bの像は大きさが同じで、面全体の明るさが均一で、さらに両面がほぼ同じ明るさの像となり、面毎の調光操作や変倍操作不要な観察装置で像を観察できる。また、自動欠陥装置で両面の検査を行うに当たっては、同じ欠陥検出アルゴリズムが使えることにもなり便利である。
【0048】
また、照明装置90では面光源6aが被検レンズ1の焦点位置にあるので、光源は光学的に無限遠にある。このため、本照明を用いて被検レンズの表面を結像光学系で捉えるときに面光源6aが被検面の像に写りこまないと言う利点もある。
【0049】
本実施形態の結像光学系10は、適宜の結像光学系を採用することができるが、被検レンズ1がテレセントリックな照明をされているので、少なくとも物体側テレセントリックな光学系であることが好ましく、両側テレセントリックな光学系であることがより好ましい。これまで、結像レンズは図2の物体側にテレセントリックな光学構成で説明してきたが、ここからは図5に示すように、対物レンズ46と結像レンズ47とからなり物体と像の両側にテレセントリックな結像光学系49での説明とする。
【0050】
結像光学系10と結像光学系49との差は、前記のように、両側にテレセントリックなほうがCCD11上に結像する光束の主光線が物体側と同様光軸Pと平行であるため、被検レンズ1のレンズ面上の欠陥にピント合わせた後、ピントをずらすときに欠陥が流れるようにボケながら移動することがないので、焦点深度がより深くなったように画像を取得できる利点がある。
このようなテレセントリックな被検体への照明と両側にテレセントリックな結像光学系を組合せた光学装置は測定顕微鏡に代表される他、様々な検査装置に用いられている。この理由は、前述したように、ピントがずれても像が流れるように移動しないので像位置の測定に支障を生じないことと、検査装置全体の光学系において被検体側の被写界深度と像側の焦点深度を深く出来ること、かつ小さな照明開口数の照明で像のコントラスト(像の明暗)をあげることができる点である。
また、大きな開口数NAobをもつ対物レンズ46を用いて、小さな照明開口数で被検体を観察するとレンズ表面の欠陥のような表面に散在する小さな欠陥は欠陥から生じる回折光を対物レンズ46が十分拾うことから解像力が極端に落ちず、シャープな画像を得られる欠陥検出能力とは別の観点で利点がある。例えば、落射照明タイプの半導体検査用の顕微鏡にはNAob=0.9の対物レンズとφ0.5mm位まで絞れる照明用の明るさ絞りが落射投光管に装備されている。
【0051】
なお、結像光学系による観察において、被検レンズ面の曲率半径とレンズ外径の組合せによっては、レンズ中心とレンズ周縁部との間に該結像光学系の被写界深度より大きな高低差が生じる場合があるので、被検面全体にピントが合わせることはできなくなるおそれがある。
しかし、図5に示す実施形態では、結像光学系49が両側テレセントリックな結像光学系なので、被写界深度、焦点深度共に深くできるので、レンズ面全体を1枚の画像に納め易くなる。よって、レンズ面の径方向の観察領域を、何段階かの同心円状の検査エリアに区切り、それぞれの検査エリアにピント調整を行って、複数枚の画像を取得するときに、被検面全体を少ない回数で観察することもできる。そこで、解像力が落ちない範囲で適当な焦点深度の設定も必要となる。今回使用した図5の結像光学系49では欠陥の解像力の観点からでなく、欠陥の検出能力の観点から実験的に深度は0.5mm(片側)となる照明開口数に設定した。
【0052】
次に、図5の構成の照明と結像光学系を用いて行う光学部材表面の欠陥検出原理について述べる。
被検面上の光散乱系欠陥の1つであるスクラッチと呼ばれる鋭利な傷はその斜面(図4の点kの近傍の欠陥は凸部であるが、スクラッチは鋭利な凹部であるため斜面が存在する)で小さな開口数の照明光束を大きく屈折させ、微小な粗さの欠陥集合部では小さな開口数の照明光束は大きな散乱角で散乱させられる(図1に示す散乱光束Sa、Sb参照)。これらの屈折光と散乱光束Saは、対物レンズ瞳においた対物レンズ明るさ絞り43で遮光される。よって、光散乱系欠陥の像は黒色又は灰色に観察される。
光吸収系欠陥であれば、欠陥位置を照明する小さな開口数の光束が欠陥によって吸収されるため、光吸収系欠陥の像は黒色のコントラストの高い像として観察される。
【0053】
また、本照明法を用いた照明装置90は、散乱系欠陥、吸収系欠陥のほかに被検レンズ1のレンズ面の微小なウネリ(レンズ表面の滑らかな凹凸)の観察も容易とする。
図4に示すように、第2面1a上に微小な凸部からなる微小ウネリ部1cがあるものとする。そして、微小ウネリ部1cの近傍の点m、nに、面光源の中心Oからの光線g、gが入射し、微小ウネリ部1c上の点kに、同じく面光源の中心Oからの光線gが入射するものとする。
【0054】
微小ウネリ部1cが存在しない場合、第2面1aから出射される光線g、gと破線で示す光線gは、いずれも光軸Pに平行に進む。
微小ウネリ部1cが存在する場合には、光線gは、微小ウネリ部1cの曲率変化に応じて、光線g’のように点kで、光軸Pと交差する方向に偏向させられ、例えば、光線gと点iで交わることになる。
結像光学系49のピント位置をピント面113からわずかに光線の出射側に移動し、点iを通る面114に移動すると、光線gと光線g’とが交わる点iでは、明点ができる。一方、微小ウネリ部1cがない場合の光線gが交わる点jでは、光線g’が点iに偏向しているので暗点ができる。実際は、被検面上の点m、k、nには、ある照明開口数を持った光束が集光しているために前記明点は明領域として、暗点は暗領域として観察される。すなわち、結像光学系49のピントを、微小ウネリ部1cからわずかに出射側に離すことで、微小ウネリ部1cに対応する明暗模様の画像を観察することができる。
【0055】
なお、図4には、微小ウネリ部1cを凸面として描いて、上記のように説明したが、微小ウネリ部1cは凹面であっても同様である。
このような凹面の微小ウネリ部1cは、例えば、モールド型に異物が付着することにより、レンズ成形時にレンズ面が滑らかに凹ませられるといった原因で発生する。この種の欠陥は強い光を当てると、目視観察で欠陥の存在を見つけることができる場合が多いが、従来の照明、例えばケーラー照明などを用いて顕微鏡で拡大観察しても面が滑らかなためほとんど見えない。
【0056】
また、前記した散乱系欠陥、吸収系欠陥、面のうねり等の観察は、組レンズ、例えば、図3(b)に部分断面で示すような2枚レンズの組レンズ12においても同様に可能である。
組レンズ12は、一例として、面光源6a側(不図示)から、両凸レンズである第1レンズ12A、第1レンズ12A側に凸面を有するメニスカスレンズからなる第2レンズ12Bが配置され、レンズ鏡筒12Cに組み込まれたものであり、面光源6a側から、第1面12d、第2面12c、第3面12b、および第4面12aを備える。
【0057】
光源装置6の面光源6aの中心Oから出射された光線Gは、第1面12d上の点d、第2面12c上の点c、第3面12b上の点bを順次、それぞれのパワーに応じて屈折されながら透過し、第4面12a上の点aで、光軸Pに平行な方向に出射される。
よって、2枚のレンズのパワーが小さい場合など、結像光学系10に大きな収差を発生させない組レンズについては、各レンズ面をそれぞれ結像光学系10の被写界深度内に納めるピント調整を行うことにより、各レンズ面の観察を行うことができる。
この場合、図3(b)に示すように、各レンズ面における点d、c、b、aの虚像は、点aを出射後の光線Gと同軸上の点d’、c’、b’、a’に形成されるため、結像光学系49のピントをそれぞれの面に合わせると、各面の像が同じ像高で、同じ明るさで観察される。もちろん、二つの面が接近し、結像光学系49の被写界深度にある場合は、欠陥の存在する面を特定できない。
【0058】
次に、照明装置90によって照明され、結像光学系49によって得た被検レンズの観察像の一例について説明する。
図6は、観察に用いた被検レンズの断面形状を示す。図7は、被検レンズの第2面(結像側の面13a)に結像光学系49をピント調整した場合の観察像の写真画像である。図8は、被検レンズの第1面(光源部側の面13b)に第2面を介してピント調整した場合の観察像の写真画像である。図9は検査領域を拡大する照明方法について説明する模式的な光路図である。
【0059】
観察に用いた被検レンズ13は、図6に示すように、第1面13b、第2面13aがいずれも非球面からなる両凸のガラスモールドレンズである。照明用の面光源6aはほぼ非球面の近軸の焦点位置に置いた。本検査システムは、検査可能なレンズが球面レンズだけでなく非球面レンズを含む広い対応範囲を持つことを示す。
被検レンズ13のレンズ外径はφ6.2mm、レンズ肉厚tは、t=2.5(mm)である。また、第1面13bは、非球面近軸曲率半径Rが、R=5.5(mm)、第2面13aは、非球面近軸曲率半径Rが、R=9.5(mm)である。
第1面13bの外周にはφD=φ4.5(mm)からテーパ角45°のテーパ部13cが形成されている。また、第2面13aの外周にはφD=φ5.5(mm)から被検レンズ13の光軸に直交する平面を構成するフラット部13dが形成されている。
第1面13bとテーパ部13c、および第2面13aとフラット部13dのつなぎ境界には、それぞれR0.5(mm)の凸R部、凹R部が形成されている。よって、光学設計上の非球面となっている径(以下、非球面径)は第1面13bでφD’=φ4.0(mm)程度、第2面13aでφD’=φ5(mm)程度である。
被検レンズ13の近軸焦点距離fは、f=6.1(mm)程度であり、第1面13bの面頂位置から前側近軸焦点位置までの距離は、5.6(mm)で程度である。
