説明

通信システム、冗長化構成の制御方法

【課題】冗長化構成を備えた通信システムについて、通信の信頼性と、コストパフォーマンスとを所定のレベルで両立させる。
【解決手段】通信システムは、通信パケットの送受信および中継の少なくとも1つを行う機能の少なくとも一部が、2系列以上に冗長化された冗長化構成を有する通信部と、冗長化構成のうちの1つの系列に設定される運用系と、1つの系列以外の系列に設定される待機系とを、所定のタイミングで切り替える切替制御部と、待機系の動作状態を、第1の動作状態と第2の動作状態とを含む、異なる複数の動作状態間で、期間に応じて変化させる待機系制御部とを備える。第2の動作状態は、第1の動作状態よりも、待機系の消耗の程度が小さい動作状態であって、待機系が運用系に切り替えられた際に運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムについての冗長化構成の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムでは、通信の信頼性を向上させるために、装置または装置内の特定部位を冗長化する技術が知られている。例えば、2系列に冗長化(二重化)された装置または特定部位は、一方が運用系(現用系)として設定され、他方が待機系(予備系)として設定される。かかる冗長化構成の運用方法として、ホットスタンバイ方式とコールドスタンバイ方式とが知られている。ホットスタンバイ方式およびコールドスタンバイ方式について、通信モジュールが二重化された通信装置20aを例示して説明する。
【0003】
通信モジュールが二重化された通信装置20aは、図1(A)に示すように、制御モジュール30aと、通信モジュール40a,50aとを備えている。制御モジュール30aは、二重化された通信モジュール40a,50aの動作状態を制御する。図示する例では、通信モジュール40aが運用系として設定されており、通信モジュール50aが待機系として設定されている。
【0004】
かかる通信装置20aがホットスタンバイ方式で動作する場合、図1(A)に示すように、待機系の通信モジュール50aには、運用系の通信モジュール40aと同様に給電される。ここで、運用系の通信モジュール40aが故障した場合、待機系の通信モジュール50aに常時給電されているため、制御モジュール30aは、運用系を通信モジュール40aから通信モジュール50aに迅速に切り替えることできる。そのため、ホットスタンバイ方式は、運用系の故障時のパケットロス時間が短く、通信の信頼性が高いというメリットを有する。その反面、ホットスタンバイ方式は、運用系の通信モジュール40aと待機系の通信モジュール50aの両系に給電を行うので、運用系と待機系の両系の部品が時間の経過に伴い同じ程度に消耗するというデメリットを有する。かかるホットスタンバイ方式は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0005】
一方、通信装置20aがコールドスタンバイ方式で動作する場合、図1(B)に示すように、運用系の通信モジュール40aのみに給電され、待機系の通信モジュール50aには給電されない。ここで、運用系の通信モジュール40aが故障した場合、制御モジュール30aは、待機系の通信モジュール50aに給電を開始し、通信モジュール50aの起動後、運用系を通信モジュール40aから通信モジュール50aに切り替える。
【0006】
このように、通信装置20aがホットスタンバイ方式で動作すると、運用系の通信モジュール40aのみに給電を行うので、待機系の通信モジュール50aでは、部品の消耗はほとんど生じない。そのため、コールドスタンバイ方式は、所定のタイミングで、運用系と待機系とを切り替えることによって、ホットスタンバイ方式と比べて、通信装置20a全体の寿命を長く保つことができ、コストパフォーマンスに優れるというメリットを有する。その反面、コールドスタンバイ方式は、運用系の通信モジュール40aが故障した場合、ホットスタンバイ方式と比べて、待機系の通信モジュール50aへの給電および起動に要する時間分だけ、運用系の切り替えに長時間を要する。つまり、コールドスタンバイ方式は、ホットスタンバイ方式と比べて、運用系の故障時のパケットロス時間が長いというデメリットを有する。かかるコールドスタンバイ方式は、例えば、下記特許文献2に記載されている。
【0007】
このように、ホットスタンバイ方式とコールドスタンバイ方式とには、一長一短がある。このため、ユーザは、通信の信頼性を重視する場合には、ホットスタンバイ方式を選択することとなる。一方、ユーザは、コストパフォーマンスを重視する場合には、コールドスタンバイ方式を選択することになる。したがって、ユーザは、導入する通信システムについて、通信の信頼性とコストパフォーマンスとのうちの一方を諦めなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−18105号公報
【特許文献2】特開平1−69126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、冗長化構成を備えた通信システムについて、通信の信頼性と、コストパフォーマンスとを所定のレベルで両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]通信システムであって、
通信パケットの送受信および中継の少なくとも1つを行う機能の少なくとも一部が、2系列以上に冗長化された冗長化構成を有する通信部と、
前記冗長化構成のうちの1つの系列に設定される運用系と、前記1つの系列以外の系列に設定される待機系とを、所定のタイミングで切り替える切替制御部と、
前記待機系の動作状態を、第1の動作状態と、該第1の動作状態よりも、前記待機系の消耗の程度が小さい動作状態であって、前記待機系が前記運用系に切り替えられた際に該運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態である第2の動作状態とを含む、異なる複数の動作状態間で、期間に応じて変化させる待機系制御部と
を備えた通信システム。
【0012】
かかる構成の通信システムによれば、待機系の複数の動作状態のうちの、第1の動作状態で制御される期間においては、通信の信頼性に優れる。また、第2の動作状態で制御される期間においては、コストパフォーマンスに優れる。したがって、通信システムの寿命期間全体で見れば、通信の信頼性とコストパフォーマンスとを所定のレベルで両立させることができる。待機系の動作状態を変化させる期間は、通信システムの初期使用から寿命までの故障の生じやすさを考慮して設定してもよい。
【0013】
[適用例2]適用例1記載の通信システムであって、前記待機系制御部は、前記通信システムの初期使用から所定の期間である第1の期間において、前記待機系を前記第1の動作状態に制御し、前記第1の期間の経過後から所定の期間である第2の期間において、前記待機系を前記第2の動作状態に制御する通信システム。
【0014】
通信システムは、一般的に、初期使用から間もない期間においては、初期故障が生じやすい。適用例2の通信システムによれば、このような初期故障が生じやすい期間を第1の期間として設定することにより、故障が生じやすい期間において、通信の信頼性を好適に確保することができる。
【0015】
[適用例3]適用例1または適用例2記載の通信システムであって、前記待機系制御部は、前記通信システムの初期使用から所定の期間が経過した後の期間である第3の期間において、前記待機系を前記第2の動作状態に制御し、前記第3の期間の経過後の期間である第4の期間において、前記待機系を、前記第1の動作状態に制御する通信システム。
【0016】
通信システムは、一般的に、初期使用から長時間が経過した期間においては、摩耗故障が生じやすい。適用例3の通信システムによれば、このような摩耗故障が生じやすい期間を第4の期間として設定することにより、故障が生じやすい期間において、通信の信頼性を好適に確保することができる。なお、第3の期間は、適用例2の第2の期間と同一の期間であってもよいし、異なる期間であってもよい。
【0017】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の通信システムであって、さらに、前記冗長化構成の各々について、前記運用系および前記待機系の動作状態ごとの経過時間を記録し、該記録した経過時間に基づいて決定される前記冗長化構成の各々の消耗度を監視する消耗度監視部を備え、前記待機系制御部は、前記期間としての、前記監視する消耗度に基づいて定まる期間である消耗期間に応じて、前記待機系の動作状態を変化させる通信システム。
【0018】
かかる構成の通信システムによれば、待機系として設定された冗長化構成についての複数の動作状態間における消耗の程度の違いを反映した消耗度に基づいて定まる期間に応じて、待機系の動作状態を変化させることができる。冗長化構成の消耗の程度は、故障の生じやすさと相関があるので、故障の生じやすい期間と、生じにくい期間とを正確に判断して、当該期間に基づいて、待機系の動作状態を変化させることができる。その結果、通信の信頼性とコストパフォーマンスとを高いレベルで両立させることができる。
【0019】
[適用例5]前記消耗度は、前記冗長化構成を構成する複数の部品ごとの消耗の特性の違いを反映して該複数の部品ごとに決定される第1の部品消耗度に基づいて決定される適用例4記載の通信システム。
【0020】
かかる構成の通信システムによれば、冗長化構成を構成する複数の部品間で、消耗の特性の違いがある場合であっても、消耗度を精度良く決定することができる。
【0021】
[適用例6]前記消耗度は、前記冗長化構成を構成する複数の部品ごとの動作状態の違いを反映して該複数の部品ごとに決定される第2の部品消耗度に基づいて決定される適用例4または適用例5記載の通信システム。
【0022】
かかる構成の通信システムによれば、待機系に設定された冗長化構成を構成する複数の部品単位で動作状態を変える場合であっても、消耗度を精度良く決定することができる。
【0023】
[適用例7]適用例4ないし適用例6のいずれか記載の通信システムであって、前記冗長化構成の各々は、前記通信システムに着脱可能なモジュールとして構成され、自身の冗長化構成についての前記消耗度、または、該消耗度を算出するための算出基礎情報を記憶する記憶部を備え、前記消耗度監視部は、前記記憶部に記憶された前記消耗度、または、前記算出基礎情報を用いて、前記消耗度の監視を行う通信システム。
【0024】
かかる構成の通信システムによれば、運用系として設定されている冗長化構成に故障が生じた場合、当該故障した冗長化構成のモジュールを新たなモジュールに交換しても、消耗度を継続して正確に監視することができる。あるいは、当該故障した冗長化構成のモジュールを、他の通信システムに使用されていた冗長化構成のモジュールに交換しても、消耗度を継続して正確に監視することができる。
【0025】
[適用例8]適用例2に従属する、適用例4ないし適用例7のいずれか記載の通信システムであって、前記切替制御部は、前記第2の期間において、前記冗長化構成のうちの前記運用系に設定されている冗長化構成について監視される前記消耗度が所定の値に達したときを前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う通信システム。
【0026】
第2の期間においては、待機系に設定されている冗長化構成の消耗度は、運用系に設定されている冗長化構成の消耗度よりも小さくなる。適用例8の通信システムによれば、第2の期間において、運用系に設定されている冗長化構成の消耗度が所定の値に達したときに、当該運用系は、待機系に切り替えられ、以降、時間の経過に伴う消耗度の増大速度が小さくなる。したがって、冗長化構成の1つの系列のみに偏って消耗度が大きくなることがない。その結果、通信システムを長寿命化して、コストパフォーマンスを向上させることができる。
【0027】
[適用例9]適用例3に従属する、適用例4ないし適用例7のいずれか記載の通信システムであって、前記切替制御部は、前記第3の期間において、前記冗長化構成のうちの前記運用系に設定されている冗長化構成について監視される前記消耗度が所定の値に達したときを前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う通信システム。
