説明

通信システム

【課題】適切なタイミングで起電力を発生させて通信を行うことのできる通信システムを提供すること。
【解決手段】通信システム50に、通信に用いる電波を送信するリーダー60と、リーダー60から離れた位置に設置され、リーダー60で送信した電波を受信すると共に、受信した電波に基づきリーダー60へ返信電波を送信するアンテナ用コイル42と、アンテナ用コイル42の近傍に配設され、且つ、アンテナ用コイル42に対して相対的な位置関係が変化することにより、アンテナ用コイル42に対して交番磁界を発生させる発電用磁石31と、を備え、アンテナ用コイル42は、発電用磁石31との相対的な位置関係の変化時に交番磁界によって起電力を発生し、返信電波の出力を、起電力を用いて増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送波として電波を用いる通信システムは、従来より様々なものがあるが、その中には、装置で発電を行いつつ、発電した電力を用いて通信を行っているものがある。例えば、特許文献1に記載された回転式無線機器では、無線送信部とセンサとを有すると共に、回転部と固定部とに磁石とコイルとが別々に配設されている。これにより、回転部が回転した際にコイルに発生する誘導起電力によって発電した電気を用いてセンサで検出し、この検出結果を、発電した電気を用いて無線送信部で無線送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−135154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電を目的としない運動状態を利用して発電を行う場合、発電を行う状態になったり発電状態が停止したりすることにより、発電が連続しないものがある。このような発電状態の電気を用いて情報を送信する通信システムでは、情報を送信したい場合に発電が行われないことにより、送信する必要がある情報を送信できない場合がある。このように、自らの装置で起電力を発生させ、この起電力を用いて通信を行う場合、通信と起電力を発生させるタイミングを合わせる必要があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適切なタイミングで起電力を発生させて通信を行うことのできる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、通信に用いる電波を送信するリーダーと、前記リーダーから離れた位置に設置され、前記リーダーで送信した電波を受信すると共に、受信した電波に基づき前記リーダーへ返信電波を送信するアンテナ用コイルと、前記アンテナ用コイルの近傍に配設され、且つ、前記アンテナ用コイルに対して相対的な位置関係が変化することにより、前記アンテナ用コイルに対して交番磁界を発生させる磁石と、を備え、前記アンテナ用コイルは、前記磁石との相対的な位置関係の変化時に前記交番磁界によって起電力を発生し、前記返信電波の出力を、前記起電力を用いて増大させることを特徴とする。
【0007】
また、上記通信システムにおいて、前記磁石は、回転可能に配設されると共に回転することによって円周上における極性が変化し、前記アンテナ用コイルは、前記磁石の回転時の中心軸を中心とする径方向における前記磁石の外端よりも径方向外方で前記磁石の近傍に配設されており、前記磁石が回転した際の円周上の極性の変化によって前記交番磁界を受けることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る通信システムは、アンテナ用コイルは、磁石から受ける交番磁界によって起電力を発生し、この起電力によって返信電波の出力を増大させるため、アンテナ用コイルと磁石との相対的な位置関係が変化した場合にのみ、リーダーで返信電波を受信することができる。これにより、適切なタイミングで起電力を発生させて通信を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係る通信システムが用いられる門扉の概略図である。
【図2】図2は、図1のA部詳細図である。
【図3】図3は、図2に示す軸側部材の斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す軸側部材の正面図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面図である。
