説明

通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法

【課題】緊急速報を利用することで、災害の影響を抑止する。
【解決手段】通信装置Aでは、災害の状況を特定する災害シナリオ、および災害が発生した際に通信装置Bがデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報が、格納部120に予め関連付けられて格納されており、緊急速報受信部110が災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信し、抽出部130が当該緊急速報に基づいて災害シナリオを特定し且つ当該特定した災害シナリオに関連付けられた挙動情報を格納部120より抽出し、送信部140が当該抽出した挙動情報を通信装置Bに送信する。通信装置Bでは、挙動情報受信部150が当該挙動情報を通信装置Aより受信し、データ伝送制御部160が当該挙動情報に基づいて当該通信装置Bのデータ伝送を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音声のIP化等、重要通信のIP化により、IP network(以下、IPNW)の信頼性向上および高品質化が求められており、特に障害や輻輳時の対応に関する機能強化が行われている。
【0003】
図8は、IPNW上で発生した障害に対する対策として従来から行われている方法を示している。図8(a)の例えばルータRT#2とルータRT#3で示されるように、各通信装置間では監視パケットのやり取りによる監視を行っている。この監視を例えばより短い周期で行うことにより、障害発生を可能な限り早く検知し、検知後には可能な限り早く経路切替を実施している。図8(b)では、ルータRT#2とルータRT#3との間で発生した障害(図8(a)を参照)を検知した後に、経路をRT#2→RT#3→RT#6からRT#2→RT#4→RT#5→RT#6に変更した一例を示している。なお、障害を早期に検知することを目的とした機能としては、従来からBFD(Bidirectional Forwarding Detection (Draft)、非特許文献1を参照)が知られている。また、経路を早期に切替えることを目的とした機能としては、従来からFRR(Fast Reroute (RFC4090)、非特許文献2を参照)が知られている。
【0004】
図9は、IPNW上で発生した輻輳に対する対策として従来から行われている方法を示している。従来、輻輳時においても重要通信のリソースや品質が確保されるように、事前に決められた基準でQoS(Quality of Service)制御を実施することが知られている。図9(a)は、QoS制御を実施するために事前に決められた基準を示しており、優先伝送対象のパケットとそうでないパケットとを例えば2:1の比率で伝送するように決められた一例を示している。図9(b)は、ルータRT#4で輻輳が発生し、優先:非優先=2:1の比率でQoS制御が実施されていることを示す。つまり、図9(b)において、リソース割当2:1以上のパケット(非優先伝送対象のパケットA)は破棄されている。なお、事前に決められた一定の基準にしたがってQoS制御を行う技術として、従来からDiffserv(Differentiated Services (RFC2457)、非特許文献3を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】[平成21年4月2日検索]、インターネット<URL:http://tools.ietf.org/html/draft-ietf-bfd-v4v6-1hop-09>
【非特許文献2】[平成21年4月2日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc4090.txt>
【非特許文献3】[平成21年4月2日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc2475.txt>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図8に示した従来の方法には以下のような問題点がある。すなわち、動作を高速に行うことはマシンパワー依存であり、検知時間や切替時間を短縮化することには限界がある。また、マシンパワーや特定機能を要するため、実現するには高性能の機器が必要になる。更に、機器の性能をいくら高性能にしても、負荷上昇による処理能力低下の可能性は常に存在する。時代の変遷や技術の発達により、通信量は年々増え続ける傾向にあるからである。更にまた、図8に示した従来の方法では、障害発生後に、更にその障害の検知後に切替動作を開始することが前提となるため、既に発生している障害の影響を完全に無くすことは最初から不可能である。
【0007】
また、図9に示した従来の方法においては、QoS制御の態様(例えば上述した優先:非優先=2:1の比率等)を状況によって最適に切替えることが好ましい。しかしながら、一般的にQoS制御態様の設計は固定設定となっているため、状況に応じた最適なQoS制御ができないといった問題点がある。仮に、QoS設定を複数に設定できたとしても、ルータ等の通信装置は通信状況を把握する術を持たないため、状況に応じて複数の制御態様を使い分けることはできない。また、例えば緊急通信のための帯域を必要以上に確保してしまった場合には、設備効率が低下するといった問題点が更に発生する。
【0008】