【0028】
第3の期間においては、待機系に設定されている冗長化構成の消耗度は、運用系に設定されている冗長化構成の消耗度よりも小さくなる。適用例9の通信システムによれば、第3の期間において、適用例8の第2の期間と同様の効果を奏する。
【0029】
[適用例10]前記切替制御部は、前記待機系制御部が前記待機系の動作状態を変化させるタイミングを、前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う適用例1ないし適用例9のいずれか記載の通信システム。
【0030】
かかる構成の通信システムによれば、冗長化構成の各系列のうちの特定の系列のみに偏って運用系に設定されることを抑制することができる。
【0031】
[適用例11]前記通信システムは、前記冗長化構成を備えた単一の通信装置である適用例1ないし適用例10記載のいずれか記載の通信システム。
【0032】
通信システムは、単一の装置として構成することができる。
【0033】
[適用例12]前記通信システムは、前記冗長化構成としての複数の通信装置を備えた適用例1ないし適用例10のいずれか記載の通信システム。
【0034】
通信システムは、複数の装置として構成することもできる。
【0035】
また、本発明は、適用例13の冗長化構成の制御方法としても実現することができる。
[適用例13]通信パケットの送受信および中継の少なくとも1つを行う機能の少なくとも一部が、2系列以上に冗長化された冗長化構成を有する通信部を備え、前記冗長化構成のうちの1つの系列を運用系として設定し、前記1つの系列以外の系列を待機系として設定する通信システムにおいて、前記冗長化構成の動作状態を制御する冗長化構成の制御方法であって、前記待機系の動作状態を、第1の動作状態と、該第1の動作状態よりも、前記待機系の消耗の程度が小さい動作状態であって、前記待機系が前記運用系に切り替えられた際に該運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態である第2の動作状態とを含む、異なる複数の動作状態間で、期間に応じて変化させる冗長化構成の制御方法。
【0036】
また、本発明は、上述した通信システムに用いるプログラム、当該プログラムを記録した記録媒体などとしても実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術としての、通信装置20aにおける冗長化構成の運用方法を示す説明図である。
【図2】本発明の通信システムの第1実施例としての中継装置100の概略構成を示す説明図である。
【図3】中継装置100における待機系の動作状態の制御方法を概略的に示す説明図である。
【図4】通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250の具体例を示す説明図である。
【図5】部品毎コンフィグレーション情報テーブル260の具体例を示す説明図である。
【図6】部品管理情報テーブル330の具体例(14,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図7】部品管理情報テーブル430の具体例(14,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図8】モジュール管理情報テーブル270の具体例(14,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図9】消耗度監視処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】切替制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】待機系制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】部品管理情報テーブル330の具体例(14,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図13】部品管理情報テーブル430の具体例(14,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図14】モジュール管理情報テーブル270の具体例(14,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図15】部品管理情報テーブル330の具体例(68,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図16】部品管理情報テーブル430の具体例(68,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図17】モジュール管理情報テーブル270の具体例(68,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図18】部品管理情報テーブル330の具体例(68,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図19】部品管理情報テーブル430の具体例(68,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図20】モジュール管理情報テーブル270の具体例(68,000時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図21】部品管理情報テーブル330の具体例(119,300時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図22】部品管理情報テーブル430の具体例(119,300時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図23】モジュール管理情報テーブル270の具体例(119,300時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図24】部品管理情報テーブル330の具体例(119,300時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図25】部品管理情報テーブル430の具体例(119,300時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図26】モジュール管理情報テーブル270の具体例(119,300時間経過、各制御部動作後)を示す説明図である。
【図27】部品管理情報テーブル330の具体例(部品寿命到達時)を示す説明図である。
【図28】部品管理情報テーブル430の具体例(部品寿命到達時)を示す説明図である。
【図29】モジュール管理情報テーブル270の具体例(部品寿命到達時)を示す説明図である。
【図30】中継装置100における運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【図31】比較例としてのホットスタンバイ方式の中継装置における運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【図32】比較例としてのコールドスタンバイ方式の中継装置における運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【図33】第2実施例としての部品毎コンフィグレーション情報テーブル260bの具体例を示す説明図である。
【図34】第2実施例としての部品管理情報テーブル330bの具体例(14,000時間経過、各制御部動作前)を示す説明図である。
【図35】第2本実施例としての中継装置100bにおける運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【図36】変形例としての運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【図37】変形例としての運用系と待機系との切り替えと、待機系の動作状態との推移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
A.第1実施例:
A−1.中継装置100の概略構成:
本発明の通信システムの第1実施例としての中継装置100の概略構成を図2に示す。中継装置100は、通信パケットを受信し、受信した通信パケットを所定の宛先に中継する通信装置である。なお、本願における通信パケットとは、OSI参照モデルにおけるデータリンク層(レイヤ2)で扱われるフレームと、ネットワーク層(レイヤ3)で扱われる狭義のパケットとを含む、データの転送単位の総称である。本実施例においては、中継装置100は、レイヤ3で通信パケットを中継するルータである。ただし、中継装置100は、ルータに限られるものではなく、レイヤ3で通信パケットを中継するレイヤ3スイッチであってもよい。もとより、中継装置100は、レイヤ2で通信パケットを中継する中継装置であってもよい。
【0039】
図2に示すように、中継装置100は、制御モジュール200と、通信モジュール300,400とを備えている。通信モジュール300,400は、同一の構成を備えており、各々が単独で、通信パケットの送受信および中継を行う機能を有している。つまり、通信モジュール300および通信モジュール400は、中継装置100の通信動作の信頼性を向上させるために、二重に冗長化された構成(以下、冗長化構成ともいう)を有している。通信モジュール300,400は、中継装置100に着脱可能なモジュールとして構成されている。通信モジュール300および400のうちの一方は、運用系として設定され、他方は、待機系として設定される。図2では、通信モジュール300が運用系として設定され、通信モジュール400が待機系として設定されている様子を示している。以下では、中継装置100が初めて使用される際は、通信モジュール300が運用系に設定され、通信モジュール400が待機系に設定されるものとして説明する。なお、通信モジュール300と通信モジュール400とは、完全に同一の構成を有している必要はなく、冗長化すべき構成を各々が備えていればよい。
【0040】
制御モジュール200は、通信モジュール300および通信モジュール400の動作を制御する。具体的には、制御モジュール200は、通信モジュール300と通信モジュール400とに設定される運用系と待機系とを切り替える制御を行う。かかる制御を切替制御ともいう。また、制御モジュール200は、待機系に設定された通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態を、通信モジュールの消耗の程度が異なる2つの動作状態間で、期間に応じて変化させる制御を行う。かかる制御を待機系制御ともいう。本実施例では、消耗の程度が異なる2つの動作状態として、待機系に設定された通信モジュール300または通信モジュール400の各部品に給電を行う状態と、給電を停止する状態とが設定されている。かかる給電を行う状態を、給電状態ともいう。給電状態では、給電される各部品は、動作制限されることなく、各部品が備える機能を発揮することができる。給電を停止する状態を完全休眠状態ともいう。また、完全休眠状態での中継装置100の稼働時間(経過時間)を完全休眠時間T1ともいい、給電状態での中継装置100の稼働時間を給電時間T2ともいう。
【0041】
かかる制御モジュール200の待機系制御の概要について説明する。通信モジュール300,400の故障率曲線を図3に示す。通信モジュール300,400の故障は、製造上の欠陥による故障と、偶発的な事象による故障と、部品消耗による故障とに分類することができる。
【0042】