【図6】図6は、図2に示す支持側部材の斜視図である。
【図7】図7は、図2に示す支持側部材の正面図及び要部断面図である。
【図8】図8は、軸側部材と支持側部材とを組み合わせる際の説明図である。
【図9】図9は、回転ユニットの正面図及び要部断面図である。
【図10】図10は、図9のB−B断面図である。
【図11】図11は、実施形態に係る通信システムの構成概略図である。
【図12】図12は、実施形態に係る通信ユニットの変形例であり、図9のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る通信システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る通信システムが用いられる門扉の概略図である。なお、以下の説明では、本実施形態に係る通信システム50が用いられる門扉1の通常の使用態様時における上下方向を、通信システム50の上下方向として説明する。図1に示す門扉1は、一対の門扉1が2つの門柱6によって開閉可能に支持されている。詳しくは、2つの門扉1は2つの門柱6間に配設され、各門扉1は、それぞれ門柱6に回転ユニット10によって連結されることにより、開閉可能に支持されている。回転ユニット10は、1つの門扉1と1つの門柱6とを2箇所で連結しており、門扉1の高さ方向における上端付近と下端付近で、門扉1と門柱6とを連結している。また、2つの門扉1には、それぞれ他方の門扉1寄りの端部にレバーハンドル2と錠前(図示省略)とが配設されており、このレバーハンドル2や錠前を操作することにより、門扉1を閉じた状態で維持したり、閉じている状態の門扉1を開いたりすることができる。
【0012】
図2は、図1のA部詳細図である。回転ユニット10は、軸側部材11と支持側部材21とを相対的に回転可能に組み合わせることにより構成されており、軸側部材11は門扉1と一体に設けられ、支持側部材21は門柱6と一体に設けられている。これにより、門扉1と門柱6とは、相対的に回転可能に組み合わされている。
【0013】
これらの軸側部材11と支持側部材21とのうち、軸側部材11は、門扉1において水平方向に延在する部材である横フレーム3の端部を含んで構成されており、この横フレーム3において軸側部材11を構成している部分は、回転ユニット10における門扉1に対する固定部分である門扉側固定部4となっている。
【0014】
また、支持側部材21は、回転ユニット10における門柱6に対する固定部分である門柱側固定部7を含んで構成されている。この門柱側固定部7は、門柱6から門扉1の方向に突出する部材によって設けられている。
【0015】
図3は、図2に示す軸側部材の斜視図である。図4は、図2に示す軸側部材の正面図である。軸側部材11は、円柱状に形成される軸部12と、この軸部12を保持する軸部固定部15と、により構成されている。詳しくは、軸部12は、円柱の一端が軸部固定部15に接続されることにより軸部固定部15に固定されており、軸部12は、門扉1の通常の使用態様において軸部固定部15から鉛直方向に下方に向かって延在している。また、軸部固定部15は、門扉側固定部4が兼ねており、即ち、軸部固定部15は、門扉1の横フレーム3が兼ねている。
【0016】
また、軸部12は、後述する発電用コイル32と共に、発電手段である発電ユニット30を構成する発電用磁石31を有している。この発電用磁石31は、軸部12の先端付近、即ち、軸部12における軸部固定部15に接続されている側の端部の反対側の端部付近に配設されている。また、発電用磁石31は、軸部12の形状である円柱の径と同程度の径からなる円板状の形状で形成されており、このため、軸部12は、発電用磁石31を含む全体の形状が、円柱状、或いは丸棒状の形状で形成されている。
【0017】
図5は、図4のA−A断面図である。発電用磁石31は、軸部12の周方向で極性が変化しており、即ち、軸部12の周方向で極性が交互に変化するように、発電用磁石31は構成されている。例えば、発電用磁石31は、2つの磁石を組み合わせることにより形成されている場合は、軸部12の軸方向に見た場合における形状が半円の形状になると共に、軸部12の周方向において90°で分けた領域で極性が異なる2つの磁石が組み合わされることにより形成される。即ち、半円の磁石は、軸部12の周方向において90°で分けた場合の一方の領域がN極になり、他方の領域がS極になり、発電用磁石31は、この半円の磁石2つを、隣接する極性同士が異なる極性になるように組み合わせる。これにより、発電用磁石31は、軸部12の周方向における90°ごとに磁石の極性が異なるように構成される。
