説明

通い箱

【課題】通い箱において、多数段の積み重ねに耐える高挫屈強度で、不使用時には高度に減容ができ所定の場所に保管でき、返送するのに好都合である、低コストで製造するものを提供する。
【解決手段】1枚の底板(1A)の短辺から2枚の端壁(2,2)が上下に延び、端壁の両側から左右にフラップ(4,4)が延びる第一の部品(I)と、もう1枚の底板(1B)の長辺から2枚の側壁(3,3)が左右に延び、側壁はその両側部分がフラップと重なる部分以外は二重の厚さにし第二の部品(II)とを重ね、両者を、底板の中心を軸として底板面内において相互に回転拘束する。2枚の端壁(2,2)と2枚の側壁(3,3)とを底板(1A,1B)から垂直に立てて、側壁の両側に端壁のフラップ(4,4)を重ねて固定し、上部の開いた箱を形成する。不使用時には、固定を解除して第一および第二の部品をともに平坦にすることで、減容可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる「通い箱」すなわち、種々の物品を収納して輸送したり、保管したりし、供給元と供給先との間を多数回にわたって往復する包装容器であって、とくにプラスチックの中空板を材料とする通い箱に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような通い箱は、食品の製造工場とスーパーやコンビニなどの流通の場との間や、部品の製造業者と機械の組み立て工場との間などに、広く使用されている。通い箱には、その材料や形状に関してさまざまなものがあるが、プラスチックを材料として、上が開いた箱形のものが一般的である。それらは、射出成形などの手段で製造されることもあるが、軽量で高い剛性をもったプラスチック中空板で製作されたものも多い。成型品はソリッドで、内容物を入れなくても常に一定の空間を占めるが、カラで返送されるときには減容可能なことが望ましいから、その場合は側壁および端壁を折り畳めるようにして高さを減少させる、コラップシブル構造が工夫されている。
【0003】
ソリッドなものであれコラップシブルなものであれ、通い箱は、内容物が入った状態で上下何段にもみ重ねることができ、かつ、積み上げたものがある程度は一体性を保てるような形状をもつように、種々の組み合わせ構造が考案され、実施されている。それにより、倉庫やトラックの使用効率が高くなり、流通コストが低減できる。多数段の積み重ねを前提にすると、通い箱はそれに耐えるだけの強度、とくに垂直方向の挫屈強度を有することが必須である。一方で、前述のように、返送時の減容可能性も重要である。
【0004】
出願人は、緩衝包装用の緩衝パッドとして、前記したプラスチック気泡シート、すなわちプラスチックフィルムの真空成形により得た、多数のキャップ状の突起をもつプラスチックフィルムの、キャップの底面に平坦なバックシートを貼り合わせて多数の密閉された空気室をつくった製品から、長い長方形のシートと短い長方形のシートとを裁断し、それらを複数枚ずつ「奴凧」形状に重ね合わせたものを提案した(特許文献1)。この緩衝パッドは、長短2種の長方形のシートを奴凧形状にヒートシールして用いてもよいし、重ね合わされた部分(包装箱の底面に敷かれる)の中心にタグピンを刺して一体化した形で用いてもよい。後者の場合、使用に先立つ保管時は、短い長方形のシートを、タグピンを中心に90度回転させて重ねておくことにより、保管場所の投影面積を小さくすることができて有利である。
【特許文献1】特開2002−563176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、通い箱において、前記した要望、すなわち多数段の積み重ねに耐える強度、とくに垂直方向の挫屈強度が高く、一方、不使用時には高度に減容することができ、所定の場所に保管したり返送したりするのに好都合であり、しかも、低いコストで製造することができる通い箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通い箱の第一の態様は、図1に示すように、1枚の底板(1)と、その短辺から上下に延びる2枚の端壁(2,2)およびその長辺から左右に延びる2枚の側壁(3,3)とからなり、2枚の端壁のそれぞれの両側は左右に延びて、側壁の端と重なるフラップ(4,4)を有し、2枚の側壁はその両側で端壁のフラップと重なる部分以外の部分は二重の厚さがあり、使用時には、図2に示すように、2枚の端壁(2,2)と2枚の側壁(3,3)とを底板(1)から垂直に立て、側壁の両側に端壁のフラップ部分を重ねて固定手段をもって固定することにより、図3に示すような、上部の開いた箱を形成することができ、一方、不使用時には、固定を解除して両端壁および両側壁をともに平坦にすることにより、全体としてほぼ奴凧型の輪郭をもったものとすることができる通い箱である。
【0007】