偶発的な事象による故障は、ラインL2の故障率曲線に示すように、稼働時間に関係なく一定の割合で常に発生する。製造上の欠陥による故障は、ラインL1の故障率曲線に示すように、通信モジュール300,400を初めて稼働させる初期使用時から短い稼働時間の期間内に起こりやすい。かかる期間での故障率は、偶発的な事象による故障率よりも極めて大きい。そして、その故障率は、稼働時間が長くなるにつれて次第に小さくなり、やがて、偶発的な事象による故障率よりも小さくなり、ゼロに近づいて収束する。部品消耗による故障は、ラインL3の故障率曲線に示すように、通信モジュール300,400の初期使用時では、ほとんど発生せず、ある程度の稼働時間が経過してから、徐々に起こりやすくなる。そして、その故障率は、ある時点で偶発的な事象による故障率よりも大きくなり、最終的には、偶発的な事象による故障率よりも極めて大きくなる。
【0043】
このように、製造上の欠陥による故障が起こりやすい期間を初期故障期間ともいう。偶発的な事象による故障が起こりやすい期間を偶発故障期間ともいう。部品消耗による故障が起こりやすい期間を摩耗故障期間ともいう。初期故障期間は、図3に示すように、例えば、製造上の欠陥による故障率が偶発的な事象による故障率よりも大きい期間として定義することができる。摩耗故障期間は、図3に示すように、例えば、部品消耗による故障率が偶発的な事象による故障率よりも大きい期間として定義することができる。かかる場合、偶発故障期間は、初期故障期間および摩耗故障期間以外の期間として定義することができる。初期故障期間、偶発故障期間、摩耗故障期間を総称して故障期間ともいう。
【0044】
図3に示すように、本実施例の制御モジュール200は、初期故障期間と摩耗故障期間とにおいては、待機系の通信モジュール300または通信モジュール400を給電状態に制御する。これらの期間では、想定される故障率が比較的高いことから、通信の信頼性を重視するのである。一方、制御モジュール200は、偶発故障期間は、待機系の通信モジュール300または通信モジュール400を完全休眠状態に制御する。偶発故障期間では、想定される故障率が比較的低いことから、コストパフォーマンスを優先する、つまり、部品の消耗を抑えて、通信モジュールの長寿命化を図るのである。以下、かかる待機系制御の詳細について説明する。
【0045】
図2に示すように、制御モジュール200は、ユーザインタフェース部210を備えている。ユーザインタフェース部210は、本実施例では、パーソナルコンピュータに接続可能なインタフェースである。ただし、ユーザインタフェース部210は、タッチパネル式ディスプレイなどの入力機構であってもよい。また、制御モジュール200は、消耗度監視部220、切替制御部230、待機系制御部240を備えている。消耗度監視部220は、所定の周期で起動され、通信モジュール300,400の消耗度を表すモジュール消耗時間TC2(詳細は後述)を監視する。切替制御部230は、上述した切替制御を行う。また、切替制御部230は、運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400に故障が生じたことを検知した場合に、運用系と待機系とを切り替える。待機系制御部240は、上述した待機系制御を行う。これらの機能部は、制御モジュール200が備えるCPU(図示省略)が、所定のプログラムを実行することによって実現される。これらの機能部の機能の詳細については後述する。
【0046】
制御モジュール200が備えるメモリ領域には、通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250、部品毎コンフィグレーション情報テーブル260、モジュール管理情報テーブル270が確保されている。
【0047】
通信モジュール300は、CPU310と、通信インタフェース(I/F)320とを備えている。通信インタフェース320は、通信パケットの送受信を行うPHY(PHysical Layer)などの回線インタフェースである。CPU310は、本実施例では、マルチコアプロセッサである。CPU310は、回線制御部311、転送制御部312としての機能を有している。回線制御部311は、通信インタフェース320の動作制御を行う。転送制御部312は、ルーティングテーブル(図示省略)を用いた通信パケットの中継先の学習や決定、隣接する中継装置との間での経路情報の交換などを制御する。通信モジュール300が備えるメモリ領域には、部品管理情報テーブル330が確保されている。通信モジュール400は、通信モジュール300と同一であるため、説明を省略する。
【0048】
制御モジュール200に確保される通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250の具体例を図4に示す。通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250は、図4に示すように、消耗監視周期、初期故障閾値TH1、摩耗故障閾値TH2を記録可能に構成されている。消耗監視周期は、消耗度監視部220が起動する周期である。本実施例では、消耗監視周期は、100時間に設定されている。初期故障閾値TH1は、通信モジュール300,400の故障期間が初期故障期間から偶発故障期間に変わるタイミングを予め想定して定めた閾値である。摩耗故障閾値TH2は、通信モジュール300,400の故障期間が偶発故障期間から磨耗故障期間に変わるタイミングを予め想定して定めた閾値である。初期故障閾値TH1および摩耗故障閾値TH2は、後で詳述するモジュール消耗時間TC2についての閾値として用いられる。つまり、故障期間の推移は、本実施例では、モジュール消耗時間TC2に基づいて判断される。本実施例では、初期故障閾値TH1は、14,000時間に、摩耗故障閾値TH2は、68000時間にそれぞれ設定されている。
【0049】
制御モジュール200に確保される部品毎コンフィグレーション情報テーブル260の具体例を図5に示す。部品毎コンフィグレーション情報テーブル260は、図5に示すように、完全休眠消耗係数k1、給電消耗係数k2を記録可能に構成されている。完全休眠消耗係数k1は、完全休眠状態における単位時間あたりの部品の消耗の程度を表す係数である。給電消耗係数k2は、給電状態における単位時間あたりの部品の消耗の程度を表す係数である。つまり、完全休眠消耗係数k1、給電消耗係数k2は、動作状態の違いに応じた部品の消耗の程度の違いを調整する係数である。
【0050】
かかる完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2は、冗長化構成を構成する複数の部品ごとに設定可能に構成されている。具体的には、部品の種類が異なるCPU310,410と、通信インタフェース320,420とに、それぞれ異なる値を設定可能に構成されている。なお、部品ごとに完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2を設定することは必須ではなく、冗長化構成単位で、すなわち、通信モジュール300,400単位で、完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2を設定してもよい。また、完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2を設定する部品は、通信モジュール300,400の通信機能を実現する上で重要な役割を果たす部品を適宜設定すればよい。
【0051】
本実施例では、完全休眠消耗係数k1は、CPU310,410に対して値0.05が、通信インタフェース320,420に対して値0.01がそれぞれ設定されている。給電消耗係数k2は、CPU310,410、通信インタフェース320,420に対して値1.00が設定されている。完全休眠消耗係数k1は、給電されず、実質的に未使用の状態にある部品についても、経年劣化による消耗が生じるので、その経年劣化をモジュール消耗時間TC2に反映させるために設定される。このため、完全休眠消耗係数k1の値は、給電消耗係数k2よりも小さい値となっている。給電消耗係数k2は、部品の消耗の程度を感覚的にイメージしやすいように、稼働時間そのものが部品の消耗の程度を表すように、値1.00で設定されている。
【0052】
ただし、完全休眠消耗係数k1は、値0であってもよい。すなわち、未使用状態の経年劣化は、必ずしも反映しなくてもよい。また、給電消耗係数k2は、通常よりも部品消耗が早くなる厳しい使用環境で中継装置100が使用されることが予想される場合には、値1.00よりも大きくしてもよい。また、給電状態における部品の消耗の早さが部品ごとに異なる場合には、各部品に異なる値を設定してもよい。各部品について設定される完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2は、各部品の各動作状態における消耗の程度の違いを相対的に定義するものであればよい。
【0053】
上述した通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250および部品毎コンフィグレーション情報テーブル260に記録される情報は、ユーザによって登録される。具体的には、ユーザは、ユーザインタフェース部210にパーソナルコンピュータを接続して、WEBブラウザを介して、中継装置100にアクセスし、中継装置100から提供される設定画面上で、所望の値を入力して登録することができる。
【0054】
通信モジュール300に確保される部品管理情報テーブル330の具体例を図6に示す。部品管理情報テーブル330は、通信モジュール300を構成する部品ごとの経過時間を記録するテーブルである。部品ごとの経過時間は、動作状態の違い、すなわち、完全休眠状態と給電状態とを区別して記録される。部品管理情報テーブル330への記録は、消耗度監視部220が後述する消耗度監視処理によって行う。
【0055】
図6に示すように、部品管理情報テーブル330には、完全休眠時間T1、給電時間T2、部品消耗時間TC1が記録される。完全休眠時間T1は、CPU310および通信インタフェース320の各々についての、完全休眠状態での延べ経過時間を表す。給電時間T2は、CPU310および通信インタフェース320の各々についての、給電状態での延べ経過時間を表す。
【0056】
部品消耗時間TC1は、部品毎コンフィグレーション情報テーブル260に記録された完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2と、部品管理情報テーブル330に記録された完全休眠時間T1および給電時間T2とを用いて、次式(1)によって算出される。式(1)において、「n」は、部品管理情報テーブル330で設定された部品を区別する番号である。式(1)を通信モジュール300に適用する場合、n=1はCPU310、n=2は通信インタフェース320に対応するものとする。かかる部品消耗時間TC1は、モジュール消耗時間TC2を算出するために用いられる。
TC1n=k1n×T1n+k2n×T2n・・・(1)
【0057】
図6では、中継装置100の初期使用時から14,000時間が経過した際の部品管理情報テーブル330の状態を示している。この状態は、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が後述する処理を行う前の状態、すなわち、14,000時間経過時に行われるデータの更新が行われる前の状態である。14,000時間経過時より前に、待機系と運用系との切り替えは行われていない。上述したように、消耗度監視部220が起動する周期である消耗監視周期は100時間であるから、図示する部品管理情報テーブル330には、13,900時間経過時に更新された情報が記録されている。具体的には、通信モジュール300は、中継装置100の初期使用時から継続して運用系として設定されているから、CPU310および通信インタフェース320の完全休眠時間T1として、いずれも0時間が記録されている。また、同一の理由により、CPU310および通信インタフェース320の給電時間T2として、いずれも13,900時間が記録されている。また、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1として、上述した式(1)によって算出された13,900時間が記録されている。
【0058】