【0018】
図6は、図2に示す支持側部材の斜視図である。図7は、図2に示す支持側部材の正面図及び要部断面図である。支持側部材21は、円筒状に形成される支持部材22と、この支持部材22を保持する支持部材固定部25と、により構成されている。詳しくは、支持部材22は、円筒の一端が支持部材固定部25に接続されることにより支持部材固定部25に固定されており、支持部材22は、門扉1の通常の使用態様において支持部材固定部25から鉛直方向に上方に向かって延在している。このため、円筒状に形成される支持部材22の内側部分である中空部23は、上方に向かって開口している。このように上端側が開口する中空部23は、内径が軸部12の外径よりも若干大きい径となって形成されている。また、支持部材固定部25は、門柱側固定部7が兼ねており、支持側部材21は、支持部材固定部25が門柱6と一体に設けられることにより、門柱6に連結されている。
【0019】
また、支持部材22には、軸部12に設けられる発電用磁石31と共に発電ユニット30を構成する発電用コイル32が設けられている。この発電用コイル32は、伝導体の電線を、内側に空間を有するように巻くことにより構成されており、例えば、矩形の平面の外周を電線で巻いた形状で形成されている。支持部材22には、この発電用コイル32が複数配設されており、複数の発電用コイル32は、円筒状の支持部材22の中心軸を中心とする周方向における間隔が、等間隔となって配設されている。
【0020】
また、支持側部材21は、電波によって個体識別を行う際に用いるRFID(Radio Frequency IDentification)受信機40を有している。このRFID受信機40は、RFID通信時に実際に情報の処理を行うICチップ41と、ICチップ41に接続されると共にRFID通信に用いる電波の送受信を行うアンテナ用コイル42と、により構成されている。このうち、アンテナ用コイル42は、発電用コイル32と同様に、伝導体の電線を、内側に空間を有するように巻いた形状で形成されており、RFID受信機40は、発電用コイル32と同様に支持部材22に配設されている。また、RFID受信機40は、発電用コイル32に電気的に接続されているため、発電ユニット30で発電した電気を用いて、RFID通信を行うことが可能になっている。
【0021】
図8は、軸側部材と支持側部材とを組み合わせる際の説明図である。回転ユニット10を構成する軸側部材11と支持側部材21とを組み合わせる場合は、軸側部材11の軸部12を、支持側部材21の中空部23に挿入することにより行う。即ち、軸部固定部15から下方に向かって延在している軸部12を、上方に向かって開口している支持部材22の中空部23に対して、上方から挿入する。これにより、軸部12を中空部23に入り込ませ、軸側部材11と支持側部材21とを組み合わせる。
【0022】
図9は、回転ユニットの正面図及び要部断面図である。図10は、図9のB−B断面図である。支持側部材21は、このように中空部23に軸部12が入り込んだ状態で軸部12を支持するが、中空部23の径は、軸部12の径よりも若干径が大きくなっているため、軸部12は、中空部23に対して軸部12の中心軸を中心として中空部23に対して相対的に回転可能な状態になる。このため、支持側部材21は、中空部23に軸部12が入り込んだ状態では、相対回転可能に軸部12を支持する。これにより、軸部12に配設される発電用磁石31は、中空部23内で支持部材22に対して回転可能に配設された状態になっており、支持部材22に対して相対回転した場合には、円周上における極性が変化するように配設されている。
【0023】
また、支持側部材21で軸部12を支持する状態では、発電用磁石31は、支持部材22に配設される発電用コイル32と、上下方向における位置が同程度の位置になる。つまり、軸部12が中空部23に入り込んだ状態における発電用磁石31と発電用コイル32とは、軸部12や中空部23の軸方向における位置が同程度の位置になる。このため、複数の発電用コイル32は、等間隔で発電用磁石31の周囲に配設される状態になる。