【0060】
本観察例では、被検レンズ13は、保持台2の円形状を有する軸方向位置決め部2a上にテーパ部13cを当てつけて載置され面光源6aに対して軸方向および径方向にほぼ位置決めされている。本観察例では、径方向位置決め部2bは、直径φ6.8mmとしているため、被検レンズ13の外径に対して片側0.3mmのクリアランスがあり、被検レンズ13の載置時に被検レンズ13はこの範囲内で偏心する。
【0061】
実験したところによれば、このように径方向に±0.3mm程度の配置誤差があっても、像は移動するものの像が変形するようなことはなく欠陥検出能力には影響はなかった。そのため、面光源6aの中心Oは、前側焦点位置対して、光軸Pと直交する方向に略一致する位置であればよい。
【0062】
面光源6aの径φdはφd=0.3(mm)である。このため、第1面13b、第2面13aに対する照明開口数は、約0.025になっている。
また、写真撮影に用いた結像光学系49は、結像レンズ47と対物レンズ46とを無限補正の同じレンズで構成し、瞳位置で対称な配置として倍率1×で使用した。
【0063】
図7、8は、それぞれ、結像光学系49のピントを第2面13a、第1面13bに合わせた時のCCD11で撮像された画像である。
なお、マーク部Mは、第2面13a、第1面13bを識別しやすくするため、第2面13aの表面に油性インクで故意に書き込まれたものであり、実際の観察や欠陥検査にないものである。
図6に示すように、面光源6a全面から出射された照明光束は、第1面13bで点b、第2面13aで点aに集光された後、面光源6aの中心Oからの主光線gを中心とした照明光束は、光軸Pに平行に進む主光線gを持つ光線束として被検レンズ13から出射される。この光線束のうち、非球面径の最外部を通る光線束は、図7、8では、第2面13a、第1面13bの非球面径φD、φDに対応する円状の明部である非球面部画像14a、15aを形成する。
【0064】
一方、光軸Pに対して、被検レンズ13の第1面13bから外側に大きな角度で面光源6aから放射された光線束は、テーパ部13cでは反射され、テーパ部13cと第1面13bのつなぎ部0.5R部に向かう点Aを通過する光線kを中心とした光束はこの面で屈折して第2面13aの0.5R部やフラット部13dを通って、光軸Pから離れる方向に射出される。よって、このような外乱光は図5に示すように結像光学系49の瞳位置付近に置いた対物レンズ明るさ絞り43を適正に絞ることによってけられ結像しない。このため、境界部14b、15bの非球面部の外周側では、光線kがCCD11上に結像されないため均一な暗部が形成される。
すなわち、本観察例では、ほぼ、第2面1a、第1面1bの非球面径領域に対応する非球面部画像14a、15aのみが表示される。ただし、0.5R部で屈折する一部(非球面部から0.5Rにつながるわずかな輪帯部)の光線kは結像光学系49の対物レンズ46に捉えられて非球面部画像14a、15aの最外周にリング状の明部を作っている。
【0065】
次に図5の結像光学系49で得た被検レンズ13の被検面である第2面13aおよび第1面13bの画像について説明する。
第2面13aの像である図7には、マーク部Mと同様に鮮明な画像として、例えば、欠陥14c、14d、14e、14fなどの像が観察されている。また、不鮮明な欠陥15c、15d、15e、15fなどが観察されている。
また、第1面13bの像である図8では、マーク部M、欠陥14c、14d、14e、14fと同様の画像が図7と同様な位置関係で図7よりもぼけた状態で観察される。そして、欠陥15c、15d、15e、15fが、図7と同様な位置関係で図7よりも鮮明な状態で観察されている。
これより、欠陥14c、14d、14e、14fは、第2面13a上の表面欠陥であり、欠陥15c、15d、15eは、第1面13b上の表面欠陥であることが判別できる。
【0066】
また、第2面13aと第1面13bとの間の内部欠陥があれば、いずれの画像でもぼけた像として観察され、結像光学系49のピント位置を第2面13aと第1面13bとの間の適宜位置に移動すれば、その欠陥が鮮明に観察されることになる。
【0067】
なお、上記の説明では、原理的な理解を助けるため簡単化して説明したが、実際の被検レンズの形状条件によっては、面光源6aの中心Oから第1面13bの非球面領域に入射した光は、第2面13aの非球面領域のわずかに内側を通過する場合がある。すなわち、図9に示すように、第1面13bのレンズ非球面径の最外周部の点Xを通過する光線gは、第2面13aの非球面径の点Zよりわずかに径方向内側の点Yを通過する。このため、ZYの間の円環領域は十分照明されないことになり、表面の欠陥の有無を観察することができない。
つまり、面光源6aの中心Oから第1面の非球面領域最外周を通る光が像の視野の大きさ(視野径)を決め、第2面の視野径もこの光線が決めることになる。よって、第2面が大きな径のレンズ面で構成されていれば検査不可能な領域が発生する。
【0068】
図7に示した写真は、図9に示すように、面光源6aを距離δ(略0.5mm)ほど被検レンズ13に近づけた位置に配置して撮影したものである。この場合、破線表示された面光源6aの中心O’からの光線g’は、第1面13bの点X、第2面13aの点Zを通過するので、第2面13aの非球面領域全面が面光源6aからの光束によって照明され、図8に示すように、鮮明な球面領域全面の画像を観察することができる。
ただし、この場合、光線g’は第2面13aの点Zを通過するので、図7の非球面部画像14aの大きさは、図8の非球面部画像15aの大きさよりもわずかに大きくなる。しかし、各欠陥の位置は相似の関係にある。照明のテレセントリック性はわずかに損なわれるが、得られる画像は検査には支障はなかった。
【0069】
このように、図7、8の観察例は、面光源6aの中心Oを被検レンズ13の前側焦点位置から光軸方向にわずかにずらしても、鮮明な欠陥の画像を観察できることを示す。そのため、本照明方法では、欠陥の有無の検査など画像の倍率変化を問題にする必要がない場合には、面光源6aの中心Oを被検レンズ13の前側焦点位置に略一致する位置に配置すればよいことが分かる。ただし、対物レンズの開口数は大きくしておく必要がある。ここで、「略一致する位置」は、観察対象とする欠陥の種類や大きさにもよるが、実験的に被検レンズの焦点距離の±10(%)の範囲内であることが好ましい。しかし、このような操作は一般レンズでは不要な場合が多い。
【0070】
このように、本実施形態の照明装置90と両側にテレセントリックな結像光学系49を用いた装置によれば、被検レンズ1、13の前側焦点位置と面光源6aの中心Oとが略一致する位置関係にあることによって、被検レンズ1、13を小さな照明開口数で略テレセントリックに照明でき、該被検レンズを両側にテレセントリックな結像光学系で撮像すると、明視野照明でありながら該被検レンズの光散乱系欠陥/光吸収系欠陥/面うねりを良好に観察することができる。また、未検査領域もなくすことができる。
【0071】
なお、本実施形態では、観察例として、実験的に両面とも軽い非球面の被検レンズ13の例を挙げたが、当然ながら本発明の各種透過照明装置を用いることによって、正負レンズを問わず、球面のみのレンズでもよいし、球面と非球面とを組み合わせたレンズであってもよい。又、焦点距離が異なってもよい。
【0072】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る透過照明装置について説明する。
図10(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る透過照明装置の光学的な概念図である。図11は、本発明の第2の実施形態に係る透過照明装置の具体的な構成図である。なお、投影面光源6a’と被検レンズ20Aの焦点位置との間の距離を調整する照明装置76の移動機構は図示していない。
【0073】
本実施形態の透過照明装置である照明装置76は、被検レンズ20Aが凹レンズ、あるいは曲率半径の大きな凸レンズ及び平板の検査に用いることができる透過照明装置である。
照明装置76は、図10(a)に示すように、光源5と光源5からの光を集光して散乱板4に照射する集光レンズ77と、散乱板4および略円形状の径の異なる開口を有する交換可能な開口板3で形成される投影用面光源60aと、投影用面光源60aを投影して投影像である投影面光源6a’を形成する投影レンズ45とからなる。
投影レンズ45は、光軸Pに沿う方向に移動可能に保持され、かつ焦点距離の異なる他の投影レンズ45と交換可能とされている。
また、集光レンズ77は開口板3の開口部(投影用面光源)の光量不足を補う措置であり、光源5の光量に余裕がある場合には削除してもよい。
図10(a)は凹レンズ検査時の光学図であり、投影レンズ45は正(凸)レンズが用いられ、投影用面光源60aの光軸Pに沿って移動し投影用面光源60aとの位置を可変でき、かつ適当な位置で停止できるようになっている。
【0074】
また、投影レンズ45は、投影用面光源60aとの位置によって、投影面光源6a’位置を様々に変えることができ、投影用面光源60aとの位置によって決まる放射開口数NAo’を有している。
例えば、投影レンズ45として、焦点距離fの正レンズを光軸Pに沿う方向に移動可能に保持した構成とすることができる。この場合、投影用面光源60aと投影レンズ45との距離をL2として、距離L2を投影レンズ45の焦点距離f以上にとれば、投影用面光源60aからの光束は収束し、投影レンズ45からの距離L1の位置に投影用面光源60aの投影面光源6a’ができる。そして、投影面光源6a’からの光束は放射開口数NAo’で発散してゆく。