通信モジュール400に確保される部品管理情報テーブル430の具体例を図7に示す部品管理情報テーブル430は、通信モジュール400を構成する部品ごとの経過時間を記録するテーブルである。部品管理情報テーブル430への記録は、消耗度監視部220が後述する消耗度監視処理によって行う。図7では、上述した図6と同じ時点での状態を示している。この時点では、通信モジュール400は、待機系に設定されている。また、この時点は、図3に示した初期故障期間に該当するので、待機系としての通信モジュール400は、給電状態にある。
【0059】
したがって、CPU410および通信インタフェース420の完全休眠時間T1として、いずれも0時間が記録されている。また、CPU410および通信インタフェース420の給電時間T2として、いずれも13,900時間が記録されている。また、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1として、上述した式(1)によって算出された13,900時間が記録されている。
【0060】
制御モジュール200に確保されるモジュール管理情報テーブル270の具体例を図8に示す。モジュール管理情報テーブル270は、通信モジュール300,400の消耗度を表すモジュール消耗時間TC2と、通信モジュール300,400の動作状態および運用状態とを監視・管理するためのテーブルである。図8では、上述した図6,図7と同じ時点での状態を示している。図8に示すように、モジュール管理情報テーブル270には、冗長化構成ごとに、すなわち、通信モジュール300,400ごとに、モジュール消耗時間TC2と動作状態と運用状態とが記録される。運用状態は、通信モジュール300,400の各々が、運用系および待機系のうちのいずれに設定されているかを表す。動作状態は、通信モジュール300,400の各々についての動作状態が、給電状態であるか、それとも、完全休眠状態であるかを表す。
【0061】
モジュール消耗時間TC2は、通信モジュール単位での消耗度を表す。モジュール消耗時間TC2は、部品管理情報テーブル330,430に格納された部品消耗時間TC1に基づいて算出される。本実施例では、モジュール消耗時間TC2は、次式(2)で算出するものとした。つまり、モジュール消耗時間TC2は、1つの通信モジュールを構成する各部品の部品消耗時間TC1の最大値である。
TC2=MAX(TC1n)・・・(2)
【0062】
式(2)を用いてモジュール消耗時間TC2を算出することによって、モジュール消耗時間TC2は、通信モジュール内で最も消耗が大きい部品の消耗の程度を表すこととなる。こうすれば、通信モジュール300,400の消耗度を安全側で見積もることができる。ただし、モジュール消耗時間TC2の算出方法は、式(2)に限るものではなく、部品消耗時間TC1を用いて適宜設定すればよい。例えば、通信モジュール内で最も重要度が高い部品についての部品消耗時間TC1をモジュール消耗時間TC2として採用してもよい。あるいは、各部品についての部品消耗時間TC1の単純平均値や加重平均値をモジュール消耗時間TC2として採用してもよい。
【0063】
図8に示す例では、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2として、いずれも13,900時間が記録されている。運用状態は、通信モジュール300が運用系に、通信モジュール400が待機系にそれぞれ設定されていることが記録されている。また、動作状態には、いずれも給電状態を表す「給電中」が記録されている。
【0064】
A−2.中継装置100における運用系および待機系の制御:
上述した中継装置100における動作の詳細について説明する。制御モジュール200の消耗度監視部220が実行する消耗度監視処理の流れを図9に示す。消耗度監視処理は、通信モジュール300,400の動作状態の違いを区別した経過時間を記録し、当該記録した経過時間に基づいて算出される消耗度(モジュール消耗時間TC2)を監視する処理である。本実施例では、消耗度監視処理は、通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250に設定された消耗監視周期ごとに起動される。
【0065】
消耗度監視処理が開始されると、図9に示すように、消耗度監視部220は、まず、通信モジュール300の動作状態が給電中であるか否かを判断する(ステップS510)。判断の結果、通信モジュール300の動作状態が給電中であれば(ステップS510:YES)、消耗度監視部220は、部品管理情報テーブル330に記録された、CPU310および通信インタフェース320の給電時間T2に、前回の消耗度監視処理から経過した時間、すなわち、消耗監視周期である100時間を加算する(ステップS520)。一方、通信モジュール300の動作状態が給電中でなければ(ステップS510:NO)、すなわち、完全休眠中であれば、消耗度監視部220は、部品管理情報テーブル330に記録された、CPU310および通信インタフェース320の完全休眠時間T1に、前回の消耗度監視処理から経過した時間である100時間を加算する(ステップS530)。
【0066】
完全休眠時間T1または給電時間T2に100時間を加算すると、消耗度監視部220は、加算結果に基づいて、上述した式(1)を用いて、部品消耗時間TC1nを算出し、算出結果に基づいて、部品管理情報テーブル330に記録された部品消耗時間TC1を更新する(ステップS540)。
【0067】
部品管理情報テーブル330を更新すると、消耗度監視部220は、上記S510〜S540と同様に、通信モジュール400の動作状態に応じて、通信モジュール400に対応する部品管理情報テーブル430を更新する(ステップS550〜S580)。
【0068】
部品管理情報テーブル330,430を更新すると、消耗度監視部220は、部品管理情報テーブル330,430に記録された部品消耗時間TC1に基づいて、上述した式(2)を用いて、通信モジュール300,400の各々のモジュール消耗時間TC2を算出し、算出結果に基づいて、モジュール管理情報テーブル270に記録されたモジュール消耗時間TC2を更新する(ステップS590)。
【0069】
モジュール消耗時間TC2を更新すると、消耗度監視部220は、運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2が、上記ステップS590の更新によって、TC2<TH1を満たす状態からTC2≧TH1を満たす状態に移行したか、または、TH1≦TC2<TH2を満たす状態から、TC2≧TH2を満たす状態に移行したかを判断する(ステップS600)。初期故障閾値TH1および摩耗故障閾値TH2は、通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250に記録されている。この判断は、通信モジュール300,400の各々について、初期故障期間から偶発故障期間に移行したか、または、偶発故障期間から摩耗故障期間に移行したかを判断するものである。
【0070】
判断の結果、初期故障期間から偶発故障期間への移行、および、偶発故障期間から摩耗故障期間への移行のいずれかが生じていれば(ステップS600:YES)、消耗度監視部220は、切替制御部230を起動させ(ステップS610)、消耗度監視処理を終了する。一方、故障期間の移行が生じていなければ(ステップS600:NO)、消耗度監視部220は、消耗度監視処理を終了する。
【0071】
上記ステップS610によって起動した切替制御部230によって実行される切替制御処理の流れを図10に示す。切替制御処理は、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2に基づいて、運用系と待機系との切り替えを行う処理である。具体的には、通信モジュール300または通信モジュール400について、故障期間の移行が生じた際に、通信モジュール300,400についての運用系と待機系とを切り替える処理である。切替制御処理が開始されると、切替制御部230は、まず、モジュール管理情報テーブル270を参照して、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400が完全休眠中であるか否かを判断する(ステップS710)。
【0072】
判断の結果、完全休眠中であれば(ステップS710:YES)、切替制御部230は、待機系制御部240を起動させ、待機系制御部240に対して、休眠解除指示を通知する(ステップS720)。休眠解除指示とは、完全休眠中の動作状態にある通信モジュール300または通信モジュール400を、給電中の動作状態に変更することの指示である。
【0073】
休眠解除指示を通知すると、切替制御部230は、待機系制御部240から動作完了通知を取得するまで待機する(ステップS730)。動作完了通知とは、休眠解除指示を受けた待機系制御部240が、完全休眠中の動作状態にある通信モジュール300または通信モジュール400を給電中の動作状態に変更し、起動したことを表す通知である。この通知は、後述するステップS830に対応している。
【0074】
そして、待機系制御部240から動作完了通知を取得すると(ステップS730:YES)、または、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400が完全休眠中でなければ(ステップS710:NO)、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400は、すでに給電され、起動しているということである。そこで、切替制御部230は、通信モジュール300,400について、運用系と待機系とを切り替える(ステップS740)。この際、切替制御部230は、モジュール管理情報テーブル270の運用状態を、切り替え後の状態に対応させて更新する。
【0075】
運用系と待機系とを切り替えると、切替制御部230は、モジュール管理情報テーブル270を参照して、新たに運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2がTH1≦TC2<TH2を満たすか否かを判断する(ステップS750)。この判断は、新たに、運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400が、偶発故障期間に属しているか否かを判断するものである。
【0076】
判断の結果、偶発故障期間に属していれば(ステップS750:YES)、切替制御部230は、待機系制御部240を起動させ、待機系制御部240に対して休眠指示を通知し(ステップS760)、切替制御処理を終了する。休眠指示とは、待機系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態を完全休眠の状態に制御することの指示である。一方、偶発故障期間に属していなけれ(ステップS750:NO)、切替制御部230は、切替制御処理を終了する。
【0077】
上記ステップS720またはS760によって起動した待機系制御部240によって実行される待機系制御処理の流れを図11に示す。待機系制御処理は、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2に基づいて、待機系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態を制御する処理である。
【0078】
図11に示すように、待機系制御処理が開始されると、待機系制御部240は、まず、切替制御部230から取得した通知の種別を判断する(ステップS810)。判断の結果、取得した通知が休眠解除指示であれば(ステップS810:休眠解除指示)、待機系制御部240は、モジュール管理情報テーブル270を参照し、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400を給電して起動させ、当該通信モジュールについてのモジュール管理情報テーブル270の動作状態を「完全休眠中」から「給電中」に変更する(ステップS820)。モジュール管理情報テーブル270を変更すると、待機系制御部240は、切替制御部230に対して、動作完了を通知し(ステップS830)、待機系制御処理を終了する。
【0079】