【0024】
また、アンテナ用コイル42も同様に、軸部12が中空部23に入り込んだ状態での上下方向における位置が、発電用磁石31と同程度の位置になっている。このため換言すると、発電用コイル32とアンテナ用コイル42とは、発電用磁石31の回転時の中心軸を中心とする径方向における、発電用磁石31の外端よりも径方向外方で、発電用磁石31の近傍に配設されている。
【0025】
図11は、実施形態に係る通信システムの構成概略図である。本実施形態に係る通信システム50は、RFID受信機40の他に、RFID通信に用いる電波を送信する主通信手段であるリーダー60を有して構成されている。リーダー60は、このように電波を送信することができるように構成されているため、電波の送信に用いるリーダー用アンテナ61を有している。また、RFID受信機40は、通信システム50においては、リーダー60から離れた位置に設置されてリーダー60から送信された電波を受信したり、受信した電波に基づいてリーダー60へ返信電波を送信することによりリーダー60に対して情報を送信したりする副通信手段として設けられている。
【0026】
また、リーダー60は、通信システム50が備えられる建物内に設けられており、このリーダー60には、建物に設置される電気機器の制御を行う制御回路70が接続されている。このように、リーダー60に接続される制御回路70には、玄関や室内の照明71や、便座ヒータ72、浴槽の湯はり73、空調74等の制御を行うことが可能になっている。
【0027】
本実施形態に係る通信システム50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。制御回路70は、各電気機器を制御する際に用いる情報として、リーダー60で取得した情報を使用する。このため、リーダー60は、各電気機器の制御に用いる情報を、RFID通信によって取得し、取得する情報の1つとして、門扉1の開閉情報を取得する。つまり、門扉1を開閉可能に門柱6に連結する回転ユニット10は、リーダー60から見た場合には、リーダー60から離れた位置に設置され、相対的な位置関係が変化する複数の部材である軸側部材11と支持側部材21とを有する被検知部材となっている。
【0028】
リーダー60で門扉1の開閉情報を取得する場合には、まず、情報の検出時に用いる信号をリーダー60からリーダー用アンテナ61に流し、この信号を乗せた電波をリーダー用アンテナ61から送信する。このようにリーダー用アンテナ61から送信した電波は、支持側部材21に設けられるRFID受信機40のアンテナ用コイル42で受信し、ICチップ41に伝達される。
【0029】
ICチップ41は、アンテナ用コイル42から伝達された電波のエネルギによって作動し、演算処理等を行った後、所定の情報の信号をアンテナ用コイル42に流す。アンテナ用コイル42は、この信号を乗せた電波を送信することにより、リーダー60からの信号に対して返信を行う。また、このように返信を行う際における電波である返信電波を送信する際におけるエネルギも、リーダー60側から送信された電波のエネルギを用いて行う。
【0030】
ここで、リーダー用アンテナ61から電波を送信する場合には、リーダー用アンテナ61は電波をあらゆる方向に送信する。このため、アンテナ用コイル42で受信する電波は、リーダー用アンテナ61から送信した電波の一部になっている。このため、電波を受信することによりRFID受信機40が利用することができるエネルギも、リーダー用アンテナ61から送信した電波全体のエネルギの一部になっており、エネルギの量が小さくなっている。これにより、このエネルギを利用してRFID受信機40から返信の信号を送信する返信電波は微弱な電波になっており、リーダー用アンテナ61には届き難くなっている。従って、門扉1の開閉を行わない場合には、リーダー60はRFID受信機40からの電波の受信を行わず、RFID受信機40からの情報は取得しない。
【0031】
また、リーダー60で開閉情報の取得を行う門扉1を開閉する場合には、閉じている状態の門扉1を人が開けたり、開いている状態の門扉1を人が閉じたりするが、門扉1が開閉する際には、回転ユニット10を構成する複数の部材が相対的に回転することにより開閉する。
【0032】