距離L2が投影レンズ45の焦点距離fの2倍であれば、距離L1が投影レンズ45の焦点距離fの2倍の位置に投影面光源6a’として投影用面光源60aの等倍の実像を作る。被検レンズ20Aが凹レンズ場合、前側焦点位置が被検レンズ20Aを通り越した位置にあるため、図10(a)のように被検レンズ20Aを投影面光源6a’と投影レンズ45との間に配置して、投影面光源6a’の中心と被検レンズ20Aの前側焦点位置を一致させる。
距離L2が投影レンズ45の焦点距離fと同じであれば、投影用面光源60aからの光束はアフォーカルとなり、平板の検査に用いることができる。
距離L2が投影レンズ45の焦点距離fより短ければ、投影用面光源60aの虚像は光源5側にでき(図10(b)参照)、投影用面光源60aからの光束は発散する。被検レンズ20Aが凸レンズの場合は、このような発散光束中において、被検レンズ20Aの焦点と虚像の投影面光源6a’の中心とが合致する様に被検レンズ20Aを配置すればよい。
【0075】
以上は単レンズの投影レンズ45によって、投影面光源6a’の位置を変える場合の説明をしたが、単レンズ故の収差などには十分な配慮が必要である。また、本発明の透過照明装置では、面光源と被検レンズの焦点の合致させた上で被検レンズの被検面を照明する放射開口数NAo’が被検レンズの検査域を満足する必要があり、単レンズを用いた透過照明装置では検査できる被検レンズは限定される。
よって、投影レンズ45をズーム投影レンズとして、固定群と移動群とを含む複数のレンズ群からなるズームレンズを採用することもできる。この場合、1枚構成のレンズを移動する場合に比べて光量不足や投影像の劣化などが起こりにくくなるために好ましい。
なお、被検レンズ20Aの焦点位置への位置合わせは、図示しない光源移動部を用いて照明装置76を光軸Pに沿う方向に移動させることで行う。
【0076】
図11に示す照明装置78は、本実施形態の透過照明装置の他の例である。
照明装置78は、LEDなどの光源5と、光源5からの光を集光し散乱板4上の開口板3の開口部を照射する集光レンズ77と、散乱板4と開口板3を収納した円筒状部材78aと、からなる光源装置6Cを備える。
円筒状部材78aの円筒部外周に沿って上下するスライド円筒部材78bが位置きめロック部材78cで適当な位置に固定できるようになっている。スライド円筒部材78bの内径には移動投影レンズ受け部材78dが挿入載置できる。移動投影レンズ受け部材78dには投影レンズ45が接着固定され、移動投影レンズ受け部材78dごと交換できるようになっている。そして、焦点距離が異なる投影レンズ45とスライド円筒部材78bに対して交換可能に設けられた移動投影レンズ受け部材78dとからなる複数の移動投影レンズ組が用意されている。
このような構成で、焦点距離の異なる移動投影レンズ組の1つをスライド円筒部材78bに挿入してスライド円筒部材78bを上下することによって、投影面光源6a’位置と放射開口数NAo’とを簡単に変えることができる便利な照明装置78を作ることができる。
【0077】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る透過照明装置について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る透過照明装置の概略構成を示す模式的な構成図である。なお、投影用面光源60aと被検レンズ20Aの焦点との間の距離を調整する照明装置の移動機構は図示していない。
【0078】
本実施形態の透過照明装置である照明装置93の概略構成は、図12に示すように、上記第1の実施形態の光源装置6のハロゲンランプ等からなる光源5に代えてLED5Aを設けた光源装置6Aによって形成された投影用面光源60aと、前側焦点位置が投影用面光源60aの中心Oに略一致されたコリメートレンズ42と、コリメートレンズ42と同軸に配置された焦点距離Fを有する投影レンズ44と、投影用面光源60aおよびコリメートレンズ42の間に配置した羽根照野絞り43とからなる。
このような構成では、投影レンズ44の後側の焦点位置Fに投影用面光源60aの像を結像させ投影面光源6a’として利用できる。
なお、投影用面光源60aとコリメートレンズ42の間の羽根照野絞り43は、投影用面光源60aからの光束を規制し、投影レンズ44からの射出光の放射角、即ち被検レンズ20Aへの照明開口数NAo’を変化させ、被検レンズ20Aの照明範囲を決める照野絞りである。図12に示す構成は、羽根絞りつきの顕微鏡用のコンデンサーレンズ鏡枠を使用した場合の構成となっている。
なお、羽根照野絞り43はコリメートレンズ42と投影レンズ44との間に配置してもよく、この場合、光束が大きいので調整しやすくなる。
【0079】
LED5Aは、発光部の大きさによらず適宜のLEDを採用することができ、LED5Aから放射される光が開口板3の開口3aを覆う範囲に照射できるように散乱板4を挟む位置に配置される。もちろん、LED5Aからの発散光を、図11に示すような集光レンズ77で集光して開口3aを覆う範囲に照射しても良い。
LED5Aは光源装置枠74に固定され、開口径の異なる互換可能な開口板3、散乱板4は、光源装置枠74に交換可能に落とし込まれ、光源装置枠74は透過照明装置本体を構成する光源部鏡筒73に対して、羽根照野絞り43を挟んだ状態で顕微鏡への取付枠61に着脱可能に取り付けられている。
投影レンズ鏡筒72の投影用面光源60a側にコリメートレンズ42が固定され、投影レンズ鏡筒72の他端には、交換レンズ鏡筒63に納められた投影レンズ44が交換可能に挿入設置されている。
【0080】
このような構成により、投影レンズ44を必要に応じて交換することによって、投影用面光源60aによって形成される投影面光源6a’の位置を変更することができるので、前側焦点がレンズの後方(結像レンズ側)に位置する凹レンズの検査には投影レンズ44を正レンズとし、焦点距離の短い凸レンズの検査には焦点距離の短い正レンズを投影レンズ44とし、焦点距離の大きい凸レンズの検査には投影レンズ44を負レンズとし、平行平板の検査には投影レンズ44なしで使用される。
このような構成の投影光学系はLED5Aを使用することによってハロゲンランプを使用する場合に比べて小型、低発熱、高輝度の利点があり、また波長選択可能等の理由で照明装置93の小型化を始め利用価値が高い。また、光学部材がシリコンなどでできている場合は、LED5Aとして赤外の波長を発振するLEDを選ぶのが良い。
本実施形態は第2の実施形態の透過照明装置より投影面光源の収差を少なくでき、コンパクトなものとなる。
【0081】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態である顕微鏡に用いられる透過ケーラー照明を用いた透過照明装置の実施形態について説明する。
図13は透過ケーラー照明法を説明する模式図である。
【0082】
本実施形態の照明装置40は、図13に示すように、透過ケーラー照明を用いた顕微鏡の通称窓レンズである投光レンズ36と、投光レンズ36の前側焦点位置に置いた開口可変の前側羽根絞り41A(透過ケーラー照明の視野絞りに相当)と、前側羽根絞り41Aの開口を照明する散乱板4と、光源5とを備える。
また、投光レンズ36の後側焦点位置付近で光軸Pに沿って移動できる投影レンズ44と、投影レンズ44の前側焦点位置(瞳位置)に置いた開口可変の後側羽根絞り41B(透過ケーラー照明での明るさ絞りに相当)とが不図示の保持部材に保持された光学ユニットであるコンデンサーレンズ37が光軸Pにアライメントされて配置されている。
なお、図13では、説明をわかり易くするために、投光レンズ36の後側焦点位置にコンデンサーレンズ37の後側羽根絞り41Bが一致している場合を示している。
【0083】
散乱板4から放射される角度θ、開口径φdで前側羽根絞り41Aを通過する散乱放射光束は後側羽根絞り41Bの絞り面上で放射角度に応じた半径位置(r=f×θ)にテレセントリックに開口数NAfで(NAf=d/2f)集光する。後側羽根絞り41Bを通過した光束は投影レンズ44で射出角度θ’に屈折させられ平行光束となって投影レンズ44の後側焦点O’でφd’の径の明領域(前側羽根絞り41Aの開口像)をつくり、該明領域から被検レンズに向かって照明角θ’で射出される。つまり、前側羽根絞り41Aの開口径がφdの光放射領域内の各点から射出される放射開口角θ以内の各光束は、投光レンズ36と投影レンズ44とによって、径がφd’の光放射領域から、放射開口角θ’内の光束の集まりである放射開口数NAの光束となって投影レンズ44の後側焦点位置、すなわち、コンデンサーレンズの照明平面に投影される。このため、径がφd’の光放射領域は、投影面光源6a’となっている。
投光レンズ36と投影レンズ44との焦点距離をそれぞれfとfとした場合、これらのファクターの関係は、
φd’/φd=f/f
となる。
【0084】
簡略に表現すると、前側羽根絞り41Aを操作することによって、被検レンズ20Aを照明する投影面光源6a’の大きさを決定でき、投影面光源6a’から被検レンズ20Aの被検面上の任意の点を照明する照明開口数NAa、NAbの大きさ(図1参照)を操作できる。
つまり、前側羽根絞り41Aを絞ると投影レンズ44の瞳位置に集光する前側羽根絞り41Aを通過した光束の開口数NAfが小さくなり、その結果、投影レンズ44の後側焦点位置にできる投影面光源6a’の径が小さくなり、投影面光源6a’から放射される照明光の被検レンズ20Aの照明開口数NAaも小さくなる。