従来の方法が有する上述の問題点は、特に大災害時に深刻な問題となる。例えば障害と輻輳が同時に発生した場合には想定外の動作を招く可能性があり、例えば経路切替動作が正常に行えない可能性がある。また、想定外の輻輳が発生される可能性があり、通常時の予想に基づいて設計したQoS制御態様とは異なる態様でQoS制御を行うことが必要な場合が生じる可能性がある。例えば、一般的に緊急呼等の重要通信は、通常時から一定量のリソース確保を行って設計しておくが、通常使われないリソースとなるため、確保しておくリソースは少量に抑えてあるのが一般的である。確保するリソースを増加させることにより、設備効率が悪くなるおそれがあるからである。一方、大災害に伴う輻輳発生時は緊急呼が通常時より大幅に増加すると想定されるため、通常時の予想により設計したQoS制御態様とは異なる態様でQoS制御を行うことが必要な場合が生じる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたもので、緊急速報を利用することで、災害の影響を抑止することが可能な通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の通信システムは、互いに通信可能な通信装置および他の通信装置を備える通信システムであって、前記通信装置は、災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に前記他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報を予め関連付けて格納する格納手段と、前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信手段と、前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信手段と、を備え、前記他の通信装置は、前記送信手段より送信された当該挙動情報を受信する挙動情報受信手段と、前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該他の通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の通信装置は、災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報を予め関連付けて格納する格納手段と、前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信手段と、前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このとき、通信装置は、前記他の通信装置より送信された挙動情報を受信する挙動情報受信手段と、前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御手段と、を更に備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明のデータ伝送制御方法は、互いに通信可能な通信装置および他の通信装置を備える通信システムにおけるデータ伝送制御方法であって、前記通信装置の格納手段には、災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に前記他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報が予め関連付けられて格納されており、前記通信装置の緊急速報受信手段が、前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信ステップと、前記通信装置の抽出手段が、前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出ステップと、前記通信装置の送信手段が、前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信ステップと、前記他の通信装置の挙動情報受信手段が、前記送信手段より送信された当該挙動情報を受信する挙動情報受信ステップと、前記他の通信装置の第1のデータ伝送制御手段が、前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該他の通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
このような本発明の通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法によれば、最初に、緊急速報が外部の通報手段より受信される。この緊急速報は、災害を予告する旨の情報であるため、実際に災害が発生する前の段階における情報である。なお、例えば日本の気象庁はこの緊急速報を公衆に提供している(例えば、
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を参照)。次に、この緊急速報から挙動情報が抽出されると、他の通信装置は当該抽出された挙動情報に基づいてデータ伝送を制御する。この挙動情報は災害が発生した際に当該他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す情報であるため、他の通信装置は災害時におけるデータ伝送をこの挙動情報に基づいて適切に行うことができる。
【0015】
以上で説明したように、他の通信装置は緊急速報から導かれた挙動情報に基づいてデータ伝送を制御する。この緊急速報は、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、他の通信装置は災害発生前に当該災害に対する対応が可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができる。更に、例えば災害に対する対応が災害発生前にまたは災害による障害や輻輳の発生前に終了した場合には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0016】
また、上述したような効果を得るために、本発明では、マシンパワーや特定機能を必要としない。このため、通信装置や他の通信装置が高性能の機器でなくても、上記の効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明の通信システムにおいて、前記通信装置の前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、前記通信装置は、前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御手段を更に備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の通信装置において、前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御手段を更に備えることが好ましい。