つまり、回転ユニット10を構成する部材のうち、軸側部材11は門扉1に接続され、支持側部材21は門柱6に接続されており、支持側部材21は、中空部23に入り込んだ軸側部材11の軸部12を、相対回転可能に支持している。これにより、軸側部材11と支持側部材21とが相対回転することにより、門扉1は軸部12の中心軸を中心として門柱6に対して相対的に回転し、開閉可能になる。
【0033】
この門扉1の開閉時に、軸側部材11と支持側部材21とが相対的に回転した場合には、軸部12に設けられる発電用磁石31と、支持側部材21に設けられるRFID受信機40のアンテナ用コイル42とは、相対的な位置が変化する。即ち、発電用磁石31は、軸部12の径方向におけるアンテナ用コイル42の内方側に位置しているため、軸側部材11と支持側部材21が相対的に回転した場合には、発電用磁石31とアンテナ用コイル42とは、軸部12の周方向における相対的な位置が変化する。
【0034】
一方、発電用磁石31は、軸部12の周方向で極性が交互に変化しているため、発電用磁石31とアンテナ用コイル42との周方向における相対的な位置が変化した場合には、発電用磁石31からアンテナ用コイル42に対して作用する磁界が変化し、アンテナ用コイル42に対して交番磁界が発生する。即ち、アンテナ用コイル42は、発電用磁石31が回転した際の円周上の極性の変化によって交番磁界を受ける。発電用磁石31は、このようにアンテナ用コイル42の近傍に配設され、且つ、アンテナ用コイル42に対して相対的な位置関係が変化することにより、アンテナ用コイル42に対して交番磁界を発生させる磁石として設けられている。アンテナ用コイル42は、この交番磁界の漏れ磁界を検出し、ICチップ41は、この漏れ磁界の情報を、リーダー60側への返信電波に乗せてアンテナ用コイル42から送信する。
【0035】
また、アンテナ用コイル42は、伝導体の電線により構成されているため、交番磁界の発生時には、この交番磁界による起電力である誘導起電力を発生する。このため、アンテナ用コイル42は、リーダー60側に返信電波を送信する際には、返信電波の出力を、誘導起電力を用いて増大させて送信する。
【0036】
さらに、支持側部材21には、発電用コイル32も設けられているため、門扉1を開閉して軸側部材11と支持側部材21とが相対的に回転した場合には、軸部12に設けられる発電用磁石31と、支持側部材21が有する発電用コイル32とも相対的な位置が変化する。これにより、発電用磁石31から発電用コイル32に対して作用する磁界が変化し、発電用コイル32では、磁界が変化する際における誘導起電力によって電気が発生する。即ち、発電ユニット30は、門扉1の開閉時における発電用磁石31と発電用コイル32との相対的な位置の変化によって発電をする。換言すると、発電ユニット30は、被検知部材である回転ユニット10の軸側部材11と支持側部材21との、双方の部材同士の相対的な位置関係の変化によって発電する。
【0037】
このように、発電用コイル32で発生した電気は、RFID受信機40に伝達される。門扉1の開閉時に、発電用磁石31からアンテナ用コイル42に作用する磁界の変化の情報を、リーダー60側へ送信するRFID受信機40は、発電用コイル32から伝達された電気を用いて、返信電波の出力を増大させてリーダー60側へ送信する。つまり、RFID受信機40は、リーダー60で送信した電波を受信すると共に、軸側部材11と支持側部材21とが相対的に回転しない場合は、受信した電波に基づく電気のみで返信電波を送信する。これに対し、軸側部材11と支持側部材21とが相対的に回転する場合は、アンテナ用コイル42で発生する誘導起電力と、発電ユニット30で発電した電気とを用いて出力を増大させて、返信電波を送信する。
【0038】
リーダー60は、門扉1の開閉情報を検出するが、RFID受信機40は、門扉1の開閉があった場合にのみ、出力を増大させることによりリーダー60で検出可能な返信電波を送信して、門扉1の開閉情報を送信する。即ち、リーダー60は、門扉1の検出を行うための信号を常時送信するが、RFID受信機40は、門扉1の開閉があった場合にのみ、リーダー60からの信号に対して返信する。
【0039】