一方、後側羽根絞り41Bを絞ると、図18からわかるように、投影レンズ44からの放射角(放射開口数NAo)を小さくすることができる。この結果、投影レンズ44からの放射角(放射開口数NAo)を可変して被検レンズの被検領域に合致させることができ、必要外の照明光をカットして良好な画像が得られる。
【0085】
図18は、透過ケーラー照明の後側羽根絞りと投影レンズと照明平面(投影面光源)関係を表した模式図である。
図18に示すように、後側羽根絞り41Bを絞ると投影レンズ44から射出される光束の射出角度θ’は小さくなる。一方、前側羽根絞り41Aを角度θで通過してきた光源からの平行光束が投光レンズ36によってテレセントリックに集光する光束の開口数NAfsが小さいと照明平面にできる投影面光源6a’の径df’cは小さくなることがわかる。
【0086】
顕微鏡の透過ケーラー照明では、標本は投影レンズの後側焦平面(照明平面)に置かれ、後側羽根絞りを絞ると照明平面の明るさは前側羽根絞りからの光束がけられるため暗くなり、前側羽根絞りを絞ると照明平面にできる明領域、いわゆる照野は小さくなる。このことから、透過ケーラー照明では後側羽根絞りを明るさ絞り、前側羽根絞りを視野絞りと称する。しかし、照明装置40では、透過ケーラー照明の明るさ絞りに相当する後側羽根絞り41Bを絞ると投影レンズからの放射開口数NAo’は小さくなり被検レンズの照明範囲が狭くなるので、後側羽根絞り41Bは視野(照野)絞りとして使用されている。一方、透過ケーラー照明の視野絞りに相当する前側羽根絞り41Aを絞ると投影レンズ44が作る明領域、すなわち投影面光源6a’が小さくなり、被検レンズ20Aの被検面の任意の点を照明する照明開口数も小さくするので、被検面は暗く照明される。つまり、照明装置40の前側羽根絞り41Aは、明るさ絞りとして使用されている。
【0087】
本実施形態の照明装置40の利点としては、散乱板4の放射開口数が小さくてよいことから、放射角光量分布特性が均一に近い部分を使えるので、投影レンズが作る面光源像からの放射角光量分布特性も均一に保たれ、かつ、焦点距離の長い投光レンズと、焦点距離の短い投影レンズを組み合わせることによって放射開口数NAoを大きくできる利点がある。
図13で投光レンズの焦点距離をf、投影レンズ44の焦点距離をf、投光レンズ36に入射する前側羽根絞り41Aからの光束の入射角をθ、該光束が投影レンズから射出する光束の射出角をθ’とすると、
/f=θ/θ’
となり、投影レンズ44の焦点距離fが投光レンズ36の焦点距離fに比して短いと投影レンズ44から射出する光束の射出角をθ’大きくできる。
また、投影レンズ44を焦点距離の異なる交換レンズとすると、第3の実施形態と同様の使い方が可能である。
一方、本実施形態は第1の実施形態と比べると上記のように利点は多いが、透過ケーラー照明用いるので、前側羽根絞り41Aは投影面光源6a’の径を小さくする必要から絞って(NAfを小さくして)使われると、照明光量が低下するおそれがある。
なお、前側羽根絞り41Aは、枚数の多い羽根絞りのほうが絞り込んだときの形状が円に近くなるので好ましいが、4枚の羽根絞りで絞り込むとできる正方形の開口であっても欠陥の検出能力には大きな影響はない。
【0088】
次に、本実施形態の透過照明装置の第1変形例について、図14を参照して説明する。 本変形例は被検レンズが正レンズの場合の検査に用いられる。
図14は第4の実施形態の第1変形例を示す模式的な部分断面図であり、図13から説明に必要な部分だけ抜き出して記載している。
【0089】
照明装置40の第1変形例は、第1実施形態の散乱板4上に開口板3を配置することに代えて、投影レンズ44の後側焦平面(投影面光源位置、照明平面)に交換開口板枠57、開口板56を備える。
【0090】
交換開口板枠57は、投影レンズ44を像側で覆うように投影レンズ鏡筒62の端部に交換可能に設置されたキャップ状の部材であり、その中心には、光軸Pを中心とした開口57aが設けられている。
【0091】
開口板56は、例えば、薄板に写真腐食加工等により径の異なる小さな開口56aをあけた円形板で、交換開口板枠57の光軸Pに開口56aを同心で貼り付けたものである。
これにより、被検体に応じて、照明開口数を変える必要がある場合には、交換開口板枠57上の開口板56の開口56aの径が異なる交換開口板枠57に交換できるようになっている。
交換開口板枠57が投影レンズ44の上方に載置された状態では、開口56aの径方向内側の円領域が、投影レンズ44から射出される光を被検レンズ20Aに向けて放射する投影面光源6a’を構成している。
【0092】
本変形例は、複数の交換開口板枠57が、互いに異なる開口径を有し、この複数の交換開口板枠群のいずれかを、光軸上に選択的に切り換えて配置することにより、投影面光源6a’の大きさを切り換えられる構成の例となっている。
本変形例によれば、交換開口板枠57を交換するだけで、容易に照明装置40の照明開口数を変更することができる。
【0093】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る透過照明装置ついて説明する。
図15は、本発明の第5の実施形態に係る透過照明装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【0094】
本実施形態の透過照明装置である照明装置94は、図15に示すように、面光源6aの光放射領域を中心とする輪帯状の遮光部材からなる開口板3Aと、この開口板3Aの遮光部材の外周に沿う輪帯状に、略均一な散乱光を出射する輪帯状光放射領域6cとを備えており、上記第1の実施形態の照明装置90(図1(a)参照)に代えて、検査システム100、101(図2、図16参照)に好適に用いることができる。
【0095】
照明装置94の概略構成は、図15に示すように、上記第1の実施形態の光源装置6Aに代えて、光源装置6Bを備える。光源装置6Bは、光源装置6Aの開口板3に代えて、開口板3Aを備えるものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
なお、図15には、被検体として、被検レンズ1を用いる場合の例を図示している。
【0096】
開口板3Aは、散乱板4の散乱光放射範囲(面光源)を直径φdのピンホール状に規制する開口3aを備えるとともに、開口3aと同軸で直径がφDの外形を有する薄肉円板であり、φdよりも大きな径を有する散乱板4の中心部に例えば接着等によって貼り付けられている。これにより、開口板3Aの外周側には、輪帯状光放射領域6cが形成されている。なお、輪帯状光放射領域6cは、照明の均一性を高めるためには、均一幅の輪帯であることが好ましい。
【0097】
照明装置94によれば、光源5からの光は、散乱板4で散乱され、開口3aの内側の面光源6aから放射される光と、開口板3の外周の輪帯状光放射領域6cから放射される光に分かれる。
面光源6aからの光は、上記第1の実施形態と同様に進み、被検レンズ1を照明する。
一方、輪帯状光放射領域6cからの光は、図15に破線で示すように、放射光の一部は被検レンズ1に入射するが、この光束は、光軸Pに交差する斜め方向光軸Pに交差するように大きな角度で被検レンズ1に入射し、被検レンズ1のパワーに応じて、斜め方向に出射される。輪帯状光放射領域6cの外径は輪帯状光放射領域6cからの散乱光が対物レンズ46に取り込まれない径に設定されている。
このため、被検レンズ1上に欠陥が存在しない場合、輪帯状光放射領域6cからの光は観察手段、例えば、検査システム101等の対物レンズ46などには入射せず真っ暗な像を形成する。そして、被検レンズ1上に散乱系欠陥が存在する場合は、照明光は欠陥により回折されたり、散乱されたりするので、対物レンズ46を含む結像光学系49はこれら回折光や散乱光を捉え、観察手段を介して散乱系欠陥を明るい像として暗視野観察を可能とする。
このため、照明装置94を備える検査システムでは、面光源6aからの光による第1実施形態の透過照明装置を用いた明視野像と、輪帯状光放射領域6cからの光による暗視野像とを同時に観察することができる。
したがって、第1実施形態の透過照明装置を用いた明視野観察では暗い画像となる吸収系欠陥を、本実施形態の照明装置94では、明るい画像で表示することができ、欠陥の分類が容易な観察を行うことができる。
【0098】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置および検査システムについて説明する。
図16は、本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置および検査システムの概略構成を示す模式的な側面図である。
本実施形態の検査システム101は、透過ケーラー照明を備える市販の顕微鏡に上記第1の実施形態の結像光学系49を合体させたもので、例えば、平行平板、正レンズ、負レンズ、あるいはこれらの組合せからなる組み上がりレンズなどの光学部材を被検体として、これら被検体の欠陥を検査するためのものである。以下では、光学部材の一例として、被検体が両凸面からなる焦点距離がfの正のパワーを有する被検レンズ20を検査する場合の例で説明する。被検レンズ20のレンズ面は、照明の入射側から、第1面20b、第2面20aと称するものとする。
【0099】
被検レンズの保持台は、図17(a)記載のような平板に一定ピッチで設けられた、径方向位置決め部2bと軸方向位置決め部2aとをもつレンズ保持穴に複数個の被検レンズ20を収納するトレー2Cである。被検レンズ20はトレー2Cに複数個収納保持されている。このようなトレー2Cは洗浄、コート、検査、搬送用として一般のレンズ製造工程で用いられている。