一方、取得した通知が休眠指示であれば(ステップS810:休眠指示)、待機系制御部240は、モジュール管理情報テーブル270を参照し、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400に対して給電を停止し、当該通信モジュールについてのモジュール管理情報テーブル270の動作状態を「給電中」から「完全休眠中」に変更する(ステップS840)。こうして、待機系制御処理は終了となる。
【0080】
なお、上述した消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240の処理は、中継装置100が実行するものであればよく、いずれのステップの処理をいずれの機能部が実行するかは、適宜設定すればよい。例えば、消耗度監視部220が実行するものとして説明した上記ステップS590,600の処理は、切替制御部230が上記ステップS710の処理の前段で実行してもよい。
【0081】
かかる消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240の処理によって、時間経過に伴って、部品管理情報テーブル330,430およびモジュール管理情報テーブル270が更新され、通信モジュール300,400の動作状態と運用状態とが切り替えられる様子について説明する。以下では、通信モジュール300,400の寿命は、通信モジュール300,400の少なくとも一方のモジュール消耗時間TC2が82,000時間になった時点であるとして説明する。
【0082】
中継装置100の初期使用時から14,000時間が経過し、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が上述した処理を行った後の時点での部品管理情報テーブル330の具体例を図12に示す。図示するように、14,000時間経過時の消耗度監視部220の処理が実行されたことによって、運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の給電時間T2は、図6に示した13,900時間に対して消耗監視周期である100時間が上乗せされ、14,000時間に更新されている。CPU310および通信インタフェース320の完全休眠時間T1は、図6に示した0時間のままとなっている。給電時間T2の更新に伴い、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1は、14,000時間に更新されている。また、図13に示すように、待機系(給電状態)に設定されている通信モジュール400の部品管理情報テーブル430についても、部品管理情報テーブル330と同様の更新がなされている。
【0083】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図14に示す。図示するように、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2は、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、消耗度監視部220の処理によって、いずれも14,000時間に更新されている。かかるモジュール消耗時間TC2の更新は、運用系として設定されていた通信モジュール300のモジュール消耗時間TC2が、初期故障閾値TH1(14,000時間)以上となったこと、すなわち、故障期間が初期故障期間から偶発故障期間に移行したことを意味する。
【0084】
したがって、切替制御部230の処理によって、通信モジュール300,400の運用状態は、図6に示した状態から、通信モジュール300が待機系、通信モジュール400が運用系となった状態に切り替えられている。また、新たに待機系として設定された通信モジュール300の動作状態は、待機系制御部240の処理によって、完全休眠中に変更されている。
【0085】
中継装置100の初期使用時から68,000時間が経過し、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が上述した処理を行う前の時点での部品管理情報テーブル330の具体例を図15に示す。図示するように、待機系(完全休眠状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の完全休眠時間T1は、53,900時間に更新されている。完全休眠時間T1の更新に伴って、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0086】
また、この時点での部品管理情報テーブル430の具体例を図16に示す。運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール400のCPU410および通信インタフェース420の給電時間T2は、67,900時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0087】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図17に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、通信モジュール300および通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2は、それぞれ、16,695時間、67,900時間に更新されている。この時点では、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2は、通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250の摩耗故障閾値TH2(68,000時間)に達していない。したがって、通信モジュール300,400についての運用状態および動作状態は、図14に示した状態が維持されている。
【0088】
中継装置100の初期使用時から68,000時間が経過し、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が上述した処理を行った後の部品管理情報テーブル330の具体例を図18に示す。図示するように、待機系(完全休眠状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の完全休眠時間T1は、54,000時間に更新されている。完全休眠時間T1の更新に伴って、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0089】
また、この時点での部品管理情報テーブル430の具体例を図19に示す。運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール400のCPU410および通信インタフェース420の給電時間T2は、68,000時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0090】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図20に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、通信モジュール300および通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2は、それぞれ、16,700時間、68,000時間に更新されている。かかるモジュール消耗時間TC2の更新は、運用系として設定されていた通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2が、摩耗故障閾値TH2(68,000時間)以上となったこと、すなわち、故障期間が偶発故障期間から摩耗故障期間に移行したことを意味する。
【0091】
したがって、通信モジュール300,400の運用状態は、図17に示した状態から、通信モジュール300が運用系、通信モジュール400が待機系となった状態に切り替えられている。また、通信モジュール300,400の動作状態は、新たに運用系として設定された通信モジュール300が給電中に、新たに待機系として設定された通信モジュール400が完全休眠中に変更されている。なお、通信モジュール400の動作状態が完全休眠状態に制御されることは、運用系として新たに設定された通信モジュール300が偶発故障期間に属することに基づいている。
【0092】
中継装置100の初期使用時から119,300時間が経過し、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が上述した処理を行う前の時点での部品管理情報テーブル330の具体例を図21に示す。図示するように、運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の給電時間T2は、65,200時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0093】
また、この時点での部品管理情報テーブル430の具体例を図22に示す。待機系(完全休眠状態)に設定されている通信モジュール400のCPU410および通信インタフェース420の完全休眠時間T1は、51,200時間に更新されている。完全休眠時間T1の更新に伴って、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0094】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図23に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、通信モジュール300および通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2は、それぞれ、67,900時間、70,560時間に更新されている。この時点では、運用系に設定されている通信モジュール300のモジュール消耗時間TC2は、通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル250の摩耗故障閾値TH2(68,000時間)に達していない。したがって、通信モジュール300,400についての運用状態および動作状態は、図20に示した状態のまま維持されている。
【0095】
中継装置100の初期使用時から119,300時間が経過し、消耗度監視部220、切替制御部230および待機系制御部240が上述した処理を行った後の部品管理情報テーブル330の具体例を図24に示す。図示するように、運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の給電時間T2は、65,300時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0096】
また、この時点での部品管理情報テーブル430の具体例を図25に示す。待機系(完全休眠状態)に設定されている通信モジュール400のCPU410および通信インタフェース420の完全休眠時間T1は、51,300時間に更新されている。完全休眠時間T1の更新に伴って、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0097】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図26に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、通信モジュール300および通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2は、それぞれ、68,000時間、70,565時間に更新されている。かかるモジュール消耗時間TC2の更新は、運用系として設定されていた通信モジュール300のモジュール消耗時間TC2が、摩耗故障閾値TH2(68,000時間)以上となったこと、すなわち、故障期間が偶発故障期間から摩耗故障期間に移行したことを意味する。
【0098】