【0019】
また、本発明のデータ伝送制御方法において、前記通信装置の前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、前記通信装置の第2のデータ伝送制御手段が、前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御ステップを更に備えることが好ましい。
【0020】
このような本発明の通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法によれば、通信装置は緊急速報から導かれた挙動情報に基づいて自装置のデータ伝送を制御する。この緊急速報は、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、通信装置は災害発生前に当該災害に対する対応が可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができる。更に、例えば災害に対する対応が災害発生前にまたは災害による障害や輻輳の発生前に終了した場合には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0021】
また、上述したような効果を得るために、本発明では、マシンパワーや特定機能を必要としない。このため、通信装置が高性能の機器でなくても、上記の効果を得ることができる。
【0022】
また、本発明において、前記挙動情報は、前記他の通信装置がデータ伝送を行う際の経路を切替える旨の情報であり、前記第1のデータ伝送制御手段は、前記挙動情報に基づき、前記経路を切替えることが好ましい。
【0023】
このように、挙動情報が経路を切替える旨の情報である場合には、他の通信装置は災害発生前に経路を切替えることが可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0024】
また、本発明において、前記挙動情報は、前記他の通信装置または前記通信装置がデータ伝送を行う際のQoS設定を切替える旨の情報であり、前記第1のデータ伝送制御手段または前記第2のデータ伝送制御手段は、前記挙動情報に基づき、前記QoS設定を切替えることが好ましい。
【0025】
このように、挙動情報がQoS設定を切替える旨の情報である場合には、他の通信装置または通信装置は災害発生前にQoS設定を切替えることが可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、緊急速報を利用することで、災害の影響を抑止することが可能な通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】通信システム1の構成概要図である。
【図2】通信装置10のハードウェア構成図である。
【図3】通信装置10の構成概要図である。
【図4】通信装置10の機能を具体的に説明するための図である。
【図5】抽出部130の機能を具体的に説明するためのフローチャートである。
【図6】地震発生により通信装置Aに障害が発生する場合に、通信システム1で行われる動作を示す図である。
【図7】地震発生により輻輳が発生する場合に、通信システム1で行われる動作を示す図である。
【図8】IPNW上で発生した障害に対する対策として従来から行われている方法を示す図である。
【図9】IPNW上で発生した輻輳に対する対策として従来から行われている方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明にかかる通信システム、通信装置、およびデータ伝送制御方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
(通信システム1の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る通信システム1の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、通信システム1の構成概要図である。図1に示すように、通信システム1は、複数のルータRT#1,RT#4,RT#6等と、複数の通信装置A,B,C等により構成され、複数のルータや通信装置のそれぞれは通信ネットワーク20を介して例えば隣接するもの同士で互いに通信可能に接続されている。以下では、複数の通信装置A,B,Cを総称して「通信装置10」と記載する。なお、複数の通信装置A,B,Cそれぞれは特許請求範囲における通信装置または他の通信装置の一例であり、基本的にはルータで構成することができる。ただし、本実施形態では、説明の便宜上、複数のルータRT#1,RT#4,RT#6等と異なる名称を与えることとする。また、図示はないが、通信システム1は図1に示した複数のルータや通信装置以外の別の通信装置を更に備えていてもよい。
【0030】
(通信装置10の構成)
以下、通信システム1を構成する通信装置10について詳細に説明する。図2は通信装置10のハードウェア構成図である。図2に示すように、通信装置10は、物理的には、CPU11、ROM12及びRAM13等の主記憶装置、キーボード及びマウス等の入力デバイス14、ディスプレイ等の出力デバイス15、ルータや他の通信装置との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュール16、ハードディスク等の補助記憶装置17などを含む通常のコンピュータシステム(例えばルータ等)として構成される。後述する通信装置10の各機能は、CPU11、ROM12、RAM13等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU11の制御の元で入力デバイス14、出力デバイス15、通信モジュール16を動作させると共に、主記憶装置12,13や補助記憶装置17におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0031】