検査システム101は、透過ケーラー照明の光源投光部である第1照明部31を備える顕微鏡本体30に互換可能な投影レンズ44と後側羽根絞り55とが組み込まれたコンデンサーレンズ37と、被検レンズ20の焦点と面光源位置を合致させるコンデンサーレンズ移動部38、トレー2Cに収納した被検レンズ20をケーラー照明光軸上に移動する顕微鏡用被検体載置位置調整X−Yステージ(以下ステージ)50、被検レンズ20にピントが合う高さで顕微鏡本体30から伸びる支柱に取り付け、ケーラー照明光軸Pと光軸を合致させた結像光学系49、トレー2Cをケーラー照明光軸Pに沿って上下させ被検レンズ20を結像光学系49のピントにあわせるステージ移動部39、結像光学系49の結像位置に配した撮像手段であるCCDカメラ54、CCDカメラ54が取得した画像の表示、観察手段であるモニター70、およびCCDカメラ54が取得した画像を処理して欠陥を抽出する画像処理部を有するコンピューター71を備える。
【0100】
まず、検査システム101の透過照明系から説明する。
顕微鏡本体30、第1照明部31、コンデンサーレンズ37、ステージ50は、本実施形態の検査システム101の透過照明装置を構成している。第1照明部31とコンデンサーレンズ37とで透過ケーラー照明を実現している。
図16において、第1照明部31は、顕微鏡本体30中に水平方向に走る光軸に光源5と、光源5から放射された光を集光する集光レンズ33aと、光源5のフィラメントをボケ像とする程度に撹乱するデフューザー33bと、前側羽根絞り34(透過ケーラー照明での視野絞りに相当)の開口部34aにデフューザー33bで撹乱された光束を集光し、開口部34aを図13に示す上記第4の実施形態の投影用面光源60aと同様、面光源としての働きをさせる開口照明レンズ33cと、開口照明レンズ33cからの光束の通過径を規制する前側羽根絞り34と、前側羽根絞り34を透過した光束を鉛直方向に延びる光軸Pに沿う方向に反射する反射ミラー35と、反射ミラー35で反射された光束を集光し、光源5のフィラメントのボケ像を略テレセントリックに後側焦点位置に結像させる顕微鏡の窓レンズである投光レンズ36とからなる。そして、前側羽根絞り34は、投光レンズ36の前側焦点位置に配されている。
コンデンサーレンズ37は、後側羽根絞り55の位置が投光レンズ36の後側焦点位置付近で光軸に沿って移動できるようになっている。
【0101】
コンデンサーレンズ37は生物顕微鏡用のアクロマートコンデンサーレンズや工業顕微鏡の長作動距離コンデンサーレンズなどのほか、図14、12、13に示すような交換可能な焦点距離の異なる交換投影レンズ鏡筒群と投影レンズの前側焦点(瞳)位置に後側羽根絞り55(透過ケーラー照明での明るさ絞りに相当)を内蔵する顕微鏡に互換可能に着脱できるユニット(コンデンサーレンズ)などが使用される。ここで、コンデンサーレンズ37の後側焦点(投影面光源)位置は顕微鏡で病理標本などを観察する場合の標本載置面(=照明平面)であり、透過ケーラー照明を特徴づける個々のコンデンサーレンズの持つ放射開口数(顕微鏡では照明開口数)の光束が作る一様な明るさの平面である。
この照明平面の大きさ(φd’)は投光レンズ36およびコンデンサーレンズ37の焦点距離をそれぞれf、f、前側羽根絞り34の大きさをφdfsとすると、
φd’=φdfs×(f/f
と表せる。顕微鏡に用いられる透過ケーラー照明の視野絞りの最小径は、一般にφ1.5mm位であり、例として生物用アクロマートコンデンサーレンズの焦点距離を15mm程度、窓レンズの焦点距離を90mm程度とすると、
φd’=φ1.5×(15/90)=φ0.25(mm)
となる。この径が散乱板上の開口径と同様な意味を持つ本実施形態の最小の投影面光源6a’である。
【0102】
本実施形態での投影面光源の明るさ分布について説明する。光源5から放射され、前側羽根絞り34の開口部34aを通過した照明光は、投光レンズ36の後側焦点位置(コンデンサーレンズ37の瞳位置55である後側羽根絞り41Bの位置)に、光源5のボケ像5a(図18参照)を結ぶ。顕微鏡の教科書には、ボケ像ではなく光源のフィラメントが書かれていることが多く、照明平面が均一な明るさで照明されることを説明しているが、現代の顕微鏡ではデフューザー33bによって像が見えないほどのほぼ一様な明るさのボケ像5a(明領域)となっており、コンデンサーレンズ照明平面df’c(図18参照)の明るさの一様性は高まっている。
よって、第1の実施形態の透過照明装置の散乱板4上に開口板3を置いて作る面光源6aとは機能が変わらない。
【0103】
このような顕微鏡のケーラー照明を利用して被検体を照明する利点は大きな放射角と放射角光量分布特性の一様な面光源を得られることと簡単に安価に購入できる点にある。
図18にコンデンサーレンズの概念を表す模式図を示す。市販のコンデンサーレンズは、工業系顕微鏡で用いられる長作動距離コンデンサーレンズとしては、開口数が0.6、作動距離WDが12mm程度、生物系顕微鏡で用いられるアッべ型のアクロマートコンデンサーレンズでは開口数が0.8、作動距離WDが0.7mmのものがある。このようなコンデンサーレンズを用いれば、光放射角θは約40°と50°を得ることができる。
なお、作動距離WDが0.7mmのコンデンサーレンズは焦点距離の短い正レンズ検査用に使用される。
【0104】
また、透過ケーラー照明装置をもつ市販の顕微鏡を利用することによって、簡単に面光源透過照明装置を作ることができる。つまり、顕微鏡や顕微鏡コンデンサーレンズに装備されている視野絞りや明るさ絞りそのまま利用して、本発明の面光源絞りと照野絞りとすることができる。また、これらの絞りが8枚程度の羽からなるために最小開口に絞ってもほぼ円形とみなせる8角形となって方向によって照明開口数が大きく異なることはない。
【0105】
ただし、顕微鏡の照明は、当然顕微鏡観察に適したように作られているので、前述したように本実施形態で使用する顕微鏡ではケーラー照明視野絞りを必要なまでに絞りきれないので、照明光量不足や照明開口数を小さくできない欠点がある。
この対策として、図16において、コンデンサーレンズ37に替わって図19に示すような透過照明装置である照明装置95を顕微鏡のコンデンサーレンズ受け38に取付けることもできる。
【0106】
図19でコンデンサーレンズ37は前述した生物顕微鏡用コンデンサーレンズとして一般的なアッベタイプのコンデンサーレンズ(WD=0.7mm)のレンズ組であり、図左側が窓レンズ側である。
レンズ組37の集光平面はレンズ37Bの面37dから0.7mmにあるので、該平面に投影用面光源6aを形成する開口41aを持つ厚さ0.7mmの開口板41が置かれる。投光レンズ36からのテレセントリック光は集光平面37dに大きな収束(放射)角で集光するので非常に明るい投影用面光源60aを作る。つまり、コンデンサーレンズ37は投影用面光源を作るための集光レンズとして用いる。この投影用面光源60aからの放射光は、同じく工業顕微鏡の作動距離WD=12mmの長作動コンデンサーレンズ142のレンズ組を顕微鏡使用時とは反転させて利用し焦点位置を投影用面光源60aに合致させたことによって、投影レンズ44の焦点に投影面光源6a’を作る。この投影レンズ44は、上記第3の実施形態(図12参照)で説明したと同様、焦点距離の異なる交換投影レンズ群が用意され、照明装置95にねじ込み式に互換可能となっている。図では、長作動コンデンサーレンズ142のレンズ組を投影レンズ44として使用している。
このような構成によって、照明装置95は、開口板41を小さな開口径を有する開口板に取り替えても、前側羽根絞り55(図16参照)を開放のまま使用できるので被検レンズを明るく照明できる。又,開口3aも小さくできる。
また、集光レンズであるレンズ組37や第1照明部を構成するレンズ表面上のゴミによる被検レンズ被検面像に現れるゴーストを防ぐために、レンズ37Bの面37d上に第1実施形態の散乱板4を厚さ0.7mmとして開口板3と組み合わせて配置しても良い。
【0107】
次に本実施形態で、正レンズ、負レンズ、平板など形状と焦点距離の異なる光学部材を検査する場合の被検レンズ20と投影面光源6a’の配置方法について説明する。
本実施形態の照明法では、既に第3の実施形態に説明したのと同様に、投影面光源6a’を被検レンズ20の前側焦点位置に配置するので、被検レンズ20が正レンズの場合は焦点距離が大きくなるにつれて投影面光源6a’を被検レンズ20から遠ざけ(投光レンズ36側に移動)、被検レンズ20が負レンズの場合は投影面光源6a’を被検レンズ20を通り越して(対物レンズ側)に移動しなければならない。また、平板の場合の前側焦点位置は無限遠なので投影面光源6a’を無限遠方に配置せねばならない。
しかし、このように配置することは、本実施形態で採用している顕微鏡ではステージ50と投光レンズ36との間隔が短く、かつ投影面光源6a’を移動させるコンデンサーレンズ37の移動ストロークも短いことから、正の焦点距離をもつコンデンサーレンズ37を使用した場合、大きな焦点距離をもつ正被検レンズではコンデンサーレンズ37が投光レンズ36と干渉し、逆に大きな焦点距離をもつ凹レンズからなる被検レンズ20ではコンデンサーレンズ37がステージ50と干渉することが発生し、投影面光源6a’の位置と被検レンズ20の前側焦点位置とを合致させることができない。そこで、大きな焦点距離をもつ正レンズからなる被検レンズ20に対しては投影面光源6a’を負の焦点距離のコンデンサーレンズ37を用いて投光レンズ36側の遠方に虚像の投影面光源6a’を作り、平板に対しては投光レンズ36からのテレセントリックな光束をそのまま使用することで投影面光源6a’の位置を無限遠方とし、大きな焦点距離を持つ負の被検レンズ20については焦点距離の長い正のコンデンサーレンズ37を用いて対物レンズ側に投影面光源6a’を作り、それぞれの被検レンズ20の前側焦点位置に投影する。このようにすることによって、全てのレンズに対応できる。