RFID受信機40から送信した返信電波は、リーダー用アンテナ61に到達し、リーダー60は、この受信した返信電波の信号に基づいて、門扉1の開閉が行われたとの情報を検出する。門扉1が開閉したことを検出したリーダー60は、その情報を制御回路70に伝達する。制御回路70は、門扉1の開閉情報に基づいて、建物に設置されている電気機器の制御を行う。例えば、建物内の電気機器が作動しておらず、閉じている状態の門扉1が開いたことが検出された場合には、外出していた建物内の人が建物内に入ることが想定される。このため、この場合は、制御回路70は、必要に応じて玄関や室内の照明71を点灯させたり、便座ヒータ72をONにしたり、浴槽の湯はり73を行ったり、空調74の運転を開始したりする。
【0040】
以上の通信システム50は、RFID受信機40が有するアンテナ用コイル42の近傍に発電用磁石31を配設し、アンテナ用コイル42は、発電用磁石31から受ける交番磁界によって誘導起電力を発生して、この誘導起電力によって返信電波の出力を増大させている。このため、門扉1が開閉して回転ユニット10が動作して交番磁界が発生し、アンテナ用コイル42で誘導起電力を発生する場合は、アンテナ用コイル42は、誘導起電力で返信電波の出力を増大するため、リーダー60は、返信電波の受信が可能になる。一方、門扉1が開閉されず、回転ユニット10が動作しない場合には、アンテナ用コイル42からから送信する返信電波は出力が小さいため、リーダー60はこの返信電波を受信できない。従って、本実施形態に係る通信システム50は、リーダー60で開閉状態の検出を行う門扉1の開閉時のみ、アンテナ用コイル42からリーダー60に送信する返信電波の出力を大きくし、この返信電波をリーダー60で受信することができる。この結果、適切なタイミングで起電力を発生させて通信を行うことができる。
【0041】
また、アンテナ用コイル42は、回転可能に設置される発電用磁石31の径方向外方で発電用磁石31の近傍に配設されているため、発電用磁石31の回転時に円周上の極性が変化した際に、より確実に交番磁界を受けることができる。この結果、門扉1の開閉時に、より確実にアンテナ用コイル42で誘導起電力を発生して返信電波の出力を増大することができ、適切なタイミングで通信を行うことができる。
【0042】
また、通信システム50は、さらに、軸側部材11と支持側部材21との相対回転時に発電する発電ユニット30を備えており、アンテナ用コイル42は、この発電ユニット30の発電用コイル32に接続されているため、門扉1の開閉時には、発電ユニット30で発電した電気を用いて、返信電波をさらに増大させることができる。従って、アンテナ用コイル42で発生する誘導起電力が弱い場合や、リーダー60とアンテナ用コイル42との距離が大きく離れている場合でも、アンテナ用コイル42からの返信電波を、リーダー60でより確実に受信することができる。この結果、適切なタイミングで、より確実に通信を行うことができる。
【0043】
なお、上述した通信システム50では、門扉1の開閉状態を検出するのみであるが、門扉1の開閉時の回転角度も検出してもよい。図12は、実施形態に係る通信ユニットの変形例であり、図9のB−B断面図である。門扉1の開閉時の回転角度を検出する場合には、アンテナ用コイル42で発電用磁石31からの交番磁界を検出する際における磁力の極数を増加させることにより行う。例えば、図12に示すように、発電用磁石31を、軸部12の軸方向に見た場合における形状が四半円形になる4つの磁石を組み合わせることにより形成する。この四半円形の各磁石は、軸部12の周方向において45°で分けた場合の一方の領域がN極で、他方の領域がS極になっており、発電用磁石31は、この四半円形の磁石4つを、隣接する極性同士が異なる極性になるように組み合わせる。これにより、発電用磁石31は、軸部12の周方向における45°ごとに磁石の極性が異なるように構成する。
【0044】
これにより、門扉1の開閉時にアンテナ用コイル42で検出する漏れ磁界は、回転ユニット10の軸部12が45°回転するごとに極性が変化する交番磁界になる。このため、RFID受信機40から、この磁界の変化の情報を随時リーダー60にすることにより、リーダー60は、軸部12の回転時における回転角度を検出することができ、門扉1の開閉時の回転角度を検出することができる。従って、門扉1の開閉時の情報を取得する際に、より多くの情報を取得することができる。
【0045】