図3は、通信装置10の構成概要図である。図3に示すように、通信装置10は、機能的には、緊急速報受信部110(緊急速報受信手段)、格納部120(格納手段)、抽出部130(抽出手段)、送信部140(送信手段)、挙動情報受信部150(挙動情報受信手段)、およびデータ伝送制御部160(第1のデータ伝送制御手段、第2のデータ伝送制御手段)を備える。前述したように通信装置10は図1の通信装置A,B,Cの総称であり、図3に示す通信装置10の機能構成は図1に示した通信装置A,B,Cにおいて共通である。ただし、以下では、説明の便宜上、図3に示す通信装置10が図1に示す通信装置Aであることを仮定した上で記載する。また、以下の説明において、図1に示す通信装置Aは特許請求範囲における通信装置に相当し、通信装置Aと隣接する通信装置B,Cは特許請求範囲における他の通信装置に相当するものとする。
【0032】
緊急速報受信部110は、災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信するものである。外部の通報手段は、例えば日本の気象庁等が挙げられる。http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/index.htmlを参照すると分かるように、日本の気象庁は例えば緊急地震速報等の緊急速報を一般公衆に提供している。緊急速報受信部110は、例えば上記のウェブページからの緊急速報をリアルタイムで受信できるように、常に受信可能な状態でスタンバイしている。このような緊急速報受信部110は、例えば図2の通信モジュール16より構成することができる。緊急速報受信部110は、外部の通報手段より受信した緊急速報を抽出部130に出力する。
【0033】
ここで、緊急速報の内容について詳細に説明する。本実施形態における緊急速報の一種として、例えば高度利用者向けの緊急地震速報には、地震の発生時刻、地震の発生場所(震源)の推定値、および地震の規模(マグニチュード)の推定値が含まれる。更に、例えば、推定される最大震度が震度3以下のときは、推定される揺れの大きさの最大値(推定最大震度)が含まれていてもよい。また、例えば、推定される最大震度が震度4以上のときは、地域名に加えて、震度5弱以上と推定される地域の揺れの大きさ(震度)の推定値(予測震度)、およびその地域への大きな揺れ(主要動)の到達時刻の推定値(主要動到達予測時刻)が含まれていてもよい。
【0034】
また、緊急速報の一種として例えば一般利用者向けの緊急地震速報には、地震の発生時刻、発生場所(震源)の推定値、地震発生場所の震央地名が含まれる。更に、強い揺れ(震度5弱以上)が推定される地域、および震度4が推定される地域名が含まれていてもよい。なお、地域名としては、例えば日本全国を約200地域に分割した場合の地域名を用いることができる。
【0035】
格納部120は、災害シナリオ(災害状況特定情報)、および挙動情報を予め関連付けて格納するものである。災害シナリオは災害の状況を特定する情報であり、上記の緊急速報に基づいて特定されるものである。挙動情報は、通信装置10(すなわち図1の通信装置A)に災害が発生した際に、自装置10(すなわち図1の通信装置A)および他の通信装置(すなわち図1の通信装置B,C等)がデータ伝送において行うべき挙動を示す情報である。これら災害シナリオおよび挙動情報については後ほど詳細に説明する。
【0036】
抽出部130は、緊急速報受信部110より入力された緊急速報に基づいて、格納部120に格納されている災害シナリオを特定し、且つ当該特定した災害シナリオに関連付けられている挙動情報を格納部120より抽出するものである。抽出部130は、当該抽出した挙動情報を送信部140に出力する。
【0037】
送信部140は、抽出部130より入力した挙動情報を例えば通信装置B,C等の他の通信装置に送信するものである。また、送信部140は、自装置である通信装置10の挙動情報受信部150に当該挙動情報を出力する。このような送信部140は、例えば図2の通信モジュール16より構成することができる。
【0038】
図4および図5は、以上で説明した緊急速報受信部110、格納部120、抽出部130、および送信部140をより具体的に説明するための図である。説明の便宜上、図4(a)に示すように、通信装置Aが位置するエリア#1を直接影響エリアといい、エリア#1の周辺エリアであるエリア#2を間接影響エリアという。直接影響エリアは、当該エリアで例えば地震等の災害が発生した場合に、当該エリアに存在する通信装置Aが機能停止等の直接影響を受けるエリアである。間接影響エリアは、当該エリアで例えば地震等の災害が発生した場合に、通信装置Aに直接影響はないが、例えば輻輳が発生する等、通信装置Aが間接的に影響を受けるエリアである。
【0039】
図4(b)は、外部の通報手段より受信された緊急速報の一例を示す。この緊急速報には、エリア情報と震度情報が含まれている。図4(b)の一例では、災害の一例として地震が発生した場合に、当該地震が発生したエリアを示すエリア情報として「エリア#1」と記載されており、当該エリアでの震度を示す震度情報として「震度5」と記載されている。
【0040】
図4(c)は、格納部120に格納されている災害シナリオの一例を示す。図4(c)の一例では、格納部120には、例えば4つの災害シナリオが予め設定されている。災害シナリオ1は直接影響エリアで震度5未満の地震が発生した場合であり、災害シナリオ2は直接影響エリアで震度5以上の地震が発生した場合であり、災害シナリオ3は間接影響エリアで震度5未満の地震が発生した場合であり、災害シナリオ4は間接影響エリアで震度5以上の地震が発生した場合である。
【0041】
図4(d)は、格納部120に、災害シナリオと挙動情報とが予め関連付けられて格納されている様子を示す。本実施形態においては、経路切替情報およびQoS設定切替情報を挙動情報として用いている。経路切替情報は経路を切替させる旨の情報である。例えば、通信装置Aが位置するエリア#1で災害が発生したことにより通信装置Aに障害が発生すると予測される場合に、経路切替情報は、通信装置B,C等の他の通信装置が通信装置Aを経由しないでデータ伝送を行うように、経路を切替させる旨の情報である。また、QoS設定切替情報はQoS設定を切替させる旨の情報である。例えば、通信装置Aが位置するエリア#1で災害が発生したことにより通信装置Aと通信装置B,C等との間で輻輳が発生すると予測される場合に、QoS設定切替情報は、通信装置B,C等の他の通信装置および通信装置AがQoS設定を切替えてからデータ伝送を行うようにさせる旨の情報である。