しかし、被検レンズ20の焦点距離に都度対応する焦点距離のコンデンサーレンズ37を用意することも困難であり、コンデンサーレンズ37の移動ストロークと関連させて、焦点距離を段階的に設定したコンデンサーレンズ群を用意して、投影面光源6a’と被検レンズ20の焦点位置を合致させるのが良い。
【0108】
次に、照明装置95の焦点位置の位置合わせ動作について、図20(a)、(b)、(c)を参照して説明する。なお、図20では照明装置95の投影レンズ44と被検レンズ20のみ記載している。
一般的な顕微鏡と同様の機構を備えている検査システム101では、図16に示すように、コンデンサーレンズ移動ノブ38aを回転することによって、ステージ50に対してコンデンサーレンズ受け38を上下できるようになっており、投影面光源6a’が形成されるコンデンサーレンズ37の照明平面df’c(図18参照)の位置は、ステージの標本載置面Sから下方に30mm位のストロークを持っている。よって、正レンズの検査ではコンデンサーレンズ37の上面から作動距離WDの距離に照明平面df’cができる(図18参照)とすると、正の被検レンズ20の焦点距離が30mmまでは、WD=0mmのコンデンサーレンズ37を投光レンズ側(下方)に移動することによって、被検レンズ20の焦点位置に投影面光源6a’を移動することができる。30mmから60mmの焦点距離の正の被検レンズ20の場合は、作動距離WDが−30mmの負レンズで対応する。即ち、−30mmピッチでレンズを用意すればよいことになるが、被検レンズ20の焦点距離が長くなると投影面光源6a’と被検レンズ20の前側焦点との一致度に厳密さは必要なくなり、ピッチに余裕を持たせ、作動距離WDが0mm、−25mm、−50mm、−100mmくらいを用意すればよい。被検レンズ20が負レンズでは投影面光源6a’が被検レンズ20を結像光学系側に通り越す必要から作動距離WDが5mm、30mm、50mm、100mmを用意する。なお、5mmの意味は被検レンズ20を投影面光源6a’が通り越すための被検レンズ20の肉厚を考慮した値である。また、被検レンズ20を照明する放射開口角は十分保たれていなければならない。
被検体が平板の場合は、前側焦点位置が無限遠の光学部材であるため、投影レンズ44を取り外して照明するか、照明装置95を検査システム101の顕微鏡部分から取り外し投光レンズ36からのテレセントリックな光束によって照明すればよい。
【0109】
このように、照明装置95の投影レンズ44を選択交換することと、コンデンサー受け38を上下することとによって、被検レンズ20の焦点位置と投影面光源6a’の位置とを合致させ種々の焦点距離を有する被検体を検査することができる。
しかし、焦点距離の短い被検レンズ20では使用されている被検面の球欠が大きいものも多く、照明光が被検レンズ20の被検面で反射され、被検面全体を観察できない場合が多い。
【0110】
次にステージ50とコンデンサーレンズ37周りのメカ構成について説明する。
ステージ50は、複数の被検レンズ20を収納したトレー2Cを光軸Pと直交する2方向に移動可能に保持するもので、例えば、トレー2Cを載置して、光軸Pに直交する方向に各々の被検レンズ20の位置決めを行う。被検レンズ20を単体で検査する場合には、ステージ50は、チャック機構などを備え、被検レンズ20Aを外周側から保持できるようにしてもよい。
ステージ移動部39は、ステージ50を保持する保持部材であり、コンデンサーレンズ37の上方に顕微鏡本体30から延ばされている。そして、準焦ノブ39aを回転することによって光軸Pに沿う方向に移動可能とされている。また、準焦ノブ39aを回転することによって、ステージ50に載置されたトレー2Cも上下に移動し、トレー2Cに収納された被検レンズ20の被検面である第2面20a及び第1面20bを結像光学系49(対物レンズ46)のピント位置に合わせることができる。
【0111】
コンデンサーレンズ37は、コンデンサーレンズ移動ノブ38aを回転して、被検レンズ20に対して上下移動させることによって被検レンズ20の焦点位置に投影面光源6a’を合致させることができる。
【0112】
次に結像光学系49と対物レンズ明るさ絞りの利用方法について説明する。
結像光学系49は、被検レンズ20の像を取得するためのもので、物体側と像側にテレセントリックに構成された光学系である。その上で、対物レンズ46の射出瞳位置付近に開口43aの大きさを可変できる対物レンズ明るさ絞り43を配置した。
以下、合致させた射出瞳32を対物レンズ瞳と称する。瞳位置に置かれた対物レンズ明るさ絞り43の開口43aの大きさを調整することによって、結像光学系49が作る像の明るさを調整することと、像の解像力とコントラストを調整することと、被検レンズの球面部以外を通る結像に不要な光線k(図5、6参照)をカットできる。
【0113】
この対物レンズ明るさ絞り43は、又、投影面光源6a’の大きさを光学的に可変する機能を有しており、投影面光源6a’の大きさを前側羽根絞り34によって、あらかじめ欠陥検査に最適の大きさにしておくことができる。
例えば、欠陥の回折光などをひろって高解像度の観察を行うには対物羽根絞り43の開口43aを大きくし、ウネリを見たい場合には一時的に対物羽根絞り43を絞る、といったような観察対象に応じて好適な観察条件を設定することが可能となる。
【0114】
次ぎに、本実施形態の検査システムで取得する画像の倍率と被検レンズ表面の欠陥検出能力に付いて説明する。
レンズの外観検査にあたっては、レンズ被検面全面を1枚の画像で取りこむことが検査時間の短縮や装置操作の簡易化につながる。今回の被検レンズサンプルは図6に示したが、2/3インチCCDカメラを使用した場合、結像光学系の倍率は1Xで全面の一括観察ができる。
本発明の検査システム101で図6の被検レンズ13の表面である第2面13aと第2面13aを介して裏面である第1面13bの画像を取得して図7と図8に記載した。焦点深度は、欠陥の検出能の観点からは幅で1mm弱になるよう照明開口数を設定した。撮像面の他面にある大きい欠陥は撮像画像に同時にボケて撮影されたが、欠陥存在面の区別は十分に可能であった。
画像を参照すれば、被検レンズの光学設計上の球面(非球面)部が黒い背景に満月のように浮かびあがって撮像されていることがわかる。ほぼ円形状の欠陥であれば、10μm以下の散乱系、吸収系欠陥や顕微鏡では検出できなかった面の滑らかな凹み欠陥が検出できた。
【0115】
次に撮像装置、画像処理装置及びモニターについて説明する。
図16に示すCCDカメラ54は、結像光学系49によって結像された被検レンズ20の像を撮像する撮像装置であり、光電変換を行う撮像素子としてCCD11(観察手段)を内蔵している。そして、結像光学系49の焦点(結像)位置に対する位置決めを行うため、支持アーム51上に設けられた調整枠52に、マウント53を介して取り付けられている。これにより、CCD11の撮像面が、結像光学系49の焦点(結像)位置に一致されている。
もちろん、CCD11は画素の大きさの小さいものが好適である。
【0116】
モニター70は、CCDカメラ54に下記コンピューターを介して電気的に接続され、CCD11からの映像信号を画像として表示行うものである。
【0117】
なお、上記の説明では、被検体の像をモニター70に表示する場合の例で説明したが、検査システム101の観察手段は、結像光学系による像を目視観察する接眼レンズを備えるようにしてもよい。例えば、結像光学系49とCCD11の間等に、ハーフミラー等を配置して、光路を分岐して、CCD11による撮像と接眼レンズからの目視観察とができるようにしてもよい。
また、例えば、検査システム101の調整枠52のマウント53に、CCDカメラ54に代えて、接眼レンズ鏡筒を設けた構成としてもよい。
【0118】
コンピューター71は、CCDカメラ54に電気的に接続され、CCD11の映像信号を取得して、A/D変換を行って画像データを変換し、適宜の画像処理を行うことにより、欠陥の自動検査を行うものであり、画像処理装置を構成している。
コンピューター71は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなり、適宜の画像処理プログラム、欠陥判定プログラムを実行することで自動検査を可能としている。
画像処理、欠陥判定処理としては、例えば、画像データの輝度補正処理を行った後、欠陥のない背景部に対する一定以上の輝度変化が生じている部位を欠陥として抽出し、その位置、形状、大きさ等を算出し、予め設定された許容限度等の判定条件に基づいて、被検レンズ20の合否の判定を行うといった処理を挙げることができる。
なお、この判定は、コンピューター71が自動的に行うようにしてもよいし、判定結果はモニター70等の表示部に表示するのみとし最終の判定は検査者が行うようにしてもよい。
また、コンピューター71はステージ50が電動である場合、被検レンズ上に停止しながら画像を取込むステージの駆動制御も担っている。
【0119】
このように投影面光源6a’と被検レンズ20の焦点位置とを合わせた後に、検査を開始する。
CCD11の映像信号は、コンピューター71を介してモニター70に送出されて表示され、検査者は欠陥の拡大画像をモニター画面上で観察することができる。