本発明の通い箱の第二の態様は、前述の包装箱用緩衝パッドの構成を利用したものであって、図4Aに示すような、1枚の底板(1A)とその短辺から上下に延びる2枚の端壁(2,2)からなり、2枚の端壁はそれぞれの両側から左右に延びて側壁の端に重なるフラップ(4,4)を有する第一の部品(I)と、図4Bに示すような、もう1枚の底板(1B)とその長辺から左右に延びる2枚の側壁(3,3)とからなり、2枚の側壁はその両側部分が端壁のフラップと重なる部分以外は二重の厚さがある第二の部品(II)とを重ね、図5に示すように、底板の中心を軸として底板面内において相互に回転可能なように拘束してなり、使用時には、2枚の端壁(2,2)と2枚の側壁(3,3)とを底板(1A,1B)から垂直に立てて、側壁の両側に端壁のフラップ(4,4)を重ねて、固定手段(図示してない)により固定することにより、図3に示したものと同じように、上部の開いた箱を形成することができ、一方、不使用時には、固定を解除して第一および第二の部品をともに平坦にし、かつ、2枚の底板の中心を軸にして90度回転させることにより、図6に示したような、全体としてほぼ長方形の輪郭をもったものとすることができる通い箱である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の通い箱は、上記いずれの態様によっても、形成された箱の両側壁部分は、材料が二重になっていて挫屈強度が高くなっているから、内容物を入れた状態で多数段積み重ねても、箱が歪んだり、つぶれたりする心配がない。端壁部分は、材料が1枚しかないが、もともと幅が狭くて強度上の問題は少ないし、両側壁の部分で強度を担っているので、両端壁の部分には、それほど負担はない。箱が空になって、一時的な保管や返送の対象となるときには、側壁と端壁のフラップとの間の固定を開放することにより、箱の各壁が分解されてもとの平坦な形に戻るから、著しい減容が可能である。
【0009】
とくに、第二の態様においては、2枚の底板を、それらの中心を軸にして90度回転させることにより、重なり合った二つの部分(IおよびII)が占める投影面積をいっそう小さくすることができるから、減容の効果が大きい。本発明の通い箱の組み立ておよび分解は、多数回繰り返すことができ、通い箱としての耐久性が高い。箱の製造は、市場で入手できる軽量かつ高剛性のプラスチック中空板を材料として低廉で済み、箱の耐久性が高いこととあいまって、流通に関するコストの低減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
通い箱を製造する材料としては、「プラスチックの中空板」が好適である。具体的には、「段プラ」とよばれる(プラスチック段ボールの略)、段ボール紙に類似であるか、しかし段ボールのような2枚のライナーシートの間にコルゲート中芯がある構造ではなく、2枚のライナーシートの間を、平行に走る多数のリブが連結している構造のものが、まず挙げられる。つぎに、プラスチックシートを成形して多数の円柱状のキャップを与えたキャップシートに、キャップの底の面に平坦なバックシートを貼り合わせ、キャップの頂を連ねてもう1枚の平坦なライナーシートを貼り合わせて製造した、プラスチック気泡ボードがある。
【0011】
上記の段プラは、その構造から容易に理解されるように、強度の異方性が顕著であって、リブの走る方向に関しては、きわめてよく挫屈に耐える。それゆえ、段プラを採用した場合は、側壁の垂直方向にリブが走るように材料を配置することが得策である。これに対して、プラスチック気泡ボードのタイプの材料を使用すると、強度の異方性は低いので、任意の方向に配置した使い方ができる。
【0012】
両端壁のフラップと両側壁の固定手段には、さまざまな手法が可能である。実施しやすい例を挙げると、両端壁のフラップが両側壁の両端に接する面において、両者が対応する位置にマジックテープ(登録商標)を貼り合わせて、それを着脱させることにより、箱の組み立てと分解とを行なう手法である。いまひとつの手法は、両端壁のフラップと両側壁の両端とに嵌合して結合する、L字型のU型溝を鋼などの金属で製造したものを、固定手段として使用することである。
【0013】
第二の態様において、2枚の底板を回転可能に拘束する手段もまた、さまざまなものがあり得る。もっとも簡単な態様は、金属製またはプラスチック製のハトメで、回転可能に結びつけることである。いまひとつの推奨すべき態様は、図7AおよびBに示すように、上側の底板(1B)の一部を底板の回転中心を中心とする円板状体(11)に切り抜き、下側の底板(1A)に固定したものと、上側の底板の周囲の部分(12)とを嵌合させることである。この場合、円板状体(11)と周囲の部分(12)との接触面には、若干の逆テーパを設けておけば、2枚の底板(1Aおよび1B)の一体化が損なわれる心配がないが、通常はそのようなことをしなくても、つまりデーパのないストレートな切り抜きであっても、とりたてて問題はない。