【0042】
図4(d)の一例では、各災害シナリオ1〜4にそれぞれ経路切替情報が関連付けられている。すなわち、災害シナリオ1,3,4には、経路を切替させる必要が無い旨の「不要」が経路切替情報として関連付けられている。これは、例えば、災害シナリオ1,3,4では、災害は発生したが、この災害により通信装置Aに障害は発生しないと予測されるため、他の通信装置に経路を切替させる必要までは無いことを意味する。一方、災害シナリオ2には、経路を切替させる必要が有る旨の「要」が経路切替情報として関連付けられている。これは、例えば、災害シナリオ2では、災害は発生し、この災害により通信装置Aに障害が発生すると予測されるため、他の通信装置に経路を切替させる必要が有ることを意味する。
【0043】
また、図4(d)の一例では、各災害シナリオ1〜4にそれぞれQoS設定切替情報が関連付けられている。すなわち、災害シナリオ3には、QoS設定を切替させる必要が無い旨の「不要」がQoS設定切替情報として関連付けられている。一方、災害シナリオ1,2,4には、QoS設定を切替させる必要が有る旨の「要」がQoS設定切替情報として関連付けられている。なお、本実施形態では、QoS設定を切替させる必要が有る場合には、何れの設定にQoS設定を切替えるかについての情報(以下、「QoS設定特定情報」という。)がQoS設定切替情報に含まれている。つまり、例えば通常時のQoS設定が「設定0」である場合に、災害シナリオ1,4に関連付けられたQoS設定切替情報にはQoS設定を「設定2」に切替える旨のQoS設定特定情報が含まれており、災害シナリオ2に関連付けられたQoS設定切替情報にはQoS設定を「設定1」に切替える旨のQoS設定特定情報が含まれている。
【0044】
なお、「設定0」は、例えば、緊急通信のための帯域を高優先度帯域として10%必ず確保し、当該10%以外の帯域を8:2=中優先度帯域:低優先度帯域の比率で振り分けるとの設定である。また、「設定1」は、例えば、緊急通信のための帯域を高優先度帯域として30%必ず確保し、当該30%以外の帯域を8:2=中優先度帯域:低優先度帯域の比率で振り分けるとの設定である。また、「設定2」は、例えば、緊急通信のための帯域を高優先度帯域として50%必ず確保し、当該50%以外の帯域を8:2=中優先度帯域:低優先度帯域の比率で振り分けるとの設定である。
【0045】
図5は、抽出部130の動作を示すためのフローチャートである。図5に示すように、抽出部130は、最初に、緊急速報受信部110より、例えば図4(b)に示したような緊急速報を受信する(ステップS1、緊急速報受信ステップ)。
【0046】
次に、抽出部130は、当該緊急速報よりエリアおよび震度について判断する。ステップS1にて例えば図4(b)に示したような緊急速報を受信した場合に、抽出部130はエリア#1で震度5の地震が発生したことを判断する(ステップS2,S3)。
【0047】
次に、抽出部130は、ステップS2,S3における判断結果に基づいて、例えば図4(c)に示したような災害シナリオのうち何れかを特定する。エリア#1で震度5の地震が発生したことをステップS2,S3にて判断した場合に、抽出部130は災害シナリオ2を特定する(ステップS4、抽出ステップ)。
【0048】
次に、抽出部130は、ステップS4にて特定した災害シナリオに関連付けられた挙動情報を格納部120より抽出する。災害シナリオと挙動情報とが図4(d)に示したように関連付けられており、且つステップS4にて災害シナリオ2が特定された場合に、抽出部130は、経路切替情報として「要」、およびQoS設定切替情報として「要(設定1に切替)」を抽出する。抽出部130は、当該抽出した挙動情報を送信部140に出力する(ステップS5、抽出ステップ)。
【0049】
次に、送信部140が、抽出部130より入力した挙動情報を例えば通信装置B,C等の他の通信装置に(または自装置の通信装置Aの挙動情報受信部150に)送信する(ステップS6、送信ステップ)。
【0050】
以上まで、緊急速報受信部110、格納部120、抽出部130、送信部140について説明した。これらの機能要素は、主に、外部の通報手段より受信した緊急速報に基づいて挙動情報を抽出し、当該挙動情報を他の通信装置に送信するためのものである。以下では、逆に、他の通信装置より挙動情報を受信し、当該挙動情報に基づいてデータ伝送を制御するための機能要素について説明する。
【0051】
図3に戻り、挙動情報受信部150は、他の通信装置の送信部より送信された挙動情報を受信するものである。挙動情報受信部150は、他の通信装置の送信部からの挙動情報をリアルタイムで受信できるように、常に受信可能な状態でスタンバイしていてもよい。このような挙動情報受信部150は、例えば図2の通信モジュール16より構成することができる。挙動情報受信部150は当該受信した挙動情報をデータ伝送制御部160に出力する。
【0052】
データ伝送制御部160は、挙動情報受信部150より入力された挙動情報に基づき、通信装置10のデータ伝送態様を制御するものである。データ伝送制御部160は、挙動情報としての経路切替情報に基づいて経路を切替えた上でデータ伝送を行う。また、データ伝送制御部160は、挙動情報としてのQoS設定切替情報に基づいてQoS設定を切替えた上でデータ伝送を行う。
【0053】
以上より、他の通信装置より挙動情報を受信して自装置のデータ伝送の態様を制御することについて説明したが、図3に示す挙動情報受信部150が自装置の送信部140より挙動情報を入力した場合には、挙動情報受信部150は当該挙動情報を自装置のデータ伝送制御部160出力し、データ伝送制御部160は当該挙動情報に基づいて自装置である通信装置Aのデータ伝送の態様を制御する。
【0054】