また、コンピューター71は、CCD11から画像データを取得し、欠陥の抽出、判定を行い、その結果をモニター70に表示する。
【0120】
本実施形態では、ステージ50を光軸Pに沿う方向に移動して、被検レンズ20の内部や第1面20bにピント調整しても、上記第1の実施形態の場合と同様に、同一の主光線上にある欠陥が、CCD11上の同一位置に結像されるため、内部や表面の欠陥観察がピント調整のみで連続的に可能となる。
【0121】
また、本実施形態では、被検レンズ13の前側焦点位置を光放射領域である投影面光源6aの中心Oに一致させると説明したが、上記第1の実施形態で説明したように、前側焦点位置と中心Oとは、光軸Pに沿う方向および光軸Pに直交する方向のいずれにおいても必ずしも厳密に一致させる必要はなく、略一致しているだけでもよいため調整が簡単なも
のとなる。
【0122】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態に係る検査システムについて説明する。
図5は、第7の実施形態に係る検査システムの概略構成を示す模式的な正面図である。図21は、第7の実施形態に係る検査システムに用いる中心遮蔽光束制御板を示す平面図である。
【0123】
結像光学系49は、結像光学系49の瞳位置に中心遮蔽板66(中心遮蔽光束制御板)を追加し、切換機構であるスライダー67によって中心遮蔽板66を選択的に光軸Pに挿脱できるようにしている。かつ、この中心遮蔽板66と干渉しない程度に離して対物レンズ明るさ絞り43を配置する。
以下、上記第6の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0124】
中心遮蔽板66は、図21に示すように、円板状の光透過部材66bの中心に、結像レンズ47の瞳位置の中心を通る光束を遮蔽する光遮蔽部66a(遮光部)を形成した部材である。
また、中心遮蔽板66は、径の異なる光遮蔽部66aが複数配置されており、図示しない位置決め機構を持つスライダー67に設けられている。これにより、スライダー67を結像光学系49の瞳位置に進退させて、それぞれの光遮蔽部66aの中心を光軸Pに合わせて配置できるようになっている。
スライダー67としては、例えば、レバー67a等の操作によって、一定間隔で複数の位置に位置決め停止できる構成を採用することができる。
【0125】
検査システム101によれば、レバー67aによってスライダー67を移動すると、結像光学系49の瞳位置に径の異なる光遮蔽部66aを切り換えて配置することができる。また、スライダー67を結像光学系49の瞳位置から退避させた場合には、明視野観察を行うことができる。
対物レンズ明るさ絞り43を開放した上で、スライダー67により結像光学系49の瞳位置に光遮蔽部66aを配置すると、被検レンズ13の表面に欠陥のない場合は、表面から放射される照明光束は、図5に実線で示すように光遮蔽部66aによって遮光される。また、被検レンズ13の表面に欠陥がある場合は、欠陥による散乱光と欠陥からの回折光Sa(図5参照)は、光遮蔽部66aの外周に形成される光透過部材66bの輪帯状光透過領域66c(輪帯状光放射領域)を透過する。
このような場合には、暗視野状の暗い背景に欠陥が浮かび上がった画像が観察、取得される。
【0126】
光遮蔽部66aの径は、被検レンズから射出される照明光の射出開口数(NAa’)×対物レンズ46の焦点距離×2で計算される。例えば、射出開口数NAa’が0.02であれば、焦点距離90mmの対物レンズの組合せでφ4mm程度となるが、投影面光源6a’と被検レンズの焦点が一致されてない場合もあり、計算値より大きい径の光遮蔽部66aを用意しておくのが良い。
【0127】
なお、上記の各実施形態、各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【0128】
本発明は光学部材の表面を結像光学系を用いて検査する場合の光学部材の表面照明法に関して照明理論を確立した上で、透過照明装置と該透過照明装置を用いた検査システムと透過表面照明法に関するものである。
本発明によれば、被検光学部材を照明する光源である面光源の光放射領域の中心が被検光学部材の前側焦点位置に略一致する位置に配置されているため、面光源部の光放射領域から放射される照明光は被検光学部材で屈折されてテレセントリックな光束で被検光学部材から射出される。
このとき、被検光学部材の表裏の両面の任意の点は該任意の点と面光源の底辺がなす円錐状の光束(照明開口数)で照明される。よって、面光源の大きさは照明開口数と面光源と光学部材被検面間の距離から計算され、該照明開口数は被検光学部材被検面上の欠陥の検出能力が高い0.005〜0.05に設定される。
このとき、面光源からの散乱光の散乱光放射角が大きく、照明光が光学部材の被検面全面を満たした状態で、散乱板の散乱光放射角光量分布特性が均一であれば、被検面全体が均一な明るさでテレセントリックに照明されていると言える。
さらに、この様に照明されている光学部材被検面を物体側と像側にテレセントリックな結像光学系で観察すると、被検面の像はテレセントリックに、かつ均一な明るさで結像される。また、光学的には面光源が無限遠方に配置されることとなり、結果、光源の結像面への映り込みがなくなる。
この様な光学構成は、従来から測定顕微鏡などでよく用いられる光学系であり、ピントがずれても像が流れることがなく被写界深度と焦点深度を大きくできる結果となる。
よって、上記の検査装置で光学部材被検面を検査すると、汚れやごみなどの吸収系欠陥は、小さな照明開口数で欠陥に垂直に照明されるために照明光を十分に吸収するため真っ暗な像として結像される。一方、キズや研磨残り(研磨が足りず小さな砂目部が残っている欠陥)などの散乱系欠陥は、欠陥から生じる散乱光や回折光が結像光学系瞳に配置した絞りによって欠られるため暗い像として結像される。
また、ガラスモールドレンズに発生するモールド型の面不良による小さな滑らかな面の凹凸(うねり)に関してもうねりがレンズ効果をもって小さな照明開口数の光束を屈曲させるために、ピントとわずかにずれた位置に明暗のコントラストを作る。
このほか、被検レンズのパワーが極端に強くなければレンズ表面を介して裏面の観察も可能であり、このとき表裏面の像を作る主光線が同じであることから像の大きさが等しくなる。このことは、観察時にレンズを反転させる必要がないばかりか自動で欠陥を検出する場合に検出アルゴリズムを変更しなくて良いと言う利点もある。
【0129】
本発明は上記テレセントリックな照明と両側にテレセントリックな結像光学系を用いて光学部材表面を検査する検査装置に関して、理論的な透過照明方法と透過照明装置と該照明装置を用いたシステムであって、
・光源などの映りこみによるゴーストのない均一な明るさの光学部材表面像取得し
・キズなどの光散乱系欠陥、汚れやごみなどの光吸収系欠陥および面の微小うねりなど
を高い欠陥検出能力で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の概略構成を示す模式的な部分断面図、およびその光源部から放射される光の放射光量分布を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の作用を説明するための模式的な光路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る透過照明装置の作用を説明するための光路の部分拡大図、およびこの照明装置によって、組み上がりレンズを照明する場合の光路の部分拡大図である。
【図4】被検レンズにウネリがある場合の光路の部分拡大図である。
【図5】本発明の第6、7の実施形態に係る検査システムの概略構成を示す模式的な正面図である。
【図6】観察に用いた被検レンズの断面形状を示す。
【図7】被検レンズの第2面(観察側の面)にフォーカス調整した場合の観察像の写真画像である。
【図8】被検レンズの第1面(光源部側の面)にフォーカス調整した場合の観察像の写真画像である。
【図9】検査領域を拡大する照明方法について説明する模式的な光路図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る透過照明装置の光学的な概念図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る透過照明装置の具体的な構成図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る透過照明装置概略構成を示す模式的な構成図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るケーラー照明法を説明する模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態の第1変形例を示す模式的な部分断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る透過照明装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置および検査システムの概略構成を示す模式的な側面図である。
【図17】本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置および検査システムの保持台の一例をしめす斜視図および被検レンズ配置時の拡大断面図である。
【図18】本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置の絞りの作用を説明する模式的な光路図である。