【0014】
円板状体(11)を下側の底板(1A)に固定する手段は、ヒートシールでも接着でも、任意に選択できる。プラスチック気泡ボードのヒートシールには、ホットスタンプ方式、すなわち2枚重ね合わせた気泡ボードの上から加熱した円柱を押し下げて、上側のボードを溶融させて下側のボードに融着させる技術があるので、それを利用するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の通い箱は、使用に当たっては容易に組み立てて箱とすることができ、不使用時には分解して減容できるから保管や返送に有利であり、内容物を入れたうえで多数段の積み重ねを行なう用途に耐え、耐久力があり、多数回の通いに使用することができ、しかもコストは低廉である、という多くのメリットをもつから、前記した食品の製造工場からスーパーやコンビニに商品を運ぶ場合、および機械部品の製造工場から組み立て工場へ部品を運ぶ場合に限らず、この種の通い箱で供給することが適切な、あらゆる場面に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の通い箱の第一の態様について、材料の形状を示す展開図。
【図2】図1の材料を組み立てて、通い箱とする経過を示す斜視図。
【図3】図2に続いて組み立てた、第一の態様の通い箱を示す斜視図。
【図4】AおよびBは、本発明の通い箱の第二の態様について、それぞれ第一の部分および第二の部分の形状を示す展開図。
【図5】図4の第一および第二の部分を一体にして、通い箱とする経過を示す、図2に対応する斜視図。
【図6】第二の態様の通い箱を分解し、第一および第二の部分を90度回転して、保管や返送にそなえたところを示す平面図。
【図7】第二の態様において、第一および第二の部分を一体にする手段の好適な例を示す図であって、Aは部分の平面図、Bは部分の拡大断面図。
【符号の説明】
【0017】
1 底板
11 円板状体 12 周囲の部分
1A 1枚の底板
1B もう1枚の底板
2 端壁
3 側壁
4 フラップ
I 第一の部品 II 第二の部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の底板と、その短辺から上下に延びる2枚の端壁およびその長辺から左右に延びる2枚の側壁とからなり、2枚の端壁のそれぞれの両側はさらに延びて、側壁の端に回り込んでそれと重なるフラップを有し、2枚の側壁はその両側で端壁のフラップと重なる部分以外の部分は二重の厚さがあり、使用時には、2枚の端壁と2枚の側壁とを底板から垂直に立て、側壁の両側に端壁のフラップ部分を重ねて固定手段により固定することにより、上部の開いた箱を形成することができ、一方、不使用時には、固定を解除して両端壁および両側壁をともに平坦にすることにより、全体としてほぼ奴凧型の輪郭をもったものとすることができる通い箱。
【請求項2】
1枚の底板とその短辺から上下に延びる2枚の端壁からなり、2枚の端壁はそれぞれの両側から左右に延びて、側壁の端と重なるフラップを有する第一の部品と、もう1枚の底板とその長辺から左右に延びる2枚の側壁からなり、2枚の側壁はその両側部分において端壁のフラップと重なる部分以外は二重の厚さがある第二の部品とを重ね、第一および第二の部品を、底板の中心を軸として底板面内において相互に回転可能なように拘束してなり、使用時には、2枚の端壁と2枚の側壁とを底板から垂直に立てて、側壁の両側に端壁のフラップを重ねて、固定手段により固定することにより、上部の開いた箱を形成することができ、一方、不使用時には、固定を解除して第一および第二の部品をともに平坦にし、かつ、2枚の底板の中心を軸にして90度回転させることにより、全体としてほぼ長方形の輪郭をもったものとすることができる通い箱。
【請求項3】
材料として、プラスチック段ボールを使用した請求項1または2の通い箱。
【請求項4】
固定手段が、両端壁のフラップ内側と両側壁の両端外側において、対応する位置に設けたマジックテープ(登録商標)の組である請求項1または2の通い箱。
【請求項5】
固定手段が、両端壁のフラップと両側壁の両端とに嵌合して結合する、断面U字型の溝をL字型に構成したものである請求項1または2の通い箱。
【請求項6】
2枚の底板を回転可能に拘束する手段が、上側の底板の一部を底板の回転中心を中心とする円板状に切り抜いて下側の底板に固定したものと、上側の底板との嵌合である請求項2の通い箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−273352(P2006−273352A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93248(P2005−93248)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】