通信装置10に関する以上の説明は、前述した通り、図3の通信装置10が図1の通信装置Aであることを仮定した上での説明であるが、図1の通信装置B,Cは通信装置Aと同様の機能構成を有しており、通信装置10に関する以上の説明に基づいて用意に理解することができる。
【0055】
(通信システム1の動作)
続いて、通信システム1により行われる動作(データ伝送制御方法)について、図6および図7を参照しながら説明する。
【0056】
(通信システム1の動作、その1)
図6は、通信システム1が複数のルータRT#1,RT#4,RT#5,RT#6と、複数の通信装置A,Bにより構成されており、通信装置Aの位置するエリア#1で地震が発生したことにより通信装置Aにおいて障害が発生すると予測される場合に、通信システム1で行われえる動作を示す図である。なお、説明の便宜上、図6に示される動作は前述の図4に示した状況下で行われる動作であることを仮定する。また、図6を参照した以下の説明において、通信装置Aは特許請求範囲における通信装置に相当し、通信装置Bは特許請求範囲における他の通信装置に相当する。
【0057】
最初に、前述のステップS1〜ステップS5までの手順が通信装置A側において実行される。なお、ステップS5において、通信装置Aの抽出部130は、挙動情報として経路切替情報を抽出し、当該経路切替情報は経路を切替える必要が有る旨の「要」である(図4(d)において災害シナリオ2に関連付けられた経路切替情報を参照)。
【0058】
次に、通信装置Aの送信部140が、通信装置Aの抽出部130より入力した経路切替情報を通信装置Bの挙動情報受信部150に送信する(ステップS11、送信ステップ)。
【0059】
次に、通信装置Bの挙動情報受信部150が通信装置Aの送信部140より送信された経路切替情報を受信すると(挙動情報受信ステップ)、通信装置Bのデータ伝送制御部160が当該経路切替情報に基づき、通信装置Bのデータ伝送態様を制御する(第1のデータ伝送制御ステップ)。
【0060】
具体的に、通信装置Bのデータ伝送制御部160は、経路切替情報を受信したことをきっかけで、今後の経路を計算し(ステップS12)、当該計算した新経路への変更を開始し(ステップS13)、当該経路変更を完了する(ステップS14)。一例として、通信装置Bのデータ伝送制御部160は、目標地点がルータRT#6の場合の経路を、図6の上段に図示するように、「通信装置B→通信装置A→ルータRT#6」から「通信装置B→ルータRT#4→ルータRT#5→ルータRT#6」に変更することができる。
【0061】
以上により、災害の一例として地震が発生したことにより通信装置Aにおいて障害が発生すると予測される場合に、通信システム1で行われえる動作について説明した。以上の説明のように、通信装置Bは緊急速報から導かれた経路切替情報に基づいてデータ伝送を制御する。この緊急速報は、災害を予告する旨の情報であり、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、通信装置Bは災害発生前に当該災害に対する対応を行える。図6では、線路切替が完了した時点を時点T1で表しており、実際に災害が発生し通信装置Aに障害が発生した時点を時点T2で表している。図6に示すように、線路切替の完了が実際の障害発生より先に行われることができる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0062】
(通信システム1の動作、その2)
図7は、通信システム1が複数のルータRT#1,RT#4,RT#6と、複数の通信装置A,B,Cにより構成されており、通信装置Aが位置するエリア#1で災害が発生したことにより通信装置Aと通信装置B,C等との間で輻輳が発生すると予測される場合に、通信システム1で行われえる動作を示す図である。なお、説明の便宜上、図7に示される動作は前述の図4に示した状況下で行われる動作であることを仮定する。また、図7を参照した以下の説明において、通信装置Aは特許請求範囲における通信装置に相当し、通信装置B,Cは特許請求範囲における他の通信装置に相当する。
【0063】
最初に、前述のステップS1〜ステップS5までの手順が通信装置A側において実行される。なお、ステップS5において、通信装置Aの抽出部130は、挙動情報としてQoS設定切替情報を抽出し、当該QoS設定切替情報はQoS設定を切替える必要が有る旨の「要」、およびQoS設定を「設定0」から「設定1」に変更する旨の「設定1に切替」である(図4(d)において災害シナリオ2に関連付けられたQoS設定切替情報を参照)。
【0064】
次に、通信装置Aの送信部140が、通信装置Aの抽出部130より入力したQoS設定切替情報を自装置である通信装置Aのデータ伝送制御部160に挙動情報受信部150を介して出力すると、通信装置Aのデータ伝送制御部160が当該QoS設定切替情報に基づき、自装置である通信装置Aのデータ伝送態様を制御する(ステップS21、第2のデータ伝送制御ステップ)。具体的な一例として、図4に示した状況下での場合に、通信装置Aのデータ伝送制御部160は、通信装置AのQoS設定を「設定0」から「設定1」に変更する。
【0065】
次に、通信装置Aの送信部140が、通信装置Aの抽出部130より入力したQoS設定切替情報を通信装置B,Cの挙動情報受信部150にそれぞれ送信する(ステップS22B,22C、送信ステップ)。
【0066】
次に、通信装置B,Cのそれぞれの挙動情報受信部150が通信装置Aの送信部140より送信されたQoS設定切替情報を受信すると(挙動情報受信ステップ)、通信装置B,Cのそれぞれのデータ伝送制御部160が当該QoS設定切替情報に基づき、通信装置B,Cそれぞれのデータ伝送態様を制御する(第1のデータ伝送制御ステップ)。
【0067】
具体的に、通信装置B,Cそれぞれのデータ伝送制御部160は、QoS設定切替情報を受信したことをきっかけで、現在のQoS設定を確認した上で、QoS設定の変更の要否を判断する(ステップS23B,23C)。当該判断の結果でQoS設定の変更が必要な場合にはQoS設定の変更を開始し(ステップS24B,24C)、当該QoS設定変更を完了する(ステップS25B,25C)。具体的な一例として、図4に示した状況下での場合に、通信装置B,Cそれぞれのデータ伝送制御部160は、通信装置B,CそれぞれにおけるQoS設定を「設定0」から「設定1」に変更する。