【図19】本発明の第6の実施形態に係る透過照明装置の一部に用いることができるレンズユニットの断面図である。
【図20】焦点位置合わせについて説明する模式図である。
【図21】本発明の第7の実施形態に係る検査システムに用いる中心遮蔽光束制御板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0131】
1、13、20、20A 被検レンズ(被検体、光学部材)
1c 微小ウネリ部
2 保持台
2C トレー(保持台)
3、3A、41、56 開口板
3a、41a 開口
4 散乱板(散乱部材)
5 光源
6、6A、6B、6C 光源装置
6a 面光源
6a’ 投影面光源(面光源)
6c 輪帯状光放射領域
8 保持台移動機構(相対移動機構)
10 結像光学系
12 組レンズ
31 第1照明部
32 射出瞳
33a 集光レンズ
33b デフューザー
33c 開口照明レンズ
34 前側羽根絞り
35 反射ミラー
36 投光レンズ(窓レンズ)
37 コンデンサーレンズ
38 コンデンサーレンズ移動部
39 ステージ受け部
40、76、78、90、93、94、95 照明装置(透過照明装置)
42 コリメートレンズ
44 45、45b 投影レンズ
46 対物レンズ
47 結像レンズ
49 結像光学系
50 被検体位置調整ステージ(保持台)
54 CCDカメラ(撮像装置)
57 交換開口枠
60a 投影用面光源
66 中心遮蔽板(中心遮蔽光束制御板)
66a 光遮蔽部
66c 輪帯状光透過領域(輪帯状光放射領域)
67 スライダー(切換機構)
70 モニター
71 コンピューター
72 投影レンズ鏡筒
78 透過照明装置
85 ハーフミラー(光分岐手段)
100、101 検査システム
142 長作動距離コンデンサーレンズ
F 前側焦点位置
g 主光線(面光源中心からの照明光)
O 面光源の中心
P 光軸
S 標本載置面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の光学部材を被検体として欠陥を検査する検査システムに用いる透過照明装置であって、
前記被検体を保持する保持台と、
前記被検体の被検査領域上の各点を小さい開口数で透過照明する散乱光放射領域である面光源と、
前記保持台に保持された前記被検体と前記面光源との間の相対位置を少なくとも光軸に沿う方向に調整する相対移動機構とを備え、
前記面光源の中心を、前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致させて、前記被検体の前記被検査領域の全域を透過照明することを特徴とする透過照明装置。
【請求項2】
前記面光源は、
その中心に対して略対称な形状を有し、前記中心を前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致させて前記被検査領域全域を透過照明する際の前記開口数が、0.005から0.05の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透過照明装置。
【請求項3】
光を散乱させる散乱部材と、
該散乱部材に光を照射する光源と、
前記散乱部材に近接して配置され、略円孔状の開口を有する開口板とを備え、
前記面光源は、前記光源から照射された光が、前記散乱部材で散乱されて、前記開口板の開口から放射されることによって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の透過照明装置。
【請求項4】
前記面光源は、
光を散乱させる散乱部材と、該散乱部材に光を照射する光源と、前記散乱部材に近接して配置され、略円孔状の開口を有する開口板とからなる投影用面光源と、該投影用面光源を投影する投影光学系とを備える装置を用いて、
前記投影用面光源を前記投影光学系で結像させた投影像から形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の透過照明装置。
【請求項5】
前記投影光学系は、
前記保持台に保持された前記被検体と前記投影用面光源との間で、光軸に沿う方向に移動可能に設けられたなスライダーと、
該スライダーに交換可能に着脱できる焦点距離の異なるレンズ群とを備えることを特徴とする請求項4に記載の透過照明装置。
【請求項6】
前記投影光学系は、
前記投影用面光源の開口板の中心に焦点位置が一致して配置された正レンズと、
前記投影用面光源から放射され、前記正レンズによってアフォーカル光束とされた光束の光軸上に、選択的に切り換えて配置可能な焦点距離の異なる複数のレンズ群とを備えることを特徴とする請求項4に記載の透過照明装置。
【請求項7】
前記投影光学系は、
前記投影用面光源と前記被検体との間の光路上で光束径を規制し、前記被検体の照野を決定する照野絞りを備えることを特徴とする請求項5または6に記載の透過照明装置。
【請求項8】
前記照野絞りは、略円形に開口を規制する羽根絞りであることを特徴とする請求項7に記載の透過照明装置。
【請求項9】
前記投影光学系は、
前記投影用面光源を光源としたケーラー照明光学系であることを特徴とする請求項4に記載の透過照明装置。
【請求項10】
前記ケーラー照明光学系は、ケーラー照明を構成する明るさ絞りおよび視野絞りを有しており、
前記明るさ絞りは、前記被検体を照明する照野を決定する照野絞りとして用い、
前記視野絞りは、前記投影用面光源の大きさを規制し、前記被検体を照明する前記開口数を決定する開口絞りとして用いることを特徴とする請求項9に記載の透過照明装置。
【請求項11】
前記照野絞りおよび前記絞りは、略円形に開口を規制する羽根絞りであることを特徴とする請求項10に記載の透過照明装置。
【請求項12】
前記面光源の中心に配置可能に設けられた遮光部と、
該遮光部の外周に沿う輪帯状に、略均一な散乱光を出射する輪帯状光放射領域とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透過照明装置。
【請求項13】
被検体を透過照明して検査を行う検査システムであって、
前記被検体を保持して、前記被検体を透過照明する請求項1〜12のいずれかに記載の透過照明装置と、
前記被検体を挟んで前記透過照明装置の反対側に配置され、前記透過照明装置の前記保持台に保持され、前記透過照明装置の前記面光源によって透過照明された前記被検体の像を結像する結像光学系と、
該結像光学系による前記被検体の像を観察する観察手段とを備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項14】
前記結像光学系は、少なくとも物体側にテレセントリックであることを特徴とする請求項13記載の検査システム。
【請求項15】
前記結像光学系は、
ズームレンズを備えることを特徴とする請求項13または14に記載の検査システム。
【請求項16】
前記結像光学系は、
該結像光学系の瞳位置付近に開口の大きさが可変できる対物レンズ明るさ絞りを備えることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の検査システム。
【請求項17】
前記結像光学系は、
該結像光学系の瞳位置に前記被検体を透過してきた前記面光源からの照明光を遮光する中心遮蔽光束制御板を備えることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の検査システム。
【請求項18】
前記検査システムは、
透過ケーラー照明装置をもつ顕微鏡本体と、
該顕微鏡に取り付けた顕微鏡用コンデンサーレンズおよび標本載置ステージとを備え、
前記結像光学系は、前記顕微鏡本体に立設した支柱に嵌合して摺動し被検レンズにピントが合う位置で固定された前記顕微鏡本体のケーラー照明光軸上に延出したアームに前記結像光学系の光軸を前記顕微鏡本体のケーラー照明光軸に一致させて取り付け固定したことを特徴とする請求項13〜17に記載の検査システム。
【請求項19】
前記観察手段は、
前記結像光学系による像を撮像する撮像装置を備えることを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載の検査システム。
【請求項20】
前記撮像装置で撮像された画像を画像処理して、前記被検体の検査を行う画像処理装置を備えることを特徴とする請求項19に記載の検査システム。
【請求項21】
前記保持台は、コンピューターで制御される電動ステージであることを特徴とする請求項13〜20のいずれかに記載の検査システム。
【請求項22】
光透過性の光学部材を被検体として欠陥を検査する検査システムに用いる透過照明方法であって、
前記被検体を保持し、
前記被検体の被検査領域上の各点を小さい開口数で照明する散乱光放射領域である面光源を、その中心が、前記保持台に保持された前記被検体の前側焦点位置に略一致するように配置し、
この状態で、前記面光源からの光により前記被検体の前記被検査領域全域を透過照明することを特徴とする透過照明方法。
【請求項23】
前記面光源は、投影用光源の像を投影光学系によって投影して形成することを特徴とする請求項22に記載の透過照明方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−156558(P2010−156558A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333575(P2008−333575)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】