したがって、通信モジュール300,400の運用状態は、図23に示した状態から、通信モジュール300が待機系、通信モジュール400が運用系となった状態に切り替えられている。また、通信モジュール300,400の動作状態は、図23に示した状態から、新たに待機系として設定された通信モジュール300と、新たに運用系として設定された通信モジュール400との両方が、給電中に変更されている。なお、待機系として新たに設定された通信モジュール300の動作状態が給電状態に制御されることは、運用系として新たに設定された通信モジュール400が摩耗故障期間に属することに基づいている。
【0099】
中継装置100の初期使用時から130,735時間が経過し、部品寿命に到達した際の部品管理情報テーブル330の具体例を図27に示す。なお、本実施例での消耗監視周期は、100時間であるが、ここでは、部品寿命に到達したタイミングを明確にするために、130,735時間経過時点で、消耗度監視部220の処理が実行されたものとして説明する。図27に示すように、待機系(給電状態)に設定されている通信モジュール300のCPU310および通信インタフェース320の給電時間T2は、76,735時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU310および通信インタフェース320の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0100】
また、この時点での部品管理情報テーブル430の具体例を図28に示す。運用系(給電状態)に設定されている通信モジュール400のCPU410および通信インタフェース420の給電時間T2は、79,435時間に更新されている。給電時間T2の更新に伴って、CPU410および通信インタフェース420の部品消耗時間TC1も更新されている。
【0101】
この時点でのモジュール管理情報テーブル270の具体例を図29に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330,430の更新に伴って、通信モジュール300および通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2は、それぞれ、79,435時間、82,000時間に更新されている。つまり、通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2が寿命である82,000時間に到達している。
【0102】
A−3.効果:
上述した中継装置100は、待機系の動作状態を、期間に応じて、給電状態と完全休眠状態との間で変化させる。したがって、待機系が給電状態で制御される期間においては、通信の信頼性に優れる。また、待機系が完全休眠状態で制御される期間においては、コストパフォーマンスに優れる。したがって、中継装置100の寿命期間全体で見れば、通信の信頼性とコストパフォーマンスとを所定のレベルで両立させることができる。
【0103】
また、中継装置100は、運用系が初期故障期間または摩耗故障期間に属することになる期間、すなわち、運用系が比較的故障しやすい期間においては、待機系を給電状態に制御する。また、運用系が偶発故障期間に属することになる期間、すなわち、運用系が比較的故障しにくい期間においては、待機系を完全休眠状態に制御する。したがって、期間ごとの故障の生じやすさに応じて、通信の信頼性と、コストパフォーマンスとのいずれを重視するかを変えることができる。その結果、通信の信頼性と、コストパフォーマンスとを高いレベルで好適に確保することができる。
【0104】
また、中継装置100では、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2に基づいて、待機系の動作状態を変化させる期間が定まる。モジュール消耗時間TC2は、待機系の動作状態の違いを反映して算出されるので、通信モジュール300,400の消耗の程度を正確に反映したものとなる。したがって、通信の信頼性とコストパフォーマンスとを高いレベルで両立させることができる。
【0105】
また、中継装置100は、通信モジュール300,400を構成する部品ごとに設定された完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2を用いてモジュール消耗時間TC2を算出する。したがって、部品間の消耗の特性に違いがあっても、その違いを反映させて、モジュール消耗時間TC2を精度良く算出することができる。
【0106】
また、中継装置100は、冗長化構成である通信モジュール300,400に確保された部品管理情報テーブル330,部品管理情報テーブル430を用いて、完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1を監視する。したがって、通信モジュール300または通信モジュール400の故障時などに、故障した通信モジュール300,400を交換しても、交換後の通信モジュール300,400の完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1を正確に把握することができる。
【0107】
例えば、交換用に用意した新品の通信モジュール300を装着する場合、完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1を0時間として記録した通信モジュール300を装着すれば、新たに装着する通信モジュール300の完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1を正確に把握することができる。あるいは、中古の通信モジュール300を装着する場合、通信モジュール300には、それまでの完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1の記録が残っているので、新たに装着する通信モジュール300の完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1を正確に把握することができる。
【0108】
なお、完全休眠時間T1および給電時間T2について、部品管理情報テーブル330,430を用いて監視し、部品消耗時間TC1について、モジュール管理情報テーブル270を用いて監視する構成としてもよい。あるいは、部品管理情報テーブル330,部品管理情報テーブル430でモジュール消耗時間TC2を含めて監視する構成としてもよい。モジュール消耗時間TC2は、請求項の消耗度に該当する。部品消耗時間TC1は、請求項の第1の部品消耗度および第2の部品消耗度に該当する。また、完全休眠時間T1、給電時間T2および部品消耗時間TC1は、請求項の算出基礎情報に該当する。
【0109】
また、中継装置100は、運用系が初期故障期間または摩耗故障期間に属することになる期間においては、運用系のモジュール消耗時間TC2が所定の値(上述の例では摩耗故障閾値TH2)に達したときに、当該運用系は、待機系に切り替えられ、以降、時間の経過に伴うモジュール消耗時間TC2の増大速度が小さくなる。したがって、通信モジュール300,400の一方のみのモジュール消耗時間TC2が、偏って大きくなることがない。つまり、通信モジュール300,400の一方のみが、他方よりも相当に早く寿命に達することがない。その結果、中継装置100を長寿命化することができる。
【0110】
また、中継装置100は、待機系の動作状態を変化させるタイミングで、つまり、故障期間が移行するタイミングで、運用系と待機系とを切り替えるので、通信モジュール300,400の一方のみに偏って運用系として設定されることを抑制することができる。
【0111】
中継装置100の効果をいっそう明確にするために、上述した制御における通信モジュール300,400の動作状態と運用状態との推移を図30に示す。図示するように、中継装置100の初期使用時から14,000時間未満の期間T11では、通信モジュール300が運用系、通信モジュール400が待機系に設定される。期間T11において待機系に設定された通信モジュール400は、給電状態に制御される。
【0112】
そして、初期使用時から14,000時間が経過し、通信モジュール300,400の故障期間が初期故障期間から偶発故障期間に移行すると、運用系と待機系とが切り替えられ、通信モジュール300が待機系、通信モジュール400が運用系に設定される。この運用状態は、初期使用時から14,000時間以上、68,000時間未満の期間T12で継続される。期間T12において待機系に設定された通信モジュール300は、完全休眠状態に制御される。
【0113】
また、初期使用時から68,000時間が経過し、通信モジュール400の故障期間が偶発故障期間から摩耗故障期間に移行すると、運用系と待機系とが切り替えられ、通信モジュール300が運用系、通信モジュール400が待機系に設定される。この運用状態は、初期使用時から68,000時間以上、119,300時間未満の期間T13で継続される。期間T13において待機系に設定された通信モジュール400は、完全休眠状態に制御される。
【0114】
また、初期使用時から119,300時間が経過し、通信モジュール300の故障期間が偶発故障期間から摩耗故障期間に移行すると、運用系と待機系とが切り替えられ、通信モジュール300が待機系、通信モジュール400が運用系に設定される。この運用状態は、初期使用時から119,300時間以上、130,735時間未満の期間T14で継続される。期間T14は、通信モジュール400が寿命に達するまでの期間である。期間T14において待機系に設定された通信モジュール300は、給電状態に制御される。
【0115】
つまり、中継装置100は、通信モジュール300,400のいずれか一方の故障期間が移行した場合に、運用系と待機系との切り替えを行う。この切り替え後に運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400が偶発故障期間に属する場合、待機系の通信モジュールは、完全休眠状態に制御される。なお、期間T11は、請求項の第1の期間に該当する。期間T12,T13は、請求項の第2の期間に該当する。また、期間T12,T13は、請求項の第3の期間にも該当する。期間T14は、請求項の第4の期間に該当する。
【0116】
ここで、比較例として、ホットスタンバイ方式を採用した場合の通信モジュール300,400の動作状態と運用状態との推移を図31に示す。図31では、本実施例(図30)と同様に、通信モジュール300,400のいずれか一方の故障期間が移行した場合に、運用系と待機系との切り替えを行うことを前提としている。図示するように、ホットスタンバイ方式では、通信モジュール300,400は、運用系、待機系のいずれに設定されているかにかかわらず、常時、給電状態となる。そのため、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2は、稼働時間の経過に伴い、同じ傾きで増加する。その結果、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2が、寿命である82,000時間となるタイミングでは、稼働時間は82,000時間となる。
【0117】
また、比較例として、コールドスタンバイ方式を採用した場合の通信モジュール300,400の動作状態と運用状態との推移を図32に示す。図32では、本実施例(図30)と同様に、通信モジュール300,400のいずれか一方の故障期間が移行した場合に、運用系と待機系との切り替えを行うことを前提としている。図示するように、コールドスタンバイ方式では、待機系に設定された通信モジュール300または通信モジュール400は、常時、完全休眠状態となる。そのため、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2は、通信モジュール300,400のいずれか一方では、非常に緩やかな傾きで、稼働時間の経過に伴い増加する。その結果、通信モジュール300,400のモジュール消耗時間TC2のいずれかが、寿命である82,000時間となるタイミングでは、稼働時間は143,401時間となる。
【0118】