【0068】
以上により、通信装置Aが位置するエリア#1で災害が発生したことにより通信装置Aと通信装置B,C等との間で輻輳が発生すると予測される場合に、通信システム1で行われえる動作について説明した。以上の説明のように、通信装置B,Cは緊急速報から導かれたQoS設定切替情報に基づいてデータ伝送を制御する。この緊急速報は、災害を予告する旨の情報であり、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、通信装置B,Cは災害発生前に当該災害に対する対応を行える。図7では、QoS設定切替が完了した時点を時点T3で表しており、実際に災害が発生し輻輳が発生した時点を時点T4で表している。図7に示すように、QoS設定切替の完了が実際の輻輳発生より先に行われることができる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0069】
また、緊急速報を受信した装置である通信装置Aも、当該緊急速報から導かれた挙動情報に基づいて、自装置のデータ伝送を制御する。この緊急速報は、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、通信装置Aは災害発生前に当該災害に対する対応が可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0070】
以上より、地震発生により通信装置Aに障害が発生する場合(通信システム1の動作、その1)と、地震発生により輻輳が発生する場合(通信システム1の動作、その2)についてそれぞれ説明したが、障害および輻輳が重なって発生する場合も考えられる。この場合には、上述したステップS11〜S14の手順、およびステップS21〜S25の手順が共に行われる。
【0071】
(本実施形態の作用および効果)
続いて、本実施形態にかかる通信システム1の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、最初に、緊急速報が外部の通報手段より受信される。この緊急速報は、災害を予告する旨の情報であるため、実際に災害が発生する前の段階における情報である。次に、この緊急速報から挙動情報が抽出されると、他の通信装置B,Cおよび通信装置Aは当該抽出された挙動情報に基づいてデータ伝送を制御する。この挙動情報は災害が発生した際に当該他の通信装置B,Cおよび通信装置Aがデータ伝送において行うべき挙動を示す情報であるため、他の通信装置B,Cおよび通信装置Aは災害時におけるデータ伝送をこの挙動情報に基づいて適切に行うことができる。
【0072】
以上で説明したように、他の通信装置B,Cおよび通信装置Aは緊急速報から導かれた挙動情報に基づいてデータ伝送を制御する。この緊急速報は、実際に災害が発生する前に受信される情報であるため、他の通信装置B,Cおよび通信装置Aは災害発生前に当該災害に対する対応が可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができる。更に、例えば災害に対する対応が災害発生前にまたは災害による障害や輻輳の発生前に終了した場合には、災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0073】
また、このような効果を得るために、本実施形態では、マシンパワーや特定機能を必要としない。このため、通信装置Aや他の通信装置B,Cが高性能の機器でなくても、上記の効果を得ることができる。
【0074】
また、挙動情報が経路を切替える旨の情報である場合には、他の通信装置B,Cは災害発生前に経路を切替えることが可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0075】
また、挙動情報がQoS設定を切替える旨の情報である場合には、他の通信装置B,Cおよび通信装置Aは災害発生前にQoS設定を切替えることが可能となる。その結果、災害の影響を抑止することができ、更には災害の影響をゼロとすることが可能となる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0077】
例えば、図6,7に示した動作において、通信装置Aが自らを動作停止するか否かはネットワークの状況によるものである。例えば、図6,7に示した手順では通信装置Aが自らを動作停止する手順を設けていないが、これは、例えば経路迂回をしても自装置である通信装置Aを通過せざるを得ない通信が発生する可能性があるからである。このような場合に、通信装置Aは、自らを動作停止する代わりに、図7に示したようにQoS設定の変更を行うことで重要通信のリソースを確保することが好ましい。もちろん、ネットワークの状況によっては、通信装置Aを動作停止させてもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、挙動情報を隣接する通信装置に送信しているが、これに限らず、挙動情報を隣接する通信装置以外の通信装置にも送信するようにしてもよい。例えば経路切替情報を限られた一部の通信装置のみが保持し、それらの通信装置だけがルーティング情報を修正すると、ネットワーク全体としてルーティング情報の整合性が取れず、ルーティング障害(例えばループ等)が発生する可能性があるからである。また、特定エリアへの通信増加はそのエリアへ通じる経路上でも輻輳を招く可能性があり、その経路上に存在する通信装置もQoS設定の変更を行うことが好ましい場合があるからである。
【0079】