また、上述した通信システム50では、支持側部材21に発電用コイル32を配設しているが、発電用コイル32は配設しなくてもよい。リーダー60とアンテナ用コイル42との距離が比較的近かったり、アンテナ用コイル42と発電用磁石31との設置状態によってアンテナ用コイル42で大きな誘導起電力を発生させたりすることができる場合は、アンテナ用コイル42で発生する誘導起電力で返信電波の出力を増大するのみで、リーダー60によって返信電波を受信することができる。このため、このような場合には、発電用コイル32を省くことにより、適切なタイミングで通信を行う通信システム50を、低コストで製造することができる。
【0046】
また、上述した通信システム50では、RFID受信機40としては1つの回転ユニット10に1組のICチップ41とアンテナ用コイル42とが配設されているのみであるが、RFID受信機40は、1つの回転ユニット10に複数配設してもよい。1つの回転ユニット10にRFID受信機40を複数配設し、それぞれのRFID受信機40で発電用磁石31からの漏れ磁界を検出することにより、軸側部材11と支持側部材21との相対的な回転角度の変化を、より精度よく検出することができ、精度が高い門扉1の開閉時の情報を取得することができる。
【0047】
また、上述した通信システム50では、回転ユニット10の軸部12は、軸部固定部15から鉛直方向に下方に向かって延在し、中空部23の上方から中空部23内に挿入する形態になっているが、軸部12と中空部23の向きは反対向きでもよい。つまり、軸部12は軸部固定部15から鉛直方向に上方に向かって延在し、下方側が開口する中空部23に対して下方側から軸部12を挿入する形態でもよい。軸部12と中空部23とが、このように組み合わされる場合でも、回転ユニット10に発電ユニット30とRFID受信機40を設けることにより、回転ユニット10の動作時のみ発電ユニット30で発電し、RFID受信機40からリーダー60に対して情報を送信することができる。
【0048】
また、上述した通信システム50では、回転ユニット10は、門扉1と門柱6との連結部分に配設され、門扉1の開閉に用いられているが、回転ユニット10は門扉1以外の部分に用いられてもよい。例えば、玄関の扉や、建物内に設置される扉など、回転軸を中心として回転することにより開閉すると共に、回転軸の向きが鉛直方向になる建具であれば、発電ユニット30で発電した電気で送信出力を増幅させるRFID受信機40を備える回転ユニット10を配設する部分の用途は問わない。
【符号の説明】
【0049】
1 門扉
4 門扉側固定部
6 門柱
7 門柱側固定部
10 回転ユニット
11 軸側部材
12 軸部
15 軸部固定部
21 支持側部材
22 支持部材
23 中空部
25 支持部材固定部
30 発電ユニット
31 発電用磁石
32 発電用コイル
40 RFID受信機
41 ICチップ
42 アンテナ用コイル
50 通信システム
60 リーダー
70 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信に用いる電波を送信するリーダーと、
前記リーダーから離れた位置に設置され、前記リーダーで送信した電波を受信すると共に、受信した電波に基づき前記リーダーへ返信電波を送信するアンテナ用コイルと、
前記アンテナ用コイルの近傍に配設され、且つ、前記アンテナ用コイルに対して相対的な位置関係が変化することにより、前記アンテナ用コイルに対して交番磁界を発生させる磁石と、
を備え、
前記アンテナ用コイルは、前記磁石との相対的な位置関係の変化時に前記交番磁界によって起電力を発生し、前記返信電波の出力を、前記起電力を用いて増大させることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記磁石は、回転可能に配設されると共に回転することによって円周上における極性が変化し、
前記アンテナ用コイルは、前記磁石の回転時の中心軸を中心とする径方向における前記磁石の外端よりも径方向外方で前記磁石の近傍に配設されており、前記磁石が回転した際の円周上の極性の変化によって前記交番磁界を受けることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41331(P2013−41331A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176163(P2011−176163)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】