このように、中継装置の寿命までの稼働時間は、ホットスタンバイ方式の82,000時間に対して、コールドスタンバイ方式では143,401時間となる。コールドスタンバイ方式の中継装置の寿命までの稼働時間は、ホットスタンバイ方式の約1.75倍となる。一方、本実施例の中継装置100の寿命までの稼働時間である130,735時間は、ホットスタンバイ方式の82,000時間に対して、約1.59倍となる。かかる稼働時間の計算値は、完全休眠消耗係数k1および給電消耗係数k2の設定次第で変化するが、およその傾向として、本実施例としての中継装置100は、コールドスタンバイ方式に近いレベルで、寿命までの稼働時間を長く確保できることが分かる。つまり、中継装置100は、故障の発生確率が比較的高い初期故障期間や摩耗故障期間で通信の信頼性を確保しつつ、コールドスタンバイ方式に近いコストパフォーマンスの良さを実現することができる。
【0119】
かかる中継装置100の効果は、中継装置100の初期使用時から寿命に至るまでの通信不能率によって評価することも可能である。通信不能率K(%)は、通信不能時間Tnc、中継装置100の初期使用時から寿命に至るまでの全稼働時間Ttを用いて、次式(3)によって算出することができる。
K=Tnc÷Tt・・・(3)
【0120】
通信不能時間Tncは、稼働時間Tnc1〜Tcn3、故障率Kc1〜Kc3、パケットロス時間Tpl1〜Tpl3を用いて、次式(4)によって算出することができる。稼働時間Tnc1〜Tcn3は、運用系に設定された通信モジュールのモジュール消耗時間TC2が初期故障期間、偶発故障期間、摩耗故障期間のそれぞれに属する間の稼働時間である。故障率Kc1〜Kc3は、初期故障期間、偶発故障期間、摩耗故障期間のそれぞれにおいて、運用系状態の通信モジュールが単位時間に故障する確率である。例えば、Tcn1×kc1の値は、初期故障期間における故障の発生回数を表す。パケットロス時間Tpl1〜Tpl3は、初期故障期間、偶発故障期間、摩耗故障期間のそれぞれにおいて、運用系に設定された通信モジュールに故障が発生したときにパケットロスが生じる時間である。パケットロス時間Tpl1〜Tpl3は、運用系に設定された通信モジュールに故障が発生したときから、待機系に設定された通信モジュールが運用系に切り替わり、運用系としての機能を発揮できるまでの時間として捉えることができる。
Tnc=Tnc1×Kc1×Tlc1+Tnc2×Kc2×Tlc2+Tnc3×Kc3×Tlc3・・・(4)
【0121】
ここで、Kc1=0.1、Kc2=0.01、Kc3=0.1とする。また、実施例としての中継装置100について、Tpl1=Tpl3=1秒、Tpl2=60秒、ホットスタンバイ方式の中継装置について、Tpl1=Tpl2=Tpl3=1秒、コールドスタンバイ方式の中継装置について、Tpl1=Tpl2=Tpl3=60秒とする。さらに、図30〜32に示した各中継装置の故障期間を稼働時間Tnc1〜Tcn3として採用すると、中継装置100についての通信不能率Kは約0.014%、ホットスタンバイ方式の通信不能率Kは約0.001%、コールドスタンバイ方式の通信不能率Kは、約0.057%となる。コールドスタンバイ方式の通信不能率Kは、ホットスタンバイ方式の通信不能率Kの約57倍である。一方、中継装置100の通信不能率Kは、ホットスタンバイ方式の通信不能率Kの約14倍である。つまり、中継装置100は、コールドスタンバイ方式に近いコストパフォーマンスの良さを実現することができる一方で、ホットスタンバイ方式に近い通信の信頼性を実現することができる。
【0122】
B.第2実施例:
本発明の通信システムの第2実施例としての中継装置100bについて説明する。以下では、中継装置100bの構成要素の各々は、対応する第1実施例としての中継装置100の構成要素に付した符号の末尾に「b」を付して、呼ぶこととする。中継装置100bが中継装置100と異なる点は、運用系として設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bが偶発故障期間に属する期間において、待機系として設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bの動作状態を、部分休眠状態に制御する点である。その他の点については、中継装置100bは、中継装置100と同一の構成を有している。以下、中継装置100bについて、中継装置100と異なる点についてのみ説明する。
【0123】
部分休眠状態とは、部分的に部品動作を停止すること、または、性能を落として動作させることである。部分休眠状態は、通信モジュール300b,400bの一部の部品のみに給電すること、または、部品の一部分のみに給電すること、通信モジュール300b,400bの動作を部分的に制限することなどとすることができる。具体的には、例えば、CPU310,CPU410がマルチコアプロセッサである場合に、使用するコア数を少なくして、未使用のコアの給電を止めることとすることができる。あるいは、CPU310,CPU410のクロック数を定格性能よりも落とすこととすることができる。かかる部分休眠状態では、単位時間あたりの部品の消耗は、給電状態よりも小さくなるが、完全休眠状態よりも大きくなる。その反面、運用系が故障した場合に、待機系が運用系に切り替わり、運用系として動作するまでに要する時間は、給電状態よりも長くなるが、完全休眠状態よりも短くなる。
【0124】
部品毎コンフィグレーション情報テーブル260bの具体例を図33に示す。図示するように、部品毎コンフィグレーション情報テーブル260bは、第1実施例(図5)の完全休眠消耗係数k1に代えて、部分休眠消耗係数k3を記録可能に構成されている。部分休眠消耗係数k3は、部分休眠状態における単位時間あたりの部品の消耗の程度を表す係数である。本実施例では、部分休眠消耗係数k3は、CPU310b,410bに対して値0.5が、通信インタフェース320b,420bに対して値0.3が設定されている。このように、部分休眠消耗係数k3は、第1実施例の完全休眠消耗係数k1よりも大きく、給電消耗係数k2よりも小さい値で設定される。
【0125】
部品管理情報テーブル330bの具体例を図34に示す。図示するように、部品管理情報テーブル330bは、第1実施例(図6)の完全休眠時間T1に代えて、部分休眠時間T3を記録可能に構成されている。部分休眠時間T3は、CPU310bおよび通信インタフェース320bの各々についての、部分休眠状態での延べ経過時間を表す。部品管理情報テーブル330bでは、部品消耗時間TC1は、次式(5)によって算出される。
TC1n=k3n×T3n+k2n×T2n・・・(5)
【0126】
図示は省略するが、部品管理情報テーブル430bは、部品管理情報テーブル330bと同一の構成を備えている。部品毎コンフィグレーション情報テーブル260bでは、通信モジュール300,400を構成する部品ごとに部分休眠消耗係数k3を設定可能であるので、部品管理情報テーブル330b,430bでは、部品ごとに部品消耗時間TC1を算出することができる。このため、部分休眠状態を、部品ごとの動作状態が異なるように設定した場合であっても、部品消耗時間TC1に基づいて、モジュール消耗時間TC2を精度良く算出することができる。
【0127】
消耗度監視部220b、切替制御部230bおよび待機系制御部240bの処理は、基本的には、第1実施例(図9〜11)と同じである。図9〜図11に示したフローチャートは、完全休眠時間T1を部分休眠時間T3に、完全休眠消耗係数k1を部分休眠消耗係数k3に、完全休眠中を部分休眠中に、それぞれ読み替えることで、中継装置100bに適用することができる。
【0128】
かかる中継装置100bについて、通信モジュール300b,400bの動作状態と運用状態との推移を図35に示す。図35は、第1実施例の図30に対応する図である。図35の期間T21〜T24は、図30の期間T11〜T14に対応している。図35が図30と異なる点は、運用系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bが偶発故障期間に属する期間T22,T23において、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bが、部分休眠状態に制御される点である。
【0129】
部分休眠状態では、第1実施例の完全休眠状態よりも部品の単位時間あたりの消耗の程度が大きいので、稼働時間に対するモジュール消耗時間TC2の傾きは、第1実施例よりも大きくなっている。そのため、第1実施例の中継装置100が、稼働時間130,735時間に達した時点で寿命を迎えたのに対して、中継装置100bは、稼働時間が95,500時間に達した時点で、寿命を迎えることとなる。一方、中継装置100bによれば、期間T22,T23においては、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bは、部分休眠状態にあるので、完全休眠状態である場合と比べて、運用系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bの故障時に、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bのすべての部品への給電および起動に要する時間を短くすることができる。つまり、偶発故障期間における通信の信頼性を向上させることができる。
【0130】
かかる中継装置100bについて、Tpl2=30秒として、上述した式(3),(4)を用いて通信不能率Kを算出すると、通信不能率Kは約0.007%となる。つまり、中継装置100bの通信不能率Kは、ホットスタンバイ方式の通信不能率Kである約0.001%の約7倍となり、第1実施例と比べて、通信の信頼性を2倍に向上させることができる。
【0131】
以上の説明からも明らかなように、偶発故障期間において、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bの動作状態は、完全休眠状態に限られるものではない。待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bの動作状態は、すべての部品に給電を行う給電状態と比べて、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bの消耗の程度が小さく、かつ、待機系が運用系に切り替えられた際に運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態であればよい。かかる動作状態は、冗長化構成の1系列全体の電力消費量、給電する部品の数、および、動作制限の数の少なくとも1つが、給電状態よりも小さい動作状態として適宜設定することができる。あるいは、冗長化構成の少なくとも1つの動作が、給電状態よりも限定された動作状態として適宜設定することができる。
【0132】
C.変形例:
上述の実施例の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
運用系と待機系との切り替えタイミングは、上述の例に限るものではなく、待機系に設定された通信モジュール300bまたは通信モジュール400bが、完全休眠状態や部分休眠状態で制御される期間において、少なくとも1回切り替えるものであればよい。こうすれば、運用系に設定された通信モジュール300または通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2が摩耗故障閾値TH2を超えて、運用系のまま使用されることを抑制することができる。その結果、中継装置100の長寿命化を図ることができる。
【0133】
変形例としての運用系と待機系との切り替えタイミングを図36に示す。図示する例では、運用系と待機系とは、モジュール消耗時間TC2が偶発故障期間に属する期間の間に、3回の切り替え(図示する2回目〜4回目の切り替え)を行っている。このように切り替え回数を増加させれば、通信モジュール300,400の両方のモジュール消耗時間TC2が摩耗故障閾値TH2に達した際の、両者のモジュール消耗時間TC2の差が小さくなるので、中継装置100の寿命期間を長くすることができる。図36の例では、第1実施例(図30)と比べて、寿命期間が64時間長くなっている。
【0134】
C−2.変形例2:
上述の実施形態においては、運用系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態は、故障期間に応じて、2つの異なる動作状態間で変化させる態様について示したが、3つ以上の異なる動作状態間で変化させる態様を採用することもできる。かかる態様の具体例を図37に示す。この例では、偶発故障期間に該当する期間T42〜T44のうちの期間T42、すなわち、モジュール消耗時間TC2が初期故障閾値TH1と、偶発故障初期閾値TH3との間の期間では、待機系に設定された通信モジュール300を部分休眠状態に制御している。また、期間T43,T44では、待機系に設定された通信モジュール300または通信モジュール400を完全休眠状態に制御している。かかる構成は、モジュール消耗時間TC2が初期故障閾値TH1を超える期間であっても、当該期間の当初は、比較的故障率が高いであろうとの考え方に基づいている。このように、待機系をどのような期間にどのような動作状態で制御するかは、各期間における故障の生じやすさを考慮して、適宜設定すればよい。
【0135】
C−3.変形例3:
上述の実施形態においては、運用系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400のモジュール消耗時間TC2が偶発故障期間に属する期間と、その他の期間とで、待機系として設定されている通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態を変化させる態様について示したが、動作状態を変化させる期間は、上述の例に限るものではない。例えば、初期故障期間と、その他の期間との間で、あるいは、摩耗雇用期間と、その他の期間との間で、動作状態を変化させてもよい。当該期間は、通信モジュール300,400の故障の生じやすい期間を調査して、適宜設定してもよい。
【0136】
C−4.変形例4:
上述の実施形態においては、完全休眠消耗係数k1、給電消耗係数k2および部分休眠消耗係数k3は、全期間を通じて一定の値としたが、所定の期間ごとに使用する係数を変える構成としてもよい。部品の消耗の進行速度が常に一定とは限らないからである。また、中継装置100がサーミスタなどの温度検出手段を備える場合には、検出温度に応じて、係数を補正する構成としてもよい。例えば、検出温度が所定の閾値を超える高温となる場合には、部品の消耗度が大きくなると予想されるので、係数を通常時よりも大きな値に補正してもよい。これらの構成によれば、モジュール消耗時間TC2、すなわち、通信モジュール300,400の消耗度をより精度よく算出することができる。
【0137】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、モジュール消耗時間TC2に基づいて定まる期間に基づいて、待機系として設定された通信モジュール300または通信モジュール400の動作状態を変化させる構成としたが、当該期間は、かかる構成に限られるものではない。例えば、単に、中継装置100の稼働時間(経過時間)に基づいて、待機系の動作状態を変化させてもよい。かかる場合、事前に、中継装置100の稼働時間とモジュール消耗時間TC2との関係をシミュレーションしておき、初期故障閾値TH1や摩耗故障閾値TH2に対応する中継装置100の稼働時間が経過したタイミングで、待機系の動作状態を変化させてもよい。
【0138】
C−6.変形例6:
上述した冗長化構成の制御は、1つの装置内の冗長構成に限らず、装置単位での冗長構成にも適用することができる。例えば、冗長化構成として、2つの中継装置を備えた通信システムについても適用することができる。かかる場合、例えば、中継装置の各々が、制御モジュール200に相当するモジュールを備え、自機について監視しているモジュール消耗時間TC2を相互に通知する構成とすれば、中継装置の各々は、モジュール消耗時間TC2に基づくタイミングで、運用系と待機系との切り替えを行うことができる。待機系に設定された中継装置は、自機が監視するモジュール消耗時間TC2に基づいて、自機の待機系としての動作状態を判断すればよい。
【0139】
C−7.変形例7:
上述の実施形態においては、2系列に冗長化された冗長化構成について示したが、冗長化構成は3系列以上であってもよい。その場合には、各系列に、次回、自系列の次に運用系に切り替えられる系列を設定しておいてもよい。こうすれば、所定の規則に従った順序で、各系列を均等に運用系として設定することができる。
【0140】
C−8.変形例8:
上述の実施形態においては、冗長化構成を備える通信システムとして、中継装置によって構成されるシステムを例示したが、冗長化構成は、中継装置に係るものに限らず、通信インタフェースおよび当該通信インタフェースの動作を制御する制御部の少なくとも一方について冗長化構成を備えた通信装置に係るものであればよい。
【0141】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、上述した各適用例の構成要素に対応する実施例中の要素は、本願の課題の少なくとも一部を解決可能な態様、または、上述した各効果の少なくとも一部を奏する態様において、適宜、組み合わせ、省略、上位概念化を行うことが可能である。また、本発明は、通信システムとしての構成のほか、通信システムに用いるプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体、冗長化構成の制御方法等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0142】
20a…通信装置
30a…制御モジュール
40a,50a…通信モジュール
100…中継装置
200…制御モジュール
210…ユーザインタフェース部
220…消耗度監視部
230…切替制御部
240…待機系制御部
250…通信モジュールコンフィグレーション情報テーブル
260,260b…部品毎コンフィグレーション情報テーブル
270…モジュール管理情報テーブル
300…通信モジュール
310,310b…CPU
311…回線制御部
312…転送制御部
320,320b…通信インタフェース
330,330b…部品管理情報テーブル
400…通信モジュール
410,410b…CPU
420,420b…通信インタフェース
430…部品管理情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムであって、
通信パケットの送受信および中継の少なくとも1つを行う機能の少なくとも一部が、2系列以上に冗長化された冗長化構成を有する通信部と、
前記冗長化構成のうちの1つの系列に設定される運用系と、前記1つの系列以外の系列に設定される待機系とを、所定のタイミングで切り替える切替制御部と、
前記待機系の動作状態を、第1の動作状態と、該第1の動作状態よりも、前記待機系の消耗の程度が小さい動作状態であって、前記待機系が前記運用系に切り替えられた際に該運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態である第2の動作状態とを含む、異なる複数の動作状態間で、期間に応じて変化させる待機系制御部と
を備えた通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の通信システムであって、
前記待機系制御部は、
前記通信システムの初期使用から所定の期間である第1の期間において、前記待機系を前記第1の動作状態に制御し、
前記第1の期間の経過後から所定の期間である第2の期間において、前記待機系を前記第2の動作状態に制御する
通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の通信システムであって、
前記待機系制御部は、
前記通信システムの初期使用から所定の期間が経過した後の期間である第3の期間において、前記待機系を前記第2の動作状態に制御し、
前記第3の期間の経過後の期間である第4の期間において、前記待機系を前記第1の動作状態に制御する
通信システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の通信システムであって、
さらに、前記冗長化構成の各々について、前記運用系および前記待機系の動作状態ごとの経過時間を記録し、該記録した経過時間に基づいて決定される前記冗長化構成の各々の消耗度を監視する消耗度監視部を備え、
前記待機系制御部は、前記期間としての、前記監視する消耗度に基づいて定まる期間である消耗期間に応じて、前記待機系の動作状態を変化させる
通信システム。
【請求項5】
前記消耗度は、前記冗長化構成を構成する複数の部品ごとの消耗の特性の違いを反映して該複数の部品ごとに決定される第1の部品消耗度に基づいて決定される請求項4記載の通信システム。
【請求項6】
前記消耗度は、前記冗長化構成を構成する複数の部品ごとの動作状態の違いを反映して該複数の部品ごとに決定される第2の部品消耗度に基づいて決定される請求項4または請求項5記載の通信システム。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか記載の通信システムであって、
前記冗長化構成の各々は、
前記通信システムに着脱可能なモジュールとして構成され、
自身の冗長化構成についての前記消耗度、または、該消耗度を算出するための算出基礎情報を記憶する記憶部を備え、
前記消耗度監視部は、前記記憶部に記憶された前記消耗度、または、前記算出基礎情報を用いて、前記消耗度の監視を行う
通信システム。
【請求項8】
請求項2に従属する、請求項4ないし請求項7のいずれか記載の通信システムであって、
前記切替制御部は、前記第2の期間において、前記冗長化構成のうちの前記運用系に設定されている冗長化構成について監視される前記消耗度が所定の値に達したときを前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う
通信システム。
【請求項9】
請求項3に従属する、請求項4ないし請求項7のいずれか記載の通信システムであって、
前記切替制御部は、前記第3の期間において、前記冗長化構成のうちの前記運用系に設定されている冗長化構成について監視される前記消耗度が所定の値に達したときを前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う
通信システム。
【請求項10】
前記切替制御部は、前記待機系制御部が前記待機系の動作状態を変化させるタイミングを、前記所定のタイミングとして、前記切り替えを行う請求項1ないし請求項9のいずれか記載の通信システム。
【請求項11】
前記通信システムは、前記冗長化構成を備えた単一の通信装置である請求項1ないし請求項10記載のいずれか記載の通信システム。
【請求項12】
前記通信システムは、前記冗長化構成としての複数の通信装置を備えた請求項1ないし請求項10のいずれか記載の通信システム。
【請求項13】
通信パケットの送受信および中継の少なくとも1つを行う機能の少なくとも一部が、2系列以上に冗長化された冗長化構成を有する通信部を備え、前記冗長化構成のうちの1つの系列を運用系として設定し、前記1つの系列以外の系列を待機系として設定する通信システムにおいて、前記冗長化構成の動作状態を制御する冗長化構成の制御方法であって、
前記待機系の動作状態を、第1の動作状態と、該第1の動作状態よりも、前記待機系の消耗の程度が小さい動作状態であって、前記待機系が前記運用系に切り替えられた際に該運用系としての機能を発揮可能となるまでの時間が長い動作状態である第2の動作状態とを含む、異なる複数の動作状態間で、期間に応じて変化させる
冗長化構成の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate


【公開番号】特開2013−11929(P2013−11929A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142580(P2011−142580)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(504411166)アラクサラネットワークス株式会社 (315)
【Fターム(参考)】