隣接する通信装置以外の通信装置に挙動情報を送信する方法としては、例えばOSPFの場合にはLSA Update等のルーティングプロトコルの信号を利用して、ネットワーク全体に経路切替情報を自動的に伝播させることが挙げられる。または、ルーティングプロトコル信号とは別途で、経路切替情報やQoS設定切替情報に伝播範囲を表す情報(以下、「伝播範囲情報」という。)を含めて送信する方法がある。例えば、挙動情報の発信先である通信装置Kと通信装置Lとが隣接しており、また通信装置Lと通信装置Mとが隣接しており、また通信装置Mと通信装置Nとが隣接しているとする。なお、上記のK,L,M,Nは説明の便宜上与えた符号であり、図示はしない。この場合に、通信装置Kは例えば「隣接する通信装置3つ目まで挙動情報を伝播する」旨の伝播範囲情報を含めて送信することができる。この結果、挙動情報は、通信装置Kから通信装置Lへ送信され、更に通信装置Lから通信装置Mへ送信され、更に通信装置Mから通信装置Nへ送信される。このように、ルーティングプロトコル信号とは別途で挙動情報に伝播範囲情報を含めて送信する場合には、伝播範囲情報を含む挙動情報とルーティングプロトコル信号との間における整合性を取る必要がある。
【符号の説明】
【0080】
1…通信システム、10…通信装置、110…緊急速報受信部、120…格納部、130…抽出部、140…送信部、150…挙動情報受信部、160…データ伝送制御部、20…通信ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能な通信装置および他の通信装置を備える通信システムであって、
前記通信装置は、
災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に前記他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報を予め関連付けて格納する格納手段と、
前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信手段と、
前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信手段と、
を備え、
前記他の通信装置は、
前記送信手段より送信された当該挙動情報を受信する挙動情報受信手段と、
前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該他の通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御手段と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信装置の前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、
前記通信装置は、
前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記挙動情報は、前記他の通信装置がデータ伝送を行う際の経路を切替える旨の情報であり、
前記第1のデータ伝送制御手段は、前記挙動情報に基づき、前記経路を切替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記挙動情報は、前記他の通信装置または前記通信装置がデータ伝送を行う際のQoS(Quality of Service)設定を切替える旨の情報であり、
前記第1のデータ伝送制御手段または前記第2のデータ伝送制御手段は、前記挙動情報に基づき、前記QoS設定を切替えることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報を予め関連付けて格納する格納手段と、
前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信手段と、
前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記他の通信装置より送信された挙動情報を受信する挙動情報受信手段と、
前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、
前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御手段を更に備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
互いに通信可能な通信装置および他の通信装置を備える通信システムにおけるデータ伝送制御方法であって、
前記通信装置の格納手段には、災害の状況を特定する災害状況特定情報、および前記災害が発生した際に前記他の通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を示す挙動情報が予め関連付けられて格納されており、
前記通信装置の緊急速報受信手段が、前記災害を予告する旨の緊急速報を外部の通報手段より受信する緊急速報受信ステップと、
前記通信装置の抽出手段が、前記緊急速報受信手段が受信した当該緊急速報に基づいて前記災害状況特定情報を特定し、且つ当該特定した災害状況特定情報に関連付けられた挙動情報を前記格納手段より抽出する抽出ステップと、
前記通信装置の送信手段が、前記抽出手段が抽出した当該挙動情報を前記他の通信装置に送信する送信ステップと、
前記他の通信装置の挙動情報受信手段が、前記送信手段より送信された当該挙動情報を受信する挙動情報受信ステップと、
前記他の通信装置の第1のデータ伝送制御手段が、前記挙動情報受信手段が受信した当該挙動情報に基づき、当該他の通信装置のデータ伝送を制御する第1のデータ伝送制御ステップと、
を備えることを特徴とするデータ伝送制御方法。
【請求項9】
前記通信装置の前記格納手段に格納される前記挙動情報は、前記災害が発生した際に当該通信装置がデータ伝送において行うべき挙動を更に示し、
前記通信装置の第2のデータ伝送制御手段が、前記抽出手段が前記格納手段より抽出した当該挙動情報に基づき、当該通信装置のデータ伝送を制御する第2のデータ伝送制御ステップを更に備えることを特徴とする請求項8に記載のデータ伝送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−245702(P2010−245702A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90391(P2009−90